(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】成形品の製造プロセス、当該プロセスにより得られる成形品、当該プロセスにおけるブランクの使用及びコーティング材料の使用、並びにプロセスを実行するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
A61C 5/73 20170101AFI20230825BHJP
A61C 5/77 20170101ALI20230825BHJP
A61C 13/09 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
A61C5/73
A61C5/77
A61C13/09
(21)【出願番号】P 2020524515
(86)(22)【出願日】2018-11-08
(86)【国際出願番号】 EP2018080649
(87)【国際公開番号】W WO2019092124
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-09-22
(32)【優先日】2017-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509207014
【氏名又は名称】ビタ ツァーンファブリク ハー.ラウター ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー
【氏名又は名称原語表記】VITA ZAHNFABRIK H.RAUTER GMBH & CO.KG
(73)【特許権者】
【識別番号】520142066
【氏名又は名称】アイメス-アイコア ゲーエムベーハー
(73)【特許権者】
【識別番号】520141195
【氏名又は名称】テヒニシェ ウニベルジテート ダルムシュタット
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョブスト,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】エラブロック,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】キルスティン,アーミン
(72)【発明者】
【氏名】スターク,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】スタインメッツ,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ハイスター,ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】デイクン,ヴィタリ
(72)【発明者】
【氏名】ミシュリフスキ,ステファン
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第19922870(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0266876(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0015572(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0180110(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/73
A61C 5/77
A61C 13/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ブランクを提供し、
b)サブトラクティブ法を用いて前記ブランクを機械加工してフレームワーク構造を得て、
c)ステップb)で得られた前記フレームワーク構造にコーティングを機械塗布して、未加工成形品を得て、
d)前記コーティングを
、重合、乾燥、冷却、加圧、及び/又は照射によって硬化し、
e)サブトラクティブ法を用いて前記コーティングを機械加工して所望の成形品を得
、
f)自動的に前記所望の成形品を研磨する
ステップを含み、
前記ブランクの材料は、ポリマーベースの充填材と混合されたセラミック、ガラスセラミック又はジルコニアセラミックを含み、
前記コーティングの塗布は
、自動カートリッジ交換器を有する装置を用いて行われ
、
a)~f)の全てのプロセスステップは同じ機械内又は同じ機械によって実行される成形品の製造プロセス。
【請求項2】
ステップc)~e)を繰り返すことによって、1つ以上のさらなるコーティングを塗布するステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
自動化された方法によって行われる、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記成形品は歯科修復物である、
請求項1乃至3のいずれか一に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ブランクは、セラミック材料、ポリマーベースの材料、及び金属材料、並びに、それらの混合物からなる群から選択される1つ以上の材料を含む、
請求項1乃至4のいずれか一に記載のプロセス。
【請求項6】
前記コーティングは、セラミック材料、ポリマーベースの材料、及び金属材料、並びに、それらの混合物からなる群から選択される1つ以上の材料を含む、
請求項1乃至5のいずれか一に記載のプロセス。
【請求項7】
前記ブランクの材料及び前記コーティングの材料は、同じ又は異なる材料である、
請求項1乃至6のいずれか一に記載のプロセス。
【請求項8】
前記サブトラクティブ法は、ミリング、研削、レーザーアブレーション、及びウォータージェット切断からなる群から選択される、
請求項1乃至7のいずれか一に記載のプロセス。
【請求項9】
前記コーティングの塗布は、アディティブ法、好ましくは押出、噴霧、蒸着、堆積、浸透、及び/又は浸漬コーティングによって行われる、
請求項1乃至8のいずれか一に記載のプロセス。
【請求項10】
前記コーティングの硬化は、重合、焼結、乾燥、冷却、加圧、及び/又は照射によって行われる、
請求項1乃至9のいずれか一に記載のプロセス。
【請求項11】
請求項1乃至10の
いずれか一に記載のプロセスにより得られる成形品。
【請求項12】
請求項1乃至10の
いずれか一に記載のプロセスにおける、セラミック材料、ポリマーベースの材料、及び/又は金属材料を含むブランクの使用。
【請求項13】
請求項1乃至10の
いずれか一に記載のプロセスにおける、セラミック材料、ポリマーベースの材料、及び/又は金属材料を含むコーティング材料の使用。
【請求項14】
サブトラクティブ法を実行するための手段と、アディティブ法を実行するための手段とを含む、請求項1乃至10の
いずれか一に記載のプロセスを実行するためのデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品を製造するための機械化されたプロセス、及び前記プロセスによって製造された成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
個々に固有の又は不規則な成形品を、正確に調整し、精密に製造することは、通常、高い経済的及び技術的な出費を要する。多くの場合、例えば、プロトタイプをデジタル化し、CAD/CAMモジュールを介して製造することによって、製造はコンピュータによってサポートされるが、ほとんどの場合、最終処理における人間による手動の後処理及び調整を省略することができない。これは、特に、成形品の外観のような、正確な調整及び精密さに加えて他の特性がそれぞれの用途にとって重要である場合に該当する。例えば、特に整形外科及び歯科修復の分野における医療及び美容用途が挙げられる。光学特性が最重要でない分野、例えば、自動車分野又は機械工学及び金型構造においてさえ、成形製品の表面及び機能特性は、物理特性をそれぞれの要件に適合させる際の重要な役割を果たす。したがって、例えば、機械的、物理的、及び化学的負荷に対する成形品の抵抗は、面及び素材構成の好適なデザインによって影響を受ける可能性がある。
【0003】
対応する成形品の製造は、多くの場合、最適な成形品が異なる材料及び材料層からなることがあり、製造は複数のプロセスステップで行われなければならないという事実によって、さらに複雑になる。したがって、例えば、特に歯科分野でのベニアリング(veneering)による多層成形品の製造は、個々の層をそれぞれ個別にかつ手動で塗布し、加工しなければならないので、非常に集約的な作業である。
【0004】
従来技術では、機械支持プロセスによる成形品の製造が記載された多くのプロセスが知られている。
【0005】
独国特許出願公開第10 2010 037 160号明細書には、義歯の製造法が記載されており、この方法では支持枠上にベニヤ(veneer)を製造するために、少なくとも1つの材料混合物の複数の層が義歯のデジタルモデルに従って、自動化された、特にコンピュータ制御された様式で、支持枠の空間的に湾曲した外面に塗布され、材料混合物の層は空間的に湾曲した様式で配置された層として塗布される。この方法は、材料混合物の複数の層が互いに直接連続して塗布されることを特徴とする。
【0006】
独国特許出願公開第199 22 870号明細書には、歯科修復物の色、半透明性、明るさ、及び蛍光が、自動化されて個別に適合される形成方法が開示されており、この方法の基本的なステップはデータ取得、形状を記述するためのCADデータセットの生成、及び層を塗布するためのCAD/CAMデータセットにあり、続いて、完全に自動化された結果の試験、仕様との比較、必要とされ得る層の部分の1つ以上の切除、データ入力の補正、及び更新された塗布(application)にある。
【0007】
独国特許出願公開第10 2009 011 175号明細書には、少なくとも1つの保持及び位置決めユニットと、少なくとも1つのコーティングノズル、制御ユニット、及び好ましくは炉室(furnace chamber)を含む少なくとも1つのコーティングユニットとを含む製造装置を使用する歯科修復物のフレームワークの自動的な歯科用セラミックベニアリング(dental ceramic veneering)のための方法が開示されており、CAD/CAMデータレコードは、ベニアリングのコーティング塗布に使用され、塗布工程中のノズルに対するフレームワークの位置変化は単に、保持及び位置決めユニットをノズルに対して移動させることによって行われる。また、本製造装置は前記保持・位置決め手段が5軸以上で回転可能であり、前記ノズルは、静止していることを特徴とする。
【0008】
米国特許出願公開第2004/245663号明細書には、シリコーンポリマーをベースとするテープがセラミックフレームワークに適用される成形品の製造方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術で知られている方法は、ほとんどの場合、最終処理を手動で行わなければならないか、又は結果をチェックするために複雑な測定を行わなければならないという欠点を有する。したがって、アディティブプロセス及びサブトラクティブプロセスは、通常、異なる機械で、又は部分的に手動で、別々に実行されなければならない。
【0010】
先行技術に記載された方法の別の欠点は、ほとんどの場合、アディティブプロセスがレーザを使用することによって行われることである。これにより、基板に悪影響を与える可能性のある熱負荷が発生する。
【0011】
さらに、先行技術に記載された方法では、いくつかの材料又は異なる色を自動塗布によって連続的に塗布することはできない。
【0012】
米国特許出願公開第2016/0129528号明細書には、とりわけ、コーティングがフィルムの形態で提供され、レーザを使用することによって構成要素上に溶融され、構成要素にコーティングを塗布するための方法を記載している。
【0013】
米国特許出願公開第2017/0057011号明細書及び米国特許出願公開第2017/0008127号明細書は、構成要素に材料を塗布するための印刷ヘッドに関するものである。当該構成要素は第1ホルダにクランプされ、印刷ヘッドは第2ホルダにクランプされる。基板の一部は、塗布される物質を受け、その塗布中に加熱される。
【0014】
したがって、特に成形品の機能及び外観に関して最適な特性を得るために、高い寸法精度及び個別に適合された異なる層や材料特性を有する多層成形品の製造を可能にし、作業集約的な手作業による後処理を省略することができる、完全に自動化された方法が依然として必要とされている。さらに、好ましくは基板への熱荷重が低く保たれる、完全に自動化された手法が必要とされている。
【0015】
したがって、本発明の目的は、個々の層の機能性及び外観が最重要であり、意図される用途に応じて特に適合させることができる、異なる材料及び材料特性を有する寸法的に正確な成形品の完全自動化製造を可能にするプロセスを提供することである。
【0016】
驚くべきことに、この目的は、サブトラクティブプロセスとアディティブプロセスの両方が機械化され自動化されたプロセスによって実行される、サブトラクティブプロセスのステップとアディティブプロセスのステップとの組み合わせに基づくプロセスによって達成され得ることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0017】
従って、本発明は第一に、以下のステップを含む成形品の製造プロセスに関する。
a)ブランクを提供し、
b)サブトラクティブ法を用いて前記ブランクを機械加工してフレームワーク構造を得て、
c)ステップb)で得られた前記フレームワーク構造にコーティングを機械塗布して、未加工成形品を得て、
d)前記コーティングを硬化し、
e)サブトラクティブ法を用いて前記コーティングを機械加工して所望の成形品を得て、
ここで、前記コーティングの塗布は、特に自動カートリッジ交換器を有する装置を用いて行われる。
【0018】
前歯領域における高度に美的な歯冠修復は、自然な歯の外見の最適な見え方及び機能を必要とする。この目的を達成するために、今日では、熟練した歯科技工士の複雑な手作業が必須である。部分的には、一つの歯の再建に数時間の手作業を要することがある。本発明によるプロセスは、複雑なプロセスを機械的に実施することによって、歯科研究所(dental laboratory)におけるプロセスを効率的に向上させることを可能にするだけでなく、成形製品の再現性、プロセスの安全性及び機能性を向上させることができる。
【0019】
用途に応じて、2つ以上のコーティングをフレームワーク構造に適用することが有利であり得る。したがって、本発明によるプロセスが以下のステップを含む実施形態であることが好ましい。
a)ブランクを提供し、
b)サブトラクティブ法を用いて前記ブランクを機械加工してフレームワーク構造を得て、
c)ステップb)で得られた前記フレームワーク構造にコーティングを機械塗布して、未加工成形品を得て、
d)コーティングを硬化し、
e)サブトラクティブ法による機械加工を行い、
f)好ましくは色、性質又は機能性の点でステップc)とは異なるコーティング構成要素を有する、さらなるコーティングを機械塗布して、延長された未加工成形品を得て、
g)さらなるコーティングの硬化を行い、
h)サブトラクティブ法を用いたさらなるコーティングの機械加工を行い、
i)ステップf)~h)を繰り返して、所望の成形品を得る。
【発明を実施するための形態】
【0020】
従来の方法は、特に光学的な所望の要求される品質を達成するために、特にブランクへのコーティングの塗布を手動で行わなければならないという欠点を有する。この製造方法は大抵の場合、単一のコーティングの塗布では所望の結果を達成するのに十分ではなく、各コーティングを塗布し、退屈な手作業によって所望の形状にしなければならないという事実によって、さらに複雑になる。この手動処理は高度な技術を必要とし、そのような要求の厳しい作業を実行することができる資格のある作業者を必要とし、通常、研磨などのさらなる処理ステップが続き、これも手動で実行されなければならない。
【0021】
本発明によるプロセスは全てのステップが機械化された方法で実行されるという利点を提供し、全てのプロセスステップは、好ましくは同じ機械内で又は同じ機械によって実行される。したがって、ブランクの処理又はサブトラクティブ法によるコーティングは、ブランクへのコーティングの塗布と同様に、機械化された方法で行われる。本発明の意味における「機械化された方法(mechanized method)」は、直接的な人間の介入なしに機械によって実行される作業ステップを意味する。
【0022】
本発明によるプロセスの好ましい実施形態では、プロセスステップが記載された順序で実行される。
【0023】
本発明に係るプロセスは、色彩、機能及び形状に忠実な成形品を、手作業による後処理を必要とせずに製造することができることを特徴とする。したがって、プロセスが自動化される実施形態が好ましい。本発明の意味における「自動化された(automated)」とは、人的リソース(human resource)の関与なしに個々のプロセスステップを実行することを意味する。しかしながら、特に最終的な品質管理、ホルダからのブランクの取り外し、最終的な研磨又は塗装のような更なる作業工程が手動で行われることは除外されない。また、制御をするための人間の介入は留保されたままである。本発明によるプロセスの自動化された実施に反して、例えば、サブトラクティブ法の実施又はコーティングの塗布に関する特定のデータが、人間の従業員によって提供されることはない。自動化された塗布は、好ましくは異なる材料を受け取り、供給するための手段を含むデバイスを使用することによって行われる。これらの手段は、好ましくは使用される材料を受容し、送達することができるカートリッジであり、供給は例えば、ノズルを使用することによって行うことができる。より好ましくは、カートリッジは、カートリッジが自動的に交換されることを可能にするように配置される。
【0024】
成形品の所望の用途及び機能に応じて、既に塗布されたコーティングに加えて、異なる材料特性及び色を有する1つ又は複数のさらなるコーティングを塗布することが意味をなす場合がある。したがって、前記コーティングに加えて、1つ以上のさらなるコーティングが塗布される実施形態が好ましい。これは、好ましくは第1のコーティングの塗布と同様に、特に本発明によるプロセスのステップc)~e)を繰り返して、所望の成形品を得ることができる。
【0025】
本発明によるプロセスは、特にその光学的及び機能的特性に高い要求が課せられる成形品の製造に適している。このように、主に歯科修復の分野では、自然な歯の外観及び性質ができるだけ自然に見えるようにするという課題がある。特に、各歯は、例えばその所有者の食習慣及び生活習慣によって造られる個々の色勾配を有すると考えられるべきである。人の個々の歯でさえ異なる外観を有するため、歯科修復物を既存の歯及びカラースキームにフィットさせて、可能な限り自然な外観を形成することは困難である。従来の方法では、通常、そのような色勾配は基本的なフレームワークに手動で異なる着色コーティングを適用することによって達成され、各コーティングはそれに応じて所望の形状に適合されなければならない。したがって、統一された外観が達成され得るかどうかは、主に、歯科修復物を製造する人の経験、器用さ、及び色知覚に依存する。ここで、本発明によるプロセスは、コーティングの塗布及びその処理を含むすべての工程が機械化されたプロセスによって行われるので、最適化を提供することができる。したがって、成形品が歯科修復物である実施形態が好ましい。前記歯科修復物は例えば、インレー(inlay)、アンレー(onlay)、ブリッジ(bridge)、クラウン(crown)又はインプラント(implant)であってもよい。
【0026】
特に歯科修復物の製造において、本発明によるプロセスの利点が明らかにされる。したがって、本発明によるプロセスは、光学特性だけでなく、機能性及び機械的特性に関しても、自然に近い人間の歯に見えるようにすることを可能にする。
【0027】
しかしながら、本発明によるプロセスは、歯科修復物の製造に限定されない。むしろ、他の技術分野、例えば、プラント及び機械工学及び金型建設、電気工学、生産技術、整形外科/医療技術、又は自動車建設の分野における成形品の生産にも使用することができる。
【0028】
以下に、個々のプロセスステップをより詳細に説明する。
【0029】
[プロセスステップa]
本発明によるプロセスのステップa)は、ブランク(blank)の提供を含む。ブランクは、材料の点でも形状の点でも限定されない。好ましくは、ブランクが金属材料、ポリマーベースの材料、及びセラミック材料、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の材料を含む。ブランクの材料及び組成は、それぞれの用途に応じて選択することができる。
【0030】
本発明による方法は、歯科修復物(dental restoration)の製造に特に適している。したがって、歯科修復物の製造に使用される材料が好ましい。したがって、好ましい実施形態では、ブランクは複合材料(composite material)を含む。本発明の意味における「複合体(composite)」とは、一緒に結合された2つ以上の材料によって構成される複合材料を意味する。
【0031】
特に好ましい実施形態では、複合材料が無機パッキング(inorganic packing)と混合された有機プラスチックマトリックス(organic plastic matrix)からなる。前記パッキングは例えば、ガラス及びガラスセラミック、ケイ酸塩及び二酸化ケイ素を含むことができる。
【0032】
代替的に好ましい実施形態では、ブランクがセラミック、特にガラスセラミック又はジルコニアセラミックである。特に好ましい実施形態では、ブランクはハイブリッドセラミック(hybrid ceramic)である。本発明の意味における「ハイブリッドセラミック」はセラミック、例えば、ポリマーベースの充填剤と混合されたガラスセラミック又はジルコニアセラミックを意味する。
【0033】
成形品の適用分野に応じて、ブランクが金属材料を含むことが有利であり得る。したがって、ブランクが合金である実施形態が好ましい。
【0034】
[プロセスステップb]
本発明によるプロセスのステップb)によれば、提供されたブランクは、サブトラクティブ法を用いて機械加工(machine-processed)され、フレームワーク構造(framework structure)が得られる。サブトラクティブ法は、好ましくはミリング(milling)、研削(grinding)、レーザーアブレーション(laser ablation)、及びウォータージェット切断(water jet cutting)からなる群から選択される。好ましくは、サブトラクティブ法はCAD/CAM法である。このようにして、高い寸法精度(dimensional accuracy)が達成されることが確保される。したがって、例えば、フレームワーク構造を記述するコンピュータベースのデータセットを生成することができる。次いで、このデータセットは、ブランクの機械加工の基礎として使用することができる。
【0035】
好ましい実施形態では、本発明によるプロセスのステップb)で得られるフレームワーク構造は、解剖学的(anatomically)に縮小された単一クラウン構造(single crown construction)、又は解剖学的に縮小された複数ユニットブリッジ構造(multiple-unit bridge construction)である。外側輪郭(outside contour)の解剖学的縮小(anatomic reduction)は、好ましくは天然歯の内部象牙質形態(interior dentin form)の模倣を表す。
【0036】
[プロセスステップc]
ステップb)で得られたフレームワーク構造のさらなる加工は、本発明によるプロセスのステップc)の下に記載されるように、コーティングを機械塗布(machine-applying)して未加工成形品(raw molded product)を得ることによって行われる。
【0037】
フレーム構造体へのコーティングの塗布は、任意の機械技術を使用することによって行うことができる。好ましい実施形態では、コーティングの塗布がアディティブ法によって行われる。したがって、特に好ましい実施形態では、コーティングの塗布が例えば、押出(extrusion)、噴霧(spraying)、蒸着(vapor deposition)、堆積(deposition)、浸透(infiltration)、又は浸漬コーティング(immersion coating)によって行うことができる。最適な結果を得るために、いくつかの技術を組み合わせることもできる。さらに、コーティングの塗布は可能な限り正確で損失のない塗布を確実にするために、CAD/CAM法を使用してコンピュータ支持体(computer support)を用いて行うこともできる。
【0038】
本発明の一実施形態では、コーティングの塗布がテープを使用することによっては行われない。
【0039】
塗料は、成形品の用途やフレームワーク構造の材料との適合性を考慮して任意に選択することができる。好ましい実施形態では、コーティングが金属材料、ポリマーベースの材料、及びセラミック材料、並びにそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の材料を含む。
【0040】
本発明によるプロセスは、特に歯科修復物の製造に適しているので、特に光学的及び機械的特性の観点から、この技術分野の要件に適合するコーティング材料が好ましい。さらに、材料は健康面において安全でなければならない。したがって、コーティング材料は、複合材料、ガラスセラミック、ジルコニアセラミック、又は合金であることが好ましい。このような材料タイプの組み合わせも使用することができる。
【0041】
特に好ましい実施形態では、コーティング材料がポリマーベースの材料である。適当な材料は例えば、メタクリル酸のグループからのポリマーベースのプラスチック(例えば、PMMA、bis-GMA、UDMA、TEGDMA)又は上記のグループからのプラスチック材料を含む複合体、並びに追加的に無機充填剤(例えば、ガラス、セラミック、ガラスセラミック)を含む。コーティングは、好ましくは重合体部分(polymer fraction)の部分的に重合された又は重合されていない状態で行われる。
【0042】
特に好ましい実施形態では、コーティング材料は無機材料である。特に好ましい材料には、長石(feldspar)、ケイ酸リチウム、又は白榴石(leucite)をベースとするケイ酸塩ガラス又はガラスセラミックが含まれる。この場合、コーティングは、好ましくは分散状態で行われる。
【0043】
コーティング材料は、後続の成形品の物理的特性を決定するために使用されてもよい。物理的性質は、光学的性質と、剛性、密度、強度又は硬度などの機械的性質との両方を含むことができる。特に、本発明による方法は、ここでも、異なる層が異なる特性を有する成形品の製造を可能にする。
【0044】
したがって、例えば、成形品の特定の外観は、コーティング材料を特定の添加剤と混合することによって決定することができる。したがって、コーティング材料がさらなる添加剤を含む実施形態が好ましい。添加剤は、例えば、着色酸化物、顔料又は有機着色剤などの着色物質であってもよい。例えば、適切な物質を添加することによって、成形品の強度又は透光性を決定することができる。例示的な物質は特に、着色剤及びガラス着色酸化物を含むことができ、添加される物質の選択は、これらに限定されず、成形品に要求されるそれぞれの個別の要求に従って選択することができる。
【0045】
ブランク及びコーティングの材料は、後続の成形品から要求される要件に応じて選択されるので、ブランク及びコーティングの材料の組合せも、そのような要件に従って選択することができる。好ましい実施形態では、ブランク及びコーティングが同じ材料であってもよい。別の好ましい実施形態では、ブランクとコーティングは異なる材料であってもよい。
【0046】
本発明による方法は、特に異なる材料を組み合わせるのに適している。好ましくは、材料及びコーティング材料が互いに異なり、可能な組み合わせの限定はない。
【0047】
好ましい実施形態では、ブランクの材料がイットリウム安定化ジルコニアであり、これに長石又は白榴石をベースとするガラスセラミックがコーティングとして塗布される。
【0048】
代替的に好ましい実施形態では、長石又は白榴石をベースとするガラスセラミックがブランク材料として歯科用合金へのコーティングとして適用される。
【0049】
本発明の意味の範囲内の「歯科用合金(dental alloy)」は、歯冠(crown)、ブリッジ(bridge)、ピボット歯(pivot teeth)、インプラント(implant)及びプロテーゼ(prostheses)の形態での歯の保存及び歯の置換のための歯及び口腔組織と適合する、耐腐食性(corrosion-resistant)、非変色性(non-discoloring)、耐摩耗性合金(abrasion-resistant alloy)の総称である。このような合金は、貴金属又はベース金属に基づくものであってもよい。適切な材料及び材料の組み合わせは、当業者に公知である。
【0050】
あるいは、ブランク材料としてイットリウム安定化ジルコニア、及びコーティングのためのポリマーベースの複合材料を使用することがさらに好ましい。
【0051】
あるいは、ブランク材料としての歯科用合金が好ましくはポリマーベースの複合材料でコーティングされる。
【0052】
あるいは、好ましい実施形態ではポリアリールエーテルケトン(PAEK)(例えば、PEKK、PEEK)の群からの高性能ポリマーを、ブランク材料として、及びコーティングのためのポリマーベースの複合材料として使用することができる。
【0053】
同様に好ましい実施形態では、ハイブリッドセラミックがブランク材料として使用され、ポリマーベースの複合材料がコーティングのために使用される。
【0054】
さらに好ましいのは、ポリマーベースの複合材料がブランク材料として使用され、ポリマーベースの複合材料がコーティングのために使用される実施形態である。
【0055】
本発明の好ましい実施形態において、コーティングのための材料は、基本的にシリコーンポリマーを含有しない。特に、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、特に0.5重量%未満、又は0重量%の割合のシリコーンポリマーがコーティング中に存在する。
【0056】
本発明による方法の好ましい実施形態によれば、2つ以上のコーティングをフレームワーク構造に適用することができる。好ましい実施形態では第1のコーティング及びさらなるコーティングの材料は同じ材料であるが、別の好ましい実施形態では異なる材料が使用される。例えば、成形品の特定の色勾配又は特定の半透明性を実現するために、異なる色を有する異なるコーティングを適用することができる。しかし、機械的強度、必要な材料特性又は機械加工性の観点から、異なる層特性を有する2つ以上のコーティングをフレームワーク構造に適用してもよい。
【0057】
好ましい実施形態では、コーティングの塗布は、レーザを使用せずに表面上でコーティングが溶融することで行われる。このようにして、好ましくない材料及びフレームワーク構造への熱負荷を回避することができる。
【0058】
[プロセスステップd]
コーティングは、塗布後に硬化される。コーティングの材料及び達成されるべき硬度によって、適切な方法が決定する。異なるコーティングに異なる材料が使用される場合、1つのプロセス実行中で異なる方法を適用又は組み合わせることができる。
【0059】
好ましい実施形態では、コーティングの硬化は、重合、焼結、乾燥、冷却、加圧又は照射によって行われる。また、異なる硬化方法を組み合わせてもよい。
【0060】
[プロセスステップe]
本発明によるプロセスのさらなるステップにおいて、塗布されたコーティングは、硬化後にサブトラクティブ法によって機械加工されて、所望の成形品が得られる。このステップでは、例えば、形状補正を実行するか、表面を最適化するか、又は過剰なコーティング材料を除去することができる。好ましい実施形態では、プロセスステップd)~e)に記載されているように、1つ以上のさらなるコーティングを既存のコーティングに対して機械塗布することができる。さらなるコーティング又はコーティング(further coatings or coatings)は、既成のコーティング又はコーティング(previous coatings or coatings)に適用されたマシンであり、その後硬化される。硬化後、塗布されたコーティングは例えば、特定の表面構造を達成するために、又は過剰なコーティング材料を除去するために、サブトラクティブ法によって機械加工される。さらに、この工程は、例えば研磨による光学的改善を行うために使用することができる。
【0061】
異なる材料の組み合わせに応じて、安全な材料複合体を調製するために、さらなる表面処理工程が必要であり得る。これらの表面処理工程は例えば、ブラスト手段(blasting means)(コランダム(corundum)、ガラスビーズ(glass beads)、ガラス被覆コランダム(glass-coated corundum))によるブラスト、又は酸(例えば、フッ化水素酸、リン酸)によるエッチングであり得る。あるいは、表面処理がそれぞれフリーラジカル重合性基(例えば、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロイルオキシデシルジヒドロゲンホスフェート、ビニルベンジルプロピルアミノ-トリアジン-ジチオン)を有するシラン、ホスフェートエステル、ホスホン酸及び/又は硫黄化合物の群からの1つ以上の化合物型を含み得る接着促進剤の適用を含むことが好ましい。
【0062】
さらに好ましくは、表面処理が溶媒(例えば、メチルメタクリレート)を用いて表面層を部分的に溶解することによって、又はダイヤモンドチップ研削手段を用いて研削することによって、実施されてもよい。
【0063】
[追加のプロセスステップ]
本発明によるプロセスは、成形品が用いられる適用分野に応じて、又は使用される材料の機能として、さらなるプロセスステップを含んでもよい。したがって、サブトラクティブ法によるブランクの機械加工後に得られるフレームワーク構造の熱処理を行うことが有利であり得る。したがって、本発明によるプロセスのステップb)に続いてフレームワーク構造の熱処理を行う実施形態が好ましい。このような熱処理は特に、ブランクがサブトラクティブ処理中に、まだその意図された用途に対応する材料特性を有する状態にない材料で作られている場合に有利である。熱処理は、好ましくは乾燥、脱結合、焼結、結晶化、重合、又はこれらのプロセスの1つ以上の組み合わせの目的を追求し得る。このようなプロセスの典型的な温度は文献から当業者に知られており、熱処理の目的及び影響を受けた材料の目的に応じて選択することができる。したがって、脱バインダーが行われる温度は例えば、通常、500℃から700℃の範囲であり、一方、ジルコニアの焼結は1000℃から1300℃で行われ、長石セラミックの焼結は500℃から900℃で行われる。
【0064】
本発明によるプロセスは特に、それらの適用分野のそれぞれの要件に個別に適合された成形品の製造に適している。したがって、本発明はさらに、本発明によるプロセスによって得られる成形品に関する。より好ましくは、成形品は歯科修復物である。
【0065】
本発明はさらに、本発明によるプロセスにおける、セラミック材料、ポリマーベースの材料、金属材料、及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の材料を含むブランクの使用に関する。
【0066】
本発明はさらに、本発明によるプロセスにおける、セラミック材料、ポリマーベースの材料、金属材料、及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の材料を含むコーティングの使用に関する。
【0067】
本発明はさらに、本発明によるプロセスを実施するための装置に関し、前記装置は、サブトラクティブ法を実施するための手段と、アディティブ法を実施するための手段とを含む。
【0068】
サブトラクティブ法を実施するための前記手段は好ましくは当業者に知られており、多種多様な用途のために既に入手可能である5軸研削ユニットからなる。必要とされる精度を達成するために、アディティブ法を実施するための前記手段は、サブトラクティブ法ユニットと同じ自由度で作動され、5つの軸を使用することによって材料を塗布する。
【0069】
好ましい実施形態では、装置が1つ又は複数の材料容器又はカートリッジと、容器又はカートリッジを収容するためのホルダとを有する。特に好ましい実施形態では、装置は少なくとも2つのカートリッジを有する。カートリッジは、本発明による成形品が形成される材料を受け入れるのに役立つ。したがって、前記少なくとも2つのカートリッジが異なる材料を含む実施形態が好ましい。これらの異なる材料は例えば、異なる色を有してもよく、又は異なる材料特性を有する材料であってもよい。代替的に好ましい実施形態では、前記少なくとも2つのカートリッジが同じ材料を含む。
【0070】
本発明による装置は、好ましくはカートリッジを取り付け、位置決めするための手段を有する。この手段は、好ましくはリニアモータ及び/又は回転モータによって駆動される。そのような設計は、カートリッジの正確かつ正確な位置決めを可能にする。
【0071】
カートリッジを取り付け、位置決めするための前記手段は、好ましくはカートリッジ交換器である。好ましくは、そのようなカートリッジ交換器及び/又はカートリッジがカートリッジに含まれる材料の早期硬化を回避するために、耐光性及び/又は気密シールを有する。
【0072】
特に好ましい実施形態では、カートリッジ交換器が材料塗布に使用されているカートリッジがモータ制御によってその塗布位置にもたらされるような設計を有する。好ましくは、このモータ制御駆動装置はまた、必要な量の材料を測定し、適用するために使用される。