IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大和産業株式会社の特許一覧 ▶ 有限会社つくば食料科学研究所の特許一覧

<>
  • 特許-表面加工粒状物 図1
  • 特許-表面加工粒状物 図2
  • 特許-表面加工粒状物 図3
  • 特許-表面加工粒状物 図4
  • 特許-表面加工粒状物 図5
  • 特許-表面加工粒状物 図6
  • 特許-表面加工粒状物 図7
  • 特許-表面加工粒状物 図8
  • 特許-表面加工粒状物 図9
  • 特許-表面加工粒状物 図10
  • 特許-表面加工粒状物 図11
  • 特許-表面加工粒状物 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】表面加工粒状物
(51)【国際特許分類】
   B02B 3/00 20060101AFI20230828BHJP
【FI】
B02B3/00 104
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022117980
(22)【出願日】2022-07-25
(62)【分割の表示】P 2021088770の分割
【原出願日】2017-09-21
(65)【公開番号】P2022132653
(43)【公開日】2022-09-08
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】399103342
【氏名又は名称】大和産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502283800
【氏名又は名称】有限会社つくば食料科学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100067839
【弁理士】
【氏名又は名称】柳原 成
(74)【代理人】
【識別番号】100109508
【弁理士】
【氏名又は名称】菊間 忠之
(72)【発明者】
【氏名】小坂田 諭
(72)【発明者】
【氏名】星野 徹
(72)【発明者】
【氏名】山田 純代
(72)【発明者】
【氏名】堀金 彰
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】表面研削による北海道産麺用小麦の高品質全粒粉を活用したパン製造技術,日本食品科学工学会誌,第60巻6号,第266-269頁 ,https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030852645.pdf
【文献】玄米及び表面研削加工玄米の加工特性の比較,日本作物学会講演会要旨集,日本,第238回,第107頁,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcsproc/238/0/238_102/_pdf/-char/ja
【文献】表面加工玄米の食べやすさに関する探索的ランダム化クロスオーバー試験,日本栄養・食糧学会誌,日本,第69巻5号,第249-255頁,https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010903190.pdf
【文献】玄米がふっくら! 画期的機能搭載の精米機「RSF-A100」とは? タイガーの「玄米に“細かい傷”を入れられ,価格ドットコム,日本,2016年09月14日,https://kakakumag.com/seikatsu-kaden/?id=4500
【文献】玄米の澱粉消化性および玄米摂取後の血糖値の制御要因,食糧-その科学と技術,第55号,日本,2017年03月29日,第19-32頁,https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/laboratory/nfri/outline/074433.html
【文献】荒木 理沙, 橋本 幸一,表面加工玄米のヒト介入試験による機能性評価 健康に良くておいしい新たな玄米に関する研究,化学と生物,第55巻5号,日本,2017年04月20日,第345-350頁, https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/55/5/55_345/_pdf/-char/ja
【文献】表面加工玄米及びその加工品の提供システムの開発,機能性をもつ農林水産物・食品開発プロジェクト研究成果集,日本,国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 ,2017年03月31日,表紙、第19-27頁、奥付, https://www.naro.go.jp/project/f_foodpro/files/results_collection.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料粒状物の表面加工物であって、
原料粒状物の有用物が変性、変質あるいは実質的に除去されることなく、
原料粒状物の表面に付着した異物が除去され、
表層部に不規則で浅く微細な多数の傷が形成されて粗面化しており、
粒状物の表面に原料粒状物とは異なる表面特性が付与されており、
前記原料粒状物が表層部に難破壊性および/または難透水性の皮膜層を有する玄米であり、
前記不規則で浅く微細な多数の傷は、浮遊、流動化状態の粒状物と回転加工体との接触痕からなる皮膜層の擦過傷であり、
前記浮遊、流動化状態の粒状物は、原料供給部側から製品取出部側に向けて下方向に傾斜するように設けられた保持筒と、保持筒内の軸方向に設けられた回転軸に取り付けられた回転加工体との間に、リング状の空間が軸方向に伸びるように形成された粒状物流路に形成されたものであり、
前記回転加工体は、前記流路内で浮遊する粒状物を、保持筒の内周円に沿って全周にわたり浮遊流動化状態の粒状物層を形成するように粒状物と接触して、前記接触痕を形成するものであり、
前記接触痕は、表層部に形成され、皮膜層、糊粉層および胚芽の除去と、粒状物の破砕または破壊、ならびに表層部の剥離を伴わないものであり、
前記擦過傷は、皮膜層の傷であって、糊粉層内面に達しないものであり、
表面加工粒状物は、原料粒状物に対する搗精歩留が99.8ないし99.9%(0.1ないし0.2分搗き)であり、
全国無洗米協会および米穀公正取引推進協議会方式による濁度が原料粒状物の濁度を超え、4.4ppm以下である
ことを特徴とする表面加工粒状物。
【請求項2】
請求項1記載の表面加工粒状物の2次加工品からなる
ことを特徴とする表面加工粒状物の2次加工品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米、麦類、そば等の穀粒や、トウモロコシ、豆類、ゴマ等の植物の種子を起源とする粒状食品原料その他の粒状物の表面に付着した異物を除去し、表面加工を施した表面加工粒状物を製造する装置、製造方法、および得られる表面加工粒状物に関するものである。さらに詳細には、有用物を変性、変質あるいは実質的に除去することなく、粒状物の表面に付着した異物を除去し、粗面形成などの表面加工を施した表面加工粒状物の製造装置および製造方法から得られる表面加工粒状物、ならびにこれを含む加工品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
米、麦類、そば等の穀粒や、豆類、ゴマ等の植物の種子を起源とする粒状食品原料は、表層部に難破壊性、難透水性の皮膜層を有するので、皮膜層を除去して食用に供することがあり、米の場合分づき米や胚芽米などが食用に供されている。しかし精米により除去される胚芽を含む表層部には有用な成分が多く含まれているため、玄米など全粒の穀粒を食用に供することが提唱されている。ところが処理をしない玄米などは、皮膜層が難透水性のため長い浸漬時間と加熱時間を要し、調理が困難である上、難破壊性の皮膜層は噛み切れない状態で残り、食感が劣る。
【0003】
粒状物と液相、気相などの分散媒との反応性や浸潤性などは、粒状物の表面の状態により影響を受ける。粒状物に化学修飾を加えずに分散媒との反応性や浸潤性などを変化させる方法としては、粒状物表面に傷をつけて粗面を形成し、表面積や親和性の改変を行う表面処理が食品、工業原料、医薬品など多くの分野で行われている。しかし従来の表面処理では、表層部の有用物を変性、変質あるいは除去するように実施されている。
【0004】
穀粒についていえば、表層部に難破壊性、難透水性の皮膜層が形成されているので、精米、精麦などによって表面の不要物除去、浸潤性向上などを行うために、粒状物圧送による摩擦や衝突、砥粒や刃物による研削などの表面処理が行われている。しかし、このような手法では原料粒状物の粉砕頻度が高まるとともに、摩擦熱や蓄熱により化学反応が進み、製品の品質が低下する。
【0005】
例えば特許文献1(特開平6-99088)には一般的な精米方法として、精米工程において原料玄米をパンチング材等により形成される外筒と回転体の間隙を圧送し、原料玄米と外筒部の間に生じる擦離力や穀粒相互の接触摩擦により精米するものが示されている。しかしこのような方法では、糊粉層内面に達する傷を形成するため、表層部を含む有用成分が剥離し、胚芽組織や糊粉層などが除去される。
【0006】
家庭で利用される圧力式やインペラー式の精米器は、搗精率約10%の白米の製造が主目的であって、原料玄米の約10%の表層部を含む有用成分が剥離し除去されるものであり、原料玄米の表層部、糊粉層、胚芽などの有用物を除去することなく調理時の親水性、反応性などを高めることは困難である。また剥離したぬかの再付着を防止するためには別工程が必要である。
【0007】
また特許文献2(特開平10-15408)には、研米装置として、一部に砥石を装着した外筒内部で、内周部に充填された米粒を、一部にブラシを装着した回転体を中心部で回転させて上部に圧送しながら、表面を研磨とブラッシングで研米する装置が示されている。しかしこの方法は、米粒同士がすれることにより精米を行い、剥離したぬかをブラッシングで除去する研米装置であり、有用物を変性、変質あるいは実質的に除去することなく研米することは示されていない。
【0008】
特許文献3(特開2007-209937)には、砥粒を含む可撓性高分子材で原料粒状物の表面を微研削する技術が示されている。この方法は穀粒の表層部分を可撓性高分子材との接触研削により薄く除去する方法であり、粒状物を空気流により浮遊させた状態で分散移動させながら表面加工する方法は示されていない。
【0009】
このように従来の穀粒などの粒状物の表面処理方法は、いずれも表層部を除去するもので、実質的に米における精米と同等のものであり、表層部に含まれる有用物が変性、変質あるいは除去されることになり、穀粒等の全粒を利用できないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平6-99088
【文献】特開平10-15408
【文献】特開2007-209937
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は上記従来の問題点を解決するため、原料粒状物の表面に付着した異物を除去するとともに、有用物を変性、変質あるいは実質的に除去することなく、表層部に表面加工を施して粗面化し得られる、原料粒状物とは異なる表面特性を有する表面加工粒状物、およびこの表面加工粒状物を含む加工品を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は次の表面加工粒状物およびこれを含む加工品である。
(1)原料粒状物の表面加工物であって、
原料粒状物の有用物が変性、変質あるいは実質的に除去されることなく、
原料粒状物の表面に付着した異物が除去され、
表層部に不規則で浅く微細な多数の傷が形成されて粗面化しており、
粒状物の表面に原料粒状物とは異なる表面特性が付与されており、
前記原料粒状物が表層部に難破壊性および/または難透水性の皮膜層を有する玄米であり、
前記不規則で浅く微細な多数の傷は、浮遊、流動化状態の粒状物と回転加工体との接触痕からなる皮膜層の擦過傷であり、
前記浮遊、流動化状態の粒状物は、原料供給部側から製品取出部側に向けて下方向に傾斜するように設けられた保持筒と、保持筒内の軸方向に設けられた回転軸に取り付けられた回転加工体との間に、リング状の空間が軸方向に伸びるように形成された粒状物流路に形成されたものであり、
前記回転加工体は、前記流路内で浮遊する粒状物を、保持筒の内周円に沿って全周にわたり浮遊流動化状態の粒状物層を形成するように粒状物と接触して、前記接触痕を形成するものであり、
前記接触痕は、表層部に形成され、皮膜層、糊粉層および胚芽の除去と、粒状物の破砕または破壊、ならびに表層部の剥離を伴わないものであり、
前記擦過傷は、皮膜層の傷であって、糊粉層内面に達しないものであり、
表面加工粒状物は、原料粒状物に対する搗精歩留が99.8ないし99.9%(0.1ないし0.2分搗き)であり、
全国無洗米協会および米穀公正取引推進協議会方式による濁度が原料粒状物の濁度を超え、4.4ppm以下である
ことを特徴とする表面加工粒状物。
(2)上記(1)記載の表面加工粒状物の2次加工品からなる
ことを特徴とする表面加工粒状物の2次加工品。
【0013】
本発明において、表面加工の対象となる原料粒状物は、有機、無機等の物質から構成される粒状物であって、表面加工ができるものであれば制限はなく、穀粒などの粒状食品原料ならびに生物、有機物、化学物質その他の粒状物が挙げられる。これらの中では米、麦類、そば等の穀粒や、豆類、ゴマ等の植物の種子を起源とする粒状食品が適している。特に玄米、原麦、そば等の穀粒や、トウモロコシ、豆類、ゴマなどのように、表層部に難破壊性および/または難透水性の皮膜層を有する粒状物が表面加工の対象として適しているが、米の籾や玄そばなど、難剥離性の外皮(米の場合は籾殻、麦の場合は麦殻、そばの場合はそば殻など)で覆われた状態の粒状物も表面加工の対象とすることができる。
【0014】
米、麦類、そば等の穀粒や、豆類、ゴマ等の植物の種子を起源とする粒状食品は、表層部に難破壊性、難透水性の皮膜層を有するので、処理をしない玄米などは、表層部が難透水性のため長い浸漬時間と加熱時間を要し、調理が困難である上、難破壊性の皮膜層は噛み切れない状態で残り、食感が劣る。また麦類、そば、玄米などを製粉して使用する場合は、表層部に処理を施していない原麦、そば丸抜き、玄米などを製粉すると、難破壊性の皮膜層は微粉砕されない粗大画分として残存し、加工特性、食感などが劣る場合がある。
【0015】
本発明における表面加工は、原料粒状物の有用物を変性、変質あるいは実質的に除去することなく、粒状物の表面に付着した異物を除去するとともに、粒状物の表面に原料粒状物とは異なる表面特性を付与する加工である。さらに詳細には、保持筒内で粒状物を浮遊させた状態で、回転加工体を回転させて表面加工することにより、粒状物の表面に不規則で微細な多数の傷を形成して粗面化し、表層部の破壊性、透水性、浸潤性などの原料粒状物とは異なる表面特性を付与する加工である。
【0016】
本発明で製造する表面加工粒状物は、このような粒状物の表面加工により、原料粒状物の表面に付着した粒状物表面の不可食部、土壌、細菌などの異物を除去するとともに、原料粒状物とは異なる表面特性を付与し、これにより製粉性、調理性、衛生性、栄養性、食感などの特性を改善した粒状物である。
【0017】
本発明の表面加工粒状物の製造方法では、内周面に沿って回転移動する粒状物を一時的に保持可能な保持部および透孔を有する円筒状の保持筒へ原料粒状物を供給する。このとき保持筒の上部から透孔を通して吸引して粒状物を浮遊させた状態で、保持筒内の軸方向に設けられた回転軸に取り付けられた回転加工体を回転させることにより、回転加工体の周辺部から突出する加工片との接触により異物の除去とともに、粒状物に表面加工を施して表層部を粗面化し、表面加工粒状物を製造する。これにより原料粒状物の有用物を変性、変質あるいは実質的に除去することなく、粒状物の表面に付着した異物を除去するとともに、粒状物の表面に原料粒状物とは異なる表面特性を付与した表面加工粒状物を製造することができる。
【0018】
ここで重要なことは、粒状物を浮遊させた状態で回転加工体を回転させて粒状物を流動化し、表面加工する点である。従来の精米、研米等の処理方法において、原料玄米等の粒状物を堆積させた状態で回転体等により圧送して表面処理する方法では、粒状物同士または粒状物と回転体等との摩擦、衝撃、抵抗などが大きいため、表層部の剥離や組織の欠損が起きるのに対し、粒状物を浮遊させた状態で回転加工体を回転させて粒状物を流動化すると、粒状物同士または粒状物と回転体等との摩擦、衝撃、接触抵抗、発熱などが小さい状態で粒状物と回転体等が接触するため、表層部に不規則で浅く微細な多数の傷を形成して粗面化し、表層部の破壊性、透水性、浸潤性などの原料粒状物とは異なる表面特性を付与することができる。
【0019】
原料粒状物が、玄米、原麦、そばなどの穀粒や、豆類、ゴマ等の植物の種子を起源とする粒状食品原料のように、表層部に難破壊性および/または難透水性の皮膜層を有する粒状物である場合は、表面加工により難破壊性および/または難透水性の皮膜層に不規則で微細な多数の傷を形成して粗面化し、表層部の破壊性、透水性、浸潤性などの原料粒状物とは異なる表面特性を付与した表面加工粒状物を製造することができる。米の籾や、難剥離性の外皮(米の場合は籾殻、麦の場合は麦殻、そばの場合はそば殻など)で覆われた状態の玄そばに表面加工を施すこともでき、この場合1次加工として表層部に施された表面加工により不可食部である果皮などの表層部に粗面を形成し、2次加工の脱皮工程で受ける衝撃などにより果皮などが剥離・除去しやすい物理的特性を賦与することができる。
【0020】
このような本発明の表面加工粒状物の製造方法に用いるための表面加工粒状物の製造装置は、内周面に沿って回転移動する粒状物を一時的に保持可能な保持部および透孔を有する円筒状の保持筒と、保持筒内の軸方向に設けられた回転軸に取り付けられて回転し、周辺部から突出する加工片との接触により異物の除去とともに、粒状物に表面加工を施して表層部を粗面化する回転加工体と、保持筒の始端部へ原料粒状物を供給する原料供給部と、保持筒の終端部から製品粒状物を取出す製品取出部と、保持筒の上部から透孔を通して吸引し、粒状物を浮遊させるとともに、微細な異物および加工滓を保持筒外へ排出する加工滓除去部とを備えている装置である。さらに表面加工により生じた破砕物を、保持筒の下部から透孔を通して、保持筒外へ排出する破砕物除去部を備えている装置が好ましい。このような装置により、表面加工粒状物の製造が行われる。
【0021】
保持筒に設けられる保持部は、内周面に沿って回転移動する粒状物を一時的に保持できるように構成され、これにより粒状物の回転移動に対する抵抗が生じて、粒状物の表面加工を促進する。透孔は主として通気のために設けられるが、保持部を兼ねることができる。この場合透孔は粒状物よりも小さい開口部を有し、粒状物の一部がはまり込む構造とすることにより、開口端部が粒状物の保持部として機能する。透孔の開口端部の下流側で回転を受け止める側の一部が内周側に突出した突出部を形成すると保持性を高めることができ、これにより打撃力あるいは衝撃力を受け止めて、加工性を高めることができる。透孔の形状、大きさは原料粒状物が通過しないものであればよいが、粒状物の形状、大きさに応じて任意に選択できる。例えば玄米の場合、長円状、楕円状のものなどが採用されるが、単純な円形のものでもよい。透孔とは別に内周側に突出部を形成して保持部とすることもできる。保持部および透孔の形状、大きさなどは保持筒の部位における機能、作用等に合うように変化させることができる。例えば大部分の場所では回転移動に対する抵抗を大きくするように保持性の高い状態にするが、加工滓除去部では加工滓や気流が通りやすいように開口部を大きくし、また破砕物除去部では破砕物を通す開口部を多くすることができる。保持部は保持筒の内周面に沿って回転移動する粒状物を一時的に保持可能なものであり、粒状物が保持され、あるいは脱離する際など、粒状物の回転移動に対する抵抗となるときに、粒状物は表面加工を施される。
【0022】
保持筒は単一または複数の多孔板から円筒状に構成されるが、筒径を変化させる筒径調節材を設けることができ、筒径調節材は外部から操作して筒径を変化させるものが好ましい。筒径調節材を操作して筒径を変化させることにより、保持筒の内側に形成される粒状物の流路の大きさを調整することができ、これにより粒状物の表面加工率を調節することができる。保持筒を複数の多孔板で構成する場合は、接合面を重ねて接合する部分を可動化することにより、保持筒の大きさを調整することが容易になる。この場合外部からの操作で圧縮荷重を付加して筒径を変化させるものが好ましい。複数の多孔板は、同一または異なる保持部および/または透孔を形成することができる。保持筒は縦方向、横方向など、任意の方向に配置でき、縦方向の場合の粒状物の移動方向は、上方向でも下方向でもよい。好ましくは、保持筒は基本的に横方向に配置するが、若干下方向に傾斜するように設けると、粒状物の移動に重力を利用できるので好ましい。
【0023】
保持筒内に設けられる回転加工体は、保持筒内の軸方向に設けられた回転軸に取り付けられている。回転加工体はその周辺部から加工片が突出しており、回転加工体の回転により周辺部から突出する加工片と粒状物の接触により、粒状物に付着した異物が除去されるとともに、粒状物に表面加工を施すように設けられる。回転加工体は複数組の加工ユニットが回転軸に積層状に取り付けられたものが好ましく、この場合加工ユニットは1または複数の粗面形成材および放出分散材が積層されたものが好ましい。
【0024】
粗面形成材としては、回転軸に取り付けられる板状体、好ましくは円板状体の周辺部から放射状に突出する加工片が回転により、保持筒の内周面に沿って回転移動する粒状物と接触して粗面を形成するものが用いられる。
加工片としては、板状体の厚みに相当する幅を有する平板状、湾曲片状、鋸歯状、爪状など任意の形状の突出片が、放射方向に、あるいは回転前方または後方に向けて伸びるものなど、加工の条件に合わせて選ぶことができる。好ましくは回転後方に向けて伸びるもの、また回転前方の面が凸になるように回転後方に向けて湾曲して伸びるものなどは、粒状物への衝撃を軽減、分散して均一化できるので好ましい。このように粒状物への衝撃を軽減、分散して均一化できる加工片を有する回転加工体を、保持筒内で浮遊して流動する粒状物と接触するように回転させると、回転加工体の回転に対する抵抗は小さく、粒状物の破砕や表層部の剥離が防止され、表層部に微細な傷が不規則に形成されて粗面化する。加工片の粒状物と接触する部分の両側に形成されるエッジ部分にシャープエッジが形成されているのが好ましく、これにより表層部に形成される傷が微細になる。回転加工体の回転により保持筒の保持部でも表面加工が行われるが、保持部についても加工片と同様に、衝撃を分散して微細な加工を行えるように配置するのが好ましい。回転加工体の加工ユニットに複数の粗面形成材が設けられる場合は、周辺部の高さが異なる複数の粗面形成材が積層され、回転加工体の周辺部に段差が形成されているものが好ましく、これにより麦など溝等の異形部分の表面加工が容易になる。加工片のエッジがシャープな場合も同様である。粗面形成材の厚さは粒状物の短径の0.1~2.5倍程度、好ましくは0.1~2倍程度、加工片の間隔は粒状物の短径の0.1~1.5倍程度、好ましくは0.1~1倍程度とすることができる。
【0025】
放出分散材は加工ユニットの下流側に設けられ、回転軸に取り付けられる基部の周辺部に形成された溜め部に溜った粒状物を、保持筒の内周面に向け放出分散させるように、基部から放射状に伸びる放出片を有する。溜め部は上流側の粗面形成材と保持筒間の流路から1個以上の粒状物が流入して一時的に溜められる形状、大きさに形成される。放出片は放出分散材の回転により、溜め部内の粒状物を保持筒の内周面方向に押し出す攪拌翼形に形成される。放出片は粗面形成材の加工片よりは大形であり、加工片と同様に板状、湾曲片状、鋸歯状、爪状など任意の形状の突出片が、放射方向に、あるいは回転前方または後方に向けて伸びるものなど、放出分散の条件に合わせて選ぶことができるが、回転後方に向けて伸びるもの、また回転前方の面が凸になるように回転後方に向けて湾曲して伸びるものなどは、粒状物への衝撃を軽減して均一化できるので好ましい。
【0026】
加工ユニットは、1または複数の粗面形成材と放出分散材が積層されて形成されるが、このような加工ユニットが複数個繰り返し積層されて回転加工体が構成される。これにより粗面形成材による粗面形成と、放出分散材による放出分散が繰り返されるようになっている。放出分散材は加工ユニットの下流側に1個含まれるが、粗面形成材は1個に限定されず、複数個が積層されていてもよい。複数個の粗面形成材は周辺部の高さが異なるものを挟んで段差状に積層すると、麦などの凹部を含む粒状物の加工に適しているが、同じものを積層してもよく、また低い粗面形成材の代わりに加工片のないスペーサを挟んでもよい。
【0027】
回転加工体は加工ユニット内または外に、保持筒内周部に沿った粒状物の流れを制御するせき部材を有するのが好ましい。せき部材は、外周部に形成された山部と谷部の組合せにより粒状物の流れを制御するものが好ましい。せき部材は山部と谷部が外周部に均等に分散する花びら形のものが好ましいが、円形、楕円形など、任意の形状に形成することができる。せき部材は保持筒内を移動する粒状物の流量を均一化するために設けられるものであり、各加工ユニットに設ける必要はないが、保持筒内の長手方向に分散して積層され、最下流部にも積層されるのが好ましい。
【0028】
回転加工体を構成する各部材は、回転方向および/または軸方向に揺動または摺動できるように回転軸に緩やかに取り付けられているのが好ましく、これにより回転加工体を構成する各部が粒状物に当たるときの衝撃を緩和して、粒状物の破壊、表層部の剥離を防止し、不規則で浅い微細な傷を形成して粗面化することができる。回転方向および/または軸方向に揺動または摺動できるようにするためには、各部材と回転軸間、ならびに各部材と係合部(例えばキー溝)間にわずかな隙間が存在し、衝撃を吸収するように、緩やかに取り付けられていることを意味する。回転加工体の端部は、ダブルナットとばね座金等で構成される固定具により、軸方向にわずかな隙間が存在するように固定することができる。
【0029】
原料供給部は、保持筒に連なる搬送筒内に設けられた搬送スクリューにより、原料粒状物を保持筒の始端部に供給することができる。この場合、保持筒に連なるほぼ同じ形状、大きさの搬送筒内に、回転加工体に対応する形状、大きさの回転軸の外周面にスクリューが形成された搬送スクリューを用いると、保持筒内における表面加工に適した量の原料粒状物を移動区間に送り込むことができる。原料供給部にはロータリーバルブなどの流量調整装置、ならびに搬送スクリュー上部に原料粒状物の供給厚みを均一にする整粒プレートなどを設けると、原料粒状物の供給量の安定性が向上する。
【0030】
加工滓除去部は保持筒の上部に、加工滓除去部に組み込まれる透孔群を覆うように、加工滓捕集部を設けて外部のバグフィルタ等の吸引部に連結し、この加工滓捕集部から透孔群を通して吸引することにより、保持筒内の粒状物を浮遊させるとともに、剥離した微細な異物および加工滓を保持筒外へ排出するように構成される。加工滓除去部は空冷により保持筒内の発熱、蓄熱を防止し、粒状物の変性、変質等を防止するようにも構成される。
【0031】
破砕物除去部は保持筒の下部に、破砕物除去部に組み込まれる透孔群を覆うように破砕物受け部を設け、表面加工により生じた破砕物を、保持筒の下部から透孔群を通して破砕物受け部に集め、保持筒外へ排出するように構成される。
【0032】
製品取出部は保持筒の終端部から製品粒状物を取出すように構成される。製品取出部には、保持筒から取出される表面加工済み粒状物を選別する選別部を設けることができる。選別部としては異物の除去、不良品の除去などがあげられる。装置の構成材料に磁性材料を用いる場合は、その破片を異物として磁選機により除去することができる。このほか可視光等の電磁波による選別、篩別、風選などが採用できる。
【0033】
上記のような表面加工粒状物の製造装置による表面加工粒状物の製造方法は、加工滓除去部により保持筒の上部から透孔を通して吸引し、回転加工体を回転させながら、原料供給部から保持筒の始端部へ原料粒状物を供給し、粒状物を浮遊させた状態で表面加工を行う。原料供給部から供給される原料粒状物は、保持筒の内周面と回転加工体との間に形成される流路に入り、保持筒の内周面に沿って回転移動するが、原料粒状物の一部は保持筒に形成された保持部に一時的に保持され、反発力により分散する。この状態で回転加工体が回転することにより、加工ユニットの粗面形成材の周辺部から放射状に突出する加工片が、保持筒との間の流路で流動する粒状物と接触して、異物の除去とともに、粒状物に表面加工を施し粗面を形成する。原料として供給される原料粒状物は、風乾物および/または水分を調質した原料を用いることができる。通常は乾式で加工が行われるが、ミストを噴霧して原料粒状物の水分含量を調整してもよい。
【0034】
保持筒と粗面形成材間の流路を移動する粒状物は放出分散材の溜め部に入り、基部から放射状に伸びる放出片により保持筒の内周面に向け放出され分散する。保持筒と回転加工体間の流路を移動する粒状物は、粗面形成材に接触する領域では層流になりやすいが、放出分散材により放出分散される。各加工ユニットによりこれらの操作が繰り返され、これにより粒状物は均一化して流動状態が保たれる。
【0035】
加工ユニット内または外に設けられたせき部材により保持筒内周部に沿った粒状物の流れが制御され、粒状物の滞留時間が長くなるとともに、流路を通る粒状物の流量が調節され、表面加工が均一化する。せき部材が外周部に形成された山部と谷部の組合せからなる場合は、山部で粒状物の流れが制御され、谷部から粒状物が移動する。せき部材が円形の場合は全周で、楕円形の場合は長径の部分で粒状物の流れが制御される。
【0036】
回転加工体を構成する各部材が、回転方向および/または軸方向に揺動または摺動できるように回転軸に緩やかに取り付けられている場合は、回転加工体を構成する各部が粒状物に当たるときの衝撃がさらに緩和され、粒状物の破壊、表層部の剥離が防止されるので、表面加工時にさらに浅く微細な傷を形成して粗面化することができる。運転開始時には、ダイナミックバランスを維持するために動力装置の回転をインバータ制御で緩く上昇させる台形制御を行って異常振動の発生を防止することが望ましい。
【0037】
保持筒に筒径調節材を設ける場合は、筒径調節材を外部から操作して筒径を変化させることができる。筒径調節材を操作して筒径を変化させると、保持筒の内側に形成される粒状物の流路の大きさを調整することができ、これにより粒状物の表面加工率を調節することができる。保持筒を複数の多孔板で構成する場合は、接合面を重ねて接合する部分を可変にすることにより、保持筒の大きさを調整することが容易になる。
【0038】
加工滓除去部では、保持筒の上部から透孔を通して吸引することにより、粒状物を浮遊させるとともに、微細な異物および加工滓が加工滓捕集部に捕集され、保持筒外へ排出される。これにより加工滓の粒状物への再付着を防止するほか、発熱、蓄熱なども防止することができる。粒状物を浮遊させた状態で回転加工体を回転させることにより、粒状物同士または粒状物と回転加工体等との摩擦、衝撃、抵抗などは小さくなるため、表層部に不規則で浅く微細な多数の傷を形成して粗面化し、表層部の破壊性、透水性、浸潤性などの原料粒状物とは異なる表面特性を付与することができる。
【0039】
破砕物除去部では、表面加工により生じた破砕物が、重質の異物、粒状物の欠損組織などとともに、保持筒の下部から透孔を通して破砕物受け部に取出され、保持筒外へ排出される。
【0040】
製品取出部では、保持筒の終端部から製品粒状物を取出す。製品取出部に選別部を設ける場合は、選別部において保持筒から取出される表面加工済み粒状物を選別し、異物や不良品を除去することができる。
【0041】
このようにして製造された本発明の表面加工粒状物は、原料粒状物のたんぱく質、脂質、ビタミン類、酵素などの有用成分が変性、変質、失活あるいは実質的に除去されることなく、粒状物の表面に付着した異物が除去されるとともに、粒状物の表面に原料粒状物とは異なる表面特性が付与された粒状物である。この場合、表面加工粒状物では保持された酵素活性により、γ-アミノ酪酸などの一部の有用成分が原料粒状物よりも増加するものがある。このような表面加工粒状物は、粒状物の表面に付着した土壌、細菌などの異物が除去されるとともに、粒状物の表面に不規則で微細な多数の傷が形成されて粗面化し、表層部の破壊性、透水性、浸潤性などの原料粒状物とは異なる表面特性が付与され、これにより製粉性、調理性、衛生性、栄養性、食感などの特性が改善されている。
【0042】
穀粒などの種子を起源とする粒状食品原料から得られる表面加工粒状物は、難破壊性、難透水性の皮膜層に不規則で微細な多数の傷が形成されて粗面化するので、皮膜層には破壊性、透水性、浸潤性など、原料粒状物とは異なる表面特性が付与され、これにより製粉性、調理性、衛生性、栄養性、食感などの特性が改善された粒状物となっている。表面加工玄米の場合、原料玄米の皮膜層、糊粉層、胚芽などの有用物は除去されず、外観も原料玄米に似ているが、吸水性は高く、短時間の浸漬により調理可能である。また皮膜層の多数の微細傷が炊飯による胚乳部の膨圧増加により拡大して広範な亀裂を生じることにより、粗大な皮膜層画分が少なくなるため、摂食時に粗大な皮膜層画分が歯に当たることが軽減され、食感も白米の炊飯物に近い。麦類、そばなどのように、調理に先立って製粉する場合、製粉時の破砕は皮膜層に形成された微細な傷の部分から始まるため、難破壊性の皮膜層は微細な粉砕物となり、他の部分の粉砕物中に分散する。
【0043】
本発明は、うるち米、もち米などの各種玄米の外、パン小麦、麺用小麦、もち性裸麦、大麦などの麦類、そばなどの製粉前処理技術として広範な適用が可能である。表面加工技術を米麦類、他の穀類などで利用すると、食物繊維やビタミン類、各種Steryl ferulates(γ-オリザノール)類などに富む、調理性、衛生性、栄養性、食感に優れた全粒粉素材を製造でき、栄養価が高く高品質な2次加工品を製造できる。
【0044】
本発明の表面加工粒状物の加工品は、このようにして製造された表面加工粒状物が製粉、調理などの2次加工により得られる加工品である。このような加工品は、表面加工粒状物に付与された原料粒状物にない特性が、2次加工によって新たな特性として具現したものである。2次加工が製粉の場合、表層部が微細に粉砕されて胚乳部に分散する粉製品が得られ、また2次加工が調理である場合、分散性、吸水性、調理性などの改善により、外観形質、風味、食感等に優れた加工品が得られる。
【0045】
玄米は、水分の浸潤などにより胚芽や糊粉層の酵素活性が高まり、さまざまな代謝産物が産生される。市販の発芽玄米では、玄米の浸漬でγ-アミノ酪酸が富化されるが、細菌増殖を防止するために高温処理して製品化する場合は酵素活性が失われる。本発明の表面加工玄米は未処理の玄米と同様に胚芽や糊粉層を保持しており、高温処理も行われないため、2次加工の浸漬などでγ-アミノ酪酸などの代謝産物を富化できる酵素活性を有している。
【発明の効果】
【0046】
本発明の表面加工粒状物の製造方法によれば、保持筒内で粒状物を浮遊させた状態で、回転加工体を回転させて表面加工するので、原料粒状物の有用物を変性、変質あるいは実質的に除去することなく、粒状物の表面に付着した異物を除去するとともに、粒状物の表面に不規則で微細な多数の傷を形成して粗面化し、表層部に破壊性、透水性、浸潤性などの原料粒状物とは異なる表面特性が付与された表面加工粒状物を製造することができる。
【0047】
本発明の表面加工粒状物の製造装置によれば、保持部および透孔を有する保持筒と、加工片との接触により異物の除去とともに、粒状物に表面加工を施す回転加工体と、粒状物を浮遊させるとともに、微細な異物および加工滓を保持筒外へ排出する加工滓除去部とを備えているので、簡単な装置と操作により過剰な圧力や温度をかけずに、原料粒状物の有用物を変性、変質あるいは実質的に除去することなく、粒状物の表面に付着した異物を除去するとともに、粒状物の表面に不規則で微細な多数の傷を形成して粗面化し、表層部に破壊性、透水性、浸潤性などの原料粒状物とは異なる表面特性が付与された表面加工粒状物を製造することができる。
【0048】
本発明の表面加工粒状物は、上記製造方法により製造されたものであるので、原料粒状物の有用物が変性、変質あるいは実質的に除去されることなく、粒状物の表面に付着した異物が除去されるとともに、粒状物の表面に原料粒状物とは異なる表面特性が付与された粒状物が得られる。
【0049】
本発明の加工品は上記表面加工粒状物を2次加工して得られるので、表面加工粒状物に付与された原料粒状物にない特性が、2次加工によって新たな特性として具現した加工品が得られる。加熱されていない表面加工粒状物では、2次加工の浸漬などで酵素類によりγ-アミノ酪酸などの生理活性物質が富化され、調理品に新たな付加価値を賦与できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】実施例形態の表面加工粒状物の製造装置の一部を縦断面で示す正面図である。
図2図1の一部の拡大図であるが、水平方向の図として図示されている。
図3図1および図2のA-A断面図である。
図4図1および図2のB-B断面図である。
図5図1および図2のC-C断面図である。
図6図1および図2のD-D断面図である。
図7図1のE-E断面図である。
図8図1のF-F断面図である。
図9図1のG-G断面図である。
図10】A、Bはそれぞれ実施例1における表面加工玄米および原料玄米の比較写真、AL、BLはそれぞれそれらの拡大写真である。
図11】実施例1における表面加工玄米、原料玄米および白米の吸水率の経時変化を示すグラフである。
図12】A、Bはそれぞれ実施例2における表面加工原麦および未処理の原麦を製粉した全粒粉の粒度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の実施形態を図面により説明する。
図1ないし図9は実施形態の表面加工粒状物の製造装置を示している。
【0052】
図1ないし図9において、実施形態の表面加工粒状物の製造装置1は、内周面に沿って粒状物2の流路3eを形成する円筒状の保持筒3と、保持筒3内の軸方向に設けられた回転軸6に取り付けられて回転する回転加工体4と、保持筒3の始端部へ原料粒状物2aを供給する原料供給部17と、保持筒3の終端部から製品粒状物2bを取出す製品取出部15と、保持筒3の上部から微細な異物および加工滓を保持筒3外へ排出する加工滓除去部8とを備え、さらに保持筒3の下部から表面加工により生じた破砕物を排出する破砕物除去部9を備えている。保持筒3は、その内周面に沿って回転移動する粒状物2を保持部3aにより一時的に保持可能な透孔3bを有する。回転加工体4は、周辺部から突出する加工片4aa、4ba、4caとの接触により異物の除去とともに、粒状物2に表面加工を施して表層部を粗面化するように構成されている。加工滓除去部8は、保持筒3の上部から透孔3bを通して吸引し、粒状物2を浮遊させるとともに、微細な異物および加工滓8cを保持筒3外へ排出するように構成されている。
【0053】
保持筒3に設けられる保持部3aは、保持筒3の内周面に沿って回転移動する粒状物2を一時的に保持できるように構成されており、これにより粒状物2の回転移動に対する抵抗が生じて、粒状物2の回転移動および表面加工を促進する。透孔3bは主として通気のために設けられるが、その一部(例えば開口端部)が保持部3aを兼ねることができる。この場合透孔3bは粒状物2よりも小さい開口部を有し、粒状物2の一部がはまり込む構造とすることにより、開口端部が粒状物の保持部3aとして機能する。透孔3bの開口端部の下流側で回転を受け止める側の一部が内周側に突出した突出部を保持部3aとして形成すると保持性を高めることができ、これにより打撃力あるいは衝撃力を受け止めて、加工性を高めることができる。透孔3bの形状、大きさは粒状物2が通過しないものであればよいが、粒状物の形状、大きさに応じて任意に選択できる。例えば玄米の場合、長円状、楕円状のものなどが採用されるが、単純な円形のものでもよい。透孔3bとは別に内周側に突出部を形成して保持部3aとすることもできる。保持部3aおよび透孔3bの形状、大きさなどは保持筒3の部位における機能、作用等に合うように変化させることができる。例えば大部分の場所では回転移動に対する抵抗を大きくするように保持性の高い状態にするが、加工滓除去部8では加工滓8cや気流が通りやすいように開口部を大きくし、また破砕物除去部9では破砕物を通す開口部を多くすることができる。保持部3aは保持筒3の内周面に沿って回転移動する粒状物2を一時的に保持可能なものであり、粒状物2が保持され、あるいは脱離する際など、粒状物2の回転移動に対する抵抗となるときに、粒状物は表面加工を施される。
【0054】
保持筒3は複数の多孔板3c、3dから円筒状に構成され、筒径を変化させる筒径調節材7、7aが設けられている。筒径調節材7、7aは結束バンドからなり、結束部7dを外部から操作して筒径を変化させるようになっている。筒径調節材7、7aを操作して筒径を変化させることにより、保持筒3の内周面と回転加工体4との間に形成される粒状物2の流路3eの大きさを調整することができ、これにより粒状物2の表面加工率を調節することができる。保持筒3を構成する複数の多孔板3c、3dは、接合面を重ねて接合する部分が可動化されており、外部からの操作で圧縮荷重を付加して筒径を変化させることにより保持筒3の大きさの調整が容易に行われる。複数の多孔板3c、3dは、同一または異なる保持部3aおよび/または透孔3bを形成することができる。保持筒3は基本的に横方向に配置されているが、若干下方向に傾斜するように設けられ、粒状物2の移動に重力を利用できるようにされている。
【0055】
保持筒3内に設けられる回転加工体4は、保持筒3内の軸方向に設けられた回転軸6に取り付けられて回転可能となっている。回転加工体4はその周辺部から加工片が突出しており、回転加工体4の回転により周辺部から突出する加工片と粒状物2の接触により、粒状物2に付着した異物が除去されるとともに、粒状物2に表面加工を施すようにされている。回転加工体4は複数組の加工ユニット4uが回転軸6に積層状に取り付けられており、図中の加工ユニット4uは複数の粗面形成材4a、4b、4cおよび1個の放出分散材4dが積層されたものである。
【0056】
粗面形成材4a、4b、4cとしては、回転軸6に取り付けられる円形の板状体4ab、4bb、4cbの周辺部から放射状に突出する加工片4aa、4ba、4caが回転により、保持筒3との間の流路3eで流動し保持筒3の内周面に沿って回転移動する粒状物2と接触して粗面を形成するものが用いられている。加工片4aa、4ba、4caとしては、板状体4ab、4bb、4cbの厚みに相当する幅を有する平板状、湾曲片状、鋸歯状、爪状など任意の形状の突出片が、放射方向に、あるいは回転前方または後方に向けて伸びるものなど、加工の条件に合わせて選ぶことができるが、実施形態では回転前方の面が凸になるように回転後方に向けて湾曲して伸びるものが採用されていて、粒状物2への衝撃を軽減、分散して均一化できるようにされている。このように粒状物2への衝撃を軽減、分散して均一化できる加工片4aa、4ba、4caを有する回転加工体4を、保持筒3内で浮遊して流動する粒状物2と接触するように回転させることにより、回転加工体4の回転に対する抵抗は小さく、粒状物2の破砕や表層部の剥離が防止され、表層部に微細な傷が不規則に形成されて粗面化するようにされている。加工片4aa、4ba、4caの粒状物2と接触する部分の両側に形成されるエッジ部分にはシャープエッジが形成され、表層部に形成される傷が微細になるようにされている。回転加工体4の回転により保持筒3の保持部3aでも表面加工が行われるが、保持部3aについても加工片4aa、4ba、4caと同様に、衝撃を分散して微細な加工を行えるように配置するのが好ましい。回転加工体4の加工ユニット4uの複数の粗面形成材4a、4b、4cのうち中間の粗面形成材4bは周辺部の高さの低いものが積層され、回転加工体4の周辺部に段差が形成されている。これにより麦など溝等の異形部分の表面加工が容易になるようにされている。
【0057】
放出分散材4dは加工ユニット4uの下流側に設けられ、回転軸6に取り付けられる基部4dcから放出片4daが放射状に伸び、これに隣接して基部4dcの周辺部に形成された溜め部4dbに溜った粒状物2を、保持筒3の内周面に向け放出分散させるように形成されている。溜め部4dbは上流側の粗面形成材4cと保持筒3間の流路3eから1個以上の粒状物2が流入して一時的に溜められる形状、大きさに形成されている。放出片4daは放出分散材4dの回転により、溜め部4db内の粒状物2を保持筒3の内周面方向に押し出す攪拌翼形に形成される。放出片4daは粗面形成材4a、4b、4cの加工片4aa、4ba、4caよりは突出長さ、幅ともに大形であり、回転前方の面が凸になるように回転後方に向けて湾曲して伸びるものであり、粒状物2への衝撃を軽減して均一化できるようにされている。
【0058】
図面の加工ユニット4uは、1または複数の粗面形成材4a、4b、4cと1個の放出分散材4dが積層されて形成され、このような加工ユニット4uが複数個繰り返し積層されて回転加工体4が構成されている。これにより粗面形成材4a、4b、4cによる粗面形成と、放出分散材4dによる放出分散が繰り返されるようになっている。
【0059】
回転加工体4には、加工ユニット4u内または外に、保持筒3の内周部に沿った粒状物2の流れを制御するせき部材5が積層されている。せき部材5は粗面形成材4a、4cより大径の円形板状体であり、外周部に形成された山部5aと谷部5bの組合せにより粒状物2の流れを制御するように、山部5aと谷部5bが外周部に均等に分散する花びら形に形成されている。せき部材5は保持筒3内を移動する粒状物2の流量を制御して均一化するために設けられており、各加工ユニット4uに設ける必要はないが、保持筒3内の長手方向に分散して積層され、最下流部にも積層されている。
【0060】
回転加工体4を構成する各部材は、回転方向R1、軸方向R2、揺動方向R3および/またはその他の方向に揺動または摺動できるように、回転軸6に緩やかに取り付けられている。これにより回転加工体4を構成する各部が粒状物2に当たるときの衝撃を緩和して、粒状物2の破壊、表層部の剥離を防止し、不規則で浅い微細な傷を形成して粗面化することができるようにされている。回転方向R1、揺動方向R3および/またはその他の方向に揺動または摺動できるようにするためには、各部材と回転軸6間、ならびに各部材と係合部11(キー11aと溝11b)間にわずかな隙間12が存在し、衝撃を吸収するように、緩やかに取り付けられている。また軸方向R2に揺動または摺動できるようにするためには、回転加工体4の終端部は、ダブルナットとばね座金等で構成される末端固定具23により、軸方向にわずかな隙間が存在するように固定されている。
【0061】
原料供給部17は、保持筒3の始端側に連なる搬送筒17a内に搬送スクリュー18が設けられており、原料粒状物2aを原料供給路17dから流路3eの始端部に供給するようにされている。ここで搬送スクリュー18は、保持筒3に連なるほぼ同じ形状、大きさの搬送筒17a内に、回転加工体4に対応する形状、大きさの回転体の外周面にスクリューが形成された構造とされ、保持筒3内における表面加工に適した量の粒状物2を流路3eに送り込むようにされている。搬送スクリュー18の上部には、原料粒状物2aの供給厚みを均一にする整粒プレート17bが、搬送筒17aに連絡する原料供給路17d内に設けられている。整粒プレート17bは原料粒状物2aの供給量を制限する開口部17cを有している。原料供給部17にはロータリーバルブなどの流量調整装置により原料粒状物2aが供給され、その供給量の安定性が向上するようにされている。
【0062】
搬送スクリュー18の搬送筒17aの始端側は、支持体20に取り付けられた保持部材19により保持されている。搬送筒17aの終端側の外周部には、保持筒3の始端側が固定具16により固定されている。保持筒3の終端側は、筒径調節材7、7aによって始端側より小筒径に調整される場合は、その差に相当する厚みの軸心保持材7b、7cを介在させて、支持体20aに取り付けられた保持部材19aにより保持されている。搬送スクリュー18は、回転加工体4を取り付ける回転軸6に取り付けられており、回転軸6の始端側は、支持体20に取り付けられた駆動装置21にカップリング22を介して連結している。回転軸6の終端側は、支持体20aに取り付けられたベアリング24に回転可能に取り付けられている。
【0063】
加工滓除去部8は保持筒3の上部に、加工滓除去部8に組み込まれる透孔3b群を覆うように、加工滓捕集部8aが設けられている。加工滓捕集部8aの上部に連絡する加工滓排出路8bは、外部のバグフィルタ等の吸引部(図示せず)に連結している。この加工滓捕集部8aから透孔3b群を通して吸引することにより、保持筒3内の粒状物2を浮遊させて流動させるとともに、剥離した微細な異物および加工滓8cが保持筒3外へ排出されるように構成されている。加工滓除去部8は空冷により保持筒3内の発熱、蓄熱を防止し、粒状物2の変性、変質等を防止するようにも構成されている。
【0064】
破砕物除去部9は、保持筒3の下部に、破砕物除去部9に組み込まれる透孔3b群を下から覆うように破砕物受け部9aが設けられている。破砕物受け部9aの下部に破砕物排出路9bが外部に連絡しており、表面加工により生じた破砕物9cを、保持筒3の下部から透孔3b群を通して破砕物受け部9aに集め、保持筒3外へ排出するように構成される。
【0065】
製品取出部15は、保持筒3の終端部に連絡する加工物排出路13から排出される表面加工済みの粒状物2を選別部14で選別し、製品粒状物2bとして製品取出部15から取出すように構成されている。選別部14としては異物、不良品などを選別して除去できるものが用いられる。製造装置1の構成材料に鋼材等の磁性材料を用いる場合は、その破片を異物として磁選機により除去することができるようにされている。このほか可視光等の電磁波による選別、篩別、風選などが採用できる。
【0066】
上記のような表面加工粒状物の製造装置1による表面加工粒状物の製造方法は、加工滓除去部8に連絡するバグフィルタのブロア等の吸引部材を駆動して、保持筒3の上部から透孔3bを通して矢印R8方向に吸引する状態で、駆動装置21を駆動して搬送スクリュー18を回転させて原料供給部17から保持筒3の始端部へ原料粒状物2aを供給し、同時に回転加工体4を矢印R1方向に回転させ、透孔3bから矢印R7方向に流入する空気流により粒状物2を浮遊させた状態で表面加工を行う。これにより原料供給部17から供給される粒状物2は、保持筒3の内周面と回転加工体4との間に形成される流路3eに入り、保持筒3の内周面に沿って矢印R6方向に回転移動し、表面加工を受ける。
【0067】
このとき粒状物2の一部は保持筒3に形成された保持部3aに一時的に保持され、反発力により分散する。この状態で回転加工体4が矢印R1方向に回転することにより、加工ユニット4uの粗面形成材4a、4b、4cの周辺部から放射状に突出する加工片4aa、4ba、4caが、保持筒3との間の流路3eで流動する粒状物2と接触して、異物を除去するとともに、粒状物2に表面加工を施し粗面を形成する。回転加工体4が回転するときの流路3eにおける粒状物2の動きは、図3の矢印R4、R5に示すように回転加工体4と保持筒3との間を行き来するが、全体として矢印R6に示すように保持筒3の内周円に沿ったらせん形状になると考えられる。図5の矢印R7は透孔3bからの空気の吸引方向を示すが、図3他では図示が省略されている。
【0068】
上記の操作では粒状物2を浮遊させた状態で回転加工体4を回転させて粒状物2をさらに流動化し、表面加工が施されるため、表層部に不規則で浅く微細な多数の傷が形成される。すなわち粒状物2を浮遊させた状態で回転加工体4を回転させて粒状物2を流動化すると、粒状物2同士または粒状物2と回転加工体4等との摩擦、衝撃、接触抵抗、発熱などが小さい状態で粒状物2と回転加工体4等が接触するため、表層部に不規則で浅く微細な多数の傷を形成して粗面化し、表層部の破壊性、透水性、浸潤性などの原料粒状物とは異なる表面特性を付与することができる。
【0069】
特に加工ユニット4uの粗面形成材4a、4b、4cの周辺部から放射状に突出する加工片4aa、4ba、4caは、回転前方の面が凸になるように回転後方に向けて湾曲して伸びるものが採用されているので、粒状物2への衝撃を軽減、分散して均一化できる。このように粒状物2への衝撃を軽減、分散して均一化できる加工片4aa、4ba、4caを有する回転加工体4を、保持筒3内で浮遊して流動する粒状物2と接触するように回転させると、回転加工体4の回転に対する抵抗は小さく、粒状物2の破砕や表層部の剥離が防止され、表層部に不規則に形成される傷はさらに微細になる。
【0070】
回転加工体4の加工ユニット4uの複数の粗面形成材4a、4b、4cのうち中間の粗面形成材4bは周辺部の高さの低いものが積層され、回転加工体4の周辺部に段差が形成されているので、麦など溝等の異形部分を有する粒状物2の一部が上記段差に嵌まり込んだ場合、両側の高さの高い粗面形成材4a、4cの加工片4aa、4caのエッジ部が粒状物2の溝等の異形部分に接触して異物の除去や表面加工が容易に行われる。溝等の異形部分がない玄米などの場合は、高さの低い粗面形成材4bは省略してもよく、加工片4baがないスペーサに置き換えてもよい。
【0071】
保持筒3と回転加工体4間の流路3eを移動する粒状物2は、図5に示すように放出分散材4dの溜め部4dbに入り、基部4dcから放射状に伸びる放出片4daにより保持筒3の内周面に向けて矢印R10方向に放出され分散する。保持筒3と回転加工体4間の流路3eを移動する粒状物2は、粗面形成材4a、4b、4cに接触する領域では矢印R6に沿った層流になりやすいが、放出分散材4dにより矢印R10方向に放出分散され、混合流になる。各加工ユニット4uでこれらの操作が繰り返され、これにより粒状物2は均一化して流動状態が保たれる。
【0072】
加工ユニット4u内または外に設けられたせき部材5により保持筒3内周部に沿った粒状物の流れが制御され、粒状物2の滞留時間が長くなるとともに、流路3eを通る粒状物2の流量が抑制され、表面加工が均一化する。せき部材5が外周部に形成された山部5aと谷部5bの組合せからなる場合は、山部5aで粒状物2の流れが制御され、谷部5bから粒状物2が移動する。せき部材5が円形の場合は全周で、楕円形の場合は長径の部分で粒状物の流れが制御される。
【0073】
回転加工体4を構成する各部材が、回転方向R1、軸方向R2、揺動方向R3および/またはその他の方向に揺動または摺動できるように回転軸6に緩やかに取り付けられているため、回転加工体4を構成する各部が粒状物2に当たるときの衝撃がさらに緩和される。これにより粒状物2の破壊、表層部の剥離が防止されるので、表面加工時に浅く微細な傷を形成して粗面化することができる。
【0074】
保持筒3は筒径調節材7、7aの結束部7dを外部から操作して筒径を変化させると、保持筒3の内側に形成される粒状物2の流路3eの大きさを調整することができ、これにより粒状物2の表面加工率を調節することができる。保持筒3は複数の多孔板3c、3dで構成されているので、接合面を重ねて接合する部分を可変にすることにより、保持筒3の大きさを調整することが容易になる。
【0075】
加工滓除去部8では、保持筒3の上部から透孔3bを通して吸引することにより、粒状物2を浮遊させるとともに、微細な異物および加工滓8cが加工滓捕集部8aに捕集されて保持筒3外へ排出され、バグフィルタ等により捕集される。これにより加工滓8cの粒状物2への再付着を防止するほか、発熱、蓄熱なども防止することができる。このときの空気の流れは、図5の矢印R7に示すように、透孔3bを通して保持筒3内に入るが、粗面形成材4a、4b、4cの部分では図3の矢印R6に示すように流れ、放出分散材4dの部分では図5の矢印R6、R10、R8に示すように流れる。
【0076】
破砕物除去部9では、表面加工により生じた破砕物9cが、重質の異物、粒状物2の欠損組織などとともに、保持筒3の下部から透孔3bを通して破砕物受け部9aに集められ、破砕物排出路9bから矢印R9の方向に保持筒3の外へ排出される。
【0077】
製品取出部15では保持筒3の終端部から取出される表面加工済みの粒状物2を選別部14において選別し、異物や不良品を除去して、製品粒状物2bとして取出す。製造装置1の構成材料、特に保持筒3および回転加工体4の構成材料として鋼材等の磁性材料を用いる場合は、その破片が粒状物2に混入しても選別部14において磁選により除去される。小石、プラスチック等の他の異物は、可視光その他の電磁波、重力等により除去される。
【0078】
このようにして製造された製品粒状物2bは、原料粒状物2aの有用物が変性、変質あるいは実質的に除去されることなく、粒状物2の表面に付着した異物が除去されるとともに表面特性が改善され、粒状物2の表面に原料粒状物2aとは異なる表面特性が付与された表面加工粒状物である。このような製品粒状物2bは、粒状物2の表面に付着した土壌、細菌などの異物が除去されるとともに、粒状物2の表面に不規則で微細な多数の傷が形成されて粗面化し、表層部の破壊性、透水性、浸潤性などの原料粒状物とは異なる表面特性を付与され、これにより製粉性、調理性、衛生性、栄養性、食感などの特性が改善されている。
【0079】
穀粒などの種子を起源とする粒状食品原料から得られる粒状物2は、難破壊性、難透水性の皮膜層に不規則で微細な多数の傷が形成されて粗面化するので、皮膜層には破壊性、透水性、浸潤性など、原料粒状物2aとは異なる表面特性が付与され、これにより製粉性、調理性、衛生性、栄養性、食感などの特性が改善された粒状物となっている。表面加工玄米の場合、原料玄米の皮膜層、糊粉層、胚芽などの有用物は除去されず、外観も原料玄米に似ているが、吸水性は高く、短時間の浸漬により調理可能である。また皮膜層の多数の微細傷が炊飯による胚乳部の膨圧増加により拡大して広範な亀裂を生じることにより、摂食時に粗大な皮膜層画分が歯に当たることが軽減され、食感も白米の炊飯物に近い。また、そば丸抜きをそば米として調理する場合も、皮膜層の粗面化により吸水性および食感の向上を図ることができる。
麦類、そばなどのように、調理に先立って製粉する場合、難破壊性の皮膜層は、皮膜層に形成された微細な傷により製粉工程において微粉砕化されるため胚乳などの他の部分の粉砕物中に分散して均質な粉砕物となり、製パン性、製麺性などの加工特性を向上させることが可能となる。
【0080】
このような表面加工粒状物の加工品は、上記表面加工粒状物が製粉、調理などの2次加工により得られる加工品である。このような加工品は、表面加工粒状物に付与された原料粒状物にない特性が、2次加工によって新たな特性として具現したものである。2次加工が製粉の場合、表層部が微細に粉砕されて分散する粉製品が得られ、また2次加工が調理である場合、分散性、吸水性、調理性などの改善により、風味、食感等に優れた加工品が得られる。加熱されていない表面加工粒状物では、2次加工の浸漬などで酵素類によりγ-アミノ酪酸などの生理活性物質が富化され、調理品に新たな付加価値を賦与できる。
【実施例
【0081】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0082】
〔実施例1〕
本発明の表面加工処理は、原料粒状物2aの表層部に不規則で微細な傷を形成して粗面化することを特徴としている。そこで、図1ないし図9の装置を用いて表面加工した富山産コシヒカリの表面加工玄米(搗精歩留99.8%)および未処理の原料玄米の外観形質を、実体顕微鏡を用いて比較検討した。結果を図10に示す。
図10Aの低倍率の顕微画像では、表面加工玄米(A)の頂部右側の胚芽(矢印)は残存しており、腹側(右側面)、背側(左側面)の組織において欠損などの明らかな損傷は確認できず、図10Bの原料玄米(B)とほぼ同一の外観形質であり、表面加工玄米と原料玄米の肉眼での識別は困難であった。
図10ALの高倍率の顕微画像では、表面加工玄米(AL)の表層部に矢印で示す微細傷が認められるが、図10BLの原料玄米表層部(BL)には認められなかった。図10ALおよび図10BL中のスケールは、0.5mmを示している。これらの微細傷により表面加工玄米は咀嚼しやすくなるため、食感が向上すると考えられる。また、表層部の微細傷は吸水性を向上させ、炊飯時の浸漬時間短縮を可能にすると考えられる。
【0083】
各種米穀の外観形質を分光反射率により評価するために、図1ないし図9の装置を用いて表面加工した表面加工玄米(搗精歩留り99.8%)、原料玄米、肌ずれ玄米および精米施設で製造した白米(搗精歩留り90.8%)を白度計で分析した。白度計は青色光(440nm)による反射率測定(45度)、白色および黒色標準板による等分割計測で行った(JISZ8722準拠、ケット科学研究所白度計C-300)。結果を表1に示す。
表1の分析結果では、表面加工玄米(21.5%)と未処理の原料玄米(21.4%)の白度はほぼ等しく、目視による識別も困難であった。しかし、収穫、乾燥時の調整不良などにより発生し、品質劣化が問題となる肌ずれ玄米の白度(23.9%)は表面加工玄米より高く、目視により識別が可能であった。なお、日本工業規格による白米の白度基準は40%(搗精歩留り約90%)であるが、分析に供した白米は41.5%であった。
【0084】
表1 表面加工玄米、原料玄米、肌ずれ玄米および白米の白度
【表1】
【0085】
表2に表面加工玄米(搗精歩留り99.8%)および未処理の原料玄米中の栄養成分、食物繊維および細菌検査の結果を示す。分析は、財団法人日本食品分析センターに依頼して行った。供試した表面加工玄米および原料玄米の水分含量はそれぞれ14.7%および14.6%であったため、栄養成分は乾物換算(mg/100g)、食物繊維は乾物換算(g/100g)で比較した。ビタミンEは、α-トコフェロールおよびγ-トコフェロールで表示した。
表2の表面加工玄米と原料玄米の栄養成分の分析結果では、ビタミンB、ビタミンB、パントテン酸の分析値は等しく、α-トコフェロールおよびナイアシンは表面加工玄米でわずかに高い傾向が認められた。これらの成分は主に胚芽、糊粉層に局在しているため、分析値がほぼ一致していることは、原料玄米からこれらの組織が除去されずに表面加工玄米に保持されていると考えられる。胚芽や糊粉層が保持されている表面加工玄米中のγ-オリザノール含量(42.2mg/100g)は、高い値を示した。表面加工玄米の不溶性食物繊維(3.0g)と水溶性食物繊維(1.1g)の比率は3:1で、両者の合計は原料玄米とほぼ同一であった。不溶性食物繊維量は、原料玄米(3.4g)に比べ12%の減少率であった。これは、不溶性食物繊維含量が高い表層部に微細傷をつけて一部を除去したことに起因する可能性があると考えられる。細菌検査に関しては、表面加工玄米の一般細菌数は8.2×10/gで原料玄米より低く、表面加工処理により表層部に付着していた微生物の一部が加工滓とともに吸引除去されたと考えられる。
【0086】
表2 表面加工玄米および原料玄米の各種栄養成分、食物繊維および細菌数
【表2】
【0087】
表面加工玄米(搗精歩留り99.8%)、原料玄米および白米(搗精歩留り90.5%)の浸漬吸水試験を行うために、前処理として各試料を20℃、相対湿度70%の条件で1週間静置して水分調整を行った。供試した原料玄米、表面加工玄米および白米の水分含量は、それぞれ14.9、14.9、15.0%であった(AACC Method 44-19準拠)。次に、各試料を20℃の逆浸透水に浸漬し、吸水率の経時変化を調べた。浸漬した試料は1,054×gで5分間脱水後、重量を測定して吸水量を計測した(第3回改正国税庁所定分析法注解第3版 財団法人日本醸造協会編準拠、1987)。結果を図11に示す。
図11の浸漬吸水試験の結果では、浸漬開始後60分における吸水率は、表面加工玄米が9.8%、原料玄米が6.7%、白米が19.9%で、表面加工玄米の吸水率は原料玄米の1.46倍であった。白米の吸水率は、60分でほぼ上限に達した。表面加工玄米は240分で吸水率が19.3%に達したが、未処理の玄米は360分経過しても17.6%であった。室温における白米(加水量約150%)の浸漬時間は30分から60分、未処理の原料玄米(加水量約180%)の浸漬時間は、360分以上が望ましいとされている。表面加工玄米(加水量約180%)は、浸漬60分後に吸水率が約10%に達して炊飯可能となるが、これは、表層部に形成された微細傷(図1)による吸水性の高さに起因するものと考えられる。
【0088】
玄米は、発芽時に胚芽などのグルタミン酸脱炭酸酵素によってγ-アミノ酪酸を産生する。本実施例1の表面加工技術は、酵素活性を損なうような高温処理が行われていないため、炊飯時の浸漬工程でγ-アミノ酪酸含量が富化する可能性がある。そこで、コシヒカリの表面加工玄米(搗精歩留り99.8%)、未処理の玄米および白米(搗精歩留り90.8%)を室温下(23℃)で水に浸漬し、γ-アミノ酪酸の富化について比較検討した。浸漬試験およびアミノ酸自動分析装置による分析は財団法人日本食品分析センターに依頼して行った。γ-アミノ酪酸含量の分析結果を表3に示す。
【0089】
表3において、供試試料の浸漬後の水分含量が異なるため、γ-アミノ酪酸含量は乾物量(mg/100g)に換算して比較した。胚芽などを有する表面加工玄米および原料玄米のγ-アミノ酪酸含量は、精米工程で胚芽が除去された白米の含量の3~5倍の高い値を示した。表面加工玄米は吸水性が高く60分の浸漬時間で炊飯ができるため、浸漬60分のγ-アミノ酪酸含量を分析した結果、表面加工玄米および原料玄米では約16mg/100gに増加していた。また、一般家庭では、玄米を360分以上の浸漬で炊飯する場合が多いため、浸漬360分のγ-アミノ酪酸含量についても分析したが表面加工玄米および原料玄米ではやや低下し、浸漬60分でほぼ上限に達したと考えられる。浸漬360分の白米中のγ-アミノ酪酸は1.6mg/100gで浸漬前と殆ど変わらない低い値を示した。本発明のように酵素活性を損なわずに穀類の吸水率を高めると、2次加工の炊飯調理において白米と同じように60分の短い浸漬時間でγ-アミノ酪酸のような有用成分を摂取することが可能となる。
【0090】
表3 表面加工玄米および白米のγ-アミノ酪酸含量
【表3】
【0091】
本実施例では、表面加工処理は乾式条件下で行われ、生じた加工滓は保持筒外部に吸引除去され、表面加工粒状物表面への付着残存が防止されている。そこで、製造した表面加工玄米、原料玄米、無洗米および白米をそれぞれ洗米して濁度を測定し、加工滓の付着残存について検討した。試験洗米法は、全国無洗米協会および米穀公正取引推進協議会方式(旧食糧庁方式)に従い、濁度測定はディジタル濁度計(野田通信株式会社 M204)で日本工業規格(JIS K0101工業用水試験方法)に準拠して行った。この濁度計では、濁度は「ppm」で表示されるが、これはJIS K0101における「mg/L」または「度」に相当する。結果を表4に示す。
表4に示した表面加工玄米(搗精歩留り99.8%)、未処理の原料玄米、無洗白米および白米(搗精歩留り90.8%)の洗米水中の濁度測定の結果では、表面加工玄米の濁度は4.4ppmで洗米が不要とされている無洗米の濁度のわずか21%という低い値であった。一般的に数回の研米が行われる白米の濁度は表面加工玄米の約21倍の92ppmであった。なお、全国無洗米協会の無洗米の濁度基準値は28ppmである。
米飯製造などを行う施設では、工場排水に起因する水質汚濁防止の観点から生物化学的酸素要求量(BOD)および化学的酸素要求量(COD)に対する規制がある。表面加工玄米は加工滓などの残存が少ないため、排水基準が適用される米飯工場などにおいて業務用無洗米として利用できることが分かる。
また、本技術で製造した表面加工玄米は吸水率が従来の玄米より高いため(図11)浸漬時間短縮による炊飯工程の効率化および生産性向上を図ることができる。
【0092】
表4 表面加工玄米、原料玄米、無洗米および白米の洗米水の濁度
【表4】
【0093】
本発明により調製した表面加工玄米の栄養成分等に関しては、水分量の異なる風乾物あるいは水浸漬物を供試したため、100g試料中の乾物換算値(水分量0g)で解析を行った(表2)。乾物換算値は栄養成分量の正確な評価に適しているが、食品素材の栄養成分量を比較する目的では、一般的な環境条件における風乾物での表示が実用的である。
そこで、表面加工玄米の栄養成分量を文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」の水分含量(玄米14.9%)に合わせて換算するとともに、炊飯調理器は一般的に1合単位(150g)で調理が行われるため、表面加工玄米150g当たりに含まれる含量に換算して実用的な評価を行った。
また、表面加工玄米の栄養成分の充足率は、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015 年版)」に基づき、対象とする年齢階級は、総務省統計局「人口推計(平成29年8月報)」により、ピークが高い40~49歳女性(人口比率7.4%)とした。γ-アミノ酪酸については、調理前の浸漬で含量が増加するため、一般的な浸漬時間を室温(23℃)1時間として摂取量を計算した。結果を表5に示す。
【0094】
表5の表面加工玄米を一日あたり一合(150g)摂食する場合の40代女性を対象とした栄養素の充足率は、水溶性のビタミンB、ビタミンB、ナイアシンで50%以上の高い値を示し、パントテン酸も約40%であった。脂溶性では、ビタミンEが40%の高い充足率を示していた。食物繊維に関しては、厚生労働省「栄養素摂取量(2015年)」によると40代女性の食物繊維摂取量は13gであり、毎日の摂取基準量18gに対して5g不足している。表面加工玄米一合中の食物繊維量は5.3gであり、不足量を補うことが可能である。γ-オリザノールは視床下部におけるカテコールアミン代謝に関与する中枢抑制作用を有するため更年期障害などの心身症に有効とされているが、表面加工玄米を毎日一合摂食すると約54mgのγ-オリザノールが消化に伴い緩やかに体内に移行し、中枢神経系に抑制作用を及ぼすことが期待できる。
γ-アミノ酪酸は、1時間浸漬後の表面加工玄米中(一合)に約20mg含まれている。γ-アミノ酪酸は抑制性の神経伝達物質として知られているが、脳血流関門を通過できないため脳内で直接生理活性を発現できないとされている。しかし、食道から肛門にいたる消化器官に内在する腸管神経系は脳の中枢神経系と協調していることより、表面加工玄米の消化に伴い放出されるγ-アミノ酪酸が腸管神経系などを介して影響を及ぼすことが考えられる。γ-アミノ酪酸を高濃度で含む食品としては発芽玄米が市販されているが、発芽玄米は白米に30%程度添加されて調理される場合が多いため、炊飯米中のγ-アミノ酪酸濃度は低下する。本発明の表面加工玄米は、白米などが添加されずに調理されることが多いためγ-アミノ酪酸濃度が高い炊飯米を摂食することが可能である。
本実施例により調製された表面加工玄米は、外層に僅かな擦過傷を有する粗面構造の形成により、炊飯における浸漬時間が無処理の原料玄米と比べ大きく短縮され、食感も向上した。また、表面加工玄米は栄養成分が局在する胚芽、糊粉層を保持した状態で摂食できるため、不足しがちなビタミン類、食物繊維などの栄養成分の供給源として有用であるとともに、神経系に抑制作用を及ぼすとされているγ-オリザノール、γ-アミノ酪酸を消化に伴い緩やかに摂取できることより、更年期障害などの心身症に対する作用が期待できる。
果皮部や糊粉層を有する表面加工玄米の炊飯米は白米の炊飯米に比べわずかに硬く、咀嚼回数が増加する傾向がある。摂食時の咀嚼回数の増加は、さまざまな生理機能を亢進させるため、表面加工玄米の摂食は健康増進に寄与することが期待できる。
【0095】
表5 表面加工玄米一合中の栄養成分および40代女性の食事摂取基準に対する充足率
【表5】
【0096】
以上の結果より、従来の精米技術では、搗精歩留り98%以上(2分搗き以下)の均質化された分搗き精米の調製は困難とされていたが、本発明の表面加工技術により、原料粒状物からの加工滓量を0.1%単位で制御できる精密精米が可能となり、製造された表面加工粒状物には原料粒状物とは異なる調理性、衛生性、栄養性、表面特性が付与されることが分かる。
【0097】
〔実施例2〕
本発明の表面加工技術は、うるち米、もち米などの各種玄米の外、パン小麦、麺用小麦、もち性裸麦、大麦、ライ麦などの麦類、そばなどの各種穀粒の表面に微細傷を形成することができる。製粉前処理として表面加工処理を行った後に製造した全粒粉の品質を解析するため、臼式製粉装置で小麦全粒粉を調製し、粒径分布をレーザー回折粒度分布計(ベックマンLS13320)で測定した。表面加工処理の加工滓量は、原料小麦(ゆめかおり)の0.5%に調整した。結果を図12および表6に示す。
図12Aは、表面加工処理を行った後に製粉した小麦全粒粉(A)の、図12Bは、未処理の原麦を製粉した小麦全粒粉(B)の粒径分布図である。表6の下段には、レーザー回折粒度分布計により計測された平均粒径および減少率が示されている。図12Aの表面加工処理を行った後に製造した小麦全粒粉の平均粒径は0.159mm、胚乳部の微細画分のピーク(a)は0.024mmであった。図12Bの表面加工処理を行わなかった小麦全粒粉の平均粒径は0.174mmで、胚乳部の微細画分のピーク(b)は0.029mmであった。小麦全粒粉の平均粒径は、表面加工処理により8.6%減少し、表面加工処理により平均粒径が低減した。微細画分のピークは、表面加工処理を行った小麦全粒粉が未処理の全粒粉より高い値を示した。
【0098】
表面加工処理後の製粉では平均粒径の低減が示されたが、レーザー回折粒度分布計は粒状のガーネット標準粒子などで校正を行うため、扁平なふすま画分を多く含む全粒粉の平均粒径測定は誤差を生じやすい。そこで、食品製造現場で用いられている篩別法を用いて表面加工技術が小麦の製粉性に及ぼす影響を検討した。分析は、開口径0.710mmの篩(JIS8801)を用いて小麦全粒粉を振とう分別し、篩上に残留したふすま画分を多く含む残渣の重量を計測して行った。結果を表6の上段に示す。
【0099】
表6の上段には、原麦を表面加工処理後に臼式製粉装置で調製した小麦全粒粉と表面加工未処理の原麦から調製した小麦全粒粉の篩残渣量および表面加工処理による減少率が示されている。表6の下段には、前述のレーザー回折粒度分布計による平均粒径の測定値および表面加工処理による減少率が示されている。表6から、表面加工処理後に製粉した小麦全粒粉の篩残渣量(0.65%)は、未処理原麦から調製した全粒粉の篩残渣量(0.85%)に比べ23.5%低下しており、製粉前処理技術として用いた表面加工処理による全粒粉の高品質化が認められた。
前述の通り、レーザー回折粒度分布計による平均粒径の計測では、表面加工処理後に製粉した小麦全粒粉の平均粒径が8.6%減少していたが、表面加工処理による全粒粉では、上記篩残渣量の減少率の結果より、小麦全粒粉の粗大なふすま画分が粉砕されて小粒径画分が増加することにより、平均粒径が減少したものと考えられる。
小麦全粒粉の粗大なふすま画分は、グルテンマトリックスの薄膜を切断し、保持された炭酸ガスなどを漏出させて製パン時の窯のびに悪影響を及ぼすとされている。また、麺製造においては、麺切れや落麺の原因となる。小麦全粒粉の製造前処理として表面加工処理を原麦に施すことは粗大なふすま画分の低減効果をもたらし、製パン性、製麺性などの加工特性の向上に寄与すると考えられる。
【0100】
表6 表面加工処理が小麦全粒粉の篩残渣および平均粒径に及ぼす影響
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、植物の種子を起源とする粒状食品原料その他の粒状物の表面に付着した異物を除去し、粗面形成などの表面加工を施し、有用物を変性、変質あるいは実質的に除去することなく、原料粒状物とは異なる表面特性を有する表面加工粒状物を製造する装置、製造方法、得られる表面加工粒状物、およびその2次加工品に利用可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 製造装置、 2 粒状物、 2a 原料粒状物、 2b 製品粒状物、 3 保持筒、 3a 保持部、 3b 透孔、 3c 、3d 多孔板、 3e 流路、 4 回転加工体、 4a、4b、4c 粗面形成材、 4aa、4ba、4ca 加工片、 4ab、4bb、4cb 板状体、 4d 放出分散材、 4da 放出片、 4db 溜め部、 4dc 基部、 4u 加工ユニット、 5 せき部材、 5a 山部、 5b 谷部、 6 回転軸、 7、7a 筒径調節材、 7b、7c 軸心保持材、 7d 結束部、 8 加工滓除去部、 8a 加工滓捕集部、 8b 加工滓排出路、 8c 加工滓、 9 破砕物除去部、 9a 破砕物受け部、 9b 破砕物排出路、 9c 破砕物、 11 係合部、 11a キー、 11b 溝、 12 隙間、 13 加工物排出路、 14 選別部、 15 製品取出部、 16 固定具、 17 原料供給部、 17a 搬送筒、17b 整粒プレート、 18 搬送スクリュー、 19、19a 保持部材、 20、20a 支持体、 21 駆動装置、 22 カップリング、 23 末端固定具、 24 ベアリング。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12