(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】毛髪化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20230825BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20230825BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20230825BHJP
A61K 8/368 20060101ALI20230825BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20230825BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20230825BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20230825BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/39
A61K8/368
A61K8/86
A61K8/41
A61Q5/12
A61K8/92
(21)【出願番号】P 2019545101
(86)(22)【出願日】2018-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2018035317
(87)【国際公開番号】W WO2019065576
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2017187225
(32)【優先日】2017-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018104812
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(72)【発明者】
【氏名】花木 淳子
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓太
(72)【発明者】
【氏名】木下 耕一
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 協子
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-008209(JP,A)
【文献】特開2009-078992(JP,A)
【文献】特開平11-079951(JP,A)
【文献】特表2012-531185(JP,A)
【文献】特表2008-516988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)カチオン性界面活性剤
(b)高級アルコール
(c)下記一般式(I),(II),(IV),(V)で表される化合物からなる群から選ばれる1以上のコサーファクタントを0.1~5質量%
【化1】
(式中、R
1は炭素数8~12のアルキル基、R
2及びR
3はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基、Xは水素原子または脂肪酸残基、nは1~3の整数を示す。)
【化2】
(式中、R
1は炭素数8~12のアルキル基、R
2~R
4はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基、Xは水素原子または脂肪酸残基、nは1~3の整数を示す。)
【化4】
(式中、X
1~X
4のいずれか1つは水素原子で、他の3つはそれぞれ独立して炭素数8~22の脂肪酸残基を示す。)
【化5】
(式中、X
1及びX
2はそれぞれ独立して炭素数12~22の脂肪酸残基、nは5~12の整数を示す。)
(d)サリチル酸
を含み、
上記(a)カチオン性界面活性剤に対する(b)高級アルコールのモル比[(b)/(a)]が2.0~5.0の範囲内である毛髪化粧料。
【請求項2】
さらに、(e)高重合度ポリエチレングリコールを含む、請求項1に記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
さらに、2価以上の
液状多価アルコールである保湿剤を含む、請求項1-2のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
成分(c)が、ラウリン酸プロピレングリコール、ラウリン酸ジエチレングリコール、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、ジオレイン酸PEG-8、及びジイソステアリン酸PEG-8からなる群から選ばれる1種以上の界面活性剤である、ヘアコンディショニング組成物
である請求項1-3のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【請求項5】
さらに、(f)流動油分を含む、請求項1-4のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【請求項6】
さらに、血行促進剤を含む、請求項1-5のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【請求項7】
さらに、白髪防止剤を含む、請求項1-6のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【請求項8】
頭皮マッサージ化粧料である請求項1-7のいずれかに記載の
毛髪化粧料。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2017年9月27日付け出願の日本国特許出願2017-187225号、及び2018年5月31日付け出願の日本国特許出願2018-104812号の優先権を主張しており、ここに折り込まれるものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、毛髪化粧料に関し、さらに詳しくは、ヘアコンディショニング組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、シャンプー処理後の毛髪は指通りが悪くなるため、リンスやトリートメント剤等のヘアコンディショニング組成物による処理を続いて行う。ヘアコンディショニング組成物には通常カチオン性界面活性剤が配合されるが、これは、カチオン性界面活性剤が毛髪に対して柔軟性や帯電防止性を付与する効果に優れるからである。
【0004】
一方で、カチオン性界面活性剤は、高級アルコールとともに、水の存在下でラメラ状のαゲル(リンスゲル)を形成する。多くの毛髪化粧料では、このリンスゲルが形成されることにより、取扱いに適した粘性及び弾性が実現される。
【0005】
しかしながら、リンスゲルは一般に希釈や物理的衝撃に弱く、毛髪への塗布に伴う剪断力(shearing force)によってその多くが崩壊してしまう。これにより、組成物の粘度が(崩れるように)急激に低下し、毛髪への塗布がしにくくなるという問題点が指摘されている。そして、このことは、処理時間の長い施術、例えば、サロンにおける毛髪トリートメントや頭皮マッサージ等においては、特に深刻な問題であった。
【0006】
これまで、ヘアコンディショニング組成物の塗布時感触を改善するものとして、特定の第四級アミン化合物、高級アルコール及び/又は高級脂肪酸、サリチル酸類塩、有機酸、及び水を特定量含有する毛髪化粧料が開示されている(特許文献1)。また、特定の第三級アミン化合物、高級アルコール及び/又は高級脂肪酸、特定の芳香族カルボン酸塩、及び、一塩基酸である有機酸を特定量含有する毛髪化粧料も報告されている(特許文献2)。
【0007】
しかしながら、これらのヘアコンディショニング組成物は、塗布の際の毛髪の感触を改善するものであり、塗布に伴う組成物の物理的変化に起因する感触に着目したものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-241774
【文献】WO2010/116941
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、塗布時の崩れ感がなく、毛髪や頭皮の処理に適した粘性及び弾性が維持される毛髪化粧料の提供を課題とする。
なお、ここでいう「塗布時の崩れ感」とは、毛髪化粧料(特に、ヘアコンディショニング組成物や頭皮用マッサージ剤)を毛髪に塗布する過程で生じる急激な粘度低下に基づく使用感の低下を指す。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、カチオン性界面活性剤と高級アルコールとを特定のモル比で配合し、特定のコサーファクタントを特定量追加すると、塗布時の崩れ感が顕著に抑制されることを見出した。その際、芳香族酸またはその塩を追加すると、すすぎ時の指通りが顕著に改善されることも見出した。
さらに、本発明者は、前記モル比のカチオン性界面活性剤と高級アルコール、特定のコサーファクタントに加えて、さらに高重合度のポリエチレングリコールを追加すると当該塗布時の崩れ感のなさが数十分間も持続すること、特に、高重合度のポリエチレングリコールとともに流動性油分を追加すると当該持続効果が一層顕著になることを見出した。
本発明者は、これらの事項に基づいて本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1](a)カチオン性界面活性剤
(b)高級アルコール
(c)下記一般式(I)~(V)で表される化合物からなる群から選ばれる1以上のコサーファクタントを0.1~5質量%
【化1】
(式中、R
1は炭素数8~12のアルキル基、R
2及びR
3はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基、Xは水素原子または脂肪酸残基、nは1~3の整数を示す。)
【化2】
(式中、R
1は炭素数8~12のアルキル基、R
2~R
4はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基、Xは水素原子または脂肪酸残基、nは1~3の整数を示す。)
【化3】
(式中、nは1~5の整数を示す。)
【化4】
(式中、X
1~X
4のいずれか1つは水素原子で、他の3つはそれぞれ独立して炭素数8~22の脂肪酸残基を示す。)
【化5】
(式中、X
1及びX
2はそれぞれ独立して炭素数12~22の脂肪酸残基、nは5~12の整数を示す。)
を含み、
上記(a)カチオン性界面活性剤に対する(b)高級アルコールのモル比[(b)/(a)]が2.0~5.0の範囲内である毛髪化粧料。
[2] さらに、(d)芳香族酸またはその塩を含む、前記[1]に記載の毛髪化粧料。
[3] さらに、(e)高重合度ポリエチレングリコールを含む、前記[1]または[2]に記載の毛髪化粧料。
[4] さらに、2価以上の保湿剤を含む、前記[1]-[3]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
[5] 成分(c)が、オレス-2、ラウリン酸プロピレングリコール、ラウリン酸ジエチレングリコール、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、オレス-5、ジオレイン酸PEG-8、及びジイソステアリン酸PEG-8からなる群から選ばれる1種以上の界面活性剤である、前記[1]-[4]のいずれかに記載のヘアコンディショニング組成物。
[6] さらに、(f)流動油分を含む、前記[1]-[5]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
[7] さらに、血行促進剤を含む、前記[1]-[6]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
[8] さらに、白髪防止剤を含む、前記[1]-[7]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
[9] 前記[1]-[8]のいずれかに記載のマッサージ化粧料。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、塗布時の崩れ感がなく、毛髪や頭皮の処理に適した粘性及び弾性が維持される毛髪化粧料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】試験例1のヘアコンディショニング組成物について、シアリング直後の粘度と、シアリング前後の粘度比を解析した結果を表すグラフである。
【
図2】試験例1のヘアコンディショニング組成物について、シアリングを行ってから7日後の粘度と、シアリング前後の粘度比を解析した結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る好適な実施形態について説明する。
【0015】
(a)カチオン性界面活性剤
本発明に用いることができるカチオン性界面活性剤としては、毛髪化粧料に通常使用されるものであれば特に制限されることはなく、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩(例として、塩化ベヘントリモニウムアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウムなど);アルキルピリジニウム塩(例として、塩化セチルピリジニウムなど);ジアルキルジメチルアンモニウム塩(例として、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムなど);ポリオキシエチレン付加ジアルキルジメチルアンモニウム塩;ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート;塩化ポリ(N,N´-ジメチル-3,5-メチレンピペリジニウム);アルキル四級アンモニウム塩;アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩;アルキルイソキノリニウム塩;ジアルキルモリホニウム塩;POE-アルキルアミン;アルキルアミン塩;ポリアミン脂肪酸誘導体;アミルアルコール脂肪酸誘導体;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0016】
上記のうち、アルキルトリメチルアンモニウム塩が好ましく、特に好ましくは塩化ベヘントリモニウムアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムである。
【0017】
本発明の毛髪化粧料における(a)成分の配合量は、0.2-5.0質量%、より好ましくは1.5-4.5質量%である。0.2質量%未満であると、リンスゲルが緩くなり、塗布使用感や安定性が損なわれる場合があり、5.0質量%を越えて配合すると、リンスゲルが硬くなり、扱いにくさが感じられる場合がある。
【0018】
(b)高級アルコール
本発明に用いることができる高級アルコールは、毛髪化粧料に通常使用されるものであれば特に制限されることはなく、例えば、直鎖アルコール(例として、ラウリルアルコール、セチルアルコール(セタノールと略記する場合がある)、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール、硬化ナタネ油アルコール等);分枝鎖アルコール(例として、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2-デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等)等が挙げられる。
【0019】
このうち、炭素数16以上の直鎖アルコールが好ましく、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の炭素数16~22の直鎖アルコールを特に好適に用いることができる。
【0020】
本発明に係る毛髪化粧料には、(b)高級アルコールを単独または2種以上組み合わせて配合することが可能である。
【0021】
本発明の毛髪化粧料における(b)成分の配合量は、上記(a)カチオン性界面活性剤の配合量にも依るが、該組成物に対して0.1-20質量%の範囲内で配合することができ、より好ましくは3-10質量%である。(b)成分の配合量が0.1質量%を下回ると、毛髪に対するコンディショニング効果が認められなくなる傾向があり、20質量%を超えて配合しても、配合量に見合ったすすぎ時の感触の向上は期待できないと考えられる。
【0022】
本発明では、(a)カチオン性界面活性剤に対する(b)高級アルコールのモル比、すなわち、“(b)/(a)”の値は、2.0~5.0、好ましくは2.0~3.5、より好ましくは、2.0~3.0である。(b)/(a)値が2.0未満では、塗布使用感の悪化が認められる場合があり、5.0を超えると、すすぎ時の指通りが悪くなる場合があるからである。
【0023】
(c)コサーファクタント
本発明に用いることができるコサーファクタントは、下記一般式(I)~(IV)で表される化合物からなる群から選ばれる1以上のノニオン性界面活性剤である。下記一般式(I)~(IV)で表される化合物は、(c)成分として、組み合わせて配合することができる。
【化6】
【0024】
前記式(I)において、R1は、炭素数8~12、好ましくは10~11、最も好ましくは炭素数11のアルキル基である。直鎖、分岐鎖のいずれであってもよく、好ましくは直鎖である。
R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子またはメチル基を示す。
Xは、水素原子または脂肪酸残基である。前記脂肪酸残基としては、炭素10~11のものが好ましく、直鎖状であっても分岐状であってもよい。Xとして、最も好ましくは水素原子である。
nは、1~3の整数を示す。
【0025】
【0026】
前記式(I)において、R1は、炭素数8~12、好ましくは10~11、最も好ましくは炭素数11のアルキル基である。直鎖、分岐鎖のいずれであってもよく、好ましくは直鎖である。
R2~R4は、それぞれ独立して水素原子またはメチル基を示す。
Xは、水素原子または脂肪酸残基である。前記脂肪酸残基としては、炭素10~11のものが好ましく、直鎖状であっても分岐状であってもよい。Xとして、最も好ましくは水素原子である。
nは、1~3の整数を示す。
【0027】
【化8】
前記式(III)において、nは1~5の整数を示す。
【0028】
【0029】
前記式(IV)において、X1~X4のいずれか1つは水素原子で、他の3つはそれぞれ独立して炭素数8~22の脂肪酸残基を示す。当該脂肪酸残基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0030】
【0031】
前記式(V)において、X1及びX2はそれぞれ独立して炭素数12~22の脂肪酸残基を示す。当該脂肪酸残基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。nは5~12の整数を示す。
【0032】
本発明では、一般式(I)で表される化合物の例として、ラウリン酸プロピレングリコール(ラウリン酸PG)、ラウリン酸ポリエチレングリコール(例として、ラウリン酸PEG-3)、ラウリン酸ジエチレングリコール(ラウリン酸PEG-2)、一般式(II)で表される化合物の例として、ラウリン酸ブチレングリコール、一般式(III)で表される化合物の例として、オレス-2、オレス-5、一般式(IV)で表される化合物の例として、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、一般式(V)で表される化合物の例として、ジオレイン酸PEG-8、ジイソステアリン酸PEG-8等が挙げられる。
このうち、ラウリン酸プロピレングリコール、ラウリン酸ジエチレングリコール、オレス-2、オレス-5、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、ジオレイン酸PEG-8、ジイソステアリン酸PEG-8が好ましく、さらに、ラウリン酸プロピレングリコール、ラウリン酸ジエチレングリコール、オレス-2、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2がより好ましく、ラウリン酸ジエチレングリコールを特に好適に用いることができる。
【0033】
通常、リンスゲルは、(b)/(a)値が低い条件下(具体的には、3.0以下)では形成されにくいが、本発明では、(c)成分の作用により、(b)/(a)値が低い条件下でもリンスゲルの形成が促進されると考えられる。
【0034】
本発明の毛髪化粧料における(c)成分の配合量は、0.1-5.0質量%、好ましくは0.1-3.0質量%である。0.1質量%未満であると、本発明の効果が得られない場合があり、5.0質量%を越えて配合すると、べたつき感やすすぎ時のきしみ感を生じる場合がある。
【0035】
(d)芳香族酸またはその塩
本発明に用いることができる芳香族酸としては、毛髪化粧料に通常使用されるものであれば特に制限されることはなく、例えばサリチル酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸類;1-ナフタレンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、1,5-ナフタレンジスルホン酸、2,6-ナフタレンジスルホン酸、2,7-ナフタレンジスルホン酸等のナフタレンスルホン酸類;ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸等のベンゼンスルホン酸類等が挙げられる。
【0036】
また、これらの芳香族酸は塩を形成していてもよく、その塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩などが挙げられる。
【0037】
このうち、芳香族カルボン酸類が好ましく、サリチル酸とその塩(特に好ましくは、ナトリウム塩)、安息香酸とその塩(特に好ましくは、ナトリウム塩)、及び、3-メチルサリチル酸、4-メチルサリチル酸、5-メチルサリチル酸等のサリチル酸誘導体とその塩を特に好適に用いることができる。
【0038】
本発明に係る毛髪化粧料には、(d)成分を単独または2種以上組み合わせて配合することが可能である。
【0039】
本発明の毛髪化粧料において(d)成分は、0.001-5.0質量%の範囲内で配合することができ、より好ましくは0.01-3.0質量%、さらに好ましくは0.05-1.0である。(d)成分の配合量が0.001質量%を下回ると、塗布時の崩れ感が十分に抑制できない場合がある。
【0040】
(e)高重合度ポリエチレングリコール
本発明の毛髪化粧料には、塗布時の崩れ感のなさをさらに長時間持続させることを目的として、さらに高重合度ポリエチレングリコールを配合することができる。ここで、「高重合度」とは、ポリエチレングリコールの平均重合度が5000以上、好ましくは10000以上、さらに好ましくは12000以上であることをいう。
【0041】
本発明の毛髪化粧料における(e)高重合度ポリエチレングリコールの配合量は、0.001-5.0質量%、好適には0.005-1.0質量%、最も好適には0.01-0.2質量%である。0.001質量%より少ないと、塗布時の崩れ感のなさに対する持続効果が得られない場合があり、また、5.0質量%以上配合しても、濃度に見合った前記効果の増加が見られないからである。
【0042】
(f)流動油分
本発明の毛髪化粧料には、塗布時の崩れ感のなさを非常に顕著に持続させることを目的として、上記(e)高重合度ポリエチレングリコールとともに、(f)流動油分をさらに配合することができる。
【0043】
本発明に用いることができる流動油分とは、融点が25℃未満の油分であり、化粧料の分野で用いられるものを選択して用いることができる。具体的には、オリーブ油、椿油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油等の液体油脂;ホホバ油等の液体ロウ;流動パラフィン、スクワラン等の液体炭化水素油;ラウリン酸、イソステアリン酸等の液状ないし半固形状の高級脂肪酸;イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール等の液状高級アルコール;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、2-エチルヘキサン酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスチル等の液状エステル油;メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等が例示される。
【0044】
上記のうち、本発明の毛髪化粧料には、液体炭化水素油を好適に用いることができ、流動パラフィン、スクワランを特に好適に用いることができる。
【0045】
本発明の毛髪化粧料における(f)流動油分の配合量は、0.01-10.0質量%、好適には0.01-5.0質量%、最も好適には0.1-2.0質量%である。0.01質量%より少ないと、塗布時の崩れ感のなさに対する持続効果が得られない場合があり、また、10.0質量%以上配合しても、濃度に見合った前記効果の増加が見られないからである。
【0046】
本発明では、(b)/(a)のモル比が2.0~5.0の範囲内となる(a)カチオン性界面活性剤と(b)高級アルコール、及び、(c)コサーファクタントを0.1~5質量%配合することにより、塗布開始から少なくとも1分間は、組成物の粘度低下が起こらずに良好な使用感が維持される毛髪化粧料が得られる。その後は、経時に伴って粘度及び使用感は低下するが、多くの毛髪化粧料の塗布時間は通常1分以内なので支障はない。
これに対し、美容サロンで行われる毛髪トリートメントや頭皮マッサージでは、通常数分~十数分間にわたって塗布行為が行われるので、上記(d)単独、または(e)及び(f)を追加して得られる毛髪化粧料は、このような用途に理想的である。
【0047】
また、本発明に係る毛髪化粧料には、分子量が350以下である極性油を配合してもよい。そのような極性油の例としては、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、エチルヘキサン酸セチル、イソステアリン酸エチル、ネオペンタン酸イソデシル等が挙げられる。
このうち、本発明には、ミリスチン酸イソプロピルを好適に用いることができる。
分子量が370以下である極性油は、本発明の毛髪化粧料中、0.05-3.0質量%、好ましくは0.1-2.0質量%となるように配合してもよい。
【0048】
さらに、本発明に係る毛髪化粧料には、保湿剤として、2価以上、好ましくは3価以上の液状多価アルコールを配合してもよい。当該多価アルコールの例としては、グリセリン等が挙げられる。
3価以上の液状多価アルコールは、本発明の毛髪化粧料中、0.1-30質量%、好ましくは1-25質量%となるように配合してもよい。この範囲内で配合することにより、乾燥後の毛髪になめらかさやしっとりさを付与する効果が期待される。
【0049】
また、本発明に係る毛髪化粧料には、血行促進剤を配合してもよい。血行促進剤の例としては、ニコチン酸誘導体、アセチルコリン、塩化カルプロニウム、塩酸ジフェンヒドラミン、γ-オリザノール、サークレチン、ニコランジル、ピナシジル、フタリド類、センブリエキス、ニンジンエキス、イチョウエキス、キナエキス、トウヒエキス等が挙げられる。前記ニコチン酸誘導体の例としては、例えば、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸dl-α-トコフェロール等が挙げられる。
このうち、本発明においては、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、センブリエキス、ニンジンエキス、塩化カルプロニウムを好適に用いることができる。
【0050】
また、本発明に係る毛髪化粧料には、白髪防止剤を配合してもよい。白髪防止剤としては、毛髪化粧料に汎用されるものを用いることができ、例えば、サンショウ(特開平11-79951)、オタネニンジン、レイシ、コメヌカ、ヒキオコシ(いずれも特表2012-531185)等を好適に用いることができる。
【0051】
本発明に係る毛髪化粧料は、リンスゲル形成の場として、水を含有する。本発明には、イオン交換水、精製水、水道水等を用いることができる。
【0052】
本発明に係る毛髪化粧料には、上記成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲内で、通常化粧品や医薬品等に用いられるさまざまな成分を配合することができる。このような成分として、例えば、一般的な油分、粉末成分、両性界面活性剤、天然高分子、合成高分子、増粘剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料等が挙げられる。
【0053】
本発明にかかる毛髪化粧料は、一般に用いられている方法により製造することができ、特に限定されるものでない。例えば、60~80℃程度に加温した水に、配合成分を順次添加しながら撹拌混合し、常温まで冷却する等、常法により得ることができる。
【0054】
本発明にかかる毛髪化粧料は、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアパック等のヘアコンディショニング組成物、及び、毛髪のケアを目的とした頭皮マッザージ等のマッサージ剤として好適に用いることができる。これらの毛髪化粧料は、すすぎ流すタイプのものであることが好ましい。
【実施例】
【0055】
以下に具体例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例等における配合量は、特に断らない限り質量%を表す。
【0056】
<試験例1>
リンスゲルに対し、物理的な衝撃に対する耐性を付与し得る化合物を検討した。
下記処方のヘアコンディショニング組成物を定法に従って製造し、下記方法に従って、(1)粘度増加、(2)シアリング耐性、(3)塗布時崩れ感を評価した。結果を表1に示す。また、(2)シアリング耐性についてのグラフを
図1に示す。
【0057】
<処方>
成分 配合量(質量%)
イソペンチルジオール 3.0
ジプロピレングリコール 1.0
グリセリン 4.5
ミリスチン酸イソプロピル 0.3
ジメチコン 4.0
アモジメチコン 1.7
セタノール 1.0
ステアリルアルコール 3.3
検討成分 0.2
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム 2.9
サリチル酸 0.1
安息香酸Na 0.2
(注)上記「検討成分」の具体的な化合物名は、表1に記載
【0058】
<測定・評価方法>
(1)粘度増加
製造直後の組成物の粘度をB型粘度計を用いて測定し(12回転/分、30℃での粘度を測定)、比較例1の組成物の粘度を100%とした場合の、当該粘土からの増加分を下記基準に従って評価した(例えば、“30%増加”は、130%の粘度であったことを意味する)。
+:比較例1の組成物からの増加分が、40%未満
++:比較例1の組成物からの増加分が、40%以上70%未満
+++:比較例1の組成物からの増加分が、70%以上
【0059】
(2)シアリング耐性
室温で組成物200gを300ml容器(ビーカー)に入れ、攪拌機(スリーワンモーター、新東科学株式会社製)を用いて700rpmの回転数で10分間攪拌した後、B型粘度計で粘度測定を行った。
実施例1-3と比較例1-8については、シアリング前の粘度とシアリング直後(シアリングを行ってから1時間以内)の粘度を測定してシアリング前後の粘度比(=シアリング後の粘度/シアリング前の粘度)を算出し、下記基準に従って組成物のシアリング耐性を評価した。実施例4-6については、シアリング前の粘度とシアリングを行ってから7日後の粘度を測定してシアリング前後の粘度比を算出し、下記基準に従って組成物のシアリング耐性を評価した。
シアリング耐性有:前記粘度比が0.6以上
シアリング耐性無:前記粘度比が0.6未満
【0060】
(3)塗布時の崩れ感
女性パネル10名に対し、洗髪直後の濡れた毛髪に、組成物を適量手に取って塗布してもらった(約1分間)。その後、シャワーですすぎ流してもらい、タオルで水分を十分に拭き取って毛髪を乾燥させた。
前記塗布時の塗布時崩れ感について、下記基準に従って評価してもらった。
【0061】
A:崩れ感がないと回答したパネルが10名である。
B:崩れ感がないと回答したパネルが7名以上9名以下である。
C:崩れ感がないと回答したパネルが4名以上6名以下である。
D:崩れ感がないと回答したパネルが1名以上3名以下である。
E:崩れ感がないと回答したパネルが0名である。
本発明では、B以上である場合に抑制されていると判断した。
【0062】
【0063】
表1に示されるように、ステアリン酸グリセリル(SE)(比較例3)、ステアリン酸グリセリル(比較例4)、オレス-2(実施例1)、ラウリン酸PG(実施例2)、ラウリン酸PEG-2(実施例3)、オレス-5(実施例4)、ジオレイン酸PEG-8(実施例5)、ジイソステアリン酸PEG-8(実施例6)のいずれかを追加配合した組成物では、検討成分を配合しなかった組成物(比較例1)と比べて製造直後の粘度が大幅に増加した。よって、これらの検討成分を含む組成物では、リンスゲルの形成が大幅に促進されたことがわかる。
【0064】
一方、(2)シアリング耐性が認められたのは、オレス-2(実施例1)、ラウリン酸PG(実施例2)、ラウリン酸PEG-2(実施例3)、オレス-5(実施例4)、ジオレイン酸PEG-8(実施例5)、ジイソステアリン酸PEG-8(実施例6)のいずれかを追加配合した組成物のみであり、ステアリン酸グリセリル(SE)(比較例3)、ステアリン酸グリセリル(比較例4)、または他の検討成分を追加配合した組成物では認められなかった(表1、
図1)。このうち、オレス-2、ラウリン酸PG、ラウリン酸PEG-2のいずれかを追加配合した組成物では、シアリングを受けた直後であっても粘度がほとんど減少しないことが確認された(表1)。さらに、オレス-5、ジオレイン酸PEG-8、ジイソステアリン酸PEG-8のいずれかを追加配合した組成物では、シアリングから7日経過した後においても、高い粘度を維持していることが確認された(表2)。
すなわち、オレス-2、ラウリン酸PG、ラウリン酸PEG-2、オレス-5、ジオレイン酸PEG-8、またはジイソステアリン酸PEG-8の共存下で形成されるリンスゲルは、検討成分を配合しなかった組成物(比較例1)や他の検討成分を配合した組成物(比較例2-5、6-8)と比べて、物理的な衝撃に晒されても壊れにくいことが示された。
【0065】
さらに、オレス-2(実施例1)、ラウリン酸PG(実施例2)、ラウリン酸PEG-2(実施例3)、オレス-5(実施例4)、ジオレイン酸PEG-8(実施例5)、ジイソステアリン酸PEG-8(実施例6)のいずれかを追加した組成物では、塗布時崩れ感が大幅に抑制されていた(表1)。
【0066】
これらの結果より、オレス-2、ラウリン酸PG、ラウリン酸PEG-2、オレス-5、ジオレイン酸PEG-8、またはジイソステアリン酸PEG-8には、カチオン性界面活性剤と高級脂肪酸のリンスゲル形成を促進し、さらに、物理的な衝撃(特に、剪断力)に対してより強いリンスゲルにする作用があることが明らかとなった。そして、これらの化合物を添加してリンスゲルの量と質を高めることにより、塗布時崩れ感の少ない毛髪化粧料が得られることも明らかとなった。
【0067】
さらに、下表2に記載した処方の毛髪化粧料を定法に従って製造し、前記方法に従って(3)塗布時崩れ感を評価した。結果を表2に示す。
【0068】
【0069】
表2に示されるように、芳香族酸を含まない処方であっても、ラウリン酸PG(実施例7)、ラウリン酸PEG-2(実施例8)、オレス-2(実施例9)、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2(実施例10)、オレス-5(実施例11)、ジオレイン酸PEG-8(実施例12)、ジイソステアリン酸PEG-8(実施例13)のいずれかのノニオン性界面活性剤を配合した毛髪化粧料では、塗布時の崩れ感がほとんど感じられなかった。
これに対し、ノニオン性界面活性剤を配合しなかった毛髪化粧料(比較例9)や、ノニオン性界面活性剤としてヤシ油脂肪酸モノエタノールアマイド(比較例10)、セスキイソステアリン酸ソルビタン(比較例11)、ステアリン酸グリセリル(SE)(比較例12)、またはステアリン酸グリセリル(比較例13)を配合した毛髪化粧料では、塗布時の崩れ感が顕著に感じられた。
【0070】
よって、ラウリン酸PG、ラウリン酸PEG-2、オレス-2、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、オレス-5、ジオレイン酸PEG-8、またはジイソステアリン酸PEG-8といった特定のノニオン性界面活性剤には、カチオン性界面活性剤と高級脂肪酸の共存下で形成されるリンスゲルに物理的衝撃(特に、剪断力)への耐性を付与する効果があり、これらの成分をリンスゲルの構成成分とともに配合することで、塗布時の崩れ感の少ない毛髪化粧料が得られることが示された。また、芳香族酸を共配合しなくても、塗布時の崩れ感の少ない毛髪化粧料が得られることも確認された。
【0071】
<試験例2>
次に、カチオン性界面活性剤に対する高級アルコールのモル比を検討した。
下表3-4に示す処方のヘアコンディショニング組成物を製造し、表中の項目について、下記評価基準に従って評価した。
【0072】
(3)塗布時の崩れ感
○:崩れ感がないと回答したパネルが7名以上10名以下である。
△:崩れ感がないと回答したパネルが4名以上6名以下である。
×:崩れ感がないと回答したパネルが3名以下である。
本発明では、○である場合に抑制されていると判断した。
【0073】
(4)すすぎ時の指通り
○:指通りが良いと回答したパネルが7名以上10名以下である。
△:指通りが良いと回答したパネルが4名以上6名以下である。
×:指通りが良いと回答したパネルが3名以下である。
本発明では、○である場合に良好と判断した。
【0074】
【0075】
【0076】
表3、4に示されるように、(a)カチオン性界面活性剤(塩化ベヘントリモニウムアンモニウム)と(b)高級アルコール(セタノール、ステアリルアルコール)をモル比にして(b)/(a)=2.0~5.0の範囲内で含み、さらに、(c)成分(ラウリン酸PEG-2)を含む組成物では、塗布時の崩れ感のなさに非常に優れていた(実施例14-19)。
これに対し、(b)/(a)値が上記範囲内であっても、(c)成分を含まない組成物では、塗布時の崩れ感のなさに劣っていた(比較例14-19)。さらに、(b)/(a)=2.0~5.0の範囲内において、前記(a)~(c)成分に加えて(d)芳香族酸またはその塩(サリチル酸、安息香酸Na)を含む組成物では、塗布時の崩れ感のなさに優れるうえに、さらに、すすぎ時の指通りにも優れていた(実施例15、17、19)。
【0077】
よって、(a)カチオン性界面活性剤と(b)高級アルコールをモル比にして(b)/(a)=2.0~5.0の範囲内で配合し、さらに、本発明に係る(c)コサーファクタントを0.1~5質量%配合することで、塗布時の崩れ感をほとんど生じない毛髪化粧料が得られること、さらに(d)芳香族酸またはその塩を追加すると、すすぎ時の指通りにも優れる毛髪化粧料が得られることが示された。
【0078】
<試験例3>
さらに、下記処方の毛髪化粧料を定法に従って製造し、下記方法に従って(4)塗布時の崩れ感のなさの経時変化を評価した。結果を表5に示す。
【0079】
(5)塗布時の崩れ感のなさの持続性
女性パネル10名に対し、洗髪直後の濡れた毛髪に、組成物を適量手に取って塗布し、15分間塗布し続けてもらった。
塗布時の崩れ感のなさの経時変化について、下記基準に従って評価した。
【0080】
A:崩れ感のなさが15分間持続したと回答したパネルが10名である。
B:崩れ感のなさが15分間持続したと回答したパネルが7名以上9名以下である。
C:崩れ感のなさが15分間持続したと回答したパネルが4名以上6名以下である。
D:崩れ感のなさが15分間持続したと回答したパネルが1名以上3名以下である。
E:崩れ感のなさが15分間持続したと回答したパネルが0名である。
本発明では、B以上である場合に持続効果があると判断した。
【0081】
【0082】
表5に示されるように、(a)カチオン性界面活性剤と(b)高級アルコールをモル比にして(b)/(a)=2.0~5.0の範囲内で含み、さらに(c)成分としてラウリン酸PGを含む組成物(実施例20)では、塗布時の崩れ感のなさは経時に伴って減衰するが、これに(e)高重合度のポリエチレングリコール(PEG-90M)を追加した組成物(実施例21)では、塗布時の崩れ感のなさが長時間(少なくとも15分間)にわたって持続した。さらに、(e)成分だけでなく、(f)流動油分(流動パラフィン)も追加した組成物(実施例23)では、パネル全員が15分間の持続効果を認めるという、非常に顕著な持続効果が得られた。なお、(f)流動油分のみの追加では、塗布時の崩れ感のなさの持続効果は得られなかった(実施例22)。
また、(c)成分としてラウリン酸PEG-2またはオレス-2を配合した組成物においても、(e)高重合度のポリエチレングリコールと(f)流動油分を追加することで、塗布時の崩れ感のなさが飛躍的に持続した(実施例24対実施例25、実施例26対実施例27の比較)。
【0083】
よって、(b)/(a)のモル比が2.0~5.0の範囲内となる(a)カチオン性界面活性剤と(b)高級アルコール、及び、本発明に係る(c)コサーファクタントを0.1~5質量%含む組成に、(e)高重合度のポリエチレングリコールを追加することで、塗布時の崩れ感のなさが長時間持続する毛髪化粧料が得られることが示された。そして、さらに(f)流動油分も配合すると、当該持続効果が一層顕著となることも示された。
【0084】
<試験例4>
続いて、本発明の毛髪化粧料に追加配合できるポリエチレングリコールについて検討した。下記処方の毛髪化粧料を定法に従って製造し、試験例3の方法に従って(4)塗布時の崩れ感のなさの経時変化を評価した。結果を表6に示す。
【0085】
【0086】
表6に示されるように、(a)カチオン性界面活性剤と(b)高級アルコールをモル比にして(b)/(a)=2.0~5.0の範囲内で含み、さらに(c)成分としてラウリン酸PGを含む組成物に、平均重合度が90000(実施例28)または14000(実施例29)であるポリエチレングリコールを追加した組成物では、塗布時の崩れ感のなさが顕著に持続した。
これに対し、平均分子量が400(比較例28)、または8(比較例29)であるポリエチレングリコールを追加した組成物では、塗布時の崩れ感のなさの持続効果は得られなかった。さらに、平均分子量が35万である高重合度ヒドロキシエチルセルロース(ポリクオタニウム-10)を追加した組成物においても、前記持続効果は得られなかった(比較例30)。
【0087】
よって、平均重合度が50000以上、好ましくは10000以上である高重合度ポリエチレングリコールには、本発明の(c)成分による効果((a)カチオン性界面活性剤と(b)高級脂肪酸の共存下で形成されるリンスゲルに、物理的衝撃に対する耐性を付与する効果)を維持する効果があることが示された。そして、当該ポリエチレングリコールを(a)~(c)成分とともに配合することで、塗布時の崩れ感の少ない毛髪化粧料が得られることが明らかとなった。
【0088】
以下に、本発明の毛髪化粧料の処方例を挙げる。本発明はこれらの処方例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。これらの処方例は、前述した本発明の効果を奏するものである。なお、配合量は全て毛髪化粧料全量に対する質量%で表す。
【0089】
処方例1:ヘアコンディショナー
成分 配合量(質量%)
イソペンチルジオール 3.0
ジプロピレングリコール 1.0
グリセリン 2.0
ミリスチン酸イソプロピル 0.3
ジメチコン 2.0
アモジメチコン 1.3
ポリシリコーン-13 0.1
セタノール 1.0
ステアリルアルコール 2.3
べへニルアルコール 1.0
ラウリン酸PEG-2 0.2
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム 2.9
サリチル酸 0.1
安息香酸ナトリウム 0.15
フェノキシエタノール 適量
EDTA-2Na 適量
色素 適量
香料 適量
イオン交換水 残余
合計 100.00
【0090】
処方例2:ヘアコンディショナー
成分 配合量(質量%)
イソプレングリコール 3.0
ジプロピレングリコール 1.0
ジグリセリン 2.0
ミリスチン酸イソプロピル 0.3
ジメチコン 2.0
アモジメチコン 1.3
ポリシリコーン-13 0.1
セタノール 1.0
ステアリルアルコール 2.3
べへニルアルコール 1.0
ラウリン酸ジエチレングリコール 0.2
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム 2.9
サリチル酸 0.1
フェノキシエタノール 適量
EDTA-2Na 適量
色素 適量
香料 適量
イオン交換水 残余
合計 100.00
【0091】
処方例3:ヘアコンディショナー
成分 配合量(質量%)
イソプレングリコール 3.0
ジプロピレングリコール 1.0
グリセリン 2.0
ミリスチン酸イソプロピル 0.3
ジメチコン 2.0
アモジメチコン 1.3
ポリシリコーン-13 0.1
セタノール 0.8
ステアリルアルコール 2.0
べへニルアルコール 2.2
ラウリン酸ジエチレングリコール 0.2
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム 2.7
ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート
0.5
サリチル酸 0.1
安息香酸ナトリウム 0.15
フェノキシエタノール 適量
EDTA-2Na 適量
色素 適量
香料 適量
イオン交換水 残余
合計 100.00
【0092】
処方例4:ヘアコンディショナー
成分 配合量(質量%)
イソプレングリコール 3.0
ジプロピレングリコール 1.0
グリセリン 2.0
ミリスチン酸イソプロピル 0.3
ジメチコン 2.0
アモジメチコン 1.3
ポリシリコーン-13 0.1
セタノール 1.2
ステアリルアルコール 2.5
ラウリン酸ジエチレングリコール 0.2
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム 2.9
安息香酸ナトリウム 0.15
フェノキシエタノール 適量
EDTA-2Na 適量
色素 適量
香料 適量
イオン交換水 残余
合計 100.00
【0093】
処方例5:ヘアコンディショナー
成分 配合量(質量%)
イソプレングリコール 3.0
ジプロピレングリコール 1.0
グリセリン 2.0
ミリスチン酸イソプロピル 0.01
ジメチコン 2.0
アモジメチコン 1.3
ポリシリコーン-13 0.1
セタノール 1.0
ステアリルアルコール 2.3
べへニルアルコール 1.0
ラウリン酸ジエチレングリコール 5.0
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム 2.9
サリチル酸 0.1
安息香酸ナトリウム 0.005
フェノキシエタノール 適量
EDTA-2Na 適量
色素 適量
香料 適量
イオン交換水 残余
合計 100.00
【0094】
処方例6:ヘアコンディショナー
成分 配合量(質量%)
イソプレングリコール 3.0
ジプロピレングリコール 1.0
グリセリン 2.0
ミリスチン酸イソプロピル 0.3
ジメチコン 2.0
アモジメチコン 1.3
ポリシリコーン-13 0.1
セタノール 1.0
ステアリルアルコール 1.0
べへニルアルコール 1.0
ラウリン酸ジエチレングリコール 0.2
ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート
3.0
安息香酸ナトリウム 2.5
フェノキシエタノール 適量
EDTA-2Na 適量
色素 適量
香料 適量
イオン交換水 残余
合計 100.00
【0095】
処方例7:ヘアコンディショナー
成分 配合量(質量%)
イソプレングリコール 3.0
ジプロピレングリコール 1.0
グリセリン 2.0
パルミチン酸オクチル 0.3
ジメチコン 2.0
アモジメチコン 1.3
ポリシリコーン-13 0.1
セタノール 1.0
ステアリルアルコール 2.3
べへニルアルコール 1.0
ラウリン酸ジエチレングリコール 0.2
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム 2.9
安息香酸ナトリウム 5.0
フェノキシエタノール 適量
EDTA-2Na 適量
色素 適量
香料 適量
イオン交換水 残余
合計 100.00