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特許7337093水中船体クリーニング・マシン、船体クリーニング・システム、および、船舶の船体をクリーニングするための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】水中船体クリーニング・マシン、船体クリーニング・システム、および、船舶の船体をクリーニングするための方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 59/10 20060101AFI20230825BHJP
   B08B 1/04 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
B63B59/10 A
B08B1/04
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020558028
(86)(22)【出願日】2019-04-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 SG2019050214
(87)【国際公開番号】W WO2019203729
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】10201803261S
(32)【優先日】2018-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】520400047
【氏名又は名称】ガン、チョン ビン、マイケル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガン、チョン ビン、マイケル
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0062421(KR,A)
【文献】特開昭60-179389(JP,A)
【文献】特開2012-213746(JP,A)
【文献】特開2015-157587(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0116316(US,A1)
【文献】特開2011-88485(JP,A)
【文献】ソーントン ブレア,浦環,能勢義昭,ターノック スティーブン,“Zero-G型水中ロボットの開発: 内部ジャイロアクチュエータによる自由姿勢制御”,生産研究,58巻2号,日本,東京大学生産技術研究所,2006年,p.175-178,DOI: 10.11188/seisankenkyu.58.175,ISSN 1881-2058(online),0037-105X(print)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 59/08-59/10,
B63C 11/48,
B08B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中船体クリーニング・マシンであって、前記水中船体クリーニング・マシンは、
クリーニングされることとなる外部表面の少なくとも一部に面して配置されるように適合されているベース領域を含むハウジングと;
前記ハウジングに連結されているガイディング・メカニズムであって、前記ガイディング・メカニズムは、前記水中船体クリーニング・マシンが前記外部表面に沿って操縦されることを可能にするように構成されている、ガイディング・メカニズムと;
選択的なクリーニングを実施するために伸長位置と後退位置との間で移動するように構成されている少なくとも1つのブラシと;
制御ポッドであって、前記制御ポッドは、情報を受け取り、信号を送るように構成されており、前記情報に基づいて、表面トルク制御を促進させ、前記表面トルク制御は、集合的に、前記少なくとも1つのブラシの回転に伴う表面接触圧力の制御された適用のことを称し、前記表面トルク制御は、前記少なくとも1つのブラシの前記伸長位置および回転速度の調節によって提供される、制御ポッドと
を含み、
前記伸長位置では、前記少なくとも1つのブラシは、前記ベース領域に向けて下向きに伸長させられ、クリーニングされることとなる前記外部表面の前記少なくとも一部と接触した状態になるようになっており、また、前記後退位置では、前記少なくとも1つのブラシは、前記ベース領域から離れるように上向きに移動させられ、前記外部表面との接触がない状態になっており、汚れのない前記外部表面の一部をクリーニングすることを控え、
前記ガイディング・メカニズムは、複数のスラスターを含み、前記複数のスラスターは、推力メカニズムを提供するように構成されており、前記推力メカニズムは、前記水中船体クリーニング・マシンによって経験されるドリフトに対抗する力を提供するように配置されており、また、前記少なくとも1つのブラシが前記後退位置にある状態で、前記水中船体クリーニング・マシンが前記外部表面に沿って移動し続けることを可能にするように配置されており;
前記複数のスラスターのそれぞれは、前記少なくとも1つのブラシに対して偏心して配置されており;
前記複数のスラスターおよび前記少なくとも1つのブラシは、独立して駆動されるように構成されている、水中船体クリーニング・マシン。
【請求項2】
前記複数のスラスターは、複数の垂直スラスターを含み、前記複数の垂直スラスターは、前記外部表面から離れるように上向き方向への、または、前記外部表面に向かう下向き方向への、前記水中船体クリーニング・マシンの操縦性を提供するように構成されており、前記複数の垂直スラスターのそれぞれは、前記ハウジングの周辺に沿って外向きに延在している、請求項1に記載の水中船体クリーニング・マシン。
【請求項3】
前記複数のスラスターは、複数のベクタード・スラスターをさらに含み、前記複数のベクタード・スラスターは、互いに間隔を離して配置されており、また、前記外部表面に対して実質的に平行の平面に沿って、異なる方向への前記水中船体クリーニング・マシンの操縦性を提供する様式で配置されている、請求項1または2に記載の水中船体クリーニング・マシン。
【請求項4】
前記ガイディング・メカニズムは、少なくとも4つのベクタード・スラスターを含む、請求項3に記載の水中船体クリーニング・マシン。
【請求項5】
前記ガイディング・メカニズムは、ジャイロ・センサーを含み、前記ジャイロ・センサーは、前記水中船体クリーニング・マシンが向かっている方向、前記外部表面に対する前記水中船体クリーニング・マシンの位置、前記水中船体クリーニング・マシンのピッチ、または、前記水中船体クリーニング・マシンのロールのうちの少なくとも1つを確認するように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の水中船体クリーニング・マシン。
【請求項6】
前記ベース領域は、ベース・プレートを含み、前記水中船体クリーニング・マシンは、前記ベース・プレートの外部表面に連結されているホイールをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の水中船体クリーニング・マシン。
【請求項7】
前記水中船体クリーニング・マシンは、スカーティングをさらに含み、前記スカーティングは、前記ベース・プレートの前記外部表面に連結されており、前記スカーティングは、前記少なくとも1つのブラシを取り囲むように配置されている、請求項6に記載の水中船体クリーニング・マシン。
【請求項8】
前記水中船体クリーニング・マシンは、さらなるブラシをさらに含み、前記さらなるブラシは、選択的なクリーニングを実施するために前記伸長位置および前記後退位置との間で移動するように構成されており、
前記伸長位置において、前記さらなるブラシは、前記ベース領域に向けて下向きに伸長させられ、クリーニングされることとなる前記外部表面の前記少なくとも一部と接触した状態になっており、前記後退位置において、前記さらなるブラシは、前記ベース領域から離れるように上向きに移動させられ、前記外部表面との接触がない状態になっており、汚れのない前記外部表面の一部をクリーニングすることを控える、請求項1から7のいずれか一項に記載の水中船体クリーニング・マシン。
【請求項9】
前記少なくとも1つのブラシおよび前記さらなるブラシは、互いに同期して前記伸長位置と前記後退位置との間で移動するように構成されている、請求項8に記載の水中船体クリーニング・マシン。
【請求項10】
前記少なくとも1つのブラシおよび前記さらなるブラシは、互いに対して非同期的に前記伸長位置と前記後退位置との間で移動するように構成されている、請求項8に記載の水中船体クリーニング・マシン。
【請求項11】
前記水中船体クリーニング・マシンは、圧力ゲージをさらに含み、前記圧力ゲージは、前記少なくとも1つのブラシのトルクに応答して前記外部表面に印加されている力の量を検出し、前記外部表面と接触しているときに回転を維持するように構成されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の水中船体クリーニング・マシン。
【請求項12】
前記水中船体クリーニング・マシンは、カメラをさらに含み、前記カメラは、前記外部表面またはその一部のリアルタイム画像をキャプチャーするように構成されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の水中船体クリーニング・マシン。
【請求項13】
前記水中船体クリーニング・マシンは、ポンプをさらに含み、前記ポンプは、前記外部表面から除去された海洋生物を含む懸濁液を外部濾過システムへ移送するように構成されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の水中船体クリーニング・マシン。
【請求項14】
船体クリーニング・システムであって、前記船体クリーニング・システムは、
請求項1から13のいずれか一項に記載の水中船体クリーニング・マシンと;
前記水中船体クリーニング・マシンによって除去される海洋生物および/または汚染物質を受け入れるように配置されているタンクと
を含む、船体クリーニング・システム。
【請求項15】
前記船体クリーニング・システムは、濾過システムをさらに含み、前記濾過システムは、前記水中船体クリーニング・マシンのポンプを通して移送された懸濁液から、前記海洋生物および/または汚染物質および海水を分離するように構成されている、請求項14に記載の船体クリーニング・システム。
【請求項16】
船舶の船体をクリーニングするための方法であって、前記方法は、
請求項1から13のいずれか一項に記載の水中船体クリーニング・マシンを前記船体の表面に展開するステップと;
前記表面の一部がクリーニングされるべきであるかどうかを決定するために前記表面の一部のリアルタイム画像をキャプチャーするステップと;
前記表面の前記一部がクリーニングされるべきであるということが決定される場合には、前記水中船体クリーニング・マシンの少なくとも1つのブラシを伸長位置に低下させるステップであって、前記伸長位置において、前記少なくとも1つのブラシは、前記水中船体クリーニング・マシンのベース領域に向けて下向きに延在し、クリーニングされることとなる前記表面の前記一部と接触している、ステップと;
前記表面の前記一部がクリーニングされるべきではないということが決定される場合には、前記少なくとも1つのブラシを後退位置に上昇させるステップであって、前記後退位置において、前記少なくとも1つのブラシは、前記ベース領域から離れるように上向きに移動し、前記表面との接触がない状態になっており、クリーニングされることを必要としない前記外部表面の一部をクリーニングすることを控える、ステップと;
前記複数のスラスターを使用し、推力メカニズムを提供するステップであって、前記推力メカニズムは、前記水中船体クリーニング・マシンによって経験されるドリフトに対抗する力を提供し、前記少なくとも1つのブラシが前記後退位置にある状態で、前記水中船体クリーニング・マシンが前記表面に沿って移動し続けることを可能にし、前記複数のスラスターのそれぞれは、前記少なくとも1つのブラシに対して偏心して配置されており、前記推力メカニズムおよび前記少なくとも1つのブラシは、独立して駆動されるように構成されている、ステップと;
情報を受け取り、信号を送り、前記情報に基づいて、表面トルク制御を促進させるステップであって、前記表面トルク制御は、集合的に、前記少なくとも1つのブラシの回転に伴う表面接触圧力の制御された適用のことを称し、前記表面トルク制御は、前記少なくとも1つのブラシの前記伸長位置および回転速度の調節によって提供される、ステップと
を含む、方法。
【請求項17】
前記方法は、前記船体の前記表面の前記一部から海洋生物および/または汚染物質をクリーニングおよび除去するために前記伸長位置にあるときに、前記少なくとも1つのブラシを活性化させるステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記方法は、除去された海洋生物および/または汚染物質を収集するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法は、前記情報を受け取る前に、前記少なくとも1つの活性化されているブラシのトルクに応答して前記外部表面に印加されている力の量を検出し、前記外部表面と接触しているときに回転を維持するステップと;前記信号を送った後に、検出された力の前記量に応答して、前記外部表面とのブラシ接触の量、または、前記少なくとも1つの活性化されているブラシの回転速度のうちの少なくとも1つを調節し、それによって、表面トルク制御を提供するステップと
をさらに含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、前記船体の前記表面の前記一部から前記表面の別の一部へ前記水中船体クリーニング・マシンを操縦するステップをさらに含む、請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2018年4月18日に出願されたシンガポール特許出願第10201803261S号の優先権の利益を主張し、その内容は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
さまざまな実施形態は、水中船体クリーニング・マシン、船体クリーニング・システム、および、船舶の船体をクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
燃料のコストは、船の全体的な運転コストに大きく寄与する。また、より多くの燃料を燃やすことは、「温室効果」に寄与する。運転コストを低く維持し、「温室効果」を低減させるために、船の燃料消費は、効率的に管理および低減されることを必要とする。燃料は、船の推進エネルギーを発生させるために使用される。高いレベルの推進エネルギー効率を取得するために、(たとえば、船の船体からの)流体力学的抵抗(または、摩擦)が最小化される必要がある。
【0004】
そのような流体力学的抵抗を最小化するかまたはさらには排除するために、船の船体は、定期的なクリーニングによって(たとえば、水中船体クリーニングによって)滑らかに維持される必要がある。
【0005】
水中船体クリーニングは、船の内部機械への水の流れを改善するために、汚された吸い込み格子の詰まりを取り除くなどのような、いくつかの利益をさらに提供する。生物付着の蓄積を防止するために船体を定期的にクリーニングすることは、海運業または海事産業において共通の実務であり、それは、船体表面のコーティングを効果的に維持することが可能であり、さらには、その寿命を延ばすことが可能である。
【0006】
生物付着を除去するための最も一般的な技術は、ブラシまたはウォーター・ジェットに依存している。
【0007】
ウォーター・ジェット・ベースの水中クリーニング・マシンは、この技術の開発によって、より幅広く使用されるようになっているが、ブラシ・ベースの水中クリーニング・マシンは、より高いレベルの生産性を提供することが依然として知られている。
【0008】
従来のブラシ・ベースの水中船体クリーニング・マシンは、表面が海洋生物によって汚されているかまたは汚されていないかにかかわらず、クリーニングされることとなる表面の上のブラシによって、一定のまたは連続的な表面接触を有している。換言すれば、これらの既存の水中船体クリーニング・マシンは、ゲット/ゴー(get/go)タイプである。換言すれば、これらのクリーニング・マシンは、マシンが使用中である限り、常にクリーニングを実施している。結果的に、1つまたは複数のブラシは、高価な防汚コーティングまたは既存のコーティングの層を不必要に撹拌し、除去し、および/または損傷を与え、それは、望ましくない。
【0009】
さらに、いくつかの従来のブラシ・ベースの水中船体クリーニング・マシンは、ダイバーの手動の動作を必要とし、および/または、環境に優しい船体クリーニングを提供するための機能を欠いている。
【0010】
したがって、少なくとも本明細書で述べられている問題に対処するために、表面(たとえば、船体表面)とのブラシ接触が制御され得る、船体クリーニング・システムおよび水中船体クリーニング・マシンに対する必要性が存在している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態によれば、水中船体クリーニング・マシンが提供される。水中船体クリーニング・マシンは、クリーニングされることとなる外部表面の少なくとも一部に面して配置されるように適合されているベース領域を含むハウジングと;ハウジングに連結されているガイディング・メカニズムであって、ガイディング・メカニズムは、水中船体クリーニング・マシンが外部表面に沿って操縦されることを可能にするように構成されている、ガイディング・メカニズムと;伸長位置と後退位置との間で移動するように構成されている少なくとも1つのブラシとを含むことが可能であり、伸長位置では、少なくとも1つのブラシは、ベース領域に向けて下向きに伸長させられ、外部表面の少なくとも一部と接触した状態になるようになっており、また、後退位置では、少なくとも1つのブラシは、ベース領域から離れるように上向きに移動させられ、外部表面との接触がない状態になっている。
【0012】
実施形態によれば、船体クリーニング・システムが提供される。船体クリーニング・システムは、さまざまな実施形態による水中船体クリーニング・マシンと;水中船体クリーニング・マシンによって除去される海洋生物および/または汚染物質を受け入れるように配置されているタンクとを含むことが可能である。
【0013】
実施形態によれば、船舶の船体をクリーニングするための方法が提供される。方法は、さまざまな実施形態による水中船体クリーニング・マシンを船体の表面に展開するステップと;表面の一部がクリーニングされるべきであるかどうかを決定するために表面の一部のリアルタイム画像をキャプチャーするステップと;表面の一部がクリーニングされるべきであるということが決定される場合には、水中船体クリーニング・マシンの少なくとも1つのブラシを伸長位置に低下させるステップであって、伸長位置において、少なくとも1つのブラシは、水中船体クリーニング・マシンのベース領域に向けて下向きに延在し、表面の一部と接触している、ステップと;表面の一部がクリーニングされるべきではないということが決定される場合には、少なくとも1つのブラシを後退位置に上昇させるステップであって、後退位置において、少なくとも1つのブラシは、ベース領域から離れるように上向きに移動し、表面との接触がない状態になる、ステップとを含むことが可能である。
【0014】
図面において、同様の参照文字は、一般的に、異なる図の全体を通して同様のパーツを指している。図面は、必ずしも正しい縮尺になっているわけではなく、代わりに、一般的に、本発明の原理を図示することに重点が置かれている。以下の説明において、本発明のさまざまな実施形態が、以下の図面を参照して説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】さまざまな実施形態による水中船体クリーニング・マシンの概略表現図である。
図1B】さまざまな実施形態による船体クリーニング・システムの概略表現図である。
図1C】さまざまな実施形態による、船または船舶の船体をクリーニングする方法を図示するフロー・チャートである。
図2A】1つの実施形態による、船の船体およびサービス船舶(水中船体クリーニング・マシンがそこから展開される)のサイド(ポート)図を図示する概略図面である。
図2B】1つの実施形態による、展開の準備ができている水中船体クリーニング・マシンの例を示す写真斜視図である。
図2C】1つの実施形態による、海の中へ展開されている図2Bの例示的な水中船体クリーニング・マシンを示す写真斜視図である。
図2D】1つの実施形態による、船の船体のサイド(ポート)図を図示する概略図面であり、水中船体クリーニング・マシンは、海面の下の所望のレベルに低下させられ、船体の一方の端部においてクリーニングされることとなる表面に到達することが可能であることを示す図である。
図2E】船の船体のサイド(ポート)図を図示する概略図面であり、水中船体クリーニング・マシンが、図2Dに対して、表面の異なる一部へ移動していることを示す図である。
図2F図2A図2D、および図2Eに関して、船体の底面図を図示する概略図面である。
図2G】1つの実施形態による、船の船体のサイド(スターボード)図を図示する概略図面を有しており、水中船体クリーニング・マシンが、海面の下の所望のレベルに低下させられ、船体の一方の端部においてクリーニングされることとなる表面に到達することが可能であることを示す図である。
図3A】異なる過程における側面図から見たアニメーション化されたシミュレーションのスナップショットであり、さまざまな実施形態による、前方方向への外部表面に対する水中船体クリーニング・マシンの少なくとも1つのブラシの移動を図示するスナップショットである。
図3B】異なる過程における側面図から見たアニメーション化されたシミュレーションのスナップショットであり、さまざまな実施形態による、前方方向への外部表面に対する水中船体クリーニング・マシンの少なくとも1つのブラシの移動を図示するスナップショットである。
図3C】異なる過程における側面図から見たアニメーション化されたシミュレーションのスナップショットであり、さまざまな実施形態による、前方方向への外部表面に対する水中船体クリーニング・マシンの少なくとも1つのブラシの移動を図示するスナップショットである。
図3D】異なる過程における側面図から見たアニメーション化されたシミュレーションのスナップショットであり、さまざまな実施形態による、前方方向への外部表面に対する水中船体クリーニング・マシンの少なくとも1つのブラシの移動を図示するスナップショットである。
図3E】1つの実施形態による、図3Dの斜視図である。
図4A】異なる過程における側面図から見たアニメーション化されたシミュレーションのスナップショットであり、1つの実施形態による、逆の方向への外部表面に対する少なくとも1つのブラシの移動を図示する移動を図示するスナップショットである。
図4B】異なる過程における側面図から見たアニメーション化されたシミュレーションのスナップショットであり、1つの実施形態による、逆の方向への外部表面に対する少なくとも1つのブラシの移動を図示する移動を図示するスナップショットである。
図5A】1つの実施形態による、伸長位置における2つのブラシを含む水中船体クリーニング・マシンの側断面図を図示する概略図面である。
図5B】1つの実施形態による、ブラシが後退位置にある状態の図5Aの水中船体クリーニング・マシンの側断面図を図示する概略図面である。
図5C】1つの実施形態による、外部表面の実質的に近くにあり、ブラシが伸長位置にある状態で設置されている水中船体クリーニング・マシンの側断面図を図示する概略図面である。
図5D】1つの実施形態による、ブラシが後退位置にある状態の図5Cの水中船体クリーニング・マシンの側断面図を図示する概略図面である。
図6A】1つの実施形態による、3つのブラシを有する水中船体クリーニング・マシンの斜視図である。
図6B図6Aの底面図である。
図6C図6Aの前方図である。
図6D図6Aの後方図である。
図6E図6Aのポート(サイド)図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の詳細な説明は、図示として、本発明が実践され得る特定の詳細および実施形態を示す添付の図面に言及している。これらの実施形態は、当業者が本発明を実践することを可能にするように十分に詳細に説明されている。他の実施形態も利用され得り、構造的な、論理的な、および電気的な変更が、本発明の範囲を逸脱することなく行われ得る。さまざまな実施形態は、必ずしも相互に排他的であるわけではない。その理由は、いくつかの実施形態が1つまたは複数の他の実施形態と組み合わせられ、新しい実施形態を形成することが可能であるからである。
【0017】
方法またはデバイスのうちの一方の文脈において説明されている実施形態は、他方の方法またはデバイスに関しても同様に有効である。同様に、方法の文脈において説明されている実施形態は、デバイスに関しても同様に有効であり、その逆もまた同様である。
【0018】
実施形態の文脈において説明されている特徴は、それに対応して、他の実施形態の中の同じまたは同様の特徴に適用可能であり得る。実施形態の文脈において説明されている特徴は、これらの他の実施形態の中で明示的に説明されていない場合でも、それに対応して、他の実施形態に適用可能であり得る。そのうえ、実施形態の文脈における特徴に関してせつめいされているような追加および/または組み合わせおよび/または代替は、それに対応して、他の実施形態の中の同じまたは同様の特徴に適用可能であり得る。
【0019】
さまざまな実施形態の文脈において、特徴またはエレメントに関して使用されているような「a」、「an」、および「the」という冠詞は、特徴またはエレメントの1つまたは複数への言及を含む。
【0020】
さまざまな実施形態の文脈において、「少なくとも実質的に」という語句は、「正確に」および合理的な分散を含むことが可能である。
【0021】
さまざまな実施形態の文脈において、数値に適用されるような「約」または「おおよそ」という用語は、正確な値および合理的な分散を包含することが可能である。
【0022】
本明細書で使用されているように、「および/または」という用語は、関連の列挙されているアイテムのうちの1つまたは複数の任意のおよびすべての組み合わせを含む。
【0023】
本明細書で使用されているように、「AまたはBの少なくとも1つ」の形態の語句は、AもしくはB、または、AおよびBの両方を含むことが可能である。それに対応して、「AまたはBまたはCの少なくとも1つ」の形態の語句、または、さらに列挙されているアイテムを含むことは、関連の列挙されているアイテムのうちの1つまたは複数の任意のおよびすべての組み合わせを含む。
【0024】
さまざまな実施形態は、海運業に関連する水中船体クリーニングに関する。より具体的には、船舶の船体の遠隔制御水中クリーニングのためのシステムおよび装置;ならびに、船舶の船体を水中クリーニングする方法が説明されている。
【0025】
さまざまな実施形態が、表面トルク制御船体クリーニング・マシンによる遠隔制御再生を提供することが可能である。
【0026】
さまざまな実施形態において、水中船体クリーニング・マシンが提供される。水中船体クリーニング・マシンは、船の船体、バージ、石油掘削プラットフォーム、および/または半潜水型の船体をクリーニングするために使用され得る。
【0027】
図1Aは、さまざまな実施形態による水中船体クリーニング・マシン100の概略表現図を示している。
【0028】
図1Aにおいて、水中船体クリーニング・マシン100は、クリーニングされることとなる外部表面の少なくとも一部に面して配置されるように適合されているベース領域104を含むハウジング102と;ハウジング102に連結されているガイディング・メカニズム106であって、ガイディング・メカニズム106は、水中船体クリーニング・マシン100が外部表面に沿って操縦されることを可能にするように構成されている、ガイディング・メカニズム106と;伸長位置と後退位置との間で移動するように構成されている少なくとも1つのブラシ108とを含み、伸長位置では、少なくとも1つのブラシ108は、ベース領域104に向けて下向きに伸長させられ、外部表面の少なくとも一部と接触した状態になるようになっており、また、後退位置では、少なくとも1つのブラシ108は、ベース領域104から離れるように上向きに移動させられ、外部表面との接触がない状態になっている。
【0029】
少なくとも1つのブラシ108は、点線110によって示されているように、ベース領域104に対して異なる位置に伸長可能であり得る。ガイディング・メカニズム106は、実線112によって示されているように少なくとも1つのブラシ108とともに働き、表面トルク制御を伴うクリーニングを可能にする。
【0030】
さまざまな実施形態の文脈において、「少なくとも1つのブラシが、ベース領域に向けて下向きに伸長させられる」という語句は、「少なくとも1つのブラシが、ベース領域に向かう方向に下向きに伸長させられる」ということを意味しており、「少なくとも1つのブラシが、ベース領域から離れるように上向きに移動させられる」という語句は、「少なくとも1つのブラシが、ベース領域から離れる方向に上向きに移動させられる」ということを意味している。
【0031】
換言すれば、水中船体クリーニング・マシン100は、ハウジング102を含み、ハウジング102は、少なくとも1つのブラシ108およびガイディング・メカニズム106を収容するかまたは保持している。たとえば、ガイディング・メカニズム106は、ハウジング102に連結され得り、また、クリーニングされることとなる外部表面に沿って水中船体クリーニング・マシン100を移動させるように構成され得る。ガイディング・メカニズム106は、オペレーターまたはユーザーによって操作可能であり得る。ガイディング・メカニズム106は、クリーニングされることとなる外部表面に沿った水中船体クリーニング・マシン100の移動を促進させるかまたは引き起こすことが可能である。少なくとも1つのブラシ108は、クリーニングされることとなる外部表面の上の圧力接触を制御するために、上昇させられるかまたは低下させられ得る。代替的にまたは加えて、水中船体クリーニング・マシン100は、また、クリーニングされることとなる外部表面の上の少なくとも1つのブラシ108の圧力接触を制御する様式で操縦され得る。
【0032】
ベース領域104は、ベース・プレートを含むことが可能である。スカーティングが、ベース・プレートの外部表面に連結され得り、そこから外向きに延在している。換言すれば、スカーティングの一方の端部または縁部は、ベース・プレートに取り付けられ得り、一方、取り付けられた端部または縁部とは反対側の、スカーティングの遠位端部または縁部は、ベース領域104の周辺端部を形成することが可能である。スカーティングは、少なくとも1つのブラシを取り囲むように配置され得る。さまざまな実施形態において、スカーティングは、ポリマー、たとえば、軟質シリコンまたはゴムから作製され得る。スカーティングは、有利には、境界を形成し、クリーニング・プロセスの間に外部表面から除去されている海洋生物および/または他の海洋汚染物質が水中船体クリーニング・マシン100によって寄せ集められて効果的に収集されることを可能にする。また、スカーティングは、直接的な接触の回避、および/または、ハウジング102とクリーニングされることとなる外部表面との間の接触のクッション効果を提供することが可能である。これは、ハウジング102が金属などのような剛体材料から作製され得るとき、そのような直接的な接触が、外部表面および/または水中船体クリーニング・マシン100への望ましくない損傷を結果として生じさせる可能性があるからである。
【0033】
伸長位置において、少なくとも1つのブラシ108は、ベース領域104の周辺端部を越えて延在または突出することが可能である。周辺端部は、水中船体クリーニング・マシン100が動作中であるときにクリーニングされることとなる外部表面に面するベース領域104のパーツである。たとえば、外部表面は、船舶の船体の表面であるか、船体表面であるか、または、船の船体の一部であることが可能である。
【0034】
後退位置において、少なくとも1つのブラシ108は、ベース領域104の周辺端部を上回って後退することが可能であり、スカーティングまたはハウジング102の中に実質的に含有され得る。
【0035】
水中船体クリーニング・マシン100は、モーターを含むことが可能であり、モーターは、伸長位置と後退位置との間で少なくとも1つのブラシ108を駆動するように構成されている。
【0036】
さまざまな実施形態において、水中船体クリーニング・マシン100は、スカーティングの境界の中に、ベース・プレートの外部表面に連結されているホイールをさらに含むことが可能である。いくつかの実施形態では、3つのホイールが用いられ得り、ここで、それぞれのホイールは、互いに間隔を離して配置されている。ホイールは、スカーティングに極めて近接して位置決めされ得り、スペーサーとして作用し、スカーティングがつぶれることを最小化するかまたは防止するようになっている。ホイールは、複数の方向に振動すること可能であり得り、ホイールがベース領域104の周辺端部の中に実質的に維持され得るような様式で寸法決めされ得る。換言すれば、一般的に、ホイールは、周辺端部を越えて突出していなくてもよい。ホイールは、水中船体クリーニング・マシン100が使用されているときに、クリーニングされることとなる外部表面と接触した状態になっていることが可能である。さまざまな実施形態において、ホイールは、外部表面に沿って転がることが可能であり、水中船体クリーニング・マシン100が移動することができるようになっており、または、外部表面の上の1つの位置から外部表面の上の別の位置へ操縦され得るようになっている。たとえば、モーターは、ホイールを駆動するために提供され得る。
【0037】
さまざまな実施形態において、ガイディング・メカニズム106は、複数のベクタード・スラスターを含むことが可能であり、複数のベクタード・スラスターは、互いに間隔を離して配置されており、また、クリーニングされることとなる外部表面に対して実質的に平行の平面に沿って、異なる方向への水中船体クリーニング・マシン100操縦性を提供する様式で配置されている。1つの実施形態では、ガイディング・メカニズム106は、少なくとも4つのベクタード・スラスターを含むことが可能である。異なる方向は、左方向、右方向、前方方向、後方方向、または斜め方向を含むことが可能である。また、ベクタード・スラスターは、水中船体クリーニング・マシン100が水中船体クリーニング・マシン100の長手方向軸線または緯度軸線の周りにチルトすることを可能にすることができ、それによって、水中船体クリーニング・マシン100の揺動移動を可能にする。事実上、ベクタード・スラスターは、水中船体クリーニング・マシン100の360°回転を可能にする。
【0038】
さまざまな実施形態において、ガイディング・メカニズム106は、垂直スラスターを含むことが可能であり、垂直スラスターは、外部表面から離れるように上向き方向への、または、外部表面に向かう下向き方向への、水中船体クリーニング・マシン100の操縦性を提供するように構成されている。1つの実施形態では、ガイディング・メカニズム106は、少なくとも4つの垂直スラスターを含むことが可能である。いくつかの実施形態では、ガイディング・メカニズム106は、ホイール、少なくとも4つのベクタード・スラスター、もしくは少なくとも4つの垂直スラスター、または、それらの任意の組み合わせを含むことが可能である。水中船体クリーニング・マシン100は、スラスターおよびホイールによって容易におよびより自由に移動するように許容され得る。
【0039】
ベクタード・スラスターおよび垂直スラスターは、推力メカニズムを提供することが可能であり、推力メカニズムは、水中船体クリーニング・マシン100によって経験されるドリフトに対抗する力を提供するように配置されており、少なくとも1つのブラシ108が後退位置にある状態で、水中船体クリーニング・マシン100が外部表面に沿って移動し続けることができるようになっている。力は、推進力であることが可能である。換言すれば、推力メカニズムは、クリーニング・マシン100を外部表面の実質的に近くに維持し、少なくとも1つのブラシ108が後退位置にあるときに、ガイディング・メカニズム106を介して外部表面に沿って移動するように活性化され得る。ホイール(たとえば、3ホイール構成で配置されている)は、スペーサーとして作用し、水中船体クリーニング・マシン100と外部表面との間にクリアランスを提供することが可能であり、マシン100が推力メカニズムによって外部表面の中へクラッシュすることを防止するようになっている。これは、制御された継続的なクリーニング・プロセスが実施されることを可能にすることができる。スラスターは、たとえば、水中船体クリーニング・マシン100の周辺に沿って位置決めされ得る。
【0040】
さまざまな実施形態において、ガイディング・メカニズム106は、ジャイロ・センサーを含むことが可能であり、ジャイロ・センサーは、水中船体クリーニング・マシン100が向かっている方向、外部表面に対する水中船体クリーニング・マシン100の位置、水中船体クリーニング・マシン100のピッチ、または、水中船体クリーニング・マシン100のロールのうちの少なくとも1つを確認するように構成されている。換言すれば、ジャイロ・センサー(または、ジャイロ・センサー・メカニズムとも称される)は、マシン方位の位置、ピッチ、およびロールを確認することが可能であり、それは、クリーニング・マシン100が船舶/船を水中でクリーニングするために展開されているときに、オペレーターがクリーニング・マシン100の正確な位置を知ることを可能にする。
【0041】
さまざまな実施形態において、水中船体クリーニング・マシン100は、さらなるブラシをさらに含むことが可能であり、さらなるブラシは、伸長位置と後退位置との間で移動するように構成されており、伸長位置において、さらなるブラシは、ベース領域104に向けて下向きに伸長させられ、外部表面の少なくとも一部と接触した状態になっており、後退位置において、さらなるブラシは、ベース領域104から離れるように上向きに移動させられ、外部表面との接触がない状態になっている。
【0042】
いくつかの実施形態では、さらなるブラシは、少なくとも1つのブラシ108に隣接して位置決めまたは位置付けされ得る。たとえば、ガイディング・メカニズム106またはホイールは、少なくとも1つのブラシ108とさらなるブラシとの間に位置決めされ得る。
【0043】
1つの実施形態では、少なくとも1つのブラシ108およびさらなるブラシは、互いに同期して伸長位置と後退位置との間で移動するように構成され得る。
【0044】
別の実施形態では、少なくとも1つのブラシ108およびさらなるブラシは、互いに対して非同期的に伸長位置と後退位置との間で移動するように構成され得る。換言すれば、少なくとも1つのブラシ108およびさらなるブラシの移動は、互いに独立していることが可能である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのブラシ108は、追加的に、さらなるブラシを指すことも可能である。
【0045】
さまざまな実施形態において、水中船体クリーニング・マシン100は、圧力ゲージをさらに含むことが可能であり、圧力ゲージは、少なくとも1つのブラシ108の表面トルクに応答して外部表面に印加されている力の量を検出するように構成されている。たとえば、力の量が所定のレベルよりも大きくなることを圧力ゲージが検出するときには、水中船体クリーニング・マシン100は、その位置の観点から調節され得り、および/または、少なくとも1つのブラシ108は、その伸長位置および/または回転速度の観点から調節され、表面トルク制御を提供することが可能であり、それによって、十分なクリーニングを維持しながら、クリーニングされることとなる外部表面に対する損傷の可能性を低減させる。
【0046】
さまざまな実施形態において、水中船体クリーニング・マシン100は、カメラをさらに含むことが可能であり、カメラは、外部表面またはその一部のリアルタイム画像をキャプチャーするように構成されている。カメラは、異なるタイプの画像、たとえば、0mから約20mの範囲にある距離の全体図および拡大図において水中船体クリーニング・マシン100の周辺から離れて位置付けされている外部表面の一部またはエリアの画像をキャプチャーするために調節可能であり得る。また、カメラは、クローズ・アップ画像またはズーム・インされた画像、および、遠く離れた画像またはズーム・アウトされた画像をキャプチャーするために調節可能であり得る。
【0047】
1つまたは複数のリアルタイム画像が、モニターの上に表示され得る。モニターは、クリーニング・マシン100に対して遠隔に配置され得る。たとえば、モニターは、サービス船舶の上に配置され得る。1つまたは複数のリアルタイム画像は、水中船体クリーニング・マシン100を遠隔から制御することができるオペレーターに情報を提供することが可能である。情報は、たとえば、外部表面またはその一部が海洋生物によって汚されているかどうかということを含むことが可能である。
【0048】
換言すれば、リアルタイム画像は、外部表面の汚れ条件がオペレーターによって可視化されることを可能にすることができ、オペレーターは、少なくとも1つのブラシ108の上昇および低下を遠隔から制御することが可能である。たとえば、オペレーターがカメラを通して外部表面の上の汚れ条件を観察するときには、少なくとも1つのブラシ108(たとえば、3つのブラシ)が、クリーニングのために表面トルク制御によって低下させられ得る。逆に、オペレーターがカメラを通して外部表面の上に海洋生物付着がないことを観察するときには、少なくとも1つのブラシ108(たとえば、3つのブラシ)は、船体の防汚コーティングの上に表面接触を有さないように上昇させられ得り、それによって、汚れのない表面の上にクリーニングが実施されない。このように、オペレーターは、海洋生物付着を伴う特定の汚されたエリアのみにクリーニングが実施されることを決定および決断することができる。また、オペレーターは、表面トルク制御によって、船のコーティングに損傷を与えることなく表面をクリーニングするために、どのくらい大きい表面接触圧力が適用されるべきかということをその場で決断することができる。
【0049】
クリーニングの間にキャプチャーされる残留物および有害な海洋生物は、従来の方法を使用して行われているような、海の中へ排出される代わりに、環境に優しい様式で廃棄され得る。
【0050】
たとえば、水中船体クリーニング・マシン100は、水中ポンプをさらに含むことが可能であり、水中ポンプは、海洋生物がポンプ・メカニズムを通過するときに、船体の表面から除去された海洋生物を殺すように構成されている。海洋生物は、水中船体クリーニング・マシン100によって実施されるクリーニング・プロセスの間に除去され得る。
【0051】
さまざまな実施形態において、水中船体クリーニング・マシン100は、ポンプをさらに含むことが可能であり、ポンプは、外部表面から除去された海洋生物を含む懸濁液を外部濾過システムへ移送するように構成されている。たとえば、ポンプは、除去された海洋生物を外部タンクの中へ移送するように構成され得る。ポンプおよび外部タンクは、導管を介して互いに連結され得る。外部タンクは、サービス用船舶に搭載されて位置付けされ得る濾過タンクを指すことが可能である。
【0052】
いくつかの例では、ポンプは、水中ポンプを含むことが可能である。他の例では、ポンプおよび水中ポンプは、ユニタリー・デバイスを形成することが可能である。
【0053】
図1Bは、さまざまな実施形態による船体クリーニング・システム120の概略表現図を示している。
【0054】
図1Bにおいて、船体クリーニング・システム120は、さまざまな実施形態による水中船体クリーニング・マシン100と;水中船体クリーニング・マシン100によって除去される海洋生物および/または汚染物質を受け入れるように配置されているタンク122とを含む。タンク122および水中船体クリーニング・マシン100は、線130によって示されているように、互いに流体連通していることが可能である。
【0055】
タンク122は、水中船体クリーニング・マシン100から遠隔に位置付けされ得る。たとえば、タンク122は、サービス用船舶(または、相互交換可能にサービス船舶と称される)の上に位置付けされ得り、水中船体クリーニング・マシン100は、サービス用船舶から展開され得る。タンク122は、上記に説明されている外部タンクまたは濾過タンクを指すことが可能である。また、水中船体クリーニング・マシン100を制御するオペレーターは、サービス用船舶の中または上に配備され得る。
【0056】
船体クリーニング・システム120は、濾過システムをさらに含むことが可能であり、濾過システムは、水中船体クリーニング・マシン100のポンプを通して移送された懸濁液から、海洋生物および/または汚染物質および海水を分離するように構成されている。懸濁液から分離された海水は、海/海洋に戻され得り、一方、懸濁液から分離された海洋生物および/または汚染物質は、タンク122の中に保持され得る。
【0057】
換言すれば、さまざまな実施形態によれば、船体クリーニング・システム120は、再生船体クリーニング・システムを提供することが可能であり、再生船体クリーニング・システムは、海洋動物(または、海洋生物)が殺されること/再生されることを可能にすることによって、ならびに、他の汚染物質がポンプを通して再生されることおよび濾過システムを通して濾過されることを可能にすることによって、環境に優しくなっており、濾過システムでは、他の汚染物質とともに、船からクリーニングされた海洋生物付着が、タンク122の中に捕捉/保持され得る。汚染物質のいくつかの例は、バクテリアおよび珪藻などのような、海洋微生物を含むことが可能である。
【0058】
濾過システムは、水中船体クリーニング・マシン100から遠隔に位置付けされ得る。たとえば、濾過システムは、サービス用船舶の上に位置付けされ得る。濾過システムは、上記に説明されている外部濾過システムを指すことが可能である。
【0059】
図1Cは、さまざまな実施形態による、船または船舶の船体をクリーニングする方法を図示するフロー・チャートを示している。
【0060】
図1Cにおいて、船舶140の船体をクリーニングするための方法が提供されている。142において、水中船体クリーニング・マシン(たとえば、100)が、船体の表面に展開され得る。144において、表面の一部のリアルタイム画像が、表面の一部がクリーニングされるべきであるかどうかを決定するために(たとえば、カメラまたはCCTVによって)キャプチャーされ得る。146において、表面の一部がクリーニングされるべきであるということが決定される場合には、水中船体クリーニング・マシン100の少なくとも1つのブラシ(たとえば、108)が、伸長位置に低下させられ得る。伸長位置において、少なくとも1つのブラシ108は、水中船体クリーニング・マシン100のベース領域(たとえば、104)に向けて下向きに延在することが可能であり、表面の一部と接触していることが可能である。148において、表面の一部がクリーニングされるべきではないということが決定される場合には、少なくとも1つのブラシ108は、後退位置に上昇させられ得る。後退位置において、少なくとも1つのブラシ108は、ベース領域104から離れるように上向きに移動することが可能であり、表面との接触がない状態になることが可能である。
【0061】
オペレーターは、表面の一部がクリーニングされるべきであるか、または、表面の一部がクリーニングされるべきではないかということを決定することが可能である。これは、表面を汚している海洋生物が存在しているかどうか、または、表面の上の汚れのレベル/程度に依存し得る。
【0062】
さまざまな実施形態において、方法140は、船体の表面の一部から海洋生物および/または汚染物質をクリーニングおよび除去するために伸長位置にあるときに、少なくとも1つのブラシ108を活性化させるステップをさらに含むことが可能である。換言すれば、少なくとも1つのブラシ108は、クリーニング作用を実施するために軸線方向に回転するように活性化され得る。
【0063】
さまざまな実施形態において、方法140は、船体の表面の一部から表面の別の一部へ水中船体クリーニング・マシン100を操縦するステップをさらに含むことが可能である。
【0064】
たとえば、少なくとも1つのブラシ108は、2つ以上のブラシを含むことが可能である。2つ以上のブラシが活性化されているときには、ブラシの回転速度は、真空がそれらの間に形成されることを引き起こすのに十分に高くなっていることが可能である。真空は、吸い込み能力を可能にし、吸い込み能力は、垂直スラスターが非活性化されているときでも、水中船体クリーニング・マシン100が外部表面の上にホバリングすることまたは外部表面の上に保持することを可能にする。したがって、垂直スラスターは、ブラシが使用中でないときのみに活性化され得り、たとえば、外部表面の特定の一部のクリーニングに対する必要性が存在しないときのみに活性化され得り、水中船体クリーニング・マシン100が外部表面の上にホバリングすることおよびクリーニングが再開するために別の一部へ移動することを可能にするようになっている。
【0065】
方法140は、再生のために、除去された海洋生物および/または汚染物質を収集するステップをさらに含むことが可能である。たとえば、除去された海洋生物および/または汚染物質を収集するステップは、除去された海洋生物および/または汚染物質を再生のためのタンクへ移送および濾過するステップを含むことが可能である。タンクは、船体クリーニング・システム120のタンク(たとえば、122)を指すことが可能である。
【0066】
上記に説明されている方法は、一連のステップまたはイベントとして図示および説明されているが、そのようなステップまたはイベントの任意の順序付けは、限定的な意味で解釈されるべきではないということが認識されることとなる。たとえば、いくつかのステップは、異なる順序で起こることが可能であり、ならびに/または、本明細書で図示および/もしくは説明されているものとは別の他のステップもしくはイベントと同時に起こることが可能である。加えて、すべての図示されているステップが、本明細書で説明されている1つまたは複数の態様または実施形態を実装するために必要とされ得るわけではない。また、本明細書で説明されているステップのうちの1つまたは複数は、1つまたは複数の別個の行為および/または局面において実施され得る。
【0067】
さまざまな実施形態による、船または船舶の船体をクリーニングする方法が、以下の通りに詳細に説明されることとなる。
【0068】
図2Aは、1つの実施形態による、船の船体260およびサービス船舶262(水中船体クリーニング・マシン200がそこから展開される)のサイド(ポート)図を図示する概略図面を示している。
【0069】
図2Aにおいて、サービス船舶262は、船の船体260の傍に配置されている。サービス船舶262は、さまざまな実施形態による船体クリーニング・システムを提供することが可能である。水中船体クリーニング・マシン200(図2Aには示されていない)は、サービス船舶262のデッキの上に設置され得り、船体260をクリーニングするために海面264よりも低い位置での展開を待っている。
【0070】
図2Bは、1つの実施形態による、展開の準備ができている水中船体クリーニング・マシン200の例を示す写真斜視図を示している。
【0071】
水中船体クリーニング・マシン200は、図1Aおよび図1Bの水中船体クリーニング・マシン100と同様の文脈において説明され得る。
【0072】
より具体的には、水中船体クリーニング・マシン200は、図1Aの水中船体クリーニング・マシン100のものと同じまたは同様のエレメントまたはコンポーネントを含むことが可能であり、そうであるので、同じ終了数字が割り当てられており、同様のエレメントは、図1Aの水中船体クリーニング・マシン100の文脈において説明されているようなものであることが可能であり、したがって、対応する説明は、ここでは省略されている。
【0073】
図2Bに示されているように、導管280が、水中船体クリーニング・マシン200とサービス船舶262との間に連結または接続され得り、クリーニング・プロセスから除去された海洋生物が、サービス船舶262の上に提供されているタンクの中へ移送されることを可能にする。接続スリーブ(または、テザー)282が、水中船体クリーニング・マシン200とサービス船舶262との間に連結または接続されており、電気配線を含有する(または、保持する)ことが可能である。電気配線は、水中船体クリーニング・マシン200の電気的なコンポーネントおよび電子機器コンポーネントを電源または電子デバイス(図には示されていない)に接続するために必要とされ得る。
【0074】
たとえば、電気的なコンポーネントは、上記に説明されているように、ポンプ、ブラシ、または、ブラシのモーター・ドライバー、ホイールのためのモーター・ドライバー、カメラ、または推力メカニズムを含むことが可能である。電子デバイスは、たとえば、モニター(カメラがそれに接続されている)、ブラシまたはそのモーター・ドライバーのためのコントローラー、推力メカニズムのためのコントローラー、または、ホイールのためのモーター・ドライバーを作動させるコントローラーを含むことが可能である。電源は、dc(直流電流)供給部および/またはac(交流電流)供給部を含むことが可能である。
【0075】
図2Cは、1つの実施形態による、海の中へ展開されている図2Bの例示的な水中船体クリーニング・マシン200を示す写真斜視図を示している。図2Cにおいて、水中船体クリーニング・マシン200は、クレーンまたはランチ・アンド・リカバリー・システム(LARS)(図に示されてはいない)に連結されているサスペンション・ケーブル284によって海の中へ低下させられており、クレーンまたはランチ・アンド・リカバリー・システム(LARS)は、サービス船舶262によって提供され得る。
【0076】
図2Dは、船の船体のサイド(ポート)図を図示する概略図面を示しており、そこでは、水中船体クリーニング・マシン200は、海面264の下の所望のレベルに低下させられ、船体260の一方の端部においてクリーニングされることとなる表面に到達することが可能である。
【0077】
汚れまたは生物付着が、(図2Dの中の塗り潰された影付きのエリア286によって示されているような)船体260の表面の上に観察されるときには、水中船体クリーニング・マシン200の1つまたは複数のブラシ(たとえば、108)が、伸長位置に低下させられ得り、それによって、クリーニングされることとなる表面との接触を有する。クリーニングは、本明細書で説明されているように、表面トルク制御を使用して進められ得る。クリーニング・プロセスの間に、水中船体クリーニング・マシン200は、ガイディング・メカニズム(または、ホイール)(たとえば、106)を介して、表面の異なる一部へ横方向に移動することが可能である。
【0078】
図2Eは、船の船体のサイド(ポート)図を図示する概略図面を示しており、そこでは、水中船体クリーニング・マシン200が、表面の異なる一部へ移動している。
【0079】
汚れが、(図2Eの中の線による影付きのエリア288に示されているような)表面のこの異なる一部の上に観察されないときには、水中船体クリーニング・マシン200の1つまたは複数のブラシ(たとえば、108)は、後退位置に上昇させられ得り、それによって、(図2Eに示されているように)汚れのない表面との接触がない状態になる。このように、クリーニングは、汚れのない表面の上で実施されないことが可能である。
【0080】
水中船体クリーニング・マシン200は、汚れのない表面のこの異なる一部に沿って、ホイール(たとえば、106)を介して横方向に移動し続けることが可能である。後続の表面の一部が汚れを伴って観察されるときには、水中船体クリーニング・マシン200の1つまたは複数のブラシ(たとえば、108)が、クリーニングを実施するための伸長位置に再度低下させられ得る。これは、水中船体クリーニング・マシン200が船体260の反対側端部に到達するまで繰り返すことが可能である。その後、水中船体クリーニング・マシン200は、海面264の下のより深いレベルに持って行かれ得り、水中船体クリーニング・マシン200は、表面トルク制御によってクリーニング・プロセスを実行しながら、船体260の反対側端部から船体260の初期端部へ横方向に移動することが可能である。
【0081】
船体260のベースの少なくとも一部がクリーニングされているときには、水中船体クリーニング・マシン200は、クリーニングのために船体260の他方のサイド(スターボード)に持って行かれ得る。いくつかの例では、水中船体クリーニング・マシン200は、サービス船舶262のデッキの上に回収して戻され得り、サービス船舶262は、船体260のスターボード・サイドに移動し、表面トルク制御によってスターボード・サイドにおける表面をクリーニングするために、水中船体クリーニング・マシン200を再び展開させることが可能である。それを行うことによって、水中船体クリーニング・マシン200は、かなりの長さの接続スリーブ282および/または導管280を提供する必要性を有することなく、サービス船舶262に対してかなり近くに維持され得る。
【0082】
船体260のポート・サイドの実質的に全体が選択的にクリーニングされているときには、水中船体クリーニング・マシン200は、表面トルク制御によるクリーニングのために、船体260のベース(または、平坦部)に持って行かれ得る。図2Fは、船体260の底面図を図示する概略図面を示している。図2Fにおいて、水中船体クリーニング・マシン200の1つまたは複数のブラシ(たとえば、108)は、伸長位置に低下させられ得り、それによって、(船体260のベースにおける)クリーニングされることとなる汚れた表面286との接触を有する。次いで、水中船体クリーニング・マシン200の1つまたは複数のブラシ(たとえば、108)は、船体260のベースにおける汚れのない表面288に到達されたときに、後退位置に上昇させられ得る。
【0083】
図2Gは、船の船体のサイド(スターボード)図を図示する概略図面を示しており、そこでは、水中船体クリーニング・マシン200が、海面264の下の所望のレベルに低下させられ、船体260の一方の端部においてクリーニングされることとなる表面に到達することが可能である。船体260のスターボード・サイドのためのクリーニング・プロセスは、船体260のポート・サイドに関するものと同様の文脈において説明され得る。
【0084】
船体260の表面から除去された海洋生物は、水中船体クリーニング・マシン200のポンプによって再生され得る/殺され得る。これらの海洋生物は、導管280を介して濾過システム(たとえば、濾過システムは、サービス船舶262の上に提供され得る)に移送され、海水から濾過され、タンク(たとえば、タンクも、サービス船舶262の上に提供され得る)の中に貯蔵され得る。次いで、濾過された海水は、海の中へ戻され、それによって、環境に優しいクリーニング動作を提供することが可能である。
【0085】
クリーニングされることとなるその船体260を有する船が、たとえば、積み込み動作または積み下ろし動作のために、または、停泊地において、横付けして停泊している間に、クリーニング動作が実施され得るということが理解および認識されるべきである。さらに、クリーニング動作はダイバーの介入を必要としないので、人命へのリスクが完全に排除される。ダイバーレス・クリーニング動作は、有利には、水中船体クリーニングのための望ましい安全な環境を提供する。
【0086】
また、さまざまな実施形態による船体クリーニング・システムおよび/または水中船体クリーニング・マシンの概念は、表面トルク制御による選択的なクリーニングおよび/または再生/濾過システムを伴う、待望の技術的解決策を提供するトータル・パッケージであるということも認識されるべきである。
【0087】
さまざまな実施形態による水中船体クリーニング・マシン(たとえば、100、200)および表面トルク制御の詳細が、以下の通りに説明されることとなる。
【0088】
使用中のときに、水中船体クリーニング・マシン(たとえば、100)のベース領域(たとえば、104)は、外部表面(たとえば、船体260)の実質的に近くに配置され得るか、または、外部表面の少なくとも一部と接触した状態に配置され得る。
【0089】
図3Aから図3Dは、異なる過程における側面図から見たアニメーション化されたシミュレーションのスナップショットを示しており、さまざまな実施形態による、矢印350によって示されているような前方方向への、外部表面360(たとえば、船体260またはその一部)に対する水中船体クリーニング・マシン(たとえば、100)の少なくとも1つのブラシ(たとえば、108)の移動を図示している。
【0090】
図3Aにおいて、ブラシ108は、後退位置にあり、表面360との接触がない状態になっている。ブラシ108は、0mの変形を経験することが可能である。次いで、ブラシ108は、表面360に向けて方向350に移動させられ得る。ブラシ108がちょうど表面360に触れているときには、ブラシ108は、図3Bに示されているように、約0.03mの変形を経験することが可能である。ブラシ108は、方向350にさらに移動することが可能であり、図3Cに示されているように、約0.04mのさらなる変形を経験することが可能である。徹底的なまたは念入りのクリーニング目的のために表面360との最大接触を可能にするために、ブラシ108は、図3Dに示されているように、約0.05m変形を伴って方向350に移動することが可能である。換言すれば、ブラシ108は、方向350に沿って調節され、表面360の上に異なる接触圧力を提供することが可能である。ブラシ108は、方向350に移動するときに軸線方向に回転することが可能であり、表面360のクリーニングを可能にする。表面360の上のブラシ108の異なる接触圧力は、異なるレベルまたは程度のクリーニングに変換することが可能である。たとえば、より低い接触圧力は、軽度に汚された表面のための軽いクリーニングに関係する可能性があり、より高い接触圧力は、重度に汚された表面の念入りのまたは激しいクリーニングに関係する可能性がある。
【0091】
図3Eは、図3Dの斜視図を示している。
【0092】
クリーニング・マシンのブラシ108が(たとえば、図3Bから図3Dのうちのいずれか1つに示されているように)伸長位置にあるときには、ブラシ108は、また、矢印352によって示されているように横方向にも移動させられ、表面360の別のパーツをクリーニングすることが可能である。ブラシ108は、クリーニング・マシンのガイディング・メカニズム(たとえば、106)によって促進されるように、横方向に移動させられ得る。
【0093】
ブラシ108が横方向に移動している間に、ブラシ108は、一定の伸長位置のままになっていることが可能であり、または、伸長位置のさまざまな伸長レベルに調節され得る。
【0094】
図4Aおよび図4Bは、異なる過程における側面図から見たアニメーション化されたシミュレーションのスナップショットを示しており、1つの実施形態による、矢印450によって示されているように逆の方向への、外部表面360に対する少なくとも1つのブラシ108の移動を図示している。
【0095】
表面360の一部がクリーニングされることとならないときには、ブラシ108は、(図4Aに示されているような)伸長位置から(図4Bに示されているような)後退位置へ移動させられ得る。後退位置にあるときには、ブラシ108は、任意のクリーニングを実施することができず、また、クリーニング・マシンのガイディング・メカニズムによって促進されるように、横方向に(たとえば、方向352に)移動し続け、必要とされる場合に、クリーニングのために後続の表面360の一部に到達することが可能である。
【0096】
また、ブラシ108の横方向移動は、方向352とは反対側にも制御され得る。このように、ブラシ108は、たとえば、そのクリーニング経路を引き返すことを許容され得る。
【0097】
図5Aは、1つの実施形態による、伸長位置における2つのブラシ508a、508bを含む例示的な水中船体クリーニング・マシン500の側断面図を図示する概略図面を示している。図5Bは、1つの実施形態による、ブラシ508a、508bが後退位置にある状態の図5Aの水中船体クリーニング・マシン500の側断面図を図示する概略図面を示している。
【0098】
水中船体クリーニング・マシン500は、ハウジング502を含むことが可能であり、ハウジング502は、ブラシ508a、508bおよびホイール506を保持または収容している。
【0099】
水中船体クリーニング・マシン500は、図1Aの水中船体クリーニング・マシン100;図2Bから図2Gの水中船体クリーニング・マシン200のものと同じまたは同様のエレメントまたはコンポーネントを含むことが可能であり、そうであるので、同じ終了数字が割り当てられており、同様のエレメントは、図1Aの水中船体クリーニング・マシン100;図2Bから図2Gの水中船体クリーニング・マシン200の文脈において説明されているようなものであることが可能であり、したがって、対応する説明は、ここでは省略されている。
【0100】
図5Aにおいて、水中船体クリーニング・マシン500のブラシ508a、508bは、クリーニング・マシン500のベース領域504に向けて低下させられ、表面560(たとえば、防汚コーティングを備えた船体の一部)と接触した状態になり、表面560が海洋生物によって汚されている場合には、表面560をクリーニングする。このケースでは、ブラシ508a、508bは、伸長位置にあることが可能である。クリーニング・マシン500の推力メカニズム(図5Aには示されていない)およびホイール506は、クリーニング・マシン500が表面560に沿って移動し、クリーニングされることとなる船体のさまざまなまたはすべてのパーツに到達することを可能にする。
【0101】
クリーニング・マシン500が、たとえば(図5Bに示されているように)汚れのない表面560に到達するときに、ブラシ508a、508bは、ベース領域504から離れるように上昇させられ、(たとえば、汚れのない)表面560との接触がない状態になる。このケースでは、ブラシ508a、508bは、後退位置にあることが可能である。
【0102】
いくつかの例では、ブラシ508a、508bは、独立して制御され得る。他の例では、ブラシ508a、508bは、連動した様式で制御され得る。
【0103】
図5Aおよび図5Bにおいて、ベース領域504は、表面560の少なくとも一部と接触した状態になっていることが可能である。他の実施形態では、ハウジング502が表面560と直接的に接触した状態になることなく、ベース領域504は、表面560またはその一部の実質的に近くに配置され得るということが認識および理解されるべきである。
【0104】
図5Cは、1つの実施形態による、ブラシ508a、508bが伸長位置にあり表面560の実質的に近くの場所にある状態の水中船体クリーニング・マシン500の側断面図を図示する概略図面を示している。図5Dは、1つの実施形態による、ブラシ508a、508bが後退位置にある状態の図5Cの水中船体クリーニング・マシン500の側断面図を図示する概略図面を示している。
【0105】
図5Dに示されているように、クリーニング・マシン500は、ブラシ508a、508bが後退位置にある状態であっても、表面560に沿って移動し、ホイール506を介して船体のさまざまなまたは他のパーツに到達することが可能である。本明細書で説明されているように、推力メカニズムは、クリーニング・マシン500の保持および連続的なナビゲーション能力のために使用され得る。
【0106】
図5Cにおいて、ブラシ508a、508bは、ベース領域504のベースライン(または、周辺端部)におよびそこから外へ延在し、クリーニングのために表面560またはその一部に到達することが可能である。換言すれば、ブラシ508a、508bは、伸長位置においてベース領域504のベースラインから突出することが可能である。
【0107】
表面560に印加されている表面圧力の程度またはレベルは、図3Aから図3Dと同様の文脈において説明されているように、低下させられたブラシ508a、508bの位置に依存することが可能である。異なる程度またはレベルの表面圧力が印加されることによって、クリーニングのタイプが制御され得る。たとえば、ブラシ508a、508bの変形の増加によって、激しいクリーニングが実現され得る。一方、ブラシ508a、508bの変形の減少によって、穏やかなまたは軽いクリーニングが実現され得る。クリーニングのタイプは、表面560の上の生物付着の量に基づいて適用可能であり得る。また、印加される表面圧力の異なる程度またはレベルは、代替的にまたは追加的に、クリーニング・マシン500(ひいては、ブラシ508、508b)と外部表面560との間の相対的な距離を制御するために推力メカニズムを使用して調節され得るということが認識されるべきである。
【0108】
図6Aは、1つの実施形態による、3つのブラシを有する別の例示的な水中船体クリーニング・マシン600の斜視図を示している。図6Bから図6Eは、それぞれ、図6Aの底面図(矢印6000によって示されている方向から見たとき)、前方図(矢印6002によって示されている方向から見たとき)、後方図(矢印6004によって示されているから見たとき)、およびポート(サイド)図(矢印6006によって示されている方向から見たとき)を示している。水中船体クリーニング・マシン600は、図1Aの水中船体クリーニング・マシン100と同様の文脈において説明され得る。図6Aから図6Eにおいて、水中船体クリーニング・マシン600は、ハウジング602を提供されており、3つのブラシ608a、608b、608cを含むことが可能であり、3つのブラシ608a、608b、608cは、船体クリーニング・マシン600のベース領域604に向けて、三角形のプロファイルに沿って配置されている。ベース領域604は、スカーティング605を含むことが可能であり、スカーティング605は、ベース・プレート604aの外部表面から外向きに延在している。スカーティング605は、汚れ(たとえば、船体クリーニング・プロセスの間に取得/除去される海洋生物および/または汚染物質)が海の中へ逃げるのを捕捉するために使用され得る。汚れは、吸い込み入口部624を通して収集され得り、吸い込み入口部624は、排水ポンプ(または、導管)632に連結され得る。図6Aから図6Eにおいて、3つのブラシ608a、608b、608cが後退位置にあり、スカーティング605によって形成された境界の中に囲まれている。動作しているときには、3つのブラシ608a、608b、608cは、伸長位置に移動し、スカーティング605の高さを上回って上昇し、クリーニングされることとなる外部表面(図示せず)に到達することが可能である。3つのブラシ608a、608b、608cのそれぞれは、独立して伸長または後退するように制御され得る。これは、どの時点においてもクリーニングされることとなるエリアの量の観点から柔軟性を許容する。ブラシ608a~608cは、それぞれのブラシ・ドライバー628a、628b、628cに連結され得る。ブラシ608a、608b、608cが活性化されているときに、真空が、三角形のプロファイルの領域の中に形成され得る。
【0109】
この例では、ハウジング602は、支持ビーム601によって形成された形状が実質的に長方形になっていることが可能であり、支持ビーム601は、ベース・プレート604aとカバー・プレート603との間に配置されているかまたは挟まれており、カバー・プレート603は、ベース・プレート604aとは反対側に位置決めされている。ハウジング602は、4つの角部のそれぞれにおいて、内向きに丸みを帯びたカットオフを有している。それぞれのカットオフ角部は、垂直スラスター612a~612dを収容することが可能であり、垂直スラスター612a~612dは、3つのブラシ608a、608b、608cのうちの任意の1つが後退位置にあるときに水中船体クリーニング・マシン600によって経験されるドリフトに対抗する力を提供するために使用され得る。それぞれの垂直スラスター612a~612dは、個別にまたはそれらの任意の組み合わせで動作させられ、十分な推力を提供することが可能である。垂直スラスター612a~612dは、カバー・プレート603に向けて位置決めされている。カバー・プレート603を通るオリフィス614が、導管および接続スリーブ(または、テザー)が通過することを可能にするために提供され得る。換言すれば、オリフィス614は、アクセス・ホールを指すことが可能である。導管および接続スリーブは、図2Bおよび図2Cの導管280および接続スリーブ282と同様の文脈において説明され得る。カバー・プレート603の外部表面の上には、スキッド/スタンド618a、618bが提供され得り、導管および接続スリーブのためのクリアランスを伴ってクリーニング・マシン600が着座させられることを可能にする。一方、ベース・プレート604aの外部表面の上には、ループ・ポイント622が提供され得り、サスペンション・ケーブル(たとえば、図2Bおよび図2Cの中の284)を介したマシン600のリフティングを可能にする。ループ・ポイント622は、たとえば、マシン600の重心の実質的に近くに、戦略的に位置決めされ得り、リフティング・プロセスの間にマシン600を比較的に安定した状態に維持しながら、単一ポイントのリフティングが実施され得るようになっている。マシン600は、ターミナル・ジャンクション・ボックス607をさらに含むことが可能であり、ターミナル・ジャンクション・ボックス607は、電気的なケーブル接続を囲んでいる。このターミナル・ジャンクション・ボックス607は、トップサイド表面制御室からの電力供給を受け取る。電力が受け取られると、ターミナル・ジャンクション・ボックス607は、電力および情報を制御ポッド616aに分配する。制御ポッド616aは、お返しとして、バルブパック621に信号を送り、クリーニング・マシン・コンポーネント、たとえば、ブラシ;パンおよびチルト;ブラシ・アップおよびダウン表面トルク・モーション;ジャイロ・センサー616cおよびスラスター制御ユニット616bを制御する。コンポーネントは、油圧ソフト・スタート・ブロック609c、油圧モーター609a、および、油圧補償器またはミニ補償器630によって支持され得る。メイン・リザーバー634は、油圧流体を貯蔵するために提供され得る。マシン600は、濾過システム609bをさらに含むことが可能である。コンポーネントは、ハウジング602のさまざまなパーツの中に配置されている。マシン600は、前方端部6002に向けて据え付けられたカメラ606と、後方6004に向けて据え付けられた別のカメラ(図示せず)とをさらに含むことが可能である。両方のカメラは、ベース・プレート604の内部表面に連結され得る。カメラは、回転さおよび/またはチルトさせられ、ズーム・イン/ズーム・アウト機能を備えた本質的に360度の視界を提供することが可能である。
【0110】
この例では、4つのベクタード・スラスター610a~610dはベース・プレート604aの内部表面に向けてまたはその近くに、および、ハウジング602の丸みを帯びたカットオフ角部に向けて提供されている。ベクタード・スラスター610a~610dは、ベース・プレート604aの内部表面に取り付けられ得る。ベクタード・スラスター610a~610dのそれぞれは、垂直スラスター612a~612dから所定のオフセットに位置決めされ得る。換言すれば、ベクタード・スラスター610a~610dは、垂直スラスター612a~612dのそれぞれのスラスト軌跡に沿って位置決めされてはいない。
【0111】
垂直スラスター612a~612dは、不十分な保持力(真空によって引き起こされる)が存在するときに、特に、3つのブラシ608a、608b、608cがピッチ機能およびロール機能を含む後退位置にあるときに、クリーニングされることとなる外部表面に沿って水中船体クリーニング・マシン600が移動し続けることを可能にする。ベクタード・スラスター610a~610dは、水中船体クリーニング・マシン600が、左方向/右方向に、または、前方方向/逆方向に、および左右軸の左方向/右方向に操縦することを可能にする。それぞれのスラスター・パワーは、1ユニット当たり約100Kg力であり、トップサイドからのインバーター制御を伴う約600VDCの電力定格を有している。3つのホイール(前部および後部)620a、620b、620cが、ベース・プレート604aの外部表面に連結され得り、スカーティング605の近くに、互いに間隔を離して位置決めされ得る。上記に説明されているように、ホイール620a、620b、620cは、スペーサーとして作用することが可能であり、スカーティング605がつぶれることを防止するようになっており、同時に、ホイール620a、620b、620cは回転可能になっており、それによって、クリーニング・マシン600がスラスター610a~610d、612a~612dによってより自由に操縦することを可能にする。
【0112】
クリーニング・マシン600が使用中のときには、表面接触圧力の量が、油圧システムを通して増加または減少され得る。たとえば、油圧システムは、さまざまな実施形態によれば、クリーニング・マシン100、200、500、600のハウジング(たとえば、102、502、602)の中に配設され得る。他の例では、油圧システムは、船体クリーニング・システム(たとえば、120)によって提供され得り、船体クリーニング・システムの一部は、サービス船舶(たとえば、262)の上に配設され得り、クリーニング・マシン(たとえば、100、200、500、600)は、サービス船舶から展開され得る。
【0113】
クリーニング・マシン100、200、500、600は、船体に沿って操縦されることができる遠隔動作式のクリーニング・マシンであることが可能である。上記に説明されているように、クリーニング・マシン100、200、500、600は、クリーニングされることを必要とするエリアの中においてのみクリーニングが実施されることを可能にする。換言すれば、クリーニング・マシン100、200、500、600は、選択的なクリーニングを行うことが可能であり得る。より具体的には、ブラシ108、508a、508b、608a~608cは、ベース領域(たとえば、104、504、604)から離れるように上昇させられ得り、船体表面(たとえば、260、360、560)に触れないことが可能であり、それによって、船体との不必要な表面接触を回避する。代替的に、ブラシ108、508a、508b、608a~608cは、ベース領域(たとえば、104、504、604)に向けて低下させられ得り、所定のレベルにおいて(たとえば、所定の制御表面圧力によって)船体表面(たとえば、260、360、560)に触れることが可能であり、船体のコーティング(たとえば、防汚コーティング)を損傷することなく、クリーニングが実施され得るようになっている。
【0114】
ブラシ108、508a、508b、608a~608cの回転に伴う表面接触圧力の制御された適用は、集合的に表面トルク制御と称され得る。
【0115】
従来のクリーニング・マシンとは異なり、さまざまな実施形態による水中船体クリーニング・マシンは、ブラシを上昇/低下させることが可能であり、および/または、表面トルク制御を有しており、それによって、選択的なクリーニングを提供するということが認識されるべきである。
【0116】
任意の海洋生物のない良好なコーティング表面の不必要な撹拌/再活性化/損傷/除去からの、船のオペレーターにとって有利な節減が存在することが可能である。その理由は、さまざまな実施形態によるクリーニング・マシンが、制御されたクリーニング・プロセスを可能にするからであり、制御されたクリーニング・プロセスでは、高価な防汚コーティングを除去/損傷することなく表面接触の量が制御され得る。
【0117】
本発明は、とりわけ、特定の実施形態を参照して示されて説明されてきたが、添付の特許請求の範囲によって定義されているような本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細のさまざまな変化がその中で行われ得るということが当業者によって理解されるべきである。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示されており、したがって、特許請求の範囲の均等の意味および範囲の中に入るすべての変化は、包含されることが意図されている。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E