IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アクア機械工業の特許一覧

<>
  • 特許-混合粉砕物の選別装置及び選別方法 図1
  • 特許-混合粉砕物の選別装置及び選別方法 図2
  • 特許-混合粉砕物の選別装置及び選別方法 図3
  • 特許-混合粉砕物の選別装置及び選別方法 図4
  • 特許-混合粉砕物の選別装置及び選別方法 図5
  • 特許-混合粉砕物の選別装置及び選別方法 図6
  • 特許-混合粉砕物の選別装置及び選別方法 図7
  • 特許-混合粉砕物の選別装置及び選別方法 図8
  • 特許-混合粉砕物の選別装置及び選別方法 図9
  • 特許-混合粉砕物の選別装置及び選別方法 図10
  • 特許-混合粉砕物の選別装置及び選別方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】混合粉砕物の選別装置及び選別方法
(51)【国際特許分類】
   B07B 4/08 20060101AFI20230828BHJP
   B02C 23/20 20060101ALI20230828BHJP
   B29B 17/02 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
B07B4/08 Z
B02C23/20
B29B17/02 ZAB
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022112717
(22)【出願日】2022-07-13
【審査請求日】2022-07-25
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-19
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522281877
【氏名又は名称】株式会社アクア機械工業
(74)【代理人】
【識別番号】100178504
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 健人
(72)【発明者】
【氏名】板倉 修
【合議体】
【審判長】原 賢一
【審判官】松井 裕典
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-159568(JP,A)
【文献】実開昭54-39662(JP,U)
【文献】特開平1-297187(JP,A)
【文献】登録実用新案第3159024(JP,U)
【文献】特開2017-170398(JP,A)
【文献】特開平7-136592(JP,A)
【文献】実開昭48-24851(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07B1/00-15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高比重物(72)と低比重物(74)との少なくとも2種類の比重が異なる物質が混在した粉砕混合物(70)から、低比重物(74)を選別する選別装置(10)において、
前記選別装置(10)は、搬送ベルト(14)とファン(50)とを備え、
前記搬送ベルト(14)は、前記粉砕混合物(70)を一方側から他方側に搬送するように配置されており、
前記ファン(50)の出口(59)は、前記搬送ベルト(14)の全幅において、前記搬送ベルト(14)の搬送面に対して略鉛直方向に、上方から下方に向けて下方向噴出流(F1)を噴出するように設定されているとともに、前記下方向噴出流(F1)が前記搬送ベルト(14)の搬送方向とは逆方向に向けて分岐する後方向きの流れ(F1B)を引き起こすように設定されており、
前記後方向きの流れ(F1B)が前記低比重物(74)の一方側から他方側への搬送を妨げ、前記低比重物(74)は前記ファン(50)の出口(59)の位置よりも一方側から他方側に進むことができず、かつ、前記高比重物(72)の一方側から他方側への搬送を妨げないように、前記ファン(50)の風量が設定されていることを特徴とする選別装置(10)。
【請求項2】
前記搬送ベルト(14)の上方には、前記搬送ベルト(14)と略平行な平面をなす平板面(64)が配置されており、前記平板面(64)と前記搬送ベルト(14)との間が粉砕混合物(70)の通過隙間(60)となっており、前記通過隙間(60)に前記後方向きの流れ(F1B)が流れ込むことにより、前記通過隙間(60)において前記低比重物(74)の一方側から他方側への搬送が妨げられること、を特徴とする請求項1に記載の選別装置(10)。
【請求項3】
前記ファン(50)の出口(59)は、前記平板面(64)の前方端と出口開閉板(58)の後方端のあいだで形成される開口の前後方向への投影長さである前後方向開口投影線分(59A)を有し、前記下方向噴出流(F1)は前記前後方向開口投影線分(59A)を通過することを特徴とする請求項2に記載の選別装置(10)。
【請求項4】
前記ファン(50)の出口(59)には、前記出口(59)の前向きの開口の面積を調節するための出口開閉板(58)が設けられていること、または、ノズル(90)が設けられていることにより、前記下方向噴出流(F1)を噴出するように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の選別装置(10)。
【請求項5】
高比重物(72)と低比重物(74)との少なくとも2種類の比重が異なる物質が混在した粉砕混合物(70)から、低比重物(74)を選別する選別方法であって、
前記選別方法は、搬送ベルト(14)により前記粉砕混合物(70)が一方側から他方側に搬送される工程と、
ファン(50)の出口(59)から、前記搬送ベルト(14)の全幅において、前記搬送ベルト(14)の搬送面に対して略鉛直方向に、上方から下方に向けて下方向噴出流(F1)が噴出されるとともに、前記下方向噴出流(F1)から前記搬送ベルト(14)の搬送方向とは逆方向に向けて分岐する後方向きの流れ(F1B)が引き起こされる工程と、
前記後方向きの流れ(F1B)が、低比重物(74)を前記ファン(50)の出口(59)の位置よりも一方側から他方側へ搬送させずに、前記低比重物(74)は前記ファン(50)の出口(59)の位置よりも一方側から他方側に進むことができず、かつ、高比重物(72)のみを一方側から他方側へ搬送される強さとなるように、ファン(50)の風量が設定される工程、とを備えていることを特徴とする選別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物の処理リサイクル工程において、金属と樹脂が混合した状態の粉砕物から、金属と樹脂とを分離して選別する装置と、選別する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の環境保護意識の高まりから、産業廃棄物の効率的な処理方法がより一層注目されてきている。このような、産業廃棄物の処理の手段のひとつとして、廃棄物を粉砕して金属と樹脂に選別して、金属と樹脂をそれぞれリサイクル使用することは、従来から広く行われている。例えば、特開2006-159052号公報には、風力を使った選別手段、磁力を使った選別手段、篩を使った選別手段、湿式の選別手段を組み合わせて段階的に選別していく技術が開示されている。
【0003】
このような、段階的な選別手段が適用される材料の一つとして廃銅線がある。この廃銅線は外表面が被覆樹脂で覆われた状態で回収されることが多い。近年の銅の取引価格の高騰の影響もあり、この被覆銅線屑とよばれる配線屑から銅を回収する技術が注目されている。この被覆銅線屑から銅を回収する手法としても、粉砕処理と風力、磁力、篩などの乾式比重選別を行った後に、湿式比重選別を行って、樹脂と銅とに選別する処理が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-159052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような廃棄物の選別において、従来の風力を使った選別手段であっても、樹脂と金属はある程度の精度で分離することができているが、現実的には、粉砕金属のなかに、若干の樹脂の屑が残ってしまう状態になることが多く、その若干の樹脂屑だけを簡単に取り除きたいという要望がある。
【0006】
本発明は、粉砕金属と粉砕樹脂の混合物を、風力を使って分別するにあたり、従来技術とは異なる新たな風力選別方法を提案するものであり、特に、高比重物である粉砕金属のなかに、ごく少量の破砕樹脂が混入している状況において、簡単かつ効率的に、低比重物である破砕樹脂だけを取り除くことに適した風力選別手段を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を以下の手段により達成するものである。
(1)本発明は、高比重物と低比重物との少なくとも2種類の比重が異なる物質が混在した粉砕混合物から、低比重物を選別する選別装置において、前記選別装置は、搬送ベルトとファンとを備え、前記搬送ベルトは、前記粉砕混合物を一方側から他方側に搬送するように配置されており、前記ファンの出口は、前記搬送ベルト(14)の全幅において、前記搬送ベルトの搬送面に対して略鉛直方向に、上方から下方に向けて下方向噴出流を噴出するように設定されているとともに、前記下方向噴出流が前記搬送ベルトの搬送方向とは逆方向に向けて分岐する後方向きの流れを引き起こすように設定されており、前記後方向きの流れが前記低比重物の一方側から他方側への搬送を妨げ、前記低比重物(74)は前記ファン(50)の出口(59)の位置よりも一方側から他方側に進むことができず、かつ、前記高比重物の一方側から他方側への搬送を妨げないように、前記ファンの風量が設定されていることこと特徴とするものである。
【0008】
(2)また、前記搬送ベルトの上方には、前記搬送ベルトと略平行な平面をなす平板面が配置されており、前記平板面と前記搬送ベルトとの間が粉砕混合物の通過隙間となっており、前記通過隙間に前記後方向きの流れが流れ込むことにより、前記通過隙間において前記低比重物の一方側から他方側への搬送が妨げられることも特徴とするものである。
(3)また、前記ファンの出口は、前記平板面の前方端と出口開閉板の後方端のあいだで形成される開口の前後方向への投影長さである前後方向開口投影線分を有し、前記下方向噴出流は前記前後方向開口投影線分を通過することを特徴とするものでもある。
(4)また、前記ファンの出口には、前記出口の前向きの開口の面積を調節するための出口開閉板が設けられていること、または、ノズルが設けられていることにより、前記下方向噴出流を噴出するように設定されていることを特徴とするものでもある。
【0009】
さらに、本発明における選別方法としては、以下のような手段がある。
(5)高比重物と低比重物との少なくとも2種類の比重が異なる物質が混在した粉砕混合物から、低比重物を選別する選別方法であって、前記選別方法は、搬送ベルトにより前記粉砕混合物が一方側から他方側に搬送される工程と、ファンの出口から、前記搬送ベルト(14)の全幅において、前記搬送ベルトの搬送面に対して略鉛直方向に、上方から下方に向けて下方向噴出流が噴出されるとともに、前記下方向噴出流から前記搬送ベルトの搬送方向とは逆方向に向けて分岐する後方向きの流れが引き起こされる工程と、前記後方向きの流れが、低比重物を前記ファン(50)の出口(59)の位置よりも一方側から他方側へ搬送させずに、前記低比重物(74)は前記ファン(50)の出口(59)の位置よりも一方側から他方側に進むことができず、かつ、高比重物のみを一方側から他方側へ搬送される強さとなるようにファンの風量が設定される工程、とを備えていることを特徴とする選別方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高比重物と低比重物が入り交ざった粉砕混合物のなかに、ごく少量の低比重物が混入している状況においても、簡単かつ効率的に、低比重物だけを取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の選別装置を上面から見た図であり、選別前の様子を表す図である。
図2】本発明の選別装置を上面から見た図であり、選別後の様子を表す図である。
図3】本発明の選別装置を側面から見た図である。
図4】本発明の選別装置を図1のP-P線断面からP-P矢印方向に見た図である。
図5】本発明の選別装置に用いられるファンの内部構造を説明するための図である
図6】本発明の選別装置を図4のQ-Q線の断面からQ-Q矢印方向に見た場合のファン50の内部の空気の流れの様子を分かりやすく模式化して説明した図である
図7】粉砕混合物が下方向噴出流F1の作用を受ける前の状態を表す図である。
図8図7の状態から粉砕混合物がさらに下流に搬送された状態を表す図である。
図9図8の状態から粉砕混合物がさらに下流に搬送されて選別が完了した状態を表す図である。
図10】本発明の実施の形態2を説明する図である。
図11】本発明の実施の形態3を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
図1図4は、本発明の実施の形態1に関する選別装置10を説明する図であり、図1図2は選別装置10を上面から見た図であり、図3は選別装置10を側面から見た図である。図4は、図1のP-P線断面からP-P矢印方向に見た図である。
【0013】
図1図4に示すように、選別装置10はベルトコンベア12にファン50を取付けた構造となっている。ベルトコンベア12は、上面視で略矩形上の外枠18の前側端部と後側端部にそれぞれローラー15,16が備えられており、ローラー15,16に搬送ベルト14が巻きまわされている。搬送ベルト14は端部の無い環状の構造となっており、図示しない駆動源により後方から前方に向けて動かされる(駆動方向を図1図3に太い直線矢印で示している)。なお、本明細書の説明において、前後方向は、上記のとおり、ベルトコンベア12の動く方向で下流側を前方、上流側を後方と定義し、ベルトコンベア12の搬送面上において前後方向と直交する方向を左右方向と定義し、前後方向と左右方向に直交する方向を上下方向と定義する(図1に十字矢印で、前をF、後をB、右をR、左をLとして表示し、図3に十字矢印で上をU、下をDで表示している)。
【0014】
ベルトコンベア12の前後方向の中間領域には、ファン50が第1ブラケット54、第2ブラケット55、第3ブラケット56によりベルトコンベア12の外枠18に取り付けられている。ファン50は、送風部52と、送風部52の電気駆動部となるモーター部53を備えている。図3に示すように、送風部52は、第1ブラケット54の前方面54Aにおいてボルト79,80で固定されている。第1ブラケット54は断面で略L字の形状となっており、送風部52を取り付けるためのボルト79,80が配置される前方面54Aと直交する方向に延びる上方面54Bにおいて、ボルト81,82で第2ブラケット55に固定されている。さらに、第2ブラケット55はボルト83,84で第3ブラケット56に固定され、第3ブラケット56はボルト85,86で外枠18に固定されている。送風部52の空気の出口側には出口開閉板58が設けられている。図4に示すように、出口開閉板58は位置調整溝88を3か所に備えており、位置調整ボルト87を位置調整溝88に通して第1ブラケット54に取り付けることで、第1ブラケット54に対して上下位置を調整可能なように取り付けられる。出口開閉板58の位置を上下方向で変更することにより、空気の出口59の前向きの開口の面積が調節されるようになっている。なお、出口59は、前向きの開口だけでなく、下向きの開口も有しているが、これについては後ほど詳細に説明する。
【0015】
図5は、ファン50の内部構造を説明するための図である。ファン50は、ハウジング61の内部に回転羽根部62を備える構造となっている。回転羽根部62は、円筒形状をしており、その円筒の外周に多数の羽根63を備えており、一点鎖線で示す回転軸AXの周りに回転するようになっている。ハウジング61の一方の側部にはモーター部53が配置されており、モーター部53により回転羽根部62は回転させられる。ハウジング61の下側面は平板面64となっており、回転羽根部62よりも下側であって、平板面64よりも上側の空間が空気吐出路66となっている。ハウジング61の前方側には補強板68が取り付けられている。なお、空気はハウジング61の上面側から吸入されるようになっている。なお、本実施の形態においては、ファン50としてクロスフローファンを使用する場合で説明しているが、これに限るものではなく任意の送風装置を使用することができる。
【0016】
続いて、本発明の選別装置10により、粉砕混合物70を選別する動作について説明する。図1において、粉砕混合物70は、搬送ベルト14の搬送上流側(前後方向の定義でいえば後方側)に置かれる。この粉砕混合物70は、本発明の選別装置10による選別工程よりも前の工程において、あらかじめ公知の粉砕手段で粉砕されたものであるか、あるいは、粉砕の後に公知の風力、磁力、篩などによる選別手段により一定程度まで仮選別されたものである。いずれにせよ、粉砕混合物70は、高比重物72と低比重物74の少なくとも2種類の比重が異なる物質が入り混じっている。高比重物72とは、例えば粉砕金属であり、低比重物74とは、例えば粉砕樹脂である。例えば、被覆銅線屑のリサイクル処理の場合であれば、高比重物72とは、粉砕された銅ナゲットであり、低比重物74とは、粉砕された被覆樹脂である。なお、粉砕混合物70は、例えば銅ナゲットと被覆樹脂の粉砕粒のような場合には2mm~4mm程度の大きさの状態で選別することが多いが、説明の便宜上、図面における粉砕混合物70の大きさや形状は実物よりも若干大きめにして表示している。
【0017】
図1のように、搬送ベルト14の搬送上流側に置かれた粉砕混合物70は、搬送ベルト14により、前方に向けて搬送される。図3に示すように、ファン50のハウジング61の底面の平板面64と搬送ベルト14のあいだは粉砕混合物70が入り込める通過隙間60となっており、粉砕混合物70は、この通過隙間60に入っていく。通過隙間60に入った粉砕混合物70は、後で詳細説明する仕組みによって、ファン50の出口59から噴出される空気流により高比重物72と低比重物74とに選別され、高比重物72だけが通過隙間60を通り抜け、ベルトコンベア12の下流に向けて搬送される。その結果、図2のようにほぼ高比重物72のみを含む粉砕物を回収することができる。(なお「ほぼ高比重物72のみを含む粉砕物」とは、100%全てが高比重物72からなる粉砕物だけではなく、何らかの偶発的な理由により通過隙間60を通り抜けてきてしまった若干の低比重物74を含む粉砕物のことを意味するものである。)
【0018】
続いて、ファン50の出口59から噴出される空気流により高比重物72と低比重物74とを選別する仕組みについて図6図9を使って説明する。
【0019】
図6は、図4のQ-Q線の断面からQ-Q矢印方向に見た場合のファン50の内部の空気の流れの様子を分かりやすく模式化して説明した図である。図6に矢印で示されているのは、空気の流れの様子を模式図化したものであり、回転羽根部62が図で時計方向に回ることで、ハウジング61の上面に設けられた空気流入路67から空気が吸入され、吸入された空気は回転羽根部62の回転により回転羽根部62の下側まで送られ、回転羽根部62の下側の空気吐出路66を前後方向にほぼ平行に進むように送られる。空気吐出路66の空気流のうち、ハウジング61の底面である平板面64に近い側の流れは、点線の矢印F2で示すように、出口開閉板58の板面と直交する方向に吐出される。この点線の矢印F2で示す前方向の流れを、以下では前方向噴出流F2とよぶ。一方、空気吐出路66の空気流のうち、ハウジング61の底面である平板面64から離れた側の流れは、出口開閉板58の板面にぶつかり、流れの一部が下方向に曲げられて、実線の矢印F1で示すように、出口開閉板58の板面と平行な方向(ハウジング61の底面である平板面64と直交する方向)に吐出される。この実線の矢印F1で示されている、搬送ベルト14の搬送面に対して略鉛直方向に上方から下方に向かう流れを、以下では下方向噴出流F1とよぶ。この下方向噴出流F1が粉砕混合物70に及ぼす作用について、さらに図7図9を使って説明する。
【0020】
図7は、通過隙間60に入った粉砕混合物70が下方向噴出流F1の作用を受ける前の状態を表している。下方向噴出流F1は、平板面64の前方端の上下方向基準線Z1と出口開閉板58の後方端の上下方向基準線Z2とのあいだで形成される開口の前後方向への投影長さである前後方向開口投影線分59Aを通過する。ファン50の左右方向全幅において図7のように前後方向開口投影線分59Aが定義されるため、この投影線分59Aの集合体の面積が、下方向噴出流F1の通過する前後方向開口の総投影面積となる。前後方向開口投影線分59Aを通過した流れは、搬送ベルト14の上面にぶつかる。これにより、搬送ベルト14の上面に沿って前方向きの流れF1Fと後方向きの流れF1Bが生じる。
【0021】
図8は、図7の状態から粉砕混合物70がさらに下流に搬送された状態を表す模式図である。搬送ベルト14の上面に沿って生じた後方向きの流れF1Bに、粉砕混合物70が十分に近づくと、低比重物74は後方向きの流れF1Bにより後方に流されてしまい、前後方向開口線分59Aの位置よりも前に進むことができない。一方、高比重物72は後方向きの流れF1Bに流されてしまうことなく、搬送ベルト14と共に前方に進むことができる。本発明の選別装置10においては、後方向きの流れF1Bの風量が、低比重物74は前方に進めないが高比重物72は前方に進むことができる強さ(風量ないしは風圧の強さ)となるように調節してある。この調節は、実際に粉砕混合物70をベルトコンベア12で流した状態で、ファン50の風量を十分に弱い状態(低比重物74が後方向きの流れF1Bにより後方に流されてしまわない状態)から徐々に強くしていくことで、適切な状態に設定することが可能である。なお、このファン50の調整を行うに際し、図6で説明したような、前方向噴出流F2が若干生じるように出口開閉板58を若干だけ開いておくと、前方向噴出流F2が流れ出ていく分だけ下方向噴出流F1が弱められるため、ファン50の風量や風圧の調整レンジ幅が大きくなるため、調整しやすいというメリットがある。ただし、出口開閉板58を開きすぎてしまうと、下方向噴出流F1の流れが小さくなり、低比重物74を前方に進ませないようにすることが可能な風力にできなくなるため、僅かな前方向噴出流F2を生じる程度の開口寸法とすることが重要である。例えば、被覆銅線屑のリサイクル処理の場合で、銅ナゲットと被覆樹脂の粉砕粒を2mm~4mm程度にした状態のものを選別する場合であれば、出口開閉板58の開口寸法(出口開閉板58の下端と平板面64の上面のあいだの上下方向の隙間)は、3mm~8mm程度とすることが好ましい。
【0022】
このようにして、高比重物72のみが前方に搬送されることで、最終的には図9のように、ほぼ高比重物72のみを含む粉砕物を選別することができる。
【0023】
なお、この選別により通過隙間60内に滞留した低比重物74は、一定時間ごとにファン50を停止することで、搬送ベルト14と共に前方に進んで通過隙間60から出てくるので、その出てきたタイミングで搬送ベルト14を一旦停止し、吸入装置などで回収できる。あるいは、ファン50を停止せずとも、ノズル付きの掃除機などで定期的に作業者が回収するようにしてもよい。
【0024】
図10は本発明の実施の形態2に関する選別装置10を説明する図である。実施の形態2においては、出口開閉板58を全閉状態としている。前述のとおり、本発明の選別装置10においては、後方向きの流れF1Bの風量や風圧を、低比重物74は前方に進めないが高比重物72は前方に進むことができる強さに調節しておくことが肝要であり、その調節のためのレンジ幅が十分にあるようなファン50である場合には、この実施の形態2のように、はじめから出口開閉板58を全閉状態としてもよい。ただし、出口開閉板58を全閉状態とすると、ファン50の吐出の出口59の面積が小さくなるため、ファン50の内部に吐出流が吹き溜まることでファン50のモーター部53に負荷がかかる面にも注意が必要である。このモーター部53の負荷の面からは、実施の形態1の方が実施の形態2よりも有利ではある。
【0025】
図11は本発明の実施の形態3に関する選別装置10を説明する図である。実施の形態3においては、ノズル90からの噴出流により、前方向きの流れF1Fと後方向きの流れF1Bを生じる構成としている。ノズル90には、送風通路92が接続されており、送風通路92の上流が、ファン50のような送風機の空気流出口にまで接続されているため、ファン50は、前記した実施の形態1のようにベルトコンベア12に固定される必要はなく、ベルトコンベア12から離れた位置に設置することができる。ノズル90はベルトコンベア12の搬送ベルト14の左右方向幅と同じか、それよりも若干幅が狭い長さになっている。送風通路92も、ノズル90の接続部側が図11に示すように、上下方向に直線的に伸びる流路となっており、これにより下方向噴出流F1を整流化して安定してノズル90に送るようになっている。ノズル90から搬送ベルト14の上面に略直交する方向に空気が噴出されると、前方向きの流れF1Fと後方向きの流れF1Bを生じ、後方向きの流れF1Bにより、上記実施形態1で説明したのと同様の作用により、粉砕混合物70が選別される。なお、搬送ベルト14とのあいだに通過隙間60を形成する平板面64を設けた方が、後方向きの流れF1Bを安定して搬送ベルト14に沿って流すことができる面や、低比重物74だけを前方に進めない強さに後方向きの流れF1Bを調整しやすいという面、低比重物74が飛散して回収しにくくなることが無い面などで有利である。なお、ノズル90と平板面64は適宜のブラケットなどを使ってベルトコンベア12の外枠18に固定されている。
【0026】
なお、上記実施の形態の説明では、高比重物と低比重物の2種類の粉砕混合物の選別について説明していたが、3種類以上の異なる比重の粉砕物が混合された粉砕混合物に対しても、本発明の選別装置10を直列に2つ設けて、上流側の選別装置10で最も比重の小さい粉砕物を選別し、下流側の選別装置10で2番目に比重の小さい粉砕物を選別することで、3種類以上の異なる比重の粉砕物を選別することができる。4種類以上の異なる比重の粉砕物を選別する場合も同様に行うことができる。
【0027】
このように、本発明の実施の形態に係る選別装置10による選別方法によれば、高比重物と低比重物が入り交ざった粉砕混合物のなかに、ごく少量の低比重物が混入している状況においても、簡単かつ効率的に、低比重物だけを取り除くことができる。
【0028】
なお、本発明は、上記で開示された実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の実施の形態で説明した各技術事項と実質的に同一な技術または同様な効果を奏する技術として当業者に認識される技術を適宜利用したり、代替技術として使用したり、追加で付加したりすることも可能である。また、上記各実施形態の特徴構成どうしを組み替えて実施したりすることも可能である。
【0029】
また、本明細書全体を通じて、図面で付番をつけて説明した部分は、本発明の各実施形態において最低限必要とされる構成部分として記載しているものであり、図面で付番をつけて説明した部分のみから本発明が構成されていることを意味しているわけではない。
【符号の説明】
【0030】
10 選別装置
12 ベルトコンベア
14 搬送ベルト
15,16 ローラー
18 外枠
50 ファン
52 送風部
53 モーター部
54 第1ブラケット
54A 前方面
54B 上方面
55 第2ブラケット
56 第3ブラケット
58 出口開閉板
59 出口
59A 前後方向開口投影線分
60 通過隙間
61 ハウジング
62 回転羽根部
63 羽根
64 平板面
66 空気吐出路
67 空気流入路
68 補強板
70 粉砕混合物
72 高比重物
74 低比重物
79~86 ボルト
90 ノズル
92 送風通路
AX 回転軸
F1 下方向噴出流
F2 前方向噴出流
F1F 前方向きの流れ
F1B 後方向きの流れ

【要約】
【課題】 高比重物である粉砕金属のなかに、ごく少量の破砕樹脂が混入している状況において、簡単かつ効率的に、低比重物である破砕樹脂だけを取り除く。
【解決手段】 選別装置は搬送ベルトとファンを備えており、ファンの出口は、前記搬送ベルトの搬送面に対して略鉛直方向に、上方から下方に向けて下方向噴出流を噴出するように設定されているとともに、前記下方向噴出流が前記搬送ベルトの搬送方向とは逆方向に向けて分岐する後方向きの流れを引き起こすように設定されており、前記後方向きの流れが前記低比重物の一方側から他方側への搬送を妨げ、かつ、前記高比重物の一方側から他方側への搬送を妨げないように、前記ファンの風量が設定されている。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11