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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】ガラスランチャンネル及びその取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/76 20160101AFI20230825BHJP
   B60J 10/21 20160101ALI20230825BHJP
   B60J 10/22 20160101ALI20230825BHJP
   B60J 10/50 20160101ALI20230825BHJP
【FI】
B60J10/76
B60J10/21
B60J10/22
B60J10/50
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020184228
(22)【出願日】2020-11-04
(65)【公開番号】P2022074296
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000219705
【氏名又は名称】東海興業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神原 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】赤木 克
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕也
(72)【発明者】
【氏名】下田 雄太郎
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-030554(JP,A)
【文献】特開2009-078683(JP,A)
【文献】特開2010-083160(JP,A)
【文献】特開2016-068571(JP,A)
【文献】特開2000-071780(JP,A)
【文献】特開平3-38430(JP,A)
【文献】国際公開第2008/123409(WO,A1)
【文献】英国特許出願公開第2426275(GB,A)
【文献】仏国特許出願公開第2972141(FR,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0064317(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第101087702(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/76
B60J 10/21
B60J 10/22
B60J 10/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠、縦枠、および上枠と縦枠との間に形成される内角部を有する車両ドアの窓枠に沿って装着されて窓板のスライド移動を案内するための、弾性ポリマー材料製の長尺なガラスランチャンネルであって、
当該ガラスランチャンネルは、長手方向において、前記窓枠の上枠に装着される上辺部と、前記窓枠の縦枠に装着される縦辺部と、前記上辺部と縦辺部を接続して前記窓枠の内角部に装着される型成形部とを備えており、
当該ガラスランチャンネルは、長手方向と交差する横断面で見て、前記窓板の端面と対向する基底部と、前記基底部の幅方向両端からそれぞれ立設された車内側側壁部および車外側側壁部と、前記車外側側壁部の先端から車外側に突設された車外側リップとを備えており、
前記車外側リップは、当該ガラスランチャンネルの長手方向に沿って延設されており、当該ガラスランチャンネルを前記窓枠に取り付けたときに、前記窓枠の上枠、縦枠および内角部において前記車両ドアのドアパネルの一部を覆うものであると共に、前記車外側リップの車外側部分の一部が、前記窓枠の縦枠に取り付けられるガーニッシュによって覆われるものであり、
前記型成形部の車外側リップには、コーナーRが形成され、
前記型成形部の車外側リップには更に、前記コーナーRの近傍において厚肉部が形成されており、この厚肉部の厚さ(T1)は、前記型成形部の車外側リップにおける前記厚肉部以外の部分の厚さ(T2)よりも厚い、ことを特徴とするガラスランチャンネル。
【請求項2】
前記型成形部の車外側リップは、前記コーナーRに近接して設けられたヒレ部を有しており、このヒレ部の領域内に前記厚肉部が設定されている、ことを特徴とする請求項1に記載のガラスランチャンネル。
【請求項3】
前記型成形部の車外側リップにおいては、車内側裏面を肉盛りして前記厚肉部が形成されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のガラスランチャンネル。
【請求項4】
前記厚肉部は、中央域の厚みが最も厚く、中央域から外周域に向かうにつれて厚みが徐々に減少するような厚さ分布を有している、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のガラスランチャンネル。
【請求項5】
車両ドアに対するガラスランチャンネルの取付構造であって、
ドアパネルと、
前記ドアパネルの窓部分を縁取る枠体として、上枠、縦枠、および上枠と縦枠との間に形成される内角部を有してなる窓枠と、
前記窓枠に沿って装着されて窓板のスライド移動を案内するための、請求項1に記載のガラスランチャンネルと、
前記窓枠の少なくとも縦枠に取り付けられるガーニッシュと、
を備え、
前記窓枠の上枠、縦枠および内角部において、前記ガラスランチャンネルの車外側リップが前記ドアパネルの一部を覆っており、
前記窓枠の縦枠および内角部において、前記ガーニッシュが前記ガラスランチャンネルの車外側リップの一部を覆うと共に、前記ガラスランチャンネルの車外側リップの車外側表面が、前記ガーニッシュに対しガーニッシュの全長に亘って当接している、ことを特徴とするガラスランチャンネルの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用開閉ドアの窓枠に沿って装着されて、窓板(窓ガラス)のスライド移動(つまり昇降)を案内すると共に窓板と窓枠との隙間をシールするためのガラスランチャンネルと、車両ドアに対するガラスランチャンネルの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば「車両用のドア構造」に関する特許文献1は、その図1図3に、上述のようなガラスランチャンネル及びその取付構造を開示する。即ち、ドアのアウタパネル(10)と一体化したサッシュ(12)は、上枠部(UF)と、センターピラー部(BP)と、これら上枠部及びセンターピラー部の交差位置に形成される角部とを備え、その角部にはサッシュ凹部(15)が設けられている。他方、ガラスラン(20)は、車内側の側壁部(212)、車外側の側壁部(222)、及び両側壁部を連結する連結部(230)からなる本体部を備え、車外側の側壁部(222)には長手方向に沿って、当該側壁部(222)との間でアウタパネル(10)を支持するための車外側リップ(225)が延設されている。車外側リップ(225)の突出量(又は突出幅)は、前記サッシュの上枠部及びセンターピラー部と対向する部位では概ね一様であるが、前記サッシュの角部と対向する角部(略直角に屈折した部位)では特に大きく外方に張り出して、ガラスラン凸部(25)を形成している。ドア(の窓枠部分)へのガラスラン(20)の装着時には、ガラスラン凸部(25)を含む車外側リップ(225)は、アウタパネル(10)のアウタ側(車外側)に乗り上げるように配置される(図2参照)。また、ガラスラン凸部(25)をサッシュ凹部(15)に嵌め込むことで、ガラスラン(20)のサッシュ(12)に対する位置決め精度の向上を図っている(図3及び図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-030554号公報(要約、段落0032~33)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなガラスランチャンネルの取付構造によれば、車外側リップ(225)がアウタパネル(10)のアウタ側(車外側)に乗り上げたときに、前記サッシュの角部に設けられたサッシュ凹部(15)の位置において、ガラスラン凸部(25)を形成している車外側リップ(225)が車内側に凹んでしまう事態が懸念される。つまり、車外側リップ(225)のうちでも、とりわけ外方に大きく張り出したガラスラン凸部(25)は、その他の車外側リップ部位に比べて凹み易いことが懸念される。仮に、車外側リップ(225)の一部(この場合、ガラスラン凸部25)が車内側に凹むことになると、車外側リップ(225)と、その外側に配設されるガーニッシュ(特許文献1の図2、ガーニッシュ30参照)との間に予期せぬ隙間が生じ得る。かかる隙間の発生は、走行時に風切音を生じさせる原因ともなり、好ましくない。
【0005】
本発明の目的は、車両ドアの窓枠へのガラスランチャンネルの取り付け時に、ガラスランチャンネルに設けられた車外側リップが部分的にせよ凹み(変形)を生ずる事態を防止して、走行時における風切音の発生等といった不具合を極力回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、上枠、縦枠、および上枠と縦枠との間に形成される内角部を有する車両ドアの窓枠に沿って装着されて窓板のスライド移動を案内するための、弾性ポリマー材料製の長尺なガラスランチャンネルであって、
当該ガラスランチャンネルは、長手方向において、前記窓枠の上枠に装着される上辺部と、前記窓枠の縦枠に装着される縦辺部と、前記上辺部と縦辺部を接続して前記窓枠の内角部に装着される型成形部とを備えており、
当該ガラスランチャンネルは、長手方向と交差する横断面で見て、前記窓板の端面と対向する基底部と、前記基底部の幅方向両端からそれぞれ立設された車内側側壁部および車外側側壁部と、前記車外側側壁部の先端から車外側に突設された車外側リップとを備えており、
前記車外側リップは、当該ガラスランチャンネルの長手方向に沿って延設されており、当該ガラスランチャンネルを前記窓枠に取り付けたときに、前記窓枠の上枠、縦枠および内角部において前記車両ドアのドアパネルの一部を覆うものであると共に、前記車外側リップの車外側部分の一部が、前記窓枠の縦枠に取り付けられるガーニッシュによって覆われるものであり、
前記型成形部の車外側リップには、コーナーRが形成され、
前記型成形部の車外側リップには更に、前記コーナーRの近傍において厚肉部が形成されており、この厚肉部の厚さ(T1)は、前記型成形部の車外側リップにおける前記厚肉部以外の部分の厚さ(T2)よりも厚い、ことを特徴とする。
【0007】
請求項1の発明によれば、ガラスランチャンネルの長手方向に沿って延設された車外側リップのうち、型成形部の車外側リップには厚肉部が形成されて剛性が高められている。このため、ガラスランチャンネルの窓枠への取り付け時、窓枠の上枠、縦枠および内角部にて車外側リップがドアパネルに乗り上げたときでも、型成形部の車外側リップが車内側に凹むことを防止することができる。これにより、車外側リップと、当該車外側リップを外側から覆うガーニッシュとの間に隙間が発生する事態を極力回避して、風切音等を防止又は抑制することができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のガラスランチャンネルにおいて、
前記型成形部の車外側リップは、前記コーナーRに近接して設けられたヒレ部を有しており、このヒレ部の領域内に前記厚肉部が設定されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて更に次のような効果を奏する。即ち、型成形部の車外側リップにおいてコーナーRに近接してヒレ部を設けた場合、ヒレ部のみであると車外側リップが凹み易いが、ヒレ部の領域内に厚肉部を設定することで、車外側リップの凹みを防止することができる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のガラスランチャンネルにおいて、
前記型成形部の車外側リップにおいては、車内側裏面を肉盛りして前記厚肉部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明によれば、請求項1及び2の発明の効果に加えて更に次のような効果を奏する。即ち、型成形部の車外側リップに厚肉部を形成する際に、車内側裏面(車外から見えにくい部分)を肉盛りすることで、車内側裏面と反対側の車外側表面(車外から見えやすい部分)を比較的面一な状態に保つことができ、外観(意匠性)を損なうことがない。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載のガラスランチャンネルにおいて、前記厚肉部は、中央域の厚みが最も厚く、中央域から外周域に向かうにつれて厚みが徐々に減少するような厚さ分布を有していることを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明によれば、請求項1~3の発明の効果に加えて更に次のような効果を奏する。即ち、ガラスランチャンネルにおいて、上辺部と縦辺部とを接続する型成形部を射出成形によって成形する場合、一般に樹脂が固化する過程で生じ得るヒケについて配慮する必要がある。この点、本発明では、型成形部の車外側リップの厚肉部について、中央域の厚みが最も厚く、中央域から外周域に向かうにつれて厚みが徐々に減少するような厚さ分布を有するものとしたので、厚肉部でのヒケの発生を抑制又は緩和することができる。
【0014】
請求項5の発明は、車両ドアに対するガラスランチャンネルの取付構造であって、
ドアパネルと、
前記ドアパネルの窓部分を縁取る枠体として、上枠、縦枠、および上枠と縦枠との間に形成される内角部を有してなる窓枠と、
前記窓枠に沿って装着されて窓板のスライド移動を案内するための、請求項1に記載のガラスランチャンネルと、
前記窓枠の少なくとも縦枠に取り付けられるガーニッシュと、
を備え、
前記窓枠の上枠、縦枠および内角部において、前記ガラスランチャンネルの車外側リップが前記ドアパネルの一部を覆っており、
前記窓枠の縦枠および内角部において、前記ガーニッシュが前記ガラスランチャンネルの車外側リップの一部を覆うと共に、前記ガラスランチャンネルの車外側リップの車外側表面が、前記ガーニッシュに対しガーニッシュの全長に亘って当接している、ことを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を奏する。即ち、この取付構造で用いられるガラスランチャンネルでは、型成形部の車外側リップに厚肉部が形成されて剛性が高められているため、ガラスランチャンネルの窓枠への取り付け時、窓枠の上枠、縦枠および内角部にて車外側リップがドアパネルに乗り上げたときでも、型成形部の車外側リップが車内側に凹むことが無い。従って、窓枠の縦枠および内角部において、ガラスランチャンネルの車外側リップの車外側表面が、ガーニッシュに対してその全長に亘って隙間無く当接した状態を維持することができる。結果的に、車外側リップとガーニッシュとの間に隙間が発生する事態を回避して、風切音等を防止又は抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車両ドアの窓枠へのガラスランチャンネルの取り付け時に、ガラスランチャンネルに設けられた車外側リップが部分的にせよ凹み(変形)を生ずる事態を防止して、走行時における風切音の発生等といった不具合を極力回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】窓枠にガラスランチャンネルが装着された車両ドアの概略側面図。
図2図1の丸囲みA部分を拡大して示す図。
図3】本発明の一実施形態に従うガラスランチャンネルの一部分(型成形部)を示す斜視図。
図4図3のIV-IV線での断面図。
図5図3のV-V線での断面図。
図6】(A)は型成形部のヒレ部に設けられた厚肉部における厚さ分布を説明するための図、(B)は射出成形後のヒケを説明するための模式図。
図7】本発明の変更例に従うガラスランチャンネルの一部分(型成形部)を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、車両ドアとしてのフロントドア1を車外側から見た状態を示す。図1に示すように、フロントドア1を形成するドアパネル2には窓枠3が一体に形成されている。窓枠3はドアパネル2の窓部分を縁取る枠体であり、窓枠3は少なくとも、車両の天井に近接配置される上枠3aと、車両の天井を支えるセンターピラーに沿って配置される縦枠3bと、前記上枠3aと縦枠3bとの間に形成されることになる内角部3c(図2参照)とを有している。ドアパネル2には、とりわけ窓枠3に沿ってガラスランチャンネル10が装着される。また、窓枠3の少なくとも縦枠3bには、縦枠3bのほぼ全体およびガラスランチャンネル10の一部を外側から覆い隠すようにガーニッシュ4(装飾部品)が取り付けられる。
【0019】
ガラスランチャンネル10は、窓板5のスライド移動を案内するための長尺な部材であり、主に弾性ポリマー材料で作られている。使用可能な弾性ポリマー材料としては、TPE(熱可塑性エラストマー)やゴムを例示することができる。本実施形態では、硬度がA80のTPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)が用いられている。
【0020】
図1~3に示すように、ガラスランチャンネル10は、長手方向において、上辺部11と、縦辺部12と、これら上辺部11と縦辺部12を接続する接続部としての型成形部13とを少なくとも備えている。上辺部11は主として窓枠の上枠3aに装着される部位である。縦辺部12は主として窓枠の縦枠3bに装着される部位である。これらの上辺部11と縦辺部12とは夫々押出成形によって直線状に成形される。
【0021】
他方、型成形部13は主として窓枠の内角部3cに装着される部位であり、この型成形部13は押出成形後の射出成形によって成形される。具体的には、押出成形により得られた上辺部11の末端部と縦辺部12の末端部とを所定の距離を保ちつつ且つ所定の角度(例えば70~90°)で交差させて射出成形型にセットする。そして、成形型内に弾性ポリマー材料を注入して射出成形することで、型成形部13が形成され、かくして、ガラスランチャンネル10の全体形状がほぼ確定する。こうして得られた型成形部13は、上辺部11と縦辺部12との交差配置関係を維持したまま両部(11,12)を接続する。
【0022】
次に、ガラスランチャンネル10の上辺部11、縦辺部12および型成形部13の三部に共通した基本的な構造(主に断面構造)を図4及び図5に基づいて説明する。これらの図に示されるように、ガラスランチャンネル10は、長手方向と交差する横断面で見て、基底部14、並びに、当該基底部14の幅方向両端からそれぞれ立設された車内側側壁部15および車外側側壁部16を備えている。なお、基底部14、車内側側壁部15および車外側側壁部16のいずれも、ガラスランチャンネル10の長手方向に沿って延設されている。本実施形態では、車内側側壁部15が相対的に長く(又は高く)、車外側側壁部16が相対的に短く(又は低く)なるように寸法設定されている。基底部14は、車内側側壁部15の基端部と車外側側壁部16の基端部とを相互連結すると共に、窓板5の端面と対向又は接触する部位でもある。
【0023】
例えば図4に示すように、車外側側壁部16の先端部には、車内側に向かって突出するアウタシールリップ21が設けられている。アウタシールリップ21は、窓板5の車外側面に当接して窓板5の端部をシールする。他方、車内側側壁部15の中程には、車外側に向かって突出するインナシールリップ22が設けられている。インナシールリップ22は、窓板5の車内側面に当接して窓板5の端部をシールする。アウタシールリップ21とインナシールリップ22とは互いに接近し且つ対向関係にあり、両シールリップの間には窓板5の端部が挟持される。
【0024】
車内側側壁部15の先端部には、その先端部からインナシールリップ22とは反対側(つまり車内側)に向けて突出し且つ当該車内側側壁部15に沿って折り返すように形成された車内側リップ23が設けられている。車内側リップ23は、車内側側壁部15と同様、ガラスランチャンネル10の長手方向に沿って延設されている。車内側リップ23は主として、車内側側壁部15との間でドアパネル2の一部を挟み込む。
【0025】
図4及び図5に示すように、車外側側壁部16の先端部には、その先端部からアウタシールリップ21とは反対側(つまり車外側)に向けて突出し且つ当該車外側側壁部16に沿って折り返すように形成された車外側リップ24が設けられている。車外側リップ24は、車外側側壁部16と同様、ガラスランチャンネル10の長手方向に沿って延設されている。車外側リップ24もまた、車外側側壁部16との間でドアパネル2の一部を挟み込む。なお、ガラスランチャンネル10を車両ドアの窓枠3に取り付けたとき、車外側リップ24は、窓枠の上枠3a、縦枠3bおよび内角部3cにおいてドアパネル2の一部を覆うことになる。また、車外側リップ24の車外側部分の一部は、窓枠の縦枠3bに取り付けられるガーニッシュ4によって覆われることになる。
【0026】
図3(及び図2)に示すように、型成形部13における車外側リップ24には、「コーナーR」(符号:25で示す)が形成されている。コーナーR(25)は、車外側リップ24の根元付近にあって略円弧状に湾曲した輪郭を描く縁部または周縁部である。図3に示すように、コーナーR(25)は、上辺部11の車外側リップ24と繋がってその延長(図では紙面左へ向かう延長)上に位置する略水平な車外側リップ部分24hと、縦辺部12の車外側リップ24と繋がってその延長(図では紙面上へ向かう延長)上に位置する略垂直な車外側リップ部分24vとが交差する位置に設けられている。そして、コーナーR(25)は、前述の略水平な車外側リップ部分24hの縁部と略垂直な車外側リップ部分24vの縁部とを滑らかに連結又は接続している。
【0027】
本実施形態では、図2及び図3に示すように、型成形部13の車外側リップ24には、ヒレ部27がコーナーR(25)に近接して設けられている。ヒレ部27は概ね、窓枠の内角部3cから外角領域に向けて外方向に張り出す部分を有するように形成されている。より具体的には図3に示すように、略水平な車外側リップ部分24hがコーナーR(25)を通り越して、略垂直な車外側リップ部分24vの先端縁よりも更に左側に張り出すように、ヒレ部27が形成されている。このため、ヒレ部27の略水平な上縁27aは、略水平な車外側リップ部分24hの先端縁(図3では上縁)とほぼ一直線状に並ぶ。
【0028】
更に本実施形態では、図3及び図5に示すように、型成形部13の車外側リップ24には、ヒレ部27の領域内において厚肉部28が形成されている。厚肉部28は、コーナーR(25)の近傍(図3ではコーナーRの直ぐ左側位置)に配置されている。
【0029】
厚肉部28は文字通り、型成形部13の車外側リップ24の中でもとりわけ厚肉に形成された部位である。そして、この厚肉部28のうちの最も厚い部分の肉厚をT1(図5参照)とし、厚肉部以外の他の部分(非厚肉部)の肉厚をT2(図4参照)とすると、
T1=2×T2
となるように肉厚設定されている。つまり、厚肉部28の最大肉厚T1は、非厚肉部の肉厚T2の約2倍の厚さに設定されている。
【0030】
厚肉部28は型成形部13の射出成形時に同時に成形されるものであるが、厚肉部28の同時成形に際しては、車外側リップ24の車内側裏面(ドアパネル2と対面し得る面)および車外側表面(前記車内側裏面の反対側面)のうちの車内側裏面(ドアパネル2と対面し得る面)を肉盛りすることで、厚肉部28の厚みを確保している。このため、型成形部13の車外側リップ24の車外側表面は、比較的面一な状態に保つことができ、外観を損なうおそれがない。
【0031】
また、車外側リップ24(またはヒレ部27)の車内側裏面を肉盛りして形成した厚肉部28にあっては、中央域の厚みが最も厚く、中央域から外周域に向かうにつれて厚みが徐々に減少するような厚さ分布を伴うように形成されている。
【0032】
図6(A)は、ヒレ部27における厚肉部28の厚さ分布を模式的に示している。図6(A)ではヒレ部27を車外側から見ているため、厚肉部28の輪郭が太い破線で示されている。その太い破線(厚肉部28の輪郭線)と同心的な相似形状で描かれた3つの細い破線L1,L2,L3は、車内側裏面からの突出高(つまり厚さ)を示唆する等高線である。即ち、破線L1で囲まれた領域が最も肉厚であり、L1→L2→L3という具合に外周域に向かうに従って厚さが次第に減少する。このような厚さ分布を持つ場合、図6(B)の想定断面に示すように、厚肉部28での厚さの変化が山なりに緩やかなものとなる。このような場合、射出成形直後に肉盛りした側と反対側面において、仮想線で示すようなヒケ31が生じたとしても、そのヒケ31の程度はわずかであり外観の低下を抑制できる。
【0033】
次に、本実施形態のガラスランチャンネルの使用態様について説明する。
図2,4及び5に示すように、ガラスランチャンネル10を窓枠3に取り付けると、車内側リップ23及び車内側側壁部15との間、並びに、車外側リップ24及び車外側側壁部16との間にドアパネル2が係合することで、ガラスランチャンネル10の窓枠3への装着が完了する。この装着状態では、窓枠3の少なくとも上枠3a、縦枠3bおよび内角部3cにおいて、車外側リップ24がドアパネル2の一部を上から(又は車外側から)覆い隠す恰好となる。
【0034】
続いて、ガラスランチャンネル10が装着された窓枠3の主に縦枠3bに対してガーニッシュ4が取り付けられる。この取り付け状態では、窓枠の縦枠3bおよび内角部3cにおいて、ガーニッシュ4がガラスランチャンネルの車外側リップ24の一部を覆い隠すことになる。それと同時に、ガラスランチャンネルの車外側リップ24の車外側表面が、ガーニッシュ4に対し当該ガーニッシュ4の全長に亘って当接することになる。そして、この「ガーニッシュの全長に亘る当接」を実現又は確保するために、ヒレ部27に設けられた厚肉部28が大きく貢献する(後ほど理由を述べます)。
【0035】
なお、本実施形態では図2に示すように、ガラスランチャンネルのうちの上辺部11の車外側リップ24の上縁ライン24ULと、ガーニッシュ4の上端縁のライン4ULとが水平にほぼ一直線状となるように設計されている。このため、窓枠まわりのデザイン性が優れたものとなっている。
【0036】
本実施形態のようにガラスランチャンネルの型成形部13の外角領域にヒレ部27が設けられる一方、本実施形態とは異なり該ヒレ部27には厚肉部28が設けられていない場合には、図2の特に長円状一点鎖線Bで囲んだあたりにおいて、車外側リップ24(の車外側表面)が車内側へ凹み易い傾向にあることが判明した。かかる凹みが生じると、車外側リップ24とガーニッシュ4との間に隙間を生じてしまい、その隙間が走行時における風切り音の発生原因になるという不都合を生じる。
【0037】
この点、本実施形態では、型成形部13の車外側リップ24(即ちヒレ部27)に厚肉部28が形成されて剛性が高められているため、ガラスランチャンネル10の窓枠3への取り付け時に、窓枠の上枠3a、縦枠3bおよび内角部3cにて車外側リップ24がドアパネル2に乗り上げたときでも、型成形部13の車外側リップ24が車内側に凹むことが無い。従って、窓枠の縦枠3bおよび内角部3cにおいて、ガラスランチャンネルの車外側リップ24の車外側表面が、ガーニッシュ4に対してその全長にわたって隙間無く当接した状態を維持することができる。結果的に、車外側リップ24とガーニッシュ4との間に隙間が発生する事態を回避して、風切音等を防止又は抑制することができる。
【0038】
[変更例]
本発明の実施形態は、上記実施形態に限定されるものではなく、以下のような態様で変更実施することもできる。
図1図6の実施形態では型成形部13の車外側リップ24の外角領域に、外方向に張り出した部分を有するヒレ部27を設けていたが、かかる外方向に張り出した部分は本発明にとって必須ではない。例えば図7に示すように、型成形部13の車外側リップ24の外角領域に、外方向に張り出した部分を持たないガラスランチャンネルに対しても、本発明を適用することができる。図7のように簡素化された型成形部13の車外側リップ24にあっては、コーナーR(25)から若干下側寄り位置(この位置もコーナーRの近傍と言える)において車内側への凹みが生じ易いことが判明している。それゆえ、コーナーRの近傍のうちでもコーナーRよりも若干下側寄り位置に厚肉部28を形成することで、車外側リップ24の凹みを防止して風切り音等を防止又は抑制することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 フロントドア(車両ドア)
2 ドアパネル
3 窓枠
3a 窓枠の上枠
3b 窓枠の縦枠
3c 窓枠の内角部
4 ガーニッシュ
5 窓板(窓ガラス)
10 ガラスランチャンネル
11 上辺部
12 縦辺部
13 型成形部(接続部)
14 基底部
15 車内側側壁部
16 車外側側壁部
23 車内側リップ
24 車外側リップ
25 コーナーR
27 ヒレ部
28 厚肉部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7