(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】パーフルオロポリエーテル化合物、潤滑剤および磁気ディスク
(51)【国際特許分類】
C07C 43/13 20060101AFI20230825BHJP
C10M 105/54 20060101ALI20230825BHJP
C08G 65/331 20060101ALI20230825BHJP
G11B 5/725 20060101ALI20230825BHJP
G11B 5/82 20060101ALI20230825BHJP
G11B 5/84 20060101ALI20230825BHJP
C10N 40/18 20060101ALN20230825BHJP
C10N 30/08 20060101ALN20230825BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20230825BHJP
【FI】
C07C43/13 D CSP
C10M105/54
C08G65/331
G11B5/725
G11B5/82
G11B5/84 Z
C10N40:18
C10N30:08
C10N30:00 Z
(21)【出願番号】P 2021529943
(86)(22)【出願日】2020-06-15
(86)【国際出願番号】 JP2020023384
(87)【国際公開番号】W WO2021002178
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2019124427
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000146180
【氏名又は名称】株式会社MORESCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】八田 知勇
(72)【発明者】
【氏名】清水 豪
【審査官】坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/106790(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/066784(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C10M
C08G
G11B
C10N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるパーフルオロポリエーテル化合物:
R
1-CH
2-R
2-CH
2-R
3・・・(1)
式(1)中、R
1は、HOCH
2CH(OH)CH
2OCH
2CH(OH)CH
2O-であり、
R
2は、-(CF
2)
x(CF(CF
3))
yO(CF
2O)
z(CF
2CF
2O)
l(CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n(CF(CF
3)CF
2O)
o(CF(CF
3))
y(CF
2)
x-であり、xは0~3の実数であり、yは0~1の実数であり、z、l、n、oは、それぞれ0~15の実数であり、ただし、x、yのいずれか一方は1以上の実数であり、かつ、z、l、n、oの少なくともいずれか1つは1以上の実数であり、
R
3は、-OCH
2CH(OH)CH
2OHである。
【請求項2】
下記式(1)で表されるパーフルオロポリエーテル化合物:
R
1-CH
2-R
2-CH
2-R
3・・・(1)
式(1)中、R
1は、HOCH
2CH(OH)CH
2OCH
2CH(OH)CH
2O-であり、
R
2は、-(CF
2)
x(CF(CF
3))
yO(CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n(CF(CF
3)CF
2O)
o(CF(CF
3))
y(CF
2)
x-であり、xは0~3の実数であり、yは0~1の実数であり、n、oは、それぞれ0~15の実数であり、ただし、x、yのいずれか一方は1以上の実数であり、かつ、n、oの少なくともいずれか1つは1以上の実数であり、
R
3は、-OCH
2CH(OH)CH
2OCH
2CH(OH)CH
2OHである。
【請求項3】
下記式(1)で表されるパーフルオロポリエーテル化合物:
R
1-CH
2-R
2-CH
2-R
3・・・(1)
式(1)中、R
1は、HOCH
2CH(OH)CH
2OCH
2CH(OH)CH
2O-であり、
R
2は、-(CF(CF
3))
yO(CF
2CF
2O)
l(CF(CF
3)CF
2O)
o(CF(CF
3))
y-であり、yは1であり、l、oは、それぞれ1~15の実数であり、
R
3は、-OCH
2CH(OH)CH
2OCH
2CH(OH)CH
2OHである。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のパーフルオロポリエーテル化合物を含む、潤滑剤。
【請求項5】
下記式(1)で表されるパーフルオロポリエーテル化合物を含
み、
加熱により50%の重量減少が起こる温度が280℃を超える、潤滑剤:
R
1-CH
2-R
2-CH
2-R
3・・・(1)
式(1)中、R
1は、HOCH
2CH(OH)CH
2OCH
2CH(OH)CH
2O-であり、
R
2は、-(CF
2)
x(CF(CF
3))
yO(CF
2O)
z(CF
2CF
2O)
l(CF
2CF
2CF
2O)
m(CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n(CF(CF
3)CF
2O)
o(CF(CF
3))
y(CF
2)
x-であり、xは0~3の実数であり、yは0~1の実数であり、z、l、m、n、oは、それぞれ0~15の実数であり、ただし、x、yのいずれか一方は1以上の実数であり、かつ、z、l、m、n、oの少なくともいずれか1つは1以上の実数であり、
R
3は、-OCH
2CH(OH)CH
2OH、または-OCH
2CH(OH)CH
2OCH
2CH(OH)CH
2OHである
。
【請求項6】
記録層、保護層および潤滑層がこの順に積層された磁気ディスクであって、
前記潤滑層は、請求項4または5に記載の潤滑剤を含む、磁気ディスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパーフルオロポリエーテル化合物、潤滑剤および磁気ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスクにおいては、基板上に形成された記録層の上に、記録層に記録された情報を保護するための保護層が形成され、保護層の上にさらに潤滑層が設けられた構成が主流である。近年の磁気ディスクの潤滑層には、薄膜化を行うため分子量を低下させた潤滑剤が用いられている。磁気ディスク用表面潤滑剤に関する従来技術として、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には種々のパーフルオロポリエーテル化合物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分子量を低下させた潤滑剤は、揮発しやすい傾向にある。潤滑剤が揮発して消失すると、磁気ディスクと磁気ヘッドが接触した際、摩耗が生じやすくなる。あるいは、磁気ディスクに不純物が付着しやすくなることも考えられる。そのため、揮発性の低い、すなわち、耐熱性に優れる潤滑剤が求められる。
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術は、潤滑剤の揮発性を低下させる、すなわち耐熱性に優れ、且つフッ素系溶剤への溶解性にも優れる潤滑剤を実現するという観点から、未だ改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明の一態様は、優れた耐熱性およびフッ素系溶剤への良好な溶解性を有する潤滑剤を実現できる化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意努力を重ねた結果、両末端の炭化水素基に合計で5つまたは6つのヒドロキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物が、耐熱性に優れ、且つ、フッ素系溶剤への良好な溶解性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の態様を含む。
<1>下記式(1)で表されるパーフルオロポリエーテル化合物:
R1-CH2-R2-CH2-R3・・・(1)
式(1)中、R1は、HOCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2O-であり、
R2は、-(CF2)x(CF(CF3))yO(CF2O)z(CF2CF2O)l(CF2CF2CF2O)m(CF2CF2CF2CF2O)n(CF(CF3)CF2O)o(CF(CF3))y(CF2)x-であり、xは0~3の実数であり、yは0~1の実数であり、z、l、m、n、oは、それぞれ0~15の実数であり、ただし、x、yのいずれか一方は1以上の実数であり、かつ、z、l、m、n、oの少なくともいずれか1つが1以上の実数であり、
R3は、-OCH2CH(OH)CH2OH、または-OCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OHである。
<2><1>に記載のパーフルオロポリエーテル化合物を含む、潤滑剤。
<3>記録層、保護層および潤滑層がこの順に積層された磁気ディスクであって、
前記潤滑層は、<2>に記載の潤滑剤を含む、磁気ディスク。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、優れた耐熱性およびフッ素系溶剤への良好な溶解性を有する潤滑剤を実現できる化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る磁気ディスクの構成を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る磁気ディスクの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0011】
〔1.パーフルオロポリエーテル化合物〕
本発明の一実施形態に係るパーフルオロポリエーテル化合物は、下記式(1)で表される構造を有する。
R1-CH2-R2-CH2-R3・・・(1)
式(1)中、R1は、HOCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2O-であり、
R2は、-(CF2)x(CF(CF3))yO(CF2O)z(CF2CF2O)l(CF2CF2CF2O)m(CF2CF2CF2CF2O)n(CF(CF3)CF2O)o(CF(CF3))y(CF2)x-であり、xは0~3の実数であり、yは0~1の実数であり、z、l、m、n、oは、それぞれ0~15の実数であり、ただし、x、yのいずれか一方は1以上の実数であり、かつ、z、l、m、n、oの少なくともいずれか1つが1以上の実数であり、
R3は、-OCH2CH(OH)CH2OH、または-OCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OHである。
【0012】
本発明者らは、現行品よりも耐熱性に優れ、且つ、フッ素系溶剤への溶解性に優れる潤滑剤を開発するため、様々な合成経路を考案した。その結果、パーフルオロポリエーテル化合物の両末端のヒドロキシル基の数が合計で5つまたは6つに制御された化合物が、耐熱性に優れ、且つ、フッ素系溶剤への溶解性が良好であることを見出した。当該潤滑剤は、高温環境下において、磁気ディスクに塗布した潤滑層の重量減少が小さく、且つ、揮発しにくいゆえに、優れた耐熱性を示す。
【0013】
一方で、パーフルオロポリエーテル化合物の両末端のヒドロキシル基の数が合計で7つ以上になると、フッ素系溶剤への溶解性が悪くなるということも見出した。
【0014】
本明細書中、「耐熱性に優れる」潤滑剤かどうかは、実施例に記載のTG(熱重量分析:Thermogravimetry)による耐熱性評価および磁気ディスク上での蒸発性評価を行うことにより、評価することができる。TGによる耐熱性評価は、潤滑剤を塗布した磁気ディスクを加熱した後の潤滑層において、50%の重量減少が起こる温度(T50)がどれだけ高いかを評価する。また、磁気ディスク上での蒸発性評価は、潤滑剤を塗布した磁気ディスクを加熱した後の潤滑層の膜厚減少率がどれだけ小さいかを評価する。本明細書中、「フッ素系溶剤への溶解性が良好」な潤滑剤かどうかは、実施例に記載のフッ素系溶剤への溶解性の評価を行うことにより、評価することができる。
【0015】
本発明の一実施形態に係るパーフルオロポリエーテル化合物は、前記式(1)で表されるものであれば特に限定されるものではなく、上述したR1~R3の任意の組み合わせを含むものである。
【0016】
R2としては、例えば、デムナム骨格:-CF2CF2O-(CF2CF2CF2O)mCF2CF2-、フォンブリン骨格:-CF2O-(CF2O)z(CF2CF2O)lCF2-、C2骨格:-CF2O-(CF2CF2O)lCF2-、C4骨格:-CF2CF2CF2O-(CF2CF2CF2CF2O)nCF2CF2CF2-、クライトックス骨格:CF(CF3)O-(CF(CF3)CF2O)oCF(CF3)-が挙げられる。好ましくはデムナム骨格である。また、R2は、上記骨格のうち、ただ1種類からなる骨格であってもよく、2種類以上からなる骨格であってもよい。2種類以上からなる骨格としては、特に限定されないが、例えば、クライトックス骨格とC2骨格とからなる骨格であってもよい。前記骨格中、z、l、m、n、oは1~15の実数である。なお、フォンブリン骨格においてCF2OとCF2CF2Oとはランダムに繰り返され得る。
【0017】
〔2.パーフルオロポリエーテル化合物の製造方法〕
本発明の一実施例に係るパーフルオロポリエーテル化合物の製造方法は、特に限定されるものではない。前記パーフルオロポリエーテル化合物は、例えば、末端にヒドロキシル基を有する直鎖フルオロポリエーテル(a)と、グリシドール、2,2-ジメチル-4-(2,3-エポキシ)プロポキシメチル-1,3-ジオキソランおよび/または3-(2-オキシラニルメトキシ)-1,2-プロパンジオール等とを反応させることにより得られる。
【0018】
例えば、デムナム骨格を有するパーフルオロポリエーテル化合物を得る場合は、末端にヒドロキシル基を有する直鎖フルオロポリエーテル(a)として、HOCH2-CF2CF2O-(CF2CF2CF2O)vCF2CF2-CH2OHで示される化合物を例示できる。この直鎖フルオロポリエーテルの数平均分子量は好ましくは500~4000、より好ましくは800~2000である。ここで数平均分子量は日本電子製JNM-ECX400による19F-NMRによって測定された値である。NMRの測定において、試料を溶媒へは希釈せず、試料そのものを測定に使用する。ケミカルシフトの基準は、フルオロポリエーテルの骨格構造の一部である既知のピークをもって代用する。vは、1~15の実数であり、好ましくは3~12の実数である。vが3~12の実数の場合、分子鎖がより平坦となるため好ましい。
【0019】
なお、デムナム骨格以外の骨格を有するパーフルオロポリエーテル化合物を得る場合は、所望の骨格を有し、且つ、末端にヒドロキシル基を有する直鎖フルオロポリエーテルを同様に用いることができる。
【0020】
上記直鎖フルオロポリエーテル(a)は、分子量分布を有する化合物であり、重量平均分子量/数平均分子量で示される分子量分布(PD)として、好ましくは1.0~1.5であり、より好ましくは1.0~1.3であり、さらに好ましくは1.0~1.1である。なお、当該分子量分布は、東ソー製HPLC-8220GPCを用いて、ポリマーラボラトリー製のカラム(PLgel Mixed E)、溶離液としてはHCFC系代替フロン、基準物質としては無官能のパーフルオロポリエーテルを使用して得られる特性値である。
【0021】
本発明の一実施形態に係るパーフルオロポリエーテル化合物は、具体的には以下の方法により合成され得る。まず、末端にヒドロキシル基を有する直鎖フルオロポリエーテル(a)と、グリシドール等とを触媒の存在下で反応させる。反応温度は20~90℃、好ましくは60~80℃である。反応時間は、5~20時間、好ましくは10~18時間である。上記(a)に対して、グリシドール等を1~3当量、触媒を0.01~0.5当量使用することが好ましい。触媒としてt-ブトキシナトリウム、t-ブトキシカリウムなどのアルカリ化合物を用いることができる。反応は溶剤中で行ってもよい。溶剤としてt-ブチルアルコール、トルエン、キシレンなどを用いることができる。その後、得られた反応産物を例えば水洗、シリカゲルクロマトグラフィーによって精製する。これにより上述の式(1)で表されるパーフルオロポリエーテル化合物が得られる。
【0022】
〔3.潤滑剤〕
本発明の一実施形態に係る潤滑剤は、上述の本発明の一実施形態に係るパーフルオロポリエーテル化合物を含む。上述のパーフルオロポリエーテル化合物は、単独で潤滑剤として用いることもできる。また、上記潤滑剤はその性能を損なわない範囲でパーフルオロポリエーテル化合物とその他の成分とを任意の比率で混合して用いることもできる。
【0023】
前記その他の成分としては、Fomblin(登録商標) Zdol(Solvay Solexis製)、Ztetraol(Solvay Solexis製)、Demnum(登録商標)(ダイキン工業製)、Krytox(登録商標)(Dupont製)等の公知の磁気ディスク用潤滑剤、PHOSFAROL A20H(MORESCO PHOSFAROL A20H)(MORESCO製)、MORESCO PHOSFAROL D-4OH(MORESCO製)等が挙げられる。
【0024】
当該潤滑剤は、磁気ディスクの摺動特性を向上させるための記録媒体用潤滑剤として用いられ得る。また、当該潤滑剤は、磁気ディスク以外にも磁気テープ等の記録媒体とヘッドとの間に摺動が伴う他の記録装置における記録媒体用潤滑剤としても用いられ得る。さらに、当該潤滑剤は、記録装置に限らず、摺動を伴う部分を有する機器の潤滑剤としても用いられ得る。
【0025】
〔4.磁気ディスク〕
本発明の一実施形態に係る磁気ディスク1は、
図1に示されるように、非磁性基板8の上に配置された記録層4、保護膜層(保護層)3および潤滑層2を含む。前記潤滑層2は、上述の潤滑剤を含んでいる。
【0026】
また実施形態においては、磁気ディスクは、
図2に示される磁気ディスク1のように、記録層4の下に配置される下層5、下層5の下に配置される1層以上の軟磁性下層6、および1層以上の軟磁性下層6の下に配置される接着層7を含むことができる。これらの層のすべては、一実施形態においては、非磁性基板8の上に形成することができる。
【0027】
潤滑層2以外の磁気ディスク1の各層は、磁気ディスクの個別の層に好適であると当該技術分野において知られている材料を含むことができる。例えば、記録層4の材料としては、鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性体を形成可能な元素にクロム、白金、タンタル等を加えた合金、またはその酸化物が挙げられる。また、保護層3の材料としては、カーボン、Si3N4、SiC、SiO2等が挙げられる。非磁性基板8の材料としては、アルミニウム合金、ガラス、ポリカーボネート等が挙げられる。
【0028】
〔5.磁気ディスクの製造方法〕
本発明の一態様に係る磁気ディスクの製造方法は、記録層と保護層とが積層されてなる積層体の、当該保護層の露出表面に本発明の一実施形態に係る潤滑剤を積層して潤滑層を形成する工程を含んでいる。
【0029】
記録層と保護層とが積層されてなる積層体の、当該保護層の露出表面に前記潤滑剤を積層して潤滑層を形成する方法としては、特に限定されるものではない。保護層の露出表面に潤滑剤を積層する方法としては、前記潤滑剤を溶剤に希釈した後、積層する方法が好ましい。溶剤としては、例えば3M製PF-5060、PF-5080、HFE-7100、HFE-7200、DuPont製Vertrel-XF(登録商標)等が挙げられる。前記溶剤で希釈した後の潤滑剤の濃度は、0.001重量%~1重量%が好ましく、0.005重量%~0.5重量%がより好ましく、0.01重量%~0.1重量%がさらに好ましい。前記溶剤で希釈した後の潤滑剤の濃度が、0.01重量%~0.1重量%であれば、潤滑剤の粘度を十分に小さくすることができ、潤滑層の厚さを調節しやすい。
【0030】
記録層と保護層とをこの順に形成し、前記潤滑剤を前記保護層の露出表面に積層した後、紫外線照射または熱処理を行ってもよい。
【0031】
紫外線照射または熱処理を行うことで、潤滑層と保護層の露出表面との間に、より強固な結合を形成し、加熱による潤滑剤の蒸発を防ぐことができる。紫外線照射を行う場合には、潤滑層および保護層の深部に影響を与えず、露出表面を活性化させるために、185nmまたは254nmの波長を主波長とする紫外線を用いることが好ましい。熱処理を行う場合の温度は、60~170℃であることが好ましく、80~170℃がより好ましく、80~150℃がさらに好ましい。
【実施例】
【0032】
以下に、本発明の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例におけるTGによる耐熱性評価、フッ素系溶剤への溶解性評価、および磁気ディスク上での蒸発性評価を、以下の方法により行った。
【0033】
〔TGによる耐熱性評価〕
熱重量分析装置(セイコーインスツルメンツ製、EXSTAR6000)を用いて、潤滑剤の耐熱性評価を行った。化合物1~12をそれぞれ5mgとり、プラチナ製容器に加えた。次いで、上記容器を窒素雰囲気下、昇温速度2℃/分で550℃まで加熱し、上記化合物の50%の重量減少が起こる温度(T50)を測定した。50%の重量減少が起こる温度(T50)が280℃を超えた場合に○、超えなかった場合に×と判断した。
【0034】
〔フッ素系溶剤への溶解性の評価〕
化合物1~12をそれぞれ0.03g秤量した後、AGC製アサヒクリンAK-225Gを加え、30gとした。激しく撹拌した後、得られた溶液を目視で確認した。潤滑剤が溶解した場合に○、溶解しなかった場合に×と判断した。
【0035】
〔磁気ディスク上での蒸発性評価〕
化合物1~11をそれぞれ三井・ケマーズ・フロロプロダクツ製Vertrel-XFに溶解させ、ディップ法にて磁気ディスクへ潤滑層の膜厚が13Åになるよう塗布した。潤滑層の膜厚は、FT-IR(Bruker製、VERTEX70)を用いて、測定した。潤滑剤を塗布した磁気ディスクを60℃のオーブンで1日加熱し、加熱後の潤滑層の膜厚を測定した。加熱後の潤滑層の膜厚減少率が10%未満の場合に○、10%以上の場合に×と判断した。
【0036】
なお、化合物12は、Vertrel-XFに溶解しなかったため、ディスクへ塗布することができなかった。
【0037】
〔実施例1〕
下記式で表される化合物1を以下のように合成した。
【0038】
【化1】
なお、化合物1は式(1)のR
2がデムナム骨格、R
3が-OCH
2CH(OH)CH
2OHで表される炭化水素基である化合物に相当する。
【0039】
まず、t-ブチルアルコール65g、HOCH2CF2CF2O(CF2CF2CF2O)mCF2CF2CH2OHで表されるパーフルオロポリエーテル150g、カリウムt-ブトキシド1.6g、およびグリシドール9.7gをフラスコに入れ、アルゴン雰囲気下、70℃で20時間撹拌した。その後、得られた反応産物を水洗し、次いで脱水し、さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製することにより、一方の末端に1つのヒドロキシル基を有し、もう一方の末端にグリシドールとの反応によって2つのヒドロキシル基を有するパーフルオロポリエーテルを65g得た。
【0040】
このパーフルオロポリエーテル化合物10gをt-ブチルアルコール5gに溶解させた。次いで、この溶液に、カリウムt-ブトキシド0.1g、および2,2-ジメチル-4-(2,3-エポキシ)プロポキシメチル-1,3-ジオキソラン1.8gを加えて、アルゴン雰囲気下、70℃で17時間撹拌した。その後、得られた反応産物を水洗し、次いで脱水し、メタノール100g、水11g、および60%硝酸水溶液0.4gを加え、39時間撹拌した。その後、得られた反応産物を水洗し、次いで脱水し、さらに蒸留により精製し、化合物1を7g得た。NMRを用いて行った化合物1の同定結果を以下に示す。
【0041】
19F-NMR(溶媒:なし、基準物質:生成物中の-OCF2CF2CF2O-を-129.7ppmとする。)
δ=-129.7ppm[11F、-OCF2CF2CF2O-]
δ=-84.1ppm[22F、-OCF2CF2CF2O-]
δ=-124.0ppm[4F、-OCF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2(OH)CH2OH、-OCF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2OH]δ=-86.4ppm[4F、-OCF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OH、-OCF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2OH]
19F-NMRの結果、化合物1は、m=5.7であることがわかった。
【0042】
1H-NMR(溶媒:なし、基準物質:D2O)
δ=3.0~4.4ppm[19H、HOCH2CH(OH)CH2OCH2CF2CF2O(CF2CF2CF2O)mCF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OH]
δ=4.6ppm[5H、HOCH2CH(OH)CH2OCH2CF2CF2O(CF2CF2CF2O)mCF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OH]
得られた化合物1を実施例1の潤滑剤として用いた。
【0043】
〔実施例2〕
下記式で表される化合物2を以下のように合成した。
【0044】
【化2】
なお、化合物2は式(1)のR
2がデムナム骨格、R
3が-OCH
2CH(OH)CH
2OCH
2CH(OH)CH
2OHで表される炭化水素基である化合物に相当する。
【0045】
まず、t-ブチルアルコール65g、HOCH2CF2CF2O(CF2CF2CF2O)mCF2CF2CH2OHで表されるパーフルオロポリエーテル25g、カリウムt-ブトキシド0.3g、および2,2-ジメチル-4-(2,3-エポキシ)プロポキシメチル-1,3-ジオキソラン9.6gをフラスコに入れ、アルゴン雰囲気下、70℃で23時間撹拌した。その後、得られた反応産物を水洗し、次いで脱水して、メタノール100g、水11g、および60%硝酸水溶液0.4gを加え、39時間撹拌した。その後、得られた反応産物を水洗し、次いで脱水し、さらに蒸留により精製し、化合物2を20g得た。NMRを用いて行った化合物2の同定結果を以下に示す。
【0046】
19F-NMR(溶媒:なし、基準物質:生成物中の-OCF2CF2CF2O-を-129.7ppmとする。)
δ=-129.7ppm[11F、-OCF2CF2CF2O-]
δ=-84.1ppm[22F、-OCF2CF2CF2O-]
δ=-124.0ppm[4F、-OCF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2(OH)CH2OH、-OCF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2OH]δ=-86.4ppm[4F、-OCF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OH、-OCF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2OH]
19F-NMRの結果、化合物2は、m=5.5であることがわかった。
【0047】
1H-NMR(溶媒:なし、基準物質:D2O)
δ=3.0~4.4ppm[24H、HOCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CF2CF2O(CF2CF2CF2O)mCF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OH]
δ=4.6ppm[6H、HOCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CF2CF2O(CF2CF2CF2O)mCF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OH]
得られた化合物2を実施例2の潤滑剤として用いた。
【0048】
〔実施例3〕
下記式で表される化合物3を以下のように合成した。
【0049】
【化3】
なお、化合物3は式(1)のR
2がフォンブリン骨格、R
3が-OCH
2CH(OH)CH
2OHで表される炭化水素基である化合物に相当する。
【0050】
用いるパーフルオロポリエーテルをHOCH2CF2O(CF2O)z(CF2CF2O)lCF2CH2OHで表されるパーフルオロポリエーテルに変更したこと以外は、化合物1と同様の手順で化合物3を合成した。NMRを用いて行った化合物3の同定結果を以下に示す。
【0051】
19F-NMR(溶媒:なし、基準:生成物中の-OCF2OCF2CF2OCF2-を-90.7ppmとする。)
δ=-52.1、-53.7、-55.4ppm[11F、-OCF2O-]
δ=-89.1、-90.7ppm[23F、-OCF2CF2O-]
δ=-77.9、-80.0ppm[4F、-OCF2CH2O-]
19F-NMRの結果、化合物3は、z=5.6、l=5.7であることがわかった。
【0052】
1H-NMR(溶媒:なし、基準物質:D2O)
δ=3.0~4.4ppm[19H、HOCH2CH(OH)CH2OCH2CF2O(CF2O)z(CF2CF2O)lCF2CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OH]
δ=4.6ppm[5H、HOCH2CH(OH)CH2OCH2CF2O(CF2O)z(CF2CF2O)lCF2CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OH]
得られた化合物3を実施例3の潤滑剤として用いた。
【0053】
〔実施例4〕
下記式で表される化合物4を以下のように合成した。
【0054】
【化4】
なお、化合物4は式(1)のR
2がフォンブリン骨格、R
3が-OCH
2CH(OH)CH
2OCH
2CH(OH)CH
2OHで表される炭化水素基である化合物に相当する。
【0055】
用いるパーフルオロポリエーテルをHOCH2CF2O(CF2O)z(CF2CF2O)lCF2CH2OHで表されるパーフルオロポリエーテルに変更したこと以外は、化合物2と同様の手順で化合物4を合成した。NMRを用いて行った化合物4の同定結果を以下に示す。
【0056】
19F-NMR(溶媒:なし、基準:生成物中の-OCF2OCF2CF2OCF2-を-90.7ppmとする。)
δ=-52.1、-53.7、-55.4ppm[11F、-OCF2O-]
δ=-89.1、-90.7ppm[23F、-OCF2CF2O-]
δ=-77.9、-80.0ppm[4F、-OCF2CH2O-]
19F-NMRの結果、化合物4は、z=5.7、l=5.8であることがわかった。
【0057】
1H-NMR(溶媒:なし、基準物質:D2O)
δ=3.0~4.4ppm[24H、HOCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CF2O(CF2O)z(CF2CF2O)lCF2CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OH]
δ=4.6ppm[6H、HOCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CF2O(CF2O)z(CF2CF2O)lCF2CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OH]
得られた化合物4を実施例4の潤滑剤として用いた。
【0058】
〔実施例5〕
下記式で表される化合物5を以下のように合成した。
【0059】
【化5】
なお、化合物5は式(1)のR
2がC2骨格、R
3が-OCH
2CH(OH)CH
2OHで表される炭化水素基である化合物に相当する。
【0060】
用いるパーフルオロポリエーテルをHOCH2CF2O(CF2CF2O)lCF2CH2OHで表されるパーフルオロポリエーテルに変更したこと以外は、化合物1と同様の手順で化合物5を合成した。NMRを用いて行った化合物5の同定結果を以下に示す。
【0061】
19F-NMR(溶媒:なし、基準:生成物中の-OCF2CF2O-を-90.7ppmとする。)
δ=-90.7ppm[47F、-CF2CF2O-]
δ=-79.8ppm[4F、-CH2CF2O-]
19F-NMRの結果、化合物5は、l=11.8であることがわかった。
【0062】
1H-NMR(溶媒:なし、基準物質:D2O)
δ=3.0~4.4ppm[19H、HOCH2CH(OH)CH2OCH2CF2O(CF2CF2O)lCF2CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OH]
δ=4.6ppm[5H、HOCH2CH(OH)CH2OCH2CF2O(CF2CF2O)lCF2CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OH]
得られた化合物5を実施例5の潤滑剤として用いた。
【0063】
〔実施例6〕
下記式で表される化合物6を以下のように合成した。
【0064】
【化6】
なお、化合物6は式(1)のR
2がC2骨格、R
3が-OCH
2CH(OH)CH
2OCH
2CH(OH)CH
2OHで表される炭化水素基である化合物に相当する。
【0065】
用いるパーフルオロポリエーテルをHOCH2CF2O(CF2CF2O)lCF2CH2OHで表されるパーフルオロポリエーテルに変更したこと以外は、化合物2と同様の手順で化合物6を合成した。NMRを用いて行った化合物6の同定結果を以下に示す。
【0066】
19F-NMR(溶媒:なし、基準:生成物中の-OCF2CF2O-を-90.7ppmとする。)
δ=-90.7ppm[34F、-CF2CF2O-]
δ=-79.8ppm[4F、-CH2CF2O-]
19F-NMRの結果、化合物6は、l=8.6であることがわかった。
【0067】
1H-NMR(溶媒:なし、基準物質:D2O)
δ=3.0~4.4ppm[24H、HOCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CF2O(CF2CF2O)lCF2CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OH]
δ=4.6ppm[6H、HOCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CF2O(CF2CF2O)lCF2CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OH]
得られた化合物6を実施例6の潤滑剤として用いた。
【0068】
〔実施例7〕
下記式で表される化合物7を以下のように合成した。
【0069】
【化7】
なお、化合物7は式(1)のR
2がC4骨格、R
3が-OCH
2CH(OH)CH
2OHで表される炭化水素基である化合物に相当する。
【0070】
用いるパーフルオロポリエーテルをHOCH2CF2CF2CF2O(CF2CF2CF2CF2O)nCF2CF2CF2CH2OHで表されるパーフルオロポリエーテルに変更したこと以外は、化合物1と同様の手順で化合物7を合成した。NMRを用いて行った化合物7の同定結果を以下に示す。
【0071】
19F-NMR(溶媒:なし、基準:生成物中の-OCF2CF2CF2CF2O-を-126.2ppmとする。)
δ=-127.3ppm[4F、-OCF2CF2CF2CH2O-]
δ=-126.2ppm[15F、-OCF2CF2CF2CF2O-]
δ=-120.5ppm[4F、-OCF2CF2CF2CH2O-]
δ=-83.8ppm[4F、-OCF2CF2CF2CF2O-、-OCF2CF2CF2CH2O-]
19F-NMRの結果、化合物7は、n=3.7であることがわかった。
【0072】
1H-NMR(溶媒:なし、基準物質:D2O)
δ=3.0~4.4ppm[19H、HOCH2CH(OH)CH2OCH2CF2CF2CF2O(CF2CF2CF2CF2O)nCF2CF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OH]
δ=4.6ppm[5H、HOCH2CH(OH)CH2OCH2CF2CF2CF2O(CF2CF2CF2CF2O)nCF2CF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OH]
得られた化合物7を実施例7の潤滑剤として用いた。
【0073】
〔実施例8〕
下記式で表される化合物8を以下のように合成した。
【0074】
【化8】
なお、化合物8は式(1)のR
2がC4骨格、R
3が-OCH
2CH(OH)CH
2OCH
2CH(OH)CH
2OHで表される炭化水素基である化合物に相当する。
【0075】
用いるパーフルオロポリエーテルをHOCH2CF2CF2CF2O(CF2CF2CF2CF2O)nCF2CF2CF2CH2OHで表されるパーフルオロポリエーテルに変更したこと以外は、化合物2と同様の手順で化合物8を合成した。NMRを用いて行った化合物8の同定結果を以下に示す。
【0076】
19F-NMR(溶媒:なし、基準:生成物中の-OCF2CF2CF2CF2O-を-126.2ppmとする。)
δ=-127.3ppm[4F、-OCF2CF2CF2CH2O-]
δ=-126.2ppm[15F、-OCF2CF2CF2CF2O-]
δ=-120.5ppm[4F、-OCF2CF2CF2CH2O-]
δ=-83.8ppm[4F、-OCF2CF2CF2CF2O-、-OCF2CF2CF2CH2O-]
19F-NMRの結果、化合物8は、n=3.7であることがわかった。
【0077】
1H-NMR(溶媒:なし、基準物質:D2O)
δ=3.0~4.4ppm[24H、HOCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CF2CF2CF2O(CF2CF2CF2CF2O)nCF2CF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OH]
δ=4.6ppm[6H、HOCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CF2CF2CF2O(CF2CF2CF2CF2O)nCF2CF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OH]
得られた化合物8を実施例8の潤滑剤として用いた。
【0078】
〔実施例9〕
下記式で表される化合物9を以下のように合成した。
【0079】
【化9】
なお、化合物9は式(1)のR
2がクライトックス骨格とC2骨格とからなり、R
3が-OCH
2CH(OH)CH
2OHで表される炭化水素基である化合物に相当する。
【0080】
用いるパーフルオロポリエーテルをHOCH2CF(CF3)(OCF2CF(CF3))oOCF2CF2O(CF(CF3)CF2O)oCF(CF3)CH2OHで表されるパーフルオロポリエーテルに変更したこと以外は、化合物1と同様の手順で化合物9を合成した。NMRを用いて行った化合物9の同定結果を以下に示す。
【0081】
19F-NMR(溶媒:なし、基準:生成物中の-CF(CF3)CF2O-を-80.4ppmとする。)
δ=-144.7ppm[5F、-CF(CF3)CF2O-]
δ=-134.5ppm[2F、-OCF(CF3)CH2O-]
δ=-86.0ppm[4F、-OCF2CF2O-]
δ=-83.1ppm[11F、-CF(CF3)CF2O-]
δ=-80.4ppm[22F、-CF(CF3)CF2O-、-OCF(CF3)CH2O-]
19F-NMRの結果、化合物9は、o=2.7であることがわかった。
【0082】
1H-NMR(溶媒:なし、基準物質:D2O)
δ=3.0~4.4ppm[19H、HOCH2CH(OH)CH2OCH2CF(CF3)(OCF2CF(CF3))oOCF2CF2O(CF(CF3)CF2O)oCF(CF3)CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OH]
δ=4.6ppm[5H、HOCH2CH(OH)CH2OCH2CF(CF3)(OCF2CF(CF3))oOCF2CF2O(CF(CF3)CF2O)oCF(CF3)CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OH]
得られた化合物9を実施例9の潤滑剤として用いた。
【0083】
〔実施例10〕
下記式で表される化合物10を以下のように合成した。
【0084】
【化10】
なお、化合物10は式(1)のR
2がクライトックス骨格とC2骨格とからなり、R
3が-OCH
2CH(OH)CH
2OCH
2CH(OH)CH
2OHで表される炭化水素基である化合物に相当する。
【0085】
用いるパーフルオロポリエーテルをHOCH2CF(CF3)(OCF2CF(CF3))oOCF2CF2O(CF(CF3)CF2O)oCF(CF3)CH2OHで表されるパーフルオロポリエーテルに変更したこと以外は、化合物2と同様の手順で化合物10を合成した。NMRを用いて行った化合物10の同定結果を以下に示す。
【0086】
19F-NMR(溶媒:なし、基準:生成物中の-CF(CF3)CF2O-を-80.4ppmとする。)
δ=-144.7ppm[5F、-CF(CF3)CF2O-]
δ=-134.5ppm[2F、-OCF(CF3)CH2O-]
δ=-86.0ppm[4F、-OCF2CF2O-]
δ=-83.1pm[11F、-CF(CF3)CF2O-]
δ=-80.4ppm[22F、-CF(CF3)CF2O-、-OCF(CF3)CH2O-]
19F-NMRの結果、化合物10は、o=2.7であることがわかった。
【0087】
1H-NMR(溶媒:なし、基準物質:D2O)
δ=3.0~4.4ppm[24H、HOCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CF(CF3)(OCF2CF(CF3))oOCF2CF2O(CF(CF3)CF2O)oCF(CF3)CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OH]
δ=4.6ppm[6H、HOCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CF(CF3)(OCF2CF(CF3))oOCF2CF2O(CF(CF3)CF2O)oCF(CF3)CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OH]
得られた化合物10を実施例10の潤滑剤として用いた。
【0088】
〔比較例1〕
比較例1の潤滑剤として、下記のようにデムナム骨格を有し、両末端の炭化水素基に合計で4つのヒドロキシル基を有する化合物11を使用した。
【化11】
ここでm=6.1である。
【0089】
〔比較例2〕
比較例2の潤滑剤として、下記のようにデムナム骨格を有し、両末端の炭化水素基に合計で7つのヒドロキシル基を有する化合物12を使用した。
【化12】
ここでm=5.8である。
【0090】
〔評価の結果〕
TGによる耐熱性評価、フッ素系溶剤への溶解性評価、および磁気ディスク上での蒸発性評価の結果を表1に示す。
【0091】
【表1】
表1より、実施例1~10および比較例2は比較例1に比べて、50%重量減少する温度(T50)が高かった。
【0092】
また、実施例1~10および比較例1はフッ素系溶剤に溶解したが、比較例2は溶解しなかった。すなわち、比較例2の化合物は磁気ディスクへの塗布に使用できないことがわかった。
【0093】
さらに、実施例1~10は比較例1に比べて、磁気ディスク上の潤滑剤の膜厚減少率が小さかった。このことから、実施例1~10は比較例1に比べて、長時間の加熱環境下であっても、膜厚が減少しにくいことがわかった。
【0094】
すなわち、本発明の一実施形態に係る化合物は揮発性が低く、耐熱性に優れ、かつ、フッ素系溶剤への良好な溶解性を有していることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の一態様のパーフルオロポリエーテル化合物は、磁気ディスク用の潤滑剤として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 磁気ディスク
2 潤滑層
3 保護膜層(保護層)
4 記録層
5 下層
6 軟磁性下層
7 接着層
8 非磁性基板