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特許7337257新規なシリルシクロジシラザン化合物およびこれを用いたシリコン含有薄膜の製造方法
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  • 特許-新規なシリルシクロジシラザン化合物およびこれを用いたシリコン含有薄膜の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】新規なシリルシクロジシラザン化合物およびこれを用いたシリコン含有薄膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/21 20060101AFI20230825BHJP
   C23C 16/18 20060101ALI20230825BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20230825BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20230825BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230825BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20230825BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
C07F7/21 CSP
C23C16/18
C23C16/42
H01L21/205
H01L21/31 C
H01L21/316 X
H01L21/318 B
H01L21/318 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022511326
(86)(22)【出願日】2020-08-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-27
(86)【国際出願番号】 KR2020010771
(87)【国際公開番号】W WO2021034014
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-02-21
(31)【優先権主張番号】10-2019-0102771
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514145604
【氏名又は名称】ディーエヌエフ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DNF Co. Ltd.
【住所又は居所原語表記】142 Daehwa-ro 132beon-gil, Daedeok-gu, Daejeon 306-802 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ス チン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソン キ
(72)【発明者】
【氏名】パク,チョン チュ
(72)【発明者】
【氏名】ビュン,テソク
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ヨン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン フン
(72)【発明者】
【氏名】リム,ヘンドン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,サン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リ,サン イク
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0163927(US,A1)
【文献】特開2018-027962(JP,A)
【文献】特表2017-507908(JP,A)
【文献】特表2018-523753(JP,A)
【文献】A. M. Wrobel,Surface Free Energy of Plasma-Deposited Thin Polymer Films,1983年,pp. 197-215
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
C07F 7/21
C23C 16/18
C23C 16/42
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/316
H01L 21/318
・DB
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される、シリルシクロジシラザン化合物。
[化学式1]
(前記化学式1中、
~Rは、互いに独立して、水素、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルであり、
は、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルである。)
【請求項2】
前記RおよびRは、互いに独立して、C1-C5アルキルまたはC2-C5アルケニルであり、
は、水素、C1-C5アルキルまたはC2-C5アルケニルであり、
は、C1-C5アルキルまたはC2-C5アルケニルであり、
およびRは、互いに独立して、水素、C1-C5アルキルまたはC2-C5アルケニルであり、
は、C1-C5アルキルまたはC2-C5アルケニルである、請求項1に記載のシリルシクロジシラザン化合物。
【請求項3】
前記シリルシクロジシラザン化合物は、下記化合物から選択される、請求項1に記載のシリルシクロジシラザン化合物。
【請求項4】
下記化学式2で表されるシリルシクロジシラザン化合物を含む、シリコン含有薄膜蒸着用組成物。
[化学式2]
(前記化学式2中、
11~R17は、互いに独立して、水素、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルであり、
18は、水素、C1-C7アルキル、C2-C7アルケニルまたは-SiRであり、
、RおよびRは、互いに独立して、水素、C1-C7アルキル、C3-C7シクロアルキルまたはC2-C7アルケニルであり、
ただし、R11~R14がいずれもC1-C7アルキルである場合、R18は、-SiRではない。)
【請求項5】
前記R11およびR13は、互いに独立して、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルであり、
12およびR14は、互いに独立して、水素、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルであり、
15は、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルであり、
16およびR17は、互いに独立して、水素、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルであり、
18は、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルである、請求項4に記載のシリコン含有薄膜蒸着用組成物。
【請求項6】
前記R11およびR13は、互いに独立して、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルであり、
12は、水素、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルであり、
14は、水素であり、
15は、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルであり、
16およびR17は、互いに独立して、水素、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルであり、
18は、-SiRであり、
は、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルであり、
およびRは、互いに独立して、水素、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルである、請求項4に記載のシリコン含有薄膜蒸着用組成物。
【請求項7】
前記シリルシクロジシラザン化合物は、下記化合物から選択される、請求項4に記載のシリコン含有薄膜蒸着用組成物。
【請求項8】
請求項4から請求項7のいずれか一項に記載のシリコン含有薄膜蒸着用組成物を用いる、シリコン含有薄膜の製造方法。
【請求項9】
原子層蒸着法(ALD)、気相蒸着法(CVD)、有機金属化学気相蒸着法(MOCVD)、低圧気相蒸着法(LPCVD)、プラズマ強化気相蒸着法(PECVD)またはプラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)で行われる、請求項8に記載のシリコン含有薄膜の製造方法。
【請求項10】
前記シリコン含有薄膜は、シリコン酸化膜(SiO)、シリコンオキシ炭化膜(SiOC)、シリコン窒化膜(SiN)、シリコンオキシ窒化膜(SiON)、シリコン炭窒化膜(SiCN)またはシリコン炭化膜(SIC)である、請求項8に記載のシリコン含有薄膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なシリルシクロジシラザン化合物およびこれを用いたシリコン含有薄膜形成に関し、より詳細には、熱的に安定し、揮発性が強い化合物であり、室温および容易な取り扱いが可能な圧力で液体状である新規なシリルシクロシラザン化合物およびこれを用いたシリコン含有薄膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン含有薄膜は、半導体分野において様々な蒸着工程によりシリコン膜(silicon)、シリコン酸化膜(silicon oxide)、シリコン窒化膜(silicon nitride)、シリコン炭窒化膜(Silicon carbonitride)、およびシリコンオキシ窒化膜(Silicon oxynitride)など、様々な形態の薄膜に製造され、その応用分野が広範である。
【0003】
特に、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜は、非常に優れた遮断特性および耐酸化性により、装置の製作において、絶縁膜、拡散防止膜、ハードマスク、エッチング停止層、シード層、スペーサ、トレンチアイソレーション、金属間誘電物質および保護膜層として使用されている。最近、多結晶シリコン薄膜を薄膜トランジスタ(thin film transistor、TFT)、太陽電池などに用いており、その応用分野が次第に多様化している。
【0004】
シリコンが含有された薄膜を製造するための公知の代表的な技術は、混合されたガス状のシリコン前駆体と反応ガスが反応して基板の表面に膜を形成するか、表面上に直接反応して膜を形成する化学気相蒸着法(MOCVD)とガス状のシリコン前駆体が基板の表面に物理的または化学的に吸着された後、反応ガスの順次投入により膜を形成する原子層蒸着法(ALD)があり、これを応用した低圧化学気相蒸着法(LPCVD)および低温で蒸着が可能なプラズマを用いた化学気相蒸着法(PECVD)と原子層蒸着法(PEALD)など、様々な薄膜製造技術が次世代半導体およびディスプレイ素子の製造工程に適用されて、超微細パターンの形成とナノ単位の厚さで均一且つ優れた特性を有する極薄膜蒸着に使用されている。
【0005】
一般的に求められるシリコン含有薄膜の形成のための前駆体の特徴は、以下のとおりである。:[1]常温および常圧で液体状の化合物との優れた揮発性を有する化合物、[2]化合物自体の高い熱安定性と低い活性化エネルギーを有して反応性に優れた化合物、[3]薄膜形成の過程で不揮発性副生成物を生成しない化合物、および[4]取り扱いおよび運送と保管が容易な化合物。
【0006】
シリコン含有薄膜の形成のために使用される前駆体は、シラン、シラン塩化物、アミノシランおよびアルコキシシラン形態の化合物が代表的であり、具体的な一例として、ジクロロシラン(dichlrorosilane:SiH2Cl2)およびヘキサクロロジシラン(hexachlorodisilane:Cl3SiSiCl3)などのシラン塩化物形態の化合物とトリシリルアミン(trisilylamine:N(SiH33)、ビスジエチルアミノシラン(bis-diethylaminosilane:H2Si(N(CH2CH322)およびジイソプロピルアミノシラン(di-isopropylaminosilane:H3SiN(i-C372)などがあり、半導体の製造およびディスプレイ製造の量産工程に使用されている。
【0007】
しかし、素子の超高集積化に起因した素子の微細化とアスペクト比の増加および素子材料の多様化によって、所望の低い温度で均一な薄い厚さを有し、優れた電気的特性を有する超微細薄膜を形成する技術が求められており、既存のシリコン前駆体を用いた600℃以上の高温工程、ステップカバレッジおよびエッチング特性と薄膜の物理的および電気的特性が問題として取り上げられている。
【0008】
一方、素子において求められる、低温で均一な薄い厚さを有し、優れた電気的特性を有する超微細薄膜を形成しても、低い薄膜形成速度による生産性が問題として取り上げられており、向上した性能を有する新規なシリコン前駆体の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】WO2017-112732 A1
【非特許文献】
【0010】
【文献】Journal of The Electrochemical Society, 155 (4) K66-K76 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、新規なシリルシクロジシラザン化合物を提供する。
【0012】
本発明は、シリコン前駆体として熱安定性が高いとともに反応性に優れ、低い温度で優れた凝集力を有するシリルシクロジシラザン化合物を提供する。
【0013】
また、本発明は、高い熱安定性と反応性を有するシリルシクロジシラザン化合物を含むシリコン含有薄膜蒸着用組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記シリコン含有薄膜蒸着用組成物を用いて、高い蒸着率、優れたステップカバレッジなどの物理的および電気的特性に優れたシリコン含有薄膜を形成することができるシリコン含有薄膜の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、常温で液体であり、揮発性に優れ、高い熱安定性と反応性を有する新規なシリルシクロジシラザン化合物を提供する。
【0016】
本発明の新規なシリルシクロジシラザン化合物は、下記化学式1で表される。
[化学式1]
(前記化学式1中、
1~R6は、互いに独立して、水素、C1-C7アルキル、C3-C7シクロアルキルまたはC2-C7アルケニルであり、
7は、C1-C7アルキル、C3-C7シクロアルキルまたはC2-C7アルケニルである。)
【0017】
また、本発明は、薄膜蒸着前駆体として優れた特性を有する下記化学式2で表されるシリルシクロジシラザン化合物をシリコン含有薄膜蒸着前駆体として含むシリコン含有薄膜蒸着用組成物を提供する。
[化学式2]
(前記化学式2中、
11~R17は、互いに独立して、水素、C1-C7アルキル、C3-C7シクロアルキルまたはC2-C7アルケニルであり、
18は、水素、C1-C7アルキル、C3-C7シクロアルキル、C2-C7アルケニルまたは-SiRabcであり、
a、RbおよびRcは、互いに独立して、水素、C1-C7アルキル、C3-C7シクロアルキルまたはC2-C7アルケニルであり、
ただし、R11~R14がいずれもC1-C7アルキルである場合、R18は、-SiRabcではない。)
【0018】
また、本発明は、本発明の一実施形態によるシリコン含有薄膜蒸着用組成物を用いるシリコン含有薄膜の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の新規なシリルシクロジシラザン化合物は、常温で液体であり、揮発性が高く、熱安定性に優れ、低い活性化エネルギーを有することで、反応性に優れる。また、本発明の新規なシリルシクロジシラザン化合物は、室温および取り扱いが可能な圧力下において、液体状で存在するため、取り扱いが容易である。
【0020】
また、本発明のシリコン含有薄膜蒸着用組成物は、高い熱安定性と反応性を有するシリルシクロジシラザン化合物を含むことで、様々な条件下で、高い蒸着率により優れた凝集力と優れたステップカバレッジなどの物理的、電気的特性に優れ、不純物の含量を最小化して、純度および耐久性に優れた薄膜を製造することができる。
【0021】
また、本発明のシリコン含有薄膜の製造方法は、前記シリルシクロジシラザン化合物を含むシリコン含有薄膜蒸着用組成物を用いてシリコン含有薄膜を製造することで、シリコン含量が高く、熱安定性および耐久性に優れた高品質のシリコン含有薄膜の製造が可能である。
【0022】
本発明のシリルシクロジシラザン化合物を前駆体として製造されたシリコン含有薄膜は、純度が高く、非常に優れた物理的、電気的特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例2および実施例4で製造されたシリルシクロジシラザン化合物の蒸気圧測定結果を示す図である。
図2】実施例2および実施例4で製造されたシリルシクロジシラザン化合物の熱重量分析結果を示す図である。
図3】実施例5で製造されたシリコン酸化膜の蒸着速度結果を示す図である。
図4】実施例5で製造されたシリコン酸化膜のFT-IR分析結果を示す図である。
図5】実施例6で製造されたシリコン窒化膜のFT-IR分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のシリルシクロジシラザン化合物、その製造方法およびこれを含むシリコン含有薄膜蒸着用組成物について詳細に述べる。
【0025】
本明細書に記載の「アルキル」は、直鎖状および分岐状の飽和炭化水素を意味し、1~7個の炭素原子、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個の炭素原子を有し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、イソブチル、ペンチルなどを含む。
【0026】
本明細書に記載の「ハロゲン」は、ハロゲン族元素を示し、例えば、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを含む。
【0027】
本明細書に記載の単独でまたはさらに他の基の一部分として用語「アルケニル」は、2~7個の炭素原子および1個以上の炭素対炭素二重結合を含有する直鎖または分岐鎖の炭化水素ラジカルを意味する。好ましいアルケニルラジカルは、2~5個の炭素原子を有する低級アルケニルラジカルである。より好ましいアルケニルラジカルは、2~3個の炭素原子を有するラジカルである。また、アルケニル基は、任意の利用可能な付着地点で置換されることができる。アルケニルラジカルの例としては、ビニル、プロペニル、アリール、ブテニルおよび4-メチルブテニルが含まれる。用語アルケニルは、シスおよびトランス配向、または代案的に、EおよびZ配向を有するラジカルを含む。
【0028】
本発明は、シリコン含有薄膜製造の前駆体として非常に有用な新規なシリルシクロジシラザン化合物を提供するものであり、本発明のシリルシクロジシラザン化合物は、下記化学式1で表される。
【0029】
[化学式1]
(前記化学式1中、
1~R6は、互いに独立して、水素、C1-C7アルキル、C3-C7シクロアルキルまたはC2-C7アルケニルであり、
7は、C1-C7アルキル、C3-C7シクロアルキルまたはC2-C7アルケニルである。)
【0030】
本発明のシリルシクロジシラザン化合物は、Si32分子骨格を有する非対称形態の四員環、すなわち、N-シリルシクロジシラザン構造であり、シクロジシラザンの窒素原子にシリル置換体が導入され、シクロジシラザンのシリコン原子に少なくとも一つの水素原子が導入されることで、より低くなった活性化エネルギーとより高い熱安定性を有するとともにシリコン含有薄膜蒸着用前駆体としてより優れた反応性を有し、不揮発性副生成物を生成せず、高純度のシリコン含有薄膜を高い蒸着率で容易に形成することができる。それだけでなく、熱安定性にも優れ、耐久性が高いとともに純度に優れた薄膜を製造することができる。
【0031】
また、本発明のシリルシクロジシラザン化合物は、常温および常圧で液体状の化合物として優れた揮発性を有しており、分子内のシリコン原子の含量が高くて優れた蒸着率を示すことができる。
【0032】
好ましくは、本発明の前記化学式1中、前記R1およびR3は、互いに独立して、C1-C5アルキルまたはC2-C5アルケニルであり、R2は、水素、C1-C5アルキルまたはC2-C5アルケニルであり、R4は、C1-C5アルキルまたはC2-C5アルケニルであり、R5およびR6は、互いに独立して、水素、C1-C5アルキルまたはC2-C5アルケニルであり、R7は、C1-C5アルキルまたはC2-C5アルケニルであることができる。
【0033】
薄膜蒸着用前駆体としてより有用に使用するための面で、より好ましくは、本発明の前記化学式1中、前記R1およびR3は、互いに独立して、C1-C5アルキルであり、R2は、水素またはC1-C5アルキルであり、R4は、C1-C5アルキルであり、R5およびR6は、互いに独立して、水素またはC1-C5アルキルであり、R7は、C1-C5アルキルであることができ、さらに好ましくは、前記R1およびR3は、互いに独立して、C1-C3アルキルであり、R2は、水素またはC1-C3アルキルであり、R4は、C1-C3アルキルであり、R5およびR6は、互いに独立して、水素またはC1-C3アルキルであり、R7は、C1-C3アルキル、より好ましくは、C2-C3アルキルであることができる。
【0034】
一具体例において、前記R1およびR3は、互いに独立して、メチル、ビニル、イソプロペニルまたはアリールであり、R2は、水素、メチル、ビニル、イソプロペニルまたはアリールであり、R4は、メチル、ビニル、イソプロペニルまたはアリールであり、R5およびR6は、互いに独立して、水素、メチル、ビニル、イソプロペニルまたはアリールであり、R7は、エチル、ビニル、イソプロペニルまたはアリールであることができる。
【0035】
一具体例において、前記シリルシクロジシラザン化合物は、下記化学式1-1~1-4で表される化合物から選択される少なくとも一つであることができる。
【0036】
[化学式1-1]
【0037】
[化学式1-2]
【0038】
[化学式1-3]
【0039】
[化学式1-4]
【0040】
(前記化学式1-1~1-4中、
1~R7は、互いに独立して、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルである。)
【0041】
具体的には、前記化学式1-1~1-4中、前記R1~R7は、互いに独立して、C1-C5アルキルまたはC2-C5アルケニルであることができる。
【0042】
具体的には、前記化学式1-1~1-4中、前記R1~R7は、互いに独立して、C1-C5アルキルであることができる。
【0043】
具体的には、前記化学式1-1~1-4中、前記R1およびR3は、互いに独立して、C2-C5アルケニルであり、R2は、C1-C5アルキルまたはC2-C5アルケニルであり、R4~R7は、互いに独立して、C1-C5アルキルであることができる。
【0044】
具体的には、前記化学式1-1~1-4中、前記R1~R7は、互いに独立して、C1-C3アルキルであることができる。
【0045】
具体的には、前記化学式1-1~1-4中、前記R1およびR3は、互いに独立して、C2-C3アルケニルであり、R2は、C1-C3アルキルまたはC2-C3アルケニルであり、R4~R6は、互いに独立して、C1-C3アルキルであり、R7は、C2-C3アルキルであることができる。
【0046】
具体的には、前記化学式1-1~1-4中、前記R1~R6は、互いに独立して、C1-C3アルキルであり、R7は、C2-C3アルキルであることができる。
【0047】
具体的には、本発明の前記化学式1のシリルシクロジシラザン化合物は、下記化合物から選択されることができるが、これに限定されるものではない。
【0048】
【0049】
本発明の一実施形態による化学式1のシリルシクロジシラザン化合物は、当業者に公知の通常の有機化学反応により製造されることができることはいうまでもない。
【0050】
また、本発明は、反応性および熱安定性に優れ、且つほぼ室温において、液体で存在するため、取り扱いが容易な下記化学式2で表されるシリルシクロジシラザン化合物を薄膜蒸着用前駆体として含むシリコン含有薄膜蒸着用組成物を提供する。
【0051】
[化学式2]
(前記化学式2中、
11~R17は、互いに独立して、水素、C1-C7アルキル、C3-C7シクロアルキルまたはC2-C7アルケニルであり、
18は、水素、C1-C7アルキル、C3-C7シクロアルキル、C2-C7アルケニルまたは-SiRabcであり、
a、RbおよびRcは、互いに独立して、水素、C1-C7アルキル、C3-C7シクロアルキルまたはC2-C7アルケニルであり、
ただし、R11~R14がいずれもC1-C7アルキルである場合、R18は、-SiRabcではない。)
【0052】
本発明のシリコン含有薄膜蒸着用組成物に含まれるシリルシクロジシラザン化合物は、Si32分子骨格を有し、置換基による化合物の対称性と非対称性を調節して反応性を調節できるという利点を有しており、シクロジシラザンの窒素原子にシリル置換体が導入された構造によって低い活性化エネルギーを有し、高い蒸着率で容易に高品質のシリコン含有薄膜の蒸着が可能である。
【0053】
また、本発明の化学式2のシリルシクロジシラザン化合物は、ほぼ常温および常圧で液体状の化合物として優れた揮発性を有しており、分子内のシリコン原子の含量が高くて、これを含むシリコン含有薄膜蒸着用組成物は、高い蒸着率で良質のシリコン含有薄膜を非常に容易に蒸着するだけでなく、熱安定性にも優れ、耐久性が高いとともに純度に優れた薄膜を製造することができる。
【0054】
優れたシリコン含有薄膜を製造するための面で、好ましくは、本発明の前記化学式2中、R11~R13およびR15~R17は、互いに独立して、水素、C1-C7アルキル、C3-C7シクロアルキルまたはC2-C7アルケニルであり、R14は、水素であり、R18は、C1-C7アルキル、C3-C7シクロアルキルまたはC2-C7アルケニルであることができる。
【0055】
優れたシリコン含有薄膜を製造するための面で、好ましくは、本発明の前記化学式2中、前記R11~R14は、互いに独立して、C1-C7アルキル、C3-C7シクロアルキルまたはC2-C7アルケニルであり、R15~R17は、互いに独立して、水素、C1-C7アルキル、C3-C7シクロアルキルまたはC2-C7アルケニルであり、R18は、C1-C7アルキル、C3-C7シクロアルキルまたはC2-C7アルケニルであることができる。
【0056】
優れたシリコン含有薄膜を製造するための面で、好ましくは、本発明の前記化学式2中、前記R11およびR13は、互いに独立して、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルであり、R12およびR14は、互いに独立して、水素、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルであり、R15は、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルであり、R16およびR17は、互いに独立して、水素、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルであり、R18は、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルであることができる。
【0057】
より好ましくは、前記R11およびR13は、互いに独立して、C1-C5アルキルであり、R12およびR14は、互いに独立して、水素またはC1-C5アルキルであり、R15は、C1-C5アルキルであり、R16およびR17は、互いに独立して、水素またはC1-C5アルキルであり、R18は、C1-C5アルキルであることができる。
【0058】
優れたシリコン含有薄膜を製造するための面で、好ましくは、本発明の前記化学式2中、前記R11~R13およびR15~R17は、互いに独立して、水素、C1-C7アルキル、C3-C7シクロアルキルまたはC2-C7アルケニルであり、R14は、水素であり、R18は、-SiRabcであり、Raは、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルであり、RbおよびRcは、互いに独立して、水素、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルであることができる。
【0059】
より好ましくは、前記R11およびR13は、互いに独立して、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルであり、R12は、水素、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルであり、R14は、水素であり、R15は、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルであり、R16およびR17は、互いに独立して、水素、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルであり、R18は、-SiRabcであり、Raは、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルであり、RbおよびRcは、互いに独立して、水素、C1-C7アルキルまたはC2-C7アルケニルであることができる。
【0060】
さらに好ましくは、前記R11およびR13は、互いに独立して、C1-C5アルキルであり、R12は、水素またはC1-C5アルキルであり、R14は、水素であり、R15は、C1-C5アルキルであり、R16およびR17は、互いに独立して、水素またはC1-C5アルキルであり、R18は、-SiRabcであり、Raは、C1-C5アルキルであり、RbおよびRcは、互いに独立して、水素またはC1-C5アルキルであることができる。
【0061】
より優れた特性を有する薄膜蒸着用前駆体の面で、さらに好ましくは、本発明の化学式2のシリルシクロジシラザン化合物は、下記化学式2-1で表されることができる。
【0062】
[化学式2-1]
(前記化学式2-1中、R11およびR13は、互いに独立して、C1-C3アルキルであり、R12は、水素またはC1-C3アルキルであり、R15は、C1-C3アルキルであり、R16およびR17は、互いに独立して、水素またはC1-C3アルキルであり、R18は、C1-C3アルキルまたは-SiRabcであり、Raは、C1-C3アルキルであり、RbおよびRcは、互いに独立して、水素またはC1-C3アルキルである。)
【0063】
本発明の一実施形態において、前記R18は、C2-C3アルキルであることができる。
【0064】
本発明の一実施形態において、前記R18は、-SiRabcであり、Raは、C1-C3アルキルであり、RbおよびRcは、互いに独立して、水素またはC1-C3アルキルであることができる。
【0065】
より優れた特性を有する薄膜蒸着用前駆体の面で、さらに好ましくは、本発明の化学式2のシリルシクロジシラザン化合物は、下記化学式2-2で表されることができる。
【0066】
[化学式2-2]
(前記化学式2-2-中、R15は、C1-C3アルキルであり、R16およびR17は、互いに独立して、水素またはC1-C3アルキルであり、R18は、C1-C3アルキルである。)
【0067】
本発明の一実施形態において、前記R18は、C2-C3アルキルであることができる。
【0068】
具体的には、本発明の前記シリルシクロジシラザン化合物は、下記化合物から選択されることができるが、これに限定があるものではない。
【0069】
【0070】
本発明のシリコン含有薄膜蒸着用組成物は、前記化学式2のシリルシクロジシラザン化合物を前駆体として必ず含み、シリルシクロジシラザン化合物を一つ以上含むことができ、シリコン含有薄膜蒸着用組成物内にシリルシクロジシラザン化合物の含量は、薄膜の成膜条件または薄膜の厚さ、特性などを考慮して、当業者が認識することができる範囲内で含まれることができる。
【0071】
また、本発明は、本発明のシリコン含有薄膜蒸着用組成物を用いるシリコン含有薄膜の製造方法を提供する。
【0072】
一実施形態によるシリコン含有薄膜の製造方法は、常温で液体であり、揮発性が高く、熱安定性に優れた前記化学式2のシリルシクロジシラザン化合物を前駆体として含む本発明のシリコン含有薄膜蒸着用組成物を用いて薄膜を製造することで、前駆体の取り扱いが容易であり、様々な条件下でシリコン含有薄膜の製造が可能なだけでなく、高いシリコン含量で蒸着率が高く、優れたステップカバレッジを有する高純度のシリコン含有薄膜を製造することができる。
【0073】
一実施形態によるシリコン含有薄膜は、本技術分野において当業者が認識することができる範囲内で製造可能な薄膜であればいずれも可能であり、具体的には、シリコン酸化膜(SiO2)、シリコンオキシ炭化膜(SiOC)、シリコン窒化膜(SiN)、シリコンオキシ窒化膜(SiON)、シリコン炭窒化膜(SiCN)またはシリコン炭化膜(SIC)などであることができ、それ以外にも、当業者が認識可能な範囲内でシリコンを含有する高品質の様々な薄膜を製造することができる。
【0074】
一実施形態によるシリコン含有薄膜の製造方法は、本技術分野において当業者が認識することができる範囲内で可能な方法であればいずれも可能であるが、好ましくは、原子層蒸着法(ALD)、気相蒸着法(CVD)、有機金属化学気相蒸着法(MOCVD)、低圧気相蒸着法(LPCVD)、プラズマ強化気相蒸着法(PECVD)またはプラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)で行われることができ、薄膜蒸着がより容易であり、製造された薄膜が優れた特性を有するための面で、プラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)またはプラズマ強化気相蒸着法(PECVD)が好ましい。
【0075】
一実施形態によるシリコン含有薄膜の製造方法は、具体的には、a)チャンバ内に装着された基板の温度を30~400℃に加熱および維持するステップと、b)前記基板に本発明の一実施形態によるシリコン含有薄膜蒸着用組成物を接触させて前記基板に吸着させるステップと、c)反応ガスを注入して前記基板上にシリコン含有薄膜を蒸着させるステップとを含むことができる。
【0076】
好ましくは、本発明の一実施形態によるシリコン含有薄膜をプラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)またはプラズマ強化気相蒸着法(PECVD)で行う時に、a)ステップの後、プラズマを発生させるステップをさらに含むことができる。また、b)ステップにおいて、シリコン含有薄膜蒸着用組成物は、キャリアガスとともに注入されることもできる。
【0077】
一実施形態によるシリコン含有薄膜の製造方法は、目的とする薄膜の構造または熱的特性に応じて蒸着条件が調節されることができ、一実施形態による蒸着条件としては、シリルシクロジシラザン化合物を含有するシリコン含有薄膜蒸着用組成物の投入流量、反応ガス、キャリアガスの投入流量、圧力、RFパワー、基板温度などが例示されることができ、このような蒸着条件の非限定的な一例としては、シリコン含有薄膜蒸着用組成物の投入流量は、10~1000cc/min、キャリアガスは、10~1000cc/min、反応ガスの流量は、1~1000cc/min、圧力は、0.5~10torr、RFパワーは、200~1000Wおよび基板温度は、30~400℃、好ましくは、100~350℃の範囲で調節されることができるが、これに限定されるものではない。
【0078】
一実施形態によるシリコン含有薄膜の製造方法で使用される反応ガスは、製造しようとするシリコン含有薄膜の物質を考慮して、通常、シリコン前駆体とともに使用されるガスであれば使用可能であり、具体的な一例として、酸素(O2)、オゾン(O3)、蒸留水(H2O)、過酸化水素(H22)、一酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(N2O)、二酸化窒素(NO2)、アンモニア(NH3)、窒素(N2)、ヒドラジン(N24)、アミン、ジアミン、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、C1~C12飽和または不飽和炭化水素、水素、アルゴンおよびヘリウムから選択されるいずれか一つまたは二つ以上であることができ、キャリアガスは、アルゴン、ヘリウムおよび窒素から選択される一つまたは二つ以上であることができるが、これに限定されるものではない。
【0079】
一実施形態によるシリコン含有薄膜の製造方法に使用される基板は、Si、Ge、SiGe、GaP、GaAs、SiC、SiGeC、InAsおよびInPのうち一つ以上の半導体材料を含む基板;SOI(Silicon On Insulator)基板;石英基板;またはディスプレイ用ガラス基板;ポリイミド(polyimide)、ポリエチレンテレフタレート(PET、PolyEthylene Terephthalate)、ポリエチレンナフタレート(PEN、PolyEthylene Naphthalate)、ポリメチルメタクリレート(PMMA、Poly Methyl MethAcrylate)、ポリカーボネート(PC、PolyCarbonate)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエステル(Polyester)などの可撓性プラスチック基板;などであることができるが、これに限定されるものではない。
【0080】
また、前記シリコン含有薄膜は、前記基板に直接薄膜を形成する以外に、前記基板と前記シリコン含有薄膜との間に多数の導電層、誘電層または絶縁層などが形成されることもできる。
【0081】
以下、本発明を下記の実施例によってより具体的に説明する。その前に、本明細書および請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者は、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0082】
したがって、本明細書に記載の実施例と図面に図示されている構成は、本発明の最も好ましい一実施形態に過ぎないだけであって、本発明の技術的な思想をすべて代弁するものではないため、本出願時点においてこれらの代わりに使用可能な様々な均等物と変形例があることを理解すべきである。
【0083】
また、以下、すべての実施例は、商用化したシャワーヘッド方式の200mm枚葉式(single wafer type)ALD装備(CN1、Atomic Premium)を使用して、公知のプラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)を用いて行った。また、商用化したシャワーヘッド方式の200mm枚葉式(single wafer type)CVD(PECVD)装備(CN1、Atomic Premium)として公知のプラズマ気相化学蒸着法を用いて遂行可能である。
【0084】
蒸着されたシリコン含有薄膜は、エリプソメータ(Ellipsometer、OPTI-PROBE 2600、THERMA-WAVE)により厚さを測定し、赤外線分光器(Infrared Spectroscopy、IFS66V/S & Hyperion 3000、Bruker Optics)およびX-線光電子分光分析装置(X-ray photoelectron spectroscopy)を用いて薄膜の特性を分析した。
【0085】
[実施例1]1-イソプロピル-3-ジメチルシリル-2,2,4-トリメチルシクロジシラザン(1-Isopropyl-3-dimethylsilyl-2,2,4-trimethylcyclodisilazane)の合成
無水および不活性雰囲気下で火炎乾燥した2000mLのフラスコにクロロジメチルシラン(SiH(CH32Cl)150g(1.59mol)とn-ペンタン(n-Pentane)800g(11.1mol)を入れて、-25℃を維持しながらイソプロピルアミン((CH32CHNH2)187.4g(3.17mol)をゆっくり添加し、3時間撹拌した。撹拌完了後、濾過によりイソプロピルアミン塩化水素塩((CH32CHNH3Cl)を除去し、得られたろ液からn-ペンタンを減圧下で除去した。回収されたジメチルシリルイソプロピルアミン(SiH(CH32NHCH(CH32)にテトラヒドロフラン(THF)を入れて撹拌しながら21.78%n-ブチルリチウム(n-Butyllithium)394g(1.34mol)を-25℃を維持しながらゆっくり添加した。添加が完了した後、反応溶液を徐々に常温に昇温し、6時間常温で撹拌した。撹拌後、ジクロロジメチルシラン(Si(CH32Cl2)を172.80g(1.34mol)を-25℃を維持しながらゆっくり添加した。添加が完了した後、反応溶液を徐々に常温に昇温し、6時間常温で撹拌した。撹拌完了後、生成されたリチウム塩化塩(LiCl)を濾過により除去し、得られたろ液からテトラヒドロフラン(THF)を減圧下で除去した。回収されたジメチルシリルジメチルクロロシリルイソプロピルアミン(SiH(CH32NCH(CH32Si(CH32Cl)とn-ペンタンを混合した後、-25℃で撹拌しながらアンモニア(NH3)41.08g(2.41mol)をゆっくり添加した。添加が完了した後、反応溶液を徐々に常温に昇温し、6時間常温で撹拌した。撹拌完了後、生成された塩化アンモニウム塩(NH4Cl)を濾過して除去し、得られたろ液でn-ペンタンを減圧下で除去した。回収された(ジメチルシリル)(アミノジメチルシリル)イソプロピルアミン(SiH(CH32NCH(CH32Si(CH32NH2)とテトラヒドロフランを混合し、-25℃で撹拌しながら21.78%n-ブチルリチウム349.06g(1.19mol)をゆっくり投入して3時間撹拌した後、-25℃で撹拌しながらジクロロメチルシラン(SiH(CH3)Cl2)135.95g(1.18mol)をゆっくり添加した。添加が完了した後、反応溶液を常温に昇温し、6時間常温で撹拌した。撹拌完了後、生成されたリチウム塩化塩(LiCl)を濾過により除去し、得られたろ液からテトラヒドロフラン(THF)を減圧下で除去した後、減圧蒸留により1-イソプロピル-3-ジメチルシリル-2,2,4-トリメチルシクロジシラザン(SiH(CH32NSi(CH32NCH(CH32SiHCH3)75g(0.32mol)を取得した(収率54%)。
【0086】
1H-NMR (C6D6) : δ 0.16 (d, 6H (NSiH(CH3)2), 0.28 (d, 6H (N,N-Si(CH3)2), 0.32(s, 3H (N,N-SiHCH3)), 1.00 (d, 6H (NCH(CH3)2), 3.21 (m, 1H (-NCH)), 4.75 (m, 1H (NSiH(CH3)2), 5.50 (s, 1H (N,N-SiHCH3).
【0087】
[実施例2]1-イソプロピル-3-トリメチルシリル-2,4-ジメチルシクロジシラザン(1-Isopropyl-3-trimethylsilyl-2,4-dimethylcyclodisilazane)の合成
無水および不活性雰囲気下で火炎乾燥した2000mLのフラスコにビス(ジメチルアミノメチルシリル)トリメチルシリルアミン(((CH32N(CH3)HSi)2NSi(CH33)535g(1.61mol)とn-ペンタン732g(10.15mol)を入れて、-40℃を維持しながら塩化水素(HCl)292.3g(8.12mol)をゆっくり添加した後、3時間撹拌した。濾過によりジメチルアミン塩化水素塩((CH32NH2Cl)を除去し、得られたろ液からn-ペンタンを減圧下で除去した。回収されたビス(クロロメチルシリル)トリメチルシリルアミン((Cl(CH3)HSi)2NSi(CH33)をn-ペンタンと混合した後、撹拌しながらイソプロピルアミン((CH32CHNH2)240.91g(4.03mol)を-25℃を維持しながらゆっくり添加した。添加が完了した後、反応溶液を徐々に常温に昇温し、常温で3時間撹拌した。撹拌後濾過によりイソプロピルアミン塩化水素塩((CH32CHNH3Cl)を除去した。回収された(クロロメチルシリル)(イソプロピルアミノメチルシリル)トリメチルシリルアミン((Cl(CH3)HSi)((CH32CHNH(CH3)HSi)NSi(CH33)溶液を-25℃を維持しながら1.70M t-ブチルリチウム(tert-Butyllithium)518.9g(1.35mol)をゆっくり添加した。添加が完了した後、反応溶液を徐々に常温に昇温した後、6時間常温で撹拌した。撹拌完了後、生成された塩化リチウム塩(LiCl)を濾過により除去し、得られたろ液から溶媒を減圧下で除去した後、減圧蒸留により1-イソプロピル-3-トリメチルシリル-2、4-ジメチルシクロジシラザン(Si(CH33N(SiH(CH3))2NCH(CH32)103g(0.44mol)を取得した(収率32%)。
【0088】
1H-NMR (C6D6) : δ 0.10 (s, 9H (NSi-(CH3)3), 0.33 (d, 6H (N,N-SiH(CH3)), 1.00 (d, 6H, (NCH(CH3)2), 3.15 (m, 1H (-NCH)), 5.49 (s, 1H (N,N-SiH(CH3)), 5.52 (s, 1H (N,N-SiH(CH3)).
【0089】
[実施例3]1-イソプロピル-3-メチルシリル-2,4-ジメチルシクロジシラザン(1-Isopropyl-3-methylsilyl-2,4-dimethylcyclodisilazane)の合成
無水および不活性雰囲気下で火炎乾燥した2000mLのフラスコにトリス(ジメチルアミノメチルシリル)アミン(((CH32NSiHCH33N)350g(1.26mol)とn-ペンタン725.07g(10.05mol)を入れて、-40℃を維持しながら塩化水素(HCl)263.8g(7.54mol)をゆっくり添加した後、3時間撹拌し、濾過によりジメチルアミン塩化水素塩((CH32NH2Cl)を除去し、得られたろ液からn-ペンタンを減圧下で除去した。回収されたトリス(クロロメチルシリル)アミン((ClCH3SiH)3N)をn-ペンタンと混合して撹拌しながらイソプロピルアミン((CH32CHNH2)148.51g(2.51mol)を-25℃を維持しながらゆっくり添加した。添加が完了した後、反応溶液を徐々に常温に昇温し、3時間常温で撹拌した。撹拌完了後、濾過によりイソプロピルアミン塩化水素塩((CH32CHNH3Cl)を除去した。回収された[ビス(クロロメチルシリル)](イソプロピルアミノメチルシリル)アミン((ClCH3SiH)2((CH32CHNHCH3SiH)N)溶液を-25℃を維持しながら1.70M t-ブチルリチウム481.79g(1.26mol)をゆっくり添加した。添加が完了した後、反応溶液を徐々に常温に昇温した後、6時間常温で撹拌した。撹拌完了後、生成されたリチウム塩化塩(LiCl)を濾過により除去した。得られたろ液から溶媒を減圧下で除去し、テトラヒドロフラン(THF)と混合した後、撹拌しながら水素化リチウム(LiH)14.98g(1.88mol)を常温で投入して3時間撹拌した。生成された塩化リチウム塩(LiCl)を濾過により除去した。得られた濾過液を減圧蒸留し、1-イソプロピル-3-メチルシリル-2,4-ジメチルシクロジシラザン(SiH2CH3N(SiHCH32NCH(CH32)103g(0.5mol)を取得した(収率40%)。
【0090】
1H-NMR (C6D6) : δ 0.15 (t, 3H (NSiH2(CH3)), 0.28 (s, 6H (N,N-SiH(CH3)), 0.98(d, 6H, (NCH(CH3)2), 3.2(m, 1H (NCH(CH3)), 5.47 (m, 2H (SiH(CH3)), 4.6 (m, 2H NSiH2(CH3)).
【0091】
[実施例4]1-エチル-3-トリメチルシリル-2,4-ジメチルシクロジシラザン(1-Ethyl-3-trimethylsilyl-2,4-dimethylcyclodisilazane)の合成
無水および不活性雰囲気下で火炎乾燥した2000mLのフラスコにビス(ジメチルアミノメチルシリル)トリメチルシリルアミン(((CH32N(CH3)HSi)2NSi(CH33)535g(2.03mol)とn-ペンタン732g(10.15mol)を入れて、-40℃を維持しながら塩化水素(HCl)292.3g(8.12mol)をゆっくり添加した後、3時間撹拌した。濾過によりジメチルアミン塩化水素塩((CH32NH2Cl)を除去し、得られたろ液からn-ペンタンを減圧下で除去した。回収されたビス(クロロメチルシリル)トリメチルシリルアミン((Cl(CH3)HSi)2NSi(CH33)をn-ペンタンと混合した後、撹拌しながらエチルアミン(CH3CH2NH2)136.6g(3.03mol)を-25℃を維持しながらゆっくり添加した。添加が完了した後、反応溶液を徐々に常温に昇温し、常温で3時間撹拌した。撹拌後、濾過によりエチルアミン塩素水素塩(CH3CH2NH3Cl)を除去した。回収された(クロロメチルシリル)(エチルアミノメチルシリル)トリメチルシリルアミン((Cl(CH3)HSi)((CH3CH2NH(CH3)HSi)NSi(CH33)溶液を-25℃を維持しながら1.70M t-ブチルリチウム547.49g(1.43mol)をゆっくり添加した。添加が完了した後、反応溶液を徐々に常温に昇温した後、6時間常温で撹拌した。撹拌完了後、生成された塩化リチウム塩(LiCl)を濾過により除去し、得られたろ液から溶媒を減圧下で除去した後、減圧蒸留により1-エチル-3-トリメチルシリル-2、4-ジメチルシクロジシラザン(Si(CH33N(SiH(CH3))2)N(CH2CH3)258g(1.18mol)を取得した(収率83%)。
【0092】
1H-NMR (C6D6) : δ 0.10 (s, 9H (NSi-(CH3)3), 0.28 (d, 6H (N,N-SiH(CH3)), 0.99 (t, 2H (NCH2CH3), 2.74 (q, 3H (NCH2CH3)), 5.48 (d, 1H (N,N-SiH(CH3)), 5.50 (s, 1H (N,N-SiH(CH3)).
【0093】
[実施例5]シリルシクロジシラザン化合物を使用してプラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)によるシリコン酸化膜の蒸着
公知のプラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)を用いる通常のプラズマ強化原子層蒸着(PEALD)装置でシリコン酸化膜の形成のための組成物として本発明のシリルシクロジシラザン化合物を用いて成膜評価を行った。反応ガスとしては、プラズマとともに酸素を使用し、不活性気体であるアルゴンはパージのために使用した。
【0094】
以下、表1に具体的なシリコン酸化膜蒸着方法を示した。
【0095】
【表1】
【0096】
蒸着した薄膜は、エリプソメータ(Ellipsometer)により厚さを測定し、赤外線分光光度計を用いて、SiO2薄膜の形成を分析した。図3は、エリプソメータ分析によりシリコン酸化膜の蒸着速度を図示した図であり、膜の厚さを示したものである。本発明のシリルシクロジシラザン化合物を前駆体として、シリコン酸化膜の蒸着時に、蒸着サイクルを基準に2.15~2.25Å/cycleの範囲で、薄膜の厚さは215~225Åであり、本発明のシリルシクロジシラザン化合物は、シリコン酸化膜蒸着用前駆体として高い蒸着率を要するシリコン酸化薄膜の応用全分野にわたって有用に使用可能であると判断される。図4は、赤外線分光計を用いて蒸着されたシリコン酸化膜形成を分析した結果であり、蒸着された薄膜は、いずれもシリコン酸化膜を形成したものと示され、C-H、Si-OHのような不純物ピークは観察されなかった[(上)1-イソプロピル-3-トリメチルシリル-2,4-ジメチルシクロジシラザン;(中)1-イソプロピル-3-トリメチルシリル-2,2,4,4-テトラメチルシクロジシラザン;(下)1,3-ビス(トリメチルシリル)-2,4-ジメチルシクロジシラザン]。
【0097】
また、X-線光電子分光器を用いて蒸着されたシリコン酸化膜の組成を分析し、その結果を下記表2に記載した。下記表2に記載のように、本発明のシリルシクロジシラザン化合物を前駆体として蒸着された薄膜内酸素とシリコンの割合は2(67:33)であり、炭素および窒素の含量は0%であり、高純度のシリコン酸化薄膜が形成されたことを確認することができた。
【0098】
【表2】
【0099】
すなわち、発明によるシリルシクロジシラザン化合物は、プラズマ原子層蒸着工程により高い蒸着率を有する高純度のシリコン酸化薄膜を形成するのにその活用価値が高いものと確認された。
【0100】
[実施例6]シリルシクロジシラザン化合物を使用したプラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)によるシリコン窒化膜の蒸着
公知のプラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)を用いる通常のプラズマ強化原子層蒸着(PEALD)装置でシリコン窒化膜の形成のための組成物として1-イソプロピル-3-トリメチルシリル-2,4-ジメチルシクロジシラザン化合物を用いて成膜評価を行った。反応ガスおよびパージガスとしては窒素を使用した。
【0101】
シリコン基板は、350℃に維持し、1-イソプロピル-3-トリメチルシリル-2,4-ジメチルシクロジシラザン化合物は、ステンレス鋼バブラー容器に充填して58℃に維持した。第一に、ステンレス鋼バブラー容器内で蒸気化したシリコン前駆体化合物は、窒素ガス(50sccm)をキャリアガスとしてシリコン基板に移送され、シリコン基板に吸着されるようにする。第二に、窒素ガス(6000sccm)を用いて、約32秒間吸着されなかったシリコン前駆体化合物を除去する。第三に、窒素ガス6000sccmの条件で75Wのプラズマを60秒間加えてシリコン窒化膜を形成する。最後に、窒素ガス(6000sccm)を用いて、約20秒間反応副生成物および残留反応ガスを除去する。上記のような工程を1周期とし、所定の周期を繰り返してシリコン窒化薄膜を形成した。
【0102】
以下、表3に具体的なシリコン窒化膜の蒸着方法を示した。
【0103】
【表3】
【0104】
蒸着されたシリコン窒化薄膜は、エリプソメータ(Ellipsometer)により厚さおよび屈折率を測定し、赤外線分光光度計およびX-線光電子分光分析装置を用いて、シリコン窒化膜の形成および前記薄膜の成分を分析した。
【0105】
エリプソメータ分析時に、薄膜の厚さは、平板ウェハで240サイクル進行時に112Aと示され、1サイクル当たり0.47Aの成長速度を示した。また、屈折率は2.0であり、シリコン窒化薄膜の特性を示した。
【0106】
また、図5に図示されているように、赤外線分光光度計分析時に、Si-N結合が確認され、少量のSi-Hピークのみが観察された。X-線光電子分光分析装置で分析した薄膜の組成を表4に示した。結果、薄膜内のシリコン/窒素の比が理想的なシリコン窒化薄膜に近い0.72であり、シリコン窒化薄膜が形成されたことを確認することができた。
【0107】
【表4】
【0108】
すなわち、発明によるシリルシクロジシラザン化合物は、プラズマ原子層蒸着工程により高純度のシリコン窒化薄膜を形成するのにその活用価値が高いことが確認された。
【0109】
上述の本発明の説明は、例示のためのものであって、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更しなくても、他の具体的な形態に容易に変形が可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであって、限定的なものではないと理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5