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特許7337258水蒸気透過度測定装置を校正するための標準試料
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  • 特許-水蒸気透過度測定装置を校正するための標準試料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】水蒸気透過度測定装置を校正するための標準試料
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/08 20060101AFI20230825BHJP
   G01N 15/00 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
G01N15/08 C
G01N15/00 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022511547
(86)(22)【出願日】2021-01-12
(86)【国際出願番号】 JP2021000617
(87)【国際公開番号】W WO2021199560
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2020064331
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000146180
【氏名又は名称】株式会社MORESCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】楯 和也
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-103151(JP,A)
【文献】国際公開第2017/135292(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/182706(WO,A1)
【文献】実開昭59-045553(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第110146426(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00
G01N 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気透過度測定装置を校正するための標準試料であって、
孔が形成され、水蒸気を遮断するための基材と、
前記孔に充填された樹脂およびセラミックスの少なくともいずれか一方を含む充填剤とを備え
前記基材の厚さが0.1~1.0mmである、標準試料。
【請求項2】
前記基材の厚さが0.2~0.5mmである、請求項1に記載の標準試料。
【請求項3】
水蒸気透過度測定装置を校正するための標準試料であって、
孔が形成され、水蒸気を遮断するための基材と、
前記孔に充填された樹脂およびセラミックスの少なくともいずれか一方を含む充填剤とを備え、
前記基材の孔径が0.1~0.15mmである、標準試料。
【請求項4】
水蒸気透過度測定装置を校正するための標準試料であって、
孔が形成され、水蒸気を遮断するための基材と、
前記孔に充填された充填剤とを備え、
前記充填剤が硬化性樹脂である、標準試料。
【請求項5】
前記基材の孔径が0.1~0.15mmである、請求項1または2に記載の標準試料。
【請求項6】
前記充填剤が硬化性樹脂である、請求項1~3のいずれか1項に記載の標準試料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水蒸気透過度測定装置を校正するための標準試料に関する。
【背景技術】
【0002】
水蒸気透過度測定装置は、例えば、有機デバイス、太陽電池等に用いられるフィルム等の水蒸気透過度(以下、「WVTR」と称する)を、迅速かつ高精度で測定するための装置である。前記有機デバイス、太陽電池等に用いられるフィルムでは特にWVTRが小さいことが求められる。また、水蒸気透過度測定装置によってそのような小さなオーダーのWVTRを感度良く測定するためには、より小さなオーダーのWVTRにおける測定値と理論値との誤差が小さい、校正用標準試料が求められる。
【0003】
例えば、特許文献1には、樹脂製フィルム上にバリア層を備え、該バリア層が少なくとも1個の小孔を有し、10-3g/m/day以下の水蒸気透過度を測定する水蒸気透過度測定装置の校正用標準フィルムが開示されている。該フィルムは、前記小孔の円相当半径をR[μm]、前記樹脂製フィルムの厚さをL[μm]としたとき、R/L≦5であることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/182706号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような従来技術において、1×10-4g/m/day以下のオーダーのWVTRを測定可能な校正用標準試料を作製するためには、標準試料の孔径を小さくする必要がある。しかし、上述のような従来技術では、孔径を小さくすると、WVTRの理論値と測定値とが乖離し、誤差が大きくなるという問題があった。詳細については後述する。
【0006】
本発明の一態様は、1×10-4g/m/day以下のオーダーのWVTRを小さな誤差で、または理論値通りに測定可能な標準試料を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、水蒸気透過度測定装置を校正するための標準試料であって、孔が形成された基材と、前記孔に充填された充填剤とを備える標準試料であれば、1×10-4g/m/day以下のオーダーのWVTRを小さな誤差で、または理論値通りに測定できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の態様を含む。
<1>水蒸気透過度測定装置を校正するための標準試料であって、孔が形成され、水蒸気を遮断するための基材と、前記孔に充填された樹脂およびセラミックスの少なくともいずれか一方を含む充填剤とを備える、標準試料。
<2>前記基材の厚さが0.1~1.0mmである、<1>に記載の標準試料。
<3>前記基材の厚さが0.2~0.5mmである、<1>または<2>に記載の標準試料。
<4>前記基材の孔径が0.01~5.0mmである、<1>~<3>のいずれか1つに記載の標準試料。
<5>前記基材の孔径が0.1~0.15mmである、<1>~<4>のいずれか1つに記載の標準試料。
<6>前記充填剤が硬化性樹脂である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の水蒸気透過度測定装置用標準試料。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、1×10-4g/m/day以下のオーダーのWVTRを小さな誤差で、または理論値通りに測定可能な標準試料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る標準試料の断面を模式的に示す図である。
図2】従来技術における標準試料の断面を模式的に示す図である。
図3】実施例に係る開口面積とWVTRとの関係性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0011】
〔1.発明の概要〕
水蒸気透過度測定装置は、測定対象となるフィルム等の試料が配置された試料チャンバーに水蒸気を導入し、当該試料を透過した水蒸気の量を測定する装置である。既知のWVTRを示す標準試料を用いて、当該装置の感度を校正することができる。
【0012】
従来技術における水蒸気透過度測定装置用の標準試料200は、図2に示す構成を備えている。具体的には、上記標準試料200は、金属層12、接着層13および樹脂製フィルム14からなる3層構造を有している。上記金属層12には、孔11が形成されている。水蒸気透過度測定装置の試料チャンバー内で標準試料200の樹脂製フィルム14側から水蒸気を導入し、樹脂製フィルム14を透過して孔11から金属層12側へ抜け出た水蒸気の量を検出する。上記標準試料のWVTRは、金属層の孔11の個数および開口面積を調整することで制御される。
【0013】
しかしながら、上記標準試料200では、ほぼ最短距離で樹脂製フィルム14を透過して孔11から抜け出る水蒸気15もあれば、孔11から離れた領域から流入し、樹脂製フィルム14内を拡散して回り込んで孔11から抜け出る水蒸気16も生じ得る。このため、標準試料のWVTRの理論値と測定値との間に誤差を生じやすいという問題があった。また、上記誤差は、金属層の孔11の開口面積を小さくした場合に上述の水蒸気15に対して水蒸気16の量が大きくなるため特に顕著であった。そのため、1×10-4g/m/day以下のオーダーのWVTRを小さな誤差で、または理論値通りに測定可能な標準試料を作製することができなかった。
【0014】
そこで、本発明者は、1×10-4g/m/day以下のオーダーのWVTRも小さな誤差で、または理論値通りに測定可能な標準試料の検討を行った。その結果、本発明者は、孔が形成され、水蒸気を遮断するための基材と、前記孔に充填された樹脂およびセラミックスの少なくともいずれか一方を含む充填剤とを備える標準試料が、WVTRの測定値と理論値との誤差を小さくすることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
〔2.標準試料〕
本発明の一実施形態に係る標準試料は、水蒸気透過度測定装置を校正するための標準試料であって、孔が形成され、水蒸気を遮断するための基材と、前記孔に充填された樹脂およびセラミックスの少なくともいずれか一方を含む充填剤とを備える。
【0016】
なお、上記装置を用いてWVTRを測定する方法として、装置内に差圧を生じさせてWVTRを測定する差圧法、装置内を常圧のままにしてWVTRを測定する等圧法、API-MS、DELTAPERM、Ca腐食法等が挙げられる。本発明の一実施形態に係る標準試料は、上記いずれの方法であってもWVTRを測定することができる。
【0017】
本明細書中、「水蒸気透過度(WVTR)」とは、JIS K 7129:2008「プラスチック-フィルム及びシート-水蒸気透過度の求め方(機器測定法)」又はISO 15106-5、-6、-7:2015「プラスチック-フィルム及びシート-水蒸気透過度測定方法」に準拠して求めた値を指す。
【0018】
本発明の一実施形態に係る標準試料を、図1を用いてさらに詳細に説明する。図1は、平板状の基材の厚み方向に平行な断面を表している。上述の通り、本発明の一実施形態に係る標準試料100において、基材2に孔3が形成されている。孔3は基材2を貫通している。また、基材の孔3には、充填剤1が充填されている。すなわち、基材の孔3は充填剤1によって埋められている。この充填剤1を透過する水蒸気の量を水蒸気透過度測定装置によって検出する。標準試料100は、上述の従来技術における標準試料200のように水蒸気が樹脂製フィルムを回り込んで透過することがないので、WVTRをより正確に測定することができる。また、標準試料100は、従来技術における標準試料200の接着層13に相当する構成を備えていない。このため、接着層13に影響されることなくWVTRを測定することができる。
【0019】
上記標準試料であれば、特に1×10-4g/m/day以下のWVTRを正確に測定可能である。当然、さらに大きなオーダー、例えば1×10-2g/m/day以下のWVTRも正確に測定可能である。下限も特に限定されないが、例えば、1×10-6g/m/day以上のWVTRを測定することができる。WVTRのオーダーは孔径を調整することにより変更することができる。
【0020】
上記基材の材料としては、上述の通り、水蒸気を透過しないものであれば、特に限定されないが、耐久性、利便性、簡便性等の観点から、上記基材の材料は、好ましくは無機材料である。無機材料としては、アルミニウム、クロム、亜鉛、金、銀、銅、ニッケル、チタン等の金属;酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の金属酸化物;SUS(ステンレス)、真鍮等の合金;ガラス等が挙げられる。上記基材の材料は、ただ1種類のみを用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0021】
前記基材の厚さは、0.1~1.0mmであることが好ましく、0.2~0.5mmであることがより好ましい。前記基材の孔径は、0.01~5.0mmであることが好ましく、0.1~0.15mmであることがより好ましい。
【0022】
上記基材の孔の形状は、特に限定されないが、真円形または楕円形であることが好ましく、より正確な測定の観点から、真円形であることがより好ましい。なお、本明細書中、「楕円形」とは、下記式(1)の条件を満たす楕円のことである。
【0023】
(x/a)+(y/b)=1・・・(1)
ただし、aおよびbは楕円の長径および短径を表し、xおよびyは下記式(2)~(4)を満たす。
x=a(cos(t))・・・(2)
y=b(sin(t))・・・(3)
0≦t≦2π・・・(4)
なお、孔の形状が楕円形である場合は、長径が上述のように0.01~5.0mmであることが好ましく、0.1~0.15mmであることがより好ましい。
【0024】
基材の形状も特に限定されないが、平板状であることが好ましい。基材の面方向の形状は真円形または楕円形であることが好ましく、より正確な測定の観点から、真円形であることがより好ましい。すなわち基材は円板状であることが好ましい。
【0025】
また、基材には複数の孔ではなく、1個の孔が形成されていることが好ましい。孔の位置は特に限定されないが、基材の面方向の中央に1個の孔が形成されていることが好ましい。本発明の一実施形態に係る標準試料であれば、複数の孔を設けずとも、1個の孔によってWVTRのオーダーを制御することができる。
【0026】
充填剤は、樹脂およびセラミックスの少なくともいずれか一方を含み、樹脂および/またはセラミックスのみからなってもよい。樹脂としては、熱可塑性樹脂および硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等が挙げられる。硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、湿気硬化性樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、熱硬化性ポリイミド、ポリウレタン、フェノール樹脂等が挙げられる。光硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。湿気硬化性樹脂としては、シアノアクリレート等があげられる。セラミックスとしては、SiN、SiO、SiC、酸化アルミニウム等が挙げられる。上記充填剤は、ただ1種類のみを用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0027】
上記充填剤は、硬化性樹脂であることが好ましい。上記充填剤が硬化性樹脂であれば、標準試料を作製する工程を簡便にすることができる。上記充填剤は、上記工程を簡便にするという観点から、硬化性樹脂の中でも、光硬化性樹脂であることがより好ましい。
【0028】
光硬化性樹脂は、特にマトリックスポリマー中に板状無機化合物がスタッキング状に分散して含有された樹脂組成物であることが好ましい。マトリックスポリマーとしては、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリレート樹脂、変性オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。そのような光硬化性樹脂としては、例えば、MORESCO社製封止材 WB90US(P)、ナガセケムテックス社製封止材 XNR5516Z、ThreeBond社製 TB3013Q等が挙げられる。
【0029】
充填剤の厚さは、より正確な測定の観点から、上記基材の厚さに対する誤差が±10%以内であることが好ましく、±5%以内であることがより好ましい。
【0030】
〔3.標準試料の製造方法〕
本発明の一実施形態に係る標準試料の製造方法としては、特に限定されないが、基材に孔を形成する工程と、基材に形成された孔に充填剤を充填する工程と、を含むことが好ましい。
【0031】
上記基材に孔を形成する工程としては、特に限定されず、公知技術の方法を用いて形成することができる。基材に孔を形成する方法としては、例えば、エッチング、エレクトロフォーミング、レーザー加工および研磨が挙げられ、好ましくはレーザー加工である。また、上記方法によって、基材の孔径および開口面積を所望する大きさに調整することが可能である。
【0032】
上記充填剤を硬化する方法としては、例えば、充填剤に紫外線または可視光線を照射する方法、充填剤を加熱する方法、充填剤を空気中の水分と反応させる方法等が挙げられる。好ましくは、充填剤に紫外線または可視光線を照射する方法である。
【0033】
上記標準試料の製造方法は、基材を洗浄する目的として、前処理工程を含んでいてもよい。上記前処理工程としては、特に限定されず、例えば、アセトン、エタノール、トルエン等の有機溶媒に浸潰して超音波で洗浄する方法、紫外線を照射する方法、高圧水または蒸気によって洗浄する方法、電解脱脂する方法等を用いることができる。上記工程は、上記の方法のうち、ただ1種類の方法を用いてもよく、2種類以上を組み合わせた方法を用いてもよい。
【0034】
上記標準試料の製造方法は、標準試料が製造に用いる金型に付着することを防ぐことを目的として、充填剤1を基材の孔3に充填する工程の前に、標準試料と製造に用いる金型との間に離形フィルムを挟み込む工程を含んでいてもよい。上記離形フィルムとしては例えば、ナフロン(登録商標)シート、テフロン(登録商標)シート等の市販品を用いることができる。また、上記離形フィルムはただ1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0035】
上記標準試料の製造方法は、充填剤1を軟化させる目的として、充填剤1を充填する工程の前に、充填剤1を加熱する工程を含んでいてもよい。充填剤1を加熱する温度としては、充填剤1を充填できる程度に軟化できる温度であれば特に限定されず、充填剤1に含まれる材料によって異なる。
【0036】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例
【0037】
以下に、本発明の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0038】
〔水蒸気透過度の評価〕
(WVTRの理論値)
充填剤のWVTRおよび各標準試料の基材の孔の開口面積から、下記式(5)によって、各標準試料のWVTRの理論値を算出した。
標準試料のWVTRの理論値(g/m/day)=(充填剤のWVTR(g/m/day)×基材の孔の開口面積(m))/水蒸気透過度測定装置の測定面積(m)・・・(5)
なお、上記水蒸気透過度測定装置の測定面積は2.8×10-3である。
【0039】
(WVTRの測定値)
実施例および比較例で作製した標準試料を、MORESCO社製ガス・水蒸気透過度測定装置Super-Detectにセットした。次いで、測定前処理として、前記標準試料を40℃で24時間、真空引きを行い、標準試料内に残留している水分を除去した。さらに、この標準試料を40℃、湿度90%の環境下で24時間静置し、標準試料のWVTRを測定した。
【0040】
(評価方法)
上記式(5)で算出した理論値を基準として、装置で測定した標準試料の測定値の誤差を計算し、評価した。評価は、ガス・水蒸気透過度測定装置における測定誤差範囲が±50%であるため、その誤差範囲に測定値が入っているものを○、入っていないものを×として評価した。
【0041】
〔実施例1〕
前処理として、円板状のSUS基板(東洋精密工業社製 SUS304番)をアセトンに浸潰し、5分間の超音波洗浄を行った後、低圧水銀ランプを用いて254nmの紫外線を2分間照射し、これを基材とした。次いで、上記基材の中央にエッチング技術を用いて1個の円形の孔を形成した。なお、孔径を調整して下記(a)~(e)のオーダーのWVTRを測定可能な5種類の基材をそれぞれ作製した:
(a)5×10-6g/m/dayオーダー、
(b)1×10-5g/m/dayオーダー、
(c)1×10-4g/m/dayオーダー、
(d)1×10-3g/m/dayオーダー、
(e)1×10-2g/m/dayオーダー。
【0042】
上記(a)基材を離形フィルムの上に置き、充填剤として、MORESCO社製封止材 WB90US(P)を充填した。充填剤を充填した基材に、UVランプを用いて紫外線を6J照射した後、80℃のオーブンを用いて60分間加熱し、標準試料を作製した。上記(b)~(e)についても同様の方法で標準試料を作製した。
【0043】
〔実施例2〕
基材に用いるSUS基板を円板状のガラス基板(富士理化工業社製)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で標準試料を作製した。
【0044】
〔実施例3〕
基材に用いるSUS基板を円板状のアルミニウム基板(ニッカル商工株式会社製)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で標準試料を作製した。
【0045】
〔実施例4〕
充填剤をナガセケムテックス社製封止材 XNR5516Zに変更した以外は、実施例1と同様の方法で標準試料を作製した。
【0046】
〔実施例5〕
充填剤をADEKA社製のビスフェノールA型(BisA型)エポキシ樹脂 EP-4100に変更し、基材として実施例1の(c)~(e)のオーダーのWVTRを測定可能な3種類の基材を用いた以外は、実施例1と同様の方法で標準試料を作製した。
【0047】
〔実施例6〕
前処理として、円板状のSUS基板(東洋精密工業社製 SUS304番)をアセトンに浸潰し、5分間の超音波洗浄を行った後、低圧水銀ランプを用いて254nmの紫外線を2分間照射し、これを基材とした。次いで、上記基材の中央にエッチング技術を用いて1個の円形の孔を形成し、実施例1の(c)~(e)のオーダーのWVTRを測定可能な3種類の基材をそれぞれ作製した。
【0048】
上記基材を離形フィルムの上に置き、充填剤として、220℃で軟化させたDIC社製ポリスチレン樹脂 ディックスチレンCR3500を充填した。充填剤を充填した基材に、UVランプを用いて紫外線を6J照射した後、80℃のオーブンを用いて60分間加熱し、標準試料を作製した。
【0049】
〔比較例1〕
厚さ100μmの円板状のポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムの樹脂製フィルムと、厚さ30μmの円板状のアルミニウム箔の金属層とを接着層を介して接着し、標準試料フィルムを作製した。次いで、上記金属層の中央に、ウェットエッチングを用いて1個の円形の孔を形成し、標準試料を作製した。
【0050】
〔結果〕
実施例1~6および比較例1の標準試料において、上記(a)~(e)の5種類のオーダーのWVTRの理論値および測定値、ならびに評価を表1に示す。また、実施例1のWVTRの理論値および測定値、ならびに開口面積の関係性を表すグラフを図3に示す。開口面積は孔径から算出した。
【表1】
図3によると、実施例1の標準試料は、5種類のオーダーのWVTRの測定値が理論値通りの値を示していることが分かる。
【0051】
また、表1によると、比較例1では、1×10-3g/m/dayより小さいオーダーのWVTRの測定値が理論値から外れていることが分かる。
【0052】
表1および図3より、実施例1~6は、比較例1に比べて、WVTRの測定値が理論値に近い値を示すことが分かった。すなわち、基材の孔が充填剤によって充填されている実施例1~6は、1×10-4g/m/dayオーダーのWVTRを小さな誤差で、または理論値通りに測定できることが分かった。また、実施例1~3は、実施例4~6に対して、より小さいオーダーのWVTRでも正確に測定可能であることが分かった。すなわち、充填剤が光硬化性樹脂である実施例1~3は、さらに小さいオーダーを測定できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、水蒸気透過度測定装置を校正するための標準試料として、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 充填剤
2 基材
3 孔
100 標準試料
図1
図2
図3