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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】軒先構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/072 20060101AFI20230828BHJP
【FI】
E04D13/072 501F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019157994
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021036106
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000165505
【氏名又は名称】元旦ビューティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】舩木 元旦
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-007239(JP,A)
【文献】特開2000-320093(JP,A)
【文献】特開2000-129872(JP,A)
【文献】特開2000-213121(JP,A)
【文献】特開平09-041595(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103866929(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/00-13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の屋根面に敷設された屋根材の軒先に軒樋が取り付けられる軒先構造であって、
前記屋根材に固定される軒先支持材に、該軒先支持材の固定部分を覆う化粧材が取り付けられる被取付部、及び前記軒樋を保持する保持部材を角度調整機能を介して支持する支持部が設けられていることを特徴とする軒先構造。
【請求項2】
前記化粧材は、その軒端が前記軒先支持材に取り付けられ、その棟端が前記屋根材同士の係合部分に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の軒先構造。
【請求項3】
下端が、前記軒樋の軒先端と係合されると共にその上面を覆うカバー材を用い、該カバー材の上端が、前記軒先支持材に沿わせて取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の軒先構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軒樋を設置していない屋根や、軒樋、鼻隠し、壁面等が損傷した建築物に対して容易に軒樋を設置でき、軒樋が安定に保持されている軒先構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の軒先には、建築物の鼻隠しや壁面に一定間隔で樋受け金具等を固定し、その金具に対して軒樋を設置するのが一般的であるが、北海道などの積雪する地方の建物においては、屋根の軒先に軒樋があることが、冬期における落雪の妨げとなるものであった。
また、積雪地域では、軒樋内への積雪や落雪により、軒樋や樋受け金具が変形、破損したり、よりひどくなると、樋受け金具を固定している鼻隠しや壁面が破損する恐れもあった。そのため、建築物に軒樋自体を設置しない建築物も散見されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、軒樋を建築物からなくしてしまうと、積雪の融雪水や、冬季以外の降雨が軒先から垂れ落ちるという問題が生じてしまうものであった。
そこで、本発明は、前述のような軒樋を設置していない屋根や、軒樋、鼻隠し、壁面等が損傷した建築物に対して容易に軒樋を設置でき、冬期における落雪の妨げとならないように軒樋が安定に保持されている軒先構造を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、建築物の屋根面に敷設された屋根材の軒先に軒樋が取り付けられる軒先構造であって、前記屋根材に固定される軒先支持材に、該軒先支持材の固定部分を覆う化粧材が取り付けられる被取付部、及び前記軒樋を保持する保持部材を角度調整機能を介して支持する支持部が設けられていることを特徴とする軒先構造に関するものである。
【0005】
また、本発明は、前記軒先構造において、化粧材は、その軒端が前記軒先支持材に取り付けられ、その棟端が屋根材同士の係合部分に取り付けられていることを特徴とする軒先構造をも提案する。
【0006】
また、本発明は、前記軒先構造において、下端が、軒樋の軒先端と係合されると共にその上面を覆うカバー材を用い、該カバー材の上端が、前記軒先支持材に沿わせて取り付けられていることを特徴とする軒先構造をも提案する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の軒先構造は、屋根面(屋根材)に固定される軒先支持材に設けた支持部にて、軒樋を安定に支持することができる。この支持部は、軒樋を保持する保持部材を角度調整機能を介して支持するので、軒先支持材と支持部に保持部材を介して支持される軒樋との相対関係を角度調整(傾動)できるため、傾斜勾配が異なる屋根面でも、水平状に軒樋を維持させることができる。なお、軒先支持材は、屋根面に敷設された屋根材もしくは屋根材を介して下地材に固定されるので、既設又は新設の屋根に対して容易に固定することができる。
【0008】
また、化粧材は、その軒端が前記軒先支持材に取り付けられ、その棟端が屋根材同士の係合部分に取り付けられている場合、軒先支持材の露出を抑えるため屋根の軒先としての意匠性を損なわず、また、軒先支持材の固定部分も被覆されるため雨水等が浸入しにくいものとなる。
【0009】
さらに、下端が、軒樋の軒先端と係合されると共にその上面を覆うカバー材を用い、該カバー材の上端が、前記軒先支持材に沿わせて取り付けられている場合、該カバー材にて軒樋の軒先端を引っ張るように保持するアームの役割が果たされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)本発明の軒先構造の一実施例(第1実施例)を示す側断面図、(b)それに用いた軒先支持材及び筒状バンドを示す平面図、(c)軒先支持材の側面図である。
図2】(a)第1実施例における角度調整機構にて連結された軒先支持材と保持部材を示す側断面図、(b)その分解側面図、(c)回動可能に連結された軒先支持材と保持部材を示す側断面図、(d)角度調整機構を示す側断面図である。
図3】本発明の軒先構造の他の一実施例(第2実施例)を示す側断面図である。
図4】本発明の軒先構造の他の一実施例(第3実施例)を示す側断面図である。
図5】本発明の軒先構造の他の一実施例(第4実施例)を示す側断面図である。
図6】本発明の軒先構造の他の一実施例(第5実施例)を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の軒先構造は、建築物の屋根面に敷設された屋根材の軒先に軒樋が取り付けられる構造であって、前記屋根材に固定される軒先支持材に、該軒先支持材の固定部分を覆う化粧材が取り付けられる被取付部、及び前記軒樋を保持する保持部材を角度調整機能を介して支持する支持部が設けられていることを特徴とし、軒樋を安定に保持することができる。
【0012】
前記本発明の軒先構造に用いられる屋根材は、建築物の屋根面に敷設されたものであって、新設や既設を問うものではなく、後述する図示実施例に示すように横葺き(横葺き屋根板)でも重ね葺き(スレート材)でもよく、水下側から水上側へ敷設されるものが好ましい。
【0013】
前記本発明の軒先構造に用いられる軒先支持材は、前述のように前記屋根材もしくは前記屋根材を介して下地材に固定され、該軒先支持材の固定部分を覆う化粧材が取り付けられる被取付部、及び軒樋を支持する支持部が設けられており、従来の軒先唐草と軒樋支持材の機能とを併せ持つ部材である。この軒先支持材の上方に形成される固定部分(被取付部)は長尺に形成されるが、その下方に形成される軒樋を支持する支持部については長尺でも短幅(ピース状)でもよい。
【0014】
前記屋根材に固定される部位(固定部)は、この軒先支持材自体を適正位置に配設する為の構成であるが、この固定部は、前記屋根材に固定具を打ち込んで固定するので、雨水等が浸入する部位となるため、該固定部分を覆う化粧材にて雨水の浸入を防止すると共に意匠性を高める効果をも付与するものである。
【0015】
前記支持部は、前記軒樋が支持される部位を指し、図示実施例のように前記軒樋の建築物側の側面を保持する保持部材を間接的に支持する構成であり、保持部材の上端を角度調整機能を介して支持するこの角度調整機能を備える支持部、例えばヒンジ構造を介して吊り支持する構成等が挙げられ、軒先支持材と支持部に保持部材を介して支持される軒樋との相対関係を角度調整(傾動)できるため、傾斜勾配が異なる屋根面でも、水平状に軒樋を維持させることができる。
【0016】
前記化粧材は、その軒端が前記軒先支持材に取り付けられ、その棟端が屋根材同士の係合部分に取り付けられている部材であり、前記軒先支持材の露出を抑えるため屋根の軒先としての意匠性を損なわず、また、前記軒先支持材の固定部分も被覆されるため雨水等が浸入しにくいものとなる。なお、この化粧材を、屋根(屋根材)と同色、同材を用いることで、意匠性をより高めることができる。
【0017】
前記被取付部は、前記化粧材が取り付けられる部分であって、図示実施例では起立状片の上端を水下側へ折曲した部位であり、上方から固定具を打ち込んで固定する構成であるが、この構成に限定されず、前記化粧材が取り付けられる部位であればどのようなものであっても良い。
【0018】
前記本発明の軒先構造にて保持される軒樋は、内部に雨水等の排水路が設けられているものであれば、底面及び両側面の形状は特に限定するものではないが、建築物側壁面の下方には、下方からこの軒樋を支持させるための(例えば隅部状の)被支持部が形成されていることが望ましい。また、この軒樋の上面を覆うようにカバー材が取り付けられていることが望ましい。さらに、この軒樋は、冬期における落雪の妨げとならないように保持されていることが望ましく、例えば図示実施例のようにその上面を覆うカバーが流れ方向に連続(途切れていないため雪が止まらない)し、その表面が平坦状(上方への凸部分がない)であるが好ましい。
【0019】
前記カバー材は、その軒先端が前記軒樋の軒先端と係合して取り付けられるものであって、後述する図示実施例に示すように軒先端に下方へ更に内側へ折曲した略コ字状の係合部を設けてその裏面側に軒樋の軒先端を係合する構成が望ましい。この略コ字状の係合部は、軒樋の軒先端を上方から引っ張るように保持して軒樋やその内部に保持した雨水等の荷重を保持できる。このカバー材は、内部に降雪が堆積したり、落ち葉等が侵入、堆積することを防止する落ち葉除けの役割を果たす部材であって、その表面には雨水を内部へ導く導水口、例えば小径のスリット孔が形成されている。
このように軒樋の上面を覆うカバー材を、前記軒樋の軒先端と係合させた場合には、軒樋の軒先端を引っ張るように保持するアームの役割をも果たし、軒樋には雪が堆積したり落ち葉等が混入することもない。
【0020】
前記保持部材は、前記軒先支持材の支持部に取り付けられる取付上端と、前記軒樋が保持される保持部とを備える部材である。
前記取付上端は、前記支持部と角度調整機能を備えて連結されていることが望ましく、該角度調整機能としては、例えば前述のようにヒンジ構造を介して吊り支持する構成などを挙げることができる。
前記保持部としては、例えば後述する図示実施例のように前記軒樋の建築物側の側面下方に、下方からこの軒樋を支持させるための(例えば角状の)被支持部分を設ける構成などを挙げることができる。
【0021】
なお、前記軒樋を安定に保持する目的で、後述する図示実施例のように前記保持部材と前記軒樋との間に係止部材を掛け渡すようにしてもよい。この係止部材としては、簡易構成の平板部材等を用いることができ、軒樋及び保持部材のそれぞれに係止状(突っ張り状)に配設することで、地震等に際して揺動が防止され、軒樋を安定に保持させることができる。
【0022】
このような構成を有する本発明の軒先構造は、屋根面(屋根材等)に固定される軒先支持材に設けた支持部にて、軒樋を安定に支持することができる。なお、軒先支持材は、屋根面に敷設された屋根材もしくは屋根材を介して下地材に固定されるので、既設又は新設の屋根に対して容易に固定することができる。なお、軒先支持材を固定する上で必要であれば、後述する図示実施例のように既存の屋根材等に加工を施してもよい。
【0023】
また、化粧材を、その軒端が前記軒先支持材に取り付けられ、その棟端が屋根材同士の係合部分に取り付けられている場合には、軒先支持材の屋根面への固定部分への雨水の浸入を防止すると共に意匠性を高めることができる。
さらに、下端が、軒樋の軒先端と係合されると共に前記軒樋の上面を覆うカバー材を用い、該カバー材の上端が、前記軒先支持材に沿わせて取り付けられている場合には、該カバー材にて軒樋の軒先側を軒樋の軒先端を引っ張るように保持するアームの役割が果たされる。
【実施例1】
【0024】
図1(a)に示す第1実施例の軒先構造は、建築物の屋根面に敷設された屋根材5の軒先に軒樋1が取り付けられ、前記屋根材5に固定される軒先支持材2に、該軒先支持材2の固定部分211を覆う化粧材3が取り付けられる被取付部22、及び前記軒樋1を保持する保持部材7を角度調整機能を介して支持する支持部23が設けられている。
【0025】
この第1実施例における軒樋1は、略水平状の底面11の軒先側(図面では左側)に、三つの傾斜面と二つの略水平面とで構成される段状の側面12が形成され、前記底面11の内側(図面では右側)には、略垂直状に起立する側面13が形成され、これらの底面11及び側面12,13にて雨水等の排水路が形成されている。
前記軒先側の側面12の上端に位置する傾斜面と略水平面は、カバー材4に保持(係合)される軒先端121である。
また、前記内側面13の下端には、隅部状の被支持部131が設けられ、後述する保持部材7に下方から支持される部位である。
【0026】
この第1実施例における屋根材5は、水下側から水上側へ敷設される横葺き屋根板であって、面板部51の水下端及び水上端に相互に係合する成形部52,53が設けられ、水上側の成形部53の水上側には下地6Aへ固定する固着部54(5bは固着具)が延設されている。なお、最も水下側の屋根材5'は、軒先支持材を固定する上で既存の屋根材5に加工を施したものである。また、下地6Aは、傾斜勾配を形成するように配された野地材の表面側に防水紙6bを敷設した構成である。
【0027】
この第1実施例における軒先支持材2は、前述のように固定部分211と、該固定部分211を覆う化粧材3が取り付けられる被取付部22と、及び軒樋1を支持する支持部23とが設けられる通し材(長尺材)であって、アルミ等の押出成形材である。
また、この軒先支持材2は、図1(c)に示すように最も水下側の屋根材5'に沿わせる横片部21の水上側寄りに一点鎖線で示す固定具を打ち込んで固定部分211とし、水下側よりに起立状片の上端を水下側へ折曲した逆L字状の被取付部22が立上り、横片部21の水下端から垂下させた縦片24の下端に枝分かれ状に係止部231と軸受け部232とが形成されている。なお、係止部231は、縦片と横片とからなるT字状であって、横片の先端が係止凸部231aである。これら係止部231と軸受け部232は、角度調整機能を備える支持部23を構成するものであり、該支持部23には、前記軒樋1を保持する保持部材7を角度調整可能に連結している。
【0028】
このような角度調整機能を図2を用いて説明する。
図2(a)は、前記軒先構造から、軒側支持材2と保持部材7、及びそれらを連結する筒状連結具8Aのみを抜き出して示したものである。なお、保持部材7は、軒樋1を保持する部材であるが、予め一体化した状態で取り付けるようにしてもよいが、当該図2では軒樋1を省略した。
図2(b)は、各部材2,7,8Aの取付以前の状態を示す。
図2(c)は、軒先支持材2に対する保持部材7の揺動を示すため、軒先支持材2を実線で、保持部材7を点線で示している。
図2(d)は、保持部材7に対する軒先支持材2の挙動を示すため、保持部材7を実線で、軒先支持材2を点線で示している。
【0029】
前記軒側支持材2は、係止部231と軸受け部232が、角度調整機能を備える支持部23を形成していることを説明したが、係止部231には、適正位置にて筒状連結具8Aが取り付けられ、軸受け部232には、保持部材8Aの取付上端731が吊り下げ状に枢着される。
【0030】
前記保持部材7は、軒先支持材2の支持部23(軸受け部232)に取り付けられる取付部73(取付上端731)と、前記軒樋1が保持される保持部71と、前記係止部231(係止凸部231a)を係合させる係止受部721(段状係合部721a)を備える部材である。
前記取付部73は中央縦片状で、その下端には、略水平片状の係合部72が設けられ、この係合部72の略中央裏面には、下方が開放する係止溝722が設けられ、その軒側には、弧状に立ち上がる係止受部721が、その建築物側には、縦片状の保持部71が設けられている。この保持部71は、その下端に軒樋1の被支持部131を下方から支持する下方保持部711が、上端には前記軒樋1の建築物側の側面13の上端を保持する上方保持部712が設けられている。
【0031】
前記筒状連結具8Aは、係止時における係合部231の縦片から係止受部721を収容する厚み寸法の開口80を備える矩形筒状体であり、弾性を備える弾性成形体でもよい。
なお、前記軒先支持材2については、既に簡単に説明したが、図1(b)に示すように係止部231には、筒状連結具8Aの開口80の奥行き寸法に応じてスリットが形成されている。即ち当該平面図に破線にて示すように筒状連結具8Aは、係止部231に嵌合状に取り付けることができる。
【0032】
そして、前記図2(c)に示すように保持部材7の取付部73(取付上端731)を軒先支持材2の支持部23(軸受け部232)に回動可能に枢着させて連結させると、軒先支持材2に対し、保持部材7を破線の矢印で示すように揺動(回動)させることができる。
そのため、軒先支持材2を屋根面(屋根材)に固定した後、該軒先支持材2に対し、保持部材7を下方から枢着させて吊り下げることができる。
【0033】
続いて、前記図2(d)に示すように保持部材7に対し、軒先支持材2を回動できるので、係止受部721(段状係合部721a)に、係止部231(係止凸部231a)を当接(係止)させつつ回動させ、位置調整後に図2(a)に示すように筒状連結具8Aを装着させて両部材2,7を連結する。
そのため、軒先に固定した軒先支持材2に対し、保持部材7を回動させ、位置調整後に図2(a)に示すように筒状連結具8Aを装着させて両部材2,7を連結すればよい。
より具体的には、係止部231を係止受部721に当接させた状態(即ち係止凸部231aを段状係合部721aに係合させた状態)を維持しつつ角度調整し、筒状連結具8Aを装着して回動を停止させる。
なお、図示しない軒樋1は、前述のように予め保持部材7に取り付けておいてもよいし、或いは保持部材7を前述のように取り付けた後に該保持部材7に対して軒樋1を取り付けるようにしてもよい。
【0034】
前記化粧材3は、その水下端が前記軒先支持材2に取り付けられ、その水上端が屋根材5',5同士の係合部分52,53に取り付けられている部材であり、図示実施例の化粧材3は、側面視がへ字状に成形された化粧面部31の水下端を前記軒先支持材2の被取付部22に沿わせ、裏面側へ折り下げると共に上方から固定具3bを打ち込んで固定し、化粧面部31の水上端は屋根材5',5同士の係合部分52,53に取り付けられている。
この化粧材3は、前記軒先支持材2の固定部分21を覆うため、該固定部分21に打ち込む固着具の打ち込み孔からの雨水等の浸入を防止すると共に意匠性を高めることができる。
【0035】
また、前記カバー材4は、内部に降雪が堆積したり、落ち葉等が侵入、堆積したり、鳥類等が巣作りすることを防止する部材であって、その表面(化粧面41)には雨水を内部へ導く導水口411として複数の小径のスリット孔が形成され、その下端である軒先端(係合部)42が前記軒樋1の軒先端121と係合して取り付けられ、略垂直状に折り上げた水上端43を、前記軒先支持材2の被取付部22の裏面側に臨ませている。
なお、このカバー材4は、前記軒樋1の上面を覆う部材であるが、冬期における落雪を確実に流下させるために、カバー材4が流れ方向に連続(途切れていないため雪が止まらない)し、その表面が平坦状(上方への凸部分がない)である。
前記軒先端42は、化粧面41の下端から斜め上方へ延在し、その先端を下方へ折曲し、更にその下端を内側へ折曲した略コ字状の係合部を形成している。
前記水上端43には、上方からビス等を打ち込んで、一体的に固定するようにしてもよい。
【0036】
なお、前記保持部材7は、前記軒先支持材2との角度調整については説明したが、軒樋1を保持する機構について、以下に説明する。
前述のように保持部材7には、前記軒樋1が保持される保持部71が設けられている。が、該保持部71は、縦片状であり、その下端に軒先へ延在する横片状の下方保持部711が設けられ、その上端には、下方が開放する隅部状の上方保持部712が設けられている。そのため、前記下方保持部711にて軒樋1の被支持部131を下方から支持することができ、前記上方保持部712に前記軒樋1の建築物側の側面13の上端を保持することができる。したがって、例えば前述のように軒先支持材2に取り付けた保持部材7に対し、下方から軒樋1を臨ませ、建築物側の側面13の上端を保持部材7の上方保持部712に挿着(装着)すると共に被支持部131を保持部材7の下方保持部711に載置状に支持させて取り付けることができる。
【0037】
なお、前記軒樋1を安定に保持する目的で、図1(a)の図示実施例では、前記保持部材7と前記軒樋1との間に係止部材9を掛け渡すようにしている。
具体的には、前記保持部材7には、下方が開放する係止溝722が設けられているので、該係止溝722に係止部材9の上端を、軒樋1の側面13の下端隅部に係止部材9の下端を、それぞれに係止状(突っ張り状)に配設することで、地震等に際して揺動が防止され、軒樋1を安定に保持させることができる。この係止部材9としては、簡易構成の平板部材等を用いることができ、短尺材でもよい。
【0038】
その他の構成を簡単に説明すると、図中の6Bは鼻隠し壁面であって、6cはその外側を被覆する化粧材、6dは野地材(下地)6Aの端面等を被覆する水切り兼化粧材である。
【0039】
このような構成を有する図1(a)の第1実施例の軒先構造は、屋根面(屋根材5')に固定される軒先支持材2に設けた支持部23にて、軒樋1を安定に支持することができる。なお、軒先支持材2は、屋根面に敷設された屋根材5に固定されるので、既設又は新設の屋根に対して容易に固定することができる。
また、この第1実施例では、化粧材3の軒端が前記軒先支持材2に取り付けられ、その棟端が屋根材5',5同士の係合部分52,53に取り付けられているので、軒先支持材2の屋根面への固定部分211への雨水の浸入を防止することができる。加えて意匠性を高めることができる。特に化粧材3として、屋根材5と同色、同材を用いることで意匠性は更に向上する。
さらに、下端が、軒樋1の軒先端121と係合されると共に前記軒樋1の上面を覆うカバー材4を用い、該カバー材4の上端が、前記軒先支持材2に沿わせて取り付けられている場合、該カバー材4にて軒樋1の軒先端を引っ張るように保持するアームの役割が果たされる。
また、この第1実施例では、図2に示される角度調整機構を備えているので、下地(野地材6A)上の屋根材5'に固定された軒先支持材2に対し、保持部材7及びそれに保持される軒樋1を任意の角度に調整して配設することができる。なお、当該軒樋1は、当然のことながら、略水平状を維持するように角度調整されて配設されている。
【0040】
さらに、この第1実施例では、軒樋1の上面を覆うカバー材4が流れ方向に連続(途切れていないため雪が止まらない)し、その表面が平坦状(上方への凸部分がない)であるため、屋根面からカバー材4上に導かれた降雪を、確実に流下させることができる。即ち冬期における落雪の妨げとならないようにカバー材4が配設されている。
【0041】
図3に示す第2実施例の軒先構造は、前記第1実施例に用いた全ての材料と同一の材料を用いているため、図面に同一符号を付して説明の重複を避けるが、図示しない躯体により急勾配の傾斜角度に下地(野地材6A)が配設されている。
この第2実施例では、下地(野地材6A)及び屋根材5'の配設角度が前記第1実施例に比べて急勾配に配設されているが、前述の角度調整機能を備えているので、急勾配に配された軒先支持材2に対し、保持部材7及びそれに保持される軒樋1を任意の角度に調整して配設することができ、軒樋1が略水平状を維持するように角度調整することができる。
【0042】
図4(a)に示す第3実施例の軒先構造は、前記第1,第2実施例とは異なる角度調整機構を備える軒先支持材2IIと保持部材7IIを用いている。
この第3実施例における軒先支持材2IIは、図4(b)に示すように横片部21や被取付部22、及び軸受け部232については前記第1実施例における軒先支持材2と全く同様であるが、前記係止部231に代えて軒先側へ延在する長孔を備える係止片233を設けた構成である。
また、この第3実施例における保持部材7IIは、図4(b)に示すように前記軒先支持材2の軸受け部232に枢着される取付上端731と軒樋1が保持される保持部71については前記第1実施例における保持部材7と全く同様であるが、前記係止受部721に代えて軒先側上方が開放する取付溝74を設けた構成である。該取付溝74には、六角ボルトである連結ボルト8Bの頭部が保持され、該連結ボルト8Bにはナット8c,8dが螺合されている。
【0043】
そして、前記保持部材7IIに取り付けられた連結ボルト8Bが、前記軒先支持材2IIの係止片233を貫通すると共に、ナット8cが係止片233の表面側に、ナット8dが係止片233の裏面側にそれぞれ係止する状態で連結されている。
即ちこの第3実施例でも取付上端731を軸受け部232に枢着させている(吊り下げ支持されている)ので、軒先支持材2IIと保持部材7IIとが回動可能である点では前記第1実施例と全く同様であるが、前述のように連結ボルト8Bを介して連結する構成を採用しているので、例えばナット8c,8dを締め付けると、保持部材7IIに対して軒先支持材2IIを大きく傾斜させる(急勾配の下地に好適)ことができ、逆に緩めると、軒先支持材2IIの配設角度を緩やかにする(緩勾配の下地に好適)ことができる。
【0044】
図5に示す第4実施例の軒先構造は、軒先支持材2を取り付ける屋根材5IIを重ね葺き式の厚板材に変更した以外は、前記第1実施例と全く同様である。
この第4実施例では、下地(野地材6A)及び屋根材5IIの配設角度は前記第1実施例と同様であるが、傾斜状に配設された躯体6Gの上面側に下地6Aが配設されている点などが前記第1実施例と異なる。なお、図中の6fは、野地材6Aの端面等を被覆する水切り兼化粧材である。
そして、この第4実施例における化粧材3は、化粧面部31の水下端が前記軒先支持材2に取り付けられる点は、前記第1実施例と同様であるが、化粧面部31の水上端が屋根材5II,5II同士の重合部分に取り付けられている点が前記第1実施例と異なる。
【0045】
図6に示す第5実施例の軒先構造は、前記第1実施例や前記第3実施例とは異なる角度調整機構を備える軒先支持材2IIIと保持部材7IIIを用いている。
この第5実施例における軒先支持材2IIIは、図6(b)に示すように横片部21や被取付部22については前記第1実施例や第3実施例における軒先支持材2,2IIと全く同様であるが、前記軸受け部に代えて保持部材7IIIの軸受け部に取り付けられる側端25が設けられ、軒先側へ延在する長孔を備える係止片26が設けられた構成である。
また、この第5実施例における保持部材7IIIは、図6(b)に示すように前記軒先支持材2IIIの側端25を枢着させる軸受け部75が設けられ、軒先側上方が開放する取付溝76が設けられた構成である。該取付溝76には、六角ボルトである連結ボルト8eの頭部が保持され、該連結ボルト8eにはナット8fが螺合されている。
【0046】
そして、前記保持部材7IIIに取り付けられた連結ボルト8eが、前記軒先支持材2IIIの係止片26を貫通すると共に、ナット8fが係止片26の表面側に係止する状態で連結されている。
即ちこの第5実施例でも側端25を軸受け部75に枢着させているので、軒先支持材2IIIと保持部材7IIIとが回動可能である点では前記第1実施例や前記第3実施例と全く同様であるが、前述のように連結ボルト8eを介して連結する構成を採用しているので、ナット8fを締め付けて任意の位置にて配設角度を調整することができる。なお、図中の8gは、枢着部位に打ち込んだ固着具であって、調整後の一体性を向上することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 軒樋
11 底面
12 内側面
121 軒先端
13 外側面
131 被支持部
2,2II,2III 軒先支持材
21 横片部
22 被取付部
23 支持部
231 係合部
232 軸受け部
24 縦片
3 化粧材
31 化粧面部
3b 固定具
3c バックアップ材
4 カバー材
5,5',5II 屋根材
5b 固着具
51 面板部
52 水下側成形部
53 水上側成形部
54 固着部
6A 下地(野地材)
7,7II,7III 保持部材
71 保持部
72 係合部
73 取付部
8A 筒状連結具
8B,8e 連結ボルト
8c,8d,8f ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6