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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】グラフェンの製造
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/19 20170101AFI20230825BHJP
【FI】
C01B32/19
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019535187
(86)(22)【出願日】2017-08-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 US2017049637
(87)【国際公開番号】W WO2018052724
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】15/265,385
(32)【優先日】2016-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598085065
【氏名又は名称】アルファ・アセンブリー・ソリューションズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALPHA ASSEMBLY SOLUTIONS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ニルマルヤ・クマル・チャキ
(72)【発明者】
【氏名】バルン・ダス
(72)【発明者】
【氏名】スピリヤ・デヴァラジャン
(72)【発明者】
【氏名】シウリ・サルカール
(72)【発明者】
【氏名】ラフール・ラウト
(72)【発明者】
【氏名】バワ・シン
(72)【発明者】
【氏名】ランジット・パンサー
(72)【発明者】
【氏名】オスカー・カセレフ
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0001089(US,A1)
【文献】特開2014-001126(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103991862(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第02878709(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第104925791(CN,A)
【文献】特表2014-513659(JP,A)
【文献】特表2015-507320(JP,A)
【文献】HUANG, Xuhua et al.,Low defect concentration few-layer graphene using a two-step electrochemical exfoliation,Nanotechnology,2021年03月13日,Vol.26/No.10,pp.1-6
【文献】YANG, Sheng et al.,Organic Radical-Assisted Electrochemical Exfoliation for the Scalable Production of High-Quality Graphene,Journal of The American Chemical Society,2015年10月13日,Vol.137,pp.13927-13932
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/19,32/225
C25B 1/00
B82Y 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高品質グラフェンを作製する方法であって、
a.下記:
i.静的モードで作用する1つ以上の作用電極と;
ii.静的モードで作用する1つ以上の対向電極と;
iii.異なるサイズの複数の剥離イオンの組合せを含む水系電解質と、
を含む電気化学セルを提供する工程と;
b.前記作用電極を剥離し、高品質のグラフェンを製造する工程と、
を含み、
前記作用電極が黒鉛のアノードであり、
前記対向電極がチタンのカソードであり、
複数の前記剥離イオンの組合せが、NaNO 及び(NH SO であり、
溶媒が水で、電解質が前記NaNO である電解液中で10Vの静電的ポテンシャルを30分印加した後、溶媒が水で、電解質が前記(NH SO である電解液中で10Vの静電的ポテンシャルを2.30時間印加し
前記剥離イオンが、水性媒体中で塩を使用することによって生成され、
前記高品質のグラフェンが、目的の用途のために設計された特性を有することを特徴とする高品質グラフェンを作製する方法。
【請求項2】
前記水系電解質が、100℃未満の温度を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水系電解質が、90℃未満の温度を有する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記水系電解質が、環境温度である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記作用電極が、シート、ロッド、ペレット、又はこれらの組合せを形成するために共に圧縮した炭素粉末又はフレークから製造される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記作用電極が、電気化学的処理、熱的処理、超音波処理、プラズマ処理、空気又は真空処理、及びこれらの組合せによって前処理される請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記グラフェンの設計された特性が、サイズ、アスペクト比、エッジ精細度(edge definition)、表面官能性化、層の数、及びこれらの組合せを含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記グラフェンが、電解セルから連続的に除かれ、連続的に製造されることができる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
電極が、分離されたメンブレンエンクロージャ又はバッグの中に位置される請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、高品質グラフェンの製造方法に関する。前記方法は、設計されたグラフェン粒子及びフレークを製造するのに特に適している。
【背景技術】
【0002】
グラフェンは、学術的な関心が高いためだけでなく、潜在的な用途を考慮して研究されている最もエキサイティングな材料の1つである。グラフェンは、0-D:バッキーボール、1-D:カーボンナノチューブ、及び3-D:黒鉛を含む全ての黒鉛形態の「源」である。カーボンナノチューブは、グラフェンシートの圧延によって形成されているが、カーボンナノチューブとグラフェンの電子ラマンスペクトルは、大きく異なる。グラフェンは、導電性、熱伝導性、及び機械的強度など、カーボンナノチューブのものとは著しく異なる物理的特性を示す。グラフェンは、室温における異常量子ホール効果、電荷キャリアのバリスティック伝導を伴う二極性の電界効果、整調可能なバンドギャップ、及び高弾性などの魅力的な特性を有する。高品質のグラフェンを製造するための、環境的に無害であり、且つ好適な大量又は「バルク」製造方法の欠如は、商業用途における使用のためのグラフェンを制限する。
【0003】
従来、グラフェンは、単層の二次元的材料であると定義されるが、2層グラフェンは、2超10未満の層を有するが、「数層グラフェン(FLG)」とも考えられる。FLGは、多くの場合、黒鉛層の2二元的な積み重ねとして視覚化され、10層を超えると黒鉛のように挙動し始める。グラフェンの物理的性質の大部分の研究は、マイクロメカニカル的引き剥がし(micro-mechanical cleavage)又は化学気相成長(CVD)のいずれかによって得られた単層の純粋なグラフェンを用いて行われる。しかしながら、これらの方法を用いてバルクグラフェンを製造することは、依然として困難な課題である。
【0004】
グラフェンの幾つかの非限定的用途は、ポリマー複合物、相互接続用途、透明伝導体、環境発電、及び貯蔵用途における活性成分であることを含む。そのような用途の非限定的な例としては、電池、スーパーキャパシタ、太陽電池、センサ、電極触媒、電界放出電極、トランジスタ、人工筋肉、エレクトロルミネセンス電極、固相マイクロ抽出材料、浄水吸着剤、有機光起電力部品、及び電気機械的アクチュエータが挙げられる。
【0005】
グラフェン型材料のバルク生産に広く用いられている方法の1つは、「Hummer’s」法又は「改変したHummer’s」法として知られる。このプロセスは、酸化グラフェンとして知られる、大量に親水性の官能化グラフェン材料を生成する。Hummer’s法は、黒鉛粉末の剥離を達成するために積極的な酸化工程の使用に依存する。生じたフレークは、非常に欠陥のあるグラフェン又は酸化グラフェンのいずれかであり、更に加工し、酸化グラフェンからグラフェンを製造する必要がある。酸化グラフェンは、導電性であるグラフェンとは異なり、電気絶縁材料である。酸化グラフェンは、大多数の用途には適していない。典型的には、高絶縁体相酸化グラフェンからグラフェンのπ電子を少なくとも部分的に回復させるためには、熱的又は化学的還元が必要である。Hummer’s法を採用する更なる制限及び負の副作用は、この方法がかなり大量の酸性廃棄物をもたらすことである。
【0006】
過去数年間に亘って、高品質のグラフェンをバルク生産するための、環境的に安全でスケーラブルな合成方法を開発するための努力があった。方法としては、溶媒及び/又は界面活性剤支援液相剥離、電気化学的膨張、及び黒鉛のインターカレーションされた化合物の形成が挙げられる。黒鉛シート/ブロック製造の電気化学的剥離方法は、容易に、速く、そして環境的に優しく、高品質のグラフェンをバルク生産する方法であるので、科学業界において大きな将来性を示している。
【0007】
よく知られている電気化学的剥離プロセスには、「アノードプロセス」と「カソードプロセス」の2種類がある。アノードプロセスは、最終生成物の収率の点で最も効率的であるように思われるが、剥離プロセスの過程間で生じるグラフェン材料の相当量の欠陥/官能性化(functionalization)を生じる。一方、カソードプロセスでは、はるかに高品質のグラフェン材料をもたらすが、大量生産のためには収率を大幅に改善させる必要がある。
【0008】
アノードプロセスでは、高純度の黒鉛シート/ブロック/ロッド(rod)が作用電極(アノード)として使用され、金属又は伝導体がカウンタカソード(カソード)として使用される(図14)。アノードプロセスは、イオン性液体;水性酸(例えば、HSO又はHPO);又はSO 2-又はNO などの好適な剥離イオンを含む水性媒体など、様々な媒体で起こる。水性アノードの電気化学的剥離プロセス中に、分子状Oがアノードで発生し、その結果生じるグラフェンフレークに欠陥を生成する。次に、グラフェン材料の品質に影響を及ぼす欠陥が、最終的な目的用途の品質に影響を及ぼす。アノードプロセスでは、SO 2-剥離イオンの直径は、黒鉛層間の層間間隔と対応し、それによってより効率的な剥離をもたらす。
【0009】
カソードプロセスでは、高純度の黒鉛シート/ブロック/ロッドが作用電極(カソード)として使用され、金属又は他の伝導体が対向電極(アノード)として使用される(図14)。このプロセスは、プロピレンカーボネート電解質中LiClO、DMSO系電解質中トリエチルアンモニウム及びLiイオン、又はDMSO、NMP、又はこれらの混合物中、LiOH又はLiClなどの溶融塩の混合物中など、様々な媒体で起こる。他の塩及び混合物組合せも用いられることができる。DMSO中、KCl、LiCl、及びEtNHClのモル比がそれぞれ1:2:1である溶融塩の混合物は、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる特許文献1によって教示される。DMSO、NMP、又はそれらの混合物中のイオン含有トリ/テトラアルキルアンモニウムは、グラフェン製造に効率的な電解質である。
【0010】
電気化学的剥離プロセスは、以下の2つの工程に分けられる。最初に、静電相互作用による黒鉛の層間に好適なイオンのインターカレーションがあり、次に、様々なガスを発生させ、電気化学的バイアス条件下で膨潤した/拡張したバルク黒鉛から数層のグラフェンフレークの製造をもたらす第2の工程がある。このプロセスが、高収率でありながら、より環境に優しく、大規模製造に適することができるように、この方法を改善する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許出願公開第2015/0027900A1号明細書(Dryfe等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、電気化学的グラフェン製造のための改良された方法を提供することである。
【0013】
本発明の目的は、以前の方法よりも欠陥の少ない、より高品質のグラフェンを提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、設計されたグラフェン製品を可能にすることである。
【0015】
本発明の他の目的は、環境に優しいグラフェンの製造方法を提供することである。
【0016】
本発明の更に別の目的は、グラフェン製造方法においてより少ない流出物を提供することである。
【0017】
本発明の更なる目的は、電気化学的グラフェン製造方法において、有害ではない流出物、消耗品、及び化学物質を提供することである。
【0018】
本発明の他の目的は、スケーラビリティと大量生産能力を可能にすることである。
【0019】
本発明の更に別の目的は、高品質のグラフェンのプロセスモニタリング、自動化、及び連続的製造を可能にすることである。
【0020】
本発明の更に別の目的は、高品質のグラフェンを製造する低コストの方法を提供することである。
【0021】
本発明の更に別の目的は、高品質のグラフェンの寸法を仕立てる(tailor)方法を提供することである。
【0022】
そのためにも、1つの実施形態において、本発明は、一般に、高品質グラフェンを作製する方法に関し、前記方法は、
a.下記:
i.1つ以上の作用電極と;
ii.1つ以上の対向電極と;
iii.1つ以上の剥離イオンを含む水系電解質と、
を含む電気化学セルを提供する工程と;
b.前記作用電極を剥離し、高品質のグラフェンを製造する工程と、
を含み、
前記高品質のグラフェンが、目的の用途のために設計された特性を有する。
【0023】
他の好ましい実施形態においては、本発明は、一般に、グラフェンフレークを作製する電気化学セルに関し、前記電気化学セルは、
a.グラフェンを製造する作用電極と;
b.対向電極と;
c.1つ以上の剥離イオンを含む水系電解質と、
を含み、
大量で高品質のグラフェンが製造される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施例1~9の比較粉末X線回析(PXRD)パターン(X軸:2θ及びY軸:強度)を示す。
図2図2は、実施例1~9の比較ラマンスペクトル(X軸:ラマンシフト及びY軸:強度)を示す。全てのラマンスペクトルは、633nmHe-Neレーザーで記録した。
図3図3は、実施例1~9の空気中の比較熱重量分析(TGA)曲線を示す。
図4図4は、実施例1~3及び実施例5~9の電界放出型走査電子顕微鏡(FESEM)画像を示す。フレーク形態は、これら全ての画像から明らかであった。
図5図5は、実施例6及び実施例10~12の空気中の比較TGA曲線を示す。
図6図6は、実施例6及び実施例10~12の比較ラマンスペクトル(X軸:ラマンシフト及びY軸:強度)を示す。全てのラマンスペクトルは、633nmHe-Neレーザーで記録した。
図7図7は、実施例5、6、8、9、16、及び17の空気中の比較TGA曲線を示す。
図8図8は、実施例6、18、及び19の空気中の比較TGA曲線を示す。
図9図9は、実施例6、18、及び19の比較ラマンスペクトル(X軸:ラマンシフト及びY軸:強度)を示す。全てのラマンスペクトルは、633nmHe-Neレーザーで記録した。
図10図10は、実施例5、20、及び21の比較ラマンスペクトル(X軸:ラマンシフト及びY軸:強度)を示す。全てのラマンスペクトルは、633nmHe-Neレーザーで記録した。
図11図11は、実施例5及び21の比較PXRDパターン(X軸:2θ及びY軸:強度)を示す。
図12図12は、実施例5、20、及び21の空気中の比較TGA曲線を示す。
図13図13は、実施例5及び22の空気中の比較TGA曲線、及び実施例22の特徴的なラマンスペクトルを示す。
図14図14は、実施例5、6、8、及び9に使用された代表的な電気化学的構成を示す。
図15A図15Aは、1つの剥離イオンを用いてグラフェンフレークを製造するための有効な機構的経路を示す。
図15B図15Bは、更に細いもの(much thinner)を製造するための有効な機構的経路を示す。
図16図16は、剥離プロセス中の電極(アノード及びカソード)の異なる配置、即ち平行(A)、同軸(B)、及び交互の櫛状(C)の様式を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、黒鉛の電気化学的剥離(アノード的及びカソード的)を含む、シンプルで、環境に優しいスケーラブルな製造方法を開示する。複数の剥離イオンを用いて、高品質のグラフェン材料を製造することができ、それによって目的の用途のための最終フレークのエンジニアリングを可能にする。設計されることができる特性としては、サイズ、アスペクト比、エッジ精細度(edge definition)、表面官能性化、及び層の数などがある。
【0026】
本発明では、剥離イオンの組合せが使用され、グラフェン材料の動力学及び特徴を仕立てることのいずれかにおいてもより良好な制御を可能にする(図15A及び15B)。例えば、種々のサイズのイオンの混合物の利用は、より小さなイオンがより大きなイオンの剥離をより効率的に促進するような状況を生じさせるであろう。これにより、グラフェンの寸法及び全プロセスの収率の制御が可能となる。
【0027】
以前の方法は全て、一般に、単一種の剥離イオンに焦点を当てていた。複数の剥離イオンを用いる本アプローチは、目的の用途のための最終グラフェンフレークのエンジニアリングを可能にする。この方法の特別な強みは、その良性な性質であり、最終生成物の欠陥が少なくなる。これは、腐食性や攻撃性が低い反応媒体を用いることによるものである。
【0028】
対照的に、広く使われているプロセス、即ちHummer’s法は、剥離を達成するために積極的な酸化工程の使用に依存する。生じたフレークは、非常に欠陥のあるグラフェン又は酸化グラフェンのいずれかであり、更に加工し、酸化グラフェンからグラフェンを製造する必要がある。更に、Hummer’s法は、ここに提示された方法よりもはるかに小さいフレークを製造する。Hummer’s法の別の主要な制限であって、多くの場合障害となるものとしては、結果として生じるかなり大量の酸性廃棄物である。本方法の主要な利点は、酸を使用しないことである。更に、本発明で用いられる反応媒体は、はるかに少量であることである。
【0029】
本発明の方法は、以前の方法と比較して、はるかに少ない欠陥及びはるかに少ない酸化ではるかに大きいグラフェンフレークをもたらす。
【0030】
本発明の他の重要な利点は、それが連続的であり、自動化に適していることができることである。この特徴は、その後の処理工程が追加されることを可能にし、それによって目標とする最終用途のための設計された粒子の製造を可能にする。
【0031】
このアプローチの重要な特徴は、水性媒体中で適切な塩を使用することによって剥離イオンを生成することである。本発明は、より穏やかな(攻撃的でない)媒体をもたらす。それは、環境温度で実施されることができる電気化学的プロセスである。これらの特徴により、全体的な低コストと環境に優しいプロセスをもたらす。
【0032】
本方法は、例えば、イオン性液体、酸性媒体、及び溶融金属塩を用いる従来技術に記載されている他の方法を超える顕著な利点を有する。本方法は、水性媒体、又は酸性媒体、又はそれらの組合せのいずれにおいても実施されることができる。
【0033】
本発明のアプローチの第2の重要な特徴は、同じプロセスにおける複数の剥離イオンの使用である。以前に記載された方法は、一般に、単一種の剥離イオンに焦点を当てていた。複数の剥離イオンを使用する本方法は、目的の用途のための最終フレークのエンジニアリングを可能にする。この方法を使用する際に、グラフェンフレークの寸法(厚み、横寸法)及び剥離プロセスの動力学を制御するために、異なるサイズの剥離イオンを用いることが可能になる。剥離イオンの組合せを用いた結果は、驚くべきことであり、予想外のことであった。
【0034】
本方法の第3の重要な特徴は、剥離イオン混合物の比率を変えることである。これにより、剥離プロセスの動力学を制御することが可能になる。
【0035】
発明者らのアプローチの第4の重要な特徴は、特定の特性又は一連の特性を設計するためのプロセスの一部として、極性を変更する可能性である。この特徴は、プロセス全体に相当な柔軟性を提供する。
【0036】
この方法の他の重要な特徴は、電気化学的プロセスのためにデューティサイクルを変えることができることである。これは、本方法を最適にすること、並びに目的の用途のためのグラフェン粒子及びフレークの属性及び性質を設計することができることへの他の秘訣である。
【0037】
両方の電極が炭素材料から作製される場合、正から負へ、又はその逆に交互に電極の極性を変えることによって、パルスモードで電位が印加されることができる。デューティーサイクル(電極の極性を変える)は、特定の溶媒及び電解質混合物において、選択又は最適化されることができる。更に、両方の炭素電極のこの構成は、極性が固定され、変化しない静的モードで、用いられることができる。アノード-カソード対は、独立した回路として構成されることができる、又は直列又は並列構成で接続されることができる。
【0038】
しかしながら、複数の剥離イオンの使用、これらのイオン混合物の比率、及び柔軟なデューティサイクル、及び極性の変化もまた、溶融液塩、酸、及び溶媒媒体を用いる他のアプローチにおいて有益に使用され得ることが強調される。この方法は、目標とする最終用途のためのグラフェン粒子及びフレークを更に強化又は改善するための柔軟な複数の工程の使用に特によく適している。
【0039】
グラフェンフレークを製造するための電気化学セルは、グラフェン製造作用電極と、電解質含有溶媒中で安定である不活性電極である対向電極と呼ばれる他の電極とを含む。
【0040】
大量生産のための電気化学セルに、複数の作用電極及び対向電極を取り付けることができ、直列又は並列様式に接続されることができる。更に、この多数のカソード-アノード構成は、独立した回路であることができる。更に、対向電極又は作用電極の位置は、平行、同軸、又は交互の櫛状の様式であることができる。
【0041】
固定されたデューティサイクル後に、静的(単独で正又は単独で負)、電位の掃引、又は正から負へ、又はその逆に電極の極性を交互に変更するパルスモードにおいて、電位を供給する電気化学的デバイス。
【0042】
電気化学セルには、溶媒を冷却又は加熱するための外部冷却/加熱ジャケットが追加装備される。更に、同じ効果(加熱又は冷却)を達成するために、ホットプレート又はマイクロ波システムなどの他の何らかの加熱デバイスが用いられることができる。
【0043】
グラフェンフレーク又は粒子を製造するために用いられる作用電極は、熱分解黒鉛、天然黒鉛、合成黒鉛、インターカレーションされた炭素材料、炭素繊維、炭素フレーク、炭素プレートレット、炭素粒子、又は使用された加工又は製造された黒鉛シートから製造される。更に、作用電極は、シート、ロッド、又はペレットなどを形成するために共に圧縮した炭素粉末又はフレークから製造されることができる。
【0044】
対向電極は、電解質含有溶媒中で安定である不活性伝導性金属性又は非金属性電極である。対向電極は、白金、チタン、高品質スチール、アルミニウムなどの金属から、又は黒鉛又はガラス状炭素などの非金属伝導体から作製されることができる。
【0045】
この方法は、前処理された黒鉛又は炭素電極を用いて、目的とする最終用途のためのグラフェン粒子及びフレークを更に強化又は改善するための柔軟な複数の工程の使用に特によく適している。溶媒/電解質/酸/塩基及び無機化合物の好適な選択において、又は空気中若しくは真空中で、電気化学的処理、熱的処理、超音波処理、又はプラズマ処理によって、電極は、化学的に前処理されることができる。
【0046】
個々のセル設計のために、両方の電極が炭素系である電気化学的グラフェン製造構成を用いることができる。これらの作用電極及び対向電極はいずれも、任意の数の炭素材料から作製されることができる。好適な炭素材料の例は、熱分解黒鉛、天然黒鉛、合成黒鉛、インターカレーションされた炭素材料、炭素繊維、炭素フレーク、炭素プレートレット、炭素粒子、又は製造された黒鉛シートなどの炭素又は黒鉛系材料である。更に、作用電極は、シート、ロッド、又はペレットなどを形成するために共に圧縮した炭素粉末又はフレークから製造されることができる。
【0047】
両方の電極が炭素材料から製造される場合、電極の極性を正から負へ、又はその逆に交互に変えるパルスモードで、電位が印加されることができる。デューティーサイクル(電極の極性を変える)は、特定の溶媒及び電解質混合物において、選択又は最適化されることができる。更に、両方の炭素電極のこの構成は、極性が固定され、変化しない静的モードで用いられることができる。
【0048】
交番的極性の利点は、より高いグラフェン製造率であり、一方又は両方の電極が洗浄又は調整されることも可能にし、それによって優れたプロセスを提供する。この構成は、より高い収率と共に、より一貫性のある、より高品質のグラフェンを製造する。印加される電圧範囲は、0.01~200V、より好ましくは1~50V、最も好ましくは1~30Vである。
【0049】
電解液の温度は、100℃未満、より好ましくは90℃未満、最も好ましくは85℃未満である。
【0050】
この方法は、連続モード又はバッチモードで操作されることができる。電位は、プロセス期間中の一定電圧レベル、一定電圧レベルへの電位ランプ(ramp)、2つの電圧レベル間の電位の掃引、種々のデューティサイクルを有する交番的モード、又は上記の任意の組合せなど、幾つかの方法で印加されることができる。
【0051】
電気化学セル中の電解質混合物は、水溶液、有機溶媒混合物、又は有機溶媒と電解質を含有する水溶液との混合物であることができる。この電解質混合物は、様々な比率で様々なサイズのカチオン及びアニオンを有することができる。カチオンの例としては、Na、K、Li、NR (R=単独で水素、又は単独で有機部分、又は水素及び有機部分の混合物)、又はそれらの組合せが挙げられる。アニオンの例としては、Cl、OH、NO 、PO 3-、ClO 、又はそれらの混合物など、様々なサイズの他のアニオンを伴う硫酸塩が挙げられる。電解質溶液は、ラジカルスカベンジャー又はin-situのラジカル発生化学物質(例えば、(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシ又は(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシダニル、及び同様の材料)を含むこともでき、グラフェンの品質の向上と維持に重要な役割を果たすことができる。
【0052】
グラフェンフレークは、濾過、遠心分離、又はデカンテーションを用いて電気化学的バスから分離される。連続的な方法で経時的又は連続的な除去によって、電気化学的バスの頂部又は下部表面からスラリー中のグラフェンフレークを分離することは、連続的な製造プロセスにおいて、本方法を特に好適にする。
【0053】
電気化学的プロセスの間、グラフェンは、一般に、反応媒体の頂部に浮かぶ。これは偶然であり、製造されているグラフェンを反応媒体の頂部から次のタンクへと移すことを可能にするので非常に有用な特徴であり、連続的なフロープロセスを好適にする。
【0054】
バッチプロセスにおけるグラフェンフレークの製造において、電解質透過膜で炭素電極を固定する、又はセルロース透析膜、ポリカーボネート膜、及びモスリン布などの柔軟な電解質透過膜を用いて、炭素電極を留めることも用いられることができる。そのような電極(即ち、分離膜エンクロージャ内に配置されている)は、溶媒と電解質混合物との適切な混合物中で一定時間電気化学的剥離を行った後、その後のグラフェン処理のためにバスから分離される。同じ電極アセンブリは、適切な溶媒バス中で超音波処理され、グラフェンを製造することができる。この方法で製造されたグラフェンは、濾過、遠心分離、又はデカンテーションを用いて分離されることができる。
【0055】
分離後のグラフェン粒子は、希釈した酸性水、蒸留水/脱イオン水、及びエタノール、メタノール、イソプロパノール、又はアセトンなどのアルコールで繰り返し洗浄されることができる。湿ったグラフェン粒子は、必要に応じて30~200℃数時間熱を適用することで、空気中、真空中、不活性雰囲気中、水素雰囲気中、水素とアルゴンの混合ガス環境又は他の任意の混合ガス環境中で、乾燥させ、必要とされる性質を達成することができる。
【0056】
電気化学的に製造されたグラフェンは、エアミリング、エアジェットミリング、ボールミリング、回転ブレードの機械的せん断、超音波処理、溶媒熱合成、音響化学的、音響、化学処理、水素の存在下における熱処理、不活性雰囲気、真空、プラズマ処理、又はこれらの組合せを用いて、更に後処理されることができる。化学処理方法としては、適用される温度及び機械的せん断を用いて/用いることなく、好適な溶媒において、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン水和物、アスコルビン酸、又は発泡水素(bubbling hydrogen)ガスなどの様々な還元剤を用いた、グラフェン粒子の処理を含む。
【0057】
グラフェンは、潜在的に非常に多数の用途を有する特性の独特の組合せを有する材料である。これらの用途の多くは、特定の性質の組合せを有する仕立てられたグラフェンを必要とする。更に、高品質で一貫したグラフェンを適切な量で製造することが重要である。実験室規模及び大量生産(HVM)の両方に適した仕立てられたグラフェン材料の製造のための電気化学的構成及び方法は、本発明によって達成されてきた。この方法は更に、先行技術に記載されている他の方法よりも生成される流出物は少ない。この方法は、グラフェン特性の仕立てと最適化を可能にするのに比類なく適している。以下の非限定的な実施例は、本発明を説明するために提供される。
【0058】
実施例1:(酸化グラフェン-GOの調製)
改変したHummers法を用いて、GOを調製した。典型的な反応において、約50mlの濃HSOを約1gのNaNOに添加し、アイスバス中で約15分間撹拌した。その後、1gの天然黒鉛粉末を添加し、約15分間撹拌した。この工程の後、アイスバス中で撹拌しながら、6.7gのKMnOを非常にゆっくり添加し、約30分間撹拌した。その後、アイスバスを取り除き、40℃で約30分間維持した。撹拌しながら、50mlのD.I.HOを非常にゆっくり添加した。ビーカー内の内部温度を約110℃に上昇させ、その温度で約15分間再度撹拌した。その後、最後に100mlの温HOを添加し、10mlの30vol%Hを加えた。反応を停止させ、室温まで冷却させた。最終生成物を遠心分離により単離し、数回D.I.HOで洗浄し、酸性廃棄物及び他の水溶性未反応物全てを除去した。最後に、乾燥するためにアセトンで約3~4回洗浄し、乾燥のためオーブンに60℃で維持した。最終生成物を秤量した。平均収量は、約1.5gであった。PXRDパターンにおけるグラファイトの(002)ピークの2θ約10~11°付近のより低い角度へのシフト(図1、実施例1)は、黒鉛層の層間間隔の増加の強い証拠を明確に与える。これは、黒鉛粉末からGOの形成を実証する。
【0059】
実施例1の典型的なラマンスペクトルは、図2で見られるように、同程度の強度を有するDバンド及びGバンドの出現、並びに2Dバンドが存在しないことを示す。2Dバンドが存在しないことは、実施例1にある相当量の欠陥(官能基)の存在に起因し得る。実施例1の空気中の典型的なTGA曲線を図3に示す。実施例1のTGA曲線は、空気中で有意な重量%の減少を示す。実施例1は、全ての実施例の中で、空気中で最も安定性が低い。これは、黒鉛状骨格上に酸素官能基を多く有することを明確に示唆する。図4(実施例1)は、SEM画像から明らかなように、ミクロン範囲のフレーク形態を示す。
【0060】
実施例2(還元型酸化グラフェン-rGOの調製)
典型的な反応において、1gの固体の予め剥離した酸化黒鉛(改変したHummers法を介して調製)を0.5LのD.I.HO中に超音波処理によって約2時間分散した。その後、約0.5mlのN・HOを添加した。その後、撹拌しながら、約80℃で一晩還流した。次の日、色が茶色から黒色になり、最終生成物が平底フラスコの底部に沈降した。その後、最終生成物を濾過により単離し、D.I.HOで数回洗浄し、その後乾燥するためにアセトンで洗浄した。上澄みの最終pHは、約6付近であり、その後約60℃で最後に乾燥するためにオーブンで維持し、秤量した。最終生成物の重量は、約0.5gであった。図1において、実施例2のPXRDパターンは、特徴的な広いピークが2θ約25°付近に集中したことを明確に示し、グラファイトの骨格からの官能基の除去を示し(層間距離の減少)、それによってバルク黒鉛の場合よりも低い秩序でz方向に層を再度重ねる。実施例2の典型的なラマンスペクトルは、図2に示され、実施例1のものと殆ど見分けがつかない。実施例2の空気中の熱安定性は、実施例1よりも良好に見え(図3)、実施例1よりも酸素官能基の存在が少ないことを意味する。図4(実施例2)は、SEM画像から明らかなように、ある程度の凝集を伴うミクロン範囲のフレークも示す。
【0061】
実施例3:(市販のグラフェン:CG-1)
実施例3は、外部ベンチマークの目的のために、市販の供給業者から入手したものであり、6~8層を有する約15μの平均フレーク直径を有する。図1に示される実施例3のPXRDパターンは、シャープなバルク黒鉛ピークが、2θ約25°に集中したことを示す。これは、z方向に沿った長距離秩序構造を意味する。実施例3の特徴的なラマンスペクトル(図2)は、他の例よりも非常に低いI/I値を示し、そこにおける少ない欠陥の程度を意味する。実施例3のTGA曲線(図3)は、空気中の良好な熱安定性を示し、その表面において存在する官能基の数が少ないことを示す。図4(実施例3)は、SEM画像から明らかなように、ミクロン範囲のフレークを示す。
【0062】
実施例4:(市販の黒鉛シート)
黒鉛シートは、商業的供給業者から電気化学的剥離方法のための電極として使用するために入手した。図1の実施例4のPXRDパターンは、実施例3のものとほとんど見分けがつかず、z方向に沿った長距離秩序構造を意味する。両方のラマンスペクトル(図2)も同様に見える。図3から理解できるように、実施例4の空気中の熱安定性は、全ての実施例の中で最良である。
【0063】
実施例5、6、8、及び9の一般条件
長方形の断面を有する1000ml容量のアクリルポリマー容器中に、アノード/作用電極(アノードプロセス)としての上記の市販の黒鉛シート及びカソード/対向電極としてのTiを有するセルを組み立てた。全ての実施例において、溶媒媒体としてD.I.HOを使用し、24時間未満、より好ましくは12時間未満、最も好ましくは6時間未満の一定期間、10Vの静的ポテンシャルを印加した(図16)。電解質濃度は、これら全ての実施例において、0.01Mから1Mの範囲に保たれる。
【0064】
実施例5:
この実施例で使用した電解質は、(NHSOであった。2:30時間の期間後、過剰の溶媒をデカントし、その後濾過することにより、剥離した生成物を単離した。次いで最終生成物を適切な溶媒で徹底的に洗浄した。その後、それを秤量し、更なる特徴付け及び分析に使用した。最終生成物の平均重量は、約0.8g付近である(表1)。
【0065】
実施例5のPXRDパターン(図1)は、実施例3及び4のものよりも、広いピークが2θ約25°に集中したことを示す。これは、実施例3及び4と比較して実施例5におけるz方向に沿った長距離秩序の欠如を意味する。対応するラマンスペクトルを図2に示し、特徴的なDバンド、Gバンド、及び2Dバンドを示す。I/I値は、実施例3のものよりも高く、実施例3よりも多数の欠陥の存在を意味する。図3のTGA曲線から理解できるように、実施例5の空気中の熱安定性も実施例3のものよりも低い。これは、実施例3よりも多くの官能基がグラフェン表面上に存在することに対応する。他の実施例よりも薄いミクロン範囲のフレークは、SEM画像から明らかであった(図4)。
【0066】
実施例6:
この実施例で使用した電解質は、(NHSO及びNaNOの混合物であった。2:30時間の期間後、過剰の溶媒をデカントし、その後濾過することにより、剥離した生成物を単離した。次いで最終生成物を適切な溶媒で徹底的に洗浄した。その後、それを秤量し、更なる特徴付け及び分析に使用した。最終生成物の平均重量は、約2.2g付近である(表1)。
【0067】
図1において、実施例6のPXRDパターンは、2θ約12°付近における広いピークと、2θ約25°付近に集中する、広いが強くない別のピークとを示す。興味深いことに、このパターンは、実施例1のものと類似しているように見え、このアノード電気化学的剥離プロセスによって、エッジ/ベーサルプレーン上に酸素官能基が挿入することによる黒鉛層の層間間隔の増加を意味する。
【0068】
対応するラマンスペクトルを図2に示し、特徴的なDバンド、Gバンド、及び2Dバンドの出現を示す。この場合、2Dバンドの強度は、実施例5よりも僅かに高い。この実施例では、I/I値も実施例3のものよりも高く、実施例5と同じ正当化がここでも適用可能である。図3から理解できるように、実施例6の空気中の熱安定性は、実施例5のものよりも低い。これは、実施例5よりも更に多数の官能基がグラフェン表面上に存在することを意味する。ミクロン範囲のフレークは、SEM画像から明らかであった(図4)。
【0069】
実施例7:
このサンプルは、実施例6から得られ、D.I.HOに添加し、その後適切に混合するために約10分間撹拌した。その後、それにN・HOを添加し、撹拌しながら約55℃で約18時間還流した。その後、最終生成物を適切な溶媒で徹底的に洗浄した。その後、それを秤量し、更なる特徴付け及び分析に使用した。最終生成物の平均重量は、約0.4gである。
【0070】
図1において、実施例7のPXRDパターンは、実施例5と比較すると、2θ約12°付近におけるピークの不在及び2θ約25°付近に集中するより広いピークを示し、ヒドラジン処理後、実施例6の表面から酸素を含む官能基が除去され、実施例5と比較して長距離秩序が欠如していることを意味する。これは、実施例5よりも、小さいグラフェンフレークの生成、又はより剥離したサンプルの生成のいずれかに起因し得る。
【0071】
実施例7のラマンスペクトルを図2に示す。I/I及びI2D/I値は、実施例6のものよりも小さい。興味深いことに、実施例7の空気中の熱安定性は、黒鉛シートの次に2番目に高く、実施例5及び6のものよりもはるかに良好である(図3)。これは、確実にヒドラジン処理中に黒鉛状骨格から残留官能基が除去されたことの間接的な示唆である。ミクロン範囲のフレークは、SEM画像から明らかであった(図4)。
【0072】
実施例8:
この実施例で使用した電解質は、(NHSO及びNaPO・10HOの混合物であった。2:30時間後、過剰の溶媒をデカントし、その後濾過することにより、剥離した生成物を単離した。その後、適切な溶媒で徹底的に洗浄した。その後秤量し、更なる特徴付け及び分析に使用した。最終生成物の平均重量は、約1.0g付近である(表1)。
【0073】
実施例8のPXRDパターン(図1)は、2θ約25°付近に集中する広いピークを示し、実施例5のように、z方向に沿った長距離秩序の欠如を意味する。図2の対応するラマンスペクトルは、特徴的なDバンド、Gバンド、及び2Dバンドの出現を示す。I/I値は、実施例5~7のものよりも低く、存在する欠陥の程度が少ないことを意味する。図3のTGA曲線から理解できるように、実施例8の空気中の熱安定性は、実施例5のものと類似している。ミクロン範囲のフレークは、SEM画像から観察された(図4)。
【0074】
実施例9
この実施例で使用した電解質は、NaPO・10HOを含むのみである。2:30時間後、過剰の溶媒をデカントし、その後濾過することにより、最終生成物を単離した。その後、適切な溶媒で徹底的に洗浄した。その後秤量し、更なる特徴付け及び分析に使用した。最終生成物の平均重量は、約0.5g付近である(表1)。
【0075】
実施例9におけるz方向に沿った長距離秩序の欠如は、図1で見られるようにPXRDパターンから明らかであった。ラマンスペクトルからのより低いI/I値(図2)は、実施例5~7と比較して、欠陥の程度がより少ないことを意味する。図3のTGA曲線から理解できるように、実施例9の空気中の熱安定性は、実施例5及び8のものと類似している。ミクロン範囲のフレークは、SEM画像で観察された(図4)。
【0076】
実施例10~15:複数(二種)剥離イオンの異なる比率
最終的なグラフェン材料の特性おける複数の剥離イオンの異なる比率の効果は、本開示において実証されてきた。対応するサンプルは、剥離イオンが(NHSO及びNaNOである場合について、それぞれ実施例6及び実施例10~12として指定されている。対応する空気中のTGA曲線及びラマンスペクトルを図5及び図6に示す。これらの結果は、この独特な戦略によって、最終的なグラフェン材料の特性が設計されることができることを示す。
【0077】
剥離プロセスの動力学は、複数剥離イオンの性質及び異なる比率に大きく依存する。この現象は、表1から理解できるように、同様の処理条件下で製造されたグラフェン材料の収率の変動によって反映されている。比較として、実施例13~15は、剥離イオンの適切ではない混合物を用いると非常に動力学的に不活発なプロセスを示す。
【0078】
実施例16及び17:複数(三種)剥離イオンの異なる比率
本開示で実証されるように、複数の剥離イオンの三種の混合物がグラフェン材料の製造に使用されてきた。対応するサンプルは、実施例16及び17に記載されている。これらのプロセスの詳細は、表1に示されている。これらの最終的なグラフェン材料の特性は、この戦略によって設計されることができ、これは対応する空気中の比較TGA曲線から明らかである(図7)。
【0079】
実施例18及び19:複数の剥離イオンを用いた段階的な剥離の効果
本開示で実証されるように、グラフェン材料の製造には、複数の剥離イオンを用いた段階的剥離が用いられてきた。対応するサンプルは、実施例18及び19に記載されている。これらのプロセスの詳細は、表1に提供されている。これらの最終的なグラフェン材料の特性は、この方法によって設計されることができ、図8及び図9に示される、対応する空気中の比較TGA曲線及びラマンスペクトルからも明らかである。
【0080】
実施例20及び21:
調製されたままのグラフェン材料の後熱処理によって、異なるグラフェン材料を製造することができる。後熱処理の効果を実証するために、実施例5で製造したサンプルを、N環境中で、それぞれ550℃及び1000℃で熱処理した。対応するサンプルをそれぞれ実施例20及び実施例21と指定した。これらの最終的なグラフェン材料の特性は、このアプローチによって設計されることができ、それぞれ図10図12に示されるように、対応する比較ラマンスペクトル、PXRD、及び空気中のTGA曲線から明らかである。
【0081】
実施例22:
最終的なグラフェン材料の質における効果を見るために、ラジカルスカベンジャーとして、(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル又は(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシダニル、(TEMPOとして一般に知られる)が用いられ、本開示中に示されてきた。対応するサンプルは、表1で見られるように実施例22として記載されている。実施例5及び22の空気中の比較TGA曲線、並びに実施例22のサンプルのラマンスペクトルは、図13に示される。
【化1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16