(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】調理器用トッププレート
(51)【国際特許分類】
F24C 15/10 20060101AFI20230825BHJP
H05B 6/12 20060101ALI20230825BHJP
C03C 17/34 20060101ALI20230825BHJP
B32B 3/18 20060101ALI20230825BHJP
B32B 17/06 20060101ALI20230825BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
F24C15/10 B
H05B6/12 305
C03C17/34 A
B32B3/18
B32B17/06
B32B27/20 A
(21)【出願番号】P 2019220839
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2018231025
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593046429
【氏名又は名称】日電硝子加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土谷 武史
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-145168(JP,A)
【文献】特開2011-216457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 15/10
H05B 6/12
C03C 17/34
B32B 3/18
B32B 17/06
B32B 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器具が載せられる調理面及び該調理面とは反対側の裏面を有する、ガラス基板と、 前記ガラス基板の前記裏面上に配置されており、第1の着色顔料を含む、第1の層と、 前記ガラス基板の前記裏面上に配置されており、第2の着色顔料を含む、第2の層と、を備え、
前記第1の層は、前記ガラス基板と前記第2の層との間に、かつ前記ガラス基板の前記裏面上の一部に設けられており、
前記第1の着色顔料及び前記第2の着色顔料が、異なる着色顔料であり、
L
*
a
*
b
*
表色系において、前記第1の層のL
*
値が、70~80であり、前記第2の層のL
*
値が、55~65であり、
前記第1の層及び前記第2の層のL
*a
*b
*表色系における色差ΔE1が、10以上、25以下である、調理器用トッププレート。
【請求項2】
前記ガラス基板の裏面全体に対する第1の層形成部分の面積割合が、15%以上、70%以下である、請求項1に記載の調理器用トッププレート。
【請求項3】
前記ガラス基板の前記裏面上における第1の層形成部分及び第1の層非形成部分により、パターン模様が構成されている、請求項1又は2に記載の調理器用トッププレート。
【請求項4】
前記パターン模様が、ドット、格子、又はライン状の模様である、請求項3に記載の調理器用トッププレート。
【請求項5】
前記第1の層が、透明な耐熱樹脂をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の調理器用トッププレート。
【請求項6】
前記第2の層が、透明な耐熱樹脂をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の調理器用トッププレート。
【請求項7】
前記第1の層を直接視たときと前記ガラス基板を介して前記第1の層を視たときとのL
*a
*b
*表色系における色差ΔE2が、2以上、10以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の調理器用トッププレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理器用トッププレートに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁気調理器、ラジアントヒーター調理器、ガス調理器などの調理器のトッププレートには、低い熱膨張係数を有する結晶化ガラスなどからなるガラス基板が用いられている。このようなガラス基板の表面には、一般に、意匠性を向上させたり調理器内部の構造を隠蔽したりすることを目的として、装飾膜や遮光膜が設けられている。
【0003】
下記の特許文献1には、ガラス基板と、ガラス基板の裏面に設けられた第1の塗膜と、ガラス基板の調理面に設けられた第2の塗膜とを備える、調理器用トッププレートが開示されている。特許文献1では、ガラス基板の裏面に設けられる第1の塗膜が、遮光膜である。他方、ガラス基板の調理面に設けられる第2の塗膜が、模様膜である。また、特許文献1では、第1の塗膜及び第2の塗膜が、顔料を含み、該顔料が同色顔料からなることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、トッププレートに用いられる透明な結晶化ガラスは、一般的なガラスと比較して黄色味の強いものが多い。そのため、例えば、補色の青の塗装を行うことにより、黄色味を消す方法が考えられるが、青の塗装をするとトッププレートの色合いが暗くなる場合が多い。従って、明るくかつ淡い色を呈するトッププレートを得ることは困難である。もっとも、調理面に明るくかつ淡い色を呈する塗装をする方法も考えられるが、この場合、ガラス基板の調理面における光沢感やガラスの質感が損なわれるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、調理面における光沢感を維持しつつ、明るくかつ淡い色を呈することを可能とする、調理器用トッププレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る調理器用トッププレートは、調理器具が載せられる調理面及び該調理面とは反対側の裏面を有する、ガラス基板と、前記ガラス基板の前記裏面上に配置されており、第1の着色顔料を含む、第1の層と、前記ガラス基板の前記裏面上に配置されており、第2の着色顔料を含む、第2の層と、を備え、前記第1の層は、前記ガラス基板と前記第2の層との間に、かつ前記ガラス基板の前記裏面上の一部に設けられており、前記第1の層及び前記第2の層のL*a*b*表色系における色差ΔE1が、10以上、25以下であることを特徴としている。
【0008】
本発明においては、前記ガラス基板の裏面全体に対する第1の層形成部分の面積割合が、15%以上、70%以下であることが好ましい。
【0009】
本発明においては、前記ガラス基板の前記裏面上における第1の層形成部分及び第1の層非形成部分により、パターン模様が構成されていることが好ましい。
【0010】
本発明においては、前記パターン模様が、ドット、格子、又はライン状の模様であることが好ましい。
【0011】
本発明においては、前記第1の層が、透明な耐熱樹脂をさらに含むことが好ましい。
【0012】
本発明においては、前記第2の層が、透明な耐熱樹脂をさらに含むことが好ましい。
【0013】
本発明においては、前記第1の層を直接視たときと前記ガラス基板を介して前記第1の層を視たときとのL*a*b*表色系における色差ΔE2が、2以上、10以下であることが好ましい。
【0014】
本発明においては、L*a*b*表色系において、前記第1の層のL*値が、前記第2の層のL*値よりも大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、調理面における光沢感やガラスの質感を維持しつつ、明るくかつ淡い色を呈することを可能とする、調理器用トッププレートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的正面断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る調理器用トッププレートにおける第1の層を示す模式的平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る調理器用トッププレートにおいて、ガラス基板の裏面上に第1の層が設けられている状態を示す模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0018】
(調理器用トッププレート)
図1は、本発明の一実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的正面断面図である。
図1に示すように、調理器用トッププレート1(以下、「調理器用トッププレート1」を、単に「トッププレート1」とする)は、ガラス基板2を備える。ガラス基板2は、一方側の主面である調理面2aと、他方側の主面である裏面2bとを有する。調理面2aは、鍋やフライパンなどの調理器具が載せられる側の面である。裏面2bは、調理器の内部側において加熱装置と対向する面である。従って、調理面2a及び裏面2bは、表裏の関係にある。
【0019】
ガラス基板2は、波長450nm~700nmにおける少なくとも一部の光を透過する。ガラス基板2は、有色透明であってもよいが、トッププレート1の美観性をより一層高める観点から、無色透明であることが好ましい。なお、本明細書において、「透明」であるとは、波長450nm~700nmにおける可視波長域の光透過率が70%以上であることをいう。
【0020】
トッププレート1では、加熱及び冷却が繰り返しなされる。そのため、ガラス基板2は、高い耐熱性及び低い熱膨張係数を有するものであることが好ましい。具体的には、ガラス基板2の軟化温度は、700℃以上であることが好ましく、750℃以上であることがより好ましい。また、ガラス基板2の30℃~750℃における平均線熱膨張係数は、-10×10-7/℃~+60×10-7/℃の範囲内であることが好ましく、-10×10-7/℃~+50×10-7/℃の範囲内であることがより好ましく、-10×10-7/℃~+40×10-7/℃の範囲内であることがさらに好ましい。従って、ガラス基板2は、ガラス転移温度が高く、低膨張なガラスや、低膨張の結晶化ガラスからなるものであることが好ましい。低膨張の結晶化ガラスの具体例としては、例えば、日本電気硝子社製の「N-0」が挙げられる。なお、ガラス基板2としては、ホウケイ酸ガラスなどを用いてもよい。
【0021】
ガラス基板2の厚みは、特に限定されない。ガラス基板2の厚みは、光透過率などに応じて適宜設定することができる。ガラス基板2の厚みは、例えば、2mm~6mm程度とすることができる。
【0022】
ガラス基板2の調理面2a上には、装飾層などの層が設けられていない。もっとも、ガラス基板2の調理面2a上に、装飾層などの層が設けられていてもよいが、光沢感やガラスの質感が低下するため、本実施形態のように装飾層などの層が設けられていないことが好ましい。この場合、調理面2aにおける光沢感やガラスの質感がより一層損なわれ難い。
【0023】
ガラス基板2の裏面2b上の一部には、第1の層3が設けられている。第1の層3は、第1の着色顔料を含んでいる。第1の層3は、パターン模様の塗膜である。
【0024】
より具体的には、ガラス基板2の裏面2b上に、第1の層3が設けられている第1の層形成部分5と、第1の層3が設けられていない第1の層非形成部分6とが存在している。
図2に平面図で示すように、この第1の層形成部分5及び第1の層非形成部分6により、水玉模様のドット状の塗膜が構成されている。
【0025】
第2の層4は、ガラス基板2の裏面2b上において、第1の層3を覆うように設けられている。第2の層4は、第2の着色顔料を含んでいる。第2の層4は、表示部が形成される部分以外の全面に隙間無く塗られる塗膜で、いわゆる遮光膜である。もっとも、第2の層4は、以下において説明するΔE1を満たす限りにおいて、特に限定されない。
【0026】
トッププレート1においては、第1の層3及び第2の層4の色差ΔE1が、10以上、25以下である。
【0027】
上記の色差ΔE1は、L*a*b*表色系における色差であり、下記式(1)から求めることができる。
【0028】
ΔE1=((Lα-Lβ)2+(aα-aβ)2+(bα-bβ)2)0.5 …式(1)
(Lα、aα、bαは、ガラス基板2の裏面2bの上に第1の層3のみを形成し、第1の層3側から色差計により測定したL*a*b*値である。Lβ、aβ、bβは、ガラス基板2の裏面2bの上に直接第2の層4のみを形成し、第2の層4側から色差計により測定したL*a*b*値である。)
【0029】
なお、L*は「明度指数」(L軸=0~100)、a*とb*は「クロマティクネク指数」(a軸=-60~+60、b軸=-60~+60)を意味する。
【0030】
トッププレート1では、第1の層形成部分5及び第1の層非形成部分6が設けられており、第1の層3及び第2の層4の色差ΔE1が、10以上、25以下であるため、結晶化ガラス特有の黄色味を抑制することができる。この理由は定かではないが、第1の層3及び第2の層4の組み合わせにより、目の錯覚を引き起こし、その結果結晶化ガラス特有の黄色味を抑制できるものと考えられる。また、目の錯覚により結晶化ガラス特有の黄色味を抑制することができるので、補色の青の塗装を施す必要もなく、明るくかつ淡い色を呈することができる。さらには、ガラス基板2の調理面2aに明るくかつ淡い色を呈する塗装を施す必要もないので、ガラス基板2の調理面2aにおける光沢感やガラスの質感も損なわれ難い。従って、調理面2aにおける光沢感やガラスの質感を維持しつつ、明るくかつ淡い色を呈するトッププレート1を提供することができる。なお、第1の層3及び第2の層4の色差ΔE1が12以上であることが好ましく、21以下であることが好ましい。
【0031】
本発明においては、第1の層3のLα値が、第2の層4のLβ値よりも大きいことが好ましい。この場合、調理面2a側から視たときの明るさをより一層明るくすることができる。
【0032】
第1の層3のLαは、70~80であることが好ましい。第1の層3のaαは、-4~2であることが好ましい。また、第1の層3のbαは、3~9であることが好ましい。Lα、aα、bαが、それぞれ、上記範囲内にある場合、より一層明るくかつ淡い色を呈するトッププレート1を提供することができる。
【0033】
第2の層4のLβは、55~65であることが好ましい。第2の層4のaβは、-4~2であることが好ましい。また、第2の層4のbβは、-2~4であることが好ましい。Lβ、aβ、bβが、それぞれ、上記範囲内にある場合、より一層明るくかつ淡い色を呈するトッププレート1を提供することができる。
【0034】
また、本発明においては、第1の層3を直接視たときと、ガラス基板2を介して第1の層3を視たときの色差ΔE2が、2以上であることが好ましく、10以下であることが好ましい。この場合、結晶化ガラス特有の黄色味をより一層抑制することができ、より一層明るくかつ淡い色を呈するトッププレート1を提供することができる。なお、色差ΔE2は、下記式(2)から求めることができる。
【0035】
ΔE2=((Lα-Lγ)2+(aα-aγ)2+(bα-bγ)2)0.5 …式(2)
(Lα、aα、bαは、ガラス基板2の裏面2bの上に第1の層3のみを形成し、第1の層3側から色差計により測定したL*a*b*値である。Lγ、aγ、bγは、ガラス基板2の裏面2bの上に第1の層3のみを形成し、ガラス基板2の調理面2a側から色差計により測定したL*a*b*値である。)
【0036】
図3は、本発明の一実施形態に係る調理器用トッププレートにおいて、ガラス基板の裏面上に第1の層が設けられている状態を示す模式的平面図である。本発明においては、ガラス基板2の裏面2bに対し垂直な方向から視たときの第1の層形成部分5の面積が、裏面2bの面積の好ましくは15%以上、より好ましくは30%以上、好ましくは70%以下、より好ましくは55%以下である。この場合、より一層明るくかつ淡い色を呈するトッププレート1を提供することができる。
【0037】
また、本実施形態では、
図3に示すように、ガラス基板2の裏面2bを16等分に区画分割したときに、16等分に分割された各区画における第1の層形成部分5の面積割合のばらつきを示す標準偏差σが、好ましくは5以下、より好ましくは1以下であり、最も好ましくは0.5以下である。この場合、ガラス基板2の裏面全体に均一に第1の層3が形成されるので、より一層明るくかつ淡い色を呈するトッププレート1を提供することができる。
【0038】
なお、本実施形態においては、第1の層形成部分5及び第1の層非形成部分6により略円形のドット状の塗膜が構成されていたが、第1の層形成部分5及び第1の層非形成部分6により他のパターン模様が形成されていてもよい。この場合、他のパターン模様としては、略矩形のドット、格子、幾何学、まだら、不規則、または直線又は波線のライン状の模様等が挙げられる。
【0039】
また、第1の層3のパターン模様の大きさは、第1の層3の平面形状が、略円形のドット状である場合、各ドットにおける直径が0.3~0.8mmの範囲内であることが好ましい。第1の層3の平面形状が、略矩形のドット状である場合、各ドットにおける一辺の長さが0.6~1.2mmの範囲内であることが好ましい。また、第1の層3の平面形状が、略円形又は略矩形のドット状である場合、隣り合うドット間の中心間距離が、0.6~1.2mmの範囲内であることが好ましい。この場合、より一層明るくかつ淡い色を呈するトッププレート1を提供することができる。
【0040】
また、ガラス基板2の裏面2bから見たときの第1の層3の平面形状が、格子またはライン状である場合、格子を構成するライン及びライン状模様におけるラインの幅が0.4~0.8mmの範囲内であることが好ましい。また、格子を構成するライン及びライン状模様間の距離が、0.4~0.8mmの範囲内であることが好ましい。この場合、より一層明るくかつ淡い色を呈するトッププレート1を提供することができる。その他の形状のものについては、これらと同様の効果が得られるような大きさにすればよい。
【0041】
本実施形態において、第1の層3は、透明な耐熱樹脂及び第1の着色顔料により構成されている。また、第2の層4は、透明な耐熱樹脂及び第2の着色顔料により構成されている。もっとも、第1の層3が、ガラスフリット等のガラス及び第1の着色顔料により構成されていてもよく、第2の層4が、ガラス及び第2の着色顔料により構成されていてもよい。また、第1の層3及び第2の層4を構成する材料の組み合わせも特に限定されない。
【0042】
第1の着色顔料及び第2の着色顔料に用いられる着色顔料は、有色の無機物である限りにおいて特に限定されない。着色顔料としては、例えば、TiO2粉末、ZrO2粉末若しくはZrSiO4粉末などの白色の顔料粉末、Coを含む青色の無機顔料粉末、Coを含む緑色の無機顔料粉末、Ti-Sb-Cr系若しくはTi-Ni系の黄色の無機顔料粉末、Co-Si系の赤色の無機顔料粉末、Feを含む茶色の無機顔料粉末、又はCuを含む黒色の無機顔料粉末などが挙げられる。
【0043】
Coを含む青色の無機顔料粉末の具体例としては、例えば、Co-Al系又はCo-Al-Ti系の無機顔料粉末が挙げられる。Co-Al系の無機顔料粉末の具体例としては、CoAl2O4粉末などが挙げられる。Co-Al-Ti系の無機顔料粉末の具体例としては、CoAl2O4-TiO2-Li2O粉末などが挙げられる。
【0044】
Coを含む緑色の無機顔料粉末の具体例としては、例えば、Co-Al-Cr系又はCo-Ni-Ti-Zn系の無機顔料粉末が挙げられる。Co-Al-Cr系の無機顔料粉末の具体例としては、Co(Al,Cr)2O4粉末などが挙げられる。Co-Ni-Ti-Zn系の無機顔料粉末の具体例としては、(Co,Ni,Zn)2TiO4粉末などが挙げられる。
【0045】
Feを含む茶色の無機顔料粉末の具体例としては、例えば、Fe-Zn系の無機顔料粉末が挙げられる。Fe-Zn系の無機顔料粉末の具体例としては、(Zn,Fe)Fe2O4粉末などが挙げられる。
【0046】
Cuを含む黒色の無機顔料粉末の具体例としては、例えば、Cu-Cr系の無機顔料粉末やCu-Fe系の無機顔料粉末が挙げられる。Cu-Cr系の無機顔料粉末の具体例としては、Cu(Cr,Mn)2O4粉末や、Cu-Cr-Mn粉末などが挙げられる。また、Cu-Fe系の無機顔料粉末の具体例としては、Cu-Fe-Mn粉末などが挙げられる。
【0047】
これらの着色顔料は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0048】
なお、第1の着色顔料及び第2の着色顔料は、異なる着色顔料であることが望ましい。
【0049】
第1の層3及び第2の層4に用いられる耐熱樹脂は、透明な樹脂であることが好ましい。特に、波長450nm~700nmにおける可視波長域の光透過率が80%以上であることが好ましい。第1の層3及び第2の層4に用いられる耐熱樹脂は、特に限定されず、例えば、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などを用いることができる。なかでも、シリコン原子に直接結合した官能基が、メチル基及びフェニル基のうち少なくとも一方であるシリコーン樹脂であることが好ましい。この場合、トッププレート1の耐熱性をより一層高めることができる。
【0050】
これらの耐熱樹脂は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。また、上記以外の他の樹脂を含んでいてもよい。
【0051】
なお、第1の層3及び第2の層4に用いられる耐熱樹脂は、生産性をより一層高める観点から同じ樹脂であることが望ましいが、異なる樹脂であってもよい。
【0052】
また、第1の層3及び第2の層4がガラスにより構成される場合、ガラス成分としては、例えば、ホウケイ酸塩系ガラス、アルカリ金属成分及びアルカリ土類金属成分のうちの少なくとも一方を含む珪酸塩系ガラス、亜鉛及びアルミニウムを含むリン酸塩系ガラス等を用いることができる。また、ガラスの形態としては、鱗片状、粉状等であることが好ましい。
【0053】
本実施形態において、第1の層3中に含まれる第1の着色顔料の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。第1の着色顔料の含有量が、上記下限値以上である場合、より一層明るくかつ淡い色を呈するトッププレート1を提供することができる。また、第1の着色顔料の含有量が上記上限値以下である場合、トッププレート1の耐熱性や耐衝撃性をより一層高めることができる。なお、第1の着色顔料の含有量は、第1の層3を構成する材料全体を100質量%としたときの含有量である。
【0054】
第2の層4中に含まれる第2の着色顔料の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。第2の着色顔料の含有量が、上記下限値以上である場合、より一層明るくかつ淡い色を呈するトッププレート1を提供することができる。また、第2の着色顔料の含有量が上記上限値以下である場合、トッププレート1の耐熱性や耐衝撃性をより一層高めることができる。なお、着色顔料の含有量は、第2の層4を構成する材料全体を100質量%としたときの含有量である。
【0055】
第1の層3及び第2の層4中における耐熱樹脂の含有量は、特に限定されないが、それぞれ、好ましくは65質量%以上、より好ましくは70質量%以上、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。耐熱樹脂の含有量が、上記下限値以上である場合、トッププレート1の耐熱性や耐衝撃性をより一層高めることができる。また、耐熱樹脂の含有量が上記上限値以下である場合、トッププレート1の機械的強度をより一層高めることができる。なお、耐熱樹脂の含有量は、第1の層3及び第2の層4を構成する材料全体をそれぞれ100質量%としたときの含有量である。
【0056】
第1の層3の厚みは、特に限定されない。第1の層3の厚みは、光透過率などに応じて適宜設定することができる。第1の層3の厚みは、例えば、5μm~15μm程度とすることができる。
【0057】
また、第2の層4の厚みも、特に限定されない。第2の層4の厚みは、光透過率などに応じて適宜設定することができる。第2の層4の厚みは、例えば、5μm~15μm程度とすることができる。
【0058】
(調理器用トッププレートの製造方法)
トッププレート1は、例えば、以下の製造方法により製造することができる。
【0059】
まず、透明な耐熱樹脂と、第1の着色顔料粉末と、溶剤とを含むペーストを用意する。用意したペーストをガラス基板2の裏面2b上に塗布し、乾燥させることにより第1の層3を形成する。
【0060】
次に、透明な耐熱樹脂と、第2の着色顔料粉末と、溶剤とを含むペーストを用意する。用意したペーストを第1の層3が形成されたガラス基板2の裏面2b上に塗布し、乾燥させることにより第2の層4を形成する。それによって、トッププレート1を製造することができる。
【0061】
ペーストの塗布方法としては、スクリーン印刷法やインクジェット法などの種々の印刷法が挙げられる。
【0062】
ペーストの塗布スピード及び粘度は、各層における着色顔料の含有量に応じて適宜設定することができる。例えば、各層における着色顔料の含有量が多い場合は、耐熱樹脂の粘度を低くし、耐熱樹脂の塗布スピードを遅くすることが好ましい。
【0063】
塗布したペーストの乾燥温度としては、例えば、50℃~100℃程度の温度とすることができる。乾燥時間としては、例えば、10分~1時間程度とすることができる。
【0064】
なお、第1の層3及び第2の層4が形成された積層体をさらに焼成することにより、トッププレート1を得てもよい。
【0065】
この場合、焼成温度は、特に限定されるものではないが、700℃以上であることが好ましく、800℃以上であることがより好ましい。また、焼成温度は、900℃以下であることが好ましく、850℃以下であることがより好ましい。
【0066】
以下、本発明について、実施例に基づいてさらに詳細を説明する。但し、以下の実施例は、単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
【0067】
(実施例1)
まず、透明な耐熱樹脂としてのシリコーン樹脂37.5質量%(樹脂固形分)と、光沢顔料(着色顔料)25質量%と、有機溶剤37.5質量%とを混合して、ペーストを作製した。次に、このペーストをガラス基板2としての透明結晶化ガラス板(日本電気硝子社製、商品名「N-0」、30℃~750℃における平均線熱膨張係数:0.5×10-7/℃、厚み:4mm)の裏面2bの上に、厚みが10μmとなるように、スクリーン印刷した。その後、90℃で1分間乾燥させることにより、水玉模様の第1の層3を形成した。
【0068】
次に、透明な耐熱樹脂としてのシリコーン樹脂36質量%(樹脂固形分)と、青色の着色顔料12質量%と、白色の着色顔料16質量%と、有機溶剤36質量%とを混合して、ペーストを作製した。次に、このペーストを第1の層3が形成されたガラス基板2の裏面2bの上に、厚みが10μmとなるように、スクリーン印刷した。その後、320℃で30分間乾燥(焼成)させることにより、第2の層4を形成し、調理器用トッププレート(トッププレート1)を作製した。
【0069】
なお、ガラス基板2の裏面2bに対する第1の層3及び第2の層4の面積割合はそれぞれ、42%および58%である。
【0070】
(実施例2)
まず、透明な耐熱樹脂としてのシリコーン樹脂37.5質量%(樹脂固形分)と、光沢顔料(着色顔料)25質量%と、有機溶剤37.5質量%とを混合して、ペーストを作製した。次に、このペーストをガラス基板2としての透明結晶化ガラス板(日本電気硝子社製、商品名「N-0」、30℃~750℃における平均線熱膨張係数:0.5×10-7/℃、厚み:4mm)の裏面2bの上に、厚みが10μmとなるように、スクリーン印刷した。その後、90℃で1分間乾燥させることにより、水玉模様の第1の層3を形成した。
【0071】
次に、透明な耐熱樹脂としてのシリコーン樹脂36質量%(樹脂固形分)と、青色の着色顔料21質量%と、白色の着色顔料7質量%と、有機溶剤36質量%とを混合して、ペーストを作製した。次に、このペーストを第1の層3が形成されたガラス基板2の裏面2bの上に、厚みが10μmとなるように、スクリーン印刷した。その後、320℃で30分間乾燥(焼成)させることにより、第2の層4を形成し、調理器用トッププレート(トッププレート1)を作製した。
【0072】
なお、ガラス基板2の裏面2bに対する第1の層3及び第2の層4の面積割合はそれぞれ、42%および58%である。
【0073】
(実施例3)
まず、透明な耐熱樹脂としてのシリコーン樹脂37.5質量%(樹脂固形分)と、光沢顔料(着色顔料)25質量%と、有機溶剤37.5質量%とを混合して、ペーストを作製した。次に、このペーストをガラス基板2としての透明結晶化ガラス板(日本電気硝子社製、商品名「N-0」、30℃~750℃における平均線熱膨張係数:0.5×10-7/℃、厚み:4mm)の裏面2bの上に、厚みが10μmとなるように、スクリーン印刷した。その後、90℃で1分間乾燥させることにより、水玉模様の第1の層3を形成した。
【0074】
次に、透明な耐熱樹脂としてのシリコーン樹脂36質量%(樹脂固形分)と、青色の着色顔料9質量%と、白色の着色顔料19質量%と、有機溶剤36質量%とを混合して、ペーストを作製した。次に、このペーストを第1の層3が形成されたガラス基板2の裏面2bの上に、厚みが10μmとなるように、スクリーン印刷した。その後、320℃で30分間乾燥(焼成)させることにより、第2の層4を形成し、調理器用トッププレート(トッププレート1)を作製した。
【0075】
なお、ガラス基板2の裏面2bに対する第1の層3及び第2の層4の面積割合はそれぞれ、42%および58%である。
【0076】
(比較例1)
まず、透明な耐熱樹脂としてのシリコーン樹脂37.5質量%(樹脂固形分)と、光沢顔料25質量%と、有機溶剤37.5質量%とを混合して、ペーストを作製した。次に、このペーストをガラス基板2としての透明結晶化ガラス板(日本電気硝子社製、商品名「N-0」、30℃~750℃における平均線熱膨張係数:0.5×10-7/℃、厚み:4mm)の裏面2bの上に、厚みが10μmとなるように、スクリーン印刷した。その後、90℃で1分間乾燥させることにより、水玉模様の第1の層3を形成した。
【0077】
次に、透明な耐熱樹脂としてのシリコーン樹脂36質量%(樹脂固形分)と、青色の着色顔料6質量%と、白色の着色顔料22質量%と、有機溶剤36質量%とを混合して、ペーストを作製した。次に、このペーストを第1の層3が形成されたガラス基板2の裏面2bの上に、厚みが10μmとなるように、スクリーン印刷した。その後、320℃で30分間乾燥させることにより、第2の層4を形成し、調理器用トッププレートを作製した。
【0078】
なお、ガラス基板2の裏面2bに対する第1の層3及び第2の層4の面積割合はそれぞれ、72%および28%である。
【0079】
(比較例2)
まず、透明な耐熱樹脂としてのシリコーン樹脂37.5質量%(樹脂固形分)と、光沢顔料(着色顔料)25質量%と、有機溶剤37.5質量%とを混合して、ペーストを作製した。次に、このペーストをガラス基板2としての透明結晶化ガラス板(日本電気硝子社製、商品名「N-0」、30℃~750℃における平均線熱膨張係数:0.5×10-7/℃、厚み:4mm)の裏面2bの上に、厚みが10μmとなるように、スクリーン印刷した。その後、90℃で1分間乾燥させることにより、水玉模様の第1の層3を形成した。
【0080】
次に、透明な耐熱樹脂としてのシリコーン樹脂36質量%(樹脂固形分)と、青色の着色顔料28質量%と、白色の着色顔料0質量%と、有機溶剤36質量%とを混合して、ペーストを作製した。次に、このペーストを第1の層3が形成されたガラス基板2の裏面2bの上に、厚みが10μmとなるように、スクリーン印刷した。その後、320℃で30分間乾燥(焼成)させることにより、第2の層4を形成し、調理器用トッププレートを作製した。
【0081】
なお、ガラス基板2の裏面2bに対する第1の層3及び第2の層4の面積割合はそれぞれ、42%および58%である。
【0082】
[評価方法]
(L*a*b*表色系)
色差計(コニカミノルタ株式会社製、「CM600d」)を用いて、第1の層3及び第2の層4のL*a*b*表色系における色差ΔE1を求めた。
【0083】
ΔE1=((Lα-Lβ)2+(aα-aβ)2+(bα-bβ)2)0.5 …式(1)
(Lα、aα、bαは、ガラス基板2の裏面2bの上に第1の層3を形成し、第1の層3側から色差計により測定したL*a*b*値である。Lβ、aβ、bβは、ガラス基板2の裏面2bの上に直接第2の層4を形成し、第2の層4側から色差計により測定したL*a*b*値である。)
【0084】
結果を下記の表1に示す。
【0085】
【0086】
実施例1~3のトッププレート1では、目視により、調理面2aにおける光沢感やガラスの質感を維持しつつ、明るくかつ淡い色を呈することが確認された。一方、比較例1,2のトッププレートでは、目視により、黄色味が強く、明るくかつ淡い色を呈していないことが確認された。
【符号の説明】
【0087】
1…調理器用トッププレート
2…ガラス基板
2a…調理面
2b…裏面
3…第1の層
4…第2の層
5…第1の層形成部分
6…第1の層非形成部分