IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジェライオン・テクノロジーズ・プロプライエタリー・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-電池管理 図1
  • 特許-電池管理 図2A
  • 特許-電池管理 図2B
  • 特許-電池管理 図2C
  • 特許-電池管理 図3
  • 特許-電池管理 図4
  • 特許-電池管理 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】電池管理
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/04 20060101AFI20230825BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20230825BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230825BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230825BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
H02J7/04 F
H02J7/10 B
H02J7/00 Y
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020530556
(86)(22)【出願日】2018-12-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 GB2018053550
(87)【国際公開番号】W WO2019111008
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】1720359.7
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】523202163
【氏名又は名称】ジェライオン・テクノロジーズ・プロプライエタリー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Gelion Technologies Pty Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ヘイル
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-538608(JP,A)
【文献】特開平09-007641(JP,A)
【文献】国際公開第2017/103617(WO,A1)
【文献】特開2008-252960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/42 - 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのリチウム硫黄電池セルを備える電池のための電池管理システムであって、前記電池管理システムは、
パルス充電電流を前記電池セルに供給することによって前記電池のリチウム硫黄電池セルを充電し、パルス充電電流のデューティサイクルを変化させて、前記電池セルの充電中にパルス充電電流のデューティサイクルを減少させるように動作可能な充電モジュールを備え、
前記充電モジュールは、前記電池セルに亘る平均電圧が閾値電圧を超えないように、パルス充電電流のデューティサイクルを変化させるように構成され
前記閾値電圧は、少なくとも1つのリチウム硫黄電池セルにおいてシャトル効果の開始が発生する電圧である、電池管理システム。
【請求項2】
前記充電モジュールは、前記電池セルの充電状態の増加に応じて、パルス充電電流のデューティサイクルを減少させるように構成される、請求項1に記載の電池管理システム。
【請求項3】
前記充電モジュールは、前記電池セルの充電状態が閾値充電状態未満である場合に、実質的に100%のデューティサイクルを有する充電電流で前記電池セルを充電するように構成される、請求項1または2に記載の電池管理システム。
【請求項4】
前記充電モジュールは、前記電池セルの充電状態が閾値充電状態より大きい場合に、100%未満のデューティサイクルを有するパルス充電電流で前記電池セルを充電するように構成される、請求項3に記載の電池管理システム。
【請求項5】
前記充電モジュールは、前記電池セルに亘る平均電圧が実質的に目標電圧に維持されるように、パルス充電電流のデューティサイクルを変化させるように構成される、請求項1ないしのうちいずれか1項に記載の電池管理システム。
【請求項6】
前記目標電圧は、閾値電圧と同じかそれ未満である、請求項に記載の電池管理システム。
【請求項7】
前記充電モジュールは、充電パルス中に供給される充電電流が閾値充電電流を下回らないように、パルス充電電流を前記電池セルに供給するように構成される、請求項1ないしのうちいずれか1項に記載の電池管理システム。
【請求項8】
前記充電モジュールは、前記電池セルの寿命に応じて、パルス充電電流のデューティサイクルを変化させるように構成される、請求項1ないしのうちいずれか1項に記載の電池管理システム。
【請求項9】
充電モジュールは、前記電池セルがその寿命中に閾値数の充電-放電サイクルを受けた後、前記電池セルの充電中にパルス充電電流のデューティサイクルを減少させるように、パルス充電電流を前記電池セルに供給し、パルス充電電流のデューティサイクルを変化させるように構成される、請求項1ないしのうちいずれか1項に記載の電池管理システム。
【請求項10】
少なくとも1つのリチウム硫黄電池セルおよび請求項1ないしのうちいずれか1項に記載の電池管理システムを備える電池。
【請求項11】
少なくとも1つのリチウム硫黄電池セルを備える電池を充電する方法であって、前記方法は、
リチウム硫黄電池セルにパルス充電電流を供給するステップと、
前記電池セルの充電中にパルス充電電流のデューティサイクルを減少させるように、パルス充電電流のデューティサイクルを変化させるステップと、を含み、
前記パルス充電電流のデューティサイクルは、前記電池セルに亘る平均電圧が閾値電圧を超えないように変更され
前記閾値電圧は、少なくとも1つのリチウム硫黄電池セルにおいてシャトル効果の開始が発生する電圧である方法。
【請求項12】
前記パルス充電電流のデューティサイクルは、前記電池セルの充電状態の増加に応じて減少される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、前記電池セルの充電状態が閾値充電状態未満である場合に、実質的に100%のデューティサイクルを有する充電電流で前記電池セルを充電するステップを含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、前記電池セルの充電状態が閾値充電状態よりも大きい場合に、100%未満のデューティサイクルを有するパルス充電電流で前記電池セルを充電するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記パルス充電電流のデューティサイクルは、前記電池セルに亘る平均電圧が実質的に目標電圧に維持されるように変更される、請求項11ないし14のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記目標電圧は、閾値電圧と同じかそれ未満である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記方法は、充電パルス中に供給される充電電流が閾値充電電流を下回らないように、パルス充電電流を前記電池セルに供給するステップを含む、請求項11ないし16のうちいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、少なくとも1つの電池セルを備える電池で使用するための装置および方法に関する。装置および方法は、リチウム硫黄電池セルを備える電池の分野で特定の用途を見出すことができる。
【背景技術】
【0002】
再充電可能な電池は、通常、連続的な充放電サイクルを受けるように設計された複数の再充電可能な電池セルを含む。後の放電および使用のために蓄えられた電気化学エネルギでそれらを充電する目的でのそのような再充電可能な電池の使用は、一連の用途においてますます重要になってきている。このような用途には、例えば、自動車、船舶、その他の車両用途、家庭用および無停電エネルギ供給、および家庭用および系統連系電力ネットワークにおける需要と負荷平準化のための断続的で再生可能な電源から生成されるエネルギの貯蔵が含まれる。
【0003】
典型的な電池セルは、アノード、カソード、およびアノードとカソードとの間に配置された電解質を備える。アノード、カソードおよび電解質は、例えば、ポーチなどのハウジング内に含まれていてもよい。電気接続、例えば、接続タブをハウジングに結合して、電池のアノードおよびカソードとの電気接続を提供することができる。
【0004】
典型的な電池は、1つまたは複数の電池セルを備える。複数の電池セルを備える電池では、例えば、電気接続を電気コネクタに結合することにより、セルを直列および/または並列に結合することができる。電池は、例えば、電池セルの充電および/または放電を制御するための電池管理システムをさらに含み得る。
【0005】
電池を形成する1つまたは複数の電池セルは、適切な充電方式を使用して充電することができる。典型的な充電方式は、定電流および/または定電圧充電を含み得る。定電圧充電では、通常、電池セルに定電圧を印加する。定電流充電は、典型的には、電池セルに流れる充電電流が実質的に一定に留まるように、電池セルに可変電圧を印加することを含む。いくつかのタイプの電池セル(リチウムイオン電池セルなど)は、通常、定電流-定電圧方式を使用して充電できる。このような充電方式では、セルの両端の電圧が最大セル電圧に近い閾値に近づくまで、一定の充電電流が電池セルに供給される。次に、充電電流を徐々に減らして、セル全体の閾値電圧値を維持する(すなわち、定電圧条件)。
【0006】
本明細書で企図される特定のタイプの電池セルは、リチウム硫黄(Li-S)電池セルである。リチウム硫黄は、理論的なエネルギ密度が、例えば、リチウムイオンの5倍である次世代のセル化学であり、様々な用途の電気化学的エネルギの貯蔵庫として機能する。典型的なリチウム硫黄セルは、リチウム金属またはリチウム金属合金から形成されたアノード、および元素硫黄または他の電気活性硫黄材料から形成されたカソードを備える。硫黄または他の電気活性硫黄含有材料は、炭素などの導電性材料と混合して、その導電性を向上させることができる。
【0007】
リチウム硫黄電池セルは、他の多くの電池セル化学(リチウムイオン電池を含む)とは大幅に異なる電圧および性能特性を有している。例えば、充電の上部近くのリチウムイオンセルの充電は、充電の上部近くのセルの内部抵抗の変化に大きく依存する。対照的に、リチウムイオンセルとは異なり、リチウム硫黄セルは、充電開始時にセルの電圧が急激に上昇し、その内部抵抗は、要因ではない。さらに、充電中のリチウム硫黄セルの電圧挙動は、他のセルの電圧挙動と非常に異なる場合がある。したがって、他のタイプの電池(リチウムイオン電池など)に使用される充電方式は、リチウム硫黄電池セルには適さず、損傷する可能性がある。
【発明の概要】
【0008】
いくつかの電池セル(例えば、リチウム硫黄電池セル)では、高充電状態で電池セルを継続的に充電すると、不利な影響が生じたり、電池セルが損傷したりすることがある。例えば、リチウム硫黄電池セルは、いわゆるシャトル効果を示すことが示されている。その間に、電池セルの正極で生成された高次ポリスルフィドは、セルを横切って負極に拡散し、そこで金属リチウムとの反応によって低次ポリスルフィドに還元される。シャトル効果は寄生的な自己放電プロセスであり、リチウム硫黄セルの容量と充電効率を低下させることが示されている。したがって、シャトル効果は、電池セルの有効寿命を縮める可能性がある。
【0009】
リチウム硫黄電池セルの充電中に、電池セルに供給される充電電流が所定の量を下回ると、シャトル効果の実質的な開始が発生する可能性がある。例えば、約0.1C未満の充電率でリチウム硫黄電池セルを充電しているときにシャトル効果が発生することが示されている。さらに、リチウム硫黄電池セルの連続充電中に、セルがその最大充電状態に近づき、セルの両端の電圧が閾値電圧(例えば、約2.35V)に達してそれを超えると、シャトル効果の実質的な開始が発生する可能性がある。
【0010】
シャトル効果の発生を減らすために、リチウム硫黄セルを充電するために使用できる一般的な充電方式は、セルの両端の電圧が閾値電圧に達し、その時点で充電が停止するまで、セルに一定の充電電流を供給することである。一定の充電電流は、シャトル効果の著しい開始を防ぐために十分に高いかもしれない。例えば、一定の充電電流は、約0.1Cより大きくてもよい。セルの充電が停止される閾値電圧は、シャトル効果の発生を低減するために、シャトル効果の著しい開始が起こることが知られている電圧よりも低くなるように選択され得る。例えば、リチウム硫黄電池セルは、電池セルの両端の電圧が約2.35Vの閾値電圧に達するまで一定の充電電流で典型的に充電され得、その時点で電池セルの充電は停止される。
【0011】
上述の充電方式は、シャトル効果の発生を低減しながら、最大充電状態に達する前に充電が停止されるため、電池セルがその最大充電状態に充電されるのを防ぐ。したがって、電池セルの全容量は利用されず、放電に利用可能な容量は電池セルの最大潜在容量よりも小さい。
【0012】
可変デューティサイクルを有するパルス充電電流を供給することにより、シャトル効果の著しい開始を回避しながら、電池セルを増加した充電状態に充電できることが見出された。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、少なくとも1つのリチウム硫黄電池セルを備える電池用の電池管理システムが提供され、電池管理システムは、パルス充電電流を電池セルに供給することによって電池のリチウム硫黄電池セルを充電し、パルス充電電流のデューティサイクルを変化させて、電池セルの充電中に、パルス充電電流のデューティサイクルを減少させるように動作可能な充電モジュールを備える。
【0014】
デューティサイクルが変化するパルス充電電流を電池セルに供給すると、シャトル効果の開始による電池セルの容量低下などの損傷効果を低減しながら、電池セルにさらに電荷を供給することができる。したがって、利用可能な電池セルの最大潜在容量の割合が増加する。
【0015】
一般に、パルス充電電流を供給すると、シャトル効果の開始が(同等の連続充電電流と比較して)減少することが分かっている。特に、パルス充電電流を供給すると、電池セルの両端の電圧が一時的に閾値電圧(例えば、一部のセルでは約2.35Vなどのシャトル効果が発生する可能性のある電圧)を超えて上昇し、さらに充電することができる。一方、セル全体の時間平均電圧(例えば、パルス周期全体または複数のパルス周期で平均化)は、閾値電圧を超えない。時間平均電圧は閾値電圧を超えないので、セルを閾値電圧を超える電圧に連続的に充電する場合と比較すると、シャトル効果の開始を有利に低減することができる。
【0016】
さらに、パルス充電電流を供給することにより、各電流パルス中の充電電流を十分に大きくして、低い充電電流を供給することから生じ得るシャトル効果の著しい開始を低減することができる。例えば、充電電流は、各電流パルスの間、約0.1Cより大きくてもよい。しかしながら、電流はパルス周期全体の一部にのみ提供されるため、時間平均電流は十分に低く、セル全体の時間平均電圧が(前述のように)閾値電圧を超えない場合がある。
【0017】
上記のように、パルス充電電流を提供すると、同じ充電電流を継続的に提供する場合(すなわち、デューティサイクルが100%の場合)と比較して、時間平均電流が減少する。これはまた、互いに直列に接続された複数のセル間の電荷のバランスを有利に促進することが分かっている。いくつかの電池は、互いに直列に接続された複数のセルを含む場合があり、セルのスタックと呼ばれる場合がある。使用中、セルのスタック内の異なるセル間で充電状態の違いが発生する可能性がある(例えば、異なるセルが異なる速度で充電および/または放電するため、および/または異なる容量を有するため)。このような充電状態の差は、いわゆるパッシブバランシングによって軽減される可能性がある。この場合、バイパス抵抗がスタック内の1つまたは複数のセルに接続される。セル全体にバイパス抵抗を接続すると、スタック内の他のセル(バイパス抵抗が接続されていない)に比べて、セルの充電速度が遅くなる。特に、スタック内の他のトレーリングセルよりも充電状態が高い1つまたは複数のリーディングセルに1つまたは複数のバイパス抵抗を接続して、充電プロセス中に、トレーリングセルがリーディングセルに追いつくようにし、スタック内のセル間の充電状態の違いを減らす。
【0018】
上述のようにパッシブバランシングを使用して他のセルと直列に接続されたセルのスタック間の充電状態差の低減は、通常、より低い充電電流でより効果的である。しかしながら、上記で説明したように、典型的な充電状態は、閾値電流(例えば、約0.1C)よりも大きい実質的に一定の充電電流を維持することを含み得る。このような充電状態では、直列に接続されたセル間でパッシブバランシングが行われる非常に短い期間(充電サイクル中)しかなく、一般に、電荷バランス効果の有用な状態を実現するには、大きなバイパス抵抗値が必要である。
【0019】
上記で説明したように、パルス充電電流を提供することにより、特に、セルが充電の上部に近づくにつれて、時間平均充電電流を(連続充電電流を提供することに比べて)減らすことができる。そのような時間平均充電電流の減少した期間は、互いに直列に接続されたセルのスタック間のパッシブバランシングが実行され得る延長された時間ウィンドウを提供する。さらに、そのようなパッシブバランシングで使用されるバイパス抵抗の抵抗値は、(例えば、定電流充電サイクル中に使用される可能性のある値と比較して)減らすことができる。
【0020】
電池セルの充電中にパルス充電電流のデューティサイクルを変化させることにより、充電電流を電池セルの充電状態に適合させることができる。例えば、電池セルの状態(例えば、セルの両端の電圧)は、充電中に変化する可能性があり、異なる充電状態では異なる可能性がある。充電電流のデューティサイクルは、充電中に充電電流を電池セルの状態に適合させるために、それに応じて変化させることができる。特に、電池セルの充電中はデューティサイクルが減少する。
【0021】
充電状態が比較的低い場合、電池セルの両端の電圧は比較的低く、シャトル効果の著しい開始には十分ではない可能性がある。したがって、電池セルは、電池セル全体の時間平均電圧が、シャトル効果の著しい開始が予想される閾値電圧を超えることなく、比較的高いデューティサイクル(例えば、100%または100%に近い)を有する充電電流を提供され得る。しかしながら、充電中に電池セルの充電状態が増加すると、電池セルの両端の電圧も増加し、閾値電圧に近づく可能性がある。したがって、充電電流のデューティサイクルは、電池セルの両端で時間平均電圧が閾値電圧を超えないことを保証しながら、電池セルに充電を提供し続けるために低減される。これにより、シャトル効果の著しい開始をすることなく、電池セルを充電し続けることができる。
【0022】
本発明は、充電の最上部に近い電池セルを充電しながら特定の用途を見出すことができるが、一般に、可変デューティサイクルを有するパルス充電電流は、充電中の任意の時点および任意の充電状態で提供され得る。パルス充電電流は、例えば、保存期間後の最初の電池セルの充電時および/または急速充電状態中に時間平均充電電流を削減するために使用され、そうでなければ電池セルの充電の早期終了につながる可能性のある電圧オーバーシュート効果を回避する。
【0023】
パルス充電電流のデューティサイクルは、電流パルスが発生する時間の割合(または比)を表す。例えば、100%のデューティサイクルは、連続電流に対応する。50%のデューティサイクルは、パルス周期の50%で発生する電流パルスに対応する。すなわち、電流パルス間の時間間隔は、電流パルスの持続時間と同じである。20%のデューティサイクルは、パルス周期の20%発生する電流パルスに対応する。すなわち、電流パルス間の時間間隔は、パルス周期の80%を表す。異なる充電電流パルスの間の充電電流は、実質的に同じであり得る。パルス充電電流の周波数は、実質的に一定のままであり得るか、または変化し得る。
【0024】
少なくともいくつかの実施形態では、パルス充電電流を電池セルに供給することは、充電電流が実質的に供給されず、電池セルから実質的に放電電流が引き出されない期間が散在する充電電流のパルスを供給することを含む。すなわち、パルス充電電流の各期間は、充電電流が電池セルに供給される期間と、実質的に電流が電池セルを通過しない期間とを含み得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、電池は、複数の電池セルを含み得、充電モジュールは、複数の電池セルを充電するように動作可能であり得る。例えば、電池は、互いに直列および/または並列に接続された複数の電池セルを含み得る。充電電流は、複数の電池セルのうちの1つまたは複数に提供され得る。
【0026】
充電モジュールは、電池セルの充電状態の増加に応答して、パルス充電電流のデューティサイクルを低減するように構成されてもよい。
【0027】
上述したように、電池セルの状態(例えば、セルの両端の電圧)は、充電中に変化し、異なる充電状態では異なる場合がある。例えば、比較的低い充電状態では、電池セルの両端の電圧は、比較的低くなり、したがって、セルの両端の電圧は、シャトル効果の著しい開始が発生するのに十分であるとは考えにくい。しかしながら、比較的高い充電状態では、電池セルの両端の電圧は、それを超えるとシャトル効果の著しい開始が発生する閾値電圧(例えば、約2.35V)に近づく可能性がある。したがって、パルス充電電流のデューティサイクルは、電池セルの充電状態の増加に応じて減少し、異なる充電状態での電池セルの異なる状態に適した充電電流を提供することができる。
【0028】
充電モジュールは、電池セルの充電状態が閾値充電状態未満であるときに、実質的に100%のデューティサイクルを有する充電電流で電池セルを充電するように構成されてもよい。
【0029】
充電状態の閾値を下回る充電状態では、電池セルの両端の電圧は、十分に低く、電池セルの両端の時間平均電圧がそれを超えるとシャトル効果の著しい開始が予想される閾値電圧を超えることなく、連続充電電流(すなわち、100%のデューティサイクルを有する電流)を電池セルに提供できる。したがって、電池セルは、シャトル効果の著しい開始なしに、実質的に100%のデューティサイクルで充電され得る。100%のデューティサイクルを使用すると、電池セルを比較的迅速に充電できる(100%未満のデューティサイクルを使用する場合と比較した場合)。
【0030】
充電モジュールは、電池セルの充電状態が閾値充電状態よりも大きい場合に、100%未満のデューティサイクルを有するパルス充電電流で電池セルを充電するように構成されてもよい。
【0031】
充電状態の閾値よりも高い充電状態では、電池セルの両端の電圧は、それを超えるとシャトル効果の著しい開始が発生すると予想される閾値電圧に近づく可能性がある。充電電流のデューティサイクルを低減することにより、セルの時間平均電圧が閾値電圧以下に留まる間、電池セルの充電状態は、増加し続けるかもしれない。したがって、充電電流のデューティサイクルを100%未満に減らすと、電池セルの充電を続けている間のシャトル効果の発生を減らすのに役立つ。したがって、電池セルは、シャトル効果の著しい開始を引き起こすことなく、その最大容量近くまで充電することができる。
【0032】
充電モジュールは、電池セルの両端の平均電圧が閾値電圧を超えないように、パルス充電電流のデューティサイクルを変化させるように構成されてもよい。
【0033】
平均電圧は、所与の期間中の電池セルの両端の平均電圧であり得る。例えば、平均電圧は、パルス充電電流の全期間に亘る時間平均電圧であってもよい。閾値電圧は、リチウム硫黄電池セルにおいてシャトル効果の開始が発生する電圧を超える場合がある。すなわち、閾値電圧は、それ未満ではリチウム硫黄電池でシャトル効果の発生が実質的に発生せず、それを超えるとシャトル効果の開始が発生する閾値を表すことができる。例えば、閾値電圧は、それを超えるとシャトル効果の著しい開始が予想され得る電圧であり得る。例えば、閾値電圧は、約2.35Vであり得る。しかしながら、一般に、閾値電圧は、電池セルの充電中の任意の時点で到達する任意の電圧であり得る。
【0034】
電池セルの両端の平均電圧が閾値電圧を超えないようにパルス充電電流のデューティサイクルを変化させると、シャトル効果の発生が減少し、したがって、シャトル効果によって引き起こされる容量低下が減少する。電池セルの両端の電圧は、充電パルス中のある時点で閾値電圧よりも高くなる場合がある。すなわち、電池セルの両端の電圧は、充電中に一時的に閾値電圧を超える可能性がある。しかしながら、パルス充電電流のデューティサイクルを100%未満に減らすと、電池セルの両端の平均電圧が閾値電圧より低くなることがある。電池セルの両端の時間平均電圧が閾値電圧未満に留まる場合、シャトル効果の著しい開始が回避されることが分かっている。
【0035】
充電モジュールは、電池セルの両端の平均電圧が実質的に目標電圧に維持されるように、パルス充電電流のデューティサイクルを変化させるように構成することができる。
【0036】
平均電圧は、所与の期間中の電池セルの両端の平均電圧であってよい。例えば、平均電圧は、パルス充電電流の全期間に亘る時間平均電圧であってもよい。リチウム硫黄セルの場合、目標電圧は、例えば、約2.35V以下であってよい。電池セル全体の平均電圧を実質的に目標電圧に維持することは、セル全体の平均電圧をシャトル効果の著しい開始が起こり得る電圧まで増加させることなく電池セルに充電を提供する効率的な方法を表すことができる。デューティサイクルは、例えば、充電中に電池セルの充電状態が増加するにつれて徐々に減少するかもしれない。
【0037】
目標電圧は、閾値電圧と同じか、それよりも低くてもよい。
【0038】
充電モジュールは、充電パルス中に供給される充電電流が閾値充電電流を下回らないように、パルス充電電流を電池セルに供給するように構成され得る。
【0039】
上記で説明したように、電池セルが比較的低い充電電流で充電されている場合、シャトル効果の著しい開始が発生する可能性がある。例えば、電池セルが約0.1C未満の速度で充電されると、シャトル効果が発生する可能性がある。したがって、充電パルス中に充電電流を閾値電流より上に維持すると、シャトル効果の発生を低減または防止することができる。
【0040】
上記で説明したように、電池セルの充電中、充電電流のデューティサイクルは100%未満に減少する可能性がある。これにより、パルス期間中の時間平均電流が閾値電流を下回る場合がある。しかしながら、電流パルス中の瞬時充電電流は、まだ閾値電流よりも大きい場合がある。
【0041】
閾値充電電流は、リチウム硫黄電池セル内でシャトル効果の開始が発生する充電電流であり得る。例えば、閾値充電電流は、リチウム硫黄セルでシャトル効果の発生が実質的に起こらない(セルがその充電の上限に近づくまで、例えば、セル電圧が閾値電圧に達する)閾値を表し、それ以下では、シャトル効果の開始が発生する。閾値充電電流は、例えば、約0.1C以下であり得る。
【0042】
充電電流は、本明細書ではCレートに関して与えられている。通常、電池セルでのシャトル効果の開始は、セルの容量に関連してセルが充電されるレートの関数である。Cレートは、電池セルが最大容量と比較して充電されるレートの尺度である。したがって、それは、シャトル効果の開始を考慮するときに関連し、したがって本明細書で使用される、Cレートの観点からの充電電流である。
【0043】
充電モジュールは、電池セルの寿命に応じてパルス充電電流のデューティサイクルを変えるように構成されてもよい。
【0044】
上述したように、リチウム硫黄電池セルにおけるシャトル効果の発生を低減するために、パルス放電サイクルを使用することができる。シャトル効果が発生する程度および/またはシャトル効果の開始が発生する充電中の段階は、少なくともある程度は電池セルの寿命に依存し得る。例えば、セルが劣化すると、セル内のシャトル抑制物質が減少し、シャトル効果がより大きく発生し、および/または充電サイクルでより早く発生する。セルが古くなるにつれてのシャトル効果の開始の変化に適応するために、パルス充電電流のデューティサイクルの変動は、電池セルの古さに応じて制御されてもよい。電池セルの使用年数は、例えば、電池がその寿命の間に受けた充放電サイクルの数に対応し得る。
【0045】
いくつかの例では、パルス充電電流のデューティサイクルは、セルが古くなるにつれて充電サイクルの早い段階で減少する可能性がある。例えば、充電モジュールがデューティサイクルを(例えば、所与のデューティサイクルに)減少させる充電状態は、より少ない数の充電-放電サイクルを受けたセル(すなわち、より新しいまたは劣化の少ないセル)よりも、その寿命中により多くの充電-放電サイクルを受けたセル(すなわち、より古いまたは古くなったセル)の方がより少ないかもしれない。
【0046】
充電モジュールは、パルス充電電流を電池セルに供給し、パルス充電電流のデューティサイクルを変化させて、電池セルがその寿命の間に閾値数の充電-放電サイクルを受けた後、電池セルの充電中に、パルス充電電流のデューティサイクルを減少させるように構成することができる。
【0047】
充電モジュールは、セルのサイクル寿命の終わりに向かって、上述のようにパルス充電電流を電池セルに供給するように構成されてもよい(例えば、電池セル充電中のパルス充電電流のデューティサイクルを減少させるために、パルス充電電流のデューティサイクルが変更される間)。例えば、セルがその寿命において閾値量の充電-放電サイクルを受けた後、セルは、パルス充電電流のデューティサイクルが変化するパルス充電状態を使用して続いて充電されてもよい。上で説明したように、シャトル効果の発生を減らすために、可変デューティサイクル充電電流を使用でき、より古いまたはより古くなったセル(例えば、その寿命中に多数の充電-放電サイクルを経験した)は、より若いまたは劣化の少ないセル(例えば、その寿命中により少ない充電-放電サイクルを経験した)よりもシャトル効果の影響を受けやすくなる。したがって、パルス充電電流を供給し、パルス充電電流のデューティサイクルを低減することは、セルが古くなるにつれて、より適切になる可能性がある。
【0048】
いくつかの例では、(上記のような)パルス充電電流は、セルが所定の寿命に達した後にのみ、セルに適用され得る。例えば、セルがその寿命中に受けた充電サイクルの数が閾値に達した場合、セルは、上述のようにパルス充電電流を使用して充電することができる。セルが所定の寿命に達する前に(例えば、その寿命中にセルが受けた充電サイクルの数が閾値の数より少ない場合)、セルは、通常どおり充電され、デューティサイクルが可変のパルス充電電流を供給する必要はない。
【0049】
本発明の第2の態様によれば、少なくとも1つのリチウム硫黄電池セルと、第1の態様に係る電池管理システムとを備える電池が提供される。
【0050】
本発明の第3の態様によれば、少なくとも1つのリチウム硫黄電池セルを備える電池を充電する方法が提供される。この方法は、リチウム硫黄電池セルにパルス充電電流を供給するステップと、電池セルの充電中にパルス充電電流のデューティサイクルを減少させるように、パルス充電電流のデューティサイクルを変化させるステップと、を含む。
【0051】
電池セルの充電状態の増加に応答して、パルス充電電流のデューティサイクルを減少させることができる。
【0052】
この方法は、電池セルの充電状態が閾値充電状態未満である場合に、実質的に100%のデューティサイクルを有する充電電流で電池セルを充電することを含み得る。
【0053】
この方法は、電池セルの充電状態が閾値充電状態よりも大きい場合に、100%未満のデューティサイクルを有するパルス充電電流で電池セルを充電することを含み得る。
【0054】
パルス充電電流のデューティサイクルは、電池セルの両端の平均電圧が閾値電圧を超えないように変化させることができる。
【0055】
パルス充電電流のデューティサイクルは、電池セルの両端の平均電圧が実質的に目標電圧に維持されるように変化させることができる。
【0056】
目標電圧は、閾値電圧と同じか、それよりも低くてもよい。
【0057】
この方法は、充電パルス中に供給される充電電流が閾値充電電流を下回らないように、パルス充電電流を電池セルに供給することを含むことができる。
【0058】
本出願の範囲内で、前の段落、請求の範囲および/または以下の説明および図面に記載された様々な態様、実施形態、例および代替案、特に、その個々の特徴は、単独で、または任意の組み合わせで取られることを明確に意図している。すなわち、全ての実施形態および/または任意の実施形態の特徴は、そのような特徴に互換性がない限り、任意の方法および/または組み合わせで組み合わせることができる。出願人は、本来そのように主張されていないが、最初に提出された請求の範囲を他の請求の範囲の特徴に従属したりおよび/またはその特徴を組み込むために補正したりする権利を含む、最初に提出された請求の範囲を変更したり、またはそれに応じて新しい請求の範囲を提出する権利を留保する。
【0059】
本発明の1つまたは複数の実施形態は、添付の図面に、例としてのみ、概略的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本発明の一実施形態に係る電池の概略図である。
図2A】異なるデューティサイクルを有するパルス充電電流の概略図である。
図2B】異なるデューティサイクルを有するパルス充電電流の概略図である。
図2C】異なるデューティサイクルを有するパルス充電電流の概略図である。
図3】定電流およびパルス電流での充電中のセルの電圧の概略図である。
図4】本発明のさらなる実施形態に係る電池の概略図である。
図5】本発明のさらに他の実施形態に係る電池の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明の特定の例を説明する前に、本開示は、本明細書で説明する特定の電池管理システム、電池、または方法に限定されないことを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の例を説明するためにのみ使用され、請求の範囲を限定することを意図しないことも理解されるべきである。
【0062】
本発明の電池管理システム、電池および方法を説明および主張する際に、以下の用語が使用される:単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に他に指示しない限り、複数形を含む。したがって、例えば、「電池セル」への言及は、そのような要素の1つまたは複数への言及を含む。
【0063】
図1は、本発明の実施形態に係る電池100の概略図である。電池100は、電池セル101および電池管理システム103を備える。電池管理システム103は、充電モジュール102およびセル監視モジュール104を含む。図1に示される電池100は、1つの電池セル101を備えるが、他の実施形態では、電池100は、複数の電池セルを備えてもよい。例えば、電池100は、互いに直列および/または並列に接続された複数の電池セルを含み得る。本発明の実施形態に係る電池を形成する1つまたは複数の電池セル101は、再充電可能な電池セルであり、例えば、リチウム硫黄電池セルを含み得る。
【0064】
充電モジュール102は、電池セル101の充電を制御するように構成される。充電モジュール102は、例えば、外部電源(例えば、幹線電源)に接続可能であり得、外部電源から電池セル101への充電の流れを制御するように構成され得る。充電モジュール102は、電池セル101に供給される電力を調整するように構成された回路または他の装置を含み得る。例えば、充電モジュール102は、電池セル101の両端に保持される電圧および/または電池セル101に流れる充電電流を制御することができる。充電モジュール102は、AC電源をDC電力に変換して電池セル101に供給するのに適した装置を含むことができる。
【0065】
充電モジュール102は、電池セル101の充電を制御するためのコントローラ(例えば、プロセッサを含み得る)を含み得る。例えば、コントローラは、充電モジュール102の1つまたは複数の他の構成要素を制御して、電池セル101の両端に保持される電圧および/または電池セル101に流れる充電電流を制御することができる。いくつかの実施形態では、コントローラは、少なくとも部分的にアナログ電子機器の形で実現されてもよい。例えば、コントローラは、電池セル101の充電を制御するように構成された電子回路を備えることができる。
【0066】
セル監視モジュール104は、電池セル101の1つまたは複数のプロパティを監視するように構成される。一般に、セル監視モジュール104は、少なくとも1つの電池セル101に関連する1つまたは複数のプロパティを測定するように構成でき、測定された1つまたは複数のプロパティに基づいて少なくとも1つの電池セル101の1つまたは複数のプロパティを決定するように構成できる。図1に示される実施形態では、セル監視モジュール104は、電池セル101の両端に接続され、例えば、電池セル101の両端の電圧を測定するように構成されてもよい。セル監視モジュール104は、セル101の両端の測定された電圧に基づいて、電池セルの充電状態などの電池セル101のプロパティを決定するように構成され得る。
【0067】
追加的にまたは代替的に、セル監視モジュール104は、電池セル101を流れる電流を監視するように構成されてもよい。例えば、セル監視モジュール104は、電池セル101と直列に接続され、装置を流れる電流を測定するように構成された装置(図示せず)を含み得る。
【0068】
セル監視モジュール104は、入力105を充電モジュール102に提供するように構成される。入力105は、セル監視モジュール104によって決定された、セル101の1つまたは複数のプロパティを示す。例えば、入力105は、電池セル101の両端間の電圧および/または電池セル101の充電状態を示し得る。追加的または代替的に、入力105は、電池セル101を通って流れる電流を示し得る。
【0069】
充電モジュール102は、セル監視モジュール104から受信した入力105に少なくとも部分的に基づいて、電池セル101の充電を制御するように構成され得る。例えば、充電モジュール102は、電池セル101の両端の電圧、電池セルの充電状態、および/または電池セル101を流れる電流の決定の少なくとも1つに基づいて、電池セル101の充電を制御することができる。
【0070】
上記で説明したように、電池セル101は、リチウム硫黄電池セルを含むことができる。通常、リチウム硫黄電池セル101は、電池セル101の両端に保持される電圧が充電中に変化する定電流充電方式を使用して充電され、実質的に一定の充電電流が電池セル101に供給される。
【0071】
リチウム硫黄電池セルは、いくつかの条件下で、シャトル効果として知られている効果を経験することが知られている。典型的なリチウム硫黄電池では、正極は、例えば、金属箔に担持された元素硫黄と炭素の混合物を含む。負極は、リチウム金属の箔である。放電中、負極のリチウムは、リチウムイオンとして溶解し、正極の高次ポリスルフィドは、硫化リチウムが生成されるまで、次のステップで低次ポリスルフィドに還元される。セルの充電中、リチウム金属で作られた負極でリチウムイオンが還元され、正極で硫化物が再酸化されて高次のポリスルフィドになる。
【0072】
正極で生成された高次のポリスルフィド(S 2’’、S 2’’、およびS 2’’を含む場合がある)は、電解液に溶け、セルを横切って負極に拡散し、そこで金属リチウムとの反応により低次のポリスルフィドに還元される。セルの充電状態に応じて、セル内の異なるポリスルフィド種の濃度は変化する。ポリスルフィドは、リチウム電極で還元され、次に拡散して正極に戻り、充電中に再び再酸化される。正と負の電極間でのポリスルフィドのこの往復は、「ポリスルフィドシャトル」と広く呼ばれている寄生自己放電プロセスである。自己放電に加えて、ポリスルフィドシャトルは、サイクル寿命を短くし、充電効率を低下させ、リチウム硫黄セルの出力を低下させる。この現象は、シャトル効果と呼ばれることがある。
【0073】
セルがその最大充電状態に近づくと、リチウム硫黄電池セルの連続充電中に、シャトル効果の著しい開始が発生する可能性があることが示されている。例えば、電圧が約2.35Vになる可能性のある閾値電圧に到達して超えると、連続充電中にシャトル効果の著しい開始が発生する可能性がある。
【0074】
シャトル効果の著しい開始を回避または低減するために、リチウム硫黄電池セルの典型的な定電流充電方式は、電池セルの両端の電圧が閾値電圧に達したときに終了する。例えば、電池セルの両端の電圧が約2.35Vに達すると、充電が停止することがある。このようなアプローチでは、シャトル効果の発生を減らすことができるが、セルが閾値電圧に達すると、電池セルの充電の終了は、セルがその最大充電状態に達するのを妨げる。したがって、セルの最大容量の所定の割合は使用されない。
【0075】
リチウムイオン電池セルなどの他のセルの化学物質は、定電流-定電圧充電方式を使用して充電できる。定電流-定電圧充電方式は、定電流充電段階とそれに続く定電圧充電段階で構成される。定電流段階は、上記の定電流充電方式に類似しており、実質的に一定の充電電流をセルに供給するために、電池セルの両端の電圧が変化する。セルが閾値電圧に達すると、充電は、定電圧段階に切り替わり、その間、充電電流は、徐々に減少して、セルの電圧を最大充電電圧に維持する。定電圧充電段階では、セルが最大充電状態に近づくと、充電が継続してセルに供給され、充電中にセルに供給される電荷が増加する(定電流充電段階を使用する場合と比較した場合)。その結果、利用されるセルの最大容量の割合は、定電圧充電段階を使用することによって増加する。
【0076】
しかしながら、典型的な定電圧充電段階は、リチウム硫黄セルに有害な影響をもたらす可能性があり、したがって、リチウム硫黄セルを充電する場合には通常使用されない。電池セルに供給される充電電流が閾値充電電流を下回ると、リチウム硫黄セルでシャトル効果の実質的な開始が発生する可能性があることが示されている。例えば、約0.1C未満の充電電流をリチウム硫黄セルに供給すると、シャトル効果の著しい開始が発生する可能性がある。したがって、定電圧充電段階に関連する充電電流の減少は、リチウム硫黄セルの充電に使用されたときにシャトル効果の開始につながる可能性があり、通常は回避される。
【0077】
本発明の実施形態によれば、充電モジュール102は、パルス充電電流を電池セル101に供給することによって電池セル101を充電し、電池セル101の充電中にパルス充電電流のデューティサイクルを変化させるように動作可能である。
【0078】
図2A図2Cは、異なるデューティサイクルを有するパルス充電電流の概略図である。図2A図2Cに示されるそれぞれの表現において、充電電流Iは、縦軸に示され、時間tは、横軸に示される。図2A図2Cのそれぞれにおいて、パルス充電電流の4つの期間Tが示されている。各期間Tは、電流のパルスおよびパルス間の期間を含み、充電電流は、実質的に流れない。典型的には、充電電流のパルス間の期間では、実質的に電流が電池セルを通過しない。すなわち、充電電流のパルス間の期間中、電池セルに実質的に電荷が提供されない、または電池セルから引き出されない。
【0079】
図2Aに示される表現では、各電流パルスは、パルス電流の合計時間期間Tの約4分の3(75%)持続する。すなわち、各電流パルスは、連続するパルス間の時間間隔の長さの3倍持続する(それぞれが1/4T持続する)。パルス充電電流のデューティサイクルは、電流パルスが発生する時間の割合(または比率)を表す。すなわち、デューティサイクルは、電流パルスによって占有されている期間Tの割合(または比率)である。図2Aに示される例では、デューティサイクルは、75%、または同等に4分の3である。
【0080】
図2Bに示される表現では、各電流パルスは、パルス電流の全期間Tの約半分(50%)持続する。すなわち、各電流パルスは、連続するパルス間の時間間隔の長さの同じ期間(それぞれが1/2T持続する)持続する。したがって、図2Bに示されるパルス電流のデューティサイクルは、50%または同等に半分である。
【0081】
図2Cに示される表現では、各電流パルスは、パルス電流の合計時間Tの約4分の1(25%)持続する。すなわち、各電流パルスは、連続するパルス間の時間間隔の長さの3分の1持続する(それぞれが3/4T持続する)。したがって、図2Cに示されるパルス電流のデューティサイクルは、25%または同等に1/4である。
【0082】
異なるデューティサイクルを有する異なるパルス電流の3つの例が図2A図2Cに示されているが、これらは単に例示的な例として提示されており、パルス充電電流の異なる形態が使用され得る。一般に、充電電流は、0%~100%の間のいずれかのデューティサイクル(すなわち、定電流)を有して供給され得る。
【0083】
充電モジュール102は、電池セル101にパルス充電電流を供給し、電池セル101の充電中にパルス充電電流のデューティサイクルを変化させるように動作可能である。デューティサイクルは、例えば、電池セル101の電圧または充電状態に応じて変化し得る。特に、デューティサイクルは、充電中にデューティサイクルが減少するように変化し得る。
【0084】
パルス充電電流を使用することにより、電池セルが閾値電圧または充電が通常終了する充電状態に達した後も、電池セル101が充電され続けることができる。例えば、上記のように、リチウム硫黄電池セルの充電は、セルの電圧が閾値電圧(例えば、約2.35V)に達すると通常停止され、それを超えると連続充電によりシャトル効果が著しく開始される場合がある。しかしながら、パルス充電電流の使用により、閾値電圧(例えば、約2.35V)に達した後でも、電池セル101が充電され続けることができる。
【0085】
上記で説明したように、閾値電圧を超えて連続的に充電すると、シャトル効果の著しい開始が発生する可能性がある。しかしながら、セルの電圧は、シャトル効果の著しい開始を促進することなく、一時的に閾値電圧を超えて上昇し得ることが見出された。特に、セルの時間平均電圧が閾値電圧を超えない場合、シャトル効果の開始を少なくとも低減することができ、実質的に回避することができると考えられている。
【0086】
上記でさらに説明したように、比較的低い充電電流を電池セルに供給すると、シャトル効果が開始される場合がある。これにより、充電の最上部付近で比較的小さな充電電流の使用を禁止または防止できる。パルス充電電流を供給することにより、各電流パルス中の充電電流は、シャトル効果の著しい開始をもたらさないほど十分に大きくなり得る。しかしながら、パルス充電電流の全時間期間T中の時間平均充電電流は(充電電流を連続的に供給することと比較して)減少する。したがって、例えば、電池セルがその充電の最上部に近づくと、シャトル効果の著しい開始を誘発するのに十分なほど瞬間的な充電電流が低くなることなく、時間平均充電電流を低減することができる。
【0087】
充電モジュール102は、充電パルス中に供給される充電電流が閾値充電電流を下回らないように、パルス充電電流を電池セル101に供給するように構成されてもよい。しかしながら、パルス充電電流のデューティサイクルは、時間平均充電電流が閾値電流未満に減少され得るように減少され得る。閾値電流は、シャトル効果の著しい開始が予想される可能性がある、それ未満の充電電流を表す場合がある。閾値充電電流は、例えば、約0.1Cであり得る。
【0088】
充電電流は、本明細書ではCレートに関して与えられ、これは、電池セルがその最大容量と比較して充電されるレートの尺度を表す。通常、電池セルでのシャトル効果の開始は、セルの容量に関連してセルが充電されるレートの関数である。したがって、Cレートの観点からの充電電流は、シャトル効果の開始を考慮した場合に関連する量であり、したがって本明細書で使用される。異なる容量を有する電池セルを考慮する場合、所与のCレートは、アンペアの異なる充電電流に対応することが理解されよう。
【0089】
上記で説明した理由により、パルス充電電流を電池セル101に供給することにより、シャトル効果の開始による電池セルの容量劣化などの損傷効果を低減しながら、さらなる充電を電池セル101に供給することができる。したがって、利用可能な電池セル101の最大潜在容量の割合が増加する。
【0090】
電池セル101の充電中にパルス充電電流のデューティサイクルを変化させることにより、電池セル101の充電の異なる段階の間および電池の充電状態が変化するときに充電電流を適合させることができる。例えば、電池セル101の状態(例えば、セルの両端の電圧)は、充電中に変化する可能性があり、異なる充電状態では異なる可能性がある。充電電流のデューティサイクルは、充電中に充電電流を電池セル101の状態に適合させるために、それに応じて変化させることができる。特に、充電中に充電電流のデューティサイクルが減少する可能性がある。
【0091】
充電モジュール102は、電池セル101の充電状態の変化に応答して電池セル101に提供されるパルス充電電流のデューティサイクルを変化させるように構成されてもよい。電池セル101の充電状態は、例えば、セル監視モジュール104によって決定され得、電池セル101の充電状態を示し得る入力105を介して充電モジュール102に通信され得る。電池セル101の充電状態は、例えば、電池セル101の両端で測定された電圧に応じて決定され得る。いくつかの実施形態では、電池セル101の充電状態は、充電中の異なる時間にセルの1つまたは複数のプロパティ(例えば、セル電圧)を測定し、異なる時間に行われた複数の測定を使用して充電状態を決定することにより決定され得る。
【0092】
比較的低い充電状態では、電池セル101の電圧も通常は、比較的低い。したがって、シャトル効果の著しい開始が起こるのに電圧が十分であるとは考えられない。しかしながら、電池セル101の充電状態がセルの最大充電状態に向かって増加するにつれて、セルの電圧も増加する傾向がある。セル101がその最大充電状態に近づくと、セルの電圧は、シャトル効果の著しい開始が起こり得る閾値電圧(例えば、約2.35V)に近づく。電池セル101に提供される充電電流のデューティサイクルは、セル101の充電状態および電圧に適切なデューティサイクルを提供するように、充電サイクル中の異なる段階で変化し得る。
【0093】
充電電流のデューティサイクルは、電池セル101の充電状態が増加するにつれて減少するかもしれない。上記で説明したように、セル101の電圧は、比較的低い充電状態では比較的低くなり得る。したがって、セル101を充電するために使用されるデューティサイクルは、セルの電圧が、シャトル効果の著しい開始が発生する閾値電圧を超えて増加することなく、比較的高くなり得る。例えば、100%またはそれに近いデューティサイクルは、比較的低い充電状態で使用されてもよい。すなわち、充電モジュール102は、電池セル101の充電状態が閾値充電状態未満である場合、実質的に100%のデューティサイクルを有する充電電流で電池セル101を充電することができる。
【0094】
100%のデューティサイクルを有する充電電流は連続電流であり、例えば、実質的に一定の電流として提供され得る。すなわち、セル101の充電状態が閾値充電状態に達するまで、定電流充電方式を使用することができる。一般に、連続的または一定の充電電流は、電池セル101が比較的迅速に充電されることを可能にする(100%未満のデューティサイクルを使用する場合と比較した場合)。
【0095】
閾値充電状態未満である充電状態では、100%の充電電流が、セルの電圧が、シャトル効果の著しい開始が発生すると予想される閾値電圧を超えることなく、電池セル101に供給され得る。しかしながら、電池セル101の充電状態が閾値充電状態に到達し、それを超えると、セルをさらに充電すると、セル101の瞬時電圧が閾値電圧を超える可能性がある。したがって、充電状態が閾値充電状態に達すると、充電電流のデューティサイクルが100%未満に減少することがある。すなわち、セルの充電状態が閾値充電状態を超えると、(100%未満のデューティサイクルを有する)パルス充電電流が電池セル101に提供され得る。これにより、セルの時間平均電圧を閾値電圧以下に維持しながら、電池セル101の充電を続けることができる。したがって、セル101の継続的な充電中に、シャトル効果の発生を低減または排除することができる。
【0096】
充電状態が閾値充電状態よりも大きい場合に、100%未満のデューティサイクルを有するパルス充電電流を電池セル101に提供することにより、セルの充電を継続することができ(連続充電電流を使用する場合にそうでなければ停止する可能性がある場合)、シャトル効果の著しい開始を引き起こさない。したがって、セルの充電状態は、(定電流充電段階のみを含む)典型的な充電方式の使用と比較してさらに増加する可能性があり、利用可能な電池セルの最大潜在容量の比率が増加する。
【0097】
いくつかの実施形態では、充電モジュール102は、セル101の時間平均電圧が閾値電圧を超えないように、パルス充電電流のデューティサイクルを変化させるように構成されてもよい。セルの電圧は、セルの電圧が一時的に閾値電圧を超えるように、充電パルス中にあるとき、閾値電圧よりも高くなる場合がある。しかしながら、パルス充電電流のデューティサイクルを低減することにより、各パルス期間T中のセルの時間平均電圧は、閾値電圧よりも低いか、または実質的に等しくなり得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、充電モジュール102は、電池セルの時間平均電圧が充電サイクルの少なくとも一部の間に実質的に目標電圧に維持されるように、パルス充電電流のデューティサイクルを変えるように構成され得る。例えば、セル101の充電状態が閾値充電状態を超え、セル101の連続充電がパルス充電電流で置き換えられると、セル101の時間平均電圧を実質的に目標電圧に維持するようにデューティサイクルを変化させ得る。
【0099】
リチウム硫黄電池セル101の場合、目標電圧は、いくつかの実施形態では、約2.35V以下であり得る。いくつかの実施形態では、目標電圧は、閾値電圧(約2.35Vであり得る)とほぼ同じであり得る。一般に、目標電圧は、閾値電圧と実質的に同じか、それよりも小さくてよい。
【0100】
図3は、セルを充電の上限近くまで充電する際の、時間の関数としての電池セルの電圧の概略図である。すなわち、図3に示されているセルは、最大充電状態に近い充電状態を有している。図3の黒い実線は、約0.2Cの充電率で定電流充電を受けている間のセルの電圧を表す。図3の灰色の実線は、可変デューティサイクルを有するパルス充電電流を受けている間のセルの電圧を表す。パルス充電電流の充電パルスは、約0.2Cの充電率を有している。しかしながら、パルス充電電流は、100%未満のデューティサイクルを有するため、セルの時間平均電圧は、シャトル効果の著しい開始が発生する可能性がある閾値電圧以下に留まる可能性がある。
【0101】
図3から分かるように、電池セルの連続充電中(図3の黒い線で表される)は、充電が停止するまでセルの電圧が単調に増加する。充電が停止すると、電圧は、充電中に到達した電圧よりも低い充電終了電圧に落ち着く。図3に示される連続充電は、セルの閾値電圧に達した後に電池セルの連続充電が実行される状況を表している。したがって、図3に示される連続充電は、シャトル効果の著しい開始をもたらす可能性があり、その結果、セルの容量および/または充電効率の低下を引き起こす可能性がある。
【0102】
図3から分かるように、パルス充電電流のデューティサイクル(図3の灰色の線で表されている)は充電中に変化する。特に、充電中、およびセルの電圧と充電状態が増加すると、デューティサイクルが減少する。パルス充電電流のデューティサイクルを減少させることにより、電流パルス中のピーク電圧が充電中に増加しても、セルの時間平均電圧を実質的に目標電圧に維持することができる。したがって、セル101におけるシャトル効果の著しい開始なしに、電池セルのさらなる充電を実行することができる。
【0103】
図3に示される定電流充電とパルス電流充電を比較すると、両方の方式を使用して、電池セルは、ほぼ同じ充電状態まで充電される。しかしながら、図3に示される定電流充電を実行した結果、シャトル効果の著しい開始を発生する可能性がある。図3に示されるパルス電流充電方式では、電池セルをほぼ同じ充電状態に充電しながら、シャトル効果の開始が(定電流充電と比較して)減少する。
【0104】
パルス電流充電は、充電電流のデューティサイクルをさらに減少させることにより、電池セル101の充電状態をさらに増加させるために、図3に示される点を超えて継続され得る。
【0105】
図1に示される実施形態では、電池100は、単一の電池セル101を含む。しかしながら、他の実施形態では、電池100は、複数の電池セルを含み得る。
【0106】
図4は、本発明の一実施形態に係る、複数の電池セル201a~201cを含む電池200の概略図である。電池200は、電池管理システム203および複数の電池セル201a~201cを備える。図4に示される実施形態では、セル201a~201cは、互いに直列に接続される。電池管理システム203は、充電モジュール202およびセル監視モジュール204a~204cを備える。
【0107】
各セル監視モジュール204a~204cは、それぞれの電池セル201a~201cに関連付けられている。セル監視モジュール204a~204cは、図1を参照して上述したセル監視モジュール104と同等であり得る。すなわち、セル監視モジュール204a~204cは、電池セル204a~204cの1つまたは複数のプロパティを監視するように構成され得る。例えば、セル監視モジュール204a~204cは、セル204a~204cの電圧、セル204a~204cの充電状態、および/またはセル204a~204cを流れる電流を測定および/または決定するように構成されてもよい。セル監視モジュール204a~204cは、それぞれの入力205a~205cを充電モジュール202に提供する。
【0108】
充電モジュール202は、セル監視モジュール204a~204cから受信した入力205a~205cに応じて、セル201a~201cの充電を制御することができる。セル201a~201cの充電は、図1に示される実施形態に関して上記で説明された充電と同等であり得、図4に関連して詳細に説明されない。一般に、充電モジュール202は、セル201a~201cにパルス充電電流を供給することによってセル201a~201cを充電するように構成される。充電モジュール202は、セル201a~201cの充電中にパルス充電電流のデューティサイクルを変化させるようにさらに構成される。例えば、図1に示される実施形態を参照して上記で説明したように、パルス充電電流のデューティサイクルは、シャトル効果の著しい開始を引き起こすことなくセル201a~201cのさらなる充電を可能にするように、充電中に低減され得る。
【0109】
図5は、本発明のさらなる実施形態に係る電池300の概略図である。図5に示される電池300は、いくつかの追加の構成要素の追加を除いて、図4に示される電池200と同じである。図5に示される実施形態における同様の構成要素は、図4に示される実施形態の同等の構成要素に対して同様の参照番号を有し、図5を参照してこれ以上詳細には説明されない。
【0110】
図5に示されている電池300は、セル201a~201cの両端にそれぞれ接続された抵抗器R~Rをさらに含む。抵抗器R~Rは、スイッチS~Sを介して接続される。スイッチS~Sは、セル201a~201cに亘って抵抗器R~Rを接続および切断するように開閉されるように動作可能である。
【0111】
抵抗器R~Rは、バイパス抵抗器と呼ばれることがある。1つまたは複数のバイパス抵抗器R~Rを介して充電モジュール202によって提供される充電電流の一部をバイパスするために、1つまたは複数のバイパス抵抗器R~Rを1つまたは複数のセル201a~201cに亘って選択的に接続することができる。したがって、セル201a~201cに提供される充電電流を低減するために、バイパス抵抗器R~Rをセル201a~201cに亘って接続することができる。
【0112】
バイパス抵抗器は、セル201a~201cの充電状態をバランスさせるために、選択的に接続および切断され得る。使用中に、充電状態の差がセル201a~201c間で発生する可能性がある。例えば、セル201a~201cは、使用中にわずかに異なる速度で充電および/または放電することができ、および/またはセル201a~201c間の充電状態の差の発生につながるわずかに異なる容量を有することができる。
【0113】
セル201a~201c間の充電状態の差は、利用され得るセルの利用可能な容量を不利に減少させ得る。例えば、最高の充電状態を有するセルがその充電の最高に達したときに、セル201a~201cの充電を停止することができる。しかしながら、残りのセルはまだ完全に充電されていない可能性があるため、これらのセルの充電は、最大容量に達する前に停止される。同様に、最初のセルが完全に放電されると、セルの放電が停止するが、残りのセルにはまだ放電して利用できない容量がある場合がある。
【0114】
したがって、セル201a~201c間の充電状態の差を低減するために、セル201a~201cの充電状態のバランスをとることが望ましい場合がある。セル201a~201cの充電状態は、充電中に、最大の充電状態を有するセル(先行セルと呼ばれる場合がある)に亘ってバイパス抵抗器R~Rを接続することによってバランスをとることができる。バイパス抵抗器を接続すると、充電電流の一部が先行セルから離れるように迂回し、先行セルの充電速度が低下する。他のセルは先行セルよりも速い速度で充電されるため、セル間の充電状態の差を減らすことができる。
【0115】
セル監視モジュール204a~204cによって行われるように、セルの充電状態の決定に応じて、1つまたは複数のバイパス抵抗器R~Rをセル201a~201cの1つまたは複数に亘って接続することができる。例えば、充電モジュール202は、セル監視モジュール204a~204cから受信した入力205a~205cに応じてスイッチS~Sを制御することができる。
【0116】
セル205a~205cの抵抗特性により、接続されたバイパス抵抗器R~Rを介してバイパスされる充電電流の割合は、通常、充電電流が小さいほど大きくなる。したがって、セル205a~205cに供給される充電電流が比較的低い場合、バイパス抵抗器を接続することにより、充電状態の差をより効果的に低減することができる。
【0117】
例えば、リチウム硫黄セルを充電するために使用され得る典型的な定電流充電方式の間、充電電流は、比較的高い電流に維持される。したがって、バイパス抵抗器を使用したセルバランシングが効果的であるような充電サイクルの期間は、非常に限られている。したがって、この短期間でセル間の効果的なバランスを実現するには、比較的大きなバイパス抵抗値が必要になる場合がある。
【0118】
上述したように、可変デューティサイクルのパルス充電電流を供給することは、効果的なセルバランシングが実行され得る充電サイクル中の期間を有利に増加させる。上記で説明したように、セルの充電状態が増加すると、充電電流のデューティサイクルが減少し、それによって時間平均充電電流が減少する。時間平均充電電流のそのような減少は、バイパス抵抗器R~Rを介して迂回されることができる充電電流の割合を増加させ、それによって、セルバランシングが実行され得る効率を改善する。これは、有利なことに、依然として効果的なセルバランシングを実現しながら、より小さな抵抗を有するバイパス抵抗器R~Rを使用することを可能にし得る。
【0119】
図4および図5に示される実施形態は、互いに直列に接続された3つのセルを含むが、他の実施形態は、異なる数のセルを含み得ることが理解されよう。例えば、いくつかの実施形態は、他と並列に接続される少なくともいくつかのセルを含み得る。一般に、本発明の実施形態に係る電池は、任意の数のセルを含み得る。電池が複数のセルを含む実施形態では、セルは、互いに直列に、それぞれに並列に配置されてもよく、またはセル間の直列および並列接続の組み合わせを含んでもよい。
【0120】
パルス充電電流が電池セルに提供され、パルス充電電流のデューティサイクルが変化して電池セルの充電中のパルス充電電流のデューティサイクルを減少させる実施形態が上に説明された。これは、充電の最上位近くの電池セルの充電中に時間平均充電電流を削減するという文脈で説明されてきた。特に、電池セルの時間平均電圧が閾値電圧を超えないように、充電中にパルス充電電流のデューティサイクルが低減される実施形態が説明されており、閾値電圧は、それを超えるとシャトル効果の開始が予測される可能性がある電圧である。
【0121】
いくつかの実施形態では、充電中に低減されるデューティサイクルを有するパルス充電電流は、電池セルの充電中に他のポイントで提供されてもよい。例えば、可変デューティサイクルを有するパルス充電電流は、電池セルの充電の開始時に提供されてもよい。いくつかの状況では、例えば、保管期間の後にセルを最初に充電するとき、セルの電圧は、セルの初期充電中に比較的急速に増加する可能性がある。これは、セルの電圧オーバーシュートと呼ばれることがある。セルの高速充電中に、電圧オーバーシュートが追加または代替として発生する場合がある。
【0122】
電圧オーバーシュートにより、セルの充電が早期に終了する場合がある。例えば、上述したように、セルの電圧が所定の電圧に到達するかまたはそれを超えると、セルの充電が停止することがある。所定の電圧は、セルの充電状態がセルの最大充電状態より大幅に低い場合でも、電圧オーバーシュートが原因である可能性がある。したがって、電池セルの充電は、電池セルが完全に充電される前に終了される場合がある。
【0123】
いくつかの実施形態では、電池セルの両端の平均電圧が閾値電圧を超えないように変化するデューティサイクルを有するパルス充電電流を提供することにより、電圧オーバーシュートを低減または軽減することができる。したがって、セルの電圧が閾値電圧を超えないようにするために、時間平均充電電流が(パルス充電電流のデューティサイクルを減らすことによって)減少する。
【0124】
一般に、任意の閾値電圧を使用することができ、充電中に減少する可変デューティサイクルを有するパルス充電電流を、セルの任意の充電状態で、およびセルの充電中の任意の時間にセルに提供することができる。
【0125】
本発明の特定の態様、実施形態または例に関連して説明された特徴、整数、特性、化合物、化学部分または基は、本明細書に記載された他の任意の態様、実施形態または例に適合しない限り適用可能であると理解されるべきである。本明細書に開示されているすべての特徴(添付の請求の範囲、要約および図面を含む)、および/またはそのように開示されている方法またはプロセスのすべてのステップは、そのような特徴の少なくとも一部の組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができるおよび/またはステップは相互に排他的である。本発明は、前述の実施形態の詳細に限定されない。本発明は、本明細書(添付の請求の範囲、要約および図面を含む)に開示された特徴のあらゆる新規なもの、またはあらゆる新規な組み合わせ、または開示されたあらゆる方法またはプロセスのステップのあらゆる新規なもの、またはあらゆる新規な組み合わせに及ぶ。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5