(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】車両のフロアカーペット装着用クリップ
(51)【国際特許分類】
B60N 3/04 20060101AFI20230825BHJP
【FI】
B60N3/04 B
(21)【出願番号】P 2020050559
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100088708
【氏名又は名称】山本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】古内 英
(72)【発明者】
【氏名】浜本 拓哉
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0155015(US,A1)
【文献】実開平01-078710(JP,U)
【文献】実開平07-033737(JP,U)
【文献】実開平04-007713(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下フランジ部及び該下フランジ部上面に突出された軸部を有した雄部材と、前記軸部を挿入する筒状部及び該筒状部の外周に突出された上フランジ部を有した雌部材とを備え、車両のフロアカーペットに設けられた挿通孔に前記軸部を孔下側より孔上方へ貫通させ、この貫通した前記軸部の突出部に前記筒状部を係合することにより、前記フロアカーペットを前記下フランジ部及び上フランジ部にて挟持した状態で該フロアカーペットに装着されて、該フロアカーペット上面に載置されるフロアマッ
トを前記雌部材の筒状部を利用して固定可能にするフロアカーペット装着用クリップであって、
前記雄部材は、
前記下フランジ部及び軸部を軸方向に貫通した孔部と、
前記軸部の外周に突出
されて前記筒状部の内周に設けられた係合部
に係合する係合凸部
と、
前記下フランジ部に対し折り畳み可能に連結された連結片に突設されて前記係合部に前記係合凸部を弾性係合した状態で、前記孔部に押入されることにより前記係合凸部が前記係合部から係合解除される方向に撓むのを阻止する規制部材
とを有し、
また、前記下フランジ部の下面周縁部を前記連結片と一体化されている側を除いて一段高く設け、前記連結片が前記下フランジ部下面に重ねられた状態で前記周縁部の内側に収まることを特徴とするフロアカーペット装着用クリップ。
【請求項2】
前記雄部材の軸部は前記孔部により複数の軸片に分割されていることを特徴とする請求項1に記載のフロアカーペット装着用クリップ。
【請求項3】
前記連結片が一部に設けられた薄肉ヒンジを介し折り畳み可能
になっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフロアカーペット装着用クリップ。
【請求項4】
前記連結片が前記下フランジ部との間に設けられた屈曲変位可能な細さの接続片を介し折り畳み可能
になっていることを特徴とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のフロアカーペット装着用クリップ。
【請求項5】
前記規制部材は、前記雄部材の下フランジ部に設けられた係止部に係合する爪部を有していることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のフロアカーペット装着用クリップ。
【請求項6】
前記係止部は、
前記下フランジ部のうち、前記孔部の対応縁部及び前記孔部から延びた2以上のスリットにより区画されていることを特徴とする請求項5に記載のフロアカーペット装着用クリップ。
【請求項7】
前記雄部材の軸部は前記係合凸部を軸方向に複数有していると共に、前記雌部材の筒状部は前記
上フランジ部の下面から下方へ突出しかつ前記係合部を内面に形成している下突出部分を有していることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載のフロアカーペット装着用クリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等のフロアカーペットに装着されて該フロアカーペット上に載置されるフロアマット等の物品を固定する車両のフロアカーペット装着用クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
図11は特許文献1に開示のクリップ構造であり、(a)はフロアカーペット装着用クリップを構成している雌部材(キャップ部材)5及び雄部材(ピン部材)4と、雌部材5に対しフロアマット1を固定可能にするマットキャップ6との関係を示し、(b)はマットキャップ6を雌部材5に固定した使用状態を示している。このうち、雄部材4は、フロアカーペット3の下面に配置される下フランジ部4aと、下フランジ部上面に突設されてフロアカーペットに設けられた挿入孔3aに貫通される有底筒状の軸部4bと、軸部4bにスリットを介して区画された対の弾性係合片7,7と、各弾性係合片7の外周に設けられた係合凸部7aとを有している。雌部材5は、軸部4bを挿入する筒状部 5bと、筒状部5bの外周に突出された上フランジ部5aと、筒状部の内周に設けられて係合凸部7aと係合する周方向溝8と、筒状部の上側周囲に設けられた径小フランジ部5cとを有している。
【0003】
そして、このクリップ構造では、フロアカーペット3に設けられた挿通孔3aに軸部4bを孔下側より孔上方へ貫通させ、この貫通した軸部の突出部である弾性係合片7の係合凸部7aに筒状部5bの周方向溝8を係合することにより、フロアカーペット3を下フランジ部4a及び上フランジ部5aにて挟持した状態で該フロアカーペットに装着され、また、フロアカーペット上面に載置されるフロアマット1を雌部材側筒状部5bを利用して固定可能にする。すなわち、同図のマットキャップ6は、フロアマット1に設けられた挿通孔1aに配置されて雌部材の筒状部5bを挿入する筒状胴部6aと、筒状胴部の外周上下部に設けられてフロアマット1を上下から挟む上下つば部6b,6cと、筒状胴部6aにスリットを介して区画された対の係止片9,9と、各係止片の内面上側に設けられて雌部材の径小フランジ部5cと係合する係合凸部9aとを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記フロアカーペット装着用クリップを用いた
図11(b)の使用状態から、フロアマットをフロアカーペットから外す場合は、フロアマットをフロアカーペットから離れる方向へ引っ張ると、マットキャップ側係合凸部が雌部材側径小フランジ部に対し係止片の拡径方向へ弾性変位を伴って係合解除する。ところが、この操作では、フロアマットの引っ張り力が大きかったり、引っ張り方向によっては雌部材の周方向溝が雄部材側係合片の係合凸部との係合を解除して、雌部材がマットキャップと共に外れる虞があった。また、雄部材側軸部を雌部材側筒状部内に挿入して周方向溝に係合凸部を係合する操作では、軸部や弾性係合片が縮径方向に変位し難いため過大な軸部挿入力が必要となり、操作性に欠けていた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、以上のような課題を解消して、雌・雄部材からなるフロアカーペット装着用クリップとして、雌・雄部材に高い抜去力を付与でき、雌部材がフロアマット等の物品と共に雄部材から不用意に外れる虞を解消できるようにする。他の目的は以下の内容説明の中で明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、図面を参照して特定すると、下フランジ部(30)及び該下フランジ部上面に突出された軸部(35)を有した雄部材(3)と、前記軸部を挿入する筒状部(20)及び該筒状部の外周に突出された上フランジ部(25)を有した雌部材(2)とを備え、車両のフロアカーペット(15)に設けられた挿通孔に前記軸部を孔下側より孔上方へ貫通させ、この貫通した前記軸部の突出部に前記筒状部を係合することにより、前記フロアカーペットを前記下フランジ部及び上フランジ部にて挟持した状態で該フロアカーペットに装着されて、該フロアカーペット上面に載置されるフロアマットを前記雌部材の筒状部(20)を利用して固定可能にするフロアカーペット装着用クリップ(1)であって、前記雄部材(3)は、前記下フランジ部(30)及び軸部(35)を軸方向に貫通した孔部(37)と、前記軸部(35)の外周に突出されて前記筒状部の内周に設けられた係合部(26,27)に係合する係合凸部(39)と、前記下フランジ部(30)に対し折り畳み可能に連結された連結片(32)に突設されて前記係合部に前記係合凸部を弾性係合した状態で、前記孔部に押入されることにより前記係合凸部が前記係合部から係合解除される方向に撓むのを阻止する規制部材(34)とを有し、また、前記下フランジ部(30)の下面周縁部(30a)を前記連結片(32)と一体化されている側を除いて一段高く設け、前記連結片(32)が前記下フランジ部下面に重ねられた状態で前記周縁部(30a)の内側に収まることを特徴としている。
としている。
【0008】
以上の本発明は請求項2から7のごとく具体化されることが好ましい。すなわち、
(ア)、請求項1において、前記軸部は前記孔部により複数の軸片(38)に分割されている構成である(請求項2)。
(イ)、請求項1又は2において、前記連結片(32)が一部に設けられた薄肉ヒンジ(32a)を介し折り畳み可能になっている構成である(請求項3)。
【0009】
(ウ)、請求項1又は2において、前記連結片(32)が前記下フランジ部との間に設けられた屈曲変位可能な細さの接続片(33)を介し折り畳み可能になっている構成である(請求項4)。
(エ)、請求項1から4の何れかにおいて、前記規制部材(34)は、前記雄部材の下フランジ部に設けられた係止部(31)に係合する爪部(34a)を有している構成である(請求項5)。
【0010】
(オ)、請求項5において、前記係止部(31)は、前記孔部(37)の対応縁部及び前記孔部から延びた2以上のスリット(36)により区画されている構成である(請求項6)。なお、このスリットは、形態例のごとく一般的に2つであるが、2以上と特定したのは例えばスリットとスリットの間にもう一つのスリットを形成するような構成も考えられるためである。
(カ)、請求項1から6の何れかにおいて、前記雄部材の軸部(35)は前記係合凸部を軸方向に複数有していると共に、前記雌部材の筒状部(20)は前記上フランジ部の下面から下方へ突出しかつ前記係合部を内面に形成している下突出部分(20a)を有している構成である(請求項7)。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、特許文献1のような構造に比べ、雄部材が下フランジ部及び軸部を軸方向に貫通した孔部と、軸部の外周に突出した係合凸部と、
前記下フランジ部に対し折り畳み可能に連結された連結片に突設された規制部材とを有し、雌部材に対し筒状部の内周に設けられた係合部に係合凸部を弾性係合した
図4の状態から、
図5や
図7に示されるごとく孔部に規制部材を押入操作することにより軸部の縮径方向の変位を阻止し、それにより雌部材側係合部に対する雄部材側係合凸部の係合解除が不能となるため高い抜去力を付与でき、外力が加わってもフロアカーペット装着状態を安定維持可能となる。
【0012】
請求項2の発明では、雄部材の軸部が孔部により複数の軸片に分割されているため、雌部材の筒状部内への挿入過程で軸片同士が縮径方向に変位し易いため軸部の筒状部への挿入荷重を軽減でき、フロアカーペットに対する組み付け操作性を向上できる。
【0013】
請求項3の発明では、前記連結片が一部に設けられた薄肉ヒンジを介し折り畳み可能に連結されているため、規制部材を雄部材と分離した構成に比べ取扱性に優れ、また、規制部材が孔部に完全に挿入されていないと、その不完全挿入状態を薄肉ヒンジの状態により目視やセンサーにより検出して誤組付けを回避し易くなる。
【0014】
請求項4の発明では、前記連結片が前記下フランジ部との間に設けられた屈曲変位可能な接続片により折り畳み可能に連結されているため、請求項3と同様に取扱性に優れ、請求項3に比べて軽量化を図り易い構成となる。
【0015】
請求項5の発明では、規制部材が雄部材の下フランジ部に設けられた係止部に係合する爪部を有しているため、係止部に対する爪部の係合により軸部の孔部に挿入された状態を確実に維持可能となる。
【0016】
請求項6の発明では、係止部が
図1や
図10に示されるごとく孔部の対応縁部及び孔部から延びた2以上のスリットにより区画されているため、係止部が簡易であり、また孔部に対し規制部材を挿入した最終段階で爪部が係止部にクリック感を持って係合するため組み付け操作性に優れている。
【0017】
請求項7の発明では、雄部材の軸部が係合凸部を軸方向に複数有しているため、更に雌部材の筒状部が
上フランジ部下面から下方へ突出しかつ係合部を内面に形成している下突出部分を有しているため、
図8に示したごとくフロアカーペットの厚さが変わっても対応でき、厚さ寸法吸収作用に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】発明形態のフロアカーペット装着用クリップ及び該クリップに係合されるフロアマット装着用挟持体を示す概略分解斜視図である。
【
図2】(a)は
図1のクリップ及び挟持体をフロアカーペットやフロアマットと共に示す上面図、(b)は正面図である。
【
図4】(a)と(b)は
図3の態様から上記クリップをフロアカーペットに装着すると共に、上記挟持体をフロアマットに装着した状態を示す正面図と断面図である。
【
図5】(a)と(b)は
図4の態様からフロアカーペットをフロアマットにクリップと挟持体の係合により取り付けた状態を示す正面図と断面図である。
【
図6】(a)から(c)は、上記クリップを構成している雌部材と雄部材の構成を雌部材に対する雄部材の仮止め状態を示す上面図、正面図、(a)のB-B線断面図である。
【
図7】(a)から(c)は、上記クリップを構成している雌部材と雄部材の構成を雌部材に対する雄部材の本止め状態を示す上面図、正面図、(a)のB1-B1線断面図である。
【
図8】(a)は雌部材に対する雄部材の本止め状態で
図7(a)のC-C線断面図、(b)と(c)はフロアカーペットの厚さを変えた2例を(a)と同様な断面で示すカーペットの厚さ寸法吸収作用図である。
【
図9】上記挟持体を構成している上下挟持部材の構成を示し、(a)は上下挟持部材の関係を示す正面図、(b)は上挟持部材の下面図、(c)は下挟持部材の上面図、(d)は上下挟持部材を係合した挟持体の模式断面図である。
【
図10】上記クリップを構成している雄部材を示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は雄部材の変形例を(a)と同様な状態で示した上面図である。
【
図11】(a)と(b)は特許文献1の
図3と
図5を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の最適な形態を図面を参照しながら説明する。この説明では、車両のフロアカーペット装着用クリップの構造とその作動特徴、フロアマット装着用挟持体の構造とその作動特徴、クリップと挟持体の関係、つまりフロアカーペットに対しフロアマットを取り付けるためのクリップと挟持体の連結構造、変形例の順に詳述する。
【0020】
(クリップの構造)形態例のフロアカーペット装着用クリップ1は、筒状部20及び筒状部20の外周に突出された上フランジ部25並びに筒状部20の内周に設けられた係合部26,27を有した雌部材2と、下フランジ部30及び下フランジ部30の上面に突出されて筒状部20内へ挿入される軸部35並びに軸部35の外周に設けられた係合凸部39とを有した雄部材3とを備え、車両のフロアカーペット10に設けられた挿通孔11に軸部35を孔下側より孔上方へ貫通させ、この貫通した軸部35の突出部に筒状部20を係合することにより、フロアカーペット10を下フランジ部30及び上フランジ部25にて挟持した状態でフロアカーペット10に装着される。また、このクリップ1は、フロアカーペット上面に載置されるフロアマット12を雌部材2の筒状部20と、フロアマット装着用挟持体6を構成している上挟持部材5に設けられた係止片52とを利用して係合固定可能にするものである。
【0021】
主な工夫点としては、雄部材3が下フランジ部30及び軸部35を軸方向に貫通した孔部37を形成している構成、軸部35はその孔部37により揺動自在な複数の軸片38に分割されている構成、雄部材3が雌部材2に対し筒状部の係合部26,27に軸部の係合凸部39を弾性係合した状態で、孔部37に押入されると係合凸部39が係合部26,27から係合解除される方向に撓むのを阻止可能にする規制部材34を有している構成、規制部材34は雄部材の下フランジ部30に設けられた弾性係止部31に係合する爪部34aを有している構成などである。以下、これらの細部を明らかにする。なお、雌部材2、雄部材3、下挟持部材4、上挟持部材5は共に樹脂成形体であるが、樹脂以外であっても差し支えない。
【0022】
ここで、クリップ1を構成している雌部材2において、上フランジ部25は概略円盤状をなし、フロアカーペット10の上面に当接される。筒状部20は、
図3と
図5に示されるごとく上端を閉じた逆有底筒状をなし、高さはフロアマット12の厚さより若干大きい寸法であり、内部23の入口側内周に形成された係合部26,27と、外周の基部側に形成された係止部22とを有している。また、筒状部20は、フランジ部25の下面から若干下方へ突設された下突出部分20aを有し、下突出部分20aが筒状部の入口を形成していると共に、係合部26,27が下突出部分20aの内周に設けられている。
【0023】
係合部26は凸形であり、係合部27は係合部26と係合部26の間にある凹形である。このような下突出部分20aは、係合部26,27をフランジ部25より下側に位置させることで、
図8に示したカーペットの厚さ寸法吸収作用をより有効にする。一方、係止部22は、筒状部20の基部に位置し、上側に突設された径大部21の存在により凹形となっている。径大部21は、上から下に行くほど次第に径方向への突出量を増す傾斜面である。この係止部22には、後述するごとく上挟持部材5に設けられた係止片52の爪部52aが径大部21を弾性的に乗り越えたときに係合される(
図5を参照)。
【0024】
また、雄部材3において、軸部35は、下フランジ部30から軸上端まで軸方向へ貫通形成したスリット状の孔部37により一対の軸片38に分割されている。両軸片38は、孔部37の大きさに相当する所定間隔を保って対向しており、対向面の一部に更に欠肉した欠肉部37aを形成している。また、各軸片38は、蒲鉾状をなし、円弧状の外周に複数の係合凸部39を形成している。すなわち、係合凸部39は、軸片38の基端から上端にわたって等間隔に多数設けられている。
【0025】
下フランジ部30は、上フランジ部25とほぼ同じ大きさの円盤状をなし、フロアカーペット10の下面に当接される。また、下フランジ部30は、孔部37と対応する箇所にあって対向して設けられた一対の係止部31と、薄肉ヒンジ32aを介して折り畳み可能に設けられた連結片32及び連結片に突設された規制部材34とを有している。下フランジ部30の下面は、
図3から
図5に示されるごとく連結片32と一体化されている側を除いた周縁部30aが一段高く設けられ、連結片32が周縁部30aの内側に収まる様になっている。
【0026】
係止部31は、下フランジ部30にあって、孔部37の対応縁部及び孔部37から延びたハ形つまり2つのスリット36により上下方向揺動自在に区画形成されている。連結片32は、薄肉ヒンジ32aを支点として回動されて下フランジ部下面に重ねられると、下フランジ部30の下面周縁部30a内に面一に収まる。規制部材34は、
図1及び
図7(c)に示されるごとく孔部37に挿入可能な略矩形の板状をなし、外面及び外面と対向する内面の上側に突設された爪部34a,34aと、両側面の上側に突出されて下から上側に行くほど突出量を増すよう設けられた張出部34b,34bと、外面の先端に設けられた傾斜部34cとを有している。そして、この規制部材34は、連結片32及び薄肉ヒンジ32aを介して折り曲げられながら孔部37に押入されると、各爪部34aが対応する係止部31を弾性変位しながら通過し、通過と同時に係止部31と係合される。なお、符号32bは規制部材34の内面に設けられる爪部34aを形成可能にする型抜き穴であり、符号32cは規制部材34の上側に設けられた凹部である。
【0027】
(クリップの作動特徴)次に、以上のクリップ1をフロアカーペット10に装着する取付操作について説明する。
(1)この初期操作では、例えば、
図3のごとく雌部材のフランジ部25を車両のフロアカーペット10の上面に当接した後、雄部材の軸部を構成している各軸片38を挿通孔11に孔下側より孔上方へ貫通させるようにし、つまり下フランジ部30がフロアカーペット10の下面に当接されるまで各軸片38を挿通孔11に差し込む。この過程では、係合部26,27が上側の複数の係合凸部39に係脱しながら内部23に各軸片38を受入れる。最終的には、
図4のごとく凹形の係合部27が対応する位置にある係合凸部39と係合し、凸形の係合部26が係合凸部39と係合凸部39との間にある凹部と係合する。この係合操作では、各軸片38が孔部38により分割されて縮径方向に容易に弾性変位することから、従来構造に比べ弱い押入力で行うことができる。
【0028】
(2)この構造では、以上の軸片の係合凸部39と筒状部の係合部26,27の係合状態から、
図6と
図7のごとく連結片32及び薄肉ヒンジ32aを介して下フランジ部30側に折り曲げて、規制部材34を孔部37に押入操作する。この過程では、連結片32が薄肉ヒンジ32aを支点として折り曲げられると、
図6(c)のごとく規制部材34の先端側が下フランジ部の孔部37に挿入されて対応する側の係止部31に当たる。その後、規制部材34は、傾斜部34cが係止部31を滑りながら通り抜けた後、
図7(c)のごとく連結片32が下フランジ部30の下面に当たると、爪部34aが係止部31を揺動変位しながら通過し、通過と同時に係止部31と係合する。その際、係止部31は弾性変位に伴うクリック音を発し、各爪部34aが対応する係止部31に係合完了したことを察知可能にする。張出部34bは、軸片の欠肉部37aに嵌合することで規制部材34の係合状態を安定保持可能にする。それにより、この構造では、雌部材側係合部26,27に対する雄部材側係合凸部39の係合解除が規制部材34により不能となり、雌・雄部材2,3として高い抜去力を付与でき外力が加わってもフロアカーペット装着状態を安定維持可能となる。
【0029】
(3)加えて、この構造では、筒状部20内の係合部26,27が各軸片38の軸方向に設けられた多数の係合凸部39のうち、任意位置の係合凸部39と係合可能である。このため、
図8(a)~同(c)の例のごとくフロアカーペット10の厚さt1~t3のごとく変更されても使用可能となる。具体的には、
図8(a)のフロアカーペットの厚さt1が標準とすれば、厚さt1より薄い同(b)の厚さt2のフロアカーペット10の場合だと係合部26,27が各軸片の下側に位置した係合凸部39と係合する(フロアカーペットの厚さ寸法吸収作用1)。逆に、厚さt1より厚い同(c)の厚さt3のフロアカーペット10の場合だと係合部26,27が各軸片の上側に位置した係合凸部39と係合する(フロアカーペットの厚さ寸法吸収作用2)。すなわち、この構造では、特に、雌部材側の筒状部20が上フランジ部25の下面から下方へ突設された下突出部分20aを有し、係合部26,27を下突出部分20aに形成しているため、フロアカーペット10の厚さ寸法吸収作用に優れている。
【0030】
(挟持体の構造)形態例のフロアマット装着用挟持体6は、
図1、
図3、
図9に示されるごとく下フランジ部40及び下フランジ部の中心に貫通された孔部41並びに孔部41の外側に設けられて同心円上に所定間隔を保って突設された複数の係止片45を有した雌型の下挟持部材4と、上フランジ部50及び上フランジ部50の中心に貫通されて筒状部20を挿入可能な孔部51並びに上フランジ部の下面に設けられて係止片45と係合される筒部55と筒部55の内側に設けられて雌部材側筒状部の係止部21と係合される複数の係止片52とを有した雄型の上挟持部材5とを備え、フロアカーペット10上に配置されるフロアマット12に設けられた挿通孔13に各係止片45を孔下側より挿入させると共に、挿入孔13の上側より筒部55を挿入して係止片45に係合することにより、フロアマット12を下フランジ部40及び上フランジ部50にて挟持した状態でフロアマット12に装着される。そして、この構造では、フロアカーペット上面に載置されるフロアマット12を雌部材側筒状部20と、上挟持部材側の係止片52との係合により係合固定可能にする。
【0031】
詳述すると、下挟持部材4は、略円盤状の下フランジ部40が中心に上下貫通した孔部41と、下フランジ部上面にあって孔部41と同心円上に所定間隔を保って突出された複数(この例では4つ)の係止片45と、各係止片45に穴部43を介在しかつ係止片45同士の間のフランジ部分に接続部44を介して連結保持されて孔部41の内径を区画している円状部42と、上面外周側にあって同心円上に突出された複数のピン40aとを一体に形成している。各係止片45は、フロアマット12の厚さより若干小さい高さ寸法であり、
図1及び
図9(d)に示されるごとく突出端の内側に爪部45aを突出している。
【0032】
また、上挟持部材5は、下フランジ部40と略同形の上フランジ部50が中心に設けられた上下貫通した孔部51と、上フランジ部下面にあって孔部51と同心円上に突出された筒部55と、筒部55の突出端から外側へ突出されて係止片45の爪部45aと係合する爪部55aと、筒部55より内径側に位置し孔部51と同心円上にあって所定間隔を保って突出された複数(この例では4つ)の係止片52と、下面外周側にあって同心円上に突出された複数のピン50aとを一体に形成している。孔部51は孔部41より小さな孔である。各係止片52は、筒部55よりも若干長く設定されており、
図9(d)に示されるごとく突出端の内側に突出した爪部52aを有し、該爪部52aが雌部材側筒状部の係止部22と係合する。
図9中、符号53は筒部55と係止片52の間に設けられたリブであり、符号56は筒部55に連設されたリブである。これらは省略可能である。
【0033】
(挟持体の作動特徴)次に、以上の挟持体6をフロアマット12に装着する取付操作例について概説する。
(4)この取付操作では、例えば、
図3のごとく上挟持部材5の筒部55をフロアマット12の挿通孔13に上側より下方へ挿入させると、上フランジ部50がフロアマット12の上面に当接される。次に、その状態を保って、下挟持部材4がフロアマット12の下側から上挟持部材5に対向配置され、更に上挟持部材5に重ねられる。すると、各係止片45の爪部45aが対応する係止片52の爪部52aに弾性係合する。この係合構造では、
図4のごとくフロアマット12を上下フランジ部50,40により挟持した状態で、
図9(d)のごとく各係止片55が対応する係止片45に爪部55aと爪部45aの係合を介して連結され、かつ、爪部55aが円状部42の対応部に当たることで係止片45の不用意な揺動を規制し、それにより連結状態を安定維持可能である。
【0034】
(クリップと挟持体の関係)次に、
図4及び
図5に示されるごとくフロアカーペットに対しフロアマットを取り付けるため上記クリップと挟持体の連結構造を明らかにする。
(5)この構造では、フロアカーペット10にクリップ1を装着し、フロアマット12に挟持体6を装着した状態から、クリップ側筒状部20と上挟持部材側の係止片52の係合によりフロアマット12をフロアカーペット10に取付可能にする。この操作では、上挟持部材5の複数の係止片52で区画される空間に筒状部20を押入する。その押入途中では、筒状部の径大部21が係止片52の爪部52aに当たるが、更に押入すると、径大部21が係止片52の弾性変位を伴って爪部52aを通過し、通過と同時に爪部52aが係止部22に係合固定される。なお、この係合構造では、係止部22が爪部52aに係合した状態から、規制部材34を孔部37に挿入するようにしてもよい。
【0035】
(変形例)
図10(c)は上記規制部材32と下フランジ部30の間に介在された連結片32の薄肉ヒンジ32aの変形例を示している。この説明では、以上の形態例と同一又は類似する箇所には同じ符号を付し、重複した記載を極力省く。すなわち、同図の連結片32は規制部材32を突出している箇所と下フランジ部30との間を細い接続片33で接続している。接続片33は、屈曲変位可能な細く形成されているため、薄肉ヒンジ構成に比べ軽量化が図られている
。
【0036】
以上のように、本発明は、請求項で特定される構成を備えておればよく、細部は変形例のごとく必要に応じて種々変更可能なものである。
【符号の説明】
【0037】
1・・・・・フロアカーペット装着用クリップ
2・・・・・雌部材
3・・・・・雄部材
4・・・・・下挟持部材
5・・・・・上挟持部材
6・・・・・フロアマット装着用挟持体
10・・・・フロアカーペット(11は挿通孔)
12・・・・フロアマット(物品であり、12は挿通孔)
13・・・・フロアカーペット(14は挿通孔)
15・・・・フロアカーペット(16は挿通孔)
20・・・・雌部材の筒状部(20aは下突出部分)
22・・・・係止部(21は径大部)
25・・・・雌部材の上フランジ部
26・・・・凸形の係合部
27・・・・凹形の係合部
30・・・・雄部材の下フランジ部
31・・・・係止部
32・・・・連結片(32aは薄肉ヒンジ)
33・・・・屈曲変位可能な接続片
34・・・・規制部材(34aは爪部)
35・・・・雄部材の軸部
36・・・・スリット
37・・・・孔部
38・・・・軸片
39・・・・係合凸部
40・・・・下挟持部材の下フランジ部(41は孔部)
45・・・・下挟持部材の係止片(45aは爪部)
50・・・・上挟持部材の上フランジ部(51は孔部)
52・・・・上挟持部材の係止片(52aは爪部)
55・・・・上挟持部材の筒部(55aは爪部)