(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】整髪剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/31 20060101AFI20230825BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20230825BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20230825BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
A61K8/31
A61K8/891
A61K8/92
A61Q5/06
(21)【出願番号】P 2020521013
(86)(22)【出願日】2019-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2019003073
(87)【国際公開番号】W WO2019225061
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2019-12-26
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2018098882
(32)【優先日】2018-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 佳和
(72)【発明者】
【氏名】占部 駿
【合議体】
【審判長】瀬良 聡機
【審判官】井上 典之
【審判官】齋藤 恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-126829(JP,A)
【文献】特開2010-270066(JP,A)
【文献】特開2005-239677(JP,A)
【文献】特開平3-128309(JP,A)
【文献】特開2007-70233(JP,A)
【文献】特開2017-137249(JP,A)
【文献】「XIAMETER PMX-200 Silicone Fluid,0.65-2cSt」のデータシート,Dow Corning Corporation,2012.9.19.,[オンライン],[検索日2021.09.01],<URL:https://www.ulbrich.hu/chemical-technical-products/TDS_Xiameter_PMX_200_Sil_Fluid_0_65_to_2CS.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00 - 8/99
A61Q 1/00 - 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分Aと、下記成分Bと、下記成分Cと、下記成分Dとを含み、
前記成分Aの含有量が0.5質量%以上、20.0質量%以下であり、
前記成分Bの含有量が0.5質量%以上、20.0質量%以下であり、
前記成分Dの含有量が0.5質量%以上、20.0質量%以下であり、
前記成分Aの含有量の前記成分Bの含有量に対する質量比が0.20以上、10.0以下であり、
前記成分Dの含有量の前記成分Bの含有量に対する質量比が0.65以上である、整髪剤組成物。
成分A:マイクロクリスタリンワックス、及びポリエチレンワックスからなる群より選ばれる炭化水素
成分B:パラフィンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、及びセレシンからなる群より選ばれる
2種以上の炭化水素
成分C:動粘度が0.5mm
2/s以上、2.5mm
2/s以下であるジメチルポリシロキサン
成分D:カルナウバロウ、ヒマワリ種子ロウ、ミツロウ、コメヌカロウ、及びセラックロウからなる群より選ばれる
2種以上のワックスエステル
【請求項2】
前記成分Cの含有量が0.5質量%以上、8.0質量%以下である、請求項1に記載の整髪剤組成物。
【請求項3】
前記成分Dの含有量の前記成分Bの含有量に対する質量比が4.00以下である、請求項1又は2に記載の整髪剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪を整える整髪剤に好適に用いられる整髪剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪を整えるために用いられる整髪剤組成物が発揮し得る整髪特性には、様々な整髪特性がある。例えば、整髪特性としては、毛髪同士をまとめる特性(例えば、毛髪をタイトにまとめる特性、毛髪をまとめて毛束を作る特性等)、毛髪の流れを作り髪型を作る特性(例えば、アレンジ力等)、髪を固める特性、髪を立ち上げる特性、髪型を長時間保持する特性、毛髪に艶を付与する特性、並びに、毛髪同士の滑りを良くしてさらさら感を付与する特性等が挙げられる。
【0003】
整髪剤組成物は、目的とする整髪スタイルや、適用対象である毛髪の髪質などに応じて、上記の整髪特性のうちの一つ又は複数を発揮するように設計されている。また、整髪剤組成物の性状についても、液状、ジェル状及びグリース状などの種々の性状があり、それぞれの性状の整髪剤組成物が、それぞれ異なる使用性、使用感や整髪特性を有する。また、性状が異なる整髪剤組成物では、異なる組成設計が行われている。
【0004】
下記の特許文献1には、(A)アクリル系増粘剤、(B)液状炭化水素、(C)マイクロクリスタリンワックス、及び(D)アルカリを含有し、水中油滴型乳化物である整髪剤が開示されている。上記水中油滴型乳化物は、チクソトロピー性を有する。
【0005】
下記の特許文献2には、(A)融点70~77℃のパラフィンワックス、(B)室温で液状の油性物質、(C)非イオン性界面活性剤、及び(D)水を含有する頭髪用乳化組成物が開示されている。また、特許文献2の実施例では、マイクロクリスタリンワックスが用いられている。また、特許文献2の実施例では、動粘度が5csのメチルポリシロキサンが単に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-218418号公報
【文献】特開2011-126829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2に記載のような従来の整髪剤組成物では、配合されている固形油分に起因して塗布時に摩擦が生じ、塗布性が低下することがある。例えば、従来の整髪剤組成物を毛髪上へ塗布した際に、固形油分が毛髪に引っ掛かったりすることがある。このため、従来の整髪剤組成物では、該整髪剤組成物が毛髪上に均一に塗布されず、毛髪上での整髪剤組成物の厚みにムラが生じて、整髪剤組成物が部分的に多く付着することがある。この場合には、整髪を施したときに、整髪剤組成物が多く付着した部分に起因して毛束が垂れて、整髪した髪型が保持できなくなることがある。特に、細毛の場合(例えば、年齢が40代以降の毛髪の場合)には、毛髪自体の強度が低いため、毛束が垂れやすく、整髪した髪型が崩れやすい。
【0008】
また、塗布性を単に高めた整髪剤組成物では、整髪力や整髪保持力が低下することがある。
【0009】
本発明の目的は、塗布性及び整髪力に優れ、かつ、細毛に対する整髪保持力に優れる整髪剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記成分(A)と、下記成分(B)と、下記成分(C)とを含み、前記成分(A)の含有量が0.5質量%以上、20.0質量%以下であり、前記成分(B)の含有量が0.5質量%以上、20.0質量%以下であり、前記成分(A)の含有量の前記成分(B)の含有量に対する質量比が、0.20以上、10.0以下である、整髪剤組成物を提供する。
【0011】
成分(A):マイクロクリスタリンワックス、及びポリエチレンワックスからなる群より選ばれる炭化水素
成分(B):パラフィンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、及びセレシンからなる群より選ばれる炭化水素
成分(C):動粘度が0.5mm2/s以上、2.5mm2/s以下であるジメチルポリシロキサン
【0012】
本発明の整髪剤組成物は、下記成分(D)を含むことが好ましい。
【0013】
成分(D):カルナウバロウ、ヒマワリ種子ロウ、ミツロウ、コメヌカロウ、及びセラックロウからなる群より選ばれるワックスエステル
【0014】
本発明の整髪剤組成物は、前記成分(D)の含有量が0.5質量%以上、20.0質量%以下であり、前記成分(D)の含有量の前記成分(B)の含有量に対する質量比が、0.60以上、4.00以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の整髪剤組成物は、特定の成分(A)と、特定の成分(B)と、特定の成分(C)とを含み、成分(A)の含有量が0.5質量%以上、20.0質量%以下であり、成分(B)の含有量が、0.5質量%以上、20.0質量%以下であり、成分(A)の含有量の成分(B)の含有量に対する質量比が0.20以上、10.0以下であるので、塗布性及び整髪力に優れ、かつ、細毛に対する整髪保持力に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明の整髪剤組成物は、マイクロクリスタリンワックス、及びポリエチレンワックスからなる群より選ばれる炭化水素と、パラフィンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、及びセレシンからなる群より選ばれる炭化水素と、動粘度が0.5mm2/s以上、2.5mm2/s以下であるジメチルポリシロキサンとを含む。
【0018】
本明細書においては、上記「マイクロクリスタリンワックス、及びポリエチレンワックスからなる群より選ばれる炭化水素」を「成分(A)」と称する場合がある。
【0019】
本明細書においては、上記「パラフィンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、及びセレシンからなる群より選ばれる炭化水素」を「成分(B)」と称する場合がある。
【0020】
本明細書においては、上記「動粘度が0.5mm2/s以上、2.5mm2/s以下であるジメチルポリシロキサン」を「成分(C)」と称する場合がある。
【0021】
本発明の整髪剤組成物は、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を含み、成分(A)の含有量が0.5質量%以上、20.0質量%以下であり、成分(B)の含有量が0.5質量%以上、20.0質量%以下であり、成分(A)の含有量の成分(B)の含有量に対する質量比(成分(A)の含有量/成分(B)の含有量)が、0.20以上、10.0以下である。
【0022】
本発明の整髪剤組成物では、上記の構成が備えられているので、塗布性及び整髪力に優れ、かつ、細毛に対する整髪保持力に優れる。
【0023】
本発明の整髪剤組成物では、毛髪に塗布したときに、のびが良好であり、毛髪に均一に塗布することができる。
【0024】
本発明の整髪剤組成物では、細毛とは異なる毛髪に対しても優れた整髪保持力が発揮される。このため、本発明の整髪剤組成物では、毛髪の太さに関わらず、優れた整髪保持力が発揮される。本発明の整髪剤組成物では、従来の整髪剤組成物と比べて、細毛に対して整髪処理を施した場合に、整髪保持力に優れるという効果がより一層効果的に発揮される。
【0025】
本発明の整髪剤組成物は、さらに、カルナウバロウ、ヒマワリ種子ロウ、ミツロウ、コメヌカロウ、及びセラックロウからなる群より選ばれるワックスエステルを含んでいてもよい。本明細書においては、上記「カルナウバロウ、ヒマワリ種子ロウ、ミツロウ、コメヌカロウ、及びセラックロウからなる群より選ばれるワックスエステル」を「成分(D)」と称する場合がある。
【0026】
上記のように、本発明の整髪剤組成物は、成分(A)と成分(B)と成分(C)とを少なくとも含む。本発明の整髪剤組成物は、さらに、成分(D)を含んでいてもよい。
【0027】
本発明の整髪剤組成物は、成分(A)~(D)以外の他の成分を含んでいてもよい。
【0028】
上記の成分、例えば、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)や他の成分は、それぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が用いられてもよい。
【0029】
以下、本発明の整髪剤組成物に用いられる各成分の詳細を説明する。
【0030】
(成分(A))
成分(A)は、マイクロクリスタリンワックス、及びポリエチレンワックスからなる群より選ばれる炭化水素(ワックス成分)である。マイクロクリスタリンワックス及びポリエチレンワックスは、25℃で固体の炭化水素である。成分(A)を用いることにより、毛髪間に適度な粘着力を付与することができ、整髪力及び細毛に対する整髪保持力を高めることができる。成分(A)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0031】
上記マイクロクリスタリンワックスは、JIS K2235に規定されたマイクロクリスタリンワックスである。
【0032】
上記マイクロクリスタリンワックスの市販品としては、商品名「HI-MIC-2065」、商品名「HI-MIC-1090」、商品名「HI-MIC-2095」、商品名「HI-MIC-1045」(以上いずれも日本精蝋社製)、及び商品名「MULTIWAX W-835」、商品名「MULTIWAX X145AH」、商品名「MULTIWAX X123AH」(以上いずれもSonneborn Inc社製)等が挙げられる。
【0033】
上記ポリエチレンワックスは、エチレンの重合物である。上記ポリエチレンワックスの製造方法としては、エチレンを重合する方法、及び一般成型用ポリエチレンを分解する方法等が挙げられる。
【0034】
本発明の効果を効果的に発揮する観点から、上記ポリエチレンワックスは、融点が120℃以下のポリエチレンワックスであることが好ましい。
【0035】
上記ポリエチレンワックスの市販品としては、商品名「PERFORMALENE PL POLYETHYLENE」(New Phase Technologies社製、融点88℃)等が挙げられる。
【0036】
マイクロクリスタリンワックス、及びポリエチレンワックスはそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0037】
本発明の整髪剤組成物100質量%中、成分(A)の含有量は、0.5質量%以上、20.0質量%以下である。成分(A)の含有量が0.5質量%未満であると、毛髪がまとまりにくくなることがある。成分(A)の含有量が20.0質量%を超えると、整髪力が低下することがある。
【0038】
本発明の整髪剤組成物100質量%中、成分(A)の含有量は、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは4.0質量%以上、好ましくは18.0質量%以下、より好ましくは16.0質量%以下である。成分(A)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、毛髪間に適度な粘着力を付与することができ、整髪力及び細毛に対する整髪保持力をより一層高めることができる。成分(A)の含有量は、本発明の整髪剤組成物中の全ての成分(A)の含有量の合計である。
【0039】
成分(A)の含有量の成分(B)の含有量に対する質量比(成分(A)の含有量/成分(B)の含有量)は、0.20以上、10.0以下である。上記質量比(成分(A)の含有量/成分(B)の含有量)が0.20未満又は10.0を超えると、整髪剤組成物が毛髪上に均一に塗布されにくく、細毛に対する整髪保持力が低下することがある。
【0040】
成分(A)の含有量の成分(B)の含有量に対する質量比(成分(A)の含有量/成分(B)の含有量)は、好ましくは0.30以上、より好ましくは0.40以上、好ましくは8.0以下、より好ましくは7.0以下である。上記質量比(成分(A)の含有量/成分(B)の含有量)が上記下限以上及び上記上限以下であると、整髪力及び細毛に対する整髪保持力をより一層高めることができる。また、上記質量比(成分(A)の含有量/成分(B)の含有量)が上記下限以上であると、塗布性を高めることができる。
【0041】
(成分(B))
成分(B)は、パラフィンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、及びセレシンからなる群より選ばれる炭化水素(ワックス成分)である。パラフィンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス及びセレシンは、25℃で固体の炭化水素である。成分(B)を用いることにより、整髪力及び細毛に対する整髪保持力を高めることができる。成分(B)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0042】
上記パラフィンワックスは、JIS K2235に規定されたパラフィンワックスである。
【0043】
上記パラフィンワックスの市販品としては、商品名「SP-0165」、商品名「HNP-9」(以上いずれも日本精蝋社製)等が挙げられる。
【0044】
上記フィッシャー・トロプシュワックスは、フィッシャー・トロプシュ法により製造されるワックスである。上記フィッシャー・トロプシュワックスは、表示名称が「合成ワックス」と表記されることがあるワックスである。上記フィッシャー・トロプシュ法とは、一酸化炭素と水素と触媒とを用いてワックスを合成する製法である。上記触媒としては、鉄、コバルト、及びニッケル等が挙げられる。
【0045】
上記フィッシャー・トロプシュワックスの市販品としては、商品名「CIREBELLE 108」(CIREBELLE社製)等が挙げられる。
【0046】
上記セレシンの市販品としては、商品名「CERESIN #810」、商品名「CERESIN #820」、及び商品名「精製セレシンN」(以上いずれも日興リカ社製)等が挙げられる。
【0047】
上記パラフィンワックス、上記フィッシャー・トロプシュワックス、上記セレシンはそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0048】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、成分(B)は、パラフィンワックス、及びフィッシャー・トロプシュワックスからなる群より選ばれる炭化水素を含むことが好ましい。
【0049】
本発明の整髪剤組成物100質量%中、成分(B)の含有量は、0.5質量%以上、20.0質量%以下である。成分(B)の含有量が0.5質量%未満であると、整髪力が劣ることがある。成分(B)の含有量が20.0質量%を超えると、塗布性及び細毛に対する整髪保持力が低下することがある。
【0050】
本発明の整髪剤組成物100質量%中、成分(B)の含有量は、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、好ましくは15.0質量%以下、より好ましくは13.0質量%以下である。成分(B)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、塗布性、整髪力、及び細毛に対する整髪保持力をより一層高めることができる。成分(B)の含有量は、本発明の整髪剤組成物中の全ての成分(B)の含有量の合計である。
【0051】
(成分(C))
成分(C)は、動粘度が0.5mm2/s以上、2.5mm2/s以下であるジメチルポリシロキサンである。上記ジメチルポリシロキサンは、25℃で液状であり、かつ揮発性を有する化合物である。成分(C)を用いることにより、塗布性を高めることができる。成分(C)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0052】
上記ジメチルポリシロキサンの動粘度は、0.5mm2/s以上、2.5mm2/s以下である。上記ジメチルポリシロキサンの動粘度が0.5mm2/s未満又は2.5mm2/sを超えると、ジメチルポリシロキサンの揮発性が低下し、塗布性が劣ることがある。
【0053】
塗布性をより一層高める観点からは、上記ジメチルポリシロキサンの動粘度は、好ましくは0.8mm2/s以上、より好ましくは1.0mm2/s以上、好ましくは2.2mm2/s以下、より好ましくは2.0mm2/s以下である。
【0054】
上記動粘度は、25℃での動粘度である。上記25℃での動粘度は、毛細管粘度計法により測定される。
【0055】
本発明の整髪剤組成物100質量%中、成分(C)の含有量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは8.0質量%以下である。成分(C)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、塗布性をより一層高めることができる。成分(C)の含有量は、本発明の整髪剤組成物中の全ての成分(C)の含有量の合計である。
【0056】
(成分(D))
成分(D)は、カルナウバロウ、ヒマワリ種子ロウ、ミツロウ、コメヌカロウ、及びセラックロウからなる群より選ばれるワックスエステルである。成分(D)は、25℃で固体のワックスエステルである。成分(D)を用いることにより、毛髪間の粘着力を高めることができ、整髪力及び細毛に対する整髪保持力をより一層高めることができる。成分(D)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0057】
上記カルナウバロウは、INCI名:Copernicia Cerifera (Carnauba) Waxで表記される化合物である。
【0058】
上記カルナウバロウの市販品としては、商品名「TOWAX-1F8」(東亜化成社製)、商品名「カルナバワックス1号」(加藤洋行社製)、及び商品名「カルナバワックス精製No.1」(セラリカNODA社製)等が挙げられる。
【0059】
上記ヒマワリ種子ロウは、INCI名:Helianthus Annuus (Sunflower) Seed Waxで表記される化合物である。
【0060】
上記ヒマワリ種子ロウの市販品としては、「精製ヒマワリワックス」(横関油脂工業社製)、及び商品名「VGB 5ST」(エー・ディー・エム・ジャパン社製)等が挙げられる。
【0061】
上記ミツロウの市販品としては、商品名「コウサンダッシュウミツロウ」(三木化学工業社製)、及び商品名「精製ミツロウCY-100」(横関油脂工業社製)等が挙げられる。
【0062】
上記コメヌカロウの市販品としては、「TOWAX-3P3」(東亜化成社製)、及び商品名「精製ライスワックス S-100」(横関油脂工業社製)等が挙げられる。
【0063】
上記セラックロウの市販品としては、「乾燥透明白ラック」(日本シェラック工業社製)等が挙げられる。
【0064】
上記カルナウバロウ、上記ヒマワリ種子ロウ、上記ミツロウ、上記コメヌカロウ、上記セラックロウはそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0065】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、成分(D)は、カルナウバロウ、及びヒマワリ種子ロウからなる群より選ばれるワックスエステルを含むことが好ましい。
【0066】
本発明の整髪剤組成物100質量%中、成分(D)の含有量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、好ましくは20.0質量%以下、より好ましくは10.0質量%以下である。成分(D)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、整髪力及び細毛に対する整髪保持力をより一層高めることができる。成分(D)の含有量が20.0質量%を超えると、成分(D)の含有量が20.0質量%以下である場合と比べて、細毛に対する整髪保持力が低下する傾向がある。成分(D)の含有量は、本発明の整髪剤組成物中の全ての成分(D)の含有量の合計である。
【0067】
成分(D)の含有量の成分(B)の含有量に対する質量比(成分(D)の含有量/成分(B)の含有量)は、好ましくは0.60以上、より好ましくは0.65以上、好ましくは4.00以下、より好ましくは3.85以下である。上記質量比(成分(D)の含有量/成分(B)の含有量)が上記下限以上及び上記上限以下であると、整髪力及び細毛に対する整髪保持力をより一層高めることができる。
【0068】
(他の成分)
本発明の整髪剤組成物は、上述した成分(A)~(D)以外の成分を含んでいてもよい。成分(A)~(D)以外の成分としては、特に限定されないが、例えば、25℃で液状の油脂、25℃でペースト状の炭化水素、成分(C)以外のジメチルポリシロキサン、乳化剤、乳化助剤、増粘剤、多価アルコール、低級アルコール、皮膜形成ポリマー、及び防腐剤等が挙げられる。
【0069】
上記25℃で液状の油脂としては、ミネラルオイル、スクワレン、及びスクワラン等の炭化水素;パルミチン酸イソプロピル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、及びイソステアリン酸ポリグリセリル等のエステル油等が挙げられる。
【0070】
上記25℃でペースト状の炭化水素としては、ワセリン等が挙げられる。
【0071】
上記乳化剤及び乳化助剤としては、ノニオン界面活性剤;ラウリン酸ポリグリセリル、ミリスチン酸ポリグリセリル、イソステアリン酸ポリグリセリル、及びジヤシ油脂肪酸ポリグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル;セテス-20及びセテス-40等のポリオキシエチレンセチルエーテル;ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セトステアリルアルコール及びオレイルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。
【0072】
上記増粘剤としては、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、ヒドロキシメチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
【0073】
上記多価アルコールとしては、グリセリン、ジグリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド等が挙げられる。
【0074】
上記低級アルコールとしては、エタノール等が挙げられる。
【0075】
上記皮膜形成ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体、及びN-メタクリロイルオキシエチルN,N-ジメチルアンモニウム-α-N-メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体等が挙げられる。
【0076】
上記防腐剤としては、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、イソプロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、及びフェノキシエタノール等が挙げられる。
【0077】
さらに、本発明の整髪剤組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上述した成分(A)~(D)以外の成分の他、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、植物抽出エキス、染料、顔料、pH調整剤、及び香料等を含んでいてもよい。
【0078】
細毛に対する整髪保持力をより一層高める観点から、本発明の整髪剤組成物は、キャンデリラロウを含まないか、又はキャンデリラロウを3.0質量%未満で含むことが好ましい。本発明の整髪剤組成物がキャンデリラロウを含む場合に、本発明の整髪剤組成物100質量%中、キャンデリラロウの含有量は、好ましくは3.0質量%未満、より好ましくは2.5質量%未満である。
【0079】
本発明の整髪剤組成物は、水を含むことが好ましい。上記水は精製水であることが好ましい。
【0080】
本発明の整髪剤組成物中の水の含有量は、他の成分の含有量によって適宜調整することができる。本発明の整髪剤組成物100質量%中、水の含有量は、好ましくは20.0質量%以上、より好ましくは25.0質量%以上、更に好ましくは30.0質量%以上、好ましくは80.0質量%以下、より好ましくは70.0質量%以下、更に好ましくは60.0質量%以下である。
【0081】
(整髪剤組成物の他の詳細)
本発明の整髪剤組成物の性状は、特に限定されない。本発明の整髪剤組成物の性状は、液状であってもよく、ジェル状であってもよく、クリーム状であってもよく、グリース状であってもよく、ワックス状であってもよい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、本発明の整髪剤組成物の性状は、クリーム状又はワックス状であることが好ましく、ワックス状であることがより好ましい。本発明の整髪剤組成物は、クリーム状整髪剤組成物又はワックス状整髪剤組成物であることが好ましく、ワックス状整髪剤組成物であることがより好ましい。
【0082】
本発明の整髪剤組成物の製造方法としては、公知の整髪剤組成物の製造方法を採用することができる。本発明の整髪剤組成物の製造方法としては、例えば、各成分を混合した後、ホモミキサー等を用いて、転相乳化する方法(転相乳化法)等が挙げられる。なお、上記各成分の混合と上記転相乳化とは、同時に行われてもよい。
【0083】
本発明の整髪剤組成物は、特に限定されないが、例えば、容器に充填された形態で用いることができる。本発明の整髪剤組成物の性状がワックス状である場合には、上記容器は、ジャー容器が好ましい。本発明の整髪剤組成物の性状がクリーム状である場合には、上記容器は、ボトル容器、チューブ容器、又はジャー容器が好ましい。
【0084】
取扱い性をより一層高める観点からは、本発明の整髪剤組成物の25℃での稠度は、好ましくは5gf以上、より好ましくは10gf以上であり、好ましくは150gf以下、より好ましくは100gf以下である。上記稠度は、10φ球型アダプターを備える稠度計を用いて、25℃、スピード60mm/分、ストローク20mmの条件で測定することができる。稠度計としては、サン科学社製「RHEO METER」等が挙げられる。
【0085】
以下に本発明の構成と本発明の効果との関連性を更に詳細に説明する。
【0086】
成分(A)は、分岐構造を多く有する成分であり、結晶性の低い成分である。成分(B)は、直鎖構造を有するか又は分岐数の少ない分岐構造を有する成分であり、結晶性の高い成分である。そのため、整髪成分として成分(A)のみが単に配合された整髪剤組成物では、塗布時に摩擦が生じにくく塗布性を高めることができるものの、毛髪に硬さが付与されにくく、整髪力を高めることは困難であり、また、細毛に対する整髪保持力が低下する。また、整髪成分として成分(B)のみが単に配合された整髪剤組成物では、毛髪に硬さが付与されやすいものの、塗布時に摩擦が生じやすく、塗布性が低下しやすい。このため、整髪成分として成分(B)のみが単に配合された整髪剤組成物では、該整髪剤組成物が毛髪上に均一に塗布されず、整髪保持力(特に細毛に対する整髪保持力)が低下する。これに対して、本発明の整髪剤組成物では、成分(A)と成分(B)とが特定の質量比で配合されているため、塗布性、整髪力、及び細毛に対する整髪保持力の全てを良好にすることができる。
【0087】
さらに、本発明の整髪剤組成物は成分(C)を含むので、塗布性をかなり高めることができる。成分(C)は揮発性の高い成分であるため、塗布時には良好に塗布することができ、塗布後は揮発することで成分(A)と成分(B)との毛髪上での濃度を高めることができる。本発明の整髪剤組成物では、成分(A)と成分(B)とに加えて、成分(C)が配合されているため、優れた塗布性を有しつつ、整髪力及び細毛に対する整髪保持力を高めることができる。
【0088】
また、本発明の整髪剤組成物は、毛髪の太さに関わらず、整髪保持力を高めることができる。
【実施例】
【0089】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。なお、以下の実施例7,8,9は参考例である。
【0090】
実施例及び比較例では、下記の成分を用いた。
【0091】
(成分(A))
マイクロクリスタリンワックス:商品名「HI-MIC-1090」、日本精蝋社製
【0092】
(成分(B))
パラフィンワックス:商品名「SP-0165」、日本精蝋社製
フィッシャー・トロプシュワックス:商品名「CIREBELLE 108」、CIREBELLE社製
【0093】
(成分(C))
ジメチルポリシロキサン:商品名「XIAMETER PMX-200 SILICONE FLUID 1.5CS」、東レ・ダウコーニング社製、25℃での動粘度1.5mm2/s
【0094】
(成分(C)に相当しない成分)
ジメチルポリシロキサン:商品名「DOW CORNING TORAY SH200 C FLUID 10CS」、東レ・ダウコーニング社製、25℃での動粘度10mm2/s
【0095】
(成分(D))
ヒマワリ種子ロウ:商品名「精製ヒマワリワックス」、横関油脂工業社製
カルナウバロウ:商品名「TOWAX-1F8」、東亜化成社製
【0096】
(その他)
ワセリン(室温でペースト状の炭化水素)
ジメチルポリシロキサン:商品名「Element14* PDMS 350-JC」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製、25℃での動粘度350mm2/s
ミネラルオイル(25℃で液状の炭化水素)
パルミチン酸エチルヘキシル(25℃で液状のエステル油)
ステアリルアルコール(乳化助剤)
セテス-20(ポリオキシエチレン基の平均付加モル数20、ポリオキシエチレンセチルエーテル):商品名「ブラウノン CH-320L」、青木油脂工業社製(乳化剤)
ステアリン酸ソルビタン(乳化剤)
ステアリン酸(乳化剤)
カルボキシビニルポリマー(増粘剤)
トリエタノールアミン(アルカリ)
1,3-ブチレングリコール(多価アルコール)
精製水
【0097】
(実施例1~9及び比較例1~4)
下記の表1,2に示す配合成分を配合(配合単位は質量%)し、整髪剤組成物を調製した。表中の配合量(整髪剤組成物100質量%中の配合量)は、純分の配合量(単位:質量%)で示した。
【0098】
実施例1~9で得られた整髪剤組成物の性状はいずれもワックス状であった。
【0099】
(評価)
得られた整髪剤組成物について、以下の評価を行った。評価結果は表1,2中に示した。
【0100】
(試験例1:塗布性)
得られた整髪剤組成物1.5gを手に取り、ヘアウィッグ(レッスンマネキン:ユーカリジャパン社製)の全頭の毛髪に塗布し、毛髪を根元から垂直に立ち上げるように整髪を施した。その際の、塗布のしやすさを下記の基準で評価した。
【0101】
<塗布性の評価基準>
○(良好):整髪剤組成物ののびが良く、毛髪上に均一に塗布できる
△(やや良好):整髪剤組成物ののびがやや良く、毛髪上にほぼ均一に塗布できる
×(不良):整髪剤組成物ののびが悪く、毛髪上に均一に塗布しにくい
【0102】
(試験例2:整髪力)
試験例1で整髪したヘアウィッグを1分間静置した後、毛髪を目視にて観察した。整髪力を下記の基準で評価した。
【0103】
<整髪力の評価基準>
○(良好):整髪直後の髪型がしっかりと保持されている
△(やや良好):整髪直後の髪型がある程度保持されている
×(不良):ほぼ全ての毛髪について整髪直後の髪型が保持されていない
【0104】
(試験例3:細毛に対する整髪保持力)
細毛(平均毛径約80μm)のみを約300本選定して作成した毛髪キットを用意した。得られた整髪剤組成物0.02gを手に取り、毛髪キットの毛髪に塗布し、毛髪を垂直に立ち上げるように整髪を施した。整髪後の毛髪キットを、立ち上げた毛髪が水平になるように、90°回転させた。この状態で、毛髪キットを25℃、60%RHの環境下で3時間静置した後、毛髪を目視にて観察した。細毛に対する整髪保持力を下記の基準で評価した。
【0105】
<細毛に対する整髪保持力の評価基準>
○(良好):毛髪が水平方向にしっかりと保持されている
△(やや良好):若干の垂れた毛髪があるものの、毛髪が水平方向に保持されている
×(不良):ほぼ全ての毛髪が、水平方向に保持されておらず、垂れ下がっている
【0106】
組成及び結果を下記の表1,2に示す。
【0107】
【0108】