IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気硝子株式会社の特許一覧

特許7337329撹拌スターラーおよび溶融ガラス撹拌装置
<>
  • 特許-撹拌スターラーおよび溶融ガラス撹拌装置 図1
  • 特許-撹拌スターラーおよび溶融ガラス撹拌装置 図2
  • 特許-撹拌スターラーおよび溶融ガラス撹拌装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】撹拌スターラーおよび溶融ガラス撹拌装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 5/187 20060101AFI20230828BHJP
   F27D 27/00 20100101ALI20230828BHJP
   B01F 27/90 20220101ALI20230828BHJP
【FI】
C03B5/187
F27D27/00
B01F27/90
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019222353
(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公開番号】P2021091568
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】小田原 峻也
(72)【発明者】
【氏名】山鹿 祐弥
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3206061(JP,U)
【文献】特開2018-104212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 5/187
F27D 27/00
B01F 27/00-27/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸と、前記軸から軸径方向に延びた撹拌翼とを備え、
円筒状の撹拌槽内で溶融ガラスを撹拌するための撹拌スターラーであって、
前記軸周りで周方向に延びると共に前記撹拌翼の先端部に連結された補助翼と、軸径方向に延びた状態で前記軸と前記補助翼とを連結する連結部材とを備え
前記撹拌翼が貫通開口部を有し、
軸方向において、前記貫通開口部が開口した範囲内に前記連結部材が位置していることを特徴とする撹拌スターラー。
【請求項2】
前記補助翼が前記軸周りで45°~180°の範囲に存在することを特徴とする請求項に記載の撹拌スターラー。
【請求項3】
前記補助翼が前記軸周りで螺旋状に延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載の撹拌スターラー。
【請求項4】
側壁に溶融ガラスの流入口および流出口が形成された円筒状の撹拌槽と、請求項1~3のいずれかに記載の撹拌スターラーとを備えた溶融ガラス撹拌装置であって、
前記撹拌槽が、円筒として形成された筒部と、前記筒部の一端側に配置され且つ前記流入口を含んだ流入部と、前記筒部の他端側に配置され且つ前記流出口を含んだ流出部とを有し、
前記筒部内に前記補助翼が位置していることを特徴とする溶融ガラス撹拌装置。
【請求項5】
側壁に溶融ガラスの流入口および流出口が形成された円筒状の撹拌槽と、請求項に記載の撹拌スターラーとを備えた溶融ガラス撹拌装置であって、
前記撹拌槽が、円筒として形成された筒部と、前記筒部の一端側に配置され且つ前記流入口を含んだ流入部と、前記筒部の他端側に配置され且つ前記流出口を含んだ流出部とを有し、
前記補助翼がなす螺旋のうち、前記流入部側に位置する部位ほど、前記軸周りを旋回する際に旋回後方側となるように、前記軸が回転することを特徴とする溶融ガラス撹拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状の撹拌槽内で溶融ガラスを撹拌するための撹拌スターラー、及び、撹拌槽と撹拌スターラーとを備えた溶融ガラス撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板やガラス管等に代表されるガラス物品の製造工程では、円筒状の撹拌槽内で溶融ガラスを撹拌して均質化させる撹拌工程が実行される。撹拌工程の実行には、軸と、軸の回転に伴って軸周りを旋回する撹拌翼とを備えた撹拌スターラーが使用される。撹拌スターラーにより、溶融ガラスは撹拌槽内を軸方向に流れながら撹拌されていく。
【0003】
ここで、特許文献1には撹拌スターラーの一例が開示されている。同撹拌スターラーは、軸方向に間隔を空けて配列された複数の撹拌翼を備えている。複数の撹拌翼は、軸周りを旋回する際に複数の撹拌翼の間に連続して位相差が生じるように配置されている。さらに、同撹拌スターラーでは、軸方向で隣り合う撹拌翼の先端部同士が棒状の連結部により連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-104212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、撹拌スターラーに要求される性能の一つとしては、撹拌槽の内壁面付近を流れる溶融ガラスと、撹拌スターラーの軸付近を流れる溶融ガラスとの双方を好適に撹拌できることが挙げられる。そして、特許文献1に開示された撹拌スターラーにおいては、軸付近を流れる溶融ガラスの撹拌性能を更に向上させる必要があった。
【0006】
上記の事情に鑑みなされた本発明は、撹拌スターラーを改良することで、撹拌槽内において撹拌スターラーの軸付近を流れる溶融ガラスの撹拌性能を向上させることを技術的な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明は、軸と、軸から軸径方向に延びた撹拌翼とを備え、円筒状の撹拌槽内で溶融ガラスを撹拌するための撹拌スターラーであって、軸周りで周方向に延びると共に撹拌翼の先端部に連結された補助翼と、軸径方向に延びた状態で軸と補助翼とを連結する連結部材とを備えることを特徴とする。
【0008】
本スターラーでは、軸と補助翼とを連結する連結部材が軸径方向に延びている。このため、撹拌槽内において本スターラーの軸付近を流れる溶融ガラス(以下、軸付近溶融ガラスと表記)について、これを撹拌翼のみではなく連結部材によっても撹拌することができる。その結果、軸付近溶融ガラスの撹拌性能を向上させることが可能となる。また、撹拌槽内において内壁面付近を流れる溶融ガラス(以下、壁付近溶融ガラスと表記)については、撹拌翼の先端部と、この先端部に連結された軸周りで周方向に延びた補助翼とによって撹拌が可能である。
【0009】
上記のスターラーでは、撹拌翼が貫通開口部を有し、軸方向において、貫通開口部が開口した範囲内に連結部材が位置していることが好ましい。
【0010】
このようにすれば、撹拌翼の貫通開口部を溶融ガラスに通過させるのに伴って、溶融ガラスを撹拌することができる。さらに、軸方向において、貫通開口部が開口した範囲内に連結部材が位置していることで、貫通開口部の通過に伴って撹拌された溶融ガラスを、貫通開口部に続けて連結部材によっても撹拌することが可能となる。これにより、溶融ガラスの撹拌を更に促進させることができる。
【0011】
上記のスターラーでは、補助翼が軸周りで45°~180°の範囲に存在することが好ましい。
【0012】
このようにすれば、壁付近溶融ガラスについて、これを補助翼により撹拌する効果を更に高めることが可能となる。
【0013】
上記のスターラーでは、補助翼が軸周りで螺旋状に延びていることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、壁付近溶融ガラスについて、これを補助翼により撹拌する効果を一層高めることができる。
【0015】
また、上記の課題を解決するための本発明は、側壁に溶融ガラスの流入口および流出口が形成された円筒状の撹拌槽と、上記の撹拌スターラーとを備えた溶融ガラス撹拌装置であって、撹拌槽が、円筒として形成された筒部と、筒部の一端側に配置され且つ流入口を含んだ流入部と、筒部の他端側に配置され且つ流出口を含んだ流出部とを有し、筒部内に補助翼が位置していることを特徴とする。
【0016】
本撹拌装置によれば、上記の撹拌スターラーに係る説明で既述の作用・効果を同様に得ることが可能である。また、撹拌槽が有する各部位のうち、円筒として形成された筒部内に補助翼が位置していることから、補助翼によって壁付近溶融ガラスを撹拌する効果を確実に発揮させることが可能である。
【0017】
また、上記の課題を解決するための本発明は、側壁に溶融ガラスの流入口および流出口が形成された円筒状の撹拌槽と、上記の補助翼が軸周りで螺旋状に延びている撹拌スターラーとを備えた溶融ガラス撹拌装置であって、撹拌槽が、円筒として形成された筒部と、筒部の一端側に配置され且つ流入口を含んだ流入部と、筒部の他端側に配置され且つ流出口を含んだ流出部とを有し、補助翼がなす螺旋のうち、流入部側に位置する部位ほど、軸周りを旋回する際に旋回後方側となるように、軸が回転することを特徴とする。
【0018】
このようにすれば、撹拌槽において、本来的な溶融ガラスの流れ(流入部側から流出部側に向かう流れ)に対し、逆向きの溶融ガラスの流れを補助翼の旋回に伴って生み出すことができる。この逆向きの流れにより、壁付近溶融ガラスが十分に撹拌される前に流出部(流出口)から撹拌槽外に流出することを回避でき、溶融ガラスの撹拌を一層促進させることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、撹拌槽内において撹拌スターラーの軸付近を流れる溶融ガラスの撹拌性能を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第一実施形態に係る溶融ガラス撹拌装置を示す断面図である。
図2】第二実施形態に係る溶融ガラス撹拌装置に備わった撹拌スターラーを示す斜視図である。
図3】第三実施形態に係る溶融ガラス撹拌装置に備わった撹拌スターラーを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る撹拌スターラーおよび溶融ガラス撹拌装置について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0022】
<第一実施形態>
図1に示すように、溶融ガラス撹拌装置1(以下、単に撹拌装置1と表記)は、側壁に溶融ガラスGの流入口2xおよび流出口2yが形成された円筒状の撹拌槽2と、撹拌槽2内で溶融ガラスGを撹拌するための撹拌スターラー3とを備えている。
【0023】
撹拌槽2の軸線2zは上下方向に延びている。撹拌槽2は、円筒として形成された筒部2aと、筒部2aの上端側に配置され且つ流入口2xを含んだ流入部2bと、筒部2aの下端側に配置され且つ流出口2yを含んだ流出部2cとを有する。図1に示す二点鎖線B1およびB2は、それぞれ筒部2aと流入部2bとの境界、及び、筒部2aと流出部2cとの境界を表している。撹拌槽2の内壁面2sの表面は、白金又は白金合金で構成されている。なお、本明細書において、白金合金は、例えば白金-イリジウム合金や白金-ロジウム合金、白金-金合金等を含むものとする。
【0024】
流入口2xは、白抜き矢印で示すように、撹拌スターラー3による撹拌前の溶融ガラスGを撹拌槽2内に流入させるための開口である。一方、流出口2yは、白抜き矢印で示すように、撹拌スターラー3による撹拌後の溶融ガラスGを撹拌槽2外に流出させるための開口である。撹拌槽2内に流入した溶融ガラスGは、撹拌槽2内を上方から下方に向かって流れながら撹拌スターラー3により撹拌された後、撹拌槽2外に流出する。
【0025】
撹拌スターラー3は、撹拌槽2の軸線2z上に配置された軸4と、軸4の回転に伴って軸4の周りを旋回する複数の撹拌翼5とを備えている。軸4および撹拌翼5の表面は、白金又は白金合金で構成されている。本実施形態においては、撹拌スターラー3に五枚の撹拌翼5が備わっているが、撹拌翼5の枚数は適宜増減させて構わない。
【0026】
ここで、以下の説明において、五枚の撹拌翼5を区別する場合には、軸4の上方側に配置された撹拌翼5から順番に「第一撹拌翼5」、「第二撹拌翼5」、「第三撹拌翼5」、「第四撹拌翼5」、「第五撹拌翼5」と表記して区別する。
【0027】
軸4は上下方向に延びた丸棒として形成されている。軸4の上端部は、図示省略の駆動源(例えばモーター)と接続されている。駆動源の稼働に伴って、軸4が図1に矢印Rで示す方向に回転する。軸4の下端部は、上端部とは異なり自由端となっている。
【0028】
複数の撹拌翼5は、軸方向に間隔を空けて配列されており、本実施形態では等間隔で配列されている。勿論この限りではなく、複数の撹拌翼5は不等間隔で配列されていてもよい。複数の撹拌翼5の各々は、軸4から軸径方向(撹拌槽2の径方向)に延びている。
【0029】
複数の撹拌翼5は、軸4の周りを旋回する際に、軸4の上方側(上流側)の撹拌翼5ほど、下方側(下流側)の撹拌翼5に対して軸4の周りで位相が遅れるように配置されている。詳細には、軸方向において隣り合う両撹拌翼5,5の間で、相対的に上方側の撹拌翼5は、相対的に下方側の撹拌翼5に対して角度45°の分だけ軸4の周りで位相が遅れるようになっている。なお、最も位相が進んだ第五撹拌翼5から最も位相が遅れた第一撹拌翼5まで、同じ角度45°の等ピッチで位相が遅れていく。勿論この限りではなく、隣り合う両撹拌翼5,5の間における位相差は45°から変更しても構わない。また、複数の撹拌翼5の間で位相差が不等ピッチであっても構わない。
【0030】
上記の位相の関係により、複数の撹拌翼5が軸4の周りを旋回するのに伴って、軸4付近で下方から上方に向かう溶融ガラスGの上昇流れが形成される。上昇流れは、撹拌槽2内での本来的な流れ(上方から下方に向かう溶融ガラスGの下降流れ)とは逆向きの流れである。ここで、溶融ガラスGの上昇流れを好適に形成するため、上記の位相差は10°~80°の範囲内とすることが好ましい。
【0031】
複数の撹拌翼5の各々は、軸4を基準として対称に配置された一対の翼体6を備えている。一対の翼体6の各々は、縦置き姿勢とされた矩形の板状体に二つの貫通開口部6aが形成されてなる。各貫通開口部6aは矩形に形成されている。勿論この限りではなく、貫通開口部6aの形状は、円形、楕円形等の他の形状であってもよい。また、貫通開口部6aの数は、一つであってもよく、三つ以上であってもよい。各翼体6の先端部6bは軸方向(上下方向)に延びている。なお、撹拌槽2の内壁面2sと各翼体6の先端部6bとの間には、隙間が形成される。
【0032】
上記の先端部6b及び貫通開口部6aにより、下記のとおり溶融ガラスGが撹拌される。すなわち、複数の撹拌翼5が軸4の周りを旋回するのに伴って、撹拌槽2の内壁面2s付近において、各翼体6の先端部6bにより溶融ガラスGが撹拌される。さらに、旋回中の翼体6の貫通開口部6aを溶融ガラスGに通過させることで、溶融ガラスGと翼体6とが一緒に軸4の周りを同方向に旋回することを回避しつつ、貫通開口部6aの通過に伴って溶融ガラスGが撹拌される。
【0033】
ここで、翼体6の先端部6bにより溶融ガラスGを好適に撹拌するため、軸方向で隣り合う両撹拌翼5,5の相互間の間隔Dを基準として、先端部6bの長さLが50%~200%の長さを有することが好ましい。また、貫通開口部6aを溶融ガラスGに通過させやすくするため、各翼体6における貫通開口部6aの開口率は30%以上とすることが好ましい。ここで言う「開口率」とは、翼体6の元となる矩形の板状体(貫通開口部6aが未形成の状態の板状体)の面積に対して、貫通開口部6aの開口面積が占める割合を意味する。なお、複数の貫通開口部6aを設ける場合、貫通開口部6aの開口面積は、各貫通開口部6aの開口面積を加算した合計の開口面積を意味する。
【0034】
第一撹拌翼5~第五撹拌翼5のうち、第三撹拌翼5には補助翼7が連結されている。補助翼7は、第三撹拌翼5と連結されているのみでなく、連結部材8を介して軸4とも連結されている。補助翼7および連結部材8の表面は、白金又は白金合金で構成されている。
【0035】
第三撹拌翼5は、撹拌槽2の筒部2a内に収容されている。これにより、第三撹拌翼5と連結された補助翼7もまた、筒部2a内に位置している。なお、本実施形態では、第三撹拌翼5にのみ補助翼7が連結されているが、第三撹拌翼5以外の撹拌翼5にも補助翼7を連結してもよい。ただし、補助翼7が連結される撹拌翼5は、撹拌槽2の筒部2a、流入部2b、及び、流出部2cのうち、筒部2a内に収容される撹拌翼5のみとすることが好ましい。つまり、本実施形態において第三撹拌翼5以外の撹拌翼5に補助翼7を連結する場合には、第四撹拌翼5に連結することが好ましい。これは、(1)補助翼7による溶融ガラスGの撹拌効果を好適に発揮させる観点、(2)補助翼7により溶融ガラスGの上昇流れ(後述)を的確に形成する観点、(3)撹拌スターラー3の構造の複雑化を回避する観点からである。
【0036】
本実施形態では、第三撹拌翼5に対して二つの補助翼7が連結されている。二つの補助翼7の各々は、軸4の周りで螺旋状に延びている。各補助翼7を撹拌槽2の軸線2z方向から視ると、軸4を中心とする半円をなしている。つまり、両補助翼7,7の一方は、軸4の周りにおける180°の範囲に存在し、他方は、軸4の周りにおける残りの180°の範囲に存在している。このような補助翼7は撹拌槽2の内壁面2sに沿っている。
【0037】
軸4の周りを旋回する際に、補助翼7の先頭に位置する先頭部7a、及び、最後尾に位置する最後部7bとの両者は、いずれも第三撹拌翼5に備わった翼体6の先端部6bに連結されている。なお、軸4の周りを旋回する際に、翼体6の表裏面のうち、前方側に位置する面を「正面」とし、後方側に位置する面を「背面」としたとき、補助翼7の先頭部7aは翼体6の背面と連結されると共に、最後部7bは翼体6の正面と連結されている。
【0038】
補助翼7がなす螺旋により、補助翼7の先頭部7aと最後部7bとの間には高低差が存在している。詳述すると、補助翼7の先頭部7aは、最後部7bと比較して低位置に存在している。そして、補助翼7の先頭部7aは、翼体6の先端部6bにおける下端と連結され、最後部7bは、翼体6の先端部6bにおける上端と連結されている。これにより、補助翼7がなす螺旋のうち、撹拌槽2の流入部2b側に位置する部位ほど、軸4の周りを旋回する際に旋回後方側となる。
【0039】
ここで、本実施形態では、補助翼7の長手方向に直交する断面の形状が矩形となっている。勿論この限りではなく、断面の形状が円形、楕円形、多角形等の他の形状となっていてもよい。
【0040】
上記の補助翼7により、下記のとおり溶融ガラスGが撹拌される。すなわち、補助翼7が軸4の周りを旋回するのに伴って、撹拌槽2の内壁面2s付近において、補助翼7が溶融ガラスGの下降流れを堰き止めつつ、溶融ガラスGが撹拌される。また、補助翼7がなす螺旋により、補助翼7が軸4の周りを旋回するのに伴って、撹拌槽2の内壁面2s付近で、下方から上方に向かう溶融ガラスGの上昇流れが形成される。これにより、溶融ガラスGの下降流れを堰き止める効果が更に高まる。
【0041】
連結部材8は、軸径方向に延びた状態で軸4と補助翼7とを連結している。連結部材8を撹拌槽2の軸線2z方向から視ると、第三撹拌翼5と直交する方向に延びている。これにより、連結部材8における軸径方向の外側端部は、補助翼7の中間部と連結されている。勿論この限りではなく、軸線2z方向から視て、連結部材8と第三撹拌翼5とが任意の角度で交差していて構わない。連結部材8は、軸方向において翼体6の貫通開口部6aが開口した範囲内に位置している。具体的には、連結部材8は、軸方向において貫通開口部6aがなす矩形の上辺と下辺との相互間に位置する高さに存在している。
【0042】
ここで、本実施形態では、連結部材8の長手方向に直交する断面の形状が円形となっている。勿論この限りではなく、断面の形状が楕円形、矩形、多角形等の他の形状となっていてもよい。
【0043】
上記の連結部材8により、下記のとおり溶融ガラスGが撹拌される。すなわち、翼体6の貫通開口部6aの通過に伴って撹拌された溶融ガラスGが、軸方向において翼体6の貫通開口部6aが開口した範囲内に位置した連結部材8により、更に撹拌される。
【0044】
以下、上記の撹拌装置1および撹拌スターラー3による主たる作用・効果について説明する。
【0045】
上記の撹拌装置1に備わった撹拌スターラー3では、軸4と補助翼7とを連結する連結部材8が軸径方向に延びている。このため、撹拌槽2内において撹拌スターラー3の軸4付近を流れる溶融ガラスGについて、これを第一撹拌翼5~第五撹拌翼5のみではなく連結部材8によっても撹拌することができる。その結果、軸4付近を流れる溶融ガラスGの撹拌性能を向上させることが可能となる。また、撹拌槽2内において内壁面2s付近を流れる溶融ガラスGについては、撹拌翼5の先端部6bと、この先端部6bに連結された軸4の周りで周方向に延びた補助翼7とによって撹拌が可能である。
【0046】
以下、本発明の他の実施形態に係る溶融ガラス撹拌装置および撹拌スターラーについて、添付の図面を参照しながら説明する。なお、他の実施形態の説明において、上記の第一実施形態で既に説明済みの要素と実質的に同一の要素については、他の実施形態の説明で参照する図面に同一の符号を付すことで重複する説明を省略する。
【0047】
<第二実施形態>
図2は、第二実施形態に係る撹拌装置1に備わった撹拌スターラー3を示している。第二実施形態に係る撹拌スターラー3が、上記の第一実施形態に係る撹拌スターラー3と相違している点は、補助翼7および連結部材8の構成が異なっている点である。
【0048】
本撹拌スターラー3においては、第一実施形態とは異なり、二つの補助翼7の各々が軸4の周りにおける90°の範囲に存在している。一方、軸方向で隣り合う両撹拌翼5,5の間の位相差(図2に示す角度θ1)は、第一実施形態と同じく45°である。二つの補助翼7は、軸4を基準として対称に配置されている。また、本撹拌スターラー3においては、連結部材8の長手方向に直交する断面の形状が矩形となっている。
【0049】
ここで、上記の第一実施形態においては、二つの補助翼7の各々が軸4の周りにおける180°の範囲に存在し、本実施形態においては、二つの補助翼7の各々が軸4の周りにおける90°の範囲に存在しているが、この限りではない。補助翼7が軸4の周りで存在する角度(図2に示す角度θ2)の範囲は変更してよく、例えば45°~180°の範囲内で変更して構わない。
【0050】
<第三実施形態>
図3は、第三実施形態に係る撹拌装置1に備わった撹拌スターラー3を示している。第三実施形態に係る撹拌スターラー3が、上記の第一実施形態に係る撹拌スターラー3と相違している点は、翼体6、補助翼7、及び、連結部材8の構成が異なっている点である。
【0051】
本撹拌スターラー3においては、上記の第二実施形態と同様にして、二つの補助翼7の各々が軸4の周りにおける90°の範囲に存在し、連結部材8の長手方向に直交する断面の形状が矩形となっている。さらに、翼体6において単一の貫通開口部6aのみが形成されている。
【0052】
ここで、本発明に係る撹拌スターラーおよび溶融ガラス撹拌装置は、上記の各実施形態で説明した構成に限定されるものではない。例えば、上記の各実施形態に係る撹拌スターラー3では、翼体6が、縦置き姿勢とされた矩形の板状体に貫通開口部6aが形成されてなるが、これに限定されるものではない。一例として、複数の角棒、或いは、丸棒等の棒体を縦横に連結して矩形の枠体を作製し、当該枠体を翼体6としても構わない。
【0053】
上記の各実施形態に係る撹拌スターラー3では、補助翼7は、軸4の周りで螺旋状に延びており、補助翼7の先頭部7aと最後部7bとの間には高低差が存在しているが、これに限定されるものではない。補助翼7は、補助翼7の先頭部7aと最後部7bとの間に高低差がなく、円弧状に延びてもよい。溶融ガラスGの下降流れを堰き止める効果を高める観点では、補助翼7は、螺旋状に延びていることが好ましい。
【0054】
上記の各実施形態に係る撹拌装置1では、溶融ガラスGが撹拌槽2内を上方から下方に向かって流れながら撹拌スターラー3により撹拌されるが、これに限定されるものではない。溶融ガラスGが撹拌槽2内を下方から上方に向かって流れながら撹拌スターラー3により撹拌されてもよい。すなわち、撹拌槽2の下部に流入部2b(流入口2x)を設けると共に、上部に流出部2c(流出口2y)を設けてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 溶融ガラス撹拌装置
2 撹拌槽
2a 筒部
2b 流入部
2c 流出部
2x 流入口
2y 流出口
3 撹拌スターラー
4 軸
5 撹拌翼
6a 貫通開口部
6b 先端部
7 補助翼
8 連結部材
G 溶融ガラス
図1
図2
図3