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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】サドル付分水栓
(51)【国際特許分類】
   E03B 7/00 20060101AFI20230828BHJP
   F16L 41/12 20060101ALI20230828BHJP
   F16L 41/16 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
E03B7/00 B
F16L41/12
F16L41/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020016965
(22)【出願日】2020-02-04
(65)【公開番号】P2021123914
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000151025
【氏名又は名称】株式会社タブチ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】徳田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】寺田 孝
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-330542(JP,A)
【文献】特開昭53-078420(JP,A)
【文献】特開2005-069316(JP,A)
【文献】実開昭53-099857(JP,U)
【文献】特開2015-072060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 7/00
F16L 41/12
F16L 41/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道管の周面に設ける穿孔により、水流を前記水道管基準で径方向においての外方に分岐させるために、少なくとも外周部が樹脂製とされた前記水道管に取り付けられるサドル付分水栓において、
前記水道管の外周面に取り付けられる樹脂製であって略円筒形状を有するサドル部と、
当該サドル部の水道管基準で径方向においての外方に取り付けられた胴部であり前記胴部の内部に設けられた流路を開閉する弁体を内蔵した胴部と、
前記サドル部の内周面から前記水道管に向かって突出するように設けられた突起部と、を備える、サドル付分水栓。
【請求項2】
前記突起部の硬さは前記水道管における前記外周部の硬さよりも大きく、
前記サドル部が前記水道管に取り付けられた際、前記突起部は前記水道管における前記外周部に食い込む、請求項1に記載のサドル付分水栓。
【請求項3】
前記突起部の硬さは、前記サドル部の硬さよりも大きい、請求項2に記載のサドル付分水栓。
【請求項4】
前記突起部の断面形状は、先端が尖った形状である、請求項2または3に記載のサドル付分水栓。
【請求項5】
前記突起部の硬さは前記水道管における前記外周部の硬さよりも小さいか同じであり、
前記サドル部が前記水道管に取り付けられた際、前記突起部は前記水道管における前記外周部に当接することで圧縮変形する、請求項1に記載のサドル付分水栓。
【請求項6】
前記サドル部は周方向に二分割されており、
前記突起部が前記サドル部における少なくとも一つの分割部分の周方向中央に設けられた、請求項1~5のいずれかに記載のサドル付分水栓。
【請求項7】
前記突起部は前記サドル部とは別の部材であって、前記サドル部に埋め込まれている、請求項1~6のいずれかに記載のサドル付分水栓。
【請求項8】
前記サドル部は補強用のリブを備え、
前記リブのうち、前記突起部が埋め込まれた部分の断面寸法が他の部分の断面寸法よりも大きい、請求項7に記載のサドル付分水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サドル付分水栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サドル付分水栓の一例として、特許文献1に記載のものがある。特許文献1のサドル付分水栓は、上側サドル部及び下側サドル部を有するサドル部と、上側サドル部に取り付けられる胴部(分水栓本体)と、を備える。また、上側サドル部と下側サドル部とは、それぞれボルト取付片を備える。このようなサドル付分水栓は、上側サドル部と下側サドル部とで水道管を上下から挟み、両ボルト取付片に対して取付ボルトを挿通し、締め付けることで、水道管に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-152578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のようなサドル付分水栓を水道管に取り付けた場合、取り付けた後に、土圧や地盤沈下等により、何らかの力が分水栓にかかった場合に、サドルが水道管の外周面上をすべり、サドル付分水栓が水道管に対してずれるおそれがあった。
【0005】
そこで本発明は、水道管に対してずれにくいサドル付分水栓を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水流を分岐させるために、少なくとも外周部が樹脂製とされた水道管に取り付けられるサドル付分水栓において、前記水道管の外周面に取り付けられる樹脂製のサドル部と、当該サドル部の水道管基準で外方に取り付けられ、内部に設けられた流路を開閉する弁体を内蔵した胴部と、前記サドル部の内周面から突出する突起部と、を備える、サドル付分水栓である。
【0007】
前記構成によると、突起部が水道管に係合できるので、突起部がずれ止めとなり、サドル部が水道管に対してずれにくくなる。
【0008】
また、前記突起部の硬さは前記水道管における前記外周部の硬さよりも大きく、前記サドル部が前記水道管に取り付けられた際、前記突起部は前記水道管における前記外周部に食い込むものであってもよい。
【0009】
前記構成によると、突起部が水道管の外周部よりも硬いので、突起部が水道管に係合する際、水道管に食い込むことができるため、確実にサドル部を水道管に対してずれにくくすることができる。
【0010】
また、前記突起部の硬さは、前記サドル部の硬さよりも大きく構成してもよい。
【0011】
前記構成によると、サドル部と突起部との硬さに違いがあるため、突起部を水道管の外周部に食い込ませやすい。
【0012】
また、前記突起部の断面形状は、先端部が尖った形状であってもよい。
【0013】
前記構成によると、突起部の先端部が尖った形状であるため、突起部を水道管の外周部に食い込ませやすい。
【0014】
また、前記突起部の硬さは前記水道管における前記外周部の硬さよりも小さいか同じであり、前記サドル部が前記水道管に取り付けられた際、前記突起部は前記水道管における前記外周部に当接することで圧縮変形するよう構成してもよい。
【0015】
前記構成によると、サドル部を水道管に取り付けた際に、突起部が外周部に当接して圧縮変形するので、圧縮変形した突起部が、水道管の外周部に当接することで、摩擦力が発揮され、サドル部が水道管に対してずれにくくなる。
【0016】
また、前記サドル部は周方向に二分割されており、前記突起部が前記サドル部における少なくとも一つの分割部分の周方向中央に設けられていてもよい。
【0017】
前記構成によると、分割部分の周方向中央に突起部が設けられるので、サドル部を水道管に取り付ける際のサドル部の変形の影響を突起部が受けにくくなる。このため、突起部を水道管の外周部に確実に係合させることができる。
【0018】
また、前記突起部は前記サドル部とは別の部材であって、前記サドル部に埋め込まれていてもよい。
【0019】
前記構成によると、サドル部と突起部を別個に形成できるので、突起部を備えたサドル部を容易に形成することができる。
【0020】
また、前記サドル部は補強用のリブを備え、前記リブのうち、前記突起部が埋め込まれた部分の断面寸法が他の部分の断面寸法よりも大きくてもよい。
【0021】
前記構成によると、突起部が埋め込まれる部分のリブの断面寸法が大きいため、突起部を埋め込むことによりサドルの強度が低下することを防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、突起部を水道管に対するずれ止めとして機能させられるので、サドル付分水栓を水道管に対してずれにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係るサドル付分水栓を示す縦断面図(部分的に切断位置が異なっている)である。
図2】前記サドル付分水栓における胴部、上サドル部、胴部支持部を分解状態で示す正面図である。
図3】前記上サドル部を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のIII-III矢視の断面図である。
図4】前記胴部を示し、(a)は内部構造を省略した縦断面図、(b)は内部構造を省略した底面図である。
図5】前記胴部支持部を示し、(a)は縦断面図、(b)は底面図である。
図6】前記サドル付分水栓における下サドル部を単体で示し、(a)は平面図、(b)は底面図である。
図7】(a)は前記サドル付分水栓における突起部を示す縦断面図であり、(b)は他の実施形態に係る突起部を示す縦断面図である。
図8】本発明の他の実施形態に係るサドル付分水栓を示す要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず、本発明につき、一実施形態を取り上げて説明を行う。下記における方向の表現は、図1に示された方向による。なお、本実施形態のサドル付分水栓1の使用方向はこれに限定されるものではない。また、内外方向は、以下に「水道管P基準」と記載したように、水道管Pの軸心を基準とした方向とする。
【0025】
初めに、サドル付分水栓の取り付け対象である水道管Pについて説明する。水道管Pは、少なくとも外周部が樹脂製とされた水道管であり、本実施形態では、全体が塩化ビニル製や、ポリエチレン製とされた樹脂管である。
【0026】
本実施形態のサドル付分水栓1は、図1に示すように、水流を分岐させるために水道管P(二点鎖線で示す)に取り付けられるものである。水道管Pへの取り付けに関しては従来と同様であって、水道管Pにおける穿孔部から流出した水がサドル付分水栓1に通される。このサドル付分水栓1は、主に、サドル部2、胴部3、胴部支持部4、ガスケット5を備える。
【0027】
サドル部2は樹脂製であって、別個に形成された上サドル部2Uと下サドル部2Dとからなり、両サドル部2U,2Dは図示のように結合されて水道管Pの外周面に取り付けられる。サドル部2は周方向に二分割されていて、この二分割されたサドル部における一方の分割部分が上サドル部2Uであり、他方の分割部分が下サドル部2Dである。また、上サドル部2U及び下サドル部2Dは、それぞれ、略半円筒形状のサドル本体2U1,2D1と、各サドル本体2U1,2D1の周方向両端からそれぞれ径外側に伸びるフランジ部2U2,2D2と、を備え、各フランジ部2U2,2D2には、ボルト挿通孔2U3,2D3が形成される。サドル本体2U1,2D1における内面の周方向の曲率は一定とされている。なお、上サドル部2Uを単に「サドル」、下サドル部2Dを「バンド」と称することもある。本実施形態では、上サドル部2Uが水道管Pの上半分に取り付けられ、下サドル部2Dが水道管Pの下半分に取り付けられ、両サドル部2U,2Dが水道管Pを挟み込むようにされる。そして、両サドル部2U,2Dのフランジ部2U2,2D2を向かい合わせて、ボルト挿通孔2U3,2D3に取付ボルト23を挿通し、ナット24で締め付けることで、水道管Pにサドル部2が取り付けられる。
【0028】
サドル部2のうち上サドル部2Uは、図3(a)(b)に示すように、胴部3が上下方向に貫通する穴を含む貫通穴部21を有する。貫通穴部21における穴の内周にはサドル部側係合部22が形成されている。本実施形態のサドル部側係合部22は、図3(a)(b)に示すように貫通穴部21の穴の内周面から径外方向に凹んだ凹部からなる。ただし、これに限定されず、凸部や、他の形状である部分であってもよい。サドル部側係合部22は、貫通穴部21の内周に上端から下端まで連続して形成された、直線方向に延びる溝(具体的には四角形状の溝)である。サドル部側係合部22はサドル部2における貫通穴部21の周方向に均等間隔で複数(本実施形態では4か所)形成されている。
【0029】
図1及び図6(a)に示すように、サドル部2のうち下サドル部2Dは、突起部6を備えている。具体的に、下サドル部2Dのうち、水道管Pに径方向で対向するサドル本体2U1,2D1の内周面2D11には、幅方向(水道管Pの軸方向)に間隔をおいて2か所に突起部6が備えられている。さらに、突起部6はそれぞれ、下サドル部2Dのうち、サドル本体2D1の周方向で中央部分に備えられている。突起部6は、サドル部2とは別の部材であって、例えば、図1に示すように下サドル部2Dに埋め込まれ、一部が内周面2D11から突出している。突起部6のサドル部2(下サドル部2D)に対する固定は、嵌め合いによりなされてもよいし、ねじ結合によりなされてもよい。突起部6がサドル部2とは別の部材であることにより、サドル部2と突起部6を同時にではなく別個に形成できるので、突起部6を備えたサドル部2を容易に形成することができる。
【0030】
突起部6は、水道管Pの外周部に係合可能である。具体的に、突起部6は、例えば金属製である。このため、突起部6の硬さは、樹脂製である水道管Pの外周部の硬さよりも大きい。突起部6の硬さは均一とされている。さらに、突起部6の硬さは、下サドル部2Dの硬さよりも大きい。また、図1及び図7(a)に示すように、突起部6の断面形状は、先端部(水道管P基準で内方に位置する部分)61が尖った形状であり、本実施形態で、突起部6は、いわゆる「くぼみ先」の形状(先端部61における中央にくぼみ部分611が形成され、その円周状である周囲部分612が尖った形状)である。このような突起部6は、サドル部2が水道管Pに取り付けられた際、水道管Pにおいて樹脂製である外周部に、先端部61が食い込むように係合することができる。
【0031】
本実施形態のサドル付分水栓1によると、突起部6が水道管Pに係合できるので、突起部6がずれ止めとなり、サドル部2が水道管Pに対してずれにくくなる。よって、サドル付分水栓1を水道管Pに対してずれにくくできる。ここで例えば、配管分岐の関係で、水道管Pの軸心を通る上下方向に対して斜め方向に沿うように胴部3を配置することがある。このように胴部3を配置すると、胴部3の重心が水道管Pの軸心に対して左右に偏ることになる。そうなると、重力により胴部3に下方に向かう力が生じ、その力がサドル部2を水道管Pに対して回転させようとする。突起部6が水道管Pに係合していると、このようなサドル部2を回転させようとする力に対抗できることから、このように斜め方向に胴部3を配置していてもサドル付分水栓1のずれが起こりにくい。
【0032】
また、突起部6が水道管Pの外周部よりも硬いので、突起部6が水道管Pに係合する際、先端部61が水道管Pの外周部に食い込むことができるため、確実にサドル部2を水道管Pに対してずれにくくできる。さらに、突起部6の硬さは、下サドル部2Dの硬さよりも大きいので、硬さの差により、サドル部2よりも硬い突起部6を水道管Pの外周に食い込ませやすくなる。
【0033】
また、突起部6の断面形状は、先端部61が尖った形状であるため、突起部6を水道管Pの外周部に食い込ませやすい。さらに、突起部6は「くぼみ先」の形状であるので、突起部6が水道管Pに食い込んだ際にくぼみ部分に水道管Pが入り込み、尖った部分である周囲部分612がくぼみ部分に入り込んだ水道管Pの一部を取り巻くため、大きい外力がかかっても、突起部6が水道管Pに対してずれてしまいにくく、外力を受け止められるから、サドル部2が水道管Pに対してずれにくくなる。
【0034】
また、突起部6は、二分割にされたサドル部2の一つである下サドル部2Dにおけるサドル本体2D1の周方向中央に設けられているので、サドル部2を水道管Pに取り付ける際、フランジ部2U2,2D2を向かい合わせて、挿通した取付ボルト23に対するナット24の締め付けによる、サドル部2(下サドル部2D)の、内周面2D11の周方向の曲率が一定でなくなるような変形の影響を突起部6が受けにくく(周方向中央はナット24の締め付けによる変形が最も小さくなるため)、前記変形によって、突起部6が水道管Pの径方向に対して斜めに係合してしまうことを避けられる。また、別の観点では、取付ボルト23の軸心方向(つまり、取付ボルト23への締め付けに伴いナット24が移動する方向)と、突起部6が水道管Pの外周面に対して食い込んだり押し付けたりする方向とが同じ(平行の関係)であるため、突起部6が水道管Pの径方向に対して斜めに係合してしまうことを避けられる。よって、突起部6を水道管Pの外周部に確実に係合させることができる。
【0035】
また、下サドル部2Dには、補強用のリブ25が備えられている。なお、上サドル部2Uにも下サドル部2Dと、補強の点で目的が共通するリブが備えられているが、ここでは突起部6と関係する下サドル部2Dのリブ25に関してのみ説明する。リブ25は、周方向に沿って設けられる周方向リブ251と、水道管Pの軸方向(下サドル部2Dの幅方向)に沿って設けられる軸方向リブ252と、を有する。周方向リブ251と軸方向リブ252とは、互いに直交するように設けられている。具体的に、周方向リブ251は、下サドル部2Dのうち、軸方向略中央に設けられる。また、軸方向リブ252は、内方に突起部6が設けられる位置の外方を含むように設けられており、本実施形態では、下サドル部2Dのうち、周方向の中央部分に設けられている。リブ25は、突起部6が埋め込まれた部分の、リブ25の幅方向での断面寸法が他の部分の断面寸法よりも大きくなるように、他の部分よりも拡大した拡大部253を備えている。突起部6が埋め込まれた部分に拡大部253を形成することで、突起部6が埋め込まれる部分を補強し、突起部6の埋め込みのため、下サドル部2Dに穴を形成することによる強度の低下を防止できる。
【0036】
胴部3は、サドル部2から水道管P基準で外方(図示では上方としているが、実際に水道管Pに取り付けられた状態では斜め上方となる)に取り付けられ、内部に設けられた流路(水道管Pから胴部3の外部に至る、水の流れる流路)を開閉する弁機構31を備える。弁機構31は、胴部3の内部で移動(本実施形態では回転)することで流路を開閉する弁体311を備える。弁体311は胴部3に内蔵されている。本実施形態の弁体311は略球形状のいわゆる「ボール弁」であって、図1において左方に延びる操作棒312が一体となるように接続されている。操作棒312を軸心まわりに回転させることに伴い、弁体311は、図1上での水平軸まわりに回転する。弁体311が流路に対して開放状態にされた場合、胴部3において、図示上端部に設けられた吐出口33を通って、水が胴部3の外部に流出する。本実施形態の吐出口33には、樹脂管が接続される継手331が設けられている。ただし、吐出口33の構造はこれに限定されない。
【0037】
胴部3における、水道管P基準で内方(下方)の端部には胴部側ねじ部32が設けられている。この胴部側ねじ部32は、胴部3の内周にねじ(雌ねじ)を有する部分であって、胴部支持部4がねじ込まれる。なお、水道管Pを穿孔する際には継手331のナット部3311が取り外され、胴部3の上端を開放させた状態として、穿孔のための工具が挿入される。
【0038】
胴部3は、貫通穴部21に貫通した状態でサドル部2に外方から重なる外鍔部35を有する。外鍔部35は胴部3における略円筒状の本体34から径外方向に突出した、円板状の部分である。外鍔部35の下面は平面とされており、この下面がサドル部2の貫通穴部21周りの上面(平面)に当接可能に位置する。
【0039】
胴部3におけるサドル部2の貫通穴部21に位置する部分の外周には、サドル部側係合部22に対して係合する胴部側係合部36が形成されている。本実施形態の胴部側係合部36は、図2及び図4(b)に示すように、サドル部側係合部22に対応した凸部からなる。ただし、これに限定されず、サドル部側係合部22に対応する限りで、凹部や、他の形状である部分であってもよい。胴部側係合部36は外鍔部35よりも下方にて、上下に形成された突起(具体的には四角形状の突条)である。胴部側係合部36は胴部3の周方向に均等間隔で複数(本実施形態では4か所)形成されている。胴部側係合部36の数量は、通常は、サドル部側係合部22の数量と一致している。
【0040】
胴部支持部4は、胴部3に対し、サドル部2の水道管P基準で内方(下方)からねじ込みにより取り付けられる。胴部支持部4のねじ込みは、サドル部2の貫通穴部21に対して胴部3を貫通させてから行われる。胴部支持部4は、弁体受け部41、胴部支持部側ねじ部42、内鍔部43を有する。
【0041】
弁体受け部41は、胴部3に取り付けられた状態で弁体311に接する部分である。図1に示すように、弁体受け部41には樹脂製のボールシート411が嵌め込まれることで取り付けられており、このボールシート411を介して弁体311に接する。本実施形態では、弁体受け部41が弁体311を、水道管P基準で内方(下方)から支持するように構成されている。このため、胴部支持部4の胴部3に対するねじ込み度合に応じて、弁体311の支持が調整される。弁体311の支持の調整のため、図5(a)(b)に示すように、胴部支持部4の下部には六角形状の凹部45が形成されており、六角レンチ等を用いて胴部3へのねじ込みを行うことができる。
【0042】
胴部支持部側ねじ部42は、胴部3の胴部側ねじ部32に対してねじ込むことのできるねじ(雄ねじ)を有する部分である。胴部支持部側ねじ部42における基端部にはOリングが設けられていて、胴部3と胴部支持部4との間の漏水を防止する。
【0043】
内鍔部43は、サドル部2に内方から重なる部分である。この内鍔部43は胴部支持部4における略円筒状の本体44から径外方向に突出した、円板状の部分である。内鍔部43の上面は平面とされており、この上面がサドル部2の貫通穴部21周りの下面(平面)に当接可能に位置する。
【0044】
内鍔部43は、胴部3の外鍔部35との組み合わせで、サドル部2の貫通穴部21(貫通穴の周囲部分を含む)を内外(上下)から挟む。なお、外鍔部35の下面と内鍔部43の上面との上下方向の距離は、サドル部2の貫通穴部21における上面と下面との距離(厚さ寸法)よりもわずかに大きく設定されている。こう設定している理由は、弁体受け部41がボールシート411を介して弁体311に接することから、弁体311により胴部3内部の流路の開閉が確実になされるようにする必要性から、胴部支持部4の胴部3に対してねじ込みを確実にしなければならないからである。よって、サドル部2(貫通穴部21)に引っ掛かることで胴部支持部4の胴部3へのねじ込みが途中で不可能にならないよう、余裕を持った距離として、貫通穴部21の上下の距離に対して大き目の寸法に設定されている。前記設定により、サドル部2の貫通穴部21に対して、外鍔部35、内鍔部43の両方が当接する訳ではなく、サドル部2に対して上下方向でわずかに遊びをもって胴部3と弁体受け部41が位置することになる。この遊びは、ガスケット5の弾性力により弁体受け部41が押し上げられることで、胴部3及び胴部支持部4が上昇し、内鍔部43の上面がサドル部2の貫通穴部21周りの下面に対して当接することにより解消する(サドル部2に対して胴部3がぐらつかない状態となる)。
【0045】
ガスケット5は周方向に一連に形成された、ゴム等の軟質樹脂製のリングであり、水道管Pと内鍔部43との間に位置して密着することにより、水道管Pと胴部支持部4との間での防水をなす。ガスケット5は、内鍔部43の下面と水道管Pの外周面とに挟まれることで圧縮する。図1に二点鎖線で示された部分(水道管Pが位置する部分)とガスケット5とが重なった部分が圧縮される。このように水道管P及び内鍔部43に対して密着するガスケット5により確実な防水が可能である。特に本実施形態では、内鍔部43が全面的にガスケット5に密着する。このため、止水性が良好である。
【0046】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0047】
例えば、前記実施形態において、サドル部2は、両サドル部2U,2Dの両端に形成されたフランジ部2U2,2D2を取付ボルト23及びナット24等により接続されると説明したが、これに限らず、例えば、両サドル部2U,2Dの一端がヒンジで接続されており、他端をボルト、ナット等で接続してもよい。
【0048】
また、突起部6は、下サドル部2Dに設けられると説明したが、上サドル部2Uに設けられていてもよいし、両サドル部2U,2Dに設けられていてもよい。さらに、突起部6は2つ設けられると説明したが、これに限らず、1つであってもよいし、3つ以上設けられてもよい。また、突起部6の硬さは、前記実施形態のような硬さに限らず、水道管の外周部に係合(具体的には食い込み)可能な程度の硬さであればよい。さらに、突起部6は、サドル部2とは別の部材であり、サドル部2(下サドル部2D)に埋め込まれている場合について説明したが、突起部6は、サドル部2の一部として一体形成される等、サドル部2と同じ部材であってもよい。また、突起部6がサドル部2に埋め込まれずに、接着や摩擦力を利用して、サドル部2の内周面に取り付けられていてもよい。
【0049】
さらに、前記実施形態では、突起部6の先端部61を「くぼみ先」の形状として説明したが、この形状に限らず、先端部61が一点に集中するように尖った「尖り先」としてもよいし(図7(b)参照)、先端部61が複数に分かれた鋸刃状としてもよい。つまり突起部6は、先端部61が、水道管Pの外周部に食い込めるような形状であればよい。例えば、先端部61が尖っている等、断面形状で角を有するような形状である。角は鋭角でも鈍角でもよいが、鋭角が好ましい。
【0050】
また、前記実施形態では、突起部6の硬さは均一とされていたが、これに限らず、例えば、熱処理を行うことにより、他の部分に比べて先端部61を硬く形成することもできる。
【0051】
また、突起部6は、水道管Pの外周部に食い込む場合について説明したが、例えば、突起部6は、水道管Pの外周部に食い込まず、図8に示すように、水道管Pの外周面に対して圧し潰されるように構成されてもよい。この場合の突起部6の硬さは水道管Pにおける外周部の硬さよりも小さい。または同じである。突起部6の硬さが水道管Pにおける外周部の硬さと同じであったとしても、両サドル部2U,2Dの水道管Pへの圧着に伴って、突起部6の圧し潰しは発生させられる。そして、サドル部2が水道管Pに取り付けられた際、突起部6は水道管Pにおける外周部に当接することで圧縮変形する。このような構成では、圧縮変形した突起部6が水道管Pの外周面に当接して、変形により広がった先端部61が摩擦力を発揮することで、サドル部2が水道管Pに対してずれにくくなる。なお、この圧縮変形による当接も係合の一態様である。
【0052】
さらに、胴部3と胴部支持部4は、上サドル部2Uを挟むように上サドル部2Uの上方及び下方に取り付けられる場合について説明したが、この構成に限らず、上サドル部2Uにインサート成型された金属製のブッシュに胴部3を差し込むことで、サドル部2に胴部3を取り付ける構成としてもよい。
【0053】
また、サドル部2にはリブ25が設けられると説明したが、リブ25が設けられない構成としてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 サドル付分水栓
2 サドル部
2U サドル部における一つの分割部分、上サドル部(サドル)
2D サドル部における一つの分割部分、下サドル部(バンド)
2D11 内周面(下サドル部)
21 貫通穴部
22 サドル部側係合部
25 リブ
3 胴部
31 弁機構
311 弁体
32 胴部側ねじ部
35 外鍔部
36 胴部側係合部
4 胴部支持部
41 弁体受け部
42 胴部支持部側ねじ部
43 内鍔部
5 ガスケット
6 突起部
61 先端部
P 水道管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8