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特許7337088有機性廃水の生物処理装置及び生物処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】有機性廃水の生物処理装置及び生物処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/06 20230101AFI20230825BHJP
   C02F 3/12 20230101ALI20230825BHJP
【FI】
C02F3/06
C02F3/12 F
C02F3/12 M
C02F3/12 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020553282
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 JP2019040862
(87)【国際公開番号】W WO2020080460
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2018195964
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000120401
【氏名又は名称】荏原実業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊博
(72)【発明者】
【氏名】樺澤 清美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 泰治
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-150332(JP,A)
【文献】特開2005-211788(JP,A)
【文献】特開昭55-149697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F3/00-3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型生物付着担体と、該固定型生物付着担体の下側に配置される散気手段とを有する第1生物処理槽と、
該第1生物処理槽で処理された処理液を導入し、浮遊式微生物により処理を行うと共に、散気手段を有する第2生物処理槽と、
該第2生物処理槽で処理された混合液を固液分離し、沈殿汚泥と処理水とに分離する沈殿槽とを備え、
機性廃水を該第1生物処理槽と該第2生物処理槽とに分配して導入する流入ラインと、
該沈殿槽から排出される沈殿汚泥の一部を該第2生物処理槽に返送する返送ラインとを設け
さらに、有機性廃水の総供給量に対する該第2生物処理槽に供給される有機性廃水の供給量の比率Y(%)は、該第1生物処理槽及び該第2生物処理槽の全体のBOD容積負荷X(kg/m /d)が0.5以上、0.814未満の範囲で以下の式1を満足し、Xが0.814以上、1.5以下の範囲で以下の式2を満たすように設定されることを特徴とする有機性廃水の生物処理装置。
(式1) 5≦Y<-63X+82.5
(式2) 5≦Y<-20X+47.5
【請求項2】
請求項1に記載の有機性廃水の生物処理装置において、有機性廃水のBOD値を測定する第1のBOD測定手段と、該第2生物処理槽内の処理液の溶解性BOD値を測定する第2のBOD測定手段とを設け、
該第1及び第2のBOD測定手段の測定値に基づき、有機性廃水のBOD値に対する第2生物処理槽の溶解性BOD値の比率が6.7~30%の範囲になるように、該第1生物処理槽と該第2生物処理槽とに分配する有機性廃水の分配量を調整する調整手段を有することを特徴とする有機性廃水の生物処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の有機性廃水の生物処理装置において、該第1生物処理槽は、有機性廃水の流れる方向に対して、当該流れを抑制するための阻流壁が配置されていることを特徴とする有機性廃水の生物処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれかに記載の有機性廃水の生物処理装置において、該第2生物処理槽には、処理液を撹拌するための撹拌手段が設けられていることを特徴とする有機性廃水の生物処理装置。
【請求項5】
有機物廃水を固定型生物付着担体により処理する第1生物処理工程と、
該第1生物処理工程で処理された処理液を導入し、浮遊式微生物により処理を行う第2生物処理工程と、
該第2生物処理工程で処理された混合液を固液分離し、沈殿汚泥と処理水とに分離する沈殿工程とを備え、
機性廃水は該第1生物処理工程と該第2生物処理工程とに分配して導入され、
該沈殿工程から排出される沈殿汚泥の一部は、該第2生物処理工程に返送され
さらに、有機性廃水の総供給量に対する該第2生物処理工程に供給される有機性廃水の供給量の比率Y(%)は、該第1生物処理工程及び該第2生物処理工程の全体のBOD容積負荷X(kg/m /d)が0.5以上、0.814未満の範囲で以下の式1を満足し、Xが0.814以上、1.5以下の範囲で以下の式2を満たすように設定されることを特徴とする有機性廃水の生物処理方法。
(式1) 5≦Y<-63X+82.5
(式2) 5≦Y<-20X+47.5
【請求項6】
請求項に記載の有機性廃水の生物処理方法において、有機性廃水のBOD値に対する該第2生物処理工程の処理液の溶解性BOD値の比率が6.7~30%の範囲になるように、該第1生物処理工程と該第2生物処理工程とに分配する有機性廃水の分配量を調整することを特徴とする有機性廃水の生物処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃水の生物処理装置及び生物処理方法に関するものであり、特に、微生物によって処理効率を向上させると共に、浮遊式微生物による処理水の水質改善を図ることが可能な有機性廃水の生物処理装置及び生物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水、生活廃水、食品工場廃水などの広範囲な有機性廃水の処理に際しては、有機性廃水のBOD濃度が300mg/L以下になると、高負荷な処理には高水量が必要となり、処理槽内での廃水の滞留時間も短くなる。このため、処理水の評価にあたっては、処理水の生物化学酸素要求量(BOD)だけでなく浮遊物質(SS)が低いことも要求される。
【0003】
有機性廃水の生物処理では、浮遊式微生物を利用した活性汚泥法が広く行われている。活性汚泥法は処理水の水質に優れ、メンテナンスが容易であることから下水処理や工場廃水処理設備で広く用いられている。しかしながら、活性汚泥法におけるBOD容積負荷は0.2~0.8kg-BOD/m/d程度(dは1日(day)を意味する。)であり、技術的に改善の余地がある。
【0004】
この他に有機性廃水の生物処理では、処理槽内の微生物濃度を高く保持するために担体を用いた流動床法がある。この方法は、BOD容積負荷は2~3kg-BOD/m/dと活性汚泥法と比べて有機物負荷を高くとることができ処理効率に優れているが、処理水のSS濃度が高くなるため、流動床法の後段にろ過設備等のSS除去設備を設けるのが一般的になっている。
【0005】
廃水処理として、上述した活性汚泥法や流動床法の単独処理方式ではなく、非凝集性の汚泥による第1生物処理と浮遊式汚泥を用いた第2生物処理を組み合わせたハイブリッドの廃水処理も行われてきた。具体的には以下のような技術があり、代表的な特許文献につき、従来技術の問題点を列挙する。
【0006】
特許文献1には、有機性廃水を担体が充填されていない第一処理槽で細菌処理して、廃水中に含まれる有機物を酸化分解し、分散した細菌を含む非凝集細菌に変換される。その後第二処理槽には沈降槽より汚泥返送があり、固着性原生動物によって捕食除去され余剰汚泥の生成量を極めて少なくすることが開示されている。
【0007】
担体が充填されていない第一処理槽での処理は、非凝集性の細菌の増殖が律速となり、滞留時間の短い処理には適応できない。特許文献1でも、廃水の滞留日数が3日~10日の長時間必要となる。
【0008】
また、第二処理槽では固液分離可能なフロックを生成させる必要があり、増殖速度の小さい原生動物を増殖させるためには、BOD源の添加なしでは第二処理槽の汚泥滞留時間を長くとる必要があり、結果的には第二処理槽と沈降槽の容量を大きくする必要がある。
【0009】
特許文献2には、第一生物処理槽に有機性廃水を導入して細菌により生物処理し、第一生物処理槽1からの分散状態の細菌を含む第一生物処理水を流動床式の第二生物処理槽に一過式で通水して第二生物処理水を得、第二生物処理水を浮遊式の第三生物処理槽に通水して得た第三生物処理水を沈殿槽で汚泥と処理水とに固液分離し、分離汚泥の一部を返送汚泥として第三生物処理槽に返送することが示されている。また、第一生物処理槽が担体充填率10%以下の流動床式生物処理槽であり、前記第二生物処理槽が担体充填率10%以上の流動床式生物処理槽であることも示されている。
【0010】
また、特許文献2には、後段の生物処理槽での適度な有機物負荷を確保するため、原水を第一生物処理槽と第三生物処理槽に有機性廃水を分注していることも示されている。また、分注の目安として、第三生物処理槽での溶解性BODによる汚泥負荷が0.025kg-BOD/kg-MLSS/d以上となるように運転することも例示されている。
【0011】
特許文献2に開示されているすべての態様において、第一生物処理槽と第二生物処理槽の1個の槽か両槽に流動床式の担体を充填している。担体を充填する場合は担体を分離して混合液を取り出せるようにするスクリーン等の担体分離手段を設ける必要がある。また担体を流動させるためには、生物処理に要求される以上に大量の空気が動力源として必要となる。
【0012】
この処理方式では第一処理槽、第二処理槽とも担体は原水の流入により、担体が流動して槽の下流側のスクリーン近辺に集積する。このため、スクリーン近傍では担体によりろ過抵抗が生じ槽の混合液の排出が困難となるという問題も生じる。この集積した担体を槽の上流側に移送しなければ所定の性能が発揮されないため、流動床担体による効率的な処理が妨げられていた。
【0013】
しかも、処理槽における原水の滞留時間が数時間程度と短い場合においては、流動床担体が処理槽の下流部に偏ってしまうことにより、分散状態の細菌の増殖が行われないことも明らかとなった。
【0014】
特許文献3には、特許文献2と同様に、有機性廃水の高負荷処理に関しては、担体を添加した流動床法が開示されている。この方法を用いた場合、3kg/m/d以上のBOD容積負荷で運転することが可能となる。しかしながら、この方法では発生汚泥量は分解したBODの30%程度で、通常の活性汚泥法より高くなることが欠点となっている。
【0015】
具体的には、第一生物処理槽に有機性排水を導入して細菌により生物処理し、第一生物処理槽からの分散状態の細菌を含む第一生物処理水を第二生物処理槽に通水して第二生物処理水を得、第二生物処理水を固液分離する。第二生物処理槽に微小動物保持担体として、流動床担体と揺動床担体を設ける。第一生物処理槽には、後段の生物処理槽からの汚泥の一部を返送したり、この第一生物処理槽を二槽以上の多段構成としたり、担体を添加したりすることにより、BOD容積負荷5kg/m/d以上の高負荷処理も可能となると示されている。
【0016】
この処理方式においても第一処理槽、第二処理槽とも担体は被処理液と返送汚泥の流入により、活性汚泥法に担体を投入した高負荷処理方法である。
【0017】
特許文献3の処理方式においても、特許文献2と同様にさらに、担体が流動して槽の下流側のスクリーン近辺に集積する問題が生じる。このため、スクリーン近傍では担体によりろ過抵抗が生じ槽の混合液の排出が困難となる課題が生じた。また、この集積した担体を槽の上流側に移送しなければ、所定の性能が発揮されない課題があった。
【0018】
これに対し、本発明者らは、特許文献4において、生物処理槽内に固定型生物付着担体(特許文献4では「固定型接触担体」で表現されている。)を配置することを提案した。
固定型生物付着担体は、特許文献2及び3で指摘した流動床式担体(流動担体)の不具合を解消でき、有機性廃水を効率的に処理できることが確認されている。しかしながら、生物処理槽内での処理量が増加するに従い、大量の浮遊物質(SS)が発生すると共に、溶解性BODも高く、排水する処理水が濁った状態となり、水質が著しく劣化するという新たな問題が発生した。
【0019】
微細な浮遊物質(SS)や溶解性BODを除去するには、後段に浮遊式微生物による処理工程や沈殿工程を付加する必要がある。しかしながら、固定型生物付着担体を用いた生物処理槽の処理能力に見合った処理能力を有する浮遊式微生物の処理槽や沈殿槽を備えるには、少なくとも、生物処理槽の容量の数倍以上の容量が不可欠となる。
また、固定型生物付着担体を用いた生物処理槽で処理された処理水では、後段の処理槽内の浮遊式微生物が十分に繁殖せず、浮遊式微生物による処理効果が十分に期待できないことも分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】特開昭55-20649号公報
【文献】特開2009-202115号公報
【文献】特開2013-141640号公報
【文献】特開2017-159243号公報
【非特許文献】
【0021】
【文献】宗宮功著,「やさしい水処理」,(発行人)宗宮功,(印刷所)株式会社田中プリント,平成20年12月25日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明が解決しようとする課題は、上述した諸問題に鑑み、好気性生物処理の空気量を削減し、かつ汚泥の発生量を大幅に少なくしながら高負荷で効率よく有機物除去を行うと共に、安定した処理水の水質を維持することが可能な有機性廃水の生物処理装置及び生物処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するため、本発明の有機性廃水の生物処理装置及び生物処理方法は、以下の特徴を有する。
(1) 固定型生物付着担体と、該固定型生物付着担体の下側に配置される散気手段とを有する第1生物処理槽と、該第1生物処理槽で処理された処理液を導入し、浮遊式微生物により処理を行うと共に、散気手段を有する第2生物処理槽と、該第2生物処理槽で処理された混合液を固液分離し、沈殿汚泥と処理水とに分離する沈殿槽とを備え、有機性廃水を該第1生物処理槽と該第2生物処理槽とに分配して導入する流入ラインと、該沈殿槽から排出される沈殿汚泥の一部を該第2生物処理槽に返送する返送ラインとを設け、さらに、有機性廃水の総供給量に対する該第2生物処理槽に供給される有機性廃水の供給量の比率Y(%)は、該第1生物処理槽及び該第2生物処理槽の全体のBOD容積負荷X(kg/m /d)が0.5以上、0.814未満の範囲で以下の式1を満足し、Xが0.814以上、1.5以下の範囲で以下の式2を満たすように設定されることを特徴とする有機性廃水の生物処理装置である。
(式1) 5≦Y<-63X+82.5
(式2) 5≦Y<-20X+47.5
【0025】
) 上記(1)に記載の有機性廃水の生物処理装置において、有機性廃水のBOD値を測定する第1のBOD測定手段と、該第2生物処理槽内の処理液の溶解性BOD値を測定する第2のBOD測定手段とを設け、
該第1及び第2のBOD測定手段の測定値に基づき、有機性廃水のBOD値に対する第2生物処理槽の溶解性BOD値の比率が6.7~30%の範囲になるように、該第1生物処理槽と該第2生物処理槽とに分配する有機性廃水の分配量を調整する調整手段を有することを特徴とする。
【0026】
) 上記(1)又は(2)に記載の有機性廃水の生物処理装置において、該第1生物処理槽は、有機性廃水の流れる方向に対して、当該流れを抑制するための阻流壁が配置されていることを特徴とする。
【0027】
) 上記(1)乃至()のいずれかに記載の有機性廃水の生物処理装置において、該第2生物処理槽には、処理液を撹拌するための撹拌手段が設けられていることを特徴とする。
【0028】
) 有機物廃水を固定型生物付着担体により処理する第1生物処理工程と、該第1生物処理工程で処理された処理液を導入し、浮遊式微生物により処理を行う第2生物処理工程と、該第2生物処理工程で処理された混合液を固液分離し、沈殿汚泥と処理水とに分離する沈殿工程とを備え、有機性廃水は該第1生物処理工程と該第2生物処理工程とに分配して導入され、該沈殿工程から排出される沈殿汚泥の一部は、該第2生物処理工程に返送され、さらに、有機性廃水の総供給量に対する該第2生物処理工程に供給される有機性廃水の供給量の比率Y(%)は、該第1生物処理工程及び該第2生物処理工程の全体のBOD容積負荷X(kg/m /d)が0.5以上、0.814未満の範囲で以下の式1を満足し、Xが0.814以上、1.5以下の範囲で以下の式2を満たすように設定されることを特徴とする有機性廃水の生物処理方法である。
(式1) 5≦Y<-63X+82.5
(式2) 5≦Y<-20X+47.5
【0030】
) 上記()に記載の有機性廃水の生物処理方法において、有機性廃水のBOD値に対する該第2生物処理工程の処理液の溶解性BOD値の比率が6.7~30%の範囲になるように、該第1生物処理工程と該第2生物処理工程とに分配する有機性廃水の分配量を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明の有機性排水の生物処理装置及び生物処理方法では、高負荷での有機物の処理が可能であり、沈殿工程後においてはBODやSSが極めて低い処理水が得られる。具体的には固定型生物付着担体が充填された反応槽からなる第1生物処理工程で有機性廃水の大部分を処理するとともに、浮遊式微生物処理槽からなる第2生物処理工程にも有機性廃水の一部を導入し、沈殿工程からの返送汚泥を導入することで、第1生物処理工程で残留した溶解性BODを生物学的に分解するとともに、第1生物処理工程からのフロック化しきれない細菌を浮遊汚泥で付着捕捉できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明に係る有機性廃水の生物処理装置の概要(第1の形態)を示す図である。
図2】本発明に係る有機性廃水の生物処理装置の概要(第2の形態)を示す図である。
図3】本発明に係る有機性廃水の生物処理装置の概要(第3の形態)を示す図である。
図4】本発明に係る有機性廃水の生物処理装置の概要(第4の形態)を示す図である。
図5】本発明に係る有機性廃水の生物処理装置の概要(第5の形態)を示す図である。
図6】実施例1の実験結果を示すグラフである。
図7】本発明に係る有機性廃水の生物処理装置に使用される第2生物処理槽の応用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る有機性廃水の生物処理装置及び生物処理方法について、具体的に説明する。
本発明の有機性廃水の生物処理装置は、図1又は2に示すように、固定型生物付着担体30と、該固定型生物付着担体の下側に配置される散気手段31とを有する第1生物処理槽3と、該第1生物処理槽で処理された処理液を導入し、浮遊式微生物により処理を行うと共に、散気手段41を有する第2生物処理槽4と、該第2生物処理槽で処理された混合液を固液分離し、沈殿汚泥と処理水とに分離する沈殿槽5とを備え、さらに、有機性廃水を該第1生物処理槽3と該第2生物処理槽4とに分配して導入する流入ライン(11,12)と、該沈殿槽5から排出される沈殿汚泥の一部を該第2生物処理槽4に返送する返送汚泥ライン6とを設けたことを特徴とする。
【0034】
なお、本発明の有機性廃水の生物処理方法については、上記第1生物処理槽で行われる処理が「第1生物処理工程」に、上記第2生物処理槽で行われる処理が「第2生物処理工程」に、また、上記沈殿槽で行われる処理が「沈殿工程」に各々該当する。
【0035】
本発明に使用される第1生物処理槽(処理工程)のみでは、BOD容積負荷は0.5kg/m/d~3kg/m/dでBOD除去率80%以上となり、BOD容積負荷は0.75kg/m/d~1.5kg/m/dでBOD除去率90%以上となるものの、後段に沈殿工程を設けても沈殿工程では処理水に微細な粒子および細菌が流出し、処理水の一層の改善が実用上必要となる。なお、本発明における第1生物処理槽や第2生物処理槽、並びに沈殿槽は、各槽を一つの容器で構成するものに限らず、複数の容器を直列又は並列して配管で接続するものも含まれる。
【0036】
また、本発明に使用される第2生物処理槽(処理工程)は、通常の浮遊汚泥、いわゆる活性汚泥法による生物処理法であり、沈殿工程での沈降性のよい汚泥を生成するためのBOD容積負荷は0.1kg/m/d~0.5kg/m/d、好ましくはBOD容積負荷は0.1kg/m/d~0.3kg/m/dとなる。さらに、沈殿工程での浮遊汚泥の良好なフロックを形成し、沈降性を良好にするために、第2生物処理槽でのMLSSは1000mg/L~2000mg/L、好ましくは1000mg/L~1500mg/Lに維持するのがよい。
【0037】
本発明は、第1生物処理槽(処理工程)と第2生物処理槽(処理工程)および沈殿槽(沈殿工程)からなるシステム全体で有機性廃水を分配処理する場合では、第1生物処理工程と第2生物処理工程の全生物反応槽全体でのBOD容積負荷を0.5kg/m/d~1.5kg/m/dに設定することで、BOD除去率80%以上の処理が可能であり、BOD容積負荷を0.6kg/m/d~0.9kg/m/dとするとBOD除去率95%以上の処理性能が発揮できる。
【0038】
この場合、第1生物処理工程と第2生物処理工程への有機性廃水の分配量の調整が極めて重要となる。
本発明の有機性廃水の分配量の調整は、図1又は2の符号2で示された流量調整機構で行われている。有機性廃水(原水)の供給ライン1は流量調整機構2を介して分岐し、分配ライン(11,12)を構成する。
原水のBOD濃度を測定するセンサS1と、第2生物処理槽内のBOD濃度を測定するセンサS2が設けられている。
【0039】
図2においては、センサS2に対する返送汚泥の影響を抑制するため、第1生物処理槽からの処理水と有機性廃水(原水)との合流部分を取り囲む空間(空間を構成する仕切りの一部には、第2生物処理槽内に連通する開口が形成されている)を設け、水質測定部9を形成している。
【0040】
センサS1及びS2からの測定結果は、その数値を見て、操作者が流量調整機構2を調整することも可能であるが、図4及び5に示すように、調整手段として、制御装置8に測定結果を入力し、自動的に流量調整機構を制御するよう構成することも可能である。
【0041】
第1生物処理槽に充填する固定型生物付着担体30は個々の担体の集合体である。担体の形状としては、特許文献4又は非特許文献1に示されるように、一般的に使用できる波板、ハニカムチューブ、瓶状、筒状、網状、ボール状やウニ状などの形状をした担体が好ましい。微生物が担体上に付着し、各槽の負荷に応じた微生物が繁殖し、効率良く槽内の有機物を処理することが可能となる。
【0042】
充填される担体は、原水に浮遊物質(SS)が含まれる場合には、SSが担体に付着・抑留しすぎると槽内の固定型生物付着担体充填部が閉塞することになる。このため、担体にはSSの閉塞の少ない、目開きが十分にある担体の選定が好ましい。上記の単体の中でも目幅のある筒状、網状、ボール状やウニ状の担体が好適に選択できる。
【0043】
第1生物処理工程では固定型生物付着担体をばっ気や廃水の流入、流出により、槽内に配置する担体が流出しないような工夫が必要である。具体的には、第1生物処理工程の反応槽に目幅のある網状の支持部を設け、この網の上部に固定型生物付着担体を充填して、さらに充填部の上面にはばっ気等で流出しないように、目幅のある網目あるいは穴のあいた抑え部を設ける。技術的に高負荷処理を目的とする場合は、第1生物処理工程での固定型生物付着担体の充填割合は最低でも50%以上、好ましくは60%~70%とすることが重要である。なお、本発明の固定型生物付着担体とは、生物処理槽内に固定配置されるものだけでなく、互いの担体が密集し担体が容易に流動しないよう構成されているものを含む。
【0044】
第1生物処理槽において、固定型生物付着担体30を配置した下側には、酸素を含む空気を供給する散気手段31が配置される。散気手段から放出された空気は、固定型生物付着担体により、上方に拡散し外部に容易に放出されるのが抑制され、被処理液内に留まる空気量が多くなる。このため、酸素の溶解効率が、特許文献2又は3の流動床式の担体を使用する場合より高くなる。しかも、固定型生物付着担体を利用した場合には、特許文献2又は3の流動床式の担体を移動させるための動力源となる空気も不要となるため、有機性廃水の処理に必要な空気量を大幅に低減することが可能となる。
【0045】
次に、本発明の有機性廃水の生物処理装置のスタートアップは、第1生物処理工程の特徴を生かした方法を採用できる。
第一の方法は、第1生物処理工程には原水を充満し、処理が良好となる期間は処理液を槽内にとどめておく。この最初の期間は分注ラインで原水の全量を第2生物処理工程で処理する。
第1生物処理工程の処理が立ち上がるに従い、徐々に第1生物処理工程側に原水を増やしていくのがよい。
【0046】
第二の方法は、沈殿槽から第2生物処理槽への返送汚泥を、種汚泥として、さらに第1生物処理槽に返送し、第1生物処理槽への原水の供給を減らした状態で原水の一部を第1生物処理槽で処理しつつ、原水の大部分を第2生物処理槽で処理する方法である。
【0047】
定常状態になった場合では、分注される原水量は、第1生物処理工程の方が第2生物処理工程より多くするのがよい。第1生物処理工程への原水の分配率は原水全量に対して70~95%の範囲が好ましい。原水の分配率とは、原水量に対する、第1生物処理工程への原水の分配量の比率あるいは、第2生物処理工程への原水の分配量の比率と定義する。
【0048】
図3は、第1生物処理槽において阻流壁10を設置した例である。
第1生物処理槽では、固定型生物付着担体の充填された部分と担体のない部分とが存在し、両者の空間では流体抵抗が異なる。原水は流体抵抗の少ない部分である担体のない部分を主に通過し、その結果、原水と担体との接触が不十分となる。
原水が処理不十分のまま第2生物処理槽に流出することを避ける、すなわち第1生物処理槽での原水と担体との接触を効率よく行い、処理を十分に行うためには、第1生物処理槽内に阻流壁10を設けることが重要である。特に、原水が固定型生物付着担体30の下側を横方向に流れ易い場合には、阻流壁の設置は重要である。
阻流壁は、原水等の流れに抵抗を付与するものであればよく、開口を付した仕切板や、処理槽の底面に配置された突起物などが利用可能である。
【0049】
図1乃至5に記載の第2生物処理槽では、散気手段41が処理槽内に配置されている。
第2生物処理槽でのBOD負荷量が小さい場合や、散気量が多く溶存酸素濃度が2mg/Lを超える場合には有機性廃水に含まれるアンモニア性窒素が酸化されNO2-N(亜硝酸性窒素)やNO3-N(硝酸性窒素)が生成され、沈殿槽で汚泥が浮上し、処理水のSSが高くなったり、BOD濃度が上昇し放流基準値が満足できない場合がある。
【0050】
第2生物処理槽でのNO2-N(亜硝酸性窒素)やNO3-N(硝酸性窒素)の生成を抑制するために、第2生物処理槽を無酸素状態(実質的に溶存酸素のない状態)にしてアンモニア性窒素の酸化を止めることが重要である。
このため、図7に示すように、処理槽内に撹拌手段42を配置し、分注された有機性廃水のBODで微生物を浮遊状態にし、生物学的に脱窒処理することができる。脱窒処理においては、NO2-N(亜硝酸性窒素)やNO3-N(硝酸性窒素)を生成する硝化細菌の増殖に要するASRT(Aerobic Sludge Retention Time;好気的な汚泥滞留日数)を短くすることとなるため、硝化細菌の増殖抑制によるNO2-NやNO3-Nの発生が防止できる。
なお、図7の符号(3)は第1生物処理槽3から導入される処理液であり、符号(5)は沈殿槽5に向かう処理液、符号6は第2生物処理槽に流入する返送汚泥ラインを示している。
【0051】
図7(a)では、処理槽内に開口を伴う仕切り壁43を設け、上流側の槽においては撹拌手段42による無酸素的な混合したのちに下流側の槽において、散気手段41を用いたばっ気によるBODの処理を行う。これに限らず、図7(b)に示すように、上流側槽の散気手段44の上方に撹拌手段42を配置することも可能である。散気手段44からの空気量を調整するために、溶存酸素濃度計(センサS3)の値で散気手段44に空気を送る送風機の回転数等を制御することが好ましい。この場合の溶存酸素の濃度は0.5mg/L以下で、好ましくは0.3mg/L以下である。なお、図7(b)の符号(8)に向かう点線矢印は、溶存酸素濃度計であるセンサS3の信号を制御装置8に伝送することを意味している。
【0052】
図7(c)に示すように、第2生物処理槽内に仕切り壁を設けること無く、散気手段41と撹拌手段42を設けて低溶存酸素状態での処理を行うことも可能である。分注された有機性廃水および第1生物処理槽流出液の合計水量の処理時間が2時間以上のとなるようにすると処理水水質が良好となる。
【実施例1】
【0053】
有機性廃水(原水)の第2生物処理槽への流入量の比率、すなわち第2生物処理槽への原水の分配率を変化させた実験を行った。本実施例ではシステム全体でのBOD容積負荷と各原水の分配率について、実施態様を図1に示す。以下の実施例では第2生物処理槽への原水分配率を「原水分配率」と省略する。
【0054】
本処理システムの原水となる有機性廃水は、72m/dで、このBOD濃度は150mg/Lである。
固定型生物付着担体が充填された第1生物処理工程(以下、第1工程と略す)と沈殿工程から汚泥が返送される浮遊式微生物処理を行う第2生物処理工程(以下、第2工程と略す)で処理を行い、沈殿工程で固液分離を行うことで、原水の処理を行うこととしている。
沈殿工程では水面積当たりの分離速度20m/m/dで重力式沈殿池で固液分離を行い、処理水の水質で評価した。
RUN1~RUN7におけるBOD濃度及びS-BOD(溶解性BOD)値の測定は公定法JIS-K0102:2016版に準拠した。
【0055】
結果の評価方法は、目標値の達成で評価する。具体的には下記のようになる。
BOD転換からみたSS発生濃度推定値をBODの66%としている。BOD150mg/Lであるのでこの場合のSS発生濃度を100mg/Lとした。
1)BOD除去率95%以上かつSS10mg/L以下の場合は「非常に満足」と評価し、記号○で表す。SS10mg/L以下の場合は、推定除去率は90%以上となる。
2)BOD除去率は80%以上~95%未満かつSS20mg/L以下の場合は「満足」と評価し、記号△で表す。SS20mg/L以下の場合は、推定除去率は80%以上となる。
3)SS濃度に関わらずBOD除去率が80%未満の場合には「不満足」と評価し、記号×で表す。
【0056】
【表1】
【0057】
実験はまず、表1に示すように、沈殿工程は変えず、第1工程と第2工程のそれぞれの槽の容量を変化させ、第1工程と第2工程の合計容量に対する処理システム全体のBOD容積負荷(以下システム全体のBOD負荷という)を0.5kg/m/d~1.5kg/m/dの7通りのRUN(RUN1~RUN7)で行った。各RUNにおいて第1工程、第2工程への原水分配率を5ポイントずつ変化させて処理水の評価を行った。
第1工程、第2工程の槽の容量は負荷に応じて調整し、その容量は各RUN毎に表1に示している。第1工程の固定型生物付着担体には内部に空隙があり、目幅のある籠(かご)状のものを上下支持材で固定した。固定型生物付着担体の充填容量は第1工程(反応槽)容量の60%である。第2工程のMLSS濃度(処理槽にいる細菌の濃度)は1000mg/Lとなるように調整した。実験結果も併せて表1に示す。
【0058】
RUN1では第1工程の槽容量11m、第2工程11mでシステム全体のBOD負荷を0.5kg/m/dとした。
まず原水分配率は5%に設定すると、第2工程への原水量は3.6mとなり、第2工程でのBOD負荷は0.05kg/m/dであった。この原水分配率は5%での沈殿工程後の処理水のBOD濃度は16.5mg/Lで除去率89%、SS濃度は17mg/Lで「満足(△)」の評価であった。
【0059】
つぎに、原水分配率を10%、15%、20%、25%、30%までにあげると、第2工程への原水量は7.2mから21.6mまで3.6m間隔で増加する。第2工程でのBOD負荷は分配率に応じて0.1~0.29kg/m/dとなっている。
この原水分配率10%、15%、20%、25%、30%まで沈殿工程後の処理水のBOD濃度は6~7mg/LでBOD除去率95~96%、SS濃度は7~10mg/Lで「非常に満足(○)」の評価であった。
【0060】
原水分配率を35%、40%、45%、50%までにあげると、第2工程への原水量は25.2mから36mまで増加する。第2工程でのBOD負荷は分配率に応じて0.35~0.50kg/m/dとなっている。
この原水分配率35%、40%、45%、50%まで沈殿工程後の処理水のBOD濃度は12~29mg/LでBOD除去率81~92%、SS濃度は7~18mg/Lで「満足」の評価であった。
【0061】
さらに、原水分配率を55%に設定すると、第2工程への原水量は39.6mとなり、第2工程でのBOD負荷は処理限界以上の0.55kg/m/dであった。原水分配率55%での沈殿工程後の処理水のBOD濃度は38mg/Lで除去率75%、SS濃度は24mg/Lで「満足できない(×)」の評価であった。
【0062】
RUN2では第1工程の槽容量9m、第2工程9mでシステム全体のBOD負荷を0.6kg/m/dとした。
まず原水分配率は5%に設定すると、第2工程への原水量は3.6mとなり、第2工程でのBOD負荷は0.06kg/m/dであった。RUN2の原水分配率5%での沈殿工程後の処理水のBOD濃度は16.5mg/Lで除去率89%、SS濃度は15mg/Lで「満足」の評価であった。
【0063】
つぎに、原水分配率を10%、15%、20%、25%までにあげると、第2工程への原水量は7.2mから18mまで3.6m間隔で増加する。第2工程でのBOD負荷は分配率に応じて0.12~0.30kg/m/dとなっている。
この原水分配率10%、15%、20%、25%まで沈殿工程後の処理水のBOD濃度は6~7mg/LでBOD除去率96%、SS濃度は7~10mg/Lで「非常に満足」の評価であった。
【0064】
原水分配率を30%、35%、40%までにあげると、第2工程への原水量は21.6mから28.8mまで増加する。第2工程でのBOD負荷は分配率に応じて0.36~0.48kg/m/dとなっている。
この原水分配率30%、35%、40%まで沈殿工程後の処理水のBOD濃度は12~26mg/LでBOD除去率83~92%、SS濃度は7~16mg/Lで「満足」の評価であった。
【0065】
さらに、原水分配率を45%に設定すると、第2工程への原水量は32.4mとなり、第2工程でのBOD負荷は処理限界以上の0.54kg/m/dであった。原水分配率45%での沈殿工程後の処理水のBOD濃度は39mg/Lで除去率74%、SS濃度は25mg/Lで「満足できない」の評価であった。
【0066】
RUN3では第1工程の槽容量8m、第2工程8mでシステム全体のBOD負荷を0.7kg/m/dとした。
まず原水分配率は5%に設定すると、第2工程への原水量は3.6mとなり、第2工程でのBOD負荷は0.07kg/m/dであった。RUN3の原水分配率5%での沈殿工程後の処理水のBOD濃度は16.5mg/Lで除去率89%、SS濃度は14mg/Lで「満足」の評価であった。
【0067】
つぎに、原水分配率を10%、15%、20%までにあげると、第2工程への原水量は7.2mから14.4mまで3.6m間隔で増加する。第2工程でのBOD負荷は分配率に応じて0.14~0.27kg/m/dとなっている。
この原水分配率10%、15%、20%まで沈殿工程後の処理水のBOD濃度は5~6mg/LでBOD除去率96%、SS濃度は6~8mg/Lで「非常に満足」の評価であった。
【0068】
さらに原水分配率は25%、30%、35%に設定すると、第2工程への原水量は18~25.2mとなり、第2工程でのBOD負荷は0.36~0.48kg/m/dであった。RUN3の原水分配率25%、30%、35%での沈殿工程後の処理水のBOD濃度は12~24mg/Lで除去率84~92%、SS濃度は7~15mg/Lで「満足」の評価であった。
【0069】
さらに、原水分配率を40%に設定すると、第2工程への原水量は28.8mとなり、第2工程でのBOD負荷は処理限界以上の0.55kg/m/dであった。原水分配率40%での沈殿工程後の処理水のBOD濃度は39mg/Lで除去率74%、SS濃度は25mg/Lで「満足できない」の評価であった。
【0070】
RUN4では第1工程の槽容量6.8m、第2工程6.8mでシステム全体のBOD負荷を0.8kg/m/dとした。
まず原水分配率は5%に設定すると、第2工程への原水量は3.6mとなり、第2工程でのBOD負荷は0.09kg/m/dであった。RUN3の原水分配率5%での沈殿工程後の処理水のBOD濃度は16.5mg/Lで除去率89%、SS濃度は14mg/Lで「満足」の評価であった。
【0071】
つぎに、原水分配率を10%、15%までにあげると、第2工程への原水量は7.2mから10.8mまで3.6m間隔で増加する。第2工程でのBOD負荷は分配率に応じて0.17~0.26kg/m/dとなっている。
この原水分配率10%、15%まで沈殿工程後の処理水のBOD濃度は5~6mg/LでBOD除去率96%、SS濃度は10mg/Lで「非常に満足」の評価であった。
【0072】
原水分配率は20%、25%、30%に設定すると、第2工程への原水量は14.4~21.6mとなり、第2工程でのBOD負荷は0.34~0.5kg/m3/dであった。RUN4の原水分配率20%、25%、30%での沈殿工程後の処理水のBOD濃度は10.5~29.5mg/Lで除去率80~93%、SS濃度は10~20mg/Lで「満足」の評価であった。
【0073】
さらに、原水分配率を35%に設定すると、第2工程への原水量は25.2mとなり、第2工程でのBOD負荷は処理限界以上の0.56kg/m/dであった。原水分配率35%での沈殿工程後の処理水のBOD濃度は42mg/Lで除去率72%、SS濃度は27mg/Lで「満足できない」の評価であった。
【0074】
RUN5では第1工程の槽容量6m、第2工程6mでシステム全体のBOD負荷を0.9kg/m/dとした。
まず原水分配率は5%に設定すると、第2工程への原水量は3.6mとなり、第2工程でのBOD負荷は0.09kg/m/dであった。RUN3の原水分配率5%での沈殿工程後の処理水のBOD濃度は16.5mg/Lで除去率89%、SS濃度は12mg/Lで「満足」の評価であった。
【0075】
つぎに、原水分配率を10%、15%までにあげると、第2工程への原水量は7.2mから10.8mまで増加する。第2工程でのBOD負荷は分配率に応じて0.18~0.27kg/m/dとなっている。
この原水分配率10%、15%まで沈殿工程後の処理水のBOD濃度は6mg/LでBOD除去率96%、SS濃度は9~10mg/Lで「非常に満足」の評価であった。
【0076】
さらに原水分配率は20%、25%に設定すると、第2工程への原水量は14.4~18mとなり、第2工程でのBOD負荷は0.36~0.45kg/m/dであった。RUN5の原水分配率20%、25%での沈殿工程後の処理水のBOD濃度は23~28mg/Lで除去率81~85%、SS濃度は10mg/Lで「満足」の評価であった。
【0077】
原水分配率は30%に設定した場合、第2工程への原水量は21.6mとなり、第2工程でのBOD負荷は0.54kg/m/dであった。沈殿工程後の処理水のBOD濃度は31mg/Lで除去率79%、SS濃度は15mg/Lで「満足できない」の評価であった。
【0078】
先にのべたように、本発明に使用される第2生物処理槽(処理工程)は、通常の浮遊汚泥、いわゆる活性汚泥法による生物処理法であり、沈殿工程での沈降性のよい汚泥を生成するためのBOD容積負荷は0.1kg/m/d~0.5kg/m/d、好ましくはBOD容積負荷は0.1kg/m/d~0.3kg/m/dとなる。
【0079】
第2工程でのBOD負荷が0.5kg/m/dを超えるようになった場合にはここでの処理能力をオーバーする。そのため、第2工程でのBOD負荷が0.5kg/m/d以下に設定することも重要である。
【0080】
RUN6では第1工程の槽容量5.4m、第2工程5.4mでシステム全体のBOD負荷を1.0kg/m/dとした。
まず原水分配率は5%に設定すると、第2工程への原水量は3.6mとなり、第2工程でのBOD負荷は0.1kg/m/dであった。RUN6の原水分配率5%での沈殿工程後の処理水のBOD濃度は22mg/Lで除去率85%、SS濃度は14mg/Lで「満足」の評価であった。
【0081】
つぎに、原水分配率を10%、15%、20%、25%までにあげると、第2工程への原水量は7.2mから18mまで増加する。第2工程でのBOD負荷は分配率に応じて0.2~0.5kg/m/dとなっている。
この原水分配率10%、15%、20%、25%まで沈殿工程後の処理水のBOD濃度は21~28mg/LでBOD除去率81~86%、SS濃度は14~18mg/Lで「満足」の評価であった。
【0082】
さらに原水分配率は30%に設定すると、第2工程への原水量は21.6mとなり、第2工程でのBOD負荷は処理限界以上の0.6kg/m/dであった。RUN6の原水分配率30%での沈殿工程後の処理水のBOD濃度は32mg/Lで除去率79%、SS濃度は25mg/Lで「満足できない」の評価であった。
【0083】
表1のBOD容積負荷に対する原水分配率との関係を、図6のグラフに示す。なお、グラフ内の「○」「△」「×」の記号は、表1の評価を反映したものである。
図6を見ると、有機性廃水の総供給量に対する第2生物処理槽に供給される有機性廃水の供給量の比率Y(%)は、が0.5以上、0.814未満の範囲で以下の式1を満足し、Xが0.814以上、1.5以下の範囲で以下の式2を満たすように調整することで、処理水の水質を「△(満足)」以上に設定できることが理解される。
(式1) 5≦Y<-63X+82.5
(式2) 5≦Y<-20X+47.5
【0084】
図6の上側の2つの直線(点線)は、有機性廃水の総供給量に対する第2生物処理槽に供給される有機性廃水の供給量の比率Y(%)の上限値を特定するため、評価が「△」と「×」の境界部分を直線で近似したものである。
2つの直線の交点は、図6にも示したように(X,Y)=(0.814,31.2)となる。
【0085】
また、実施例1の結果から、処理水の水質をBOD濃度やSS濃度の観点から「満足」と評価できるレベル以上に保つには、浮遊式微生物を利用する第2生物処理槽へのBOD容積負荷を、0.05kg/m/d(RUN1の第2工程への分配率5%)から0.5kg/m/d(RUN1の同分配率50%やRUN6の分配率25%)までの範囲に設定することが好ましいことが理解される。この数値は、特許文献2に開示されているような、汚泥負荷の目安「0.025kg-BOD/kg-MLSS/d」と比較すると、この2倍~20倍の範囲に相当する。
本発明のような固定型生物付着担体を用いた生物処理装置において、処理水の水質を改善するには、浮遊式微生物を使用する第2生物処理槽には、高い汚泥負荷が必要となることが理解される。
【実施例2】
【0086】
本願発明では、第1工程は容積負荷を高くとれ、その処理可能な最大の容積負荷は実施例1のRUN7にあるように3kg/m/dである。一方、第2工程は0.5kg/m/dが最大の処理負荷である。システム全体としては第1工程に負荷与え、処理水質が許容できる範囲で第2工程で最小限の負荷を与えるのが技術的に合理的である。
実施例2では、RUN8として原水のBOD濃度が高くなった場合の原水分配率の検証を行った。また、RUN9として、第1工程に対して第2工程の容量を大きくした場合の最終処理水の変化を検証した。第2工程のMLSS濃度は1000mg/Lとした。
【0087】
RUN8の結果を表2に示す。RUN8での原水となる有機性廃水は、24m/dで、このBOD濃度は450mg/Lである。BOD濃度が高くなった場合でも第2工程への分配率に再現性があるか否かの検討を行った。システム全体の負荷は0.9kg/m/dで実施例1のRUN5の負荷と同等である。
第1工程の容量は6m、第2工程の容量を6mとして原水の分配率の検討を行った。沈殿工程では水面積当たりの分離速度20m/m/dで重力式沈殿池で固液分離を行い、処理水の水質で評価した。
【0088】
結果の評価方法は、目標値の達成で評価する。具体的には下記のようになる。
BOD転換からみたSS発生濃度推定値をBODの66%としている。BOD450mg/Lであるのでこの場合のSS発生濃度を300mg/Lとした。
1)BOD除去率95%以上かつSS30mg/L以下の場合は「非常に満足」と評価し、記号○で表す。SS30mg/L以下の場合は、推定除去率は90%以上となる。
2)BOD除去率は80%以上~95%未満かつSS60mg/L以下の場合は「満足」と評価し、記号△で表す。SS60mg/L以下の場合は、推定除去率は80%以上となる。
3)SS濃度に関わらずBOD除去率が80%未満の場合には「不満足」と評価し、記号×で表す。
【0089】
【表2】
【0090】
RUN8のBOD濃度が実施例1に比べて3倍高い。この状態でRUN8の処理水の結果を実施例1のRUN5と比較する。分配率5~25%で処理の評価は「満足(△)」と「非常に満足(○)」であり、RUN8は実施例1のRUN5と同一の評価となっている。このRUN8においても第2工程の容積負荷が0.5kg/m/dをオーバーした分配率30%になると水質は「満足できない」という評価になった。
【0091】
RUN8のように、原水のBOD濃度が増加(変動)した場合であっても、有機性廃水の総供給量に対する第2生物処理槽に供給される有機性廃水の供給量の比率を、上述した式1又は式2で規定される数値範囲に調整することで、処理水の水質を「満足(△)」以上に設定できることが理解される。
【0092】
RUN9では第1工程の容量は6m、第2工程の容量を12mとして原水の分配率の検討を行った。原水水量、原水BOD沈殿濃度はRUN8と同様とした。沈殿工程では水面積当たりの分離速度20m/m/dで重力式沈殿池で固液分離を行い、処理水の水質で評価した。
第2工程の容量が12mと増大したことで、システム全体の負荷は0.6kg/m/dになり、第2工程の容積負荷は限界値0.5kg/m/d未満となっている。、処理水はBOD除去率95%以上でSSは30mg/L以下で「非常に満足」の評価範囲となっている。
【0093】
上記結果より、原水のBODにかかわらず、システム全体のBOD負荷を設定し、第2工程の第2工程の容積負荷は限界値0.5kg/m/dとなるように原水の分配率を調整すればいいことになる。実施例1で示された適用範囲は原水のBOD濃度、システム全体の容積負荷、第2工程の容積負荷は限界値から再現性があると判断された。
【0094】
また、RUN9のように、第1工程の容量に対し第2工程の容量を大きくすることができる場合には、有機性廃水の総供給量に対する第2生物処理槽に供給される有機性廃水の供給量の比率は、式1又は式2で規定される上限値を超える広い数値範囲に設定しても、処理水の水質が改善できることが容易に理解される。しかしながら、第2工程の容量を単純に増加することは、スペース的にもコスト的にも問題が多いため、第2工程の容量は、RUN9のように第1工程の2倍を上限とすることが好ましい。
【0095】
逆に、第1工程の容量に対する第2工程の容量を小さくした場合について検討する。例えば、実施例1のRUN2において、第1工程の容量を9m、第2工程の容量を4.5mに設定した場合を検討する。この場合のシステム全体のBOD容積負荷は0.8kg/m/dである。仮に、第2工程への有機性排水の供給量(原水分配率)の比率を5%と10%に設定した場合、第2工程でのBOD容積負荷は各々0.12kg/m/dと0.24kg/m/dとなる。実施例1の第2工程でのBOD容積負荷が0.1~0.3kg/m/dの範囲では「非常に満足」の水質が得られていることから、この場合も同様に処理水の水質改善が期待できる。
【0096】
第1工程の容量に対する第2工程の容量をより小さくする場合には、一般的に、第2工程のBOD容積負荷を最適にするためには、第2工程への原水分配量をより絞る必要がある。しかしながら、第2工程への原水分配率を5%より低くすると、原水の処理量や原水のBOD濃度が変化した場合、原水の分配率を調整する幅が狭く、第2工程のBOD容積負荷を最適状態に維持することが困難となる。
このため、第1工程の容量に対する第2工程の容量の比率は、0.5倍以上に設定することが好ましい。
【0097】
以上のことから、第2工程の容量は、第1工程の容量の0.5~2倍の範囲に設定することが好ましい。なお、本発明では、第1工程では、BODの処理能力が高い反面、SS濃度も高くなり易い。そして、第2工程では、このSS濃度を低減する役割が期待される。このため、第2工程は、第1工程よりも処理速度をより遅く維持することが必要となり、第2工程の容量は、第1工程の容量の1~2倍の範囲に設定することが、より好ましいと言える。
【実施例3】
【0098】
RUN11での原水となる有機性廃水は、72m/dである。有機性廃水の濃度やシステム全体の負荷0.6kg/m/dをもとに第1工程の容量を9m、第2工程の容量を9mにして処理を行った。第2工程のMLSSは1000mg/Lとなるように返送汚泥量をRUNごとに変化させた。沈殿工程では水面積当たりの分離速度20m/m/dで重力式沈殿池で固液分離を行い、処理水の水質で評価した。実施の方法は図5に示す方法で行った。
【0099】
結果の評価方法は、目標値の達成で評価する。具体的には下記のようになる。
BOD転換からみたSS発生濃度推定値をBODの66%としている。BOD150mg/Lであるのでこの場合のSS発生濃度を100mg/Lとした。
1)BOD除去率95%以上かつSS10mg/L以下の場合は「非常に満足」と評価し、記号○で表す。SS10mg/L以下の場合は、推定除去率は90%以上となる。
2)BOD除去率は80%以上~95%未満かつSS20mg/L以下の場合は「満足」と評価し、記号△で表す。SS20mg/L以下の場合は、推定除去率は80%以上となる。
3)SS濃度に関わらずBOD除去率が80%未満の場合には「不満足」と評価し、記号×で表す。
【0100】
具体的には有機物濃度の測定できる検知器を、原水ラインと、第2工程内の第1工程の流出部と第2工程への原水が合流する水質測定部を設け、これらの2つの信号(溶解性BOD値)を演算機構に導入し、第2工程の水質測定部の溶解性BOD値が、原水の溶解性BOD値に対して所定の割合になるように流量調整機構を調整し、第2工程への原水流量を調整した。このことで、結果的には第1工程の流量も変化することになる。なお、溶解性BOD値とはSSを除外したBOD濃度のことであり、第2工程ではMLSSが1000mg/Lであるため、BOD測定では誤差が大きいことから、MLSSをろ過で除外した溶解性BODの値を制御の指標とした。
【0101】
RUN11では原水のBOD濃度は150mg/Lで、システム全体のBOD負荷0.6kg/m/dで設計されている。第1工程の容量は9m、第2工程の容量は9mである。RUN11の結果を表3に示す。RUN11ではBOD濃度及びS-BOD値の測定は水中浸漬型水質測定器スペクトライザBOD計(型式Sp1-005-pO-sNO-075,荏原実業株式会社製)を用いた。
【0102】
【表3】
【0103】
表3では第2工程の水質測定部の溶解性BOD値をS-BOD値と表記する。
テスト11では第2工程への原水分配量は5mでS-BOD値は10mg/Lであり、原水BOD濃度に対しては6.7%となっている。このテスト11での沈殿工程後の処理水のBOD濃度は15mg/Lで除去率90%、SS濃度は10mg/Lで「満足(△)」の評価であった。
【0104】
テスト12では、第2工程への原水分配量は流量調整機構を調整し7m/dに上げたところ、S-BOD値は15mg/Lとなり、原水BOD濃度に対しては10%となった。このテスト12では沈殿工程後の処理水BOD濃度は3mg/Lで除去率98%と大幅に上昇するとともに、SS濃度は8mg/Lであった。BOD除去率とSS濃度からテスト12の処理結果は「非常に満足(○)」の評価であった。
【0105】
テスト13では原水分配量を11m/d、テスト14では原水分配量を14m/dにあげたところ、S-BOD値及び原水BOD濃度に対する割合は、テスト13で23mg/L、15.3%、テスト14で30mg/L、20%になった。これらの状態でも、沈殿工程後の処理水BOD濃度は3mg/Lで除去率98%が維持できていた。SS濃度は5mg/Lであった。BOD除去率とSS濃度からテスト13及び14の処理結果は「非常に満足」の評価であった。
【0106】
テスト15では原水分配量を調整し18m/dにあげたところ、S-BOD値及び原水BOD濃度に対する割合は、38mg/L、25.3%になった。この状態では、沈殿工程後の処理水BOD濃度は9mg/Lで除去率94%とテスト14に比べ低下した。SS濃度は15mg/Lであった。BOD除去率とSS濃度からテスト15の処理結果は「満足」の評価であった。
テスト12~テスト14の結果からは、処理結果が「非常に満足」となる範囲は原水BOD濃度に対するS-BOD値は10%~20%が妥当であると判断できた。
【0107】
原水分配量を調整し、テスト16で19m/d、テスト17で22m/dにあげた。S-BOD値及び原水BOD濃度に対する割合は、40mg/L、26.7%、テスト17では、S-BOD値及び原水BODに対する割合は、45mg/L、30%、と原水BODに対する割合の設定値10%~20%より高かった。
沈殿工程後の処理水はテスト16でBOD濃度が15mg/Lで除去率90%であり、SS濃度は18mg/L、テスト17で21mg/Lで除去率86%であり、SS濃度は20mg/Lであった。
BOD除去率とSS濃度からテスト16とテスト17の処理結果は「満足」の評価であった。
【0108】
テスト18では原水分配量を調整し24m/dとした。この場合、S-BOD値及び原水BOD濃度に対する割合は、50mg/L、原水BODに対する割合は33.3%になった。このテスト18の場合、沈殿工程後の処理水BOD濃度は33mg/Lで除去率78%であり、SS濃度は25mg/Lであった。BOD除去率とSS濃度からテスト18の処理結果は「不満足(×)」の評価であった。
【0109】
テスト18終了後、第2工程の水質測定部のS-BOD値を23mg/L、原水BOD濃度に対する割合を15.3%とすべく演算機構を作動させて流量調整機構を調整し、原水分配量を下げたところ、沈殿工程後の処理水BOD濃度は3mg/Lで除去率98%と大幅に上昇できた。この時の原水分配量は11m/dとなっていた。
【0110】
以上の結果から、原水BOD濃度に対する第2工程のS-BOD値の割合が、6.7%~30%の範囲になるように流量調整機構を調整すると、評価として「満足(△)」以上の状態となる。
さらに、原水BOD濃度に対する第2工程のS-BOD値の割合が、10%~20%の範囲になるように流量調整機構を調整すると、評価として「非常に満足(○)」の状態となる。
これらのことから、第2工程のS-BOD値を原水BOD濃度に対する割合を設定することで本システムの水質の制御が可能となることが判明した。
【0111】
以上のテストより、S-BOD値を原水BOD濃度に対する割合の設定値を6.7~30%、好ましくは10%~20%とし、この値で演算機構を作動させ、流量調整機構を調整し、第2工程への原水流量を調整することで、容易に本システムの最適運転状態に維持できることが分かる。
【実施例4】
【0112】
RUN12では原水のBOD濃度は300mg/Lで、システム全体のBOD負荷0.6kg/m/dで設計されている。第1工程の容量は18m、第2工程の容量は18mであり、第2工程のMLSSは1000mg/Lとした。
RUN12ではBOD濃度及びS-BOD値の測定は水中浸漬型水質測定器スペクトライザBOD計(型式Sp1-005-pO-sNO-075,荏原実業株式会社製)を用いた。
結果を表4に示す。ここでは第2工程の水質測定部の溶解性BOD値をS-BOD値と表記する。
【0113】
結果の評価方法は、目標値の達成で評価する。具体的には下記のようになる。
BOD転換からみたSS発生濃度推定値をBODの66%としている。BOD300mg/Lであるのでこの場合のSS発生濃度を200mg/Lとした。
1)BOD除去率95%以上かつSS20mg/L以下の場合は「非常に満足」と評価し、記号○で表す。SS20mg/L以下の場合は、推定除去率は90%以上となる。
2)BOD除去率は80%以上~95%未満かつSS40mg/L以下の場合は「満足」と評価し、記号△で表す。SS40mg/L以下の場合は、推定除去率は80%以上となる。
3)SS濃度に関わらずBOD除去率が80%未満の場合には「不満足」と評価し、記号×で表す。
【0114】
【表4】
【0115】
このRUN12での原水BOD濃度が300mg/Lと高いこともあって、実施の方法は図4に示す方法で行った。水質測定部ではなく、第2工程内の第1工程の流出部と第2工程への原水が合流する地点から採水し、直ちに分析する方法を採用した。
【0116】
テスト21では第2工程への原水分配量は5mでS-BOD値は20mg/Lであり、原水BOD濃度に対しては6.7%となる。沈殿工程後の処理水BOD濃度は30mg/Lで除去率90%、SS濃度は20mg/Lでこの処理水の評価は「満足(△)」であった。
【0117】
テスト22では第2工程への原水分配量を7m/dに上げたところ、S-BOD値は30mg/Lで原水BOD濃度に対しては10%となった。このテスト22では沈殿工程後の処理水BOD濃度は9mg/Lで除去率97%、SS濃度は16mg/Lでこの処理水の評価は「非常に満足(○)」であり、水質は大幅に向上した。
【0118】
原水分配量を調整し、テスト23では11m/d、テスト24では14m/dに設定したところ、S-BOD値及び原水BODに対する割合は、テスト23では45mg/L、15.0%、テスト24では60mg/L、20%になった。これらの状態でも、沈殿工程後の処理水BOD濃度は9mg/Lで除去率97%、SS濃度は10mg/Lでこの処理水の評価は「非常に満足」の状態を維持できていた。
【0119】
テスト25では原水分配量は流量調整機構を調整し18m/dにあげたとことS-BOD値及び原水BODに対する割合は、75mg/L、25.0%になった。この状態では、沈殿工程後の処理水BOD濃度は30mg/Lで除去率90%、SS濃度は20mg/Lでこの処理水の評価は「満足」であった。
【0120】
テスト26およびテスト27では流量調整機構を調整して、原水分配量をテスト26は19m/d、テスト27は22m/dとした。S-BOD値及び原水BOD濃度に対する割合は、テスト26は80mg/L、26.7%、テスト27は90mg/L、30%であり、原水BOD濃度に対する割合の設定値10%~20%より高かった。この状態では、沈殿工程後の処理水は、テスト26はBOD濃度は36mg/Lで除去率88%、SS濃度は30mg/Lであり、テスト27はBOD濃度は58mg/Lで除去率81%、SS濃度は30mg/Lであり、処理水の評価は「満足」であった。
【0121】
テスト28では流量調整機構を調整して、原水分配量を24m/dとした。S-BOD値及び原水BOD濃度に対する割合は100mg/L、33.3%であり、原水BOD濃度に対する割合の設定値10%~20%より高かった。この状態では、沈殿工程後の処理水は、BOD濃度で64mg/Lで除去率78%、SS濃度は45mg/Lであり、処理水の評価は「不満足(×)」となった。
【0122】
テスト21~テスト28の結果から、原水BOD濃度に対する第2工程のS-BOD値の割合が6.7%~30%の範囲で、BOD除去率90%以上でSSは40mg/L以下でBOD転換SS発生濃度推定値の20%以下となり、評価として「満足」以上の状態となる。
さらに、テスト22~テスト24の結果にみられるように、原水BOD濃度に対する第2工程のS-BOD値の割合が10%~20%の範囲で、BOD除去率95%以上でSSは20mg/L以下でBOD転換SS発生濃度推定値の10%以下となり、評価として「非常に満足」の状態となる。
【0123】
テスト28の終了後、第2工程の水質測定部のS-BOD値を45mg/L、すなわち、原水BOD濃度に対する割合を15%とすべく演算機構を作動させ流量調整機構を調整し、原水分配量を下げたところ、沈殿工程後の処理水BOD濃度は9mg/Lで除去率97%と大幅に上昇できた。この時の原水分配量は11m/dとなっていた。また、原水BOD濃度に対する比率を10%~20%となるべくS-BOD値で30~60mg/Lに制御したところ、沈殿工程後の処理水BOD濃度は9mg/Lで除去率97%と大幅に上昇し「非常に満足」の状態となり、制御の効果が検証できた。
【0124】
以上の結果から、原水BOD濃度を実施例3より高くした場合(ただし、システム全体のBOD負荷は、実施例3と同じである。)には、原水BOD濃度に対する第2工程のS-BOD値の割合が、6.7%~30%の範囲になるように流量調整機構を調整すると、評価として「満足(△)」以上の状態となる。
さらに、原水BOD濃度に対する第2工程のS-BOD値の割合が、10%~20%の範囲になるように流量調整機構を調整すると、評価として「非常に満足(○)」の状態となる。
これらのことからも、原水のBOD濃度が変化しても、第2工程のS-BOD値を原水BOD濃度に対する割合を設定することで本システムの水質の制御が可能となることが判明した。
以上のテストより、原水BOD濃度に対する第2工程のS-BOD値の割合を、6.7~30%、好ましくは10%~20%とし、この値で演算機構を作動させ、流量調整機構を調整し、第2工程への原水流量を調整することで、容易に本システムの最適運転状態に維持できる。
【実施例5】
【0125】
実施例5としてRUN13を行った。RUN13での原水となる有機性廃水量は、72m/dである。RUN13では原水のBOD濃度は150mg/Lで、システム全体のBOD負荷0.9kg/m/dで設計されている。
第1工程の容量は6m、第2工程の容量は6mである。結果を表5に示す。ここでは第2工程の水質測定部の溶解性BOD値をS-BOD値と表記する。
実施の方法は図5に示す方法で行った。
RUN13ではBOD濃度及びS-BOD値の測定は水中浸漬型水質測定器スペクトライザBOD計(型式Sp1-005-pO-sNO-075,荏原実業株式会社製)を用いた。
【0126】
結果の評価方法は、目標値の達成で評価する。具体的には下記のようになる。
BOD転換からみたSS発生濃度推定値をBODの66%としている。BOD150mg/Lであるのでこの場合のSS発生濃度を100mg/Lとした。
1)BOD除去率95%以上かつSS20mg/L以下の場合は「非常に満足」と評価し、記号○で表す。SS10mg/L以下の場合は、推定除去率は90%以上となる。
2)BOD除去率は80%以上~95%未満かつSS40mg/L以下の場合は「満足」と評価し、記号△で表す。SS20mg/L以下の場合は、推定除去率は80%以上となる。
3)SS濃度に関わらずBOD除去率が80%未満の場合には「不満足」と評価し、記号×で表す。
【0127】
【表5】
【0128】
このRUN13での原水BOD濃度が150mg/Lであり、実施の方法は図4に示す方法で行った。水質測定部ではなく、第2工程内への第1工程の流出部と第2工程への原水が合流する地点から採水し、直ちに分析する方法を採用した。
【0129】
テスト31では第2工程への原水分配量は5mでS-BOD値は10mg/Lであり、原水BOD濃度に対しては6.7%となる。沈殿工程後の処理水BOD濃度は15mg/Lで除去率90%、SS濃度は12mg/Lでこの処理水の評価は「満足(△)」であった。
【0130】
テスト32では第2工程への原水分配量を7m/dに上げたところ、S-BOD値は15mg/Lで原水BOD濃度に対しては10%となった。このテスト32では沈殿工程後の処理水BOD濃度は4.5mg/Lで除去率97%、SS濃度は10mg/Lでこの処理水の評価は「非常に満足(○)」であり、水質は大幅に向上した。
【0131】
原水分配量を調整し、テスト33では11m/d、テスト34では14m/dに設定したところ、S-BOD値及び原水BODに対する割合は、テスト33では23mg/L、15.0%、テスト34では30mg/L、20%になった。これらの状態でも、沈殿工程後の処理水BOD濃度は4.5mg/Lで除去率97%、SS濃度は7mg/Lでこの処理水の評価は「非常に満足」の状態を維持できていた。
【0132】
テスト35では原水分配量は流量調整機構を調整し18m/dにあげたとことS-BOD値及び原水BODに対する割合は、38mg/L、25.0%になった。この状態では、沈殿工程後の処理水BOD濃度は15mg/Lで除去率90%、SS濃度は12mg/Lでこの処理水の評価は「満足」であった。
【0133】
テスト36およびテスト37では流量調整機構を調整して、原水分配量をテスト36は19m/d、テスト37は22m/dとした。S-BOD値及び原水BOD濃度に対する割合は、テスト36は40mg/L、26.7%、テスト37は45mg/L、30%であり、原水BOD濃度に対する割合の設定値10%~20%より高かった。この状態では、沈殿工程後の処理水は、テスト36はBOD濃度は18mg/Lで除去率88%、SS濃度は17mg/Lであり、テスト37はBOD濃度は27mg/Lで除去率82%、SS濃度は20mg/Lであり、処理水の評価は「満足」であった。
【0134】
テスト38では流量調整機構を調整して、原水分配量を24m/dとした。S-BOD値及び原水BOD濃度に対する割合は50mg/L、33.3%であり、原水BOD濃度に対する割合の設定値10%~20%より高かった。この状態では、沈殿工程後の処理水は、BOD濃度で38mg/Lで除去率75%、SS濃度は28mg/Lであり、処理水の評価は「不満足(×)」となった。
【0135】
テスト31~テスト38の結果から、原水BOD濃度に対する第2工程のS-BOD値の割合が6.7%~30.0%の範囲で、BOD除去率90%以上でSSは20mg/L以下でBOD転換SS発生濃度推定値の20%以下となり、評価として「満足」以上の状態となる。
さらに、テスト32~テスト34の結果にみられるように、原水BOD濃度に対する第2工程のS-BOD値の割合が10%~20%の範囲で、BOD除去率95%以上でSSは10mg/L以下でBOD転換SS発生濃度推定値の10%以下となり、評価として「非常に満足」の状態となる。
【0136】
テスト38の終了後、第2工程の水質測定部のS-BOD値を23mg/L、すなわち、原水BOD濃度に対する割合を15%とすべく演算機構を作動させ流量調整機構を調整し、原水分配量を下げたところ、沈殿工程後の処理水BOD濃度は4.5mg/Lで除去率97%と大幅に上昇でき、SS濃度も7mg/Lなった。この時の原水分配量は11m/dとなっていた。また、原水BOD濃度に対する比率を10%~20%となるべくS-BOD値で15~30mg/Lに制御したところ、沈殿工程後の処理水BOD濃度は4.5mg/Lで除去率97%に大幅に上昇するとともに、SS濃度も7mg/L~10mg/Lとなり、「非常に満足」の状態が継続し、制御の効果が検証できた。
【0137】
以上の結果より、システム全体のBOD負荷を高く(変化)した場合でも、原水BOD濃度に対する第2工程のS-BOD値の割合が、6.7%~30%の範囲になるように流量調整機構を調整すると、評価として「満足(△)」以上の状態となる。
さらに、原水BOD濃度に対する第2工程のS-BOD値が、10%~20%の範囲になるように流量調整機構を調整すると、評価として「非常に満足(○)」の状態となる。
これらのことから、システム全体のBOD負荷を変動させた際も、第2工程のS-BOD値を原水BOD濃度に対して所定の割合に設定することで本システムの水質の制御が可能となることが判明した。
以上のテストより、原水BOD濃度に対する第2工程のS-BOD値の割合を、6.7~30%、好ましくは10%~20%とし、この値で演算機構を作動させ、流量調整機構を調整し、第2工程への原水流量を調整することで、容易に本システムの最適運転状態に維持できる。
【実施例6】
【0138】
実施例6としてRUN14を行った。RUN14での原水となる有機性廃水は、72m/dである。RUN14では原水のBOD濃度は300mg/Lで、システム全体のBOD負荷0.9kg/m/dで設計されている。
第1工程の容量は12m、第2工程の容量は12mである。結果を表6に示す。ここでは第2工程の水質測定部の溶解性BOD値をS-BOD値と表記する。
RUN14ではBOD濃度及びS-BOD値の測定は水中浸漬型水質測定器スペクトライザBOD計(型式Sp1-005-pO-sNO-075,荏原実業株式会社製)を用いた。
【0139】
結果の評価方法は、目標値の達成で評価する。具体的には下記のようになる。BOD転換からみたSS発生濃度推定値をBODの66%としている。BOD300mg/Lであるのでこの場合のSS発生濃度を200mg/Lとした。
1)BOD除去率95%以上かつSS20mg/L以下の場合は「非常に満足」と評価し、記号○で表す。SS20mg/L以下の場合は、推定除去率は90%以上となる。
2)BOD除去率は80%以上~95%未満かつSS40mg/L以下の場合は「満足」と評価し、記号△で表す。SS40mg/L以下の場合は、推定除去率は80%以上となる。
3)SS濃度に関わらずBOD除去率が80%未満の場合には「不満足」と評価し、記号×で表す。
【0140】
【表6】
【0141】
このRUN14での原水BOD濃度が300mg/Lであり、実施の方法は図4に示す方法で行った。水質測定部ではなく、第2工程内の第1工程の流出部と第2工程への原水が合流する地点から採水し、直ちに水中浸漬型水質測定器スペクトライザBOD計(型式Sp1-005-pO-sNO-075,荏原実業株式会社製)で分析する方法を採用した。
【0142】
テスト41では第2工程への原水分配量は5mでS-BOD値は20mg/Lであり、原水BOD濃度に対しては6.7%となる。沈殿工程後の処理水BOD濃度は30mg/Lで除去率90%、SS濃度は17mg/Lでこの処理水の評価は「満足(△)」であった。
【0143】
テスト42では第2工程への原水分配量を7m/dに上げたところ、S-BOD値は30mg/Lで原水BOD濃度に対しては10%となった。このテスト42では沈殿工程後の処理水BOD濃度は9mg/Lで除去率97%、SS濃度は14mg/Lでこの処理水の評価は「非常に満足(○)」であり、水質は大幅に向上した。
【0144】
原水分配量を調整し、テスト43では11m/d、テスト44では14m/dに設定したところ、S-BOD値及び原水BODに対する割合は、テスト43では45mg/L、15.0%、テスト44では60mg/L、20%になった。これらの状態でも、沈殿工程後の処理水BOD濃度は9mg/Lで除去率97%、SS濃度は10mg/Lでこの処理水の評価は「非常に満足」の状態を維持できていた。
【0145】
テスト45では原水分配量は流量調整機構を調整し18m/dに上げたところ、S-BOD値及び原水BODに対する割合は、75mg/L、25.0%になった。この状態では、沈殿工程後の処理水BOD濃度は30mg/Lで除去率90%、SS濃度は25mg/Lでこの処理水の評価は「満足」であった。
【0146】
テスト46およびテスト47では流量調整機構を調整して、原水分配量をテスト46は19m/d、テスト47は22m/dとした。S-BOD値及び原水BOD濃度に対する割合は、テスト46は80mg/L、26.7%、テスト47は90mg/L、30%であり、原水BOD濃度に対する割合の設定値10%~20%より高かった。この状態では、沈殿工程後の処理水は、テスト46はBOD濃度は36mg/Lで除去率88%、SS濃度は32mg/Lであり、テスト47はBOD濃度は54mg/Lで除去率82%、SS濃度は35mg/Lであり、処理水の評価は「満足」であった。
【0147】
テスト48では流量調整機構を調整して、原水分配量を24m/dとした。S-BOD値及び原水BOD濃度に対する割合は100mg/L、33.3%であり、原水BOD濃度に対する割合の設定値10%~20%より高かった。この状態では、沈殿工程後の処理水は、BOD濃度で81mg/Lで除去率73%、SS濃度は40mg/Lであり、処理水の評価は「不満足(×)」となった。
【0148】
テスト41~テスト48の結果から、原水BOD濃度に対する第2工程のS-BOD値の割合が6.7%~30%の範囲で、BOD除去率90%以上でSSは40mg/L以下でBOD転換SS発生濃度推定値の20%以下となり、評価として「満足」以上の状態となる。
さらに、テスト42~テスト44の結果にみられるように、原水BOD濃度に対する第2工程のS-BOD値の割合が10%~20%の範囲で、BOD除去率95%以上でSSは20mg/L以下でBOD転換SS発生濃度推定値の10%以下となり、評価として「非常に満足」の状態となる。
【0149】
テスト48の終了後、第2工程の水質測定部のS-BOD値を45mg/L、原水BOD濃度に対する割合を15%とすべく演算機構を作動させ流量調整機構を調整し、原水分配量を下げたところ、沈殿工程後の処理水BOD濃度は9mg/Lで除去率97%と大幅に上昇できるとともに、SS濃度は10mg/Lとなった。この時の原水分配量は11m/dとなっていた。また、原水BOD濃度に対する比率を10%~20%となるべく第2工程のS-BOD値で30~60mg/Lに制御したところ、沈殿工程後の処理水BOD濃度は9mg/Lで除去率97%と大幅に上昇するとともに、SS濃度も10~14mg/Lの「非常に満足」の状態となり、制御の効果が検証できた。
【0150】
以上の結果から、原水のBOD濃度やシステム全体のBOD負荷を高めた場合であっても、原水BOD濃度に対する第2工程のS-BOD値の割合が、6.7%~30%の範囲になるように流量調整機構を調整すると、評価として「満足」以上の状態となる。
さらに、原水BOD濃度に対する第2工程のS-BOD値の割合が、10%~20%の範囲になるように流量調整機構を調整すると、評価として「非常に満足」の状態となる。
これらのことから、第2工程のS-BOD値を原水BOD濃度に対して所定の割合に設定することで本システムの水質の制御が可能となることが判明した。
以上のテストより、原水のBOD濃度やシステム全体のBOD負荷が変動した場合でも、原水BOD濃度に対する第2工程のS-BOD値の割合を、6.7~30%、好ましくは10%~20%とし、この値で演算機構を作動させ、流量調整機構を調整し、第2工程への原水流量を調整することで、容易に本システムの最適運転状態に維持できる。
【産業上の利用可能性】
【0151】
以上説明したように、本発明によれば、好気性生物処理の空気量を削減し、かつ汚泥の発生量を大幅に少なくしながら高負荷で効率よく有機物除去を行うと共に、安定した処理水の水質を維持することが可能な有機性廃水の生物処理装置及び生物処理方法を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0152】
1 有機性廃水ライン
2 流量調整機構(有機性廃水の水量分配機構)
3 第1生物処理槽
4 第2生物処理槽
5 沈殿槽
6 返送汚泥ライン
7 処理水流出ライン
8 制御装置
9 水質測定部え
10 阻流壁
11 第1生物処理槽への原水の流入ライン
12 第2生物処理槽への原水の流入ライン
30 固定型生物付着担体
31,41,44 散気手段
42 撹拌手段
43 仕切り壁
S1,S2,S3 センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7