(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】情報処理装置及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/06 20230101AFI20230828BHJP
G06Q 30/0201 20230101ALI20230828BHJP
G06T 7/20 20170101ALI20230828BHJP
【FI】
G06Q30/06
G06Q30/0201
G06T7/20 300Z
(21)【出願番号】P 2019088295
(22)【出願日】2019-05-08
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】317016246
【氏名又は名称】株式会社オレンジテクラボ
(74)【代理人】
【識別番号】100115129
【氏名又は名称】清水 昇
(72)【発明者】
【氏名】吉田 尚史
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 淳
【審査官】谷川 智秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-114950(JP,A)
【文献】特開2013-206242(JP,A)
【文献】特開2019-028509(JP,A)
【文献】国際公開第2015/033577(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/033576(WO,A1)
【文献】特開2004-054376(JP,A)
【文献】特開2016-045654(JP,A)
【文献】特開2000-099827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G06T 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
店舗内の人を撮影した画像から、該人の部位をベクトル表現したワイヤーフレームデータに変換
することによって該人の匿名化を行うワイヤーフレーム変換手段と、
前記ワイヤーフレームデータを用いて、前記人の部位の移動を表現した人移動軌跡データを生成する生成手段と、
商品を撮影した画像から抽出された該商品の移動軌跡を表現した商品移動軌跡データを生成する第2の生成手段と、
前記人移動軌跡データ
が予め定められた行動のパターンデータ
に該当するか否かを判断し、判断結果を前記人の行動
の分析結果とする分析手段と、
前記分析手段による分析結果を通知する通知手段
を有
し、
前記行動のパターンデータは、グループに属する複数人が商品に対して行った行動を示すパターンデータであり、
前記分析手段は、グループに属する人を推定し、該グループ内の複数人の前記人移動軌跡データと前記商品移動軌跡データとが、前記パターンデータに該当するか否かを判断し、
前記分析手段は、グループに属する人を推定するにあたって、(1)人と人との間の距離を算出し、予め定められた距離内にいる人達の口が交互に開いている場合は、その人達をグループと推定すること、又は、(2)一方の人から他方の人へ、商品が渡された場合は、その人達をグループと推定することを行う、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
人を撮影した画像から、該人の顔を認識する認識手段
をさらに有し、
前記生成手段は、前記認識手段による認識結果を用いて、同一人物の人移動軌跡データを生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記認識手段による認識結果は、前記生成手段による人移動軌跡データの生成のみに用い、
前記認識手段による認識結果を、前記人が店舗を退出した場合に削除する、
請求項
2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
コンピュータを、
店舗内の人を撮影した画像から、該人の部位をベクトル表現したワイヤーフレームデータに変換
することによって該人の匿名化を行うワイヤーフレーム変換手段と、
前記ワイヤーフレームデータを用いて、前記人の部位の移動を表現した人移動軌跡データを生成する生成手段と、
商品を撮影した画像から抽出された該商品の移動軌跡を表現した商品移動軌跡データを生成する第2の生成手段と、
前記人移動軌跡データ
が予め定められた行動のパターンデータ
に該当するか否かを判断し、判断結果を前記人の行動
の分析結果とする分析手段と、
前記分析手段による分析結果を通知する通知手段
として機能させ
、
前記行動のパターンデータは、グループに属する複数人が商品に対して行った行動を示すパターンデータであり、
前記分析手段は、グループに属する人を推定し、該グループ内の複数人の前記人移動軌跡データと前記商品移動軌跡データとが、前記パターンデータに該当するか否かを判断し、
前記分析手段は、グループに属する人を推定するにあたって、(1)人と人との間の距離を算出し、予め定められた距離内にいる人達の口が交互に開いている場合は、その人達をグループと推定すること、又は、(2)一方の人から他方の人へ、商品が渡された場合は、その人達をグループと推定することを行う、
ことを特徴とする情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、レジに並ばずに自動で支払いが完了する店舗が記載されている。
非特許文献2には、スーパーやコンビニ等の小売店で商品棚をスマートフォン等で撮影することでリアルタイムに商品の陳列状況を分析できる商品棚画像認識エンジンが記載されている。
非特許文献3には、顔画像等の認識技術が記載されている。
非特許文献4には、事業者が、カメラ画像の利活用に際し、生活者に対して、プライバシー保護の観点から配慮が必要な項目が記載されている。
非特許文献5には、パーソナルデータの匿名化が重要であることが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】What is Amazon Go, where is it, and how does it work?, https://www.pocket-lint.com/phones/news/amazon/139650-what-is-amazon-go-where-is-it-and-how-does-it-work
【文献】NTTドコモ,商品棚画像認識エンジンを開発-ドコモのAI技術により、商品棚の配置状況が一目でわかる-, https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2018/03/01_01.html
【文献】MathWorks, 画像認識, https://jp.mathworks.com/discovery/image-recognition.html
【文献】経済産業省,カメラ画像利活用 ガイドブック,http://www.meti.go.jp/press/2016/01/20170131002/20170131002-1.pdf
【文献】国立情報学研究所,パーソナルデータ利活用(NII Today),https://www.nii.ac.jp/userdata/results/pr_data/NII_Today/63/p8-9.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人の画像が撮影された画像、例えば、店舗内の顧客を撮影し、マーケティングデータを取得することが行われている。
しかし、人が撮影された画像はパーソナルデータであり、その画像を用いるためには、個人情報保護法の遵守、生活者のプライバシーに配慮する必要があることから、匿名化処理を施す必要がある。例えば、カメラ画像にモザイク処理等を施し、特定の個人が識別できないように加工することが必要である。
本発明は、人を撮影して、その人の行動を分析するにあたって、特定の個人が識別できないようにしたワイヤーフレームデータを用いるようにした情報処理装置及び情報処理プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。なお、以下の「請求項」とあるのは、出願当初の請求項である。
請求項1の発明は、人を撮影した画像から、該人の部位をベクトル表現したワイヤーフレームデータに変換し、該人の匿名化を行うワイヤーフレーム変換手段と、前記ワイヤーフレームデータを用いて、前記人の部位の移動を表現した人移動軌跡データを生成する生成手段と、前記人移動軌跡データと予め定められた行動のパターンデータを用いて、前記人の行動を分析する分析手段と、前記分析手段による分析結果を通知する通知手段を有することを特徴とする情報処理装置である。
【0006】
請求項2の発明は、前記画像は、店舗内の人を撮影した画像であり、商品を撮影した画像から抽出された該商品の移動軌跡を表現した商品移動軌跡データを生成する第2の生成手段をさらに有し、前記行動のパターンデータは、人が商品に対して行った行動を示すパターンデータであり、前記分析手段は、前記人移動軌跡データと前記商品移動軌跡データから、前記パターンデータに該当するか否かを判断する、請求項1に記載の情報処理装置である。
【0007】
請求項3の発明は、前記行動のパターンデータは、グループに属する複数人が商品に対して行った行動を示すパターンデータであり、前記分析手段は、グループに属する人を推定し、該グループ内の複数人の前記人移動軌跡データと前記商品移動軌跡データから、前記パターンデータに該当するか否かを判断する、請求項2に記載の情報処理装置である。
【0008】
請求項4の発明は、人を撮影した画像から、該人の顔を認識する認識手段をさらに有し、前記生成手段は、前記認識手段による認識結果を用いて、同一人物の人移動軌跡データを生成する、請求項1に記載の情報処理装置である。
【0009】
請求項5の発明は、前記認識手段による認識結果は、前記生成手段による人移動軌跡データの生成のみに用い、前記認識手段による認識結果を、前記人が店舗を退出した場合に削除する、請求項4に記載の情報処理装置である。
【0010】
請求項6の発明は、画像を撮影する撮影手段と、前記撮影手段によって撮影された画像から、人の部位をベクトル表現したワイヤーフレームデータに変換する変換手段と、前記撮影手段によって撮影された画像の代わりに、前記変換手段によって変換されたワイヤーフレームデータを出力する出力手段を有することを特徴とする画像撮影装置である。
【0011】
請求項7の発明は、コンピュータを、人を撮影した画像から、該人の部位をベクトル表現したワイヤーフレームデータに変換し、該人の匿名化を行うワイヤーフレーム変換手段と、前記ワイヤーフレームデータを用いて、前記人の部位の移動を表現した人移動軌跡データを生成する生成手段と、前記人移動軌跡データと予め定められた行動のパターンデータを用いて、前記人の行動を分析する分析手段と、前記分析手段による分析結果を通知する通知手段として機能させることを特徴とする情報処理プログラムである。
【0012】
請求項8の発明は、画像を撮影する撮影手段を有するコンピュータを、前記撮影手段によって撮影された画像から、人の部位をベクトル表現したワイヤーフレームデータに変換する変換手段と、前記撮影手段によって撮影された画像の代わりに、前記変換手段によって変換されたワイヤーフレームデータを出力する出力手段として機能させることを特徴とする画像撮影プログラムである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の情報処理装置によれば、人を撮影して、その人の行動を分析するにあたって、特定の個人が識別できないようにしたワイヤーフレームデータを用いることができる。
【0014】
請求項2の情報処理装置によれば、店舗内の人を撮影して、その人が商品に対して行った行動を分析することができる。
【0015】
請求項3の情報処理装置によれば、グループに属する複数人が商品に対して行った行動を分析することができる。
【0016】
請求項4の情報処理装置によれば、顔認識を用いない場合に比べて、より正確な人移動軌跡データを生成することができる。
【0017】
請求項5の情報処理装置によれば、顔認識結果は、人移動軌跡データの生成以外には用いないようにすることができる。
【0018】
請求項6の画像撮影装置によれば、画像ではなく、特定の個人が識別できないようにしたワイヤーフレームデータを出力することができる。
【0019】
請求項7の情報処理プログラムによれば、人を撮影して、その人の行動を分析するにあたって、特定の個人が識別できないようにしたワイヤーフレームデータを用いることができる。
【0020】
請求項8の画像撮影プログラムによれば、画像ではなく、特定の個人が識別できないようにしたワイヤーフレームデータを出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1の実施の形態の構成例(1)についての概念的なモジュール構成図である。
【
図2】第1の実施の形態の構成例(2)についての概念的なモジュール構成図である。
【
図3】第1の実施の形態の構成例(3)についての概念的なモジュール構成図である。
【
図4】本実施の形態の構成を店舗内に設置した場合の例を示す説明図である。
【
図5】本実施の形態のモデルの構成例を示す説明図である。
【
図6】第1の実施の形態による処理例を示すフローチャートである。
【
図7】人部位移動軌跡テーブルのデータ構造例を示す説明図である。
【
図8】第1の実施の形態による処理例を示すフローチャートである。
【
図9】商品移動軌跡テーブルのデータ構造例を示す説明図である。
【
図10】第1の実施の形態による処理例を示すフローチャートである。
【
図11】グループを推定する処理例を示す説明図である。
【
図12】通知のユーザーインタフェース例を示す説明図である。
【
図13】第2の実施の形態の構成例についての概念的なモジュール構成図である。
【
図14】第2の実施の形態による処理例を示すフローチャートである。
【
図15】顔移動軌跡テーブルのデータ構造例を示す説明図である。
【
図16】第2の実施の形態による処理例を示すフローチャートである。
【
図17】本実施の形態を実現するコンピュータのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づき本発明を実現するにあたっての好適な各種の実施の形態の例を説明する。
<第1の実施の形態>
図1は、第1の実施の形態の構成例(1)についての概念的なモジュール構成図を示している。
なお、モジュールとは、一般的に論理的に分離可能なソフトウェア(コンピュータ・プログラム)、ハードウェア等の部品を指す。したがって、本実施の形態におけるモジュールはコンピュータ・プログラムにおけるモジュールのことだけでなく、ハードウェア構成におけるモジュールも指す。それゆえ、本実施の形態は、それらのモジュールとして機能させるためのコンピュータ・プログラム(コンピュータにそれぞれの手順を実行させるためのプログラム、コンピュータをそれぞれの手段として機能させるためのプログラム、コンピュータにそれぞれの機能を実現させるためのプログラム)、システム及び方法の説明をも兼ねている。ただし、説明の都合上、「記憶する」、「記憶させる」、これらと同等の文言を用いるが、これらの文言は、実施の形態がコンピュータ・プログラムの場合は、記憶装置に記憶させる、又は記憶装置に記憶させるように制御するという意味である。また、モジュールは機能に一対一に対応していてもよいが、実装においては、1モジュールを1プログラムで構成してもよいし、複数モジュールを1プログラムで構成してもよく、逆に1モジュールを複数プログラムで構成してもよい。また、複数モジュールは1コンピュータによって実行されてもよいし、分散又は並列環境におけるコンピュータによって1モジュールが複数コンピュータで実行されてもよい。なお、1つのモジュールに他のモジュールが含まれていてもよい。また、以下、「接続」とは物理的な接続の他、論理的な接続(データの授受、指示、データ間の参照関係、ログイン等)の場合にも用いる。「予め定められた」とは、対象としている処理の前に定まっていることをいい、本実施の形態による処理が始まる前はもちろんのこと、本実施の形態による処理が始まった後であっても、対象としている処理の前であれば、そのときの状況・状態にしたがって、又はそれまでの状況・状態にしたがって定まることの意を含めて用いる。「予め定められた値」が複数ある場合は、それぞれ異なった値であってもよいし、2以上の値(もちろんのことながら、全ての値も含む)が同じであってもよい。また、「Aである場合、Bをする」という記載は、「Aであるか否かを判断し、Aであると判断した場合はBをする」の意味で用いる。ただし、Aであるか否かの判断が不要である場合を除く。また、「A、B、C」等のように事物を列挙した場合は、断りがない限り例示列挙であり、その1つのみを選んでいる場合(例えば、Aのみ)を含む。
また、システム又は装置とは、複数のコンピュータ、ハードウェア、装置等がネットワーク(一対一対応の通信接続を含む)等の通信手段で接続されて構成されるほか、1つのコンピュータ、ハードウェア、装置等によって実現される場合も含まれる。「装置」と「システム」とは、互いに同義の用語として用いる。もちろんのことながら、「システム」には、人為的な取り決めである社会的な「仕組み」(社会システム)にすぎないものは含まない。
また、各モジュールによる処理毎に又はモジュール内で複数の処理を行う場合はその処理毎に、対象となる情報を記憶装置から読み込み、その処理を行った後に、処理結果を記憶装置に書き出すものである。したがって、処理前の記憶装置からの読み込み、処理後の記憶装置への書き出しについては、説明を省略する場合がある。なお、ここでの記憶装置としては、ハードディスクドライブ、RAM(Random Access Memoryの略)、外部記憶媒体、通信回線を介した記憶装置、CPU(Central Processing Unitの略)内のレジスタ等を含んでいてもよい。
【0023】
第1の実施の形態である情報処理装置100、撮影装置150は、人を撮影して、その人の行動を分析する機能を有している。
本実施の形態では、例えば、人の動作のワイヤーフレームモデルを対象とした複数カメラによる匿名化マーケティング行動検出を行う。具体例として、小売店(スーパーマーケット、コンビニエンスストア等)の店舗に複数のカメラを設置し、そのカメラから、人体の3次元ワイヤーフレームを取得することにより、匿名化の行動分析を行う。さらに、商品の移動軌跡と組み合わせることによって、棚から一度手にとった商品を棚にすぐ返す行動の軌跡、および、多数の人の候補から物理的距離の近い数人を同一グループとしてグループ化し、そのグループがレジスタで会計をするまでの軌跡を、マーケティングデータとして提供する。ここでグループとして、例えば、家族、友人、恋人等が該当する。
なお、小売店の店舗に限らず、カメラに撮影された人の匿名化を行った上で、行動の分析を行う場合に適用できる。例えば、スポーツ用施設(例えば、体育館、サッカー場、野球場等)に、同様の方法で複数カメラを設置し、観客の行動を分析することができるようにしてもよい。以下、主な例示として、小売店の店舗に適用する場合を用いて説明する。
【0024】
情報処理装置100と撮影装置150は、通信回線を介して接続されている。通信回線は、無線、有線、これらの組み合わせであってもよく、例えば、通信インフラとしてのインターネット、イントラネット等であってもよい。また、情報処理装置100による機能は、クラウドサービスとして実現してもよい。
図2で説明するカメラ群155と情報処理装置200との通信回線、
図3で説明するカメラ群355と情報処理装置100との通信回線、
図13で説明する撮影装置1350と情報処理装置1300との通信回線、情報処理装置200、情報処理装置1300の解釈については同様である。
撮影装置150は、情報処理装置100に対して、ワイヤーフレームモジュール165による処理結果であるワイヤーフレームデータ又は人体の部位の移動軌跡データ(以下、人部位移動軌跡データともいう)、商品特定モジュール170による処理結果である商品の移動軌跡データ(以下、商品移動軌跡データともいう)を送信する。
【0025】
撮影装置150は、
図1の例に示すように、カメラ群155、ワイヤーフレームモジュール165、商品特定モジュール170を有しており、情報処理装置100と接続されている。
カメラ群155は、カメラ160A、カメラ160B等を有している。カメラ群155は、複数のカメラ160を有している。
カメラ160(カメラ160A、カメラ160B等)は、人を撮影する。一般的には、動画であるが、予め定められた間隔で撮影した静止画(複数の静止画)であってもよい。カメラ160は施設に設置されている。例えば、小売店の店舗に設置されている場合は、店舗内の人を撮影することになる。カメラ160の具体例として、市販されている単眼カメラ、全天球カメラ(360°カメラ、VRカメラ、全方位カメラともいわれる)等があり、また、既に設置されている既存の防犯カメラ、監視カメラ等をそのまま流用してもよい。
【0026】
ワイヤーフレームモジュール165は、人を撮影した画像(カメラ群155が撮影した画像)から、その人の部位をベクトル表現したワイヤーフレームデータに変換し、その人の匿名化を行う。人の部位としては、関節間の部分が該当し、例えば、頭部、首、肩、胴体、腕(肩から肘までの部分、肘から手までの部分)、手、足(胴体から膝までの部分、膝からくるぶしまでの部分、くるぶしから先の部分)等がある。ワイヤーフレームデータの生成方法として、既に知られている技術を用いればよい。例えば、人体の関節(足、足首、膝、股関節、肘、手首、首等)を検出し、その関節間を結ぶ線をワイヤーフレームとして抽出すればよい。したがって、画像そのものを用いている場合と比べて、ワイヤーフレームデータを用いる場合は、特定の個人を識別することができない。つまり、従来のマスク処理等を一切することなく、画像でなく画像に含まれる人体の動きのみを取得することにより、匿名化の度合いを高度にしている。
具体的には、ワイヤーフレームモジュール165は、既存の方法を用いて(例えば、非特許文献2に記載された技術等)、画像内の人の各部位の店舗内における3次元の位置(座標)を取得する。
【0027】
さらに、ワイヤーフレームモジュール165は、人の部位である「顔の部分」は、ワイヤーフレームデータに変換せず(顔部分のワイヤーフレームデータがない)、又は、簡略化したワイヤーフレームデータに変換するようにしてもよい。目、鼻、口等の輪郭を再現できるような詳細なワイヤーフレームデータでは、特定の個人を識別できる可能性があるからである。なお、「簡略化したワイヤーフレームデータ」とは、特定の個人が識別できない程度であればよく、例えば、顔の部位(目、鼻、口等)を、単なる線若しくは点で表現したワイヤーフレームデータとすること、又は、顔の部位の一部のみをワイヤーフレームデータとすること等がある。具体的には、「顔の部位の一部のみ」として、口のみをワイヤーフレームデータに変換し、他の目等の部位はワイヤーフレームデータに変換しないようにしてもよい。この場合、会話をしているか否かを、口のワイヤーフレームデータから識別することはできるが、特定の個人を識別することはできない。
そして、ワイヤーフレームモジュール165は、ワイヤーフレームデータを用いて、人の部位の移動を表現した人移動軌跡データを生成する。例えば、後述する人部位移動軌跡テーブル700を生成する。
【0028】
商品特定モジュール170は、商品を撮影した画像から抽出されたその商品の移動軌跡を表現した商品移動軌跡データを生成する。例えば、後述する商品移動軌跡テーブル900を生成する。
なお、ワイヤーフレームモジュール165、商品特定モジュール170は、機械学習で得たアルゴリズムによって識別するようにしてもよい。
具体的には、商品特定モジュール170は、既存の方法を用いて(例えば、非特許文献3に記載された技術等)、画像内の商品のラベル等を認識して特定し、その商品の店舗内における3次元の位置(座標)を取得する。
【0029】
情報処理装置100は、
図1の例に示すように、受付モジュール105、人体部位移動軌跡DB(DataBaseの略)110、商品移動軌跡DB115、行動分析モジュール120、通知モジュール130を有しており、撮影装置150と接続されている。
受付モジュール105は、人体部位移動軌跡DB110、商品移動軌跡DB115と接続されている。受付モジュール105は、撮影装置150から人移動軌跡データ、商品移動軌跡データを受信する。そして、人移動軌跡データを人体部位移動軌跡DB110に記憶させ、商品移動軌跡データを商品移動軌跡DB115に記憶させる。
【0030】
人体部位移動軌跡DB110は、受付モジュール105、行動分析モジュール120と接続されている。人体部位移動軌跡DB110は、人移動軌跡データを記憶している。
商品移動軌跡DB115は、受付モジュール105、行動分析モジュール120と接続されている。商品移動軌跡DB115は、商品移動軌跡データを記憶している。
【0031】
行動分析モジュール120は、人位置追跡モジュール122、グループ推定モジュール124、単一マーケティング行動検出モジュール126、グループマーケティング行動検出モジュール128を有しており、人体部位移動軌跡DB110、商品移動軌跡DB115、通知モジュール130と接続されている。行動分析モジュール120は、画像に写っている人(複数人であってもよい)の行動を分析する。店舗内の画像である場合は、顧客のマーケティング行動を分析することになる。
【0032】
人位置追跡モジュール122は、人体部位移動軌跡DB110内の人移動軌跡データと、商品移動軌跡DB115内の商品移動軌跡データを統合して、対象となっている人がどのような商品を手に取ったか、逆に、どのような商品を棚に戻したか等を把握する。例えば、撮影日時(年、月、日、時、分、秒、秒以下、又はこれらの組み合わせであってもよい)、その撮影日時における人の位置と商品の位置が重複している場合は、その人がその商品を手に取ったこととして把握し、商品を手に取った後に、その商品が棚の位置に戻った場合は商品を棚に戻したこととして把握すればよい。
グループ推定モジュール124は、グループに属する人を推定する。例えば、(1)人と人との間の距離を算出し、予め定められた距離内である期間が予め定められた期間以上である場合は、その人達をグループと判断してもよいし、(2)人と人との間の距離を算出し、予め定められた距離内にいる人達の口が交互に開いている場合(つまり、会話している場合)は、その人達をグループと判断してもよいし、(3)一方の人から他方の人へ、商品が渡された場合は、その人達をグループと判断してもよい。
【0033】
単一マーケティング行動検出モジュール126は、人移動軌跡データと予め定められた行動のパターンデータを用いて、人の行動を分析する。例えば、行動のパターンデータとして、人(単一の人)が商品に対して行った行動を示すパターンデータを用いてもよい。この場合、単一マーケティング行動検出モジュール126は、人移動軌跡データと商品移動軌跡データから、そのパターンデータに該当するか否かを判断する。パターンデータは、試験者が予め定められた行動を行って、その行動の軌跡をパターンデータとしてもよいし、顧客がとった行動を管理者が確認し、予め定められた行動を行った場合に、その行動の軌跡をパターンデータとして作成してもよい。予め定められた行動として、例えば、「棚から一度手にとった商品を棚にすぐ返す」、「棚から2つの商品を交互に手に取る動作を繰り返し一つの商品をかごに入れる」、「同一の商品の中からラベルを見比べて一つの商品に決め、かごに入れる」等がある。そして、これらのパターンデータに一致した行動の回数を計数してもよい。つまり、分析結果として、例えば、「棚から一度手にとった商品を棚にすぐ返す」ことが何回発生した等となる。商品を特定(商品名を抽出)して、計数してもよい。例えば、「商品Aについて、棚から一度手にとったが棚にすぐ返す」ことが何回発生した等となる。
【0034】
グループマーケティング行動検出モジュール128は、グループ推定モジュール124の処理結果(グループに属する人)を用いて、グループ内の複数人の人移動軌跡データと商品移動軌跡データから、行動のパターンデータに該当するか否かを判断する。ここでの行動のパターンデータは、グループに属する複数人が商品に対して行った行動を示すパターンデータである。パターンデータは、複数の試験者がグループとして予め定められた行動を行って、その複数人の行動の軌跡をパターンデータとしてもよいし、グループである複数の顧客がとった行動を管理者が確認し、予め定められた行動を行った場合に、その行動の軌跡をパターンデータとして作成してもよい。予め定められた行動として、例えば、「3人で2つの商品を次々に手に取り一つの商品をかごに入れる」、「1人が商品を手に取ったがもう1人の方を向き棚に返す」等がある。そして、これらのパターンデータに一致した行動の回数を計数してもよい。つまり、分析結果として、例えば、「3人で2つの商品を次々に手に取り一つの商品をかごに入れる」ことが何回発生した等となる。商品を特定(商品を抽出)して、計数してもよい。例えば、「商品Aと商品Bについて、3人でその2つの商品A、商品Bを次々に手に取り一つの商品Bをかごに入れる」ことが何回発生した等となる。
【0035】
通知モジュール130は、行動分析モジュール120と接続されている。通知モジュール130は、行動分析モジュール120による分析結果をユーザー(例えば、管理者等)に通知する。例えば、単一マーケティング行動検出モジュール126による処理結果、グループマーケティング行動検出モジュール128による処理結果を、管理者等の端末に出力する。
【0036】
図2は、第1の実施の形態の構成例(2)についての概念的なモジュール構成図である。
なお、
図1の例に示した部位と同種の部位には同一符号を付し重複した説明を省略する(以下、同様)。
カメラ群155と情報処理装置200とは通信回線を介して接続されている。なお、個別のカメラ160と情報処理装置200がそれぞれ通信回線を介して接続されていてもよい。
カメラ群155は、従来のカメラ(カメラ160)を複数を有していればよい。
情報処理装置200は、受付モジュール105、ワイヤーフレームモジュール265、商品特定モジュール270、人体部位移動軌跡DB110、商品移動軌跡DB115、行動分析モジュール120、通知モジュール130を有しており、カメラ群155と接続されている。
つまり、情報処理装置200は、
図1に例示した情報処理装置100に、ワイヤーフレームモジュール165に相当するワイヤーフレームモジュール265と商品特定モジュール170に相当する商品特定モジュール270を付加したものである。
【0037】
受付モジュール105は、ワイヤーフレームモジュール265、商品特定モジュール270と接続されている。受付モジュール105は、カメラ群155から、カメラ160が撮影した画像を受信する。
ワイヤーフレームモジュール265は、受付モジュール105、人体部位移動軌跡DB110と接続されている。ワイヤーフレームモジュール265は、受付モジュール105が受信した画像に対して、ワイヤーフレームモジュール165と同等の処理を行う。
商品特定モジュール270は、受付モジュール105、商品移動軌跡DB115と接続されている。商品特定モジュール270は、受付モジュール105が受信した画像に対して、商品特定モジュール170と同等の処理を行う。
人体部位移動軌跡DB110は、ワイヤーフレームモジュール265、行動分析モジュール120と接続されている。
商品移動軌跡DB115は、商品特定モジュール270、行動分析モジュール120と接続されている。
【0038】
図3は、第1の実施の形態の構成例(3)についての概念的なモジュール構成図である。
カメラ群355と情報処理装置100とは通信回線を介して接続されている。なお、個別のカメラ360と情報処理装置100がそれぞれ通信回線を介して接続されていてもよい。
情報処理装置100は、受付モジュール105、人体部位移動軌跡DB110、商品移動軌跡DB115、行動分析モジュール120、通知モジュール130を有しており、カメラ群355と接続されている。
【0039】
カメラ群355は、カメラ360A、カメラ360B等を有しており、情報処理装置100と接続されている。
各カメラ360は、撮像モジュール350、ワイヤーフレームモジュール165、商品特定モジュール170を有している。
撮像モジュール350は、画像を撮影する撮影手段としての一例であるカメラである。
ワイヤーフレームモジュール165は、撮像モジュール350によって撮影された画像から、人の部位をベクトル表現したワイヤーフレームデータに変換する。そして、撮像モジュール350によって撮影された画像の代わりに、そのワイヤーフレームデータを受付モジュール105に送信する。
商品特定モジュール170は、撮像モジュール350によって撮影された画像から商品を抽出し、その商品の移動軌跡を表現した商品移動軌跡データを生成し、その商品移動軌跡データを受付モジュール105に送信する。
【0040】
なお、商品特定モジュール170は、カメラ360には内蔵せずに情報処理装置100内の機能としてもよいが、ワイヤーフレームモジュール165は内蔵させる。
つまり、各カメラ360は、撮像モジュール350が撮影した画像をワイヤーフレームに変換するワイヤーフレームモジュール165が内蔵されており、出力はワイヤーフレームデータのみ(さらに、商品移動軌跡データを含めてもよい)であり、画像(例えば、人が撮影されている画像等)は出力しないカメラとしてもよい。このようなカメラ360を用いることによって、特定の個人が識別できるパーソナルデータを、情報処理装置100が扱う必要がなくなる。そして、そのようなパーソナルデータの漏洩を防止することができる。
【0041】
図4は、本実施の形態の構成を店舗内に設置した場合の例を示す説明図である。
店舗400内には、商品棚410(商品棚410-1等)、レジスタ420(レジスタ420-1等)、撮影装置450(撮影装置450-1等)が設置されている。例えば、撮影装置450は、店舗400の天井、壁等に設置される。撮影装置450は、前述の撮影装置150、カメラ群155、カメラ群355に該当する。
顧客430(顧客430-1等)は、商品棚410(商品棚410-1等)から商品440(商品440-1等)を取り出し、手にとっている(ショッピングカー、買い物かご等に入れている、であってもよい)。これらの行動は、撮影装置450によって撮影され、情報処理装置100(又は情報処理装置200)に人移動軌跡データが送信される。情報処理装置100(又は情報処理装置200)は、受信した人移動軌跡データを分析し、その結果を管理者等が使用するユーザー端末490に出力する。そして、その管理者等は、その行動がとられた原因等の推定に役立てることができる。また、グループがレジスタ420で会計をするまでの軌跡を追跡し、購入の決定権を持つ人の分析、すぐかごに入れられる商品と時間をかけて議論された後にかごに入れられる商品の割合の分析等、購入前のマーケティング行動の分析を行い、商品開発に役立てることができる。
【0042】
図5は、本実施の形態のモデルの構成例を示す説明図である。
本実施の形態を、概念的なモデルを用いて説明する。本実施の形態は、複数カメラによって撮影した画像を対象として、人の動作のワイヤーフレームモデル510によって匿名化を行い、そして、体の各部位のベクトル表現による動作モデル530によって動作を解析し、一方、その画像から商品移動軌跡520のデータ生成を行う。次に、商品移動軌跡520、体の各部位のベクトル表現による動作モデル530による処理結果を用いて、マーケティング行動分析540を行う。
具体的には、小売店の店舗に複数のカメラを設置し、そのカメラから、人体の3次元ワイヤーフレームを取得することにより、匿名化の行動分析を行う。さらに、商品の移動軌跡と組み合わせることによって、棚から一度手にとった商品を棚にすぐ返す行動の軌跡等、さらには、多数の人の候補から物理的距離の近い数人を同一グループとしてグループ化し、そのグループがレジスタで会計をするまでの軌跡を、マーケティングデータとして提供する。
【0043】
図6は、第1の実施の形態(撮影装置150、カメラ360)による処理例を示すフローチャートである。
ステップS602では、店舗内を撮影する。人(顧客)が撮影されることになる。
ステップS604では、撮影した画像から人体のワイヤーフレームを生成する。
ステップS606では、体の各部位の移動軌跡を生成する。例えば、人部位移動軌跡テーブル700を生成する。
ステップS608では、その移動軌跡のデータを情報処理装置100に送信する。
【0044】
図7は、人部位移動軌跡テーブル700のデータ構造例を示す説明図である。人部位移動軌跡テーブル700は、人ID欄705、部位ID欄710、店内座標x欄715、店内座標y欄720、店内座標z欄725、時刻欄730を有している。人ID欄705は、本実施の形態において、人を一意に識別するための情報(人ID:IDentificationの略)を記憶している。なお、ここでの「一意に識別する」とは、店舗内で同一人物であることを示す程度であればよく、人物名までを認識する必要はない(むしろ、パーソナルデータとなるものではない)。なお、同一人物であるか否かは、次の時刻(例えば、1秒後等)で予め定められた距離内(例えば、30cm以内等)にいる人を同一人物とすればよい。部位ID欄710は、本実施の形態において、その人の部位を一意に識別するための情報(部位ID)を記憶している。店内座標x欄715は、その部位の店内座標xを記憶している。店内座標y欄720は、その部位の店内座標yを記憶している。店内座標z欄725は、その部位の店内座標zを記憶している。時刻欄730は、その部位が撮影された時刻を記憶している。同一人物の同一部位の座標を時系列にたどることによって、移動軌跡(ベクトルデータ)を生成できる。人部位移動軌跡テーブル700内の各行は、予め定められた間隔で撮影された画像の処理結果である。なお、店内座標は、複数のカメラ160の撮影の向きと位置を予め記録しておき、複数のカメラ160からその店内の座標に変換した上で記録されたものである。
【0045】
図8は、第1の実施の形態(撮影装置150、カメラ360)による処理例を示すフローチャートである。
ステップS802では、店舗内(特に、商品棚)を撮影する。商品が撮影されることになる。
ステップS804では、撮影した画像から商品を特定する。例えば、商品に印刷されたバーコード、QRコード(登録商標)を識別してもよいし、商品に印刷された商品名等を認識してもよい。
ステップS806では、商品の移動軌跡を生成する。例えば、商品移動軌跡テーブル900を生成する。
ステップS808では、その商品の移動軌跡のデータを送信する。
【0046】
図9は、商品移動軌跡テーブル900のデータ構造例を示す説明図である。商品移動軌跡テーブル900は、商品ID欄905、店内座標x欄910、店内座標y欄915、店内座標z欄920、時刻欄925を有している。商品ID欄905は、本実施の形態において、商品を一意に識別するための情報(商品ID)を記憶している。店内座標x欄910は、その商品の店内座標xを記憶している。店内座標y欄915は、その商品の店内座標yを記憶している。店内座標z欄920は、その商品の店内座標zを記憶している。時刻欄925は、その商品が撮影された時刻を記憶している。同一商品の座標を時系列にたどることによって、移動軌跡(ベクトルデータ)を生成できる。商品移動軌跡テーブル900内の各行は、予め定められた間隔で撮影された画像の処理結果である。なお、店内座標は、複数のカメラ160の撮影の向きと位置を予め記録しておき、複数のカメラ160からその店内の座標に変換した上で記録されたものである。
【0047】
図10は、第1の実施の形態(情報処理装置100、情報処理装置200)による処理例を示すフローチャートである。
ステップS1002では、人部位移動軌跡テーブル700と商品移動軌跡テーブル900を抽出する。
ステップS1004では、人部位移動軌跡テーブル700と商品移動軌跡テーブル900を照合し、人と商品の組み合わせを生成する。具体的には、同時刻(多少のズレを許容してもよい)に撮影された画像の人部位(特に手の部分)の位置(店内座標x、y、z)と商品の位置(店内座標x、y、z)が一致する(多少のズレを許容してもよい)場合に、その人がその商品を手に取ったと認識する。
【0048】
ステップS1006では、人の移動軌跡を、予め定められたパターンと照合する。パターンとしては、前述したように、「棚から一度手にとった商品を棚にすぐ返す」、「棚から2つの商品を交互に手に取る動作を繰り返し一つの商品をかごに入れる」、「同一の商品の中からラベルを見比べて一つの商品に決め、かごに入れる」等がある。つまり、分析したい行動をパターンとして登録している。
ステップS1008では、人の移動軌跡を用いて、グループを推定する。具体例について、
図11を用いて後述する。
ステップS1010では、グループ内の複数人の移動軌跡を、予め定められたパターンと照合する。パターンとしては、前述したように、「3人で2つの商品を次々に手に取り一つの商品をかごに入れる」、「1人が商品を手に取ったがもう1人の方を向き棚に返す」等がある。つまり、分析したいグループ行動をパターンとして登録している。
ステップS1012では、担当者に分析結果を通知する。具体例について、
図12を用いて後述する。
【0049】
図11は、グループを推定する処理例を示す説明図である。
人位置追跡モジュール122による処理結果を用いて、グループ推定モジュール124が複数人からなるグループを判断する。
グループ推定モジュール124は、一人に対して他の人との距離が予め定められた距離以内(例えば、3メートル以内等)にいる時間が予め定められた時間(例えば、10分以上等)である場合は、同一グループとして推定する。
例えば、
図11に示すように、x軸1110、y軸1120で位置を示す店舗内において、3人の顧客(人1101、人1102、人1103)がいるとする。
この3人の顧客は、ある時刻で
図11(a)に示す位置にいる。つまり、人1101を中心とした範囲1130(予め定められた距離を示す範囲)内に人1102がおり、範囲1130外に人1103がいる。次の時刻には、3人の顧客は
図11(b)の位置にいる。つまり、依然として、人1101を中心とした範囲1130内に人1102がおり、範囲1130外に人1103がいる。さらに、次の時刻には、3人の顧客は
図11(c)の位置にいる。つまり、人1101を中心とした範囲1130内には誰もおらず、範囲1130外に人1102、人1103がいる。人1101と人1102は、予め定められた距離以上に離れたことになる。この場合、
図11(a)と
図11(b)の時間間隔が予め定められた時間以内であれば、人1101と人1102は同一グループであると推定する。
【0050】
図12は、通知のユーザーインタフェース例を示す説明図である。
通知モジュール130は、画面1200に、店内地図表示領域1210、分析結果表示領域1220を表示する。
店内地図表示領域1210には、店舗内の様子を表示する。リアルタイムで表示してもよいし、分析結果表示領域1220で選択された行動を表示するようにしてもよい。なお、顧客は画像でなく点で表している。つまり、パーソナルデータではなく(そもそも情報処理装置100は顧客を撮影した画像を取得していないので)、個人を特定できない様子で表示している。
分析結果表示領域1220には、分析結果を表示する。例えば、(1)現在の状況として、お客様(顧客)の数、グループの数、(2)本日の統計(個人としての分析結果)として、総客数、行動「棚から一度手にとった商品を棚にすぐ返す」の数、行動「棚から2つの商品を交互に手に取り1つをかごに戻す」の数、行動「同一の商品の中からラベルを見比べて決定」の数、(3)本日の統計(グループとしての分析結果)として、総グループ数、行動「n人でm個の商品を手に取り1つの商品に決定」の数、行動「1人が商品を手に取ったがもう1人の方を向き棚に戻す」の数、(4)週における統計、(5)月における統計等を表示する。このように、リアルタイムの客の数、グループの数、定義したマーケティング行動の数等を、日単位、週単位、月単位等で統計値を表示してもよい。
【0051】
<第2の実施の形態>
図13は、第2の実施の形態の構成例についての概念的なモジュール構成図である。
第2の実施の形態は、第1の実施の形態に顔認識モジュール1380、顔軌跡DB1315を付加したものである。
なお、第1の実施の形態と同種の部位には同一符号を付し重複した説明を省略する。
第1の実施の形態では、同一人物であることの判断は、前述したように、次の時刻で予め定められた距離内にいる人を同一人物としているが、例えば、早く移動した場合、複数人が近くにいた場合等では、同一人物と判断することが困難になる。そこで、顔認識を行って、同一人物であることの判断に用いる。
【0052】
撮影装置1350は、カメラ群155、ワイヤーフレームモジュール165、商品特定モジュール170、顔認識モジュール1380を有しており、情報処理装置1300と接続されている。撮影装置1350は、撮影装置150と同等の処理を行った上、顔認識モジュール1380による処理を行う。
顔認識モジュール1380は、カメラ160によって撮影された画像(人を撮影した画像)から、その人の顔を認識する。ただし、ここでの顔認識は、個人を特定するための処理ではなく、店舗内で同一人物であることを認識できる程度であればよい。それ以上の認識(例えば、個人の氏名の認識等)は行わない。つまり、別時刻における人物の顔画像と比べて同一人物であるか否かを判断できる程度でよい。例えば、顔画像に対して特徴抽出(髪の色、長さ、目鼻等の相対的位置関係等)を行い、特徴空間上での距離計算(いわゆる類似判断)を行ってもよいし、機械学習で得たアルゴリズムによって判断するようにしてもよい。そして、顔認識モジュール1380による出力データは、ある時刻における人IDと他の時刻における人IDは同じであることを保証できればよい。例えば、顔認識モジュール1380は、後述する顔移動軌跡テーブル1500を生成する。そして、顔認識モジュール1380による認識結果(認識対象の顔画像、認識処理にともなう中間結果等のデータ等を含めてもよい)を、その認識結果を送信した時点、又は、その人が店舗を退出した場合に削除する。
具体的には、顔認識モジュール1380は、既存の方法を用いて(例えば、非特許文献4に記載された技術等)、画像内の顔を識別し、その顔の店舗内における3次元の位置(座標)を取得する。
なお、
図2の例で示したように、ワイヤーフレームモジュール165、商品特定モジュール170、顔認識モジュール1380を撮影装置1350ではなく、情報処理装置1300に設けてもよい。ただし、顔認識モジュール1380だけは、撮影装置1350に設置するのが望ましい。パーソナルデータを情報処理装置1300で扱わないようにするためである。また、
図3の例で示したように、ワイヤーフレームモジュール165、商品特定モジュール170、顔認識モジュール1380を各カメラ160に内蔵させてもよい。
【0053】
情報処理装置1300は、受付モジュール105、人体部位移動軌跡DB110、商品移動軌跡DB115、顔軌跡DB1315、行動分析モジュール120、通知モジュール130を有しており、撮影装置1350と接続されている。
受付モジュール105は、人体部位移動軌跡DB110、商品移動軌跡DB115、顔軌跡DB1315と接続されている。受付モジュール105は、顔認識モジュール1380からの顔移動軌跡データを顔軌跡DB1315に記憶させる。
顔軌跡DB1315は、受付モジュール105、行動分析モジュール120と接続されている。顔軌跡DB1315は、顔移動軌跡データを記憶している。
行動分析モジュール120は、人位置追跡モジュール122、グループ推定モジュール124、単一マーケティング行動検出モジュール126、グループマーケティング行動検出モジュール128を有しており、人体部位移動軌跡DB110、商品移動軌跡DB115、顔軌跡DB1315、行動分析モジュール120と接続されている。
人位置追跡モジュール122は、人移動軌跡データと顔移動軌跡データ(顔認識モジュール1380による認識結果)を用いて、同一人物の移動軌跡データを生成する。つまり、例えば、撮影日時、その撮影日時における人の位置と顔の位置が重複している場合は、その人とその顔が対応しており、他の時刻における人物が同一人物であるか否かは、顔移動軌跡データを用いて判断する。
なお、顔移動軌跡データは、人位置追跡モジュール122による人移動軌跡データの生成のみに用い、他の処理には用いないようにする。そして、顔移動軌跡データを、人位置追跡モジュール122による処理が終了した時点、又は、その人が店舗を退出した場合に削除する。
【0054】
図14は、第2の実施の形態(撮影装置1350)による処理例を示すフローチャートである。
ステップS1402では、店舗内を撮影する。人(顧客)が撮影されることになる。
ステップS1404では、撮影した画像から顔を認識する。
ステップS1406では、顔の移動軌跡を生成する。例えば、顔移動軌跡テーブル1500を生成する。
ステップS1408では、データを送信する。
ステップS1410では、データを削除する。
【0055】
図15は、顔移動軌跡テーブル1500のデータ構造例を示す説明図である。顔移動軌跡テーブル1500は、人ID欄1505、店内座標x欄1510、店内座標y欄1515、店内座標z欄1520、時刻欄1525を有している。人ID欄1505は、人IDを記憶している。店内座標x欄1510は、その顔の店内座標xを記憶している。店内座標y欄1515は、その顔の店内座標yを記憶している。店内座標z欄1520は、その顔の店内座標zを記憶している。時刻欄1525は、その顔が撮影された時刻を記憶している。同一人物の同一顔の座標を時系列にたどることによって、移動軌跡(ベクトルデータ)を生成できる。顔移動軌跡テーブル1500内の各行は、予め定められた間隔で撮影された画像の処理結果である。なお、店内座標は、複数のカメラ160の撮影の向きと位置を予め記録しておき、複数のカメラ160からその店内の座標に変換した上で記録されたものである。なお、顔は人体の部位の一例である。
【0056】
図16は、第2の実施の形態(情報処理装置1300)による処理例を示すフローチャートである。
ステップS1602では、人部位移動軌跡テーブル700と顔移動軌跡テーブル1500と商品移動軌跡テーブル900を抽出する。
ステップS1604では、人部位移動軌跡テーブル700と顔移動軌跡テーブル1500を照合し、同一人物の移動軌跡を生成する。具体的には、同時刻(多少のズレを許容してもよい)に撮影された画像の人部位(特に頭部)の位置(店内座標x、y、z)と顔の位置(店内座標x、y、z)が一致する(多少のズレを許容してもよい)場合に、同一人物と認識し、他の時刻においても顔認識の結果の人IDを用いて同一人物を特定する。
【0057】
ステップS1606では、不要となった顔移動軌跡テーブル1500を削除する。
ステップS1608では、ステップS1604で生成した移動軌跡と商品移動軌跡テーブル900を照合し、人と商品の組み合わせを生成する。具体的には、同時刻(多少のズレを許容してもよい)に撮影された画像の人部位(特に手の部分)の位置(店内座標x、y、z)と商品の位置(店内座標x、y、z)が一致する(多少のズレを許容してもよい)場合に、その人がその商品を手に取ったと認識する。
ステップS1610では、人の移動軌跡を、予め定められたパターンと照合する。
図10の例に示したフローチャート内のステップS1006と同等の処理である。
【0058】
ステップS1612では、人の移動軌跡を用いて、グループを推定する。
図10の例に示したフローチャート内のステップS1008と同等の処理である。
ステップS1614では、グループ内の複数人の移動軌跡を、予め定められたパターンと照合する。
図10の例に示したフローチャート内のステップS1010と同等の処理である。
ステップS1616では、担当者に分析結果を通知する。
図10の例に示したフローチャート内のステップS1012と同等の処理である。
【0059】
非特許文献1に記載の技術では、多数のカメラを小売店舗に設置し、消費者の行動を分析しているが、第2の実施の形態は、ワイヤーフレーム分析により匿名化をしており、特に、顔軌跡DB1315(人位置追跡モジュール122を含めてもよい)を情報処理装置1300から物理的に分離しておけば、より匿名化を完全にしたマーケティング分析が可能となる。
【0060】
非特許文献2には、カメラ画像を活用する際に、どの程度が個人情報であるかの基準が示されている。そして、撮影した画像・動画を、モザイク処理などの従来の画像処理をして匿名化する方法が示されている。もちろんのことながら、非特許文献2には、ワイヤーフレーム分析によって人体の動きのみで匿名化する方法は含まれていない。
【0061】
非特許文献5では、プライバシー保護とデータの有用性を両立させる社会的動きを解説している。顔をどう匿名化するかなどが議論されている。もちろんのことながら、非特許文献5にも、ワイヤーフレーム分析によって人体の動きのみで匿名化する方法は含まれていない。
【0062】
なお、本実施の形態(情報処理装置100、撮影装置150、情報処理装置200、カメラ360、情報処理装置1300、撮影装置1350)としてのプログラムが実行されるコンピュータのハードウェア構成は、
図17に例示するように、一般的なコンピュータであり、具体的にはパーソナルコンピュータ、カメラ等の組み込み型コンピュータ、サーバーとなり得るコンピュータ等である。つまり、具体例として、処理部(演算部)としてCPU1701を用い、記憶装置としてRAM1702、ROM1703、HDD1704を用いている。HDD1704として、例えば、HDD(Hard Disk Driveの略)、フラッシュ・メモリであるSSD(Solid State Driveの略)等を用いてもよい。受付モジュール105、行動分析モジュール120、人位置追跡モジュール122、グループ推定モジュール124、単一マーケティング行動検出モジュール126、グループマーケティング行動検出モジュール128、通知モジュール130、ワイヤーフレームモジュール165、商品特定モジュール170、ワイヤーフレームモジュール265、商品特定モジュール270、顔認識モジュール1380等のプログラムを実行するCPU1701と、そのプログラムやデータを記憶するRAM1702と、本コンピュータを起動するためのプログラム等が格納されているROM1703と、人体部位移動軌跡DB110、商品移動軌跡DB115、顔軌跡DB1315等としての機能を有する補助記憶装置であるHDD1704と、キーボード、マウス、タッチスクリーン、マイク、カメラ(視線検知カメラ等を含む)等に対する利用者の操作(動作、音声、視線等を含む)に基づいてデータを受け付ける受付装置1706と、CRT、液晶ディスプレイ、スピーカー等の出力装置1705と、ネットワークインタフェースカード等の通信ネットワークと接続するための通信回線インタフェース1707、そして、それらをつないでデータのやりとりをするためのバス1708により構成されている。これらのコンピュータが複数台互いにネットワークによって接続されていてもよい。
【0063】
前述の実施の形態のうち、コンピュータ・プログラムによるものについては、本ハードウェア構成のシステムにソフトウェアであるコンピュータ・プログラムを読み込ませ、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働して、前述の実施の形態が実現される。
なお、
図17に示すハードウェア構成は、1つの構成例を示すものであり、本実施の形態は、
図17に示す構成に限らず、本実施の形態において説明したモジュールを実行可能な構成であればよい。例えば、一部のモジュールを専用のハードウェア(例えば特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)や再構成可能な集積回路(field-programmable gate array:FPGA)等)で構成してもよく、一部のモジュールは外部のシステム内にあり通信回線で接続している形態でもよく、さらに
図17に示すシステムが複数互いに通信回線によって接続されていて互いに協調動作するようにしてもよい。また、特に、パーソナルコンピュータの他、携帯情報通信機器(携帯電話、スマートフォン、モバイル機器、ウェアラブルコンピュータ等を含む)、情報家電、ロボットなどに組み込まれていてもよい。
【0064】
前述の実施の形態においては、小売店の店舗に適用する場合を例示したが、他の施設における人の行動を分析するようにしてもよい。前述したように、例えば、スポーツ用施設に、同様の方法で複数カメラを設置し、単一マーケティング行動検出モジュール126、グループマーケティング行動検出モジュール128に予め特定パターン(危険な行動パターン等)を定義しておき、分析することによって、安全な観客と危険な観客(例えば、フーリガン(hooligan)等)の推定、異常検知が可能となる。
【0065】
なお、説明したプログラムについては、記録媒体に格納して提供してもよく、また、そのプログラムを通信手段によって提供してもよい。その場合、例えば、前記説明したプログラムについて、「プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」の発明として捉えてもよい。
「プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、プログラムのインストール、実行、プログラムの流通等のために用いられる、プログラムが記録されたコンピュータで読み取り可能な記録媒体をいう。
なお、記録媒体としては、例えば、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)であって、DVDフォーラムで策定された規格である「DVD-R、DVD-RW、DVD-RAM等」、DVD+RWで策定された規格である「DVD+R、DVD+RW等」、コンパクトディスク(CD)であって、読出し専用メモリ(CD-ROM)、CDレコーダブル(CD-R)、CDリライタブル(CD-RW)等、ブルーレイ・ディスク(Blu-ray(登録商標) Disc)、光磁気ディスク(MO)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープ、ハードディスク、読出し専用メモリ(ROM)、電気的消去及び書換可能な読出し専用メモリ(EEPROM(登録商標))、フラッシュ・メモリ、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、SD(Secure Digitalの略)メモリーカード等が含まれる。
そして、前記のプログラムの全体又はその一部は、前記記録媒体に記録して保存や流通等させてもよい。また、通信によって、例えば、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)、メトロポリタン・エリア・ネットワーク(MAN)、ワイド・エリア・ネットワーク(WAN)、インターネット、イントラネット、エクストラネット等に用いられる有線ネットワーク、又は無線通信ネットワーク、さらにこれらの組み合わせ等の伝送媒体を用いて伝送させてもよく、また、搬送波に乗せて搬送させてもよい。
さらに、前記のプログラムは、他のプログラムの一部分若しくは全部であってもよく、又は別個のプログラムと共に記録媒体に記録されていてもよい。また、複数の記録媒体に分割して記録されていてもよい。また、圧縮や暗号化等、復元可能であればどのような態様で記録されていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
100…情報処理装置
105…受付モジュール
110…人体部位移動軌跡DB
115…商品移動軌跡DB
120…行動分析モジュール
122…人位置追跡モジュール
124…グループ推定モジュール
126…単一マーケティング行動検出モジュール
128…グループマーケティング行動検出モジュール
130…通知モジュール
150…撮影装置
155…カメラ群
160…カメラ
165…ワイヤーフレームモジュール
170…商品特定モジュール
200…情報処理装置
265…ワイヤーフレームモジュール
270…商品特定モジュール
350…撮像モジュール
355…カメラ群
360…カメラ
350…撮像モジュール
1300…情報処理装置
1315…顔軌跡DB
1350…撮影装置
1380…顔認識モジュール