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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】二次電池、及び該二次電池を備えた装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20230825BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230825BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20230825BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20230825BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20230825BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230825BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20230825BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20230825BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20230825BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230825BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20230825BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
H01M10/0568
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/587
H01M4/58
H01M4/36 E
H01M10/0569
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022520094
(86)(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-01
(86)【国際出願番号】 CN2019127985
(87)【国際公開番号】W WO2021128002
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-03-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【弁理士】
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ ▲則▼利
(72)【発明者】
【氏名】▲韓▼ 昌▲隆▼
(72)【発明者】
【氏名】付 成▲華▼
【審査官】式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109390628(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108258315(CN,A)
【文献】国際公開第2018/164124(WO,A1)
【文献】特開2013-239443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 4/00- 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極板と、電解液とを備え、
前記負極板は、負極集電体と、負極集電体の少なくとも1つの表面上に設置され且つ負極活物質を含む負極シートとを備え、
前記電解液は、電解質塩と、有機溶媒と、添加剤とを含む、二次電池であって、
前記負極活物質は、シリコン系材料を含み、
前記有機溶媒は、前記有機溶媒中の質量比率20%以下の炭酸エチレン(EC)と、前記有機溶媒中の質量比率20%以下の炭酸ジエチル(DEC)とを含み、
前記有機溶媒は、炭酸エチルメチル(EMC)をさらに含み、前記有機溶媒中の前記炭酸エチルメチル(EMC)の質量比率は、50%よりも多く、
前記添加剤は、添加剤Aと、添加剤Bとを含み、
前記添加剤Aは、下記式1及び式2:
【化1】
(式中、
の値は0、1、2、3、4又は5であり、
の値は0、1、2、3、4、5、6、7、8又は9であり、
11、R12、R13、R14、R21、R22、R23、及びR24は、それぞれ独立に、H、F、Cl、Br、I、置換又は非置換C1~C10の鎖状アルキル、置換又は非置換C1~C10の鎖状アルケニル、置換又は非置換C1~C10の鎖状アルキニル、C1~C10の脂肪族基、置換又は非置換C3~C9の環状アルキル、置換又は非置換C1~C10のアルコキシ、置換又は非置換C6~C20のアリール、及び置換又は非置換C3~C20のヘテロアリールから選択される1種であり、置換基はF、Cl、及びBrから選択される1つ以上である。)
で示される化合物から選択される1つ以上であり、
前記添加剤Bは、下記式3:
【化2】
(式中、
31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、及びR39は、それぞれ独立に、置換又は非置換C1~C20のアルキル、置換又は非置換C2~C20のアルケニル、置換又は非置換C2~C20のアルキニル、及び置換又は非置換C6~C20のアリールから選択される1種であり、置換基はF、Cl、及びBrから選択される1つ以上である。)
で示される化合物から選択される1つ以上である、二次電池。
【請求項2】
前記有機溶媒中の前記炭酸エチレン(EC)の質量比率は、10%~20%である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記有機溶媒中の前記炭酸ジエチル(DEC)の質量比率は、10%~20%である、請求項1~2のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項4】
前記電解液中の前記添加剤Aの質量比率は、1%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記電解液中の前記添加剤Bの質量比率は、2%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記有機溶媒中の前記炭酸エチルメチル(EMC)の質量比率は、55%~65%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記添加剤Aは、以下の化合物:
【化3】
から選択される1つ以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記添加剤Bは、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、トリス(トリエチルシリル)ホスフェート、及びトリス(ビニルジメチルシリル)ホスフェートから選択される1つ以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項9】
前記添加剤は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)をさらに含み、前記電解液中の前記フルオロエチレンカーボネート(FEC)の質量比率は、8%以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項10】
前記添加剤は、エチレンスルファート(DTD)、1,3-プロパンスルトン(PS)、1,3-プロペニル-スルトン(PST)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)、及びジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(LiDFOP)から選択される1つ以上をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項11】
前記二次電池は、以下の(1)~(3):
(1)前記電解液の25℃における導電率は、7mS/cm~9.5mS/cmである
(2)前記電解液の25℃における粘度は、3mPa・s~4.5mPa・sである
(3)前記電解液中の前記電解質塩の濃度は、1.0mol/L~1.3mol/Lである
から選択される1つ以上の条件をさらに満たす、請求項1~10のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項12】
前記シリコン系材料は、単体シリコン、シリコン炭素化合物、シリコン酸素化合物、シリコン窒素化合物、及びシリコン合金から選択される1つ以上を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項13】
前記負極活物質は、炭素材料をさらに含み、前記炭素材料は、天然黒鉛、人工黒鉛、ソフトカーボン、及びハードカーボンから選択される1つ以上を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項14】
前記二次電池は、正極板をさらに含み、
前記正極板は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも1つの表面上に設置され且つ正極活物質を含む正極シートとを備え、
前記正極活物質は、リチウム・ニッケル・コバルト・マンガン酸化物化合物、及びリチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム酸化物から選択される1つ以上を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項15】
前記正極活物質は、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸リチウム鉄マンガン、コバルト酸リチウム及びそれらの変性化合物から選択される1つ以上をさらに含む、請求項14に記載の二次電池。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の二次電池を備えた装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は電池の技術分野に関し、特に二次電池、及び該二次電池を備えた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化石エネルギーの枯渇と環境汚染の負荷の高まりに伴い、自動車産業はそれを駆動するために新エネルギーを緊急に必要とし、二次電池は、エネルギー密度が高く、メモリー効果がなく、動作電圧が高いことにより注目されており、現在の新エネルギー自動車の動力電源に適した技術案となっている。しかしながら、電子製品市場の需要の拡大及び動力、エネルギー貯蔵機器の発展に伴い、二次電池に対する需要は絶えず高まっており、エネルギー密度の高い二次電池の開発が急務となっている。
【0003】
高比容量のシリコン系材料を二次電池の負極活物質とすると、二次電池のエネルギー密度を効果的に向上させることができるが、充放電サイクルにおいて、Li-Si合金の可逆的な生成と分解は100%を超える体積変化を伴い、その結果、二次電池の電気化学的性能が急激に低下する。
【0004】
従って、高エネルギー密度を有するとともに、優れた電気化学的性能を兼ね備える二次電池の開発が急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
背景技術に存在する問題に鑑み、本願は、高いエネルギー密度を有するとともに、優れた高温サイクル性能、高温貯蔵性能及び低い直流内部抵抗を兼ね備える二次電池、及び該二次電池を備えた装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するために、本願の第1の態様では、二次電池を提供する。前記二次電池は負極板と、電解液とを備え、前記負極板は、負極集電体と、負極集電体の少なくとも1つの表面上に設置され且つ負極活物質を含む負極シートとを備え、前記電解液は電解質塩と、有機溶媒と、添加剤とを含み、前記負極活物質はシリコン系材料を含み、前記有機溶媒は、前記有機溶媒中の質量比率20%以下の炭酸エチレン(EC)と、前記有機溶媒中の質量比率20%以下の炭酸ジエチル(DEC)とを含み、前記添加剤は添加剤Aと、添加剤Bとを含む。
【0007】
前記添加剤Aは下記式1、式2:
【化1】
(式中、nの値は0、1、2、3、4又は5であり、nの値は0、1、2、3、4、5、6、7、8又は9であり、R11、R12、R13、R14、R21、R22、R23、及びR24は、それぞれ独立に、H、F、Cl、Br、I、置換又は非置換C1~C10の鎖状アルカン、置換又は非置換C1~C10の鎖状アルケン、置換又は非置換C1~C10の鎖状アルキン、C1~C10の脂肪族基、置換又は非置換C3~C9の環状アルカン、置換又は非置換C1~C10のアルコキシ、置換又は非置換C6~C20のアリール、置換又は非置換C3~C20のヘテロアリールから選択される1種であり、置換基はF、Cl、Brから選択される1つ以上である。)
で示される化合物から選択される1つ以上である。
【0008】
前記添加剤Bは下記式3:
【化2】
(式中、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、及びR49は、それぞれ独立に、置換又は非置換C1~C20のアルカン、置換又は非置換C2~C20のアルケン、置換又は非置換C2~C20のアルキン、置換又は非置換C6~C20のアリールから選択される1種であり、置換基はF、Cl、Brから選択される1つ以上である。)
で示される化合物から選択される1つ以上である。
【0009】
本願の第2の態様では、本願の第1の態様に記載の二次電池を備えた装置を提供する。
【0010】
本願は少なくとも以下の有益な効果を有する。
【0011】
本願の二次電池において、負極活物質はシリコン系材料を含み、電解液中に特定の種類及び含有量の有機溶媒が含有され、且つ添加剤としてA及びBの両方を含み、上記溶媒及び添加剤の複合作用により、本願の二次電池は優れた高温サイクル性能、高温貯蔵性能及び低い直流インピーダンスを兼ねる。本願の装置は前記二次電池を備え、したがって、少なくとも前記二次電池と同じ長所を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】二次電池の一実施形態の模式図である。
図2】電池モジュールの一実施形態の模式図である。
図3】電池パックの一実施形態の模式図である。
図4図3の分解図である。
図5】二次電池を電源として用いた装置の一実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本願の二次電池、及び該二次電池を備えた装置を詳細に説明する。
【0014】
本願の第1の態様の二次電池によれば、前記二次電池は負極板と、電解液とを備え、前記負極板は、負極集電体と、負極集電体の少なくとも1つの表面上に設置され且つ負極活物質を含む負極シートとを備え、前記電解液は電解質塩と、有機溶媒と、添加剤とを含み、前記負極活物質はシリコン系材料を含み、前記有機溶媒は、前記有機溶媒中の質量比率20%以下の炭酸エチレン(EC)と、前記有機溶媒中の質量比率20%以下の炭酸ジエチル(DEC)とを含み、前記添加剤は添加剤Aと、添加剤Bとを含む。
【0015】
本願の第1の態様の二次電池では、前記添加剤Aは下記式1、式2:
【化3】
(式中、nの値は0、1、2、3、4又は5であり、nの値は0、1、2、3、4、5、6、7、8又は9であり、R11、R12、R13、R14、R21、R22、R23、及びR24は、それぞれ独立に、H、F、Cl、Br、I、置換又は非置換C1~C10の鎖状アルカン、置換又は非置換C1~C10の鎖状アルケン、置換又は非置換C1~C10の鎖状アルキン、置換又は非置換C3~C9の環状アルカン、置換又は非置換C1~C10のアルコキシ、置換又は非置換C6~C20のアリール、置換又は非置換C3~C20のヘテロアリールから選択される1つであり、置換基はF、Cl、Brから選択される1つ以上である。)
で示される化合物から選択される1つ以上である。
【0016】
本願の第1の態様の二次電池では、前記添加剤Bは下記式3:
【化4】
(式中、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、及びR49は、それぞれ独立に、置換又は非置換C1~C20のアルカン、置換又は非置換C2~C20のアルケン、置換又は非置換C2~C20のアルキン、置換又は非置換C6~C20のアリールから選択される1種であり、置換基はF、Cl、Brから選択される1つ以上である。)
で示される化合物から選択される1つ以上である。
【0017】
本願の第1の態様の二次電池では、好ましくは、前記添加剤Aは以下の化合物から選択される1つ以上であってもよい。
【化5】
【0018】
本願の第1の態様の二次電池では、好ましくは、前記添加剤Bはトリス(トリメチルシリル)ホスフェート、トリス(トリエチルシリル)ホスフェート、トリス(ビニルジメチルシリル)ホスフェートから選択される1つ以上であり、より好ましくは、前記添加剤Bはトリス(トリメチルシリル)ホスフェートから選択される。
【0019】
本願の研究者は、広範な研究を通じて、二次電池の負極活物質がシリコン系材料を含み、電解液は、有機溶媒が前記有機溶媒中の質量比率20%以下の炭酸エチレン(EC)と、前記有機溶媒中の質量比率20%以下の炭酸ジエチル(DEC)とを含むことと、添加剤が添加剤A及び添加剤Bを含むこととを同時に満たす場合、二次電池のガス発生量が効果的に減少し、かつ電池のインピーダンスが大幅に低減することにより、二次電池が優れた高温サイクル性能、高温貯蔵性能及び低い直流インピーダンスを兼ね備えることを発見した。
【0020】
本願の第1の態様の二次電池では、好ましくは、前記有機溶媒中の前記炭酸エチレン(EC)の質量比率は10%~20%である。前記炭酸エチレン(EC)の含有量がこの範囲内にあると、電池の高温サイクル性能がよく改善し得る。
【0021】
本願の第1の態様の二次電池では、好ましくは、前記有機溶媒中の前記炭酸ジエチル(DEC)の質量比率は10%~20%である。前記炭酸ジエチル(DEC)の含有量がこの範囲内にあると、二次電池のガス発生量がより効果的に減少し、電池の高温貯蔵性能を改善することができる。
【0022】
本願の第1の態様の二次電池では、好ましくは、前記電解液中の前記添加剤Aの質量比率は1%以下である。添加剤Aの含有量が与えられた範囲内にあると、電池の高温サイクル性能及び高温貯蔵性能が効果的に改善され得る。添加剤Aの含有量が高すぎると、正負極の表面に形成された不動態化フィルムのインピーダンスが大幅に増加し、また、電池の高温貯蔵性能にも影響が及ぶ。より好ましくは、前記電解液中の前記添加剤Aの質量比率は0.1%~0.5%である。
【0023】
本願の第1の態様の二次電池では、好ましくは、前記電解液中の前記添加剤Bの質量比率は2%以下である。添加剤Bの含有量が与えられた範囲内にあると、電池のインピーダンスが効果的に低減され得、添加剤Bの含有量が高すぎると、負極の表面により多くのLiPO及び(CHSiFが生成し、その結果、二次電池の高温貯蔵性能に影響が及び。より好ましくは、前記電解液中の前記添加剤Bの質量比率は0.1%~1%である。
【0024】
本願の第1の態様の二次電池では、好ましくは、前記有機溶媒はさらに炭酸エチルメチル(EMC)を含み、前記有機溶媒中の前記炭酸エチルメチル(EMC)の質量比率は50%よりも多く、より好ましくは、前記有機溶媒中の前記炭酸エチルメチル(EMC)の質量比率は55%~65%である。
【0025】
本願の第1の態様の二次電池では、好ましくは、前記添加剤はさらにフルオロエチレンカーボネート(FEC)を含み、前記電解液中の前記フルオロエチレンカーボネート(FEC)の質量比率は8%以下であり、より好ましくは、前記電解液中の前記フルオロエチレンカーボネート(FEC)の質量比率は5%~8%である。
【0026】
本願の第1の態様の二次電池では、好ましくは、前記添加剤はさらにエチレンスルファート(DTD)、1,3-プロパンスルトン(PS)、1,3-プロペニル-スルトン(PST)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(LiDFOP)の1つ以上を含む。
【0027】
本願の第1の態様の二次電池では、好ましくは、前記電解質塩は六フッ化リン酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムの1つ以上を含み、より好ましくは、前記前記電解質塩は六フッ化リン酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの1つ以上を含む。
【0028】
本願の第1の態様の二次電池では、好ましくは、前記電解液中の前記電解質塩の濃度は1.0mol/L~1.3mol/Lであり、より好ましくは1.0mol/L~1.2mol/Lである。
【0029】
本願の第1の態様の二次電池では、好ましくは、前記電解液の25℃における導電率は7mS/cm~9.5mS/cmであり、より好ましくは、前記電解液の25℃における導電率は7mS/cm~8.5mS/cmである。
【0030】
本願の第1の態様の二次電池では、好ましくは、前記電解液の25℃における粘度は3mPa.s~4.5mPa.sであり、より好ましくは、前記電解液の25℃における粘度は3mPa.s~3.5mPa.sである。
【0031】
前記電解液の25℃における導電率は本分野の公知方法によりテストすることができ、採用したテスト機器は雷磁社製導電率測定装置であってもよい。
【0032】
前記電解液の25℃における粘度は本分野の公知方法でテストすることができ、採用したテスト機器は粘度計であってもよい。
【0033】
本願の第1の態様の二次電池では、前記シリコン系材料は、単体シリコン、シリコン炭素化合物、シリコン酸素化合物、シリコン窒素化合物、シリコン合金の1つ以上を含み、好ましくは、前記シリコン系材料はシリコン酸素化合物を含む。
【0034】
本願の第1の態様の二次電池では、好ましくは、前記負極活物質はさらに炭素材料を含み、前記炭素材料は天然黒鉛、人工黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボンの1つ以上を含み、より好ましくは、前記炭素材料は天然黒鉛、人工黒鉛の1つ以上を含む。
【0035】
本願の第1の態様の二次電池では、前記負極集電体の種類について特に制限しておらず、実際のニーズに応じて選択してもよい。具体的には、前記負極集電体は銅箔のような金属箔から選択されてもよい。
【0036】
本願の第1の態様に記載の二次電池では、前記二次電池はさらに正極板を含み、前記正極板は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも1つの表面上に設置され且つ正極活物質を含む正極シートとを備える。
【0037】
本願の第1の態様の二次電池では、好ましくは、前記正極活物質はリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン酸化物化合物、リチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム酸化物の1つ以上を含む。リチウム・ニッケル・コバルト・マンガン酸化物化合物、リチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム酸化物を二次電池の正極活物質とすると、比容量が高く、サイクル寿命が長い等の利点が得られ、シリコン系材料を含む負極活物質と組み合わせて使用すると、更に電池の電気化学的性能が改善する。
【0038】
本願の第1の態様の二次電池では、好ましくは、前記正極活物質はLiNiCoM’又は表面の少なくとも一部に被覆層が設置されたLiNiCoM’の1つ以上を含む。前記式中、0.8≦a≦1.2、0.5≦b<1、0<c<1、0<d<1、0≦e≦0.1、1≦f≦2、0≦g≦1であり、MはMn、Alから選択される1種又は2種であり、M’はZr、Al、Zn、Cu、Cr、Mg、Fe、V、Ti、Bから選択される1つ以上であり、AはN、F、S、Clから選択される1つ以上である。
【0039】
上記正極活物質の被覆層は、炭素層、酸化物層、無機塩層又は導電性ポリマー層であってもよい。正極活物質の表面を被覆変性することにより更に二次電池のサイクル性能を改善することができる。
【0040】
本願の第1の態様の二次電池では、好ましくは、前記正極活物質はさらにリチウムニッケル酸化物(たとえばニッケル酸リチウム)、リチウムマンガン酸化物(たとえばスピネルマンガン酸リチウム、層状マンガン酸リチウム等)、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、コバルト酸リチウム、及びそのドーピング/被覆変性化合物の1つ以上を含んでもよい。
【0041】
本願の第1の態様の二次電池では、前記正極集電体の種類について特に制限しておらず、実際のニーズに応じて選択してもよい。具体的には、前記正極集電体はアルミ箔のような金属箔から選択されてもよい。
【0042】
本願の第1の態様の二次電池では、前記二次電池はさらにセパレータを含む。前記セパレータの種類について特に制限しておらず、実際のニーズに応じて選択してもよい。具体的には、前記セパレータはポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム及びそれらの多層複合フィルムから選択される1つ以上である。
【0043】
いくつかの実施例では、二次電池は、正極板、負極板及び電解液をパッケージするための外装を含んでもよい。一例として、正極板、負極板及びセパレータは、積層又は捲回により積層構造の電極組立体又は捲回構造の電極組立体を形成し、電極組立体は外装内にパッケージされ、電解液は電極組立体に含浸される。二次電池の電極組立体の数は1つ以上であってもよく、ニーズに応じて調節してもよい。
【0044】
いくつかの実施例では、二次電池の外装は、バック型ソフトバッグのようなソフトバッグであってよい。ソフトバッグの材質はプラスチックであってもよく、たとえば、ポリプロピレンPP、ポリブチレンテレフタレートPBT、ポリブチレンサクシネートPBS等の1つ以上を含んでもよい。二次電池の外装は、アルミケース等のようなハードケースであってよい。
【0045】
本願は二次電池の形状について特に制限しておらず、円筒状、角形又はその他の任意の形状であってもよい。図1では、一例としての角型構造の二次電池5である。
【0046】
いくつかの実施例では、二次電池は電池モジュールとして組み立てられてもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数は複数であってもよく、具体的な数は電池モジュールの応用及び容量に応じて調節されてもよい。
【0047】
図2は電池モジュール4の一例である。図2を参照し、電池モジュール4において、複数の二次電池5は電池モジュール4の長さ方向に沿って順に並んで設置されてもよい。もちろん、その他の任意の形態で配置されてもよい。更にファスナーで該複数の二次電池5を固定してもよい。
【0048】
選択可能に、電池モジュール4はさらに収納空間を有するハウジングを含んでもよく、複数の二次電池5は該収納空間に収容される。
【0049】
いくつかの実施例では、上記電池モジュールはさらに電池パックとして組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は電池パックの応用及び容量に応じて調節してもよい。
【0050】
図3及び図4は電池パック1の一例である。図3及び図4を参照し、電池パック1においては、電池筐体と、電池筐体内に設置された複数の電池モジュール4とを含んでもよい。電池筐体は上筐体2及び下筐体3を含み、上筐体2は下筐体3にカバーされ、かつ電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は任意の方式で電池筐体に配列されてもよい。
【0051】
本願の第2の態様では、本願の第1の態様に記載の二次電池を備えた装置を提供する。前記二次電池は前記装置の電源として機能してもよく、前記装置のエネルギー貯蔵ユニットとして機能してもよい。前記装置は移動機器(たとえば携帯電話、ノートパソコン等)、電動車両(たとえば純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電気自転車、電気スクーター、電気ゴルフカート、電気トラック等)、電車、船、衛星、エネルギー貯蔵システム等を含むが、それらに制限しない。
【0052】
前記装置は、その使用ニーズに応じて、二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択してもよい。
【0053】
図5は装置の一例である。該装置は純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車等である。該装置の二次電池に対する高電力及び高エネルギー密度の要件を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用してもよい。
【0054】
装置の別の例としては、携帯電話、タブレットPC、ノートパソコン等であってもよい。該装置は、通常、軽量化・薄型化を必要とし、このため、二次電池を電源として採用することができる。
【0055】
以下、実施例を参照しながら、本願を更に説明する。なお、それらの実施例は本願を説明するものに過ぎず、本願の範囲を制限するものではない。
【0056】
実施例1~31及び比較例1~5の二次電池はいずれも以下の方法によって製造される。
【0057】
(1)正極板の製造
正極活物質(LiNi0.8Co0.1Mn0.1)、導電剤Super P、及び接着剤であるフッ化ポリビニリデンを98:1:1の質量比で混合して、溶媒であるN-メチルピロリドンを加え、真空ミキサーにより系が均一な透明状となるまで撹拌し、正極スラリーを取得した。この正極スラリーを正極集電体としてのアルミ箔上に均一に塗布し、アルミ箔を室温で乾燥させた後にオーブンに移して乾燥させ、その後、コールドプレス、切断により正極板を得た。
【0058】
(2)負極板の製造
負極活物質である一酸化ケイ素と人工黒鉛とを2:8の質量比で混合した後、導電剤であるSuper P、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、及び接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)を92:2:2:4の質量比で混合して、脱イオン水を加え、真空ミキサーにより負極スラリーを取得した。この負極スラリーを負極集電体銅箔上に均一に塗布し、銅箔を室温で乾燥させた後にオーブンに移して乾燥させ、その後、コールドプレス、切断により負極板を得た。
【0059】
(3)電解液の調製
含水量<10ppmのアルゴン雰囲気のグローブボックスにおいて、混合有機溶媒を製造した。続いて、十分に乾燥させた電解質塩をこの混合有機溶媒に溶解し、次に、添加剤を加え、均一に混合して電解液を取得した。電解液において使用した有機溶媒及び添加剤の具体的な種類及び含有量を表1に示す。表1において、各有機溶媒は有機溶媒の総質量に基づいて算出した質量百分率であり、各添加剤の含有量は電解液の総質量に基づいて算出した質量百分率である。
【0060】
(4)セパレータの製造
ポリエチレンフィルムをセパレータとして使用した。
【0061】
(5)二次電池の製造
セパレータが正極板と負極板との間に介在して離間作用を果たすように正極板、セパレータ、負極板を順に積層し、次に巻き取って電極組立体を得た。この電極組立体を外装に入れて、上述により製造した電解液を、乾燥した後の電池に注入し、真空パッケージ、静置、フォーメーション、サイジング等の工程により、二次電池を取得した。
【0062】
【表1A】
【表1B】
【表1C】
【0063】
次に、二次電池のテスト過程を説明する。
【0064】
(1)高温貯蔵性能のテスト
25℃で、二次電池を0.5C定電流で4.25Vに充電し、次に、4.25V定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、ドレン法でこの時の二次電池の体積をテストしてVとした。その後、この二次電池を60℃の恒温ボックスに入れ、30日間貯蔵した後に取り出し、この時の二次電池の体積をテストしてVとした。
二次電池を60℃で30日間貯蔵した後の体積膨張率(%)=[(V-V)/V]×100%
である。
【0065】
(2)高温サイクル性能のテスト
45℃で、二次電池を1C定電流で4.25Vに充電し、4.25V定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、5分間静置し、次に、1C定電流で2.5Vに放電した。これらは二次電池の初回サイクル充電/放電過程であり、この時の放電容量は二次電池の初回サイクルの放電容量とし、上記過程で二次電池に対して800回のサイクル充電/放電のテストを行い、800回サイクル後の二次電池の放電容量を記録した。
二次電池を45℃で800回サイクルした後の容量保持率(%)=(二次電池の800サイクル後の放電容量/二次電池の初回サイクルの放電容量)×100%
である。
【0066】
(3)直流インピーダンスのテスト
25℃で、二次電池を0.5C定電流/定電圧で50%SOCに充電し、10分間放置し、次に0.1C定電流(I)で10秒間放電し、放電した後の二次電池の電圧を記録してUとし、次に二次電池を4C定電流(I)で30秒間放電し、放電した後の二次電池の電圧を記録してUとした。
二次電池の直流インピーダンスDCR=(U-U)/(I-I
である。
【0067】
【表2A】
【表2B】
【0068】
表2のテスト結果の分析から明らかなとおり、本願実施例1~31では、電解液中の有機溶媒は炭酸エチレン(EC)及び炭酸ジエチル(DEC)を含み、前記有機溶媒中の前記炭酸エチレン(EC)及び炭酸ジエチル(DEC)の質量比率はいずれも20%以下であり、且つ添加剤は添加剤A及び添加剤Bの両方を含んでいる。このような有機溶媒及び添加剤の複合作用により、本願の二次電池は、優れた高温サイクル性能、高温貯蔵性能及び低い直流インピーダンスを兼ね備える。
【0069】
比較例1の電解液には添加剤Aのみが加えられ、電池の高温貯蔵性能及び高温サイクル性能が改善されたが、電池の直流内部抵抗が上昇した。
【0070】
比較例2の電解液には添加剤Bのみが加えられ、電池の直流内部抵抗が改善されたが、添加剤Bのみを使用することにより、二次電池中の(CHSiF及びLiPOFの含有量が多くなり、電池の高温貯蔵性能及び高温サイクル性能が劣化した。
【0071】
比較例3の電解液では、前記有機溶媒中の炭酸エチレン(EC)の質量比率は20%よりも多く、これにより、電池の高温貯蔵性能が劣化した。
【0072】
比較例4の電解液では、前記有機溶媒中の炭酸ジエチル(DEC)の質量比率は20%よりも多く、これにより、電池の高温サイクル性能が劣化した。
【0073】
比較例5では、電解液中の添加剤Bとしてトリス(トリメチルシリル)ボレートが使用されており、電池の統合的な性能は悪かった。
【0074】
以上より、本願の電解液は、有機溶媒及び添加剤の複合作用により、優れた高温サイクル性能、高温貯蔵性能及び低い直流インピーダンスを二次電池に同時に付与することができる。
【符号の説明】
【0075】
1・・・電池パック
2・・・上筐体
3・・・下筐体
4・・・電池モジュール
5・・・二次電池
図1
図2
図3
図4
図5