IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オーク製作所の特許一覧

<>
  • 特許-光源装置およびオゾン生成装置 図1
  • 特許-光源装置およびオゾン生成装置 図2
  • 特許-光源装置およびオゾン生成装置 図3
  • 特許-光源装置およびオゾン生成装置 図4
  • 特許-光源装置およびオゾン生成装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】光源装置およびオゾン生成装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 65/00 20060101AFI20230825BHJP
   C01B 13/11 20060101ALI20230825BHJP
   B01J 19/12 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
H01J65/00 B
C01B13/11 Z
B01J19/12 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020056806
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021157947
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 剛
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 和泉
(72)【発明者】
【氏名】矢島 英樹
(72)【発明者】
【氏名】北澤 成
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-43786(JP,A)
【文献】特開2003-24419(JP,A)
【文献】登録実用新案第3160820(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 65/00
C01B 13/11
B01J 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数1kHz~500kHzの範囲で発生と消滅を繰り返す放電によって、紫外線を放射可能なエキシマランプを備え、
紫外線とともに前記エキシマランプから放射される可視光が、周波数1Hz~60Hzの範囲で1/fゆらぎをもつことを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記可視光が、波長550nmを含む波長範囲の光を含み、
周波数4Hz~30Hzの範囲で1/fゆらぎをもつことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記可視光の経時変化のパワースペクトルをP、周波数をFとしたとき、Pの対数を縦軸、Fの対数を横軸としてPとFの関係を表す直線の傾きが、-1.2~-1.0の範囲である過小なゆらぎの波形をもつことを特徴とする請求項1または2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記エキシマランプを囲み、前記エキシマランプから放射される紫外線を透過せず、前記エキシマランプから放射される可視光を透過する管状部材をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光源装置。
【請求項5】
前記管状部材が、前記エキシマランプから放射される可視光が到達し、前記エキシマランプから放射される紫外線が減衰して到達しない透過距離以上の距離間隔を前記エキシマランプとの間に設けて配置されることを特徴とする請求項4に記載の光源装置。
【請求項6】
前記エキシマランプを少なくとも部分的に囲み、前記エキシマランプから放射される紫外線よりも長波長の光を透過する透光部材をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の光源装置。
【請求項7】
前記透光部材が、前記エキシマランプから放射される紫外線が到達する透過距離以下の距離間隔を前記エキシマランプとの間に設けて配置され、前記エキシマランプから放射される紫外線を遮ることを特徴とする請求項6に記載の光源装置。
【請求項8】
前記エキシマランプから放射される紫外線よりも長波長の光を、前記エキシマランプに向けて放射する点灯性補助光源をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の光源装置。
【請求項9】
前記エキシマランプから放射される可視光の波長域に含まれる波長をもつ可視光を、前記エキシマランプに向けて放射する演色性補助光源をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の光源装置。
【請求項10】
前記エキシマランプの放電容器の露出部分と対向し、前記放電容器内に放電を発生させる電極をさらに備え、前記電極は、前記エキシマランプから放射される可視光を反射することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の光源装置。
【請求項11】
周波数1kHz~500kHzの範囲で発生と消滅を繰り返す放電によって、波長200nm以下にピーク波長を有する紫外線を放射可能なエキシマランプと、
前記エキシマランプを囲み、前記エキシマランプから放射される紫外線を透過せず、前記エキシマランプから放射される可視光を透過する管状部材とを備え、
前記管状部材に囲まれた空間領域を流れる酸素を含む流体に対して紫外線を照射してオゾン生成するとき、紫外線とともに前記エキシマランプから放射される可視光が、周波数1Hz~60Hzの範囲で1/fゆらぎをもつことを特徴とするオゾン生成装置。
【請求項12】
前記管状部材が、前記エキシマランプから放射される可視光が到達し、前記エキシマランプから放射される紫外線が減衰して到達しない透過距離以上の距離間隔を前記エキシマランプとの間に設けて配置されることを特徴とする請求項11に記載のオゾン発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキシマランプを備えた光源装置およびオゾン生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エキシマランプでは、誘電体を間に配置した電極に高周波で高電圧を印加することによって、放電ガスが封入された放電空間にエキシマ放電が形成され、紫外線を放射する。空気などに対して紫外線を照射することによってオゾンを生成する。
【0003】
石英から成る放電容器を備えたエキシマランプでは、石英の種類、製造時の処理条件、放電ガスの種類などを調整することによって、紫外線とともに可視光が放射される。ユーザにランプ点灯中であることを確認させるため、例えばオゾン生成装置の筐体に可視光を透過する窓を設け、ユーザに視認させる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-043786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エキシマランプを用いた紫外線照射方式のオゾン生成では、有害物質である窒素酸化物が発生しない。そのため、病室の除菌処理、工場における半導体洗浄処理といった無人空間での使用だけでなく、自宅、ホテルの客室、飲食店、公共施設の場など人々の居る空間で使用することが要求されている。
【0006】
このような一般の人々に晒される環境下で使用する光源装置では、人々の心理的、生理的な欲求を満たす必要性から、機能とともにその照明デザインについても優れていることが必要とされる。しかしながら、従来の業務用、産業用エキシマランプでは、人への心理的、生理的影響を含めた照明デザインを考慮して開発、設計がなされていない。
【0007】
したがって、心理的、生理的な影響を考慮して、優れた照明デザインをもつ光源装置、オゾン生成装置を提供することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光源装置は、周波数1kHz~500kHzの範囲で発生と消滅を繰り返す放電によって、紫外線を放射可能なエキシマランプを備え、紫外線とともにエキシマランプから放射される可視光が、周波数1Hz~60Hzの範囲で1/fゆらぎをもつ。ここで、「1/fゆらぎ」とは、可視光が、パワースペクトルと周波数が反比例の関係性をもつ時系列的な光強度変化を伴うことを示し、ある波長範囲(波長域)の積算照度を対象として測定される1/fゆらぎも含まれる。
【0009】
視覚特性などを考慮すれば、波長550nmを含む波長範囲の可視光が、周波数4Hz~30Hzの範囲で1/fゆらぎをもつように構成すればよい。例えば、波長550nmを含む波長範囲の可視光において、その積算照度に関してパワースペクトルをP、周波数をFとしたとき、Pの対数を縦軸、Fの対数を横軸としてPとFの関係を表す直線の傾きが、-1.2~-1.0の範囲である過小なゆらぎの波形をもつようにすることができる。
【0010】
光源装置には、エキシマランプを囲み、エキシマランプから放射される紫外線を透過せず、エキシマランプから放射される可視光を透過する管状部材を設けることができる。例えば管状部材は、エキシマランプから放射される可視光が到達するが、エキシマランプから放射される紫外線が減衰して到達しない透過距離以上の距離間隔をエキシマランプとの間に設けて配置される。
【0011】
エキシマランプを少なくとも部分的に囲み、エキシマランプから放射される紫外線よりも長波長の光を透過する透光部材を設けることも可能である。例えば透光部材は、エキシマランプから放射される紫外線が到達する透過距離以下の距離間隔をエキシマランプとの間に設けて配置されて、エキシマランプから放射される紫外線を遮る。
【0012】
エキシマランプから放射される紫外線よりも長波長の光を、エキシマランプに向けて放射する補助光源を設けてもよい。また、エキシマランプから放射される可視光の波長域に含まれる波長をもつ可視光を、エキシマランプに向けて放射する演色性補助光源を設けることも可能である。エキシマランプの放電容器の露出部分と対向し、放電容器内に放電を発生させる電極を備えることも可能である。
【0013】
なお、上述した管状部材、透光部材、紫外線補助光源、演色性補助光源、電極の構成は、それぞれ特有の技術的課題を解決しているとみなせば、1/fゆらぎを持たずに各構成要素で特徴づけられる発明を導くことが可能である。
【0014】
本発明の他の態様である本発明のオゾン生成装置は、周波数1kHz~500kHzの範囲で発生と消滅を繰り返す放電によって、波長200nm以下にピーク波長を有する紫外線を放射可能なエキシマランプと、エキシマランプを囲み、エキシマランプから放射される紫外線を透過せず、エキシマランプから放射される可視光を透過する管状部材とを備え、管状部材に囲まれた空間領域を流れる酸素を含む流体に対して紫外線を照射してオゾン生成するとき、紫外線とともにエキシマランプから放射される可視光が、周波数1Hz~60Hzの範囲で1/fゆらぎをもつ。
【0015】
例えば管状部材は、エキシマランプから放射される可視光が到達し、エキシマランプから放射される紫外線が減衰して到達しない透過距離以上の距離間隔をエキシマランプとの間に設けて配置される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、心理的、生理的効果の或る優れた照明デザインをもつ光源装置、オゾン生成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1の実施形態である光源装置の概略的構成図である。
図2】第2の実施形態であるオゾン生成装置の概略的構成図である。
図3】オゾン生成装置を上方から見た概略的部分構成図である。
図4】エキシマランプおよび補助光源から放射される光の発光スペクトルを示したグラフである。
図5】測定した可視光が1/fゆらぎをもつことを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1は、第1の実施形態である光源装置の概略的構成図である。
【0020】
光源装置10は、エキシマランプ20、ランプカバー(管状部材)30、電源部40を備え、オゾン生成機能を備えた照明装置として構成される。ランプカバー30は、ここでは円筒状管として構成され、エキシマランプ20を収容する。ランプカバー30は、一方の開口端30Aを下方、開口端30Bを上方として配置され、図示しない支持部材によって支持されている。エキシマランプ20は、そのランプ軸Eがランプカバー30の鉛直方向に沿った管軸と一致するように同軸的に配置されている。
【0021】
エキシマランプ20は、ここでは二重管構造ランプとして構成され、図示しない内側管の内部に設けた内部電極と、エキシマランプ20の放電容器20Sの外表面に巻かれた外部電極25とを備え、放電空間には放電ガスが封入されている。筐体内に配置された電源部(図示せず)は、内部電極と外部電極25との間に高周波数で高電圧を印加する。これによって、放電の瞬間的な発生と消滅が繰り返され、紫外線(例えば、波長172nm)が放射される。発光制御部45は、エキシマランプ20を点灯制御し、周波数、印加電圧などを制御する。
【0022】
ランプカバー30は、可視光を透過する一方、紫外線を透過しない透明な材料で構成され、例えば放電容器20Sを構成する合成石英ガラスよりも紫外線の透過率が低いガラスなどによって構成することが可能である。ランプカバー30は、ここでは断面円状管であって、両端30A、30Bが大気に開放されている。エキシマランプ20の点灯によって紫外線が放射されると、ランプカバー30内においてオゾンが発生し、ランプカバー30の開口端30A、30Bから装置外部へ放出される。
【0023】
上述したように、エキシマランプ20が点灯している間、エキシマランプ20の放電容器20S内では径方向に沿って放電が生じ、発生と消滅が繰り返される。このとき、放電容器20Sを構成する石英管の種類や熱処理条件、放電ガスの種類(放電により放射される紫外線の波長)を調整することによって、紫外線とともに可視光がエキシマランプ20外部へ放射される。放射された紫外線によってオゾン生成などが行われる。
【0024】
エキシマランプ20は、例えば、400nm~500nm、500nm~650nmの波長域の可視光を放射することが可能であり、青色および緑色~赤色の波長域の光によって赤紫色系の光を放射することができる。また、545nm付近の波長をもつ緑色の光を放射することもできる。なお、印加電圧の周波数は1kHz~500kHzの範囲で設定されるため、可視光が放射されている状況において、放電の瞬間的な発生と消滅は目視できない。
【0025】
ランプカバー30は、エキシマランプ20をランプ全周囲に渡って囲んでいる。ユーザは、360度どの周方向からもランプカバー30を介してエキシマランプ20を視認することができる。また、エキシマランプ20の点灯中、ユーザは、エキシマランプ20から放射される可視光を視認することができる。一方、ランプカバー30はエキシマランプ20から放射される紫外線を透過せず、紫外線は装置外部へ照射されない。
【0026】
エキシマランプ20から放射される可視光は、「1/fゆらぎ」をもつ。すなわち、パワースペクトルと周波数が反比例の関係性をもつ時系列的な光強度変化を伴う可視光が放射される。点灯制御部45は、可視光の照度の経時変化が1/fゆらぎをもつように、周波数、印加電圧などを制御することができる。人間の視覚特性などを考慮すれば、可視光の波長550nmを含む波長範囲の積算照度の経時変化から、周波数4Hz~30Hzの範囲で1/fゆらぎが導かれるようにすればよい、
【0027】
一般的に、1/fゆらぎをもつパワースペクトルと周波数との反比例関係を表すグラフの両軸を対数に変換してグラフで表すと、パワースペクトルと周波数とは線形関係となり、k=-1の傾きあるいはそれよりも大きい傾き、小さい傾きをもつ直線に近似して表すことができる。
【0028】
k=-1の傾きの場合、「適度なゆらぎ」の波形をもつという。傾きkが-1より小さい(傾きがより鉛直に近く、急峻)場合、突発的な変化が少なく規則正しいゆらぎの波形をもつ「過小なゆらぎ」となる。それに対して、傾きkが-1より大きい(傾きがより水平に近く、緩やか)場合、突発的な変化が多くて揺らぎは複雑な波形をもつ「過剰なゆらぎ」となり、心理的に緊張感や不快感を与える。
【0029】
発光制御部45は、k<-1となる過小なゆらぎ、あるいはk=-1の場合の適度なゆらぎの波形を持たせるように、周波数、印加電圧などを制御する。上述したように、瞬間的な発生と消滅を繰り返す放電では、印加電圧の周波数が高周波数であるために発生、消滅自体は視認できないが、その代わりに放電が管軸方向に沿って移動するように見える。これは、心理的な慌しさを与える。しかしながら、可視光に対して適度なゆらぎ、あるいは過小な揺らぎの波形を持たせることにより、ユーザは、心理的に心地よく視認することができる。
【0030】
このように本実施形態によれば、エキシマランプ20を備えた光源装置10において、ランプカバー30がエキシマランプ20を収容し、エキシマランプ20は、紫外線とともに、1/fゆらぎをもつ可視光を放射する。装置外部への紫外線照射を抑えながらオゾン生成などを行うとともに、心理的に癒し効果のある照明を提供することができる。
【0031】
ところで、特定のピーク波長の真空紫外線は、大気中で吸収されやすく、エキシマランプ20から放射される紫外線は進行の過程で減衰し、紫外線強度が低下する。この減衰の程度は、紫外線の大気中に対する吸収係数の大きさに従う。例えば、波長172nmの紫外線の場合、約3mmの進行で紫外線強度比が50%以下まで減衰し、約6mmで20%以下、そして約30mmで紫外線がすべて吸収される。
【0032】
所定の紫外線強度比まで減衰した時の紫外線の進行距離を透過距離L(図1参照)として表すと、透過距離Lは、実際の測定環境下においては、真空紫外線の波長域に感度を有する紫外線照度計を放電容器の外表面に近接させた状態からの紫外線強度比の減衰として把握できる距離となる。
【0033】
紫外線強度比が20%以下まで減衰すると、それよりも離れた位置では紫外線の影響が大きく及ばないとみなせる。よって、エキシマランプ20の外表面とランプカバー30の管内壁30Tとの距離間隔D(図1参照)が、紫外線強度比が20%に達するまで減衰する透過距離Lよりも長ければ、ランプカバー30に到達する紫外線はごく僅かとなり、ランプカバー30によって紫外線が装置外部へ漏れるのを確実に防ぐことができる。
【0034】
次に、図2~4を用いて第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、補助光源および補助光源からの光を透過する透光部材(光学部材)を備え、オゾン生成装置として構成されている。第1の実施形態と同じ構成要素については、同一の符号を用いている。
【0035】
図2は、第2の実施形態であるオゾン生成装置の概略的構成図である。図3は、オゾン生成装置を上方から見た概略的部分構成図である。
【0036】
オゾン生成装置100は、エキシマランプ20を備え、流路管300内に収容されている。流路管300は、第1の実施形態と同様に開口端30Aを下方、開口端30Bを上方にして鉛直方向に沿って配置され、筐体(図示せず)と空間的に繋がっている。また流路管300は、第1の実施形態と同様、紫外線を透過せず、可視光のみを透過する断面円状の筒状管として構成され、エキシマランプ20は流路管300に対して同軸的に配置されている。
【0037】
筐体内部には、流路管300と空間的に繋がっている送風機(図示せず)が設けられており、送風機によって空気などの酸素を含む原料ガスが上方へ向けて流路管300の開口端30Aに流れ込み、流路管300の開口端30Bから筐体内部(処理室)へ放出される。なお、流路管300を他の流路管と接続させて装置外部へ放出するようにしてもよい。
【0038】
エキシマランプ20の放電容器20Sの表面から流路管300の内壁300Tまでの距離Dは、原料ガスの流れを妨げず、オゾン生成領域を十分確保できるように定められている。具体的には、紫外線強度比が80%にまで減衰する透過距離以上の距離間隔Dが定められている。好ましくは、エキシマランプ20から放射される可視光が到達し、エキシマランプから放射される紫外線が減衰して到達しない透過距離以上の距離間隔をエキシマランプとの間に設けて流路管300配置するとよい。
【0039】
エキシマランプ20の下方には、エキシマランプから放射される紫外線よりも長波長の光を放射する補助光源(点灯性補助光源)70と、特定の波長域の可視光を放射する補助光源(演色性補助光源)80が設けられている。補助光源70は、ここでは400nm付近のピーク波長をもつ光が放射される。
【0040】
一方、補助光源80は、エキシマランプ20の点灯始動の補助光源であって、エキシマランプ20から放射される可視光の波長域に含まれる波長域の可視光を放射する。補助光源70、80は、ここでは放射光の配光分布に指向性のあるLEDによって構成され、補助光源80から放射される可視光は、1/fゆらぎをもたない。ここでは、波長400~650nmの範囲で光束が30(1m)以下の可視光が放射される。
【0041】
エキシマランプ20の周囲には、ライトガイド50が設けられている。ライトガイド50は、可視光を透過する一方、一部波長域の紫外線のみを透過する透明な透光部材で構成されている。具体的には、ライトガイド50は、エキシマランプ20から放射される紫外線については透過せず、補助光源70から放射される光のみを透過する。例えば、ライトガイド50が光学レンズなどによって構成される。
【0042】
ライトガイド50は柱状に形成され、その長手方向に沿った中心軸がランプ軸Eと一致するように配置されている。また、ライトガイド50には、エキシマランプ20を収容する矩形状の開口部50Sが形成されている。エキシマランプ20は、開口部50Sのランプ軸Eに沿った側面50Tと距離間隔D’だけ離れて配置され、また、エキシマランプ20の開口側を向いている露出部分20Eは、電極60A、60Bと向かい合って部分的に接している。電極60A、60Bおよびライトガイド50によって、エキシマランプ20の収容空間50Sが形成される。
【0043】
電極60A、60Bは、それぞれ紫外線を透過せずおよび可視光を反射する薄板状電極であって、図示しない導電性部材を介して電源部と接続されている。また、電極60A、60Bは、開口部50Sのランプ軸に沿った位置に合わせてスリット状開口部S1、S2と、エキシマランプ20の両端側に開口端50A、50Bがそれぞれ形成されている。
【0044】
電極60A、60Bの間に高周波数で高電圧を印加することで、放電容器20S内において電極60A、60Bが対向したランプ軸方向範囲で発生と消滅を繰り返す放電が形成されると、エキシマランプ20から放射された紫外線と可視光がスリット状開口部S1、S2を進行して、流路管300へ向けて放射される。
【0045】
これにより、ユーザは、スリット状開口部S1、S2からエキシマランプ20を視認することができ、また、ライトガイド50の側面50Bの方からもエキシマランプ20を視認することができる。
【0046】
図4は、エキシマランプ20および補助光源70、80から放射される光の発光スペクトルを示したグラフである。
【0047】
エキシマランプ20の発光スペクトルは、スペクトル線L1で表されている。補助光源70から放射される光の発光スペクトルは、ここでは400nm付近をピーク波長とするスペクトル線L2で表されている。一方、補助光源80から放射される可視光の発光スペクトルは、およそ400nm~800nmの波長域に渡るスペクトル線L3で表される。
【0048】
ライトガイド50は、スペクトル線L1の紫外線を透過しない一方、スペクトル線L2の紫外線を透過する。したがって、補助光源70から放射された光はライトガイド50を通過し、その一部がエキシマランプ20に到達する。また、一部の光は、電極60A、60Bで反射し、エキシマランプ20内に入射する。これによって、点灯始動時に放電容器20S内部が励起状態となり、容易にエキシマ放電を開始する。
【0049】
エキシマランプ20から放射される紫外線は、ライトガイド50および電極60A、60Bで遮られ、スリット状開口部S1、S2のみから流路管300へ向けて放射される。紫外線を照射する空間領域をスリット状開口部S1、S2により制限することによって、オゾン生成量を調整する。
【0050】
放電容器20Sの表面は、スリット状開口部S1、S2により、流路管300と空間的に繋がる。エキシマランプ20の開口側を向いている露出部分20Eにおける空気などの酸素を含む原料ガスの流れ(収容空間50S外における放電容器20Sの表面に沿った流れ)を調整することによって、オゾン生成量を調整する。
【0051】
放電容器20Sの表面は、上方の開口部50A、下方の開口部50Bにより、流路管300と空間的に繋がる構成であってもよい。空気などの酸素を含む原料ガスが送風機によって上方へ向けて流路管300内に流れ込むときは、流路管300内から開口部50Aを流れて収容空間50Sに流入して、開口部の側面50Tと放電容器20Sの表面との間を流れて、収容空間50Sから開口部50Bを流れて流路管300内へ流出する流れ(収容空間50S内における放電容器20Sの表面に沿った流れ)を調整することによって、オゾン生成量を調整する。すなわち、スリット状開口部S1、S2の開口幅と開口部50A、50Bの開口面積によって、オゾン生成量を調整してもよい。
【0052】
エキシマランプ20からの紫外線放射をスリット状開口部S1、S2だけに限定して、オゾン生成量を少なくするためには、ライトガイド50の側面50Tとエキシマランプ20をできる限り近づけて、減衰していない紫外線がライトガイド50の側面50Tによって遮られるようにするのがよい。ライトガイド50の側面50Tとエキシマランプ20との距離間隔D’は、エキシマランプ20から放射される紫外線の透過距離よりも短い距離間隔に定められている。好ましくは、紫外線強度比が20%にまで減衰する透過距離よりも短い距離間隔に定めるとよい。
【0053】
上述したように、エキシマランプ20は、ランプ点灯時、紫外線とともに1/fゆらぎをもつ可視光を放射する。ライトガイド50は可視光を透過するため、1/fゆらぎをもつ可視光は、ライトガイド50および流路管300から装置外部へ放射される。
【0054】
一方、補助光源80から放射された可視光は、ライトガイド50を通ってエキシマランプ20を照らす。また、エキシマランプ20周囲に進んだ補助光源80からの可視光も、電極60A、60Bで反射し、ライトガイド50および流路管300から装置外部へ放射される。
【0055】
その結果、ユーザは、1/fゆらぎをもつ可視光とともに補助光源80から放射される可視光を視認する。補助光源80から放射される可視光は、図4に示すスペクトル線L3の光であって、その波長域は、エキシマランプ20から放射される可視光の波長域に含まれている。ユーザが、温かみのある光の中に1/fゆらぎをもつ光を感じることで、心理的、生理的効果をユーザに与えることができる。
【0056】
一方、エキシマランプ20から放射される紫外線は、ライトガイド50によってオゾン生成に必要な紫外線量だけスリット状開口部S1、S2から放射され、また、流路管300が紫外線を透過しないために紫外線が装置外部へ放射されない。そのため、装置外部でのオゾン発生による影響を防ぎながら殺菌、滅菌処理などを行うことができる。
【0057】
なお、補助光源70から放射される光はライトガイド50によって遮られないが、図3に示すスペクトル線L2の紫外線であるためにオゾン生成に影響しない。
【0058】
第1、第2の実施形態で示したランプカバー30、流路管300は、断面円状の管に限定されず、断面矩形状の管で構成してもよい。また、エキシマランプ20についても、その形状は任意であり、ランプカバー30、流路管300に対する配置の仕方も任意である。オゾン生成装置の構成も様々な構成が採用可能であり、第2の実施形態における流路管300を設けず、ライトガイド50だけの構成にしてもよい。
【実施例
【0059】
以下では、1/fゆらぎをもつ可視光を紫外線とともに放射するオゾン生成装置について説明する。
【0060】
実施例のオゾン生成装置は、第2の実施形態に相当し、エキシマランプの放電容器(外径6mm、内径4mm、軸方向長さ55mm)に放電ガスとしてXeガスを封入し(封入圧10kPa)、周波数60kHz、電圧値2.5kVで電圧を印加して放電を生じさせた。放電容器は、合成石英ガラスによって製造した。放電中(ランプ点灯中)、スペクトルラジオメータ(大塚電子製)によって、局所的に発生する微細放電の発光スペクトルと光強度の周波数を測定した。
【0061】
図5は、測定した可視光が1/fゆらぎをもつことを示すグラフである。図5(A)は、550nmを含む波長範囲の積算照度の経時変化を示すグラフである。図5(B)は、図5(A)をフーリエ変換したデータを平滑化して示すグラフであり、縦軸がパワースペクトル(振幅の正の平方根)、横軸が周波数を表す。図5(C)は、図5(B)を両対数として示したグラフである。
【0062】
図5(A)では、放電ガスとしてXeを封入したエキシマランプから紫外線(例えば、波長172nm)とともに放射される可視光として、酸化キセノン(XeO)による波長550nm付近の分子発光を含む波長範囲(例えば、波長530nm~560nmの波長範囲)の積算照度の経時変化を示している。
【0063】
ここで、酸化キセノンによる波長550nm付近の分子発光が微弱なときには、波長530nm~560nmの積算照度から波長570nm~600nmの積算照度を引いた値の経時変化として、ノイズを除去することができる。図5(B)に示すように、フーリエ変換したデータに対してパワーの変動幅を考慮して平滑化することで、パワースペクトルは周波数に反比例する曲線Pによって表すことができる。
【0064】
そして、図5(C)に示すように、図5(B)の両軸を対数としたグラフに変換すると、周波数1Hz~60Hzの範囲において、k=-1に近似できる傾きをもつ直線として表すことができる。同じ放電容器の異なる位置で複数回の同様の測定をしたときにも、周波数4Hz~30Hzの範囲において、-1.2~-1.0の範囲に近似できる傾きをもつ直線として表すことができ、過小なゆらぎであることが確かめられた。
【符号の説明】
【0065】
10 光源装置
20 エキシマランプ
30 ランプカバー
50 ライトガイド
60A、60B 電極
70 補助光源(点灯性補助光源)
80 補助光源(演色性補助光源)
100 オゾン生成装置
300 流路管
図1
図2
図3
図4
図5