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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】コーナーリフレクタ
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/38 20060101AFI20230825BHJP
   F41J 2/00 20060101ALI20230825BHJP
   H01Q 15/18 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
G01S7/38
F41J2/00
H01Q15/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020008095
(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公開番号】P2021117006
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】小城 翼
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-132222(JP,A)
【文献】特開2016-156510(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第2189079(GB,A)
【文献】米国特許第6300893(US,B1)
【文献】特開2002-111370(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0750365(KR,B1)
【文献】米国特許第4503101(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-7/42
G01S 13/00-13/95
H01Q 15/14-15/22
F41J 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を反射させるコーナーリフレクタであって、
内部にガスが供給されることにより互いに直交するように環状に膨張する3つの環状バルーンと、
前記環状バルーンが環状に膨張すると平面に展開するように外周縁部が各前記環状バルーンに取り付けられた電波反射膜と、
互いに異なる前記環状バルーンの連結箇所同士を連結する弾性体と、を備え、
各前記環状バルーンが膨張することにより、前記弾性体が弾性的に伸長する、コーナーリフレクタ。
【請求項2】
4つの前記弾性体が、前記環状バルーン同士の1つの交差位置から離れて位置する4つの前記連結箇所同士を連結する、請求項1に記載のコーナーリフレクタ。
【請求項3】
非弾性材料により形成された形状安定部材を備え、
前記形状安定部材は、前記弾性体に対応して設けられ、
前記形状安定部材は、対応する前記弾性体により連結される2つの前記連結箇所に結合されており、
前記形状安定部材は、対応する前記弾性体が所定の設定長さ以上に伸長したら、張力を発生する、請求項1又は2に記載のコーナーリフレクタ。
【請求項4】
前記弾性体の一端部と他端部は、それぞれ、2つの前記連結箇所に結合され、
前記形状安定部材の一端部と他端部は、それぞれ、対応する前記弾性体の前記一端部と前記他端部に結合されている、請求項3に記載のコーナーリフレクタ。
【請求項5】
前記形状安定部材は、編物又は織物である、請求項3又は4に記載のコーナーリフレクタ。
【請求項6】
前記形状安定部材は、内部に前記弾性体を収容している、請求項3~5のいずれか一項に記載のコーナーリフレクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、追尾用レーダ装置やミサイルのレーダシーカ等からの電波を反射することにより、おとりとして機能するコーナーリフレクタに関する。
【背景技術】
【0002】
コーナーリフレクタは、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1のコーナーリフレクタ100は、図1に示すように、ガスが内部に供給されることにより環状に膨張する3つの環状バルーン101a~101cと、環状バルーン101a~101cに外周面が取り付けられた複数の電波反射膜103を備える。3つの環状バルーン101a~101cが互いに直交するように膨張すると、各電波反射膜103は、対応する環状バルーンが展開した仮想平面上に展開する。この状態で、コーナーリフレクタ100は、どの角度から電波が自身に入射して来ても、電波反射膜103によって、電波を入射してきた方向に反射することができる。
【0003】
例えば、コーナーリフレクタは、飛翔体、船、地上などから放出され、その後、空中や水上で上述のように電波反射膜を展開させる。このように展開したコーナーリフレクタは、追尾用レーダ装置やミサイルのレーダシーカからの電波を上述のように反射する。これにより、コーナーリフレクタは、レーダのおとりとして機能する。
【0004】
特許文献1のコーナーリフレクタ100では、図1に示すように、互いに異なる環状バルーン101a~101c同士において両者の交差位置から離れた4つの連結箇所同士を4つの索状部材105で連結している。各索状部材は、例えば、伸縮性が小さいナイロン索、ポリエステル索、又はワイヤーである。環状バルーンが膨張した状態で、各索状部材は、張力を発生して、連結箇所同士に互いに引き合う力を作用させる。これにより、索状部材は、コーナーリフレクタ100の形状を安定させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-132222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、例えば環状バルーンの内部にガスを供給するボンベの容量が一定であることにより、環状バルーンに供給するガス量(ガスの重さ)が一定である場合、以下の問題が生じる。コーナーリフレクタを様々な温度環境下で展開させることが想定される。上記ガス量が通常温度(例えば20℃程度)用に設定されている場合に、低温環境下(例えば-20℃程度の温度環境下)で、環状バルーンを膨張させると、環状バルーンの内部のガス圧が低くなってしまう可能性がある。その結果、環状バルーンの環状方向への伸びが小さくなる。そのため、索状部材には張力が生じないので、索状部材は、環状バルーンの連結箇所同士に互いに引き合う力を作用させることができず、コーナーリフレクタの形状安定化機能を発揮できない可能性がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、低温環境でコーナーリフレクタを膨張させた場合等において、環状バルーン内のガス圧が低くなっても、環状バルーンの連結箇所同士に互いに引き合う力を作用させることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明によるコーナーリフレクタは、電波を反射させるコーナーリフレクタであって、内部にガスが供給されることにより互いに直交するように環状に膨張する3つの環状バルーンと、環状バルーンが環状に膨張すると平面に展開するように外周縁部が各環状バルーンに取り付けられた電波反射膜と、互いに異なる環状バルーンの連結箇所同士を連結する弾性体と、を備える。各環状バルーンが膨張することにより、弾性体が弾性的に伸長する。
【発明の効果】
【0009】
上述した本発明によると、互いに異なる環状バルーンの連結箇所同士を弾性体で連結し、各環状バルーンが膨張することにより、弾性体が弾性的に伸長する。したがって、環状バルーンが、ある程度、膨張すれば、弾性体が伸長するように弾性体の長さを設定できる。よって、低温環境でコーナーリフレクタを膨張させた場合等において、環状バルーン内のガス圧が低く、環状バルーンの環状方向への伸びが小さくなっても、弾性体は、弾性的に伸長することにより、環状バルーンの連結箇所同士に互いに引き合う力を作用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】特許文献1のコーナーリフレクタを示す斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態によるコーナーリフレクタの構成例を示す斜視図である。
図3A】環状バルーン同士を連結する弾性体を示す。
図3B図3Aの3B-3B矢視図である。
図4】環状バルーンの断面図である。
図5】本発明の第2実施形態によるコーナーリフレクタの構成例を示す斜視図である。
図6】形状安定部材の断面図である。
図7】本発明によるコーナーリフレクタの他の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0012】
[第1実施形態]
(コーナーリフレクタの構成)
図2は、本発明の第1実施形態によるコーナーリフレクタ10の構成例を示す斜視図である。コーナーリフレクタ10は、環状バルーン3a,3b,3cと電波反射膜5と弾性体7と形状安定部材9を備える。
【0013】
3つの環状バルーン3a,3b,3cは、コーナーリフレクタ10に取り付けられたボンベ(図示せず)から内部にガスが供給されることにより互いに直交するように環状(例えば円形)に膨張する。すなわち、各環状バルーン3a,3b,3cが膨張した状態(以下で、単に膨張状態ともいう)で、3つの環状バルーン3a,3b,3cの環状をそれぞれ含む3つの仮想平面が互いに直交するようになっている。このような関係が得られるように、3つの環状バルーン3a,3b,3cが互いに組まれていてよい。例えば、膨張状態で各環状バルーン3a,3b,3cの環状を二等分する弦が互いに直交するように3つの環状バルーン3a,3b,3cが組まれてよい。
【0014】
本実施形態において、3つの環状バルーン3a,3b,3cは、膨張状態において、図2のように互いに交差するようになっている。膨張状態において、環状バルーン3a,3b,3c同士の交差位置Piは6つ存在する。図2において、交差位置Piは、破線の円で囲んだ位置である。
【0015】
電波反射膜5は、環状バルーン3a,3b,3cの膨張により、平面に展開するように、その外周縁部5aが環状バルーン3a,3b,3cに取り付けられる。各環状バルーン3a,3b,3cに取り付けられた各電波反射膜5は、環状バルーン3a,3b,3cの膨張により、対応する環状バルーン3a,3b又は3cの環状を含む仮想平面上に展開する。本実施形態では、膨張状態において、図2のように、互いに直交する、電波反射膜5の3つの表面を1組として、8組の表面が形成される。
【0016】
電波反射膜5の表面は、電波を反射する導電性材料で形成されている。例えば、電波反射膜5は、導電性繊維で形成された布である。ここで、導電性繊維は、ナイロン又はポリエステルの繊維に金属膜(銅や銀など)をコーティングしたものであってよい。
【0017】
弾性体7は、互いに異なる環状バルーン(例えば環状バルーン3b,3c)の連結箇所同士Pcを連結する。各環状バルーンが膨張することにより、弾性体7が弾性的に伸長する。
【0018】
4つの弾性体が、図2のように、環状バルーン同士の1つの交差位置Piから離れて位置する4つの連結箇所Pc同士を連結してよい。すなわち、弾性体7は、各交差位置Piに対して4つ設けられる。この場合、各交差位置Piについて、4つの弾性体7が、互いに異なる環状バルーン(例えば環状バルーン3b,3c)において両者の当該交差位置Piから離れて位置する4つの連結箇所Pc同士を連結する。図2において、交差位置Piは、破線の円で囲んだ位置である。各交差位置Piについて、各連結箇所Pcには、2つの弾性体7が結合されており、当該2つの弾性体7は、それぞれ、当該連結箇所Pcから互いに反対側の別々の連結箇所Pcまで延びて当該別々の連結箇所Pcに結合されている。各交差位置Piについての4つの連結箇所Pcは、当該交差位置Piから同じ距離の位置にあってよい。この場合、各弾性体7は、変形可能であり、同じ構造(材質、寸法など)を有していてよい。
【0019】
図3Aは、1つの弾性体7を示し、図3Bは、図3Aの3B-3B矢視図である。各弾性体7は、例えば、図2図3A図3Bのように索状又は帯状に形成されていてもよい。この場合、弾性体7の一端部と他端部は、それぞれ、2つの連結箇所Pcに結合される。また、この場合、弾性体7は、その長手方向(図3Aの左右方向)には弾性的に伸長可能であり、その長手方向と直交する方向には伸びても伸びなくてもよい(又は曲がっても曲がらなくてもよい)。このような弾性体7を形成する材料は、一例ではポリウレタンであってよいが、これに限定されない。
【0020】
形状安定部材9は、各弾性体7に対応して設けられる。形状安定部材9は、伸長し難い又は伸長しない非弾性材料(例えばナイロン又はポリエステル)で形成されている。形状安定部材9は、非弾性材料により索状又は帯状に形成されていてよい。このような形状安定部材9は、編物又は織物であってよい。例えば、形状安定部材9は、ナイロン糸又はポリエステル糸で編まれた又は織られた編物又は織物であってよい。
【0021】
各形状安定部材9の一端部と他端部は、図2のように対応する弾性体7により連結される2つの連結箇所Pcにそれぞれ結合されていてもよい。この結合は、後述する結合糸13を用いた縫合によりなされてよい。図3Aの例では、形状安定部材9の一端部と他端部は、それぞれ、対応する弾性体7の一端部と他端部にも結合されている。この結合は、図3Aのように例えば接着剤12によりなされてよい。なお、各形状安定部材9の一端部と他端部は、対応する弾性体7により連結される2つの連結箇所Pcにそれぞれ結合されていれば、それぞれ、対応する弾性体7の一端部と他端部に、例えば接着剤12により、直接的に結合されていなくてもよい。
【0022】
形状安定部材9は、対応する弾性体7が所定の設定長さ以上に伸長したら、張力を発生する。言い換えると、各形状安定部材9の自然長は、対応する弾性体7の自然長よりも長い。ここで、形状安定部材9の自然長は、一方の連結箇所Pcに結合される一端から他方の連結箇所Pcに結合される他端までの全長であり、各環状バルーン3a,3b,3cの膨張によって、当該形状安定部材9においてその長手方向に張力が発生し始める時の長さであってよい。同様に、弾性体7の自然長は、一方の連結箇所Pcに結合される一端から他方の連結箇所Pcに結合される他端までの全長であり、各環状バルーン3a,3b,3cの膨張によって、当該弾性体7においてその長手方向に張力が発生し始める時の長さであってよい。
【0023】
各環状バルーン3a,3b,3cを膨張させる環境が、低温環境(例えば-20℃以下の環境)であっても、低温環境よりも温度が高い非低温環境であっても、各環状バルーン3a,3b,3cの内部に上記ボンベから供給されるガス量(ガスの重さ)は、当該ボンベの容量が一定であることにより、一定であるとする。この場合、低温環境で各環状バルーン3a,3b,3cを一定の上記ガス量で膨張させると、各弾性体7は弾性的に伸長するが、低温によるガス圧の低下により各形状安定部材9には張力が発生しない。一方、非低温環境(例えば20℃以上の環境で)で各環状バルーン3a,3b,3cを一定の上記ガス量で膨張させた時に、各弾性体7は弾性的に伸長し、各形状安定部材9に張力が発生する。このように、各弾性体7の自然長と各形状安定部材9の自然長が設定されている。
【0024】
図4は、連結箇所Pcの近傍における環状バルーン3a,3b又は3cの断面図である。すなわち、図4は、1つの環状バルーン3a,3b又は3cの環状方向と直交する平面による、当該環状バルーン3a,3b又は3cの断面図である。図4は、1つの連結箇所Pcの近傍を示すが、他の各連結箇所Pcの近傍も、図4と同様に構成されていてよい。
【0025】
図4に示すように、各環状バルーン3a、3b、3cは、環状のバルーン本体8と、当該バルーン本体8に巻き付けられている拘束布11とを有する。バルーン本体8は、内部にガスが供給されることにより環状に膨張する。バルーン本体8は、気密性を有し変形可能な材料で形成されている。例えば、バルーン本体8は、ポリオレフィン又はポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルムで形成されてよい。拘束布11は、環状に膨張したバルーン本体8の当該環状の方向と直交する外周方向(図4の符号Dで示す矢印方向)に、バルーン本体8に巻き付けられている。
【0026】
拘束布11は、上記環状の方向に一周するように環状バルーン3a、3b、3cに沿って当該方向に延びていてよい。例えば、拘束布11は、上記環状の方向において切れ目なく連続する無端状のものであってよい。
【0027】
弾性体7の各端部は、図4のように、結合糸13を用いた縫合により、環状バルーン3a,3b,3cにおける連結箇所Pcに結合されていてよい。すなわち、弾性体7の各端部は、対応する連結箇所Pcにおける拘束布11に、結合糸13により縫い付けられている。また、弾性体7の一端部と他端部は、それぞれ、対応する形状安定部材9の一端部と他端部と共に、対応する2つの連結箇所Pcにおける拘束布11に、結合糸13により縫い付けられていてよい。
【0028】
なお、電波反射膜5の外周縁部5aは、図4のように、拘束布11に結合糸15で縫い付けられていてよい。これにより、電波反射膜5の外周縁部5aが、環状バルーン3a,3b,3cに取り付けられる。
【0029】
(第1実施形態の効果)
上述した第1実施形態によると、各環状バルーン3a,3b,3cの環状への膨張が不十分であっても、各弾性体7は弾性的に伸長する。したがって、低温環境下(例えば-20℃程度の環境下)で環状バルーン3a,3b,3cを環状に膨張させた場合に、低温によりガス圧が低下して、各環状バルーン3a,3b,3cの膨張が不十分であっても、互いに異なる環状バルーン3a,3b,3cの交差位置Piに対する4つの弾性体7が、環状バルーン3a,3b,3cに弾性力を作用させることができる。各環状バルーン3a,3b,3cにおける各連結箇所Pcには、当該環状バルーン3a,3b,3cの環状の中心軸方向における一方側と他方側へ2つの弾性体7が弾性力を作用させる。したがって、環状バルーン3a,3b,3c同士(すなわち電波反射膜5同士)の直交性を保つことができる。
【0030】
この時、各形状安定部材9は、張力が生じていない状態であるので、その機能を発揮しない。
【0031】
一方、非低温環境(例えば20℃以上の環境)下で各環状バルーン3a,3b,3cを膨張させた場合には、各環状バルーン3a,3b,3cにおける各連結箇所Pcに、当該環状バルーン3a,3b,3cの環状の中心軸方向における一方側と他方側へ2つの形状安定部材9がその張力の反力を作用させる。したがって、形状安定部材9により、環状バルーン3a,3b,3c同士(すなわち電波反射膜5同士)の直交性を安定化させることができる。
【0032】
すなわち、形状安定部材9は、伸長し難い又は伸長しない材料で形成されているので、非低温環境での膨張状態において、各形状安定部材9により連結される2つの連結箇所Pc同士の距離を設定値に保ちやすいので、環状バルーン3a,3b,3c同士の直交性を安定化させることができる。
【0033】
形状安定部材9の一端部と他端部は、上述のように、それぞれ、対応する弾性体7の一端部と他端部に結合されていてもよい。これにより、弾性体7と形状安定部材9を、一体で取り扱うことができるので、弾性体7と形状安定部材9を環状バルーン3a,3b,3cの連結箇所Pcに結合させる作業の負担が減る。
【0034】
[第2実施形態]
(コーナーリフレクタの構成)
図5は、本発明の第2実施形態によるコーナーリフレクタ10を示す。以下において、第2実施形態によるコーナーリフレクタ10について説明するが、第2実施形態において以下で説明しない構成は、第1実施形態と同じであってよい。
【0035】
第2実施形態によるコーナーリフレクタ10では、形状安定部材9の形状が第1実施形態の場合と異なる。第2実施形態において、形状安定部材9は、内部に弾性体7を収容している。形状安定部材9は、索状又は帯状の弾性体7を内部に収容した状態(例えば後述の図6の状態)で、弾性体7の一端部から他端部まで弾性体7に沿って延びている。形状安定部材9は、第1実施形態と同様に、各弾性体7に対応して設けられる。したがって、形状安定部材9は、図5のように、互いに異なる環状バルーン(例えば環状バルーン3b,3c)における連結箇所Pc同士を連結するように、一端部と他端部がそれぞれ当該連結箇所Pc同士の一方と他方に結合されている。形状安定部材9は、各交差位置Piに対して4つ設けられる。すなわち、各交差位置Piについて、4つの形状安定部材9が、互いに異なる環状バルーン3a,3b,3cにおいて両者の当該交差位置Piから離れた4つの連結箇所Pc同士を連結する。
【0036】
図6は、1つの形状安定部材9の断面図である。図6は、形状安定部材9の一端部から他端部へ向かう方向に直交する平面による断面図である。各形状安定部材9は、図6と同じ断面構造を有していてよい。図6に示すように、筒状の形状安定部材9の内部に、対応する弾性体7が配置されてよい。各弾性体7は、一端部と他端部がそれぞれ2つの連結箇所Pcに結合され、対応する形状安定部材9の内部において当該一端部から他端部まで延びている。また、形状安定部材9の一端部と他端部は、それぞれ、対応する弾性体7の一端部と他端部に結合されていてもよい。
【0037】
互いに対応する形状安定部材9と弾性体7は、これらの一端部が、連結箇所Pcにおいて、上述した拘束布11に結合糸により縫い付けられ、これらの他端部が、別の連結箇所Pcにおいて拘束布11に結合糸により縫い付けられていてよい。これにより、互いに対応する形状安定部材9と弾性体7は、これらの一端部と他端部が、2つの連結箇所Pcに結合されている。
【0038】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態においても、第1実施形態と同じ効果が得られる。また、形状安定部材9が弾性体7を覆っているので、形状安定部材9と弾性体7が一体化して1本の帯又は索のようになっている。これにより、環状バルーン3a,3b,3cの膨張時に、形状安定部材9と弾性体7が環状バルーン3a,3b,3cに絡まり難くなる。
【0039】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、次の変更例1~3のいずれかを採用してもよいし、変更例1~3の2つ以上を任意に組み合わせて採用してもよい。この場合、以下で説明しない点は、上述の第1実施形態又は第2実施形態と同じであってよい。
【0040】
(変更例1)
上述した第1実施形態において、形状安定部材9は省略されてもよい。この場合、非低温環境においても、各弾性体7が弾性的に伸長するので、低温環境下の場合と同様に、弾性体7の弾性力により環状バルーン3a,3b,3c同士の直交性を保つことが可能となる。
【0041】
(変更例2)
弾性体7は、上述では索状であったが、他の形状を有していてもよい。例えば、膨張状態において、弾性体7は、図7のように網状に又はシート状(布状)に形成されたものであってもよい。図7において、各弾性体7は、弾性的に伸長可能な材料(例えばポリウレタン)で形成されている。各弾性体7は、互いに異なる2つの環状バルーン3a,3b,3cにおける2つの連結箇所Pc及び他の箇所に結合されていてよい。例えば、各弾性体7は、互いに異なる2つの環状バルーン(例えば環状バルーン3b,3c)における、両者の交差位置Piから2つの連結箇所Pcまでの部分に結合されていてよい。
【0042】
変更例2において、各形状安定部材9の両端部は、第1実施形態と同様に2つの連結箇所Pcにそれぞれ結合されていてよい。この場合、各形状安定部材9は、上述のように索状又は帯状であってもよいし、膨張状態において弾性体7と同様に網状又はシート状(布状)になるものであってもよい。後者の場合、網状又はシート状(布状)の各形状安定部材9は、弾性体7と同様に、互いに異なる2つの環状バルーン3a,3b,3cにおける2つの連結箇所Pcと、当該連結箇所Pcから間隔をおいて他の箇所(1箇所又は互いに間隔をおいた複数箇所)とに結合されていてよい。ただし、変更例2において、形状安定部材9を省略してもよい。
【0043】
(変更例3)
上述した第1実施形態又は第2実施形態によるコーナーリフレクタ10は、上記ボンベの不具合又は他の要因により、上記ボンベから各環状バルーン3a,3b,3cへ供給されるガス量が設定量よりも少なくなってしまう状況においても有効である。
【0044】
すなわち、コーナーリフレクタ10において、例えば上記ボンベの不具合又は他の要因により、各環状バルーン3a,3b,3cの膨張が相対的に小さい場合には、各弾性体7は弾性的に伸長するが、各形状安定部材9には張力が発生せず、上記ボンベが正常に機能することにより各環状バルーン3a,3b,3cの膨張が相対的に大きい場合には、各弾性体7は弾性的に伸長し、各形状安定部材9において張力が発生する。
【0045】
前者の場合には、各環状バルーン3a,3b,3cの膨張が不十分であるが、各弾性体7により、環状バルーン3a,3b,3c同士の直交性が保たれる。後者の場合には、各環状バルーン3a,3b,3cの膨張が十分であり、各形状安定部材9により、環状バルーン3a,3b,3c同士の直交性が安定化する。
【符号の説明】
【0046】
3a,3b,3c 環状バルーン、5 電波反射膜、5a 外周縁部、7 弾性体、9 形状安定部材、10 コーナーリフレクタ、11 拘束布、12 接着剤、13 結合糸、15 結合糸、Pi 交差位置、Pc 連結箇所
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7