(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】電圧測定装置および電圧測定方法
(51)【国際特許分類】
G01R 15/24 20060101AFI20230825BHJP
G01R 19/00 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
G01R15/24 B
G01R19/00 B
G01R19/00 M
(21)【出願番号】P 2019185232
(22)【出願日】2019-10-08
【審査請求日】2022-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000217686
【氏名又は名称】電源開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】梅本 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】大竹 泰智
(72)【発明者】
【氏名】橋場 康人
(72)【発明者】
【氏名】河野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】松元 大悟
(72)【発明者】
【氏名】古田 篤広
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏治
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-315815(JP,A)
【文献】特開2004-020391(JP,A)
【文献】特開2001-324525(JP,A)
【文献】特開平05-047883(JP,A)
【文献】特開平01-163675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/24
G01R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象と同電位の導体へ向けられた第1端面と、前記第1端面とは逆側の第2端面とを各々が有し、前記第1端面と前記第2端面との間を伝搬する光のうち振動方向が互いに直交する2つの偏光成分に、前記第1端面と前記第2端面との間において作用する電界の強さに応じた位相差を
各々が生じさせる複数の電気光学結晶と、
複数の
前記電気光学結晶の各々から出射された光が伝搬する経路に配置された4分の1波長板と、
前
記電気光学結晶から出射された光に含まれる成分であって、前記第1端面と前記第2端面との間を伝搬したことによって偏光状態が変化した成分の光を
各々が検出する
複数の光検出器と、
複数の
前記光検出器の各々によって検出される光の強度に基づいて、前記導体に印加されている電圧の値を求める演算装置と、を備え、
複数の前記電気光学結晶は、前記電気光学結晶へ前記電界が加えられることによって生じる前記位相差が複数の前記電気光学結晶の各々で互いに異なることによって、複数の前記光検出器の各々で検出される光の強度に差を生じさせ、
前記演算装置は、前記導体に印加される電圧が変化した場合におい
て複数の
前記光検出器の各々によって検出される光の強度を示す各値の関係に基づいて
、複数の
前記光検出器の各々による検出結果に対応する電圧の値を求めることを特徴とする電圧測定装置。
【請求項2】
前記演算装置は、
前記関係を表すグラフのうち、あらかじめ設定された基準電圧に対応する基準点を決定する第1の信号処理部と、
前記グラフのうち
、複数の
前記光検出器の各々による検出結果に対応する測定点を求めるとともに
、複数の
前記光検出器の各々によって検出される光の強度の変化に伴って前記グラフ上において前記基準点から前記測定点を移動させていき、前記測定点に対応する電圧の値を算出する第2の信号処理部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の電圧測定装置。
【請求項3】
光源と、
前記光源から出射された光から、特定の方向である第1の方向において振動する直線偏光を取り出し、取り出された直線偏光を前記電気光学結晶へ入射させる偏光子と、
前記電気光学結晶から出射された光から、前記第1の方向に直交する方向である第2の方向において振動する直線偏光を取り出し、取り出された直線偏光を前記光検出器へ入射させる検光子と、を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の電圧測定装置。
【請求項4】
前記光検出器であって、前記電気光学結晶から出射された光のうち、前記第1の方向に直交する第2の方向において振動する直線偏光を検出する第1の光検出器と、
前記光検出器以外の光検出器であって、前記電気光学結晶から出射された光のうち、前記第1の方向において振動する直線偏光を検出する第2の光検出器と、を備え、
前記演算装置は、前記第1の光検出器によって検出された光の強度と前記第2の光検出器によって検出された光の強度とに基づいてノイズ成分を除去する第3の信号処理部を有することを特徴とする請求項3に記載の電圧測定装置。
【請求項5】
前記光源から出射された光を分岐させる光学素子を備え、
前記光学素子か
ら複数の
前記電気光学結晶の各々へ光を伝搬させることを特徴とする請求項3または4に記載の電圧測定装置。
【請求項6】
前記光源と前記電気光学結晶との間に配置されており、前記電気光学結晶から出射された光が伝搬する方向を変化させて前記光検出器へ光を導く光学素子を備えることを特徴とする請求項3から5のいずれか1つに記載の電圧測定装置。
【請求項7】
測定対象と同電位の導体へ向けられた第1端面と、前記第1端面とは逆側の第2端面とを各々が有し、前記第1端面と前記第2端面との間を伝搬する光のうち振動方向が互いに直交する2つの偏光成分に、前記第1端面と前記第2端面との間において作用する電界の強さに応じた位相差を各々が生じさせる複数の電気光学結晶と、
複数の前記電気光学結晶の各々から出射された光が伝搬する経路に配置された4分の1波長板と、
前記電気光学結晶から出射された光に含まれる成分であって、前記第1端面と前記第2端面との間を伝搬したことによって偏光状態が変化した成分の光を各々が検出する複数の光検出器と、
前記導体に印加される電圧が変化した場合に複数の前記光検出器の各々によって検出される光の強度を示す各値の関係に基づいて、複数の前記光検出器の各々による検出結果に対応する電圧の値を求めることによって、前記導体に印加されている電圧の値を求める演算装置と、を備え、
前記演算装置は、
前記関係を表すグラフのうち、あらかじめ設定された基準電圧に対応する基準点を決定する第1の信号処理部と、
前記グラフのうち、複数の前記光検出器の各々による検出結果に対応する測定点を求めるとともに、複数の前記光検出器の各々によって検出される光の強度の変化に伴って前記グラフ上において前記基準点から前記測定点を移動させていき、前記測定点に対応する電圧の値を算出する第2の信号処理部と、を有することを特徴とする電圧測定装置。
【請求項8】
測定対象に印加される電圧を電圧測定装置によって測定する電圧測定方法であって、
複数の電気光学結晶の各々において、測定対象と同電位の導体に電気的に接続される第1端面と、前記第1端面とは逆側の第2端面との間において光を伝搬させて、振動方向が互いに直交する2つの偏光成分に、前記第1端面と前記第2端面との間において作用する電界の強さに応じた位相差を生じさせるステップと、
前
記電気光学結晶から出射され、さらに波長板を通過した光に含まれる成分であって、前記第1端面と前記第2端面との間を伝搬したことによって偏光状態が変化した成分の光を
複数の光検出器の各々により検出するステップと、
前記導体に印加される電圧が変化した場合におい
て複数の
前記光検出器の各々に
よって検出される光の強度を示す各値の関係に基づいて
、複数の
前記光検出器の各々に
よる検出結果に対応する電圧の値を求めるステップと、を含
み、
複数の前記電気光学結晶は、前記電気光学結晶へ前記電界が加えられることによって生じる前記位相差が複数の前記電気光学結晶の各々で互いに異なることによって、複数の前記光検出器の各々で検出される光の強度に差を生じさせることを特徴とする電圧測定方法。
【請求項9】
測定対象に印加される電圧を電圧測定装置によって測定する電圧測定方法であって、
複数の電気光学結晶の各々において、測定対象と同電位の導体に電気的に接続される第1端面と、前記第1端面とは逆側の第2端面との間において光を伝搬させて、振動方向が互いに直交する2つの偏光成分に、前記第1端面と前記第2端面との間において作用する電界の強さに応じた位相差を生じさせるステップと、
前記電気光学結晶から出射され、さらに波長板を通過した光に含まれる成分であって、前記第1端面と前記第2端面との間を伝搬したことによって偏光状態が変化した成分の光を複数の光検出器の各々により検出するステップと、
前記導体に印加される電圧が変化した場合において複数の前記光検出器の各々によって検出される光の強度を示す各値の関係に基づいて、複数の前記光検出器の各々による検出結果に対応する電圧の値を求めるステップと、を含み、
複数の前記光検出器の各々による検出結果に対応する電圧の値を求めるステップは、
前記関係を表すグラフのうち、あらかじめ設定された基準電圧に対応する基準点を決定するステップと、
前記グラフのうち、複数の前記光検出器の各々による検出結果に対応する測定点を求めるとともに、複数の前記光検出器の各々によって検出される光の強度の変化に伴って前記グラフ上において前記基準点から前記測定点を移動させていき、前記測定点に対応する電圧の値を算出するステップと、を含むことを特徴とする電圧測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学効果を利用して電圧を測定する電圧測定装置および電圧測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長距離送電を行うシステムの1つとして、送電効率の高さといった観点から、高電圧直流(High Voltage Direct Current:HVDC)システムが注目されている。直流電圧は、直流送電系統と交流送電系統とに接続されて交流電力と直流電力との間の交換を行う交直変換装置、および、交流送電系統同士に接続されて電圧の周波数を変換する周波数変換装置などにおいて、常時監視される。監視の対象とされる電圧である系統電圧は数百kVといった高電圧であることから、一般に、分圧器を用いることによって系統電圧を扱い易い電圧にまで降圧させて、降圧後の電圧が電圧測定装置によって測定される。分圧器は、抵抗あるいはキャパシタといった電気回路素子を組み合わせることによって構成される。
【0003】
系統電圧を測定するための方法として、ポッケルス効果を利用する方法が知られている。ポッケルス効果は、ある種の結晶に電界を作用させた場合に、電界の強さの一乗に比例して結晶の屈折率のテンソルが変化する効果であって、一次の電気光学効果とも称される。一次の電気光学効果を有する結晶である電気光学結晶に電界を作用させながら、電気光学結晶へ光を入射させると、振動方向が互いに直交する2つの偏光成分が互いに異なる速度で電気光学結晶を伝搬する現象、すなわち複屈折が生じる。複屈折によって、2つの偏光成分の間に位相差が生じる結果、光の偏光状態が変化する。かかる位相差が電界の強さに比例することから、電圧測定装置は、位相差を測定することによって、電気光学結晶の両端における電位差を求めることができる。
【0004】
特許文献1には、分圧器による降圧後の直流電圧を電気光学結晶へ印加して、電気光学結晶から出射した光に含まれる偏光成分ごとの強度比に基づいて直流電圧を求める電圧測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
系統電圧を測定する電圧測定装置は、高い測定精度が要求される一方、分圧器を構成する電気回路素子は、一般に、温度依存性を有する。このため、分圧器を有する電圧測定装置の場合、電圧測定装置が設置される環境の温度変化に対する測定精度を保証し得る分圧器を搭載する必要があることから、分圧器の設計および製造に多大な費用がかかっていた。また、多くの分圧器には、抵抗体を絶縁するための油が使用されていることから、分圧器が破損した際に油が流出するという懸念があった。このような事情から、電圧測定装置は、分圧器を用いずに高電圧を測定可能であることが求められていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、分圧器を使用せずに高電圧を測定可能とする電圧測定装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる電圧測定装置は、測定対象と同電位の導体へ向けられた第1端面と、第1端面とは逆側の第2端面とを各々が有し、第1端面と第2端面との間を伝搬する光のうち振動方向が互いに直交する2つの偏光成分に、第1端面と第2端面との間において作用する電界の強さに応じた位相差を各々が生じさせる複数の電気光学結晶と、複数の電気光学結晶の各々から出射された光が伝搬する経路に配置された4分の1波長板と、電気光学結晶から出射された光に含まれる成分であって、第1端面と第2端面との間を伝搬したことによって偏光状態が変化した成分の光を各々が検出する複数の光検出器と、複数の光検出器の各々によって検出される光の強度に基づいて、導体に印加されている電圧の値を求める演算装置と、を備える。複数の電気光学結晶は、電気光学結晶へ電界が加えられることによって生じる位相差が複数の電気光学結晶の各々で互いに異なることによって、複数の光検出器の各々で検出される光の強度に差を生じさせる。演算装置は、導体に印加される電圧が変化した場合において複数の光検出器の各々によって検出される光の強度を示す各値の関係に基づいて、複数の光検出器の各々による検出結果に対応する電圧の値を求める。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、分圧器を使用せずに高電圧を測定することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態1にかかる電圧測定装置の模式図
【
図2】実施の形態1にかかる電圧測定装置が実施する動作の手順を示すフローチャート
【
図3】実施の形態1にかかる電圧測定装置が有する複数の光検出器の各々によって検出される光の強度と、高電圧導体の電圧との関係の例を示す図
【
図4】実施の形態1にかかる電圧測定装置が電圧の測定において参照するグラフである校正曲線の例を示す図
【
図5】実施の形態1の変形例1にかかる電圧測定装置の模式図
【
図6】実施の形態1の変形例2にかかる電圧測定装置の模式図
【
図7】本発明の実施の形態2にかかる電圧測定装置の模式図
【
図8】実施の形態2にかかる電圧測定装置が実施する動作の手順を示すフローチャート
【
図9】実施の形態1または2にかかる電圧測定装置が有する演算装置のハードウェア構成の例を示す第1の図
【
図10】実施の形態1または2にかかる電圧測定装置が有する演算装置のハードウェア構成の例を示す第2の図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態にかかる電圧測定装置および電圧測定方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる電圧測定装置の模式図である。実施の形態1にかかる電圧測定装置100は、送電系統、交直変換装置、あるいは周波数変換装置といった測定対象の電圧を測定する。電圧測定装置100は、高電圧導体1と接地導体2との間に配置されている複数の電気光学結晶3と、光源4と、光源4から出射された光が入射する偏光子5と、複数の電気光学結晶3の各々から出射された光が伝搬する経路に配置された4分の1波長板である波長板31と、電気光学結晶3から出射され、さらに波長板31を通過した光が入射する検光子6と、検光子6から出射された光を各々が検出する複数の光検出器7と、演算装置10とを有する。
【0013】
高電圧導体1は、測定対象と同電位の導体である。測定対象の電圧は、数百kVといった高電圧である。接地導体2は、基準電位点に接続されている導体である。なお、以下の説明では、電気光学結晶3の端面のうち、高電圧導体1へ向けられている端面を第1端面、接地導体2へ向けられている端面を第2端面と称することがある。第2端面は、第1端面とは逆側の端面であって、接地導体2に電気的に接続される。複数の電気光学結晶3の各々が、第1端面と第2端面とを有する。複数の電気光学結晶3の各々は、第1端面と第2端面との間を伝搬する光のうち振動方向が互いに直交する2つの偏光成分に、第1端面と第2端面との間において作用する電界の強さに応じた位相差を生じさせる。
【0014】
電気光学結晶3は、電気光学効果の1つであるポッケルス効果を有する光学結晶である。電気光学結晶3の外部から電界が加えられた場合に、電気光学結晶3の分極状態が変化することによって、電気光学結晶3の屈折率が変化する。電気光学結晶3に電気光学効果が生じることによって、電気光学結晶3の屈折率には異方性が生じる。振動方向が互いに直交する2つの偏光成分を含む光が、屈折率の異方性が生じている電気光学結晶3を透過すると、2つの偏光成分の伝搬速度に差異が生じる複屈折が生じる。
【0015】
電界が加えられている電気光学結晶3へ、当該2つの偏光成分の各振動方向に対して振動方向が傾けられている直線偏光が入射すると、当該2つの偏光成分に位相差が生じることによって、電気光学結晶3から出射される光は楕円偏光となる。当該2つの偏光成分の位相差は、電気光学結晶3に加えられている電界に比例する。したがって、電気光学結晶3を伝搬する光の位相差が測定されることによって、電気光学結晶3の第1端面と第2端面との間の電位差が求まる。
【0016】
なお、電気光学結晶3としては、LiNbO3、LiTaO3、Bi12SiO12、BiGe3O12、水晶などを使用することができる。実施の形態1では、電圧測定装置100には2つの電気光学結晶3が設けられているものとする。電圧測定装置100には、3つ以上の電気光学結晶3が設けられても良い。
【0017】
ミラー9は、各電気光学結晶3の第1端面に設けられている。ミラー9は、電気光学結晶3において第2端面から第1端面へ向けて伝搬した光を反射する。ミラー9は、高電圧導体1に接触している。ミラー9と高電圧導体1とは、互いに同電位である。
【0018】
透明導電膜8は、各電気光学結晶3の第2端面に設けられている。透明導電膜8は、蒸着法によって第2端面に形成される。透明導電膜8は、接地導体2に電気的に接続されている。接地導体2のうち透明導電膜8と接する部分は、光が透過できるように透明とされている。
【0019】
接地導体2の透明部分と透明導電膜8とを透過した光は、電気光学結晶3の第2端面へ入射する。第2端面から第1端面へ向けて伝搬した光は、ミラー9で反射し、第2端面へ向けて伝搬する。第2端面から電気光学結晶3の外部へ出射された光は、透明導電膜8と接地導体2の透明部分とを透過する。
【0020】
電気光学結晶3には、電気光学結晶3を伝搬する光の光軸と平行な方向の電界であって、第1端面と第2端面との距離に応じた強さの電界が作用する。電気光学結晶3は、電気光学効果によって、第1端面と第2端面との間を伝搬する光に、高電圧導体1の電位に比例した位相差を生じさせる。位相差を直接測定することは困難であることから、電圧測定装置100は、偏光子5と検光子6との組み合わせを用いて、検光子6を透過した光の強度を測定することによって位相差を求めることができる。
【0021】
電圧測定装置100には、電気光学結晶3と同じ数の光源4が設けられている。光源4としては、単一波長の光を出射するものが適しており、レーザが使用される。光源4であるレーザとしては、半導体レーザ、固体レーザあるいはガスレーザなどが使用される。
【0022】
電圧測定装置100には、電気光学結晶3と同じ数の偏光子5が設けられている。偏光子5は、偏光子5へ入射した光のうち、特定の方向である第1の方向において振動する直線偏光を透過させる光学素子である。偏光子5は、光源4と電気光学結晶3の第2端面との間の光路に配置されている。光源4から出射された光のうち、第1の方向において振動する直線偏光は、偏光子5を透過する。偏光子5を透過した直線偏光は、接地導体2の透明部分と透明導電膜8とを透過して、電気光学結晶3の第2端面へ入射する。このように、偏光子5は、光源4から出射された光から、第1の方向において振動する直線偏光を取り出し、取り出された直線偏光を電気光学結晶3へ入射させる。
【0023】
電圧測定装置100には、電気光学結晶3と同じ数の検光子6が設けられている。検光子6は、検光子6へ入射した光のうち、第2の方向において振動する直線偏光を透過させる光学素子である。第2の方向は、第1の方向に直交する方向である。検光子6は、電気光学結晶3の第2端面と光検出器7との間の光路に配置されている。電気光学結晶3から出射された光のうち、第2の方向において振動する直線偏光は、検光子6を透過する。検光子6を透過した直線偏光は、光検出器7へ入射する。このように、検光子6は、電気光学結晶3から出射された光から、第2の方向において振動する直線偏光を取り出し、取り出された直線偏光を光検出器7へ入射させる。第2の方向において振動する直線偏光は、第1の方向において振動する直線偏光が電気光学結晶3の第1端面と第2端面との間を伝搬したことによって、第1の方向において振動する状態から第2の方向において振動する状態へ偏光状態が変化した成分である。
【0024】
電圧測定装置100には、電気光学結晶3と同じ数の光検出器7が設けられている。光検出器7は、検光子6から出射された光を検出する。光検出器7は、光を電気信号へ変換する光電気変換によって、入射した光の強度を示す電気信号を生成する。光検出器7は、電気信号を演算装置10へ出力する。
【0025】
電圧測定装置100には、電気光学結晶3と同じ数の波長板31が設けられている。波長板31は、電気光学結晶3と検光子6との間に配置されている。波長板31の光学軸は、偏光子5の光学軸に対して45度傾けられている。
【0026】
演算装置10は、信号処理を実行する第1の信号処理部11および第2の信号処理部12と、情報を表示する表示部13と、情報を記憶する記憶部14とを有する。第1の信号処理部11と第2の信号処理部12と表示部13と記憶部14とは、演算装置10が有する機能部である。
【0027】
演算装置10は、グラフの情報を保持している。グラフは、高電圧導体1に印加される電圧が変化した場合において複数の光検出器7の各々によって検出される光の強度を示す各値の関係を表す。演算装置10が保持するグラフは、各光検出器7によって検出される光の強度を座標軸とするグラフである。以下の説明では、かかるグラフを校正曲線と称する。演算装置10は、あらかじめ求められた校正曲線の情報を取得する。記憶部14は、校正曲線の情報を保持する。
【0028】
第1の信号処理部11は、校正曲線のうち、あらかじめ設定された基準電圧に対応する基準点を決定する。第2の信号処理部12は、校正曲線のうち、複数の光検出器7の各々による検出結果に対応する測定点を求めるとともに、複数の光検出器7の各々によって検出される光の強度の変化に伴って校正曲線上において基準点から測定点を移動させていく。基準電圧は、任意に設定可能であるものとする。以下の説明では、基準電圧は、接地電圧であるものとする。また、高電圧導体1の電圧が基準電圧であるときに各光検出器7から演算装置10へ出力される電気信号を、基準信号を称することがある。
【0029】
高電圧導体1の電圧が接地電圧から上昇すると、電気光学結晶3に電気光学効果が生じることによって、各光検出器7によって検出される光の強度が変化する。第2の信号処理部12は、演算装置10へ入力される電気信号について、基準信号からの変化を常時測定する。第2の信号処理部12は、基準信号からの電気信号の変化に伴って、校正曲線上において測定点を移動させる。また、第2の信号処理部12は、測定点に対応する電圧の値を算出する。表示部13は、第2の信号処理部12によって算出された電圧の値を表示する。
【0030】
次に、電圧測定装置100の動作について説明する。
図2は、実施の形態1にかかる電圧測定装置が実施する動作の手順を示すフローチャートである。光源4は、光を出射する。偏光子5は、光源4から出射された光から、第1の方向において振動する直線偏光を取り出す。偏光子5によって取り出された直線偏光は、電気光学結晶3の第2端面へ入射する。このように、電圧測定装置100は、ステップS1において、偏光子5から出射された光を電気光学結晶3へ入射させる。
【0031】
電気光学結晶3へ入射した光は、第2端面から第1端面へ向けて伝搬し、ミラー9で反射する。ミラー9で反射した光は、第1端面から第2端面へ向けて伝搬し、第2端面から電気光学結晶3の外部へ出射する。複数の電気光学結晶3の各々では、第1端面と第2端面との間において光が伝搬して、振動方向が互いに直交する2つの偏光成分に、第1端面と第2端面との間において作用する電界の強さに応じた位相差が生じる。
【0032】
電気光学結晶3から出射された光は、波長板31へ入射する。検光子6は、波長板31から出射された光から、第2の方向において振動する直線偏光を取り出す。検光子6によって取り出された直線偏光は、光検出器7へ入射する。ステップS2において、光検出器7は、電気光学結晶3から出射された光のうち波長板31および検光子6を透過した光を検出する。複数の光検出器7の各々は、複数の電気光学結晶3の各々について、電気光学結晶3から出射された光に含まれる成分であって、第1端面と第2端面との間を伝搬したことによって偏光状態が変化した成分を検出する。
【0033】
次に、高電圧導体1を基準電圧として、光検出器7は、基準信号を演算装置10へ出力する。ステップS3において、第1の信号処理部11は、校正曲線のうち、基準電圧に対応する基準点を決定する。
【0034】
その後、高電圧導体1の電圧が基準電圧から変化していくことによって、各光検出器7によって検出される光の強度が変化する。演算装置10へ入力される電気信号は、基準信号から変化する。ステップS4において、第2の信号処理部12は、各光検出器7によって検出される光の強度の変化に従って、校正曲線上にて測定点を移動させる。ステップS5において、第2の信号処理部12は、校正曲線上の測定点に対応する電圧の値を算出する。表示部13は、第2の信号処理部12によって算出された電圧の値を表示する。これにより、電圧測定装置100は、
図2に示す手順による動作を終了する。
【0035】
電圧測定装置100は、電気光学結晶3内にて生じた位相差を直接測定することは困難であることから、偏光子5、検光子6および波長板31を用いることによって位相差を光の強度へ置き換えて、光の強度を測定する。電圧測定装置100について、電気光学結晶3へ入射する光の強度IINと光検出器7へ入射する光の強度IOUTとの関係は、次の式(1)により表される。なお、「θ」は、電気光学効果によって電気光学結晶3で生じる位相差を表す。
【0036】
【0037】
電気光学結晶3で生じる位相差と、電気光学結晶3の第1端面と第2端面との間の電位差との関係は、次の式(2)により表される。なお、式(2)において、「V」は、第1端面と第2端面との間の電位差を表す。「A」は、ポッケルス効果の感度を示す係数である。
【0038】
【0039】
なお、ポッケルス効果の感度を示す係数Aは、電気光学結晶3の種類によって異なる。同一の種類の電気光学結晶3であっても、電気光学結晶3の加工において結晶軸の角度等を制御することが困難であることから、一般に、係数Aには個体差がある。
【0040】
図3は、実施の形態1にかかる電圧測定装置が有する複数の光検出器の各々によって検出される光の強度と、高電圧導体の電圧との関係の例を示す図である。
図3において、縦軸は光の強度の相対値「I」を表す。横軸は電圧「V」を表す。
図3には、2つの光検出器7によって検出される光の強度について、光の強度と電圧との関係を表すグラフを示している。
【0041】
高電圧導体1に正極性の電圧が徐々に印加されると、2つの光検出器7によって検出される光の強度は、上記の式(1)に従って増加あるいは減少を始める。高電圧導体1に負極性の電圧が徐々に印加されると、2つの光検出器7によって検出される光の強度は、正極性の電圧が印加されるときとは逆に減少あるいは増加を始める。
【0042】
上記の式(1)に示されるように、光検出器7へ入射する光の強度IOUTと位相差θとには、正弦関数の関係が成り立つことから、電圧の増加に伴って、光の強度は増加と減少とを交互に繰り返す。光の強度が極大値となるときにおける電圧と光の強度が極小値となるときにおける電圧との差は、半波長電圧と称される。
【0043】
ポッケルス効果の感度を示す係数Aは、電気光学結晶3ごとに個体差がある。電気光学結晶3に電界が加えられた場合に、電気光学結晶3において生じる位相差は、電気光学結晶3ごとに異なる。このため、電圧を変化させた場合において、各光検出器7により検出される光の強度には差が生じる。各光検出器7により検出される光の強度と電圧との関係において、半波長電圧には、係数Aの個体差に応じたずれが生じる。電圧測定装置100は、複数の光検出器7によって検出される光の強度の差を利用することによって、高電圧導体1の電圧を算出する。高電圧導体1の電圧は、数百kVの高電圧であって、一般に10~20kV程度である半波長電圧を大幅に超えることから、電圧測定装置100は、光の強度の差を利用して、高電圧導体1の電圧を一意に求めることができる。
【0044】
図4は、実施の形態1にかかる電圧測定装置が電圧の測定において参照するグラフである校正曲線の例を示す図である。
図4において、縦軸は、2つの光検出器7のうちの一方によって検出される光の強度「I1」を表す。横軸は、2つの光検出器7のうちの他方によって検出される光の強度「I2」を表す。校正曲線上の点は、2つの光検出器7によって検出される光の強度を示す各値の組み合わせを表す。校正曲線は、高電圧導体1の電圧が変化した場合における当該各値の組み合わせの変化を表す。すなわち、校正曲線は、高電圧導体1の電圧が変化した場合において2つの光検出器7の各々によって検出される光の強度を示す各値の関係を表す。また、校正曲線上の点は、当該各値の関係を表すとともに、
図3に示す光の強度と電圧との関係から、高電圧導体1の電圧にも対応している。
【0045】
なお、
図3に示す破線のグラフは、強度「I1」と電圧との関係を表す。
図3に示す実線のグラフは、強度「I2」と電圧との関係を表す。
図4に示す校正曲線のうち、「V=0」の点は、高電圧導体1に印加される電圧がゼロであるときの強度「I1」および強度「I2」を表す。
図4に示す校正曲線のうち、「Vmax」の点は、高電圧導体1に印加される電圧が
図3に示す最大値「Vmax」であるときの強度「I1」および強度「I2」を表す。「Vmin」の点は、高電圧導体1に印加される電圧が
図3に示す最小値「Vmin」であるときの強度「I1」および強度「I2」を表す。
【0046】
高電圧導体1の電圧が基準電圧、すなわちゼロである場合、2つの光検出器7の各々によって検出される光の強度は、いずれも、最大光強度I
0の50%、すなわちI
0/2となる。高電圧導体1の電圧がゼロから徐々に増加すると、2つの光検出器7の各々によって検出される光の強度はともに増加あるいは減少する。さらに高電圧導体1の電圧が増加すると、2つの光検出器7の各々によって検出される光の強度はともに減少あるいは増加する。第2の信号処理部12は、2つの光検出器7の各々によって検出される光の強度の変化に従って、校正曲線上にて測定点を移動させる。高電圧導体1に正極性の電圧が印加される場合、測定点は、強度「I1」および強度「I2」がともに減少する向き、すなわち
図4においてV=0の点から左斜め下向きに移動する。高電圧導体1に負極性の電圧が印加される場合、測定点は、強度「I1」および強度「I2」がともに増加する向き、すなわち
図4においてV=0の点から右斜め上向きに移動する。
【0047】
第2の信号処理部12は、測定点に対応する電圧を求めることによって、電圧の値を算出する。なお、
図4に示す校正曲線には、曲線同士が交差する交点が複数存在している。校正曲線に交点が含まれていることは、かかる交点と測定点とが一致した時点において、測定点に対応する電圧の候補が2つ存在することを意味する。第2の信号処理部12は、光検出器7から演算装置10へ入力される電気信号の変化を常時測定しているため、測定時点において交点と測定点とが一致した場合でも、測定点が交点に至る履歴を参照することによって、測定点に対応する電圧を一意に求めることができる。第2の信号処理部12は、算出された電圧の値を表示部13へ出力する。これにより、電圧測定装置100は、電圧の測定結果を表示部13に表示する。
【0048】
仮に、複数の電気光学結晶3を用いず、1つの電気光学結晶3を透過した光の強度のみを検出することとした場合、電圧の変化に対して光の強度は増加と減少とを周期的に繰り返すことから、電圧を一意に測定することができない。電圧測定装置100は、複数の電気光学結晶3と複数の光検出器7とを有し、校正曲線に基づいて、複数の光検出器7の各々による検出結果に対応する電圧の値を求める。これにより、電圧測定装置100は、分圧器を必要とせずに、高電圧導体1の電圧を一意に測定することができる。
【0049】
次に、実施の形態1にかかる電圧測定装置100の変形例について説明する。
図5は、実施の形態1の変形例1にかかる電圧測定装置の模式図である。電圧測定装置100は、複数の光源4を有するものに限られず、1つの光源4を有するものであっても良い。実施の形態1の変形例1において、電圧測定装置100は、1つの光源4と、光源4から出射された光を分岐させる光学素子であるハーフミラー15と、光が伝搬する方向を変化させる光学素子であるミラー16とを有する。電圧測定装置100は、ハーフミラー15から複数の電気光学結晶3の各々へ光を伝搬させる。
【0050】
偏光子5を透過した光は、ハーフミラー15へ入射する。ハーフミラー15は、入射した光のうちの一部を透過させ、残りを反射することによって、光を分岐させる。ハーフミラー15を透過した光は、2つの電気光学結晶3のうちの一方へ向けて伝搬する。ハーフミラー15で反射した光は、ミラー16での反射によって、伝搬する方向が変化する。ミラー16で反射した光は、2つの電気光学結晶3のうちの他方へ向けて伝搬する。ハーフミラー15は、理想としては、1対1の割合で光を分岐させ、かつ光の偏光状態を変化させない。
【0051】
光源4から出射される光の強度の変動は、電圧測定装置100における測定誤差要因の1つとなる。変形例1にかかる電圧測定装置100は、1つの光源4を用いることによって、光源4から出射される光の変動による影響を低減することができる。
【0052】
図6は、実施の形態1の変形例2にかかる電圧測定装置の模式図である。実施の形態1の変形例2において、電圧測定装置100は、電気光学結晶3から出射された光が伝搬する方向を変化させて光検出器7へ光を導く光学素子であるハーフミラー17を有する。ハーフミラー17は、光源4と電気光学結晶3との間に配置されている。
【0053】
偏光子5を透過した光は、ハーフミラー17へ入射する。ハーフミラー17は、偏光子5からの光のうちの一部を透過させる。ハーフミラー17を透過した光は、電気光学結晶3へ向けて伝搬する。また、電気光学結晶3から出射された光は、ハーフミラー17へ入射する。ハーフミラー17は、電気光学結晶3からの光のうちの一部を反射する。ハーフミラー17で反射した光は、検光子6へ向けて伝搬する。
【0054】
変形例2にかかる電圧測定装置100は、ハーフミラー17を用いることによって、光源4から電気光学結晶3へ光を伝搬させるとともに、電気光学結晶3から方向を変化させた光を光検出器7へ伝搬させることができる。電圧測定装置100は、光源4と光検出器7との配置位置を自由に変更することができるため、設計自由度の向上が可能となる。
【0055】
実施の形態2.
図7は、本発明の実施の形態2にかかる電圧測定装置の模式図である。実施の形態2にかかる電圧測定装置101は、ノイズ成分を除去して、電圧を測定する。実施の形態2では、上記の実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1とは異なる構成について主に説明する。
【0056】
電圧測定装置101は、第1の光検出器である複数の光検出器7と、複数の偏光ビームスプリッタ21と、第2の光検出器である複数の光検出器22とを有する。偏光ビームスプリッタ21は、第1の方向において振動する直線偏光と第2の方向において振動する直線偏光とを分岐させる光学素子である。偏光ビームスプリッタ21は、電気光学結晶3と光検出器7との間の光路に配置されている。電圧測定装置101には、電気光学結晶3と同じ数の偏光ビームスプリッタ21が設けられている。電圧測定装置101には、電気光学結晶3と同じ数の光検出器22が設けられている。なお、以下の説明において、第1の方向において振動する直線偏光を第1の直線偏光、第2の方向において振動する直線偏光を第2の直線偏光と称することがある。
【0057】
電気光学結晶3から出射された光のうち第2の直線偏光は、偏光ビームスプリッタ21を透過して、光検出器7へ入射する。光検出器7は、第2の直線偏光を検出する。このように、偏光ビームスプリッタ21は、電気光学結晶3から出射された光から第2の直線偏光を取り出し、取り出された第2の直線偏光を光検出器7へ入射させる検光子として機能する。電気光学結晶3から出射された光のうち第1の直線偏光は、偏光ビームスプリッタ21で反射して、光検出器22へ入射する。光検出器22は、第1の直線偏光を検出する。光検出器22は、光を電気信号へ変換する光電気変換によって、入射した光の強度を示す電気信号を生成する。光検出器22は、電気信号を演算装置10へ出力する。
【0058】
演算装置10は、ノイズ成分を除去するための信号処理を実行する機能部である第3の信号処理部23を有する。第1の信号処理部11と第2の信号処理部12は、第3の信号処理部23によるノイズ成分の除去を経た電気信号に基づいて、信号処理を実行する。
【0059】
光源4から出射される光の強度の変動は、電圧測定装置101における測定誤差要因の1つとなる。第3の信号処理部23は、光検出器7によって検出された光の強度を光検出器22によって検出された光の強度で除算し、除算結果を第1の信号処理部11へ出力する。光検出器7によって検出される光の強度と、光検出器22によって検出される光の強度とは、振幅成分が互いに同じである正弦関数と余弦関数とによってそれぞれ表される。第3の信号処理部23によって得られる除算結果である値は、振幅成分に依存しない値となる。第3の信号処理部23は、振幅に依存しない値を第1の信号処理部11へ出力することによって、光源4から出射される光の強度の変動に起因するノイズ成分を除去することができる。ノイズ成分は、高電圧導体1に印加される電圧の変化以外の要因によって、電気光学結晶3から出射される直線偏光の強度が変化する場合における、直線偏光の強度の変化分とする。
【0060】
なお、実施の形態2において、校正曲線は、高電圧導体1に印加される電圧と、第3の信号処理部23から出力される値との関係を表す。基準信号は、高電圧導体1の電圧が基準電圧であるときに第3の信号処理部23から出力される電気信号とする。第3の信号処理部23から出力される電気信号は、第1の信号処理部11を経由して第2の信号処理部12へ入力される。第2の信号処理部12は、入力される電気信号について、基準信号からの変化を常時測定する。第2の信号処理部12は、基準信号からの電気信号の変化に伴って、校正曲線上において測定点を移動させる。
【0061】
次に、電圧測定装置101の動作について説明する。
図8は、実施の形態2にかかる電圧測定装置が実施する動作の手順を示すフローチャートである。電圧測定装置101は、実施の形態1と同様に、ステップS1において、偏光子5から出射された光を電気光学結晶3へ入射させる。
【0062】
電気光学結晶3へ入射した光は、第2端面から第1端面へ向けて伝搬し、ミラー9で反射する。ミラー9で反射した光は、第1端面から第2端面へ向けて伝搬し、第2端面から電気光学結晶3の外部へ出射する。偏光ビームスプリッタ21は、電気光学結晶3から出射され、さらに波長板31を通過した光のうち、第2の直線偏光を透過させ、かつ第1の直線偏光を反射させる。ステップS11において、電圧測定装置101は、電気光学結晶3から出射され、かつ波長板31を通過した光のうち、偏光ビームスプリッタ21を透過した光と、偏光ビームスプリッタ21で反射した光とを、それぞれ光検出器7と光検出器22とによって検出する。
【0063】
ステップS12において、第3の信号処理部23は、光検出器7によって検出された光の強度と光検出器22によって検出された光の強度とに基づいてノイズ成分を除去する。電圧測定装置101は、ステップS12を終えると、実施の形態1と同様に、ステップS3からステップS5の手順によって動作する。これにより、電圧測定装置101は、
図8に示す手順による動作を終了する。
【0064】
電圧測定装置101は、第3の信号処理部23によりノイズ成分を除去することによって、高精度な電圧測定が可能となる。なお、電圧測定装置101は、複数の光源4を有するものに限られない。電圧測定装置101は、実施の形態1の変形例1と同様に、1つの光源4と、光源4から出射された光を分岐させる光学素子であるハーフミラー15と、光が伝搬する方向を変化させる光学素子であるミラー16とを有しても良い。また、電圧測定装置101は、実施の形態1の変形例2と同様に、電気光学結晶3から出射された光が伝搬する方向を変化させて光検出器7へ光を導く光学素子であるハーフミラー17を有しても良い。
【0065】
次に、演算装置10が有するハードウェア構成について説明する。実施の形態1または2にかかる電圧測定装置100,101が有する演算装置10の機能は、処理回路を使用して実現される。処理回路は、演算装置10に搭載される専用のハードウェアである。処理回路は、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサであっても良い。
【0066】
図9は、実施の形態1または2にかかる電圧測定装置が有する演算装置のハードウェア構成の例を示す第1の図である。
図9には、演算装置10の機能が専用のハードウェアを使用して実現される場合におけるハードウェア構成を示している。演算装置10は、各種処理を実行する処理回路71と、演算装置10の外部の機器との接続のためのインタフェース72と、各種情報を記憶する外部記憶装置73と、出力デバイスである表示装置74とを備える。処理回路71とインタフェース72と外部記憶装置73と表示装置74とは、相互に通信可能に接続されている。
【0067】
専用のハードウェアである処理回路71は、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はこれらの組み合わせである。第1の信号処理部11、第2の信号処理部12および第3の信号処理部23の各機能は、処理回路71を用いて実現される。
【0068】
インタフェース72は、光検出器7,22からの電気信号を受信する。記憶部14の各機能は、外部記憶装置73を用いて実現される。表示部13の機能は、表示装置74を用いて実現される。演算装置10は、各種情報の入力のための入力デバイスを備えていても良い。
【0069】
図10は、実施の形態1または2にかかる電圧測定装置が有する演算装置のハードウェア構成の例を示す第2の図である。
図10には、プログラムを実行するハードウェアを用いて演算装置10の機能が実現される場合におけるハードウェア構成を示している。演算装置10は、プロセッサ75とメモリ76とインタフェース72と外部記憶装置73と表示装置74とを有する。プロセッサ75とメモリ76とインタフェース72と外部記憶装置73と表示装置74は、相互に通信可能に接続されている。
【0070】
プロセッサ75は、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、又はDSP(Digital Signal Processor)である。第1の信号処理部11、第2の信号処理部12および第3の信号処理部23の各機能は、プロセッサ75と、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現される。ソフトウェアまたはファームウェアは、プログラムとして記述され、内蔵メモリであるメモリ76に格納される。メモリ76は、不揮発性もしくは揮発性の半導体メモリであって、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)またはEEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)である。
【0071】
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 高電圧導体、2 接地導体、3 電気光学結晶、4 光源、5 偏光子、6 検光子、7,22 光検出器、8 透明導電膜、9,16 ミラー、10 演算装置、11 第1の信号処理部、12 第2の信号処理部、13 表示部、14 記憶部、15,17 ハーフミラー、21 偏光ビームスプリッタ、23 第3の信号処理部、31 波長板、71 処理回路、72 インタフェース、73 外部記憶装置、74 表示装置、75 プロセッサ、76 メモリ、100,101 電圧測定装置。