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特許7337081レストレスレッグズ症候群を治療するための治療薬
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】レストレスレッグズ症候群を治療するための治療薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/198 20060101AFI20230825BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
A61K31/198
A61P25/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020543526
(86)(22)【出願日】2019-02-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 IB2019051214
(87)【国際公開番号】W WO2019159110
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】518370459
【氏名又は名称】イントラバイオ リミティド
【住所又は居所原語表記】Summit House 170 Finchley Road London NW3 6BP United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100111707
【弁理士】
【氏名又は名称】相川 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】ファクター, マロリー
(72)【発明者】
【氏名】ストラップ, ミカエル
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/229738(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/029658(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/129527(WO,A1)
【文献】特表2009-534312(JP,A)
【文献】J Neurol,2013年,260,pp. 2556-2561
【文献】Cerebellum,2012年,11:1051-1056
【文献】Cerebellum & Ataxias,Vol. 3, No.8,pp. 1-4,2016年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 25/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要性のある対象者において、レストレスレッグズ症候群(RLS)を又はRLSに関連する1又はそれ以上の症状の治療における使用のためのロイシン、アセチルロイシン、又はそれらの薬学的に許容される塩を含む医薬組成物
【請求項2】
RLSがプライマリRLSであることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項3】
RLSがセカンダリRLSであることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項4】
その医薬組成物が、治療有効量のロイシン、アセチルロイシン、又はそれらの薬学的に許容される塩を対象者に投与するものであることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項5】
投与が経時的に行われ、対象者の国際レストレスレッグズ症候群研究グループ評価尺度(IRLS)が、ベースラインと比較して投与後少なくとも10%低下することを特徴とする、請求項4に記載の医薬組成物
【請求項6】
対象者の国際レストレスレッグズ症候群研究グループ評価尺度(IRLS)が、ベースラインと比較して投与後少なくとも50%低下することを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物
【請求項7】
ロイシンがDL-ロイシンであるか、又は、アセチルロイシンが、アセチル-DL-ロイシンであることを特徴とする、請求項1-6のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項8】
ロイシン又はアセチルロイシンが、L-エナンチオマー又はD-エナンチオマーの何れかのエナンチオマー過剰を有することを特徴とする、請求項1-6のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項9】
アセチルロイシンが、1日あたり1gから15gの治療有効量で必要性のある対象者に投与されることを特徴とする、請求項1-8のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項10】
必要性のある対象者においてレストレスレッグズ症候群(RLS)の1又はそれ以上の症状を減衰させ、抑制し、又は除去するときの使用のための医薬組成物であって、その使用は、対象者に治療有効量のロイシン、アセチルロイシン、又はそれらの薬学的に許容される塩を投与することを含む医薬組成物
【請求項11】
1又はそれ以上の症状は、下肢感覚、睡眠時周期性四肢運動、不快な脚の感覚、動きたい衝動、落ち着きのなさ、日中の過度の眠気、及び睡眠障害から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の医薬組成物
【請求項12】
ロイシンがDL-ロイシンであるか、又は、アセチルロイシンが、アセチル-DL-ロイシンであることを特徴とする、請求項10又は11に記載の医薬組成物
【請求項13】
ロイシン又はアセチルロイシンが、L-エナンチオマー又はD-エナンチオマーの何れかのエナンチオマー過剰を有することを特徴とする、請求項10又は11に記載の医薬組成物
【請求項14】
治療有効量は、1日あたり1gから15gであることを特徴とする、請求項10-13のいずれか1項に記載の医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2018年2月15日に出願された米国仮出願第62/631,383号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ウィリス・エクボーン病(Willis-Ekborn disease)としても知られるレストレスレッグズ(むずむず脚)症候群(RLS)は、女性及び高齢者において有病率がより高いが、成人の約10%に影響を与えると報告されている神経障害である。RLSは、典型的に、不快又は奇妙な感覚を伴い、体を動かしたいという圧倒的な衝動を特徴する。最も一般的には、特に膝と足首の間の脚に影響するが、腕、胴体、又は幻肢のような他の領域にも影響を与え得る。RLS感覚は、筋肉の痛みや疼痛から、「掻くことができないかゆみ」、不快な「止まらないくすぐり」、更には「はい回る」感覚まで至る。感覚は、リラックスしたり、読書したり、勉強したり、又は眠ろうとしたりするときのような、静かな覚醒状態の間に始まり、又は強まることがある。例えば、座ったり横になったりすること(例えば、読書、飛行機に乗ること、テレビを見ること)は、感覚を引き起こし、脚を動かしたくてたまらなくなる衝動を引き起こすことがあり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
RLSの診断基準には、1)感覚の有無にかかわらず手足を動かしたいという衝動;2)安静時の悪化;3)活動による改善;4)夕方又は夜間の悪化 の存在が含まれるかもしれない。RLSの症状は、睡眠を非常に困難にすることがあり得るが、重大な日中の困難性はまた、うつや不安だけでなく、日中の過度の眠気のような結果にもなるかもしれない。RLSの一般的な症状(RLSに限定されない)は、睡眠時周期性四肢運動(periodic leg movements of sleep)(PLMS)として知られており、これは最も一般的には下肢で発生し、睡眠障害に関連している。動きは、多くの場合、約20~40秒毎に起こり、通常、短期筋攣縮、けいれん運動、又は足の上向きの屈曲に及ぶ。動きはしばしば、数分から数時間まで続く症状の発現の連続となる。
【0004】
RLSに関連する不快な又は嫌な感覚は、脚の連続的で速い上下運動、及び/又は、脚を互いに近づけたり遠ざけたりして素早く動くような動きによって一時的にしばしば緩和される。その感覚、及び動く必要性は、動きを止めた直後又は後において、戻ってくるかもしれない。
【0005】
RLSは小児期を含むあらゆる年齢で発症するかもしれず、ほとんどの人にとって進行性疾患である。プライマリRLSは、特発性又は病因が不明であると見なされる。プライマリRLSは進行性であり得、年齢とともに悪化し得る。RLSの家族歴は共通し、遺伝的又は遺伝的関連を示唆している。子供のRLSはしばしば成長痛と誤診される。セカンダリRLSは通常、基礎疾患又は特定の薬物の使用に関連している。セカンダリRLSはしばしば人生の後半に始まり、より急速な進行と関連し得るが、基礎疾患が治療されると解決するかもしれない。研究では、RLSの病態生理がドーパミン作動系及び鉄代謝の異常に関連しているかもしれないとの仮説が立てられている。
【0006】
RLSの重症度はさまざまであり、いくつかのスケールの1つ以上を使用して測定され得る。国際レストレスレッグズ症候群研究グループ評価尺度(International Restless Leg Syndrome Study Group Rating Scale)(「IRLS」)として知られる、広く報告されている評価尺度は、国際レストレスレッグズ症候群研究グループ(International Restless Legs Syndrome Study Group)(「IRLSSG」)(http://www.irlssg.org/)によって、開発された(Waltersら、レストレスレッグズ症候群に対する国際レストレスレッグズ症候群研究グループ評価尺度の検証(International Restless Legs Syndrome Study Group rating scale for restless legs syndrome) Sleep medicine。 2003 Apr 01;4(2):121-32)。IRLSは、スコアが0(症状なし)から40までの10項目のスケールである。30を超えるスコアは、非常に重度、重度(スコア21~30)、中程度(スコア11~20)、及び10以下、軽度と見なされる。この尺度の使用は、RLSを使用した臨床評価、研究、及び治験に対して、一般的である。
【0007】
軽度のRLSは、わずかな不快感をもたらす結果となるかもしれないが、重度のRLSは、生活の質に壊滅的な衝撃を与え得る。それは仕事や社会活動を妨害し得るし、機能及び感情的な幸福を低下させ得る。RLSによって誘発される睡眠障害は、日中の機能低下、不安神経症、及びうつ病につながるかもしれない。睡眠障害による追加の長期合併症は、心血管有害事象を含み得る。睡眠不足(断眠)及び日中の倦怠感は、RLS患者が治療を求める共通の理由である。RLS治療の主な目標は、症状を管理し、患者の機能、日中の倦怠感、生活の質を改善することである。
【0008】
RLSの治療は、多くの場合、レボドパ、又はプラミペキソール及びロピニロールのようなドーパミン作動薬で行われる。ただし、これらの薬は通常、望ましくない副作用を伴う。ドーパミン作動薬の長期使用に伴う1つの重大な治療合併症は、症状増強(augmentation)として知られる症状の薬物誘発性悪化である。症状増強(augmentation)は、より早く発症し、より短い潜伏期を伴うより激しい症状を特徴とし、それは他の体の部分(通常は腕だけでなく、体幹と顔)にも広がるかもしれない。衝動制御障害は、これらの薬を長期間使用しているRLS患者のかなりの割合でも報告されてきた。
【0009】
従って、既存の薬物療法に関連する望ましくない副作用なしに、RLS及びその症状のより効果的な治療に対して必要性がある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、この必要性に対処し、RLSを治療するためのロイシン及びアセチルロイシンについて記述する。
【0011】
ラセミ化合物の形態にあるアセチル-ロイシン(アセチル-DL-ロイシン)及びその塩は、種々の原因からのめまい、特にメニエール病のめまい及び炎症性(前庭神経炎)又は毒性原因からのめまいの処置(治療)において使用されてきた。例えば、アセチル-ロイシンは、タンガニル(Tanganil)(登録商標)という商品名下において、めまい防止薬剤としてラセミ化合物の形態においてピエール・ファーブル・メディカメント(Pierre Fabre Medicament)によって市販される。様々な著者によって報告されているタンガニル(Tanganil)(登録商標)の臨床結果は、めまい発作の消失を含む、95%以上の症例において、めまい症状における改善を示している。
【0012】
アセチル-DL-ロイシンは、1957年からフランスにおいて急性めまいを処置(治療)するために使用されてきている。急性片側迷路切除術のラット・モデルにおけるFDG-μPET研究(ズヴェルガルら(Zwergal et al)(2016)Brain Struct Funct; 221(1):159-70)は、後外側の視床の不活性化及び前庭小脳の活性化によって姿勢補償に及ぼす、L-エナンチオマー、N-アセチル-L-ロイシンの有意な効果を示した(ガンターら(Gunther et al)(2015)PLoS One; 10(3):e0120891)。アセチル-DL-ロイシンを用いた小脳性運動失調症の症状の改善は、小脳患者を伴う症例シリーズにおいて示された(Struppら (2013)J Neurol; 260(10):2556-61)。もう1つの症例シリーズは、有益性を見いださなかった(ペルツら(Pelz et al)(2015)J Neurol; 262(5):1373-5)。定量的な歩行解析(gait analysis)は、アセチル-DL-ロイシンが、小脳性運動失調症を有する患者における一時的な歩行変動性を改善することを示した(Schnieppら (2015)Cerebellum; 3:8)。ニーマン-ピック病C型(NPC)を有する患者12人を含む1か月間の研究において、運動失調の症状の改善が示された(Bremovaら (2015)Neurology; 85(16):1368-75)。更に、アセチル-DL-ロイシンを与えられた運動失調症を有する患者におけるPET研究は、応答者における中脳及び下位脳幹における代謝の増加を示した(Becker-Benseら (2015)要約(Abstract) EAN)。
【0013】
しかしながら、アセチル-ロイシンが、RLSを処置(治療)するとは知られていない。ここにおいて記述される実験例によって証明されるように、本開示によれば、ロイシン、アセチルロイシン、又はそれらの薬学的に許容される塩は、例えば、患者のRLSの重症度を顕著に軽減することによって、RLSを治療する方法において、使用され得ることが、見出された。
【0014】
1つの実施例において、本開示は、その必要性のある対象においてRLSに関連する1つ又はそれ以上の症状又はRLSを治療する方法においての使用のため、ロイシン、アセチルロイシン、又はそれらの薬学的に許容される塩を提供する。1つの実施例において、本開示は、その必要性のある対象においてRLSに関連する1つ又はそれ以上の症状又はRLSを治療する方法においての使用のため、ロイシン、アセチルロイシン、又はそれらの薬学的に許容される塩を提供するが、ここで、その方法は、ロイシン、アセチルロイシン、又はそれらの薬学的に許容される塩の治療的に有効な量をその対象に投与することを含む。
【0015】
1つの実施例において、ロイシン、アセチルロイシン又はそれらの薬学的に許容される塩は、それを必要とする対象におけるRLSに関連する1つ又はそれ以上の症状を軽減し、抑制し、又は取り除くための方法における使用のために開示される。
【0016】
1つの実施例において、本開示は、それを必要とする対象におけるRLSに関連する1つ又はそれ以上の症状を軽減し、抑制し、又は取り除くための方法における使用のためのロイシン、アセチルロイシン又はそれらの薬学的に許容される塩を含むが、ここで、その方法は、ロイシン、アセチルロイシン又はそれらの薬学的に許容される塩の治療的に有効な量をその対象に投与することを含む。
【0017】
本開示のもう1つの実施例において、その対象にロイシン、アセチルロイシン又はそれらの薬学的に許容される塩の治療的に有効な量を投与することを含む、それを必要とする対象においてレストレスレッグズ症候群の1つ又はそれ以上の症状を軽減し、抑制し、又は取り除くための方法が開示される。
【0018】
ここにおいて使用される「対象」は、脊椎動物、哺乳動物又は家畜であってもよい。従って、本開示による組成物は、如何なる哺乳動物、例えば、家畜(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ又はブタ)、ペット(例えば、ネコ、イヌ、ウサギ又はモルモット)、実験動物(例えば、マウス又はラット)を処置(治療)するために使用されてもよく、或いは、獣医学の応用において使用されてもよい。1つの実施例において、対象者はヒトである。「対象者」及び「患者」は、相互交換可能に使用される。
【0019】
ここにおいて使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、複数の参照を含む。「おおよそ」及び「約」という用語は、測定の性質又は精度を考慮すると、測定された量に対して許容可能な程度の誤差を含む、参照された数又は値とほぼ同じであることを意味する。
【0020】
ここにおいて使用されるように、「おおよそ」及び「約」という用語は、一般に、特定された量、頻度又は値の±20%を包含すると理解されるべきである。ここにおいて示される数量は、別様に述べられていない限り、概算であり、明示的に述べられていないときは、「約」又は「おおよそ」という用語が推測され得ることを意味する。
【0021】
ここにおいて使用される「投与する」、「投与」、又は「投与すること」という用語は、(1)本開示による組成物を、開業医又は彼の委任代理人によって或いは彼の指導の下で、供給し、与え、投与し、及び/又は処方することを意味し、そして、(2)本開示による組成物を、患者又は自分自身によって摂取、服用又は消費することを意味する。
【0022】
明示的に述べられていなくても、全体を通して「アセチル-ロイシン」への言及は、その薬学的に許容される塩を含む。
【0023】
アセチル-ロイシンはラセミ化合物の形態であってもよいが、このことは、その化合物がほぼ同じ量のエナンチオマーを含むことを意味する。或いは、L-エナンチオマー(光学異性体)又はD-エナンチオマー(光学異性体)の何れかのエナンチオマー過剰で存在していてもよい。ロイシン又はアセチル-ロイシンは、L-エナンチオマー又はD-エナンチオマーのいずれかの単一のエナンチオマーの形態(型)であるかもしれない。実施例において、単一のエナンチオマー形態(型)はL-エナンチオマーである。ラセミ化合物の形態(型)及びエナンチオマーの形態(型)は、本分野で知られている手順に従って得られるかもしれない。
【0024】
ここにおいて言及される「薬学的に許容される塩」は、薬学的応用における使用に適した如何なる塩の調製物である。限定されることなく、薬学的に許容される塩は、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン(N,N’-dibenzylethylenediamine)、クロロプロカイン(chloroprocaine)、コリン(choline)、アンモニア、ジエタノールアミン及び他のヒドロキシアルキルアミン(hydroxyalkylamines)のようなアミン塩、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン(N-methylglucamine)、プロカイン(procaine)、N-ベンジルフェネチルアミン(N-benzylphenethylamine)、1-パラ-クロロ-ベンジル-2-ピロリジン-1’-イルメチルベンズイミダゾール(1-para-chloro-benzyl-2-pyrrolidin-1’-ylmethylbenzimidazole)、ジエチルアミン、及び他のアルキルアミン、ピペラジン(piperazine)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(tris(hydroxymethyl)aminomethane)など;リチウム、カリウム、ナトリウムなどのようなアルカリ金属塩;バリウム、カルシウム、マグネシウムなどのようなアルカリ土類金属塩;亜鉛、アルミニウムなどの遷移金属塩;リン酸水素ナトリウム、リン酸二ナトリウムなどのような他の金属塩;塩酸塩、硫酸塩などのような鉱酸;酢酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、フマル酸塩などのような有機酸の塩 を含む。
【0025】
ロイシン、アセチル-ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、当技術分野で知られる教示に従って製剤化されて対象者に投与されるかもしれない。例えば、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、医薬組成物として製剤化されるかもしれない。その医薬組成物は、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含むかもしれない。医薬組成物への言及は、単独で又は医薬組成物の形態における、活性薬剤(例えば、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はその薬学的に許容される塩)を包含する。
【0026】
医薬組成物は、特に、それが使用されることになっている様式により、多数の異なる形態の如何なるものをも取ってもよい。従って、例えば、それは、粉末、錠剤、カプセル、液体、軟膏、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、エアロゾル、スプレー、ミセル溶液、経皮貼布、リポソーム懸濁液、又は治療の必要性のあるヒト又は動物に投与されるのに妥当な別の形態であるかもしれない。
【0027】
ここにおいて言及する「薬学的に許容される担体」は、医薬組成物を製剤化するのに有用であることが当業者に知られている如何なる既知の化合物又は既知の化合物の組合せである。医薬組成物の担体は、それが与えられる対象者によって十分に耐えられるものであるべきであることは認識されるであろう。
【0028】
1つの実施例において、薬学的に許容される担体は、固体であるかもしれず、そして、その組成物は、粉末又は錠剤の形態であるかもしれない。固体の薬学的に許容される担体は、限定されることなく、香味剤、緩衝剤、潤滑剤、安定剤、可溶化剤、懸濁剤、湿潤剤、乳化剤、染料、増量剤、流動促進剤、圧縮補助剤、不活性結合剤、甘味剤、保存剤、染料、コーティング剤、又は錠剤崩壊剤としても機能するかもしれない1又はそれ以上の物質を含むかもしれない。担体はまた、封入材料でもあるかもしれない。粉末において、担体は、本発明による微粉化された活性薬剤と混合されている微粉化された固体であるかもしれない。錠剤において、活性薬剤は、必要な圧縮特性を有する担体と適切な割合で混合され、そして、所望の形状及び大きさに圧縮されるかもしれない。粉末剤及び錠剤は、例えば、99%までの活性薬剤を含むかもしれない。適切な固体担体は、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、ポリビニルピロリジン、低融点ワックス及びイオン交換樹脂を含む。もう1つの実施例において、薬学的に許容される担体はゲルであってもよく、組成物はクリーム等の形態であってもよい。
【0029】
更なる実施例において、担体は、1つ又はそれ以上の賦形剤又は希釈剤を含むことができるが、これらに限定されない。そのような賦形剤の例は、ゼラチン、アラビアガム、乳糖、微結晶セルロース、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、コロイド状二酸化ケイ素などである。
【0030】
もう1つの実施例において、薬学的に許容される担体は、液体であるかもしれない。1つの実施例において、医薬組成物は、溶液の形態である。液体担体は、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤及び加圧組成物を調製する際に使用される。ロイシン、アセチル-ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、水、有機溶媒、両方の混合物、又は薬学的に許容される油脂のような薬学的に許容される液体担体に溶解又は懸濁されるかもしれない。液体担体は、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、保存剤、甘味剤、香味剤、懸濁剤、増粘剤、着色剤、粘度調整剤、安定剤又は浸透圧調整剤のような他の適切な医薬品添加物を含有するかもしれない。経口及び非経口投与のための液体担体の好適妥当な例は、水(例えば、カルボキシ・メチルセルロース・ナトリウム溶液のようなセルロース誘導体のような上述の添加剤を部分的に含む)、アルコール(例えば、グリコールのような、一価アルコール及び多価アルコールを含む)及びそれらの誘導体、及び油(例えば、分画したヤシ油及びラッカセイ油)を含む。非経口投与の場合、担体はまた、オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルのような油性エステル(oily ester)であってもよい。滅菌液担体は、非経口投与用の滅菌液の形態の組成物において有用である。加圧組成物用の液体担体は、ハロゲン化炭化水素又は他の薬学的に許容される噴射剤であるかもしれない。
【0031】
滅菌溶液又は懸濁液である液体医薬組成物は、例えば、筋肉内、髄腔内、硬膜外、腹腔内、静脈内及び皮下注射によって利用されるかもしれない。活性薬剤は、滅菌水、食塩水、又は他の適切な滅菌注射可能な媒体を使用して、投与時に溶解又は懸濁されるかもしれない滅菌固体組成物として調製されるかもしれない。
【0032】
その組成物は、他の溶質又は懸濁剤(例えば、溶液を等浸透圧にするのに十分な生理食塩水又はグルコース)、胆汁酸塩、アカシア(acacia)、ゼラチン、モノオレイン酸ソルビタン(sorbitan monoleate)、ポリソルベート80(ソルビトールのオレイン酸エステル及びエチレンオキシドで共重合されたその無水物)などを含有する滅菌溶液又は懸濁液の形態で経口投与されるかもしれない。その組成物はまた、液体又は固体組成物の形態のいずれかで経口投与されるかもしれない。経口投与に適した組成物は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、錠剤、及び粉末のような固体形態、及び、液剤、シロップ剤、エリキシル剤、及び懸濁剤のような液体形態を含む。非経口投与に有用な形態は、無菌液剤、乳剤、及び懸濁液剤を含む。
【0033】
組成物は、その代わりに、吸入によって(例えば鼻腔内に)投与されるかもしれない。組成物はまた、局所的使用のために製剤化されるかもしれない。例えば、クリーム又は軟膏は皮膚に適用されるかもしれない。
【0034】
ロイシン、アセチル-ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、徐放出デバイス又は遅延放出デバイス内に組み込まれるかもしれない。このようなデバイスは、例えば、皮膚の上又は下に挿入されるかもしれず、薬剤は、数週間又は数ヶ月に渡って放出されるかもしれない。このようなデバイスは、本開示に従って使用されるロイシン又はアセチル-ロイシンによる長期治療が必要なときに、そして、(例えば、少なくとも連日投与の)頻繁な投与を通常必要とする場合に、有利かもしれない。
【0035】
1つの実施例において、医薬組成物は、錠剤などの固体経口剤形である。錠剤において、活性薬剤は、必要な圧縮特性を有する、薬学的に許容される担体のようなビヒクルと適切な割合で混合され、そして、所望の形状及び大きさに圧縮されるかもしれない。錠剤は、99重量%まで、活性剤を含有してもよい。
【0036】
錠剤のような固体の経口剤形における医薬組成物は、薬学の分野で知られている如何なる方法によって調製されてもよい。医薬組成物は通常、活性剤を従来の医薬的に許容される担体と混合することにより調製される。
【0037】
錠剤は、当技術分野において知られるように製剤化されてもよい。タンガニル(Tanganil)(登録商標)は、例えば、賦形剤として、小麦のデンプン、アルファ化トウモロコシ(トウモロコシ)デンプン、炭酸カルシウム及びステアリン酸マグネシウムを含む。例えば、同じ又は類似の賦形剤は、本開示と共に使用されるかもしれない。
【0038】
各700mgのタンガニル(Tanganil)(登録商標)錠剤の組成は以下の通りである。500mgのアセチル-DL-ロイシン、88mgの小麦デンプン、88mgのアルファ化トウモロコシ(トウモロコシ)デンプン、13mgの炭酸カルシウム、及び11mgのステアリン酸マグネシウム。例えば、同じ錠剤が本開示と共に使用されてもよい。
【0039】
上記で論じたように、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、如何なる数の異なる形態をとる医薬組成物として製剤化され及び投与されてもよい。例えば、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、血液脳関門を通過するそれのデリバリを容易にするための医薬組成物として製剤化されてもよい。更なる例として、ロイシン、アセチル-ロイシン又はその薬学的に許容される塩は、血液脳関門をバイパスするための医薬組成物として製剤化されてもよい。血液脳関門を通過するデリバリを容易にする、又は、血液脳関門をバイパスする態様での投与に適する製剤は、ここにおいて記述されるように、(アセチル化されていない)ロイシンを調製及び投与するために使用されてもよい。
【0040】
1つの実施例において、、医薬組成物(例えば、ロイシン又はその塩を含む)は、例えば、コロイド薬物キャリアーシステム(colloidal drug-carrier systems)のようなナノデリバリ(nanodelivery)のために製剤化される。適切な例は、限られることなく、リポソーム(liposomes)、ナノ粒子(nanoparticles)(例えば、ポリマー、脂質、及び無機ナノ粒子)、ナノゲル(nanogels)、デンドリマー(dendrimers)、ミセル(micelles)、ナノエマルション(nanoemulsions)、ポリマーソーム(polymersomes)、エクソソーム(exosomes)、及び量子ドット(quantum dots)を含む。例えば、Patelら「血液脳関門を交差して:脳への薬物(ドラッグ)デリバリにおける最近の進歩」、CNS Drugs 31:109-133(2017); Kabanovら、「血液脳関門を通過する薬物(ドラッグ)デリバリのための新技術」、Curr Pharm Des., 10(12):1355-1363(2004); Chengら、「インビトロの血液脳関門モデルにおいて及びアルツハイマー病Tg2576マウスにおいてテストされた高度に安定化されたクルクミンナノ粒子(Curcumin Nanoparticles)」、The AAPS Journal, vol. 15、no. 2, pp. 324-336 (2013); Laehdeら「エアロゾル・フロー・リアクター法(Aerosol Flow Reactor Method)を使用した、種々の条件下でのL-ロイシン(L-Leucine)ナノ粒子の生産」Journal of Nanomaterials, vol. 2008, article ID 680897 (2008)を参照。
【0041】
1つの実施例において、医薬組成物(例えば、ロイシン又はその塩を含む)は、注射又は点滴によるように、中枢神経系(central nervous system)(CNS)への直接のデリバリのために製剤化される。CNSへの直接のデリバリのための製剤化及び方法は、本技術分野で知られている。例えば、米国特許第9,283,181号を参照されたい。そのような投与の例は、限られることなく、鼻腔内投与、脳室内投与、くも膜下腔投与、頭蓋内投与、及び、鼻粘膜移植を介するデリバリを含む。
【0042】
1つの実施例において、医薬組成物は、鼻腔内送達(デリバリ)のために製剤化される(及びそれによって投与される)。例えば、Hansonら、「鼻腔内送達(デリバリ)は、治療薬を中枢神経系に向けて狙い神経変性疾患を治療するために、血液脳関門をバイパスする」、BMC Neurosci. 9(Suppl 3):S5 (2008)を参照されたい。1つの実施例において、医薬組成物は、鼻粘膜移植を介したデリバリのために製剤化される(及びそれによって投与される)。1つの実施例において、医薬組成物は、鼻粘膜移植を介したデリバリのために製剤化される(及びそれによって投与される)。1つの実施例において、医薬組成物は、脳室内注射又は点滴のために製剤化される(及びそれによって投与される)。別の実施例において、医薬組成物は、くも膜下腔の大槽内 注射又は点滴のために製剤化される(及びそれによって投与される)。1つの実施例において、医薬組成物は、くも膜下腔の腰部(脊椎)注射(intrathecal lumbar injection)又は点滴のために製剤化される(及びそれによって投与される)。
【0043】
当技術分野で知られている、穿頭孔又は大槽又は腰椎穿刺などを介する注射を、限られることなく含んで、種々な技法が使用されてもよい。内部(例えば、埋め込まれた)又は外部のいずれかを問わず、ポンプ、カテーテル、リザーバー等のような当技術分野で知られているように、送達(デリバリ)のために、種々のデバイスが使用されてもよい。実施例において、投与間隔は2週間毎に1回である。
【0044】
1つの実施例において、投与間隔は2週間毎に1回である。1つの実施例において、投与間隔は月毎に1回である。1つの実施例において、投与間隔は2週間毎に1回である。1つの実施例において、投与間隔は週毎に1回である。つの実施例において、投与間隔は、週毎に2回又は数回である。1つの実施例において、投与間隔は毎日である。1つの実施例において、投与は、持続点滴のように連続的である。
【0045】
1つの実施例において、ロイシン又はその薬学的に許容される塩は、CNSへのそれの直接送達(デリバリ)又は血液脳関門を通過するそれの送達(デリバリ)のいずれかに相当するように調整された、アセチル-ロイシンに対してここにおいて開示されるものと同等の量又は1回の用量で投与されてもよい。
【0046】
同様に、アセチル-ロイシン又はその薬学的に許容される塩は、ここにおいて開示されるような量又は1回の用量で投与されてもよく、その用量は、その投与経路(例えば、CNSへの直接送達(デリバリ))に従って調整されてもよい。
【0047】
本開示は、その必要性のある対象者において、RLSに関連する1つ又はそれ以上の症状又はRLSを処置(治療)するため、組成物及び方法を含んで、ロイシン、セチル-ロイシン、及びその薬学的に許容される塩を記述する。
【0048】
ここにおいて使用される「それを必要とする対象者」は、RLSに関連する1つ又はそれ以上の症状又はRLSを有する任意の対象者であるかもしれず、及び、RLSに関連する1つ又はそれ以上の症状又はRLSを展開するリスクにあると信じられるか或いはそのリスクにある如何なる対象者又は患者をも含むかもしれない。対象者はRLSと診断されていたかもしれず、されていないかもしれない。例えば、対象者は、RLSの診断(臨床的又はその他のもの)をまだ受けていなかったかもしれないが、RLSの1つ又はそれ以上の症状を有するかもしれない。対象者は、RLSが関連しているかもしれない基礎疾患の又はRLSの、遺伝的な生化学的な又は他の同様な識別可能なマーカーを有しているかもしれない。それを必要としている対象者は、RLSを有するか、又は有するリスクがあると疑われるかもしれない。例えば、対象者は、RLSに対する遺伝的素因を有するかもしれない(例えば、対象は、1つ又はそれ以上のRLSを有する家族構成員を有するかもしれない)。
【0049】
薬剤の「治療有効量」は、対象者に投与したときに、所望の効果を生じるのに必要な薬剤の量であり、本開示に対して、治療的及び/又は予防的であり得る。用量は、使用されるロイシン又はアセチル-ロイシンの特定の形態;処置(治療)される患者の年齢、体重及び状態;投与経路;及び、必要な養生法のような様々なパラメータに従って決定されてもよい。医師は、如何なる特定の患者に対して、必要な投与経路及び投与量を決定することができるであろう。例えば、1日の用量は、体重1kgあたり約10から約225mg、体重1kgあたり約10から約150mg、又は体重1kgあたり約10から約100mgであってもよい。
【0050】
ここにおいて使用されるように、「治療」又は「処置」は、その必要性のある対象者の肉体的又は精神的幸福の改善;障害の悪化若しくは低下若しくは衰退の速度における低下;対象者にとってより耐えられる状態、病状、損傷を形成する又は症状の除去、抑制、又は減衰;緩和;又は軽減のような如何なる客観的若しくは主観的パラメータを含む、RLSに関連する1つ又はそれ以上の症状の改善若しくは予防、及び/又は、RLSの状態、病状、若しくは損傷の改善又は予防における成功の如何なる兆候をも意味する。RLSに関連する1つ又はそれ以上の症状又はRLSのための治療は、例えば、身体検査、神経学的検査、及び/又は、精神鑑定の結果を含む、客観的及び/又は主観的パラメータに基づくことができる。
【0051】
ここにおいて使用される「レストレスレッグズ(むずむず脚)症候群」(即ち、「RLS」)は、プライマリRLS及びセカンダリRLSを含む、如何なるフォームのRLSを含む。1つの実施例において、RLSは、プライマリーRLSである。1つの実施例において、RLSは、セカンダリーRLSである。1つの実施例において、RLSは、疾患又は病状に対してセカンダリである。そのような疾患又は病状の例は、鉄欠乏症、腎不全、尿毒症、末梢神経障害、静脈瘤、神経変性疾患、ストレス、睡眠不足、線維筋痛症、甲状腺機能亢進症又は甲状腺機能低下症、妊娠、喫煙、ビタミン欠乏症(例えば、ビタミンB-12欠乏症)、ミネラル欠乏症(例、マグネシウム欠乏症)、アミロイドーシス、ライム病、脊髄神経損傷、関節リウマチ、及びシェーグレン症候群を含む。1つの実施例において、RLSは、薬物又は物質に対してセカンダリである。このような薬物又は物質の例は、アルコール、カフェイン、抗けいれん薬(例えば、フェニトイン)、抗うつ薬(例えば、アミトリプチリン、パロキセチン)、高血圧治療薬(例えば、ベータ遮断薬)、抗精神病薬、及び、薬物療法(例えば、血管拡張薬、鎮静剤、抗うつ剤)の中止を含む。神経変性疾患の例は、パーキンソン病、ハンチントン病、遺伝性痙性麻痺、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、及び大脳皮質基底核変性症を含む。1つの実施例において、神経変性疾患は、運動ニューロン疾患(例えば、進行性球麻痺(PBP)、偽球麻痺、原発性側索硬化症(PLS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、進行性筋萎縮症(PMA)、ハンチントン病、多発性硬化症、パーキンソン病、カナバン病、前頭側頭葉変性症、ナルコレプシー、ペリツェウス・メルツバッハー病、及び脊髄性筋萎縮症)を含む。1つの実施例において、神経変性疾患は、原発性(プライマリ)又は特発性、続発性(セカンダリ)又は後天性、遺伝性パーキンソン症、及びパーキンソンプラス症候群若しくは多系統変性症を含むパーキンソン症である。1つの実施例において、病気又は病状は、ドーパミン作動性細胞損失のようなドーパミン作動系機能障害に関連する。
【0052】
RLSに関連する「症状」は、RLSに関連する如何なる臨床的又は実験室的発現を含む。RLSの症状は、必ずしもそうである必要はないが、しばしば、対象者が感じる又は観察できる疾患に関連する兆候である。RLSに関連する症状は、下肢感覚、睡眠時周期性下肢運動(PLMS)、不快な下肢感覚、動きたい衝動、落ち着きのなさ、睡眠障害、日中の過度の眠気等を、限られることなく含む。
【0053】
1つの実施例において、ロイシン、アセチルロイシン、又はそれらの薬学的に許容される塩は、それを必要とする対象者におけるRLSに関連する1つ又はそれ以上の症状を除去、抑制、又は減衰させるための方法において使用される。この方法は、治療効果のある量のロイシン、アセチル-ロイシン、又はそれらの薬学的に許容される塩を対象者に投与することを含む。1つの実施例において、1つ又はそれ以上の症状は、下肢感覚、睡眠時周期性四肢運動、不快な脚の感覚、動きたい衝動、落ち着きのなさ、日中の過度の眠気、及び睡眠障害の、いずれか1つ又はこれらの組み合わせから選択される。
【0054】
RLSの重症度又はRLSの1つ又はそれ以上の症状は、例えば、既知の尺度、指数、評価、又はスコアを使用して、評価されてもよい。例えば、尺度、指数、評価、スコア、又は他の適切なテストは、RLS全体の重症度又はRLSに関連する1つ又はそれ以上の症状の重症度に対応してもよい。1つの実施例において、ここにおいて記述される処置(治療)は、症状のある(症候性の)対象者の特徴的な値又は度合いから、症状のない(無症候性の)対象者に特徴的な値又は度合いまでのそのような評価を改善する。1つの実施例において、ここにおいて記述される処置(治療)は、ベースラインと比較されるそのような評価を改善する。そのベースラインは、例えば、RLSの治療を開始する前、又はロイシン、アセチル-ロイシン、又はその薬学的に許容される塩を用いたRLSの治療を開始する前の対象者の状態であってもよい。或いは、そのベースラインは、例えば、RLSの治療から一定期間後の対象者の状態であってもよい。
【0055】
1つの実施例において、ここにおいて記述されるようなロイシン、アセチル-ロイシン、又はその薬学的に許容される塩での処置(治療)は、ベースラインと比較して、対象者の国際レストレスレッグ症候群研究グループ評価尺度(「IRLS」)を減少させる。1つの実施例において、IRLSは、ベースラインと比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%だけ低減される。1つの実施例において、IRLSは、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は100%だけ低減させられる。
【0056】
1つの実施例において、アセチル-ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、例えば、1日当たり約1.5gから約10gの範囲のような、1日あたり約500mgから約15gの範囲の又は1日あたり約500mgから約10gの範囲の用量で、投与されるかもしれず、オプションとして、固体経口又は液体経口経路によるかもしれない。アセチル-ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、例えば、1日あたり1.5gから2gの用量で、朝と夕方の2回分の服用で3-4錠で、成人に処方されているタンガニル(Tanganil)(登録商標)の用量に従う投与量で投与されるかもしれない。
【0057】
1つのエナンチオマーが投与されるならば、その用量は、それに応じて減少するかもしれない。例えば、アセチル-L-ロイシン(acetyl-L-leucine)のみを、又はアセチル-D-ロイシン(acetyl-D-leucine)のみを投与するならば、投与量は1日当たり約250mgから約15gの範囲、1日当たり約250mgから約10gの範囲、又は、1日当たり約0.75gから約5gのような1日当たり約250mgから約5gの範囲であるかもしれない。
【0058】
1つの実施例において、投与量は、1日あたり約1gから約15g、1日あたり約1gから約10g、又は1日あたり約1.5gから約7gの範囲である。それは、1日あたり約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14gから約15gであるかもしれない。それは1日当たり約2、3、4、5、6、7、8、又は9gから約10gであるかもしれない。それは1日あたり約1.5gを超えるが、1日あたり約15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、又は5g未満であるかもしれない。1つの実施例において、投与量は1日あたり約4gから約6gの範囲である。1つの実施例において、投与量は1日あたり約4gから約5gの範囲である。1つの実施例において、投与量は1日あたり約4.5gである。1つの実施例において、投与量は1日あたり約5gである。1つの実施例において、これらの用量は、固形の経口剤形、特に錠剤で投与される。もう1つの実施例において、これらの投与量は、そのラセミ形態である場合に、アセチル-ロイシンに対するものである。エナンチオマー過剰が存在する場合、アセチル-ロイシンに対する投与量は、ここに列挙されたものよりも低く、例えば、約50%より低いかもしれない。このように、半減されたときの上述の投与量の範囲はまた、本開示によって明示的に包含される。
【0059】
1つの実施例において、1日の総投与量は、複数回投与に分散させることができ、即ち、投与は1日の総投与量を達成するために1日に2回以上行われてもよい。一例として、アセチル-ロイシンの1日の総投与量を提供するのに必要な錠剤の数は、2回の投与(例えば、朝及び晩)、又は3回の投与(例えば、朝、昼、及び晩)に分けられてもよい。各用量は、食物と共に又は食物なしで適切に投与されるかもしれない。例えば、アセチル-ロイシンは、食事の約1又は約2時間前、例えば食事の少なくとも約20分前、少なくとも約30分前、少なくとも約40分前、又は食事の少なくとも約1時間前などに投与されるかもしれず、或いは、食事後約1時間、約2時間、又は約3時間、例えば、食事後、少なくとも約20分間、少なくとも約30分間、少なくとも約1時間、少なくとも約1.5時間、少なくとも約2時間、又は少なくとも約2.5時間待つように投与されるかもしれない。例えば、4.5gのアセチル-DL-ロイシンの総一日量を、朝食前、朝食中、又は朝食後に、3つのタンガニル(Tanganil)(登録商標)(又は同等のもの)錠剤として、更に、昼食前、昼食中、又は昼食後に、3錠として、そして、夕食前、夕食中、又は夕食後に、更に、3錠として、投与されるかもしれない。
【0060】
本開示によるロイシン又はアセチルロイシンの投与は、RLSが関連する病状若しくは疾患の、又は、遺伝的な生化学的な又は他の同様の識別可能なRLSのマーカーを対象者が有することを見出した前又は後に開始されるかもしれない。対象がRLSの遺伝的、生化学的、又は他の類似の同定可能なマーカーを有することが見出された時点又はその前後で投与が開始されるかもしれない。同様に、投与は、対象者がRLSと診断されたとき又はその前後に開始されるかもしれない。
【0061】
処置(治療)期間は、例えば、約7日以上、約2週間以上、約3週間以上、約1ヶ月以上、約6週間以上、約7週間以上、又は約2ヶ月以上であるかもしれない。1つの実施例において、それは、約3ヶ月以上、約4ヶ月以上、約5ヶ月以上、又は約6ヶ月以上である。処置(治療)期間は、約1年以上、約2年以上、約4年以上、約5年以上、又は約10年以上であるかもしれない。処置(治療)期間は患者の寿命であるかもしれない。
【0062】
投与形態、投与量、投与スケジュール、及び治療期間の如何なる及びすべての組み合わせが想定され、本開示に包含される。1つの実施例において、用量は、約2ヶ月以上の処置(治療)期間で、1日に1回、2回、又は3回の投与にわたって摂取される、1日あたり約4gから約10gである。もう1つの実施例において、用量は、約6ヶ月以上の処置(治療)期間にわたって、1日に1回、2回、又は3回の投与にわたって摂取される、1日当たり4gを超え5g以下である。剤形は、固形の経口剤形、特に錠剤であるかもしれない。
【0063】
ここに記載の医薬組成物は、対象者においてRLSを処置(治療)するための単剤療法(例えば、活性剤単独の使用)として使用されるかもしれない。その代わりに、医薬組成物は、例えば、基礎疾患若しくは病気を治療するために、及び/又は、RLSを治療するために、他の既知の療法に付随して又はそれと組み合わせて、使用されてもよい。
【0064】
それを必要とする対象において、RLSと関連する1つ又はそれ以上の症状又はRLSを治療する方法が提供されるが、その方法は、その対象者に、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はその薬学的に許容される塩の治療有効量を投与することを含む。
【0065】
1つの実施例において、ロイシン、アセチルロイシン、又はそれらの薬学的に許容される塩の治療有効量を、それを必要とする対象者に投与することにより、RLSに関連する1つ又はそれ以上の症状が除去、抑制、又は減衰させられる。1つの実施例において、1つ又はそれ以上の症状は、下肢感覚、睡眠時周期性四肢運動、不快な脚の感覚、動きたい衝動、落ち着きのなさ、日中の過度の眠気、及び睡眠障害のいずれか1つ又は組み合わせから選択される。
【0066】
また、対象者におけるRLSを治療するためのキットも開示されるが、それは、RLSの診断又は予知のための手段、及び、ロイシン、アセチルロイシン、又はそれらの薬学的に許容される塩を含む。
【0067】
そのキットは、緩衝液又は水溶液を更に含んでもよい。そのキットは、本開示の方法により、ロイシン、アセチル-ロイシン、又はその薬学的に許容される塩を使用するための説明書を更に含んでもよい。
【0068】
ここにおいて記述されるすべての特徴(添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含む)、及び/又はそのように開示される如何なる方法のすべてのステップは、少なくとも幾つかのそのような特徴及び/又はステップが相互に排他的であるところの組合せを除いて、如何なる組合せにおける上記側面(特徴)の如何なるものと組み合わせられるかもしれない。
【実施例
【0069】
[実験例]
[患者1]
この症例研究の患者は、下肢の下肢近位筋筋力低下を示す55歳の女性であった。彼女は42歳から徐々に進行する頭部の屈筋麻痺があり、筋強直性ジストロフィー2型と診断された(遺伝学的に確認された)。55歳で診察したとき、彼女は、感覚症状を報告しなかったが、過去2年間に発生した、夜間及び1日の休息期間のレストレスレッグズ(むずむず脚)症候群を訴えた。ドーパミン作動薬(dopamine agonist)での前処置(前治療)は症状緩和無しであった。血清クレアチンキナーゼ活性は、400 IU/Lまで、緩やかに上昇しただけであった。患者は、RLS診断インデックス(RLS diagnostic index)(RLS-DI)を使用して評価された(Waltersら、Sleep Med 2003; 4(2):121-132参照)。患者の国際RLS重症度尺度(International Restless Legs Syndrome Rating Scale)スコア(IRLS)は36であったが、それにより、重度のRLSが診断された。患者は、最初の週は1日当たり3gの用量で、その後2週目以降は1日当たり5gの用量で、アセチル-DL-ロイシンによる治療を開始した。アセチル-DL-ロイシン治療の14日以内に、IRLSは26に低下し、更に5週間後、IRLSは9に低下した。治療の12週後、4週間の治療の中断により、IRLSは28に増加した。治療の再導入により、2週間後にスコアが8に再度減少した。22週間を超えて治療を継続すると、IRLSスコアは8で安定した。
【0070】
[患者2]
この症例研究の患者は、下肢の下肢近位筋筋力低下を示す72歳の女性であった。彼女は48歳から徐々に進行する頭部の屈筋麻痺があり、15年前に筋強直性ジストロフィー2型と診断された(遺伝学的に確認された)。72歳で診察したとき、彼女は、感覚症状を報告しなかったが、過去8年間に渡って発生した、夜間及び1日の休息期間のレストレスレッグズ(むずむず脚)症候群を訴えた。ドーパミン作動薬(dopamine agonist)、L-ドーパ(L-dopa)、プレガバリン(pregabaline)、オピオイド(opiods)による前処置(前治療)では、持続的な症状緩和無しであった。血清クレアチンキナーゼ活性(serum creatine kinase activity)は、300 IU/Lで穏やかに上昇した。鉄の測定及び全ての追加の実験室調査は正常であった。患者はRLS-DIを使用して評価され、患者のIRLSは32であったため、中等度から重度のRLSが診断された。患者は、最初の週は1日当たり3gの用量で、その後2週目以降は1日当たり5gの用量で、アセチル-DL-ロイシンによる治療を開始した。アセチル-DL-ロイシン治療の14日以内に、IRLSは22に低下し、更に5週間後、IRLSは7に低下した。28週間を超えて治療を継続すると、IRLSスコアは8で安定した。
【0071】
[患者3]
この症例研究の患者は、50歳から緩やかに進行する上肢及び下肢の軽度の近位筋筋力低下をしめした、73歳の男性であった。この患者は、約16年前にマカードル・ミオパチー(McArdle myopathy)と診断された(遺伝学的に確認された)。73歳で診察したとき、彼は感覚症状を報告しなかったが、激しい疲労及び低下したスタミナを訴えた。患者は更に、過去12年に渡って発生した、夜間及び1日の休息期間に、レストレスレッグズ(むずむず脚)症候群を報告した。ドーパミン作動薬(dopamine agonist)、L-ドーパ(L-dopa)、プレガバリン(pregabaline)による前処置(前治療)では、持続的な症状緩和無しであった。血清クレアチンキナーゼ活性(serum creatine kinase activity)は、200 IU/Lで穏やかに上昇したが、しかし、患者は、過去20年間に横紋筋融解症(rhabdomyolysis)の5つのエピソード(episodes)を有していた。鉄の測定を繰り返し、全ての追加の実験室の調査は正常であった。患者はRLS-DIを使用して評価され、患者のIRLSは34であったため、重度のRLSと診断された。患者は、最初の週は1日当たり3gの用量で、その後2週目以降は1日当たり5gの用量で、アセチル-DL-ロイシンによる治療を開始した。アセチル-DL-ロイシン治療の21日以内に、IRLSは20に低下し、更に10週間後、IRLSは10に低下した。30週間を超えて治療を継続すると、IRLSスコアは10で安定した。更に、患者の疲労は53から28に低下した(疲労重症度スケール:9(最小)から63(最大))。
【0072】
[患者4]
この症例研究の患者は、RLSの症状を示し、病因が不明なRLSの59歳の女性であった。59歳で診察したとき、彼女は、感覚症状を報告しなかったが、過去15年間に渡って発生した、夜間及び1日の休息期間のレストレスレッグズ(むずむず脚)症候群を訴えた。ドーパミン作動薬(dopamine agonist)、L-ドーパ(L-dopa)、プレガバリン(pregabaline)による前処置(前治療)では、持続的な緩和無しであった。鉄の測定及び全ての追加の実験室調査は正常であった。患者はRLS-DIを使用して評価され、患者のIRLSは32であったため、中等度から重度のRLSが診断された。患者は、最初の週は1日当たり3gの用量で、その後2週目以降は1日当たり5gの用量で、アセチル-DL-ロイシンによる治療を開始した。アセチル-DL-ロイシン治療の14日以内に、IRLSは8に低下し、更に2週間後、IRLSは6に低下した。4週間を超えて治療を継続すると、IRLSスコアは6で安定した。