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特許7337319水蒸気バリア組成物および水蒸気バリア積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】水蒸気バリア組成物および水蒸気バリア積層体
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/02 20060101AFI20230828BHJP
【FI】
C08L53/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022079805
(22)【出願日】2022-05-13
(65)【公開番号】P2023092424
(43)【公開日】2023-07-03
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2021207559
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福原 克郎
(72)【発明者】
【氏名】白石 欣也
(72)【発明者】
【氏名】諏訪部 千佳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武志
(72)【発明者】
【氏名】真嶋 佑樹
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-146040(JP,A)
【文献】特開2007-030941(JP,A)
【文献】特開2008-045070(JP,A)
【文献】特開2007-047658(JP,A)
【文献】特開2002-337298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 53/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系熱可塑性樹脂(A)(ただし、合成樹脂エマルジョンである場合を除く)と炭化水素系ワックス(B)と溶剤(C)とを含むことを特徴とする水蒸気バリア組成物であり、
前記スチレン系熱可塑性樹脂(A)の含有率が、水蒸気バリア組成物の固形分100質量%中、25~95質量%であり、
前記炭化水素系ワックス(B)の含有率が、水蒸気バリア組成物の固形分100質量%中、5~80質量%であり、
前記溶剤(C)が、ハンセン溶解度パラメーター(HSP値)の分散力項δdが14以上であり、双極子間力項δpが3以下である有機溶剤(C1)を、溶剤(C)100質量%中50~100質量%含み、
前記スチレン系熱可塑性樹脂(A)が、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・イソブチレン・スチレン(SIBS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEPS)、スチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEBS)、スチレン・ブタジエン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SBIS)、スチレン・ブタジエン・イソプレン・スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEEPS)、または、スチレン・ブタジエン共重合体(SB)およびそれらの酸変性体、酸無水物変性体、アミン変性体からなる群より選ばれる1種以上を含むことを特徴とする、水蒸気バリア組成物。
【請求項2】
炭化水素系ワックス(B)の融点が、30℃~80℃であり、炭化水素系ワックス(B)中、分岐を持たない直鎖構造を有する炭化水素系ワックス(b1)を80質量%以上含有することを特徴とする請求項1に記載の水蒸気バリア組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い水蒸気バリア性を発現することが可能な水蒸気バリア性組成物、ならびにこれを用いた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品ロスが世界中で問題視される中、食品品質の長期保持と廃棄の抑制が課題とされている。中でも食品パッケージに使用される内容物の多くは大気中の酸素や水蒸気等のガスによって劣化するため、ガラス並の高いガスバリア性や透明性を有する素材の開発が求められている。
水蒸気バリア性付与には、アルミニウムなどの金属やアルミナやシリカなどを含む無機材料をバリア層に用いるのが一般的である。高い水蒸気バリア性の実現には、これら無機層をCVDや蒸着などの真空プロセスによってプラスチックフィルム基材上に形成する手法が主流となりつつあるが、無機層を含む構成ではクラック等の欠陥に起因する耐性などの課題があった。これらの課題を解決すべく、有機材料の柔軟性を活かした有機層と無機層とを組み合わせた多層構成等の検討もなされているがリサイクル性を考慮すると単層構成にするのが好ましく、実現には有機層が高い水蒸気バリア性を有していることが好ましい。
有機層の水蒸気バリア性を高めることは、先に述べた食品ロス問題の解決に寄与するだけでなく、太陽電池の周辺部材や、医療品や食品のパッケージングといった幅広い既存製品の信頼性の改善にもつながると考えられる。また、簡便なコーティングによって基材に高い水蒸気バリア性を付与することができれば、無機層を真空プロセスによって形成する手法に比して大きな製造上のメリットとなる。
【0003】
有機材料を用いて水蒸気バリア性を付与する手法はいくつか考えられるが、そのうちワックスをバリア層に用いた場合、高い水蒸気バリア性が発現されることが報告されている(非特許文献1)。しかしながら、非特許文献1に開示されている内容はワックスを単体で使用した場合に限っており、塗工適正や、水蒸気バリア層形成時における耐久性および柔軟性などを考慮していない。一方で、水蒸気バリア性を有する材料としては、ポリオレフィン樹脂とワックスの組み合わせからなる組成物が知られている。例えば、特許文献1にはポリオレフィン樹脂とワックスとの防湿紙用のホットメルトタイプの組成物が開示されている。しかし、基材への塗布には融点以上に加熱する必要があるため、特殊な塗布装置を必要し、工程に対する制限が大きい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Critical Reviews in Food Science and Nutrition(2002),42, 67-89
【特許文献】
【0005】
【文献】特開1997-316252
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、プラスチックフィルムや紙等の基材に、有機材料で構成される水蒸気バリア層を塗布により簡便に形成することができ、従来公知の有機組成物よりも高い水蒸気バリア性を発現することが可能な水蒸気バリア組成物、これを用いた水蒸気バリア積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前期課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有する有機材料と炭化水素系ワックスを共存させることで、水蒸気バリア性を発現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、スチレン系熱可塑性樹脂(A)と炭化水素系ワックス(B)とを含む事を特徴とする水蒸気バリア組成物に関する。
【0009】
炭化水素系ワックス(B)の含有率が、水蒸気バリア組成物の固形分100重量%中、5~80質量%であることを特徴とする前記の水蒸気バリア組成物に関する。
【0010】
スチレン系熱可塑性樹脂(A)が、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・イソブチレン・スチレン(SIBS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEPS)、スチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEBS)スチレン・ブタジエン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SBIS)、またはスチレン・ブタジエン・イソプレン・スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEEPS)、スチレン・ブタジエン共重合体(SB)、およびそれらの酸変性体、酸無水物変性体、アミン変性体を含むことを特徴とする前記の水蒸気バリア組成物に関する
【0011】
炭化水素系ワックス(B)の融点が、30℃~80℃であり、炭化水素系ワックス(B)中、分岐を持たない直鎖構造を有する炭化水素系ワックス(b1)を80質量%以上含有することを特徴とする前記の水蒸気バリア組成物に関する。
【0012】
さらに溶剤(C)を含む前記の水蒸気バリア組成物に関する。
【0013】
基材上に、前記の水蒸気バリア組成物を塗工して得られる水蒸気バリア組成物層を有する水蒸気バリア積層体に関する
【0014】
基材が樹脂シートまたは紙基材である前記の水蒸気バリア積層体。
【0015】
さらにヒートシール層、アンカーコート層、印刷インキ層、およびトップコート層からなる群から選ばれる少なくとも1つの層を有する前記の水蒸気バリア積層体に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、プラスチックフィルム等の基材に、水蒸気バリア層を塗布により形成することができ、従来公知の有機材料よりも高い水蒸気バリア性を発現することができる、水蒸気バリア組成物、水蒸気バリア積層体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
本発明の水蒸気バリア組成物および水蒸気バリア積層体は、スチレン系熱可塑性樹脂と炭化水素系ワックスとを含むことを特徴とする。
【0019】
<スチレン系熱可塑性樹脂(A)>
本発明に用いるスチレン系熱可塑性樹脂(A)は、一般的にポリスチレンブロックとゴム中間ブロックとを有し、ポリスチレン部分が物理的架橋(ドメイン)を形成して橋掛け点となり、中間のゴムブロックは製品にゴム弾性を与える。中間のソフトセグメントにはポリブタジエン(B)、イソブチレン(IB)、ポリイソプレン(I)及びポリオレフィンエラストマー(エチレン・プロピレン、EP)などがあり、ハードセグメントのポリスチレン(S)との配列の様式によって、直鎖状(リニアタイプ)及び放射状(ラジカルタイプ)とに分かれる。前記した好ましいスチレン系エラストマーの中でも、本発明ではより具体的にスチレン・イソブチレン・スチレン共重合体(SIBS)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEPS)、スチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEBS)、スチレン・ブタジエン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SBIS)またはスチレン・ブタジエン・イソプレン・スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEEPS)、スチレン・ブタジエン共重合体(SB)およびそれらの酸変性体、酸無水物変性体、アミン変性体などからなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。ただし、これらの樹脂に限定されるわけではないが後述する溶剤を加えてインキとした際にインキ中においてスチレン系熱可塑性樹脂(A)が、炭化水素系ワックス(B)と相溶することが好ましい。
このようなスチレン系熱可塑性樹脂(A)の市販品としては、例えば、クレイトン社製のFG1901、FG1924、G1650、D1117、G1643、FG1924、MD1648、アロン化成社製のAR-GB-40、AR-1040、AR-NF0-80B、AR-815、AR-8050NC、クラレ社製のSEPTON1020、SEPTON2002、SEPTON2063、SEPTON HG-252、旭化成社製のアサプレンT-411、タフテックH1401、タフテックH1517、タフテックMP10、JSR社製のJSRSIS5002、JSRSIS5506、カネカ社製のSIBSTAR072T、SIBSTAR073T、SIBSTAR102Tなどが挙げられる。
【0020】
<炭化水素系ワックス(B)>
本発明に用いる炭化水素系ワックス(B)とは、長鎖アルキル基骨格を主体とし、常温で固体、かつ、加熱すると液体となる有機物を意味し、その骨格中に酸基、エステル基、ヒドロキシル基等を含んでいてもよい。このような炭化水素系ワックス(B)をスチレン系熱可塑性樹脂(A)に対して加えることにより樹脂単体では観測されなかった高い水蒸気バリア性を発現することが可能となる。ここで炭化水素系ワックス(B)に起因する水蒸気バリア性の発現要因として以下のように推定している。すなわち、本発明の水蒸気バリア組成物は後述する基材に塗工された後に、加熱・乾燥工程を経ることで水蒸気バリア組成物層を形成するが、加熱・乾燥工程において、水蒸気バリア組成物中に含まれる炭化水素系ワックスが凝集を開始し、集合体を形成する。さらに炭化水素系ワックス同士が集合する過程で炭化水素系ワックスが持つ高い結晶性に由来した配向構造または結晶構造が表面に形成されると考えられる。その結果、後述する水蒸気バリア組成物層内の特に界面・表面近傍において緻密なワックス層が形成され、疎水性かつ高結晶性の水蒸気を透過し難い部位の存在により水蒸気の溶解・拡散を抑制し、優れた水蒸気バリア性を発現していると考えられる。
【0021】
炭化水素系ワックス(B)の具体例としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ビーズワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、カルナバワックス、キャンデリラワックス、蜜蝋、木蝋、ライスワックスなどの天然ワックスおよび合成ワックスなどからなる群から選ばれる1種以上を含むことができ、これらに限定されない。炭化水素系ワックス(B)は、水蒸気バリア組成物中で均一に溶解することが好ましい。市販品としては、天然ワックスとして日本精蝋社製およびENEOS社製のパラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックスを挙げることができる。さらに日本精蝋社製のFT115、FT0165、SX105、FNP0090、Baker Hughes社製のCERAMERポリマー、POLYWAXポリエチレン、UNICIDカルボン酸、UNILINアルコール、UNITHOXエトキシレート、PETROLITEコポリマー、VYBARポリマー、三菱ケミカル社製のダイヤカルナ、三洋化学社製のサンワックスシリーズ、ビスコールシリーズ、などの合成ワックスを挙げることができる。さらに、これらを原料として酸化、ケン化、エステル化、マレイン化、酸無水物化などの化学反応により製造した、酸化ワックスや、これらを樹脂等に配合した配合ワックス、またこれらのワックスを水中に分散させたエマルジョンワックスも、本発明の炭化水素系ワックス(B)に含まれる。
【0022】
炭化水素系ワックスが良好な水蒸気バリア性を発現するには、炭化水素系ワックスの融点が30℃以上80℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは融点が40℃以上70℃以下である。また、炭化水素系ワックス(B)の80質量%以上が分岐を持たない直鎖構造を持つことが好ましく、さらに好ましくは90%以上が分岐を持たない直鎖構造を持つことである。また、常温で固体であって、融点が30℃から80℃の同様の性質を示す炭化水素系材料として、分子内に二重結合を有するワックス状のオレフィン類も炭化水素系ワックス(B)に包含され、これらの混合物を挙げることができる。上記した炭化水素系ワックス(B)の中では、パラフィンワックスとマイクロクリスタリンワックスが好ましく、最も好ましくは、パラフィンワックスである。これらは、結晶性に優れるため、本発明の水蒸気バリア組成物におけるワックス集合体構造の形成を特に促進することができる。
【0023】
炭化水素系ワックス(B)の含有率は、水蒸気バリア組成物の固形分合計を100質量%とした場合、5~80質量%であることが好ましく、8~50質量%であることがさらに好ましい。この範囲であることにより、本発明の水蒸気バリア組成物において他の成分と混和性が向上し、水蒸気バリア積層体においてより優れた水蒸気バリア性を発現することが可能である。
【0024】
<溶剤(C)>
本発明に用いる水蒸気バリア組成物に使用される溶剤(C)は、例えば有機溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ノルマルブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、エチルセルソルブアセテート、ノルマルプロピルアセテート、イソプロピルアセテート、イソブチルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロパノール、ノルマルブタノール、ノルマルプロピルアルコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、およびメチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤など、公知の溶剤を使用できる。これらは、1種または2種以上を組合せて溶剤(C)として用いることも可能である。
これらの溶剤(C)のうち、先に述べた炭化水素系ワックスの集合体構造を形成するには、水蒸気バリア組成物中においてスチレン系熱可塑性樹脂または炭化水素系ワックスとの相溶性が比較的高く、乾燥後のワックスの結晶化および表面移行を良好にできることから、ハンセン溶解度パラメーター(HSP値)の分散力項δdが14以上であり双極子間力項δpが3以下である有機溶剤を用いることが好ましく、分散力項δdが15以上であり双極子間力項δpが4以下である有機溶剤(C1)を用いることがさらに好ましく、これら有機溶剤を溶剤(C)中に50%以上含むことが好ましい。HSP値の分散力項δdが15以上であり双極子間力項δpが4以下である有機溶剤としては、トルエン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ヘキサン等の非極性溶剤を挙げることができる。なおHSP値とは、ヒルデブランド(Hildebrand)によって導入された溶解度パラメーターを、分散力項δd、極性項δp、水素結合項δhの3成分に分割し、物質の極性を考慮したものである。HSP値は、公知の値を用いてもいいし、パソコンソフトHSPiP(出典: http://www.hansen-solubility.com/index.html)等を使用してもよい。
溶剤(C)を使用する際の質量は特に限定されないが、水蒸気バリア組成物中、溶剤の含有量が、50~95質量%であることが好ましい。
また、有機溶剤(C1)を用いる場合、溶剤(C)中、50~100質量%であることが
好ましい。
【0025】
<その他の成分>
水蒸気バリア組成物は、本発明による効果を損なわない範囲であれば、各種添加剤を適宜配合することも可能である。例えば、硬化収縮率低減、熱膨張率低減、寸法安定性向上、弾性率向上、粘度調整、強度向上および靭性向上等の観点から、ポリイソシアネートやエポキシ樹脂、ポリカルボジイミド化合物等の硬化剤や有機又は無機の充填剤、液状ゴムを配合することができる。このような充填剤は、ポリマー、セラミックス、金属、金属酸化物、金属塩、および染顔料等の材料から構成されるものであってよい。また、その形状については、特に限定されず、例えば、粒子状および繊維状等であってよい。また、基材とのレベリング性、塗工性の調整、接着性の向上のために、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、難燃化剤、保存安定剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、紫外線吸収剤、チキソトロピー付与剤、レベリング剤、消泡剤、分散安定剤、流動性付与剤、消泡剤および色材等も添加することができる。また、流動性や接着性を向上させるために液状ゴムや軟化剤を含ませてもよい。
【0026】
<水蒸気バリア組成物>
本発明の水蒸気バリア組成物は、スチレン系熱可塑性樹脂(A)と炭化水素系ワックス(B)、その他必要に応じて用いられる任意成分をロール、撹拌機、溶融窯などを用いて混合することにより得ることができるが、特に限定されず、これらの成分が均一に混合できれば、いかなる方法を用いることも可能である。本発明に用いられる水蒸気バリア組成物は、必要に応じて溶剤(C)を加えてもよいが、高温で流動可能になり、冷却により非流動可能な状態へと戻る非硬化性樹脂とするいわゆるホットメルト型としても良い。また本発明に用いられる水蒸気バリア組成物は任意の硬化剤成分を混ぜることで基材または基材と水蒸気バリア組成物層以外の層を含む積層シート上に形成された後に、硬化(架橋)反応を受ける、硬化性組成物とすることもできる。
【0027】
また、本発明の水蒸気バリア組成物はスチレン系熱可塑性樹脂(A)と炭化水素系ワックス(B)、溶剤(C)、その他必要に応じて用いられる任意成分を均一に混合することによっても得ることができる。上記水蒸気バリア組成物は塗工適正付与の観点から溶剤を加えてインキとすることで、後述する塗工方法をもって、基材上に水蒸気バリア組成物の層を形成することが可能となる。均一に混合するための方法としては、プラネタリーミキサーやディスパーなどの撹拌機を備えた窯、またはガラス瓶、を用いて処理するのもよく、ボールミル、ビーズミル、ローラーミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどの分散処理を適用してもよい。なお、上記の撹拌、分散工程において、スチレン系熱可塑性樹脂(A)または炭化水素系ワックス(B)は必ずしも完全に溶解していなくてもよく、微粒子状のエマルジョンを形成していてもよい。上記水蒸気バリア組成物中に気泡や予期せずに粗大粒子などが含まれる場合は、塗工物品質を低下させるため、濾過などにより取り除くことが好ましい。濾過器は従来公知のものを使用することができる。
【0028】
<基材>
基材は、樹脂シート、紙、アルミニウムシート(アルミ箔)等が挙げれる。例えば、樹脂シートとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポオリノルボルネン等のポリオレフィン系樹脂などの樹脂から形成される樹脂シートが挙げられる。また、これらのシートに金属が積層した積層体であってもよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)シートにアルミニウムが積層した積層体であってもよい。前記基材の中で、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等が、延伸性、透光性、および剛性が良好な積層シートが得られるので好ましい。
基材は、本発明の効果を損ねない範囲で、1種または2種以上の任意成分を含有してもよい。本発明で用いられる基材は、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、顔料、および蛍光増白剤等を含有してもよい。基材は、シリカ、炭酸カルシウム、または酸化チタン等を含む無機粒子、あるいは、アクリル樹脂またはスチレン樹脂等を含む有機粒子を含有してもよい。
【0029】
(紙基材)
紙基材としては、特に制限されるものではなく、植物由来のパルプを主成分としている紙であれば特に制限はない。紙基材の具体例として、、晒または未晒クラフト紙、上質紙、板紙、ライナー紙、塗工紙、片艶紙、グラシン紙、グラファン紙等が挙げられる。紙基材の厚さは、例えば、30μm以上100μm以下であってよく、30μm以上70μm以下であってよい。また、紙基材の厚みは、積層体全体の厚みの70%以上であってよい。紙基材の厚みが、積層体全体の厚みの70%以上であれば、環境適性に優れているといえる。
【0030】
また、基紙の坪量は、バリア素材に所望される各種品質や取り扱い性等により適宜選択可能であるが、通常は20g/m以上600g/m以下程度のものが好ましい。食品などの包装材、袋、紙器、段ボール箱、カップなど、包装用途に使用する包装材料の場合は、25g/m以上600g/m以下のものがより好ましい。
【0031】
<水蒸気バリア積層体>
本発明の水蒸気バリア積層体は、基材の片面または両面に上に水蒸気バリア組成物を塗工することにより形成される水蒸気バリア組成物層を有している。水蒸気バリア組成物の塗工方法は、印刷方法も含まれ、特に限定されず、公知の塗工方法を活用することができる。塗工方法としてはワイヤーバー塗工法、ダイコート塗工法、キャスト塗工法、スロット塗工法、オメガ塗工法、スパイラル塗工法、コントロールシーム塗工法、スロット塗工法、ドット塗工法、ホットメルトアプリケーター塗工法、ホットメルトコーター塗工法、ブレードコート塗工法、ディップ塗工法、グラビアコート塗工法、マイクログラビア塗工法、カーテンスプレー塗工法、ビード塗工法、ホットメルトロールコーター塗工法、スピンコート塗工法が挙げられ、印刷方法としてはインクジェット印刷法、スプレー印刷法、ロールコート印刷法、ドクターロール印刷法、ドクターブレード印刷法、カーテンコート印刷法、スリットコート印刷法、スクリーン印刷法、反転印刷法、プッシュコート印刷法、スリットコーター印刷法等を挙げることができる。水蒸気バリア積層体はこれらの方法により基材へ塗工した後、溶剤(C)を除去したり、架橋を促進する目的で、必要に応じて加熱乾燥したり、減圧乾燥したりしてもよい。乾燥条件としては、膜厚や基材そして選択した有機溶剤にもより、基材が劣化しない範囲であれば特に限定されないが、好ましくは40~200℃程度の熱風加熱が用いられる。
【0032】
基材に樹脂シートを用いる場合、水蒸気バリア組成物層の厚みは、特に限定されないが、折り曲げ時のクラック発生等を抑止する目的で薄膜であることが好ましく、乾燥状態で0.1~200μmが好ましく、0.5~10μmがより好ましく、1.0~5.0μmがさらに好ましい。
【0033】
基材に紙基材を用いる場合、水蒸気バリア組成物の塗布量は、特に制限されないが、塗布量がより多いほど、水蒸気バリア組成物が浸透した紙基材上に水蒸気バリア層が均一に形成され、十分な水蒸気バリア性能を発現させることが可能になる。そのため、紙基材上に直接水蒸気バリア組成物を塗工する場合、水蒸気バリア組成物の塗布量は乾燥状態で、3.5~15.0g/mが好ましく、4.0~10.0g/mがより好ましく、4.5~8.0g/mがさらに好ましい。
【0034】
また、ここで形成される水蒸気バリア組成物層は、基材の片面または両面に対して、1層または複数層を積層してもよい。複数層の水蒸気バリア組成物層を設ける場合は、それらの組成が同一であっても、異なっていても良い。例えば、基材の片面に対して、水蒸気バリア組成物を塗工した後に、乾燥工程を経て、さらに同様の工程で同一の水蒸気バリア組成物層を形成して2層としても良いし、さらに異なる水蒸気バリア組成物層を形成して3層としても良い。
【0035】
水蒸気バリア積層体は、基材と水蒸気バリア組成物層以外に、任意の有機層または無機層を設けることができ、任意の層としてヒートシール層、アンカーコート層、印刷インキ層、トップコート層またはオーバーコート層などが挙げられる。これらの層は、1層または複数層含むことができる。ここでいう任意の層は、特に限定されないが基材層上に直接形成されたものであってもよく、水蒸気バリア組成物層を介して形成されたものであってもよいが、例えば、水蒸気バリア組成物層の保護または耐摩耗性向上の観点から必要に応じて水蒸気バリア組成物層の上に保護層および接着層を設けても良い。また、アンカーコート層は水蒸気バリア組成物層と基材層の間に形成されるのが好ましく、トップコート層は基材を介して形成された水蒸気バリア組成物層上に形成されたものが好ましい。
【0036】
積層体の構成としては例えば、基材/水蒸気バリア組成物層、基材/印刷インキ層/水蒸気バリア組成物層、基材/アンカーコート層/水蒸気バリア組成物層、基材/水蒸気バリア組成物層/トップコート層、基材/印刷インキ層/アンカーコート層/水蒸気バリア組成物層、基材/印刷インキ層/アンカーコート層/水蒸気バリア組成物層/トップコート層、基材/アンカーコート層/印刷インキ層/水蒸気バリア組成物層、基材/アンカーコート層/印刷インキ層/水蒸気バリア組成物層/トップコート層、基材/水蒸気バリア組成物層/印刷インキ層、基材/水蒸気バリア組成物層/印刷インキ層/トップコート層、ヒートシール層/基材/水蒸気バリア組成物層、ヒートシール層/基材/印刷インキ層/水蒸気バリア組成物層、ヒートシール層/基材/アンカーコート層/水蒸気バリア組成物層、ヒートシール層/基材/水蒸気バリア組成物層/トップコート層、ヒートシール層/基材/印刷インキ層/アンカーコート層/水蒸気バリア組成物層、ヒートシール層/基材/印刷インキ層/アンカーコート層/水蒸気バリア組成物層/トップコート層、ヒートシール層/基材/アンカーコート層/印刷インキ層/水蒸気バリア組成物層、ヒートシール層/基材/アンカーコート層/印刷インキ層/水蒸気バリア組成物層/トップコート層、ヒートシール層/基材/水蒸気バリア組成物層/印刷インキ層、ヒートシール層/基材/水蒸気バリア組成物層/印刷インキ層/トップコート層、ヒートシール層/水蒸気バリア組成物層/基材、ヒートシール層/水蒸気バリア組成物層/基材/印刷インキ層、ヒートシール層/水蒸気バリア組成物層/基材/トップコート層、ヒートシール層/水蒸気バリア組成物層/基材/印刷インキ層/トップコート層が挙げられ、水蒸気バリア性能や耐摩擦性能など積層体の物性面で、基材/印刷インキ層/水蒸気バリア組成物層、基材/アンカーコート層/水蒸気バリア組成物層、基材/水蒸気バリア組成物層/トップコート層、基材/印刷インキ層/アンカーコート層/水蒸気バリア組成物層、基材/印刷インキ層/アンカーコート層/水蒸気バリア組成物層/トップコート層、基材/アンカーコート層/印刷インキ層/水蒸気バリア組成物層、基材/アンカーコート層/印刷インキ層/水蒸気バリア組成物層/トップコート層、基材/水蒸気バリア組成物層/印刷インキ層/トップコート層、ヒートシール層/基材/印刷インキ層/水蒸気バリア組成物層、ヒートシール層/基材/アンカーコート層/水蒸気バリア組成物層、ヒートシール層/基材/水蒸気バリア組成物層/トップコート層、ヒートシール層/基材/印刷インキ層/アンカーコート層/水蒸気バリア組成物層、ヒートシール層/基材/印刷インキ層/アンカーコート層/水蒸気バリア組成物層/トップコート層、ヒートシール層/基材/アンカーコート層/印刷インキ層/水蒸気バリア組成物層、ヒートシール層/基材/アンカーコート層/印刷インキ層/水蒸気バリア組成物層/トップコート層、ヒートシール層/基材/水蒸気バリア組成物層/印刷インキ層/トップコート層、ヒートシール層/水蒸気バリア組成物層/基材、ヒートシール層/水蒸気バリア組成物層/基材/印刷インキ層、ヒートシール層/水蒸気バリア組成物層/基材/トップコート層、ヒートシール層/水蒸気バリア組成物層/基材/印刷インキ層/トップコート層がより好ましい。
【0037】
基材に樹脂シートを用いる場合、任意の層を設けた際の積層体の厚みは特に限定されないが、乾燥状態で0.1~200μmが好ましく、0.5~10μmがより好ましく、1.0~5.0μmがさらに好ましい。紙基材と水蒸気バリア層の間にアンカーコート層を形成した積層体の場合、水蒸気バリア組成物の塗布量は、特に制限されないが、乾燥状態で、0.5~10.0g/mが好ましく、1.0~7.0g/mがより好ましく、1.5~6.5g/mがさらに好ましい。
【0038】
有機層または無機層の積層方法については特に限定されず、例えば、塗工などのウェットプロセスで積層しても良く、フィルムや押出加工、ラミネートで上から重ねて積層してもよく、蒸着やCVDなどの真空工程によって形成した層を含む積層体であっても良い。
【0039】
有機層の材料としては、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、およびポリブテン等)、環状オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド系樹脂(ナイロン-6、ナイロン-66、およびポリメタキシレンアジパミド等)、ポリアセタール系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリスルホン酸系、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フェノール系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アルキド系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、メラミン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリカプロラクトン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリイミド系樹脂等を挙げることができる。これらは単独で使用しても2種以上使用してもよい。無機層の材料としては、クロム、チタン、亜鉛、コバルト、銅、銀、アルミニウム、錫および珪素などの金属および半金属、あるいはシリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、窒化ケイ素など前述の金属および半金属の酸化物、窒化物、窒酸化物、硫化物、およびリン化物等が挙げられる。これらは単独で使用しても2種以上使用してもよい。
基材の片面または両面に対して、1層または複数層の水蒸気バリア組成物層と1層または複数層の有機層または無機層とを含む場合、これらの積層順序は任意である。
【0040】
<アンカーコート層>
アンカーコート層は基材と水蒸気バリア層の間に形成されることで、水蒸気バリア層の基材への密着性を向上させる。また基材に紙基材を用いる場合、基材と水蒸気バリア層の間にアンカーコート層を形成することで、アンカーコート層が目止め剤の役割を果たすため、水蒸気バリア組成物の塗布量を低減しても十分な水蒸気バリア性能を発現でき、また積層体の耐水性を向上することができる。アンカーコート層の形成に用いるアンカーコート剤としては、油性アンカーコート剤または水性アンカーコート剤を用いることができる。紙基材と水蒸気バリア層の間にアンカーコート層を形成した積層体の場合、アンカーコート層に用いるアンカーコート剤の塗布量は、特に制限されないが、乾燥状態で、0.5~10.0g/mが好ましく、1.0~7.0g/mがより好ましく、1.5~6.5g/mがさらに好ましい。
【0041】
<油性アンカーコート剤>
油性アンカーコート剤に使用されるバインダー樹脂の例としては、以下に限定されるものではないが、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル系共重合樹脂、ロジン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ダンマル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、ポリアセタール樹脂、石油樹脂、およびこれらの変性樹脂などが挙げられ、これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、ポリ乳酸樹脂が好ましく、特にポリウレタン樹脂がより好ましい。
【0042】
<ポリウレタン樹脂>
ポリウレタン樹脂は、重量平均分子量が10,000~100,000のものが好ましく、ガラス転移温度が0℃以下であることが好ましい。-60℃~0℃であることがなお好ましく、-40~-5℃であることが更に好ましい。
また、ポリウレタン樹脂は、アミン価および/または水酸基価を有するものが好ましく、アミン価は0.5~30mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは1~20mgKOH/gである。また、水酸基価は0.5~30mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは1~20mgKOH/gである。上記範囲であると、基材への接着性が向上する。
【0043】
ポリウレタン樹脂は、ポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオール由来の構造単位を含むものが好ましく、その含有量の合計は、ポリウレタン樹脂固形分100質量%中、5~80質量%であることが好ましく、より好ましくは10~60質量%であり、更に好ましくは10~50質量%である。
【0044】
ポリウレタン樹脂は特に制限はなく、公知の方法により適宜製造される。ポリオールとポリイソシアネートからなるポリウレタン樹脂や、ポリオールとポリイソシアネートからなる末端イソシアネートのウレタンプレポリマーと、ポリアミンとを反応させることにより得られるポリウレタン樹脂などが好ましい。製造方法としては例えば、特開2013-256551号公報に記載の方法などが挙げられる。
【0045】
<セルロース系樹脂>
セルロース系樹脂としては、例えばニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース等が挙げられ、上記アルキル基は例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、更にアルキル基が置換基を有していても良い。中でも、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ニトロセルロースが好ましい。分子量としては重量平均分子量で5,000~1,000,000のものが好ましく、10,000~200,000が更に好ましい。また、ガラス転移温度が100℃~160℃であるものが好ましい。
【0046】
<ポリ乳酸樹脂>
ポリ乳酸樹脂とは、植物由来のデンプンや糖を原料とし、化学的な工程を経て製造されたポリ乳酸を主骨格とするバイオマスプラスチックであり、従来の石油を原料とするプラスチックとは異なり、使用後にコンポストまたは土中などの、水分と温度が適度な環境下に置くことで加水分解が促進され、その後、微生物による分解(生分解)が進行し、最終的にはCO2と水に完全に分解する生分解性樹脂である。工業的にはトウモロコシ等から生成したデンプンから作られた乳酸の環状二量体であるラクチドから合成されるポリエステル樹脂である。ポリ乳酸樹脂は、ポリ乳酸樹脂全体に対しポリ乳酸由来の構成単位を70~100質量%含むことが好ましく、90~100質量%含むことがなお好ましい。
【0047】
<水性アンカーコート剤>
水性アンカーコート剤に使用されるバインダー樹脂としては水性樹脂が好適に使用でき、水性とは水溶性またはエマルジョン状態をいう。水性樹脂としては水溶性樹脂およびエマルジョン樹脂から選ばれる少なくとも1種の水性樹脂を好適に挙げることができ、混合したものでもよい。水性樹脂の例としては、水性ポリウレタン樹脂、水性アクリル変性ウレタン樹脂、水性アクリル変性ウレタンウレア樹脂、水性アクリル樹脂、水性スチレン-アクリル酸共重合樹脂、水性スチレン-マレイン酸共重合樹脂、水性エチレン-アクリル酸共重合樹脂、水性ポリエステル樹脂、水性シェラック、水性ロジン変性マレイン酸樹脂、水性塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、水性塩化ビニル-アクリル酸共重合樹脂、水性塩素化ポリプロピレン樹脂、水性ヒドロキシエチルセルロース樹脂、水性ヒドロキシプロピルセルロース樹脂、水性ブチラール樹脂などを好適に挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を併用することができる。
中でも水性ポリウレタン樹脂、水性アクリル樹脂、水性スチレン-アクリル酸共重合樹脂、水性スチレン-マレイン酸共重合樹脂より選ばれる少なくとも一種の水性樹脂を含むことが好ましい。これらはバインダー樹脂総質量中に50質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがなお好ましく、80質量%以上含むことが更に好ましい。特には水性ウレタン樹脂を含有することが好ましい。
【0048】
(水性ポリウレタン樹脂)
基材への接着性や顔料分散性の観点から、バインダー樹脂は水性ポリウレタン樹脂含むことが好ましい。当該水性ポリウレタン樹脂は中和される酸価を有し、酸価が20~65mgKOH/gであることが好ましい。また、ガラス転移温度が-30~0℃であることが好ましい。ここでガラス転移温度とは動的粘弾性測定におけるTanδの極大値をいう。水酸基価としては1~15mgKOH/gであることが好ましい。
【0049】
上記水性ポリウレタン樹脂としてはポリオール、ヒドロキシ酸およびポリイソシアネートにより合成されたポリウレタン樹脂である形態や、ポリオール、ヒドロキシ酸およびポリイソシアネートにより合成された末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーとポリアミンにより鎖延長されたポリウレタンウレアを含むポリウレタン樹脂である形態が好ましい。
【0050】
<水蒸気透過度>
水蒸気透過度は、樹脂種またはワックスの配合量によっても異なるが、積層体の基材として樹脂シートを用いる場合、好ましい範囲は水蒸気バリア組成物層単独の値で10.0g/m・day未満であり、より好ましくは、1.0g/m・day未満である。また積層体の基材として紙基材を用いる場合、好ましい範囲は水蒸気バリア組成物層単独の値で200.0g/m・day未満であり、より好ましくは、100.0g/m・day未満である。
なお、水蒸気透過度の詳細な測定方法については実施例で具体的に記載する。
【実施例
【0051】
以下、本発明を実施例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様に過ぎず、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、表中、「部」とあるのは「質量部」を、「%」とあるのは「質量%」をそれぞれ表すものとする。
【0052】
以下に述べる実施例および表1に記載の脂肪族炭化水素系のスチレン系熱可塑性樹脂(A)、炭化水素系ワックス(B)、溶剤(C)、その他成分・構成要素の略号を以下に示す。
<スチレン系熱可塑系樹脂(A)>
・A-1:クレイトン株式会社 商品名:G1650(スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体の水素添加物)
・A-2:クレイトン株式会社 商品名:FG1924(無水マレイン酸変性スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体の水素添加物)
・A-3:クラレ株式会社 商品名:SEPTON 2063(スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体の水素添加物)
・A-4:カネカ株式会社 商品名:SIBSTAR 073T(スチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体)
【0053】
<炭化水素系ワックス(B)>
・B-1:日本精蝋株式会社 商品名:Paraffin Wax 115(融点:48℃、直鎖構造成分の含有比率:91%以上)
・B-2:日本精蝋株式会社 商品名:Paraffin Wax 135(融点:59℃、直鎖構造成分の含有比率:92%以上)
・B-3:日本精蝋株式会社 商品名:Paraffin Wax 155(融点:69℃、直鎖構造成分の含有比率:90%以上)
・B-4:日本精蝋株式会社 商品名:Hi-Mic 2065(融点:75℃、直鎖構造成分の含有比率:81%以上)
・B-5:日本精蝋株式会社 商品名:Hi-Mic 2045(融点:72℃、直鎖構造成分の含有比率:80%以上)
【0054】
<溶剤(C)>
・C-1:トルエン (δd:18.0、δp:1.4)
・C-2:MCH(メチルシクロヘキサン) (δd:16.0、δp:0)
・C-3:酢酸イソブチル (δd:15.1、δp:3.7)
・C-4:酢酸ブチル (δd:15.8、δp:3.7)
・C-5:トルエン/酢酸イソブチル=1/1(質量比) (δd:16.6、δp:2.6)
・C-6:MCH/酢酸ブチル=1/1(質量比) (δd:15.9、δp:1.9)
【0055】
<樹脂シート(D-1)~(D-3)、および積層シート(D-4)(D-5)>
・D-1:東レ株式会社 商品名:ルミラー S10(100μmPETフィルム)
・D-2:フタムラ化学株式会社 商品名:FOH(30μmOPPフィルム)
・D-3:東洋紡株式会社 商品名:E5102(25μmPETフィルム)
・D-4:D-1(ルミラー S10)上にグラビアインキ(東洋インキ株式会社商品名:レアルNEX 39藍BO S3)を塗工した積層シート
・D-5:D-2(FOH)上にグラビアインキ(東洋インキ株式会社商品名:レアルNEX 39藍BO S3)を塗工した積層シート
【0056】
<紙基材(D-6)(D-7)>
・D-6:大王製紙株式会社 商品名:ナゴヤ晒竜王(片艶紙 秤量70g)
・D-7:日本製紙株式会社 商品名: npi上質(上質紙 秤量64g)
【0057】
<その他成分(E)>
・E-1:出光興産株式会社 商品名:ダイアナプロセスオイルPW90(軟化剤)
・E-2:BASFジャパン株式会社 商品名:イルガノックス1010(酸化防止剤)
・E-3:Sigma-Aldrich社 Poly(vinyl acetate)
・E-4:第一工業製薬株式会社 商品名:プライサーフA212(耐熱性向上剤)
・E-5:水澤化学工業株式会社 商品名:ミズカシルP707(密着性向上剤)
【0058】
<アンカーコート剤(F)>
・F-1:製造例1の油性ウレタン系(BPU410)アンカーコート剤
・F-2:製造例2の油性PLA系アンカーコート剤
・F-3:油性セルロース系アンカーコート剤(NV.30%、窒素分11.5%以上12.2%以下、重量平均分子量28,000~33,000)
・F-4:製造例4の水性ウレタン系(JW303)アンカーコート剤
【0059】
<製造例1:F-1の油性ウレタン系アンカーコート剤の製造方法>
(ウレタン樹脂の合成)
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、バイオマスセバシン酸/アジピン酸=50/50(質量比)と1,3-プロパンジオール/ネオペンチルグリコール=50/50(質量比)を縮重合して得られた数平均分子量2,000のポリエステルポリオール24.3部およびイソホロンジイソシアネート4部、並びに、酢酸エチル10部を仕込み、窒素気流下に120℃で6時間反応させ、酢酸プロピル14部を加え冷却し、末端イソシアネートプレポリマーの溶液を得た。次いでイソホロンジアミン(以下IPDAとも略す)1.7部、酢酸エチル18部およびイソプロピルアルコール(以下IPAとも略す)28部を混合したものへ、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶液を室温で徐々に添加し、次に50℃で1時間反応させ、固形分30%、質量平均分子量70,000、アミン価5mgKOH/gのウレタン樹脂溶液を得た。
【0060】
(油性ウレタン系アンカーコート剤の製造)
ウレタン樹脂溶液20部、塩化ビニル-酢酸ビニル樹脂溶液10部、シリカ粒子(平均粒子径5μm BET比表面積200m2/g)1部、混合溶剤(酢酸プロピル(NPAC)/IPA=70/30(質量比))26部を撹拌混合しサンドミルで練肉した後、ウレタン樹脂溶液20部、混合溶剤(酢酸プロピル/IPA=70/30(質量比))19.7部、ポリアルキルビニルエーテル(ポリビニルブチルエーテル共重合体 数平均分子量5,000 固形分20%)0.1部、水3.0部、4級アンモニウム塩(ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド 固形分50%)0.2部を撹拌混合し、油性ウレタン系アンカーコート剤を得た。
【0061】
<製造例2:F-2の油性PLA系アンカーコート剤の製造方法>
(ポリ乳酸樹脂の合成)
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、Mラクチドを100部、オクタノール0.1部を仕込み180℃到達後に2-エチルヘキサン酸スズを0.05部添加し2時間開環重合を行った後116%強リン酸0.08部を添加して減圧下脱残留ラクチドを行ったものを酢酸エチルで固形分50%に調整して、重量平均分子量50000のポリ乳酸樹脂溶液を得た。
【0062】
(油性PLA系アンカーコート剤の製造)
ニトロセルロース(NV.30%、窒素分11.5%以上12.2%以下、重量平均分子量28,000~33,000)33.3部、酢酸エチル39.9部、ポリ乳酸樹脂溶液(NV.50%)20.0部、オルガチックスTC-100(マツモトファインケミカル社製 チタンキレート NV.75%)0.9部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル2.0部、サンワックス131P(ポリエチレンワックス NV.40%)3.9部を攪拌混合し、油性PLA系アンカーコート剤を得た。
【0063】
<製造例3:F-4の水性ウレタン系アンカーコート剤の製造方法>
(ウレタン樹脂の合成)
温度計、撹拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、数平均分子量400のポリ(3-メチル-1,5-ペンタンアジペート)ジオール96.89部、数平均分子量2000のポリエチレングリコール24.18部、2,2-ジメチロールプロピオン酸21.56部およびイソホロンジイソシアネート138.24部をメチルエチルケトン200部中で6時間沸点反応させて末端イソシアネートプレポリマーとし、しかるのち40℃まで冷却してからアセトン100部を加えて、末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液を得た。次に、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン14.35部、イソホロンジアミン4.78部およびアセトン400部を混合したものに、得られた末端イソシアネートプレポリマー溶液580.87部を、室温で徐々に添加して50℃で3時間反応させ、溶剤型ポリウレタン樹脂溶液を得た。次に、28%アンモニア水9.76部および脱イオン水700部を上記溶剤型ポリウレタン樹脂溶液に徐々に添加して中和することにより水溶化し、さらに共沸下でメチルエチルケトン、アセトンの全量を留去した後、水を加えて粘度調整を行ない、酸価30mgKOH/g、固形分30%、粘度780mPa・s、重量平均分子量22000のポリウレタン樹脂を得た。
【0064】
(水性ウレタン系アンカーコート剤の製造)
ポリウレタン樹脂30.00部、消泡剤0.10部、イソプロピルアルコール10.00部、水29.90部を撹拌混合しサンドミルで練肉した後、ポリウレタン樹脂溶液(PU01)20.00部、イソプロピルアルコール5.00部、水10.00部を攪拌混合し、水性ウレタン系アンカーコート剤を得た。
【0065】
[水蒸気バリアコーティング剤の調製と水蒸気バリアシートの製造]
<1.樹脂シートを用いた実施例>
<実施例1>
ガラス瓶に、スチレン系熱可塑系樹脂(A-1)(共重合体)を75部、炭化水素系ワックス(B-1)を25部、溶剤(C-1)を400部加え相溶させることで水蒸気バリア組成物を得た。調整した水蒸気バリア組成物を基材(D-1)上に、バーコーターまたはアプリケーターを用いて塗工し、70℃の熱風オーブンで5分間乾燥し、水蒸気バリア積層体を得た。乾燥後の水蒸気バリア積層体中の水蒸気バリア層の厚みは3.0μmであった。
【0066】
次に得られた積層体を使用して、以下の試験を行った。
<水蒸気透過率の測定>
樹脂シートにおける水蒸気バリア性の評価は水蒸気透過度測定装置(MOCON社製Permatran)を使用し、透過面積50cm、40℃、湿度100%(飽和水蒸気圧)、窒素流量10sccmの条件において水蒸気透過度を測る事で実施した。得られた水蒸気透過度から、基材の水蒸気透過度の寄与を除去し、水蒸気バリア組成物層単独での水蒸気透過度を算出し、下記の4段階で評価した。
◎:水蒸気透過度が、1.0g/(m・day)未満
○:水蒸気透過度が、1.0g/(m・day)以上、5.0g/(m・day)未満
△:水蒸気透過度が、5.0g/(m・day)以上、10.0g/(m・day)未満
×:水蒸気透過度が、10.0g/(m・day)以上
【0067】
<密着性の測定>
作製した積層体において、セロハンテープ(ニチバン製 幅12mm)を基材と反対側の面に親指で5回擦りながら貼り付けた。積層体からセロハンテープを引き離す作業を3回実施し、目視により基材との密着性を評価した。判定基準を下記に示す。
◎:急激に引張して塗工剤が3回とも剥離しないもの。
〇:急激に引張して塗工剤が1回以上3回未満剥離するもの。
△:急激に引張して塗工剤が3回とも剥離し、徐々に引張して塗工剤が3回とも剥離しないもの。
×:急激に引張して塗工剤が3回とも剥離し、徐々に引張して塗工剤が3回とも剥離するもの。
【0068】
<ヘイズの評価>
作製した積層体をヘイズメーター(日本電色工業製、商品名:SH7000)を用いて、T.T.(全光線透過率)とDif.(拡散透過率)をそれぞれ計測し、下記式の算出値を用いて3段階の判定基準で評価した。
HAZE=Dif./T.T.
◎:1以上10未満
〇:10以上15未満
△:15以上
【0069】
<実施例2~65、比較例1>
表1記載の通りに、水蒸気バリア組成物の原料種類、配合量、およびバリア積層体の基材種類を変更した以外は、実施例1と同様にして、バリア組成物の調整および樹脂シートを用いたバリア積層体の作製を行い、さらに、水蒸気バリア性、密着性、ヘイズの評価を行った。結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
<2.紙基材を用いた実施例>
<実施例66>
ガラス瓶に、重合体(A-1)を70部、炭化水素系ワックス(B-1)を30部、溶剤(C-1)を400部加え相溶させることで水蒸気バリア組成物を得た。調整した水蒸気バリア組成物を基材(D-6)上に、バーコーターまたはアプリケーターを用いて塗工し、70℃の熱風オーブンで5分間乾燥し、水蒸気バリア積層体を得た。乾燥後の水蒸気バリア積層体中の水蒸気バリア層の厚みは5.1μmであった。
【0072】
<水蒸気透過率の測定>
紙基材における水蒸気バリア性の評価はJIS Z0208:1976(カップ法)B法(温度40℃±0.5℃、相対湿度90%±2%)に準拠して、紙基材が内側(低湿度側)に来るように配置して、水蒸気バリア組成物を塗工してなる積層体について水蒸気透過度を測定し、下記の4段階で評価した。
◎:水蒸気透過度が、100.0g/(m・day)未満
○:水蒸気透過度が、100.0g/(m・day)以上、150.0g/(m・day)未満
△:水蒸気透過度が、150.0g/(m・day)以上、200.0g/(m・day)未満
×:水蒸気透過度が、200.0g/(m・day)以上
【0073】
<密着性の測定>
作製した積層体において、セロハンテープを用いて剥離試験を実施し、目視により密着性を評価した。判定基準を下記に示す。
◎(実用レベル): 塗工剤のトラレなし。
○(実用レベル): 塗工剤のトラレが5%未満。
△(実用レベル): 塗工剤のトラレが5%以上20%未満。
×(実用不可): 塗工剤のトラレが20%以上。
【0074】
<耐水性の評価>
作製した積層体を17cm×1.5cmの大きさに切ったものを試験片とし、学振形摩擦試験機(安田精機製作所製)を用いて、含水させた綿(カナキン3号)をセットした摩擦子を試験片の上に置き、摩擦子の上から200gの荷重を掛け、摩擦子を一定の速度で水平方向に100回往復運動させ、紙基材が破れるまでの往復回数で耐水性を評価した。判定基準を下記に示す。
◎(実用レベル): 100回の往復運動で紙基材の破れなし。
○(実用レベル): 75回以上100回未満の往復運動で紙基材が破れる。
△(実用レベル): 50回以上75回未満の往復運動で紙基材が破れる。
×(実用不可): 50回未満の往復運動で紙基材が破れる。
【0075】
<実施例67~99、比較例2>
表2記載の通りに、水蒸気バリア組成物の原料種類、配合量、およびバリア積層体の基材種類を変更した以外は、実施例66と同様にして、バリア組成物の調整および紙基材を用いたバリア積層体の作成を行い、さらに、水蒸気バリア性、密着性、耐水性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0076】
【表2】