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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】保存剤系を含むワクチン製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20230825BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230825BHJP
   A61K 39/02 20060101ALI20230825BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20230825BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230825BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230825BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
A61K39/00 G
A61K47/10
A61K39/02
A61K39/12
A61P37/04
A61P31/04
A61P31/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021503534
(86)(22)【出願日】2019-07-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 IB2019056202
(87)【国際公開番号】W WO2020021416
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-04-08
(31)【優先権主張番号】201841027285
(32)【優先日】2018-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】517176375
【氏名又は名称】バイオロジカル イー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】サンガレッディ,ベーラパンドゥ
(72)【発明者】
【氏名】ブルキ,ラジェンダー
(72)【発明者】
【氏名】スリラマン,ラジャン
(72)【発明者】
【氏名】マトゥール,ラメシュ ベンカト
(72)【発明者】
【氏名】マンテナ,ナレンダー デーブ
(72)【発明者】
【氏名】ダトラ,マヒマ
【審査官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-524320(JP,A)
【文献】特開2011-256168(JP,A)
【文献】国際公開第2018/064444(WO,A1)
【文献】特表2006-526649(JP,A)
【文献】特表2010-520874(JP,A)
【文献】International Journal of Pharmaceutics,1985年,25,245-253
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
A61K 47/00
A61P 37/04
A61P 31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1%~0.6%の範囲の濃度の2-フェノキシエタノールと、m-クレゾール、ベンジルアルコール、フェノール、及び安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種の他の保存剤とを含む保存剤系を含むワクチン製剤。
【請求項2】
m-クレゾール、ベンジルアルコール、フェノール、及び安息香酸の濃度が、0.005%~0.3%の範囲である、請求項1に記載のワクチン製剤
【請求項3】
1種又は複数の医薬的に許容できる担体を含む、請求項1に記載のワクチン製剤
【請求項4】
一価ワクチン又は多価混合ワクチンである、請求項1に記載のワクチン製剤。
【請求項5】
肺炎連鎖球菌(肺炎球菌莢膜多糖類)、髄膜炎菌(Men A、C、W-135、X、又はY)、チフス菌(Vi)、パラチフス菌(O:2)、インフルエンザ菌(Hib-PRP)、ジフテリア菌(ジフテリアトキソイド-DT)、百日咳菌(wP/aP)、破傷風菌(破傷風トキソイド)、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、不活化された日本脳炎ウイルス、狂犬病ウイルス、及び不活化されたポリオウイルスを含む群から選択されるか又は単離された抗原を含む、請求項4に記載の一価ワクチン製剤。
【請求項6】
二価ワクチン、三価ワクチン、四価ワクチン、五価ワクチン、六価ワクチン、及び肺炎球菌コンジュゲートワクチンを含む群から選択される、請求項4に記載の多価ワクチン製剤。
【請求項7】
二価ワクチンが、Tdワクチン、Vi:O2コンジュゲート、及びMRを含む群から選択され;
三価ワクチンが、DTwP、Vi:O2-HepA、及びMMRを含む群から選択され;
四価ワクチンが、DTwP-Hib、DTaP-Hib、DTwP-IPV、DTwP-HepB、ACW-135Yを含む群から選択され;
五価ワクチンが、DTwPHib-HepB及びDTaPHib-HepBを含む群から選択され;
六価ワクチンが、DTwPHib-HepB-IPV及びDTaPHib-HepB-IPVを含む群から選択される、請求項6に記載の多価ワクチン製剤。
【請求項8】
肺炎球菌コンジュゲートワクチンが、1種又は複数の肺炎球菌莢膜多糖類タンパク質コンジュゲートと、請求項1に記載の保存剤系と、任意選択の1種又は複数の医薬的に許容できる担体とを含む、請求項6に記載のワクチン製剤。
【請求項9】
肺炎球菌莢膜多糖類タンパク質コンジュゲートが、血清型1、2、3、4、5、6A、6B、6C、6D、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15A、15B、15C、16F、17F、18C、19F、19A、20A、20B、22F、23A、23B、23F、24B、24F、31、33F、34、35B、35F、38、39、及び45を含む群から選択される肺炎連鎖球菌莢膜多糖類を含み;
各多糖類は、PsaA、CRM197、及び不活化された細菌毒素であって、ジフテリアトキソイド(DT)、破傷風トキソイド(TT)、百日咳トキソイド、コレラトキソイド、及びインフルエンザ菌プロテインDから選択される細菌毒素、又はこれらの組合せから選択される担体タンパク質にコンジュゲートしている、請求項8に記載のワクチン製剤。
【請求項10】
各肺炎球菌莢膜多糖類が、担体タンパク質にコンジュゲートしている肺炎連鎖球菌血清型1、2、3、4、5、6A、6B、6C、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15A、15B、15C、16F、17F、18C、19F、19A、20A、20B、22F、23A、23B、23F、24B、24F、31、33F、34、35B、35F、38、39、及び45並びに請求項1に記載の保存剤系から選択され、
保存剤組成物が、0.1%~0.6%の範囲の濃度の2-フェノキシエタノールと、0.005%~0.3%の範囲の濃度のm-クレゾール、0.01%~1%の範囲の濃度のベンジルアルコール、及び0.01%~1%の範囲の濃度の安息香酸を含む群から選択される少なくとも1種の他の保存剤と、1種又は複数の医薬的に許容できる担体又は賦形剤とを含む、請求項9に記載のワクチン製剤。
【請求項11】
a.肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、22F、23F、及び33Fからの莢膜多糖類を含む14価の肺炎球菌莢膜多糖類タンパク質コンジュゲートワクチン、
b.肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6A、6B、6C/6D、7F、9V、11A、12F、14、15A、18C、19A、19F、22F、23A、23F、及び35Bからの莢膜多糖類を含む20価の肺炎球菌莢膜多糖類タンパク質コンジュゲートワクチン、
c.肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6A、6B、6C/6D、7F、9V、14、15A、15C、18C、19A、19F、23A、23B、23F、24F、及び35Bからの莢膜多糖類を含む20価の肺炎球菌莢膜多糖類タンパク質コンジュゲートワクチン、
d.肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15A、18C、19A、19F、22F、23A、23B、23F、24F、33F、及び35Bからの莢膜多糖類を含む24価の肺炎球菌莢膜多糖類タンパク質コンジュゲートワクチン
の内の1つから選択される、請求項10に記載のワクチン製剤。
【請求項12】
ワクチン製剤における微生物汚染又はウイルス汚染の防止のための保存剤系の使用であって、前記保存剤系が、0.1%~0.6%の範囲の濃度の2-フェノキシエタノールと、m-クレゾール、ベンジルアルコール、フェノール、及び安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種の他の保存剤とを含む
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存剤系と、ワクチン製剤におけるその使用とに関する。より具体的には、本発明は、保存剤系を含み且つチオメルサールを含まない一価ワクチン製剤又は多価ワクチン製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ワクチンは、特定の疾患に対して積極的な後天性免疫を付与する生物学的製剤である。ワクチンは、典型的には、疾患を引き起こす微生物に似ている薬剤を含み、多くの場合には、微生物、この微生物の毒素、又はこの微生物の表面タンパク質の内の少なくとも1種若しくはこの微生物の莢膜多糖類の内の少なくとも1種の弱毒化形態又は死滅形態から作られている。この薬剤は、この薬剤を脅威として認識し、この薬剤を破壊し、後に遭遇する微生物のいずれかを認識して破壊するように身体の免疫系を刺激する。一定レベルの免疫原性、力価、安定性を有することに加えて、ワクチン製剤には、微生物汚染がないことが求められる。
【0003】
多回投与用ワクチン製剤には、汚染を防止するために及び最初の用量の使用後に後続の用量の組成を安定化させるために、保存剤が必要とされている。保存剤は、ワクチン製剤が有効性試験又は抗菌性チャレンジ試験に合格できるようにしなければならない。
【0004】
米国特許第6,790,445B1号明細書では、(1)1.5%のベンジルアルコール;(2)0.225%のメチルパラベンナトリウム、0.025%のプロピルパラベンナトリウム;及び0.9%のベンジルアルコール、並びに(3)0.225%のメチルパラベンナトリウム、0.025%のプロピルパラベンナトリウム、及び0.375%の2-フェノキシエタノールからなる群から選択される、米国薬局方(USP)、英国薬局方(BP)、及び欧州薬局方(EP)の抗菌性試験要件を合格する保存剤の組合せが開示されている。
【0005】
米国特許第9,095,567B2号明細書では、CRM197に個々にコンジュゲートしている肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、及び23Fからの肺炎球菌莢膜多糖類からなる多糖類-タンパク質コンジュゲートを含み、7mg/mL以上の2-フェノキシエタノール(2-PE)をさらに含む多価の免疫原性組成物が説明されている。この特許では、保存剤有効性試験(PET)の結果が、試験した保存剤の全てがUSPの要件を満たすがEPの基準を満たさないことを示すことが開示された。2-PEは、比較的高い投与量で安全であることが分かっている唯一の候補保存剤であった。
【0006】
米国特許出願公開第2004/0258700A1号明細書では、免疫原、少なくとも2種のパラベンエステル及び2-フェノキシエタノールの組合せであることを特徴とする保存剤を含むワクチン製剤が開示されている。
【0007】
米国特許出願公開第2013/0273098A1号明細書では、界面活性剤0.1%ポロクサマー188(Pluronic(登録商標)F-68)の添加により、試験した保存剤(例えば、フェノール、2-フェノキシエタノール、m-クレゾール、ベンジルアルコール、又はクロロブタノール)のいずれでも粒子を観察しないことが説明された。
【0008】
国際公開第2018/169303A1号パンフレットでは、(i)莢膜多糖類-タンパク質コンジュゲート;(ii)2-フェノキシエタノール(2-PE);及び(iii)ホルムアルデヒド(HCHO)を含むワクチン組成物と、このワクチン組成物を調製する方法とが開示されている。
【0009】
Hilliard他(1964,Journal of Pharmaceutical Sciences 53(8),899-901)は、ポリオワクチンへの0.375v/v%の2-フェノキシエタノールの添加により、細菌及び真菌の両方に対して阻害的である保存剤の安定した混合物(ストレプトマイシン、ネオマイシン、及び2-フェノキシエタノール)が提供されたことを開示している。
【0010】
Stephen他(1985,International Journal of Pharmaceutics,25,245-253)は、同一の化学グループに属する抗菌性保存剤は、組み合わせて使用される場合には単に相加的効果を生じると考えられることを開示している。
【0011】
保存剤は、一般に、ウイルス汚染に対する限定的な保護を提供する。殺菌薬及び殺真菌薬は、様々な微生物細胞標的(例えば、細胞壁、細胞質膜、又は細胞質)に対して、その効果を示し得る。保存剤の特定のクラスに対して正確な標的を割り当てることは困難なことが多く、標的及び用量は、保存剤濃度と共に変化する可能性がある。結果として、保存剤は、いくつかの異なる微生物細胞メカニズムに干渉することが多い。そのような細胞毒性はまた、哺乳類細胞にも影響を及ぼす場合がある。従って、含有レベルは、適切な保存と一致した最小限でなければならない。保存剤含有の理由、有効性の証明、安全性情報、管理方法、及び完成品でのラベリングの詳細を提供することが規制上期待されている。
【0012】
概念では、保存剤系は、微生物増殖から製品を保護するが、製品の性能を損なわない。実際には、このことは、下記であることを意味する:
・ 低含有レベルで広範囲の抗菌活性を発揮しなければならない、
・ 製品の製造、有効期間、及び使用を通して活性を維持しなければならない、
・ 製品、包装、又は送達システムの品質又は性能を損なってはならない、
・ 患者の安全性又は製品の耐性に悪影響を及ぼしてはならない。
【0013】
薬局方の抗菌剤有効性試験(AET)又は保存剤有効性試験(PET)は、様々な試験微生物(細菌、酵母、及び真菌)の定義された数のコロニー形成単位(cfu)で製品をチャレンジすること、ゼロ時間での計数、次いで定義された時間間隔で死滅/生存率をモニタリングすることを含む。抗菌剤有効性試験(AET)に加えて、製品の提案された有効期間を通して(最終容器内での)医薬品の化学的安全性をモニタリングすることが規制上必要とされている。
【0014】
チメロサール(チオメルサールとしても既知である;メルチオレート)は、1930年代初期から多くの多回投与注射剤に添加されているエチル水銀含有保存剤である。水銀を含むチオメルサールは、子供の自閉症の原因となると主張されており、且つ環境にも毒性である。チメロサールに代わるワクチンに安全な保存剤を探すことが有利であるだろう。そのため、安全であり有効でもある保存剤を含むワクチン製剤が求められている。
【0015】
2-フェノキシエタノール(2-PE)の安全性プロファイルは、水銀系保存剤(例えばチオメルサール)のものと比べて良好であるが、これら2種の内では抗菌性が弱く、ワクチン製剤により高濃度レベルで含める必要がある。
【0016】
そのため、ワクチン製剤中での低濃度レベルでの2-PEの保存剤有効性を改善するために、本発明の発明者らは、継続的な努力を通して、他の保存剤と組み合わせて2-PEを含む低濃度の保存剤系を開発した。本発明者らは、この保存剤系が、安全であり且つ微生物/ウイルスの増殖の防止のためのワクチン製剤での使用に有効であることを発見した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、微生物/ウイルスの増殖を防止するためにワクチン製剤中で使用される2-フェノキシエタノールを低濃度レベルで含む保存剤組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、低濃度レベルの2-フェノキシエタノールを含む安定した多回投与用ワクチン製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従って、本発明は、0.1%~0.6%の範囲の濃度の2-フェノキシエタノールと、m-クレゾール、ベンジルアルコール、フェノール、及び安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種の他の保存剤とを含む保存剤系を含むワクチン製剤を提供する。
【0019】
本発明はまた、免疫原、0.1%~0.6%の範囲の濃度の2-フェノキシエタノールと、m-クレゾール、ベンジルアルコール、フェノール、及び安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種の他の保存剤とを含む保存剤系、並びに1種又は複数の適切な医薬的に許容できる賦形剤を含むワクチン製剤も提供する。
【0020】
本発明はまた、0.1~0.6%の範囲の濃度の2-フェノキシエタノールと、m-クレゾール、ベンジルアルコール、フェノール、及び安息香酸からなる群から選択され少なくとも1種の他の保存剤とを含む保存剤系を含むワクチン製剤を製造する方法も提供する。
【0021】
本発明はまた、0.1%~0.5%の範囲の濃度の2-フェノキシエタノールと、少なくとも0.005%のm-クレゾール、ベンジルアルコール、フェノール、及び安息香酸からなる群から選択され少なくとも1種の他の保存剤とを含む保存剤系を含むワクチン製剤を製造する方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】ウサギにおける血清抗体価のプロットレイアウトを示す図である。
図2図2Aは保存剤を含まない製剤で免疫化したウサギにおける血清抗体価を示す図である(実施例2)。図2Bは保存剤を含まない製剤で免疫化したウサギにおける血清抗体価を示す図である(実施例2)。
図3図3Aは保存剤系を含む製剤で免疫化したウサギにおける血清抗体価を示す図である(実施例3)。図3Bは保存剤系を含む製剤で免疫化したウサギにおける血清抗体価を示す図である(実施例3)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
本明細書で説明されている実施形態は、下記の詳細な説明、実施例、及び図面への参照により、より容易に理解され得る。本明細書で説明されている要素、装置、及び方法は、本発明の原理の例示にすぎず、詳細な説明、実施例、及び図面で示された具体的な実施形態を限定するものではない。当業者には、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく数多くの改変及び適応が容易に明らかになるだろう。
【0024】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学用語及び技術用語は、本方法が属する分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の実施形態の実施又は試験では、本明細書で説明されているものと類似の又は等価の任意の組合せ、組成物、又は方法も使用し得るが、ここでは、代表的で例示的な方法及び組成物を説明する。
【0025】
明確にするために別々の実施形態の文脈で説明されている本方法のある特定の特徴はまた、単一の実施形態で組み合わされて提供され得ることが認識される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で説明されている本方法及び本組成物の様々な特徴はまた、別々に又は任意の適切な部分的組合せでも提供され得る。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別途文脈が明確に示さない限り、複数の参照対象を含むことに留意されたい。特許請求の範囲は、任意の任意選択の要素を除外するように立案され得ることにさらに留意されたい。従って、この記載は、クレーム要素の列挙又は「否定的な」限定の使用に関連する「だけ(solely)」、「のみ(only)」、及び同類のもの等の排他的な用語法の使用の先行根拠として機能することが意図されている。用語「少なくとも1」は、1又は複数を意味する。
【0026】
本開示の読解時に当業者に明らかなように、本明細書で説明されており且つ図示されている個々の実施形態の各々は、本方法の範囲又は趣旨から逸脱することなく他の実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得るか又はこの特徴と容易に組み合わされ得る別々の構成要素及び特徴を有する。任意の列挙された方法は、列挙された事象の順序で又は論理的に可能な任意の他の順序で実行することができる。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「保存剤系」又は「保存剤組成物」は互換的であり、化学変化又は微生物/ウイルス汚染に起因する分解を防ぐためにワクチン組成物又はワクチン製剤に添加される混合物又は組成物を指す。本発明の文脈では、保存剤系は、2-フェノキシエタノールと、m-クレゾール、ベンジルアルコール、フェノール、及び安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種の他の保存剤とを含む組成物を指す。
【0028】
用語「免疫原又は抗原」は、抗体の産生を刺激するか又は病原体に対する宿主の免疫をもたらす体液性及び/若しくは細胞性の免疫反応を誘発する物質を指す。
本明細書で使用される場合、用語「一価ワクチン」は、1つの主要な抗原成分を有するワクチンを指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「多価ワクチン」は、複数の抗原成分を含むワクチンを指す。この用語は、混合ワクチン、二価ワクチン、三価ワクチン、四価ワクチン、五価ワクチン、六価ワクチン、及び同類のものを含む。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「Vi:O2」は、チフス菌(Salmonella typhi)及びパラチフス菌(Salmonella paratyphi)からの抗原を含む、チフス及びパラチフスに対する二価ワクチン製剤を指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「MR」は、麻疹及び風疹に対する二価ワクチン製剤を指す。
本明細書で使用される場合、用語「Td」は、ジフテリア及び破傷風ワクチン[沈降、低抗原量]を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「DTwP」は、ジフテリア、破傷風、及び全細胞百日咳に対する三価ワクチン製剤を指す。
本明細書で使用される場合、用語「Vi:O2-HepA」は、チフス、パラチフス、及びA型肝炎に対する三価ワクチン製剤を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「MMR」は、麻疹、流行性耳下腺炎、及び風疹に対する三価ワクチン製剤を指す。
本明細書で使用される場合、用語「DTwP-Hib」は、ジフテリア、破傷風、全細胞百日咳、及びb型インフルエンザ菌に対する四価ワクチン製剤を指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「DTaP-Hib」は、ジフテリア、破傷風、無細胞百日咳、及びb型インフルエンザ菌に対する四価ワクチン製剤を指す。
本明細書で使用される場合、用語「DTwP-IPV」は、ジフテリア、破傷風、全細胞百日咳、及び不活化ポリオウイルスに対する四価ワクチン製剤を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「DTwP-HepB」は、ジフテリア、破傷風、全細胞百日咳、及びB型肝炎に対する四価ワクチン製剤を指す。
本明細書で使用される場合、用語「ACW-135XY」は、髄膜炎菌群A、C、W-135、X、及びYに対する五価コンジュゲートワクチン製剤を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「DtwPHib-HepB」は、ジフテリア、破傷風、全細胞百日咳、b型インフルエンザ菌、及びB型肝炎に対する五価ワクチン製剤を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「DtaPHib-HepB」は、ジフテリア、破傷風、無細胞百日咳、b型インフルエンザ菌、及びB型肝炎に対する五価ワクチン製剤を指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「DtwPHib-HepB-IPV」は、ジフテリア、破傷風、全細胞百日咳、b型インフルエンザ菌、B型肝炎、及び不活化ポリオウイルスに対する六価ワクチン製剤を指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「DtaPHib-HepB-IPV」は、ジフテリア、破傷風、無細胞百日咳、b型インフルエンザ菌、B型肝炎、及び不活化ポリオウイルスに対する六価ワクチン製剤を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「医薬的に許容できる担体」は、抗原及び/又はウイルスの投与のためにワクチン製剤に添加され得る1種又は複数の任意選択の構成要素であって、この構成要素自体が組成物を投与される個体に有害な抗体の産生を誘発せず、且つ過度な毒性なしに投与され得る構成要素を指す。この用語は、1種又は複数の賦形剤、アジュバント、希釈剤、緩衝剤、若しくは界面活性剤、又はこれらの組合せを含む。医薬的に許容できるか又は薬理的に許容できるは、生物学的に又はその他の点で望ましくないわけではない物質を意味しており、即ち、物質であって、あらゆる望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく又はこの物質が含まれる組成物の構成要素の内のいずれかと有害な方法で相互作用することなく、製剤又は組成物で個体に投与され得る物質を意味する。
【0041】
本明細書で使用される場合、語句「微生物汚染又はウイルス汚染」は、ワクチン製剤における微生物又はウイルスの望ましくない増殖を指す。
本発明の詳細な説明
本明細書で使用される場合、本発明のワクチン又は免疫原は、肺炎球菌コンジュゲート、髄膜炎菌コンジュゲート、チフスコンジュゲート、パラチフスコンジュゲート、Hibコンジュゲート、並びに麻疹(M)、流行性耳下腺炎(M)、風疹(R)、A型肝炎ウイルス(HAV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ジフテリア(D)、破傷風(T)、全細胞百日咳(wP)又は無細胞百日咳(aP)、Hib多糖類、B型肝炎(HepB)、及び不活化ポリオウイルス(IPV)から選択される1種又は複数の抗原を含む多価ワクチンを含む。
【0042】
一価ワクチンは、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumonia)(肺炎球菌莢膜多糖類)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)(Men A、C、W-135、又はY)、チフス菌(Vi)、パラチフス菌(O:2)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)(Hib-PRP)、ジフテリア菌(Corynebacterium Diptheriae)(ジフテリアトキソイド-DT)、百日咳菌(Bordetella pertussis)(wP/aP)、破傷風菌(Clostridium tetani)(破傷風トキソイド)、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、不活化された日本脳炎ウイルス、狂犬病ウイルス、及び不活化されたポリオウイルスから選択されるか又は単離された抗原を含む。
【0043】
多価ワクチンは、二価、三価、四価、五価、及び六価を含み、例えば、DT(ジフテリアトキソイド)、MR(麻疹及び風疹ワクチン)、Vi:O2(チフス菌及びパラチフス菌)コンジュゲート、Vi:O2-HepA(チフス菌、パラチフス菌、及びA型肝炎ワクチン)、MMR(麻疹、流行性耳下腺炎、及び風疹ワクチン)、DTwPワクチン(ジフテリア、破傷風、及び全細胞百日咳に対するワクチン)、ACW-135XY(髄膜炎菌群A、C、W-135、X、及びYに対するコンジュゲートワクチン)、DTwP-Hib(ジフテリア、破傷風、全細胞百日咳、及びb型インフルエンザ菌に対するワクチン)、DTaP-Hib(ジフテリア、破傷風、無細胞百日咳、及びb型インフルエンザ菌)、DTwP-HepB(ジフテリア、破傷風、全細胞百日咳、及びB型肝炎に対するワクチン)、DTwPHib-HepB(ジフテリア、破傷風、全細胞百日咳、b型インフルエンザ菌、及びB型肝炎に対するワクチン)、DTaPHib-HepB(ジフテリア、破傷風、無細胞百日咳、b型インフルエンザ菌、及びB型肝炎)、DTwP-IPV(ジフテリア、破傷風、全細胞百日咳、及び不活化ポリオウイルスに対するワクチン)、DTwPHib-HepB-IPV(ジフテリア、破傷風、全細胞百日咳、b型インフルエンザ菌、B型肝炎、及び不活化ポリオウイルスに対するワクチン)、DTaPHib-HepB-IPV(ジフテリア、破傷風、無細胞百日咳、b型インフルエンザ菌、B型肝炎、及び不活化ポリオウイルスに対するワクチン)を含む。
【0044】
濃度のパーセンテージ(%)は、本明細書で使用される場合、重量/体積(w/v)又は重量/重量(w/w)である。
本発明は、0.1%~0.6%の範囲の濃度の2-フェノキシエタノールと、m-クレゾール、ベンジルアルコール、フェノール、及び安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種の他の保存剤とを含む保存剤系を含む一価ワクチン製剤及び多価混合ワクチン製剤を提供する。
【0045】
一実施形態では、本発明は、1種又は複数の肺炎球菌多糖類タンパク質コンジュゲート、0.1%~0.6%の範囲の濃度の2-フェノキシエタノールと、m-クレゾール、ベンジルアルコール、フェノール、及び安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種の他の保存剤とを含む保存剤系、並びに1種又は複数の医薬的に許容できる担体又は賦形剤を含む肺炎球菌莢膜多糖類タンパク質コンジュゲートワクチン製剤を提供する。
【0046】
さらに別の実施形態では、本発明は、担体タンパク質に個々にコンジュゲートした髄膜炎菌(N. meningitidis)血清群A、C、W-135、X、及びY莢膜多糖類抗原、0.1%~0.6%の範囲の濃度の2-フェノキシエタノールと、m-クレゾール、ベンジルアルコール、フェノール、及び安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種の他の保存剤とを含む保存剤系、並びに、1種又は複数の医薬的に許容できる担体又は賦形剤を含む髄膜炎菌コンジュゲートワクチン製剤を提供する。
【0047】
さらに別の実施形態では、本発明は、担体タンパク質にコンジュゲートしたVi多糖類、0.1%~0.6%の範囲の濃度の2-フェノキシエタノールと、m-クレゾール、ベンジルアルコール、フェノール、及び安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種の他の保存剤とを含む保存剤系、並びに1種又は複数の医薬的に許容できる担体又は賦形剤を含むチフスコンジュゲートワクチン製剤を提供する。
【0048】
さらに別の実施形態では、本発明は、担体タンパク質にコンジュゲートしたO:2多糖類、0.1%~0.6%の範囲の濃度の2-フェノキシエタノールと、m-クレゾール、ベンジルアルコール、フェノール、及び安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種の他の保存剤とを含む保存剤系、並びに1種又は複数の医薬的に許容できる担体又は賦形剤を含むパラチフスコンジュゲートワクチン製剤を提供する。
【0049】
さらに別の実施形態では、本発明は、担体タンパク質にコンジュゲートしたポリリボシルリビトールリン酸(polyribosylribitol phosphate)(PRP)莢膜多糖類、0.1%~0.6%の範囲の濃度の2-フェノキシエタノールと、m-クレゾール、ベンジルアルコール、フェノール、及び安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種の他の保存剤とを含む保存剤系、並びに1種又は複数の医薬的に許容できる担体又は賦形剤を含むHibコンジュゲートワクチン製剤を提供する。
【0050】
一実施形態では、本発明は、1種又は複数の肺炎球菌多糖類タンパク質コンジュゲート、0.1%~0.6%の範囲の濃度の2-フェノキシエタノールと、0.005%~0.3%の濃度の、m-クレゾール、ベンジルアルコール、フェノール、及び安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種の他の保存剤とを含む保存剤系、並びに1種又は複数の医薬的に許容できる担体を含む肺炎球菌莢膜多糖類タンパク質コンジュゲートワクチン製剤を提供する。
【0051】
本発明に係る担体タンパク質は、CRM197、PspA、PsaA、プロテインD、ジフテリアトキソイド(DT)、破傷風トキソイド(TT)、及び同類のもの、又はこれらの組合せからなる群から選択される。
【0052】
本発明に係る肺炎球菌コンジュゲートワクチンは、肺炎連鎖球菌血清型1、2、3、4、5、6A、6B、6C、6D、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15A、15B、15C、16F、17F、18C、19F、19A、20A、20B、22F、23A、23B、23F、24B、24F、31、33F、34、35B、35F、38、39、及び45から選択される肺炎連鎖球菌血清型からの1種又は複数の莢膜多糖類であって、各多糖類は、担体タンパク質(好ましくは、PsaA、CRM197、不活化細菌毒素(例えば、ジフテリアトキソイド(DT)、破傷風トキソイド(TT)、百日咳トキソイド、コレラトキソイド、若しくはインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)プロテインD)、又はこれらの組合せから選択される)にコンジュゲートしている、莢膜多糖類、0.1%~0.6%の範囲の濃度の2-フェノキシエタノールと、m-クレゾール、ベンジルアルコール、フェノール、安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種の他の保存剤とを含む保存剤系、並びに1種又は複数の医薬的に許容できる担体を含む。
【0053】
一実施形態では、本発明は、肺炎球菌莢膜多糖類であって、各多糖類は、担体タンパク質にコンジュゲートした肺炎連鎖球菌血清型1、2、3、4、5、6A、6B、6C、6D、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15A、15B、15C、16F、17F、18C、19F、19A、20A、20B、22F、23A、23B、23F、24B、24F、31、33F、34、35B、35F、38、39、及び45から選択される、肺炎球菌莢膜多糖類、並びに0.1%~0.6%の範囲の濃度の2-フェノキシエタノールと、m-クレゾール、ベンジルアルコール、フェノール、及び安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種の他の保存剤とを含む保存剤系を含む肺炎球菌コンジュゲートワクチン製剤を提供する。
【0054】
一実施形態では、本発明は、肺炎球菌コンジュゲートワクチン製剤であって、肺炎球菌莢膜多糖類であり、各多糖類は、担体タンパク質にコンジュゲートした肺炎連鎖球菌血清型1、2、3、4、5、6A、6B、6C、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15A、15B、15C、16F、17F、18C、19F、19A、20A、20B、22F、23A、23B、23F、24B、24F、31、33F、34、35B、35F、38、39、及び45から選択される、肺炎球菌莢膜多糖類、並びに0.1%~0.6%の範囲の濃度の2-フェノキシエタノールと、このワクチン製剤の重量に基づいて0.005%~0.3%のm-クレゾール、0.01%~1%のベンジルアルコール、0.01%~1%の安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種の他の保存剤とを含む保存剤系を含む肺炎球菌コンジュゲートワクチン製剤を提供する。
【0055】
本発明に係る肺炎球菌莢膜多糖類タンパク質コンジュゲートワクチンは、多価の免疫原性組成物(例えば、10価、13価、14価、15価、16価、17価、18価、19価、20価、22価、23価、24価、25価、又は26価の肺炎球菌ワクチン組成物)である。
【0056】
一実施形態では、本発明に係る肺炎球菌莢膜多糖類タンパク質コンジュゲートワクチンは、肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、22F、23F、及び33Fからの莢膜多糖類を含む14価の免疫原性組成物である。
【0057】
さらに別の実施形態では、本発明に係る肺炎球菌莢膜多糖類タンパク質コンジュゲートワクチンは、肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6A、6B、6C/6D、7F、9V、11A、12F、14、15A、18C、19A、19F、22F、23A、23F、及び35Bからの莢膜多糖類を含む20価の免疫原性組成物である。
【0058】
さらに別の実施形態では、本発明に係る肺炎球菌莢膜多糖類タンパク質コンジュゲートワクチンは、肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6A、6B、6C/6D、7F、9V、14、15A、15C、18C、19A、19F、23A、23B、23F、24F、及び35Bからの莢膜多糖類を含む20価の免疫原性組成物である。
【0059】
さらに別の実施形態では、本発明に係る肺炎球菌莢膜多糖類タンパク質コンジュゲートワクチンは、肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15A、18C、19A、19F、22F、23A、23B、23F、24F、33F、及び35Bからの莢膜多糖類を含む24価の免疫原性組成物である。
【0060】
一実施形態では、本発明は、肺炎球菌コンジュゲートワクチン製剤であって、肺炎球菌莢膜多糖類であり、各多糖類は、担体タンパク質にコンジュゲートした肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、22F、23F、及び33Fから選択される、肺炎球菌莢膜多糖類、並びに0.1%~0.6%の範囲の濃度の2-フェノキシエタノールと、このワクチン製剤の重量に基づいて0.005%~0.3%のm-クレゾール、0.01%~1%のベンジルアルコール、0.01%~1%の安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種の他の保存剤とを含む保存剤系を含む肺炎球菌コンジュゲートワクチン製剤を提供する。
【0061】
さらに別の実施形態では、本発明は、肺炎球菌コンジュゲートワクチン製剤であって、肺炎球菌莢膜多糖類であり、各多糖類は、担体タンパク質にコンジュゲートした肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、22F、23F、及び33Fから選択される、肺炎球菌莢膜多糖類、並びに0.1%~0.5%の範囲の濃度の2-フェノキシエタノールと、このワクチン製剤の重量に基づいて0.005%~0.3%のm-クレゾール、0.01%~1%のベンジルアルコール、0.01%~1%の安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種の他の保存剤とを含む保存剤系を含む肺炎球菌コンジュゲートワクチン製剤を提供する。
【0062】
本発明に係る担体タンパク質は、好ましくは、非毒性及び非反応性であり且つ十分な量で得られるタンパク質であり、下記から選択される:PsaA、CRM197、不活化細菌毒素、例えば、ジフテリアトキソイド(DT)、破傷風トキソイド(TT)、百日咳トキソイド、コレラトキソイド、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来のエキソトキシンA、細菌外膜タンパク質、例えば、外膜複合体C(outer membrane complex C)(OMPC)、ポーリン(porin)、トランスフェリン結合タンパク質、ニューモリシン(pneumolysin)、PspA、A群連鎖球菌若しくはB群連鎖球菌に由来するC5aペプチダーゼ、又はインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)プロテインD、オボアルブミン、キーホールリンペットヘモシニアン(keyhole limpet hemocyanin)(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、及びツベルクリンの精製済タンパク質誘導体(PPD)、並びにこれらの組合せ。例えば、一部の多糖類は、担体タンパク質としてのCRM197にコンジュゲートしており、一部の多糖類は、PsaA、又はDT、又はTT、及び同類のものにコンジュゲートしている。
【0063】
さらに別の実施形態では、本発明は、0.1%~0.5%の範囲の濃度の2-フェノキシエタノールと、m-クレゾール、ベンジルアルコール、フェノール、及び安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種の他の保存剤とを含む保存剤系、医薬的に許容できるビヒクル、並びに1種又は複数の医薬的に許容できる賦形剤/アジュバントを含む多回投与用多糖類タンパク質コンジュゲートワクチン製剤を提供する。
【0064】
さらに別の実施形態では、本発明は、コンジュゲートワクチン製剤であって、0.1%~0.6%の範囲の濃度の2-フェノキシエタノールと、このワクチン製剤の重量に基づいて0.005%~0.3%のm-クレゾール、0.01%~1%のベンジルアルコール、0.01%~1%の安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種の他の保存剤とを含む保存剤系、医薬的に許容できるビヒクル、並びに1種又は複数の医薬的に許容できる賦形剤/アジュバントを含むコンジュゲートワクチン製剤を提供する。
【0065】
本発明に係る組成物は、慣習的に製造することができる。具体的には、この組成物は、医薬的に許容できる担体、希釈剤、又は賦形剤(例えば、水、緩衝生理食塩水、グリセロール、プロピレングリコール、及びデキストロース溶液)で製剤化することができる。加えて、この組成物は、下記を含み得る:緩衝剤、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、コハク酸ナトリウム、ヒスチジン、及び同類のもの;又は安定剤、ポリソルベート、MPLA(モノホスホリル脂質A)、及び同類のもの;アジュバント、例えば、アルミニウム化合物、例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、若しくはヒドロキシリン酸アルミニウム、並びに凍結乾燥用賦形剤。一般に、これらの成分/担体は、投与の様式及び経路の関数として選択し得、且つ標準的な薬務に基づいて選択することができる。
【0066】
本発明の組成物は、多数回投与用バイアルとして製剤化される。
さらに別の実施形態では、本発明は、ワクチン製剤を保存する方法であって、ワクチン溶液、並びに1種又は複数の賦形剤(例えば、アジュバント、希釈剤、緩衝剤、又は界面活性剤)であり、0.1%~0.5%の範囲の濃度の2-フェノキシエタノールと、m-クレゾール、ベンジルアルコール、フェノール、及び安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種の他の保存剤とを含む保存剤系を含む1種又は複数の賦形剤を混合して、ワクチン溶液及び保存剤の混合物を形成するステップを含む方法を提供する。
【0067】
好ましい実施形態では、本発明は、0.1%~0.5%の範囲の濃度の2-フェノキシエタノールと、0.005%~0.3%のm-クレゾール、0.01%~1%のベンジルアルコール、0.01%~1%の安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種の他の保存剤とを含む保存剤系、医薬的に許容できるビヒクル、並びに1種又は複数の医薬的に許容できる賦形剤/アジュバントを含むワクチン製剤を提供する。この医薬的に許容できる賦形剤又はアジュバントは、アジュバント、例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、界面活性剤、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポロクサマー、ビヒクル、溶媒又は共溶媒、例えば、ダイズ油、PEG、安定剤、例えば、EDTAの群から選択され得、且つ抗酸化剤(例えば、ポリフェノール、トコフェロールポリエチレングリコールコハク酸(TPGS))を含み得る。本発明に係るワクチン製剤のpHは、4.0~8.0を維持するように調整される。
【0068】
別の好ましい実施形態では、本発明は、保存剤としての0.3%~0.4%の2-PE及び0.1%~0.3%のm-クレゾールと、1種又は複数の医薬的に許容できる担体又は賦形剤とを含むワクチン製剤を提供する。
【0069】
別の好ましい実施形態では、本発明は、保存剤としての0.1%~0.4%の2-PE及び0.01%~0.05%のm-クレゾールと、1種又は複数の医薬的に許容できる担体又は賦形剤とを含むワクチン製剤を提供する。
【0070】
別の好ましい実施形態では、本発明は、
a)CRM197、肺炎球菌表面タンパク質A(PspA)、肺炎球菌接着タンパク質(PsaA)、又はこれらの組合せから選択される担体タンパク質に個々にコンジュゲートしている肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、22F、23F、及び33Fから選択される莢膜多糖類と、
b)0.1%~0.4%の2-PE及び0.005%~0.3%のm-クレゾールを含む保存剤系と、
c)1種又は複数の医薬的に許容できる担体又は賦形剤と
を含む14価の肺炎球菌コンジュゲートワクチン製剤を提供する。
【0071】
好ましい実施形態では、本発明は、
a)CRM197、肺炎球菌表面タンパク質A(PspA)、肺炎球菌接着タンパク質(PsaA)、又はこれらの組合せから選択される担体タンパク質に個々にコンジュゲートしている肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6A、6B、6C/6D、7F、9V、11A、12F、14、15A、18C、19A、19F、22F、23A、23F、及び35Bから選択される莢膜多糖類と、
b)0.1%~0.4%の2-PE及び0.005%~0.1%のm-クレゾールを含む保存剤系と、
c)1種又は複数の医薬的に許容できる担体又は賦形剤と
を含む20価の肺炎球菌コンジュゲートワクチン製剤を提供する。
【0072】
好ましい実施形態では、本発明は、
a)CRM197、肺炎球菌表面タンパク質A(PspA)、肺炎球菌接着タンパク質(PsaA)、又はこれらの組合せから選択される担体タンパク質に個々にコンジュゲートしている肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15A、18C、19A、19F、22F、23A、23B、23F、24F、33F、及び35Bから選択される莢膜多糖類と、
b)0.1%~0.4%の2-PE及び0.005%~0.1%のm-クレゾールを含む保存剤系と、
c)1種又は複数の医薬的に許容できる担体又は賦形剤と
を含む24価の肺炎球菌コンジュゲートワクチン製剤を提供する。
【0073】
各ワクチン用量中の肺炎球菌コンジュゲートの量は、重大な副作用がない免疫保護反応を誘発する量として選択される。そのような量は、肺炎球菌血清型に応じて変動し得る。各0.5mL用量は、下記を含むように製剤化される:2~4μgの各多糖類;約30~70μgのCRM197担体タンパク質。
【0074】
別の好ましい実施形態では、本発明は、肺炎球菌コンジュゲート、髄膜炎菌コンジュゲート、チフスコンジュゲート、パラチフス、又はHibコンジュゲートからなる群から選択される多糖類タンパク質コンジュゲートワクチンと、0.1%~0.4%の2-PE及び0.01%~0.03%のm-クレゾールを含む保存剤系と、1種又は複数の医薬的に許容できる担体又は賦形剤とを含むコンジュゲートワクチン製剤を提供する。
【0075】
さらに別の実施形態では、本発明は、肺炎球菌コンジュゲートワクチン製剤であって、肺炎球菌莢膜多糖類であり、各多糖類は、担体タンパク質にコンジュゲートした肺炎連鎖球菌血清型1、2、3、4、5、6A、6B、6C、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15A、15B、15C、16F、17F、18C、19F、19A、20A、20B、22F、23A、23B、23F、24B、24F、31、33F、34、35B、35F、38、39、及び45から選択される、肺炎球菌莢膜多糖類と、このワクチン製剤の重量に基づいて、0.1~0.5%の2-フェノキシエタノール及び0.01%~0.3%のm-クレゾールを含む保存剤系とを含む肺炎球菌コンジュゲートワクチン製剤を提供する。
【0076】
本発明の組成物は、ワクチンの分野で使用される従来の経路により、必要な対象に投与することができる。例えば、本発明の組成物を全身投与し得、例えば、非経口(例えば、皮下、筋肉内、皮内、及び/若しくは静脈内)投与し得るか、又は粘膜(例えば、経口及び/若しくは鼻腔内)投与し得る。
【0077】
一部の実施形態では、本発明はまた、必要な対象において免疫反応を誘発する方法も提供する。この免疫反応を誘発する方法は、必要な対象に、本明細書で説明されているワクチン組成物の免疫学的に有効な量を投与するステップを含む。
【0078】
本発明の方法によれば、本明細書で説明されている組成物を投与する対象はヒトであり、例えば、乳児(約1歳未満)、幼児(約12カ月齢~約24カ月齢)、小児(約2歳~約5歳)、年長児(約5歳~約13歳)、青年(約13歳~約18歳)、成人(約18歳~約65歳)、又は年長者(約65歳超)である。
【0079】
別の好ましい実施形態では、本発明は、0.1%~0.4%の2-PE及び0.01%~0.3%のm-クレゾールと、1種又は複数の医薬的に許容できるビヒクルと、1種又は複数の医薬的に許容できる賦形剤/アジュバントとを含む肺炎球菌コンジュゲートワクチンの免疫原性組成物を提供する。
【0080】
別の好ましい実施形態では、本発明は、0.3%~0.4%の2-PE及び0.1%~0.3%のm-クレゾールと、1種又は複数の医薬的に許容できるビヒクルと、1種又は複数の医薬的に許容できる賦形剤/アジュバントとを含む髄膜炎菌コンジュゲートワクチンの免疫原性組成物を提供する。
【0081】
別の好ましい実施形態では、本発明は、0.3%~0.4%の2-PE及び0.1%~0.3%のm-クレゾールと、1種又は複数の医薬的に許容できるビヒクルと、1種又は複数の医薬的に許容できる賦形剤/アジュバントとを含むチフスコンジュゲートワクチンの免疫原性組成物を提供する。
【0082】
別の好ましい実施形態では、本発明は、0.3%~0.4%の2-PE及び0.1%~0.3%のm-クレゾールと、1種又は複数の医薬的に許容できるビヒクルと、1種又は複数の医薬的に許容できる賦形剤/アジュバントとを含むパラチフスワクチンの免疫原性組成物を提供する。
【0083】
別の好ましい実施形態では、本発明は、0.3%~0.4%の2-PE及び0.1%~0.3%のm-クレゾールと、1種又は複数の医薬的に許容できるビヒクルと、1種又は複数の医薬的に許容できる賦形剤/アジュバントとを含むHibコンジュゲートワクチンの免疫原性組成物を提供する。
【0084】
医薬品中での保存剤の有効性は、典型的には、チャレンジ試験を使用して調べられる。そのような試験では、この製品は、高濃度の標準的な細菌及び真菌の試験株で人工的に汚染される。一定期間にわたる接種材料の生存能の低下率及び低下の程度は、保存剤有効性の合否の基準を形成する。
【0085】
最小の有効用量での2-フェノキシエタノール(2-PE)及びm-クレゾール保存剤組成物の有効性は、試験した場合には、グラム陽性菌、グラム陰性菌、酵母、及び真菌に対して強い殺菌活性を示した。
【0086】
BIOBALL(登録商標)(BTF Pty Ltd.製)は、定量的な微生物学的品質管理のために、これまでにない正確さを実現する、正確な数の微生物を含む小さい水溶性ボールである。
【0087】
本発明の組成物は、所望の最終製品を与えるために必要に応じて成分を溶解させて混合することを含む従来の技術を使用して調製し得る。
本発明の態様には、下記も含まれる。
態様1
0.1%~0.6%の範囲の濃度の2-フェノキシエタノールと、m-クレゾール、ベンジルアルコール、フェノール、及び安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種の他の保存剤とを含む保存剤系を含むワクチン製剤。
態様2
m-クレゾール、ベンジルアルコール、フェノール、及び安息香酸の濃度が、0.005%~0.3%の範囲である、態様1に記載の保存剤系。
態様3
1種又は複数の医薬的に許容できる担体を含む、態様1に記載の保存剤系。
態様4
一価ワクチン又は多価混合ワクチンである、態様1に記載のワクチン製剤。
態様5
肺炎連鎖球菌(肺炎球菌莢膜多糖類)、髄膜炎菌(Men A、C、W-135、X、又はY)、チフス菌(Vi)、パラチフス菌(O:2)、インフルエンザ菌(Hib-PRP)、ジフテリア菌(ジフテリアトキソイド-DT)、百日咳菌(wP/aP)、破傷風菌(破傷風トキソイド)、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、不活化された日本脳炎ウイルス、狂犬病ウイルス、及び不活化されたポリオウイルスを含む群から選択されるか又は単離された抗原を含む、態様4に記載の一価ワクチン製剤。
態様6
二価ワクチン、三価ワクチン、四価ワクチン、五価ワクチン、六価ワクチン、及び肺炎球菌コンジュゲートワクチンを含む群から選択される、態様4に記載の多価ワクチン製剤。
態様7
二価ワクチンが、Tdワクチン、Vi:O2コンジュゲート、及びMRを含む群から選択され;
三価ワクチンが、DTwP、Vi:O2-HepA、及びMMRを含む群から選択され;
四価ワクチンが、DTwP-Hib、DTaP-Hib、DTwP-IPV、DTwP-HepB、ACW-135Yを含む群から選択され;
五価ワクチンが、DTwPHib-HepB及びDTaPHib-HepBを含む群から選択され;
六価ワクチンが、DTwPHib-HepB-IPV及びDTaPHib-HepB-IPVを含む群から選択される、態様6に記載の多価ワクチン製剤。
態様8
肺炎球菌コンジュゲートワクチンが、1種又は複数の肺炎球菌莢膜多糖類タンパク質コンジュゲートと、態様1に記載の保存剤系と、任意選択の1種又は複数の医薬的に許容できる担体とを含む、態様6に記載のワクチン製剤。
態様9
肺炎球菌莢膜多糖類タンパク質コンジュゲートが、血清型1、2、3、4、5、6A、6B、6C、6D、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15A、15B、15C、16F、17F、18C、19F、19A、20A、20B、22F、23A、23B、23F、24B、24F、31、33F、34、35B、35F、38、39、及び45を含む群から選択される肺炎連鎖球菌莢膜多糖類を含み;
各多糖類は、PsaA、CRM 197 、及び不活化された細菌毒素であって、ジフテリアトキソイド(DT)、破傷風トキソイド(TT)、百日咳トキソイド、コレラトキソイド、及びインフルエンザ菌プロテインDから選択される細菌毒素、又はこれらの組合せから選択される担体タンパク質にコンジュゲートしている、態様8に記載のワクチン製剤。
態様10
各肺炎球菌莢膜多糖類が、担体タンパク質にコンジュゲートしている肺炎連鎖球菌血清型1、2、3、4、5、6A、6B、6C、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15A、15B、15C、16F、17F、18C、19F、19A、20A、20B、22F、23A、23B、23F、24B、24F、31、33F、34、35B、35F、38、39、及び45並びに態様1に記載の保存剤系から選択され、
保存剤組成物が、0.1%~0.6%の範囲の濃度の2-フェノキシエタノールと、0.005%~0.3%の範囲の濃度のm-クレゾール、0.01%~1%の範囲の濃度のベンジルアルコール、及び0.01%~1%の範囲の濃度の安息香酸を含む群から選択される少なくとも1種の他の保存剤と、1種又は複数の医薬的に許容できる担体又は賦形剤とを含む、態様9に記載のワクチン製剤。
態様11
a.肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、22F、23F、及び33Fからの莢膜多糖類を含む14価の肺炎球菌莢膜多糖類タンパク質コンジュゲートワクチン、
b.肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6A、6B、6C/6D、7F、9V、11A、12F、14、15A、18C、19A、19F、22F、23A、23F、及び35Bからの莢膜多糖類を含む20価の肺炎球菌莢膜多糖類タンパク質コンジュゲートワクチン、
c.肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6A、6B、6C/6D、7F、9V、14、15A、15C、18C、19A、19F、23A、23B、23F、24F、及び35Bからの莢膜多糖類を含む20価の肺炎球菌莢膜多糖類タンパク質コンジュゲートワクチン、
d.肺炎連鎖球菌血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15A、18C、19A、19F、22F、23A、23B、23F、24F、33F、及び35Bからの莢膜多糖類を含む24価の肺炎球菌莢膜多糖類タンパク質コンジュゲートワクチン
の内の1つから選択される、態様10に記載のワクチン製剤。
態様12
ワクチン製剤における微生物汚染又はウイルス汚染の防止のための、態様1に記載の保存剤系の使用。
【実施例
【0088】
下記の実施例は、本開示を説明するために記載されており、且つ単に説明目的のみにすぎず、本開示の範囲を限定すると解釈すべきではない。
実施例1:保存剤の選択の詳細な研究、及び有効性研究
この研究の目的は、ワクチン(具体的には肺炎球菌コンジュゲートワクチン(PCV))の製剤で使用され得る、細菌及び真菌に対して感受性である保存剤の最低濃度を確立することであった。この研究のために、様々な濃度の2種の保存剤を選択した。試験培養物を、Bioball(登録商標)(BTF Pty Ltd.製)の形で受領し、この試験培養物からのグリセロールアリコートの調製を実行した。
【0089】
この研究では、多価PCVでの保存剤の最小限の使用量及び有効な投与量を調べた。微生物の含有量及び保存剤の有効性を、米国薬局方(USP)の「USP29,General Chapter 51」に従って研究した。薬物製品(ワクチン製剤)と共に様々な強さの保存剤を含む試験サンプル中の微生物数を、0日目~35日目にチェックした。
【0090】
最も一般的な汚染物質(黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌、酵母カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、大腸菌(Escherichia coli)、及びアスペルギルス・ブラシリエンシス(Aspergillus brasiliensis))である微生物の1×1015~1×1017個の細胞の初期数を含む接種材料を個別に接種し、各保存剤の強度を評価した。
【0091】
本研究では、試験生物(表1)との試験サンプルのインキュベーションを、35日の期間にわたりLabTech(商標)インキュベーター中で実行した。
【0092】
【表1】
【0093】
接種判定
試験サンプルへの様々な試験生物の集団の既知の量の添加の場合には、最初に、試験培養物を、滅菌生理食塩水による10-1から10-8へのクライオバイアル含有量の1mLの連続希釈により、生存能に関してチェックした。最後の6つの希釈液から、100μLの懸濁液を適切な培地プレートに蒔き(Pourプレート法)、最適条件でインキュベートした。インキュベーション期間後、プレートを観察し、コロニーを計数して各試験生物のCFU/mLを求めた。
【0094】
【表2】
【0095】
接種判定で得られた結果に基づいて、公定書の要件に従って必要な最終濃度を維持するために、製剤に添加する接種材料の最終量を算出した。
確立する抗菌剤物質の有効用量がUSP29 General Chapter 51に従ってカテゴリー1に該当する目的の製品として、使用する懸濁接種材料の量は、製品の量の0.5%~1.0%である。
【0096】
【表3】
【0097】
サンプルの調製及び接種材料の添加
最初に、幅広い濃度範囲の保存剤を個別に及び組み合わせて試験するために、薬剤製品を使用することなく製剤を調製した。その結果に基づいて、より低い濃度範囲の保存剤の個別の及び薬剤製品と組み合わせた実験を設計した。
【0098】
この製品に添加した試験微生物の濃度は、接種後の試験調製物の最終濃度が全ての公定書の要件を満たすものである。これらの詳細を、表4a及び表4bに示す。
【0099】
【表4-1】
【0100】
【表4-2】
【0101】
接種判定プロセスの結果にさらに基づいて、薬剤製品サンプルを含む製剤に、既知の濃度の細胞を接種した。接種後に、サンプルをそれぞれの温度でインキュベートし、集めて適切な間隔で連続的に希釈し、各試験サンプル中に存在する生細胞の数を決定した。
黄色ブドウ球菌及び大腸菌に対して試験した保存剤の有効性
黄色ブドウ球菌を接種した製剤は、全ての試験サンプルにおいて初期の細胞数から2log超の減少を示し、35日目には、全ての組成物に関して増殖を示さなかった。使用したサンプルの量は100μLであった。
【0102】
【表5】
【0103】
大腸菌を接種した製剤は、2-PE 3mg+m-C 1mg;2-PE 3mg+m-C 0.5mg;2-PE 3mg+m-C 0.25mg、及び2-PE 2mg+m-C 0.5mgを含むサンプルにおいて、並びに2-PE 3mg;m-C 0.5mg、及び2-PE 3mg+m-C 0.05mgにより、2log超の減少を示し、保存剤は、35日目にlog減少及び少数の観察を示した。
【0104】
【表6】
【0105】
黄色ブドウ球菌及び大腸菌の場合の全ての保存剤組成物は、公定書の要件を満たした。
緑膿菌及びカンジダ・アルビカンスに対して試験した保存剤の有効性
緑膿菌及びカンジダ・アルビカンスを接種した製剤は、最初の細胞数から2log超の減少を示した。緑膿菌は、いかなる保存剤も含まない製剤(プラセボ)を除く全ての組成物に関して増殖を示さなかった。2日目以降では、全ての保存剤組成物で増殖がなかった。
【0106】
カンジダ・アルビカンスは、12日目から全ての組成物に関して増殖を示さなかった。2日目以降では、細胞数の減少を観察した。
【0107】
【表7】
【0108】
【表8】
【0109】
緑膿菌及びカンジダ・アルビカンスの場合の全ての保存剤組成物は、公定書の要件を満たした。
アスペルギルス・ブラシリエンシスに対して試験した保存剤の有効性
アスペルギルス・ブラシリエンシスは、いかなる保存剤も含まない製剤(プラセボ)を除いて12日目以降に全ての保存剤組成物で増殖を示さなかった。2日目以降に、全ての保存剤組成物で細胞数の減少を観察した。
【0110】
【表9】
【0111】
アスペルギルス・ブラシリエンシスの場合の全ての保存剤組成物は、公定書の要件を満たした。
これらの結果に基づいて、0.05%(0.05mg/ml)のメタ-クレゾール及び0.2%(2mg/ml)の2-フェノキシエタノールを含む複合保存剤を含む製剤は、最終製剤中での微生物の増殖の予防で有効であることが明らかである。
【0112】
実施例2:14価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンの製剤(保存剤を含まない)
【0113】
【表A】
【0114】
実施例3:14価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンの製剤(保存剤を含む)
【0115】
【表B】
【0116】
下記に示すのは、14価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンの製剤の製造に含まれるプロセスステップである。
生理食塩水の一部の量を採取した後、肺炎球菌一価コンジュゲートバルク(PnMBC)を添加した。数分にわたり混合して均一性を得、次いで10%滅菌ポロクサマー188溶液のバッチ量を緩やかに添加し、均一性のために約5分にわたり再び混合した。この後、滅菌ろ過コハク酸ストック溶液を添加し、次いで2-フェノキシエタノールストック溶液及びメタクレゾールストック溶液を添加した。数分にわたり混合し、このブレンドに、連続的な撹拌下でバッチ量のリン酸アルミニウムゲルを添加した。数分にわたる混合後、この混合物のpHをチェックし、1N NaOHを使用して約5.8±0.2に調整し、生理食塩水の残部で量を補填した。吸着のために200±50 RPMで2時間にわたり混合をさらに続けて、最終バルクを得た。
【0117】
サンプリング後、両方のワクチンバルクを無菌的に及び別々に空気層流ユニット内のバイアルに充填し、試験に必要なバイアルをサンプリングし、残余のバイアルを2~8℃のチャンバーで保存した。
【0118】
実施例4:六価ワクチンの製剤
【0119】
【表C】
【0120】
上記で説明した六価製剤の製造に含まれるプロセスステップを、下記に示す:
i.リン酸アルミニウムが入った混合容器に、HepB抗原、ジフテリアトキソイド、及び破傷風トキソイドを入れ、この混合物を12~16時間にわたり撹拌し、
ii.wPのpHを6.8~7.2に調整し、ステップ(i)で得られたDT-HepB混合物に添加し、pHを6.2~6.5に調整し、
iii.上記DTwP-Hep B混合物に、S19 IPVバルク抗原を添加し、続いて生理食塩水を添加し、
iv.2-PEの溶液を添加し、この混合物を2~8℃で冷却し、
v.ステップ(iv)で得られた混合物に、HibTTを添加し、
vi.量を通常の生理食塩水で調整し、この溶液を個別の容器中でろ過した。
【0121】
実施例5:14価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンの製剤(保存剤を含む)
【0122】
【表D】
【0123】
実施例6:14価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンの製剤(保存剤を含む)
【0124】
【表E】
【0125】
実施例7:14価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンの製剤(保存剤を含む)
【0126】
【表F】
【0127】
実施例8:PCVの保存剤含有製剤によるウサギの免疫化
保存剤組成物を含む製剤が血清抗体力価に何らかの悪影響を及ぼすかどうかを確認するために、2種の保存剤を含むワクチン製剤を調製した(実施例2)。いかなる保存剤も含まないが同一の賦形剤を正確に含む別の製剤を、「対照」として調製した(実施例3)。これらの多糖類コンジュゲートをリン酸アルミニウムゲル上に吸着させ、薬局方ガイドラインに従って重要なワクチン品質特性に関して評価した。
【0128】
それぞれ体重が1.5~2kgの健康なウサギを、収容施設で飼育した。ウサギを、上述の製剤で免疫化した。各群(7匹のウサギからなる)を、1日目、15日目、及び29日目に、実施例2又は実施例3のいずれかの製剤で免疫化した。血液サンプルを、0日目(免疫前)、15日目(試験出血)、及び36日目(最終出血)に採取した。0日目(PD1)及び40日目(PD3)に採取したウサギ血清を、ELISAを使用して、血清型特異的免疫反応に関して分析した。このELISAを、WHO推奨のプトトコルに従って実施した。
【0129】
【表G】
【0130】
力価の推定
免疫化動物での抗体価を、免疫前の力価(約0.2OD)の2倍高いOD450nmを示す希釈係数の逆数として割り当てた。各動物の血清抗体価(n=7)を、対数スケール(y軸)上にMedCalcを使用してプロットした。エラーバーは、95%信頼区間(CI)での分散を示す。エラーバーの中間点は、群の平均血清抗体価を表す。
【0131】
プロットがどのようにレイアウトされているか(図1)を説明する、プロットを読むためのガイドを、下記に示す。簡潔に言うと、x軸の凡例には、製剤ID、分析した出血、及び試験した血清型が含まれる。例えば、PI_ST1は、血清型1に対する免疫前出血時に実施例2で開示されている製剤で免疫化されたウサギでの血清抗体価を意味しており、PD3_ST1は、血清型1に対する3回目の用量後の出血時に実施例2で開示されている製剤で免疫化されたウサギでの血清抗体価を意味しており、PD3_ST22Fは、血清型22Fに対する3回目の用量後の出血時に実施例2で開示されている製剤で免疫化されたウサギでの血清抗体価を意味しており、以下同様である(図2A及びB)。免疫前ウサギでは、バックグラウンド力価を予想するのが一般的である。しかしながら、免疫化の3回目の用量の後、血清抗体価は数倍増加し、このことは、免疫化動物での頑強で特異的な免疫反応を示す。
【0132】
同様に、図3A及びBでのPI_ST1は、血清型1に対する免疫前出血時に実施例3で開示されている製剤で免疫化されたウサギでの血清抗体価を意味しており、PD3_ST1は、血清型1に対する3回目の用量後の出血時に実施例3で開示されている製剤で免疫化されたウサギでの血清抗体価を意味しており、PD3_ST22Fは、血清型22Fに対する3回目の用量後の出血時に実施例3で開示されている製剤で免疫化されたウサギでの血清抗体価を意味しており、以下同様である。実施例3で説明されている製剤で免疫化されたウサギでの血清抗体価は、実施例2で開示されている製剤で免疫化されたウサギで観察されたものと類似していたことを観察する。従って、本明細書のデータは、保存剤組成物の存在がワクチン製剤の免疫原性に悪影響を及ぼさないことを示す。
【0133】
免疫反応を試験するために選択した保存剤の濃度は、0.6mg/mlの2-PE及び0.2mg/mlのm-クレゾールであった。図に示すように、この濃度の保存剤ではウサギの免疫反応への阻害効果はなく、これ未満の濃度も免疫反応にいかなる悪影響も及ぼさないことが予想される。
図1
図2
図3