(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】癌を性質決定する組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6886 20180101AFI20230828BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALI20230828BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20230828BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230828BHJP
A61K 31/03 20060101ALI20230828BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20230828BHJP
【FI】
C12Q1/6886 Z
C12Q1/6813 Z
C12Q1/6844 Z
A61P35/00
A61K31/03
C12N15/09 Z
(21)【出願番号】P 2020529263
(86)(22)【出願日】2018-11-28
(86)【国際出願番号】 US2018062709
(87)【国際公開番号】W WO2019108568
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-08-30
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507238218
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】レラリオ,アントニオ エム.
(72)【発明者】
【氏名】モハン,ディピカ
(72)【発明者】
【氏名】ハマー,ゲイリー
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】Mol. Cell. Endocrinol.,2014年,Vol. 386,p. 67-84
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00 - 1/70
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
副腎皮質癌(ACC)を性質決定するための組成物であって、
前記組成物は、BUB1B、PINK1、およびG0S2の少なくとも1つの発現レベルおよびG0S2のメチル化状態を決定するための試薬を含み、
当該試薬は、BUB1B、PINK1、およびG0S2の少なくとも1つにハイブリダイズする1つまたは複数の核酸プローブ、BUB1B、PINK1、およびG0S2の少なくとも1つの増幅または伸長のための1つまたは複数の核酸プライマー、ならびにメチル化G0S2核酸に特異的に結合する1つまたは複数の核酸プライマーからなる群より選択され、
前記性質決定することは、以下を含む:
a)ACCと診断された対象からのサンプルを、BUB1B、PINK1、およびG0S2の少なくとも1つの発現レベルならびにG0S2のメチル化状態を決定するための試薬と接触させること;および
b)BUB1B、PINK1、およびG0S2の発現レベルおよびG0S2のメチル化状態に基づいて、前記ACCを分子サブグループCOC1、COC2またはCOC3として性質決定すること、
前記性質決定することは、BUB1B-PINK1発現スコアを決定することを含み、
閾値レベルを超えるBUB1B-PINK1発現スコアはCOC1を示し、閾値レベル未満のBUB1B-PINK1発現スコアおよび5%未満のG0S2メチル化はCOC2を示し、閾値レベル未満のBUB1B-PINK1発現スコアおよび5%を超えるG0S2メチル化はCOC3を示す、組成物。
【請求項2】
前記性質決定することは、予後を決定することをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記予後が転移の見込みである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
COC3分類が、前記ACCの転移および悪性の癌を示す、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記性質決定は、前記分子サブグループに基づいて実施する処置方針を決定することをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記実施する処置方針は、COC3腫瘍を有する対象における補助的な細胞傷害性化学療法を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記化学療法がミトタンである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記性質決定は、前記処置を施すことをさらに含む、請求項6または7に記載の組成物。
【請求項9】
ACCを処置するための組成物であって、
前記組成物は、BUB1B、PINK1、およびG0S2の少なくとも1つの発現レベルおよびG0S2のメチル化状態を決定するための試薬を含み、
当該試薬は、BUB1B、PINK1、およびG0S2の少なくとも1つにハイブリダイズする1つまたは複数の核酸プローブ、BUB1B、PINK1、およびG0S2の少なくとも1つの増幅または伸長のための1つまたは複数の核酸プライマー、ならびにメチル化G0S2核酸に特異的に結合する1つまたは複数の核酸プライマーからなる群より選択され、
前記処置は、以下を含む:
a)ACCと診断された対象からのサンプルを、BUB1B、PINK1、およびG0S2の少なくとも1つの発現レベルならびにG0S2のメチル化状態を決定するための試薬と接触させること;
b)BUB1B、PINK1、およびG0S2の発現レベルおよびG0S2のメチル化状態に基づいて、前記ACCを分子サブグループCOC1、COC2、またはCOC3として性質決定すること;および
c)COC3腫瘍を有する対象に補助的な細胞傷害性化学療法を施すこと、
前記性質決定することは、BUB1B-PINK1発現スコアを決定することを含み、
閾値レベルを超えるBUB1B-PINK1発現スコアはCOC1を示し、閾値レベル未満のBUB1B-PINK1発現スコアおよび5%未満のG0S2メチル化はCOC2を示し、閾値レベル未満のBUB1B-PINK1発現スコアおよび5%を超えるG0S2メチル化はCOC3を示す、組成物。
【請求項10】
前
記サンプルは、組織サンプル、生検サンプル、血液サンプル、および尿サンプルからなる群から選択される、請求項1~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
遺伝子発現およびメチル化を分析する方法であって、
a)ACCと診断された対象からのサンプルを、BUB1B、PINK1、およびG0S2の少なくとも1つの発現レベルならびにG0S2のメチル化状態を決定するための試薬と接触させることと、
b)BUB1B、PINK1、およびG0S2の発現レベルならびにG0S2のメチル化状態を同定することと、
c)前記同定結果に基づいて、前記ACCを分子サブグループCOC1、COC2、またはCOC3として性質決定することと、を含み、
前記性質決定することは、BUB1B-PINK1発現スコアを決定することを含み、
閾値レベルを超えるBUB1B-PINK1発現スコアはCOC1を示し、閾値レベル未満のBUB1B-PINK1発現スコアおよび5%未満のG0S2メチル化はCOC2を示し、閾値レベル未満のBUB1B-PINK1発現スコアおよび5%を超えるG0S2メチル化はCOC3を示す、方法。
【請求項12】
前
記サンプルは、組織サンプル、生検サンプル、血液サンプル、および尿サンプルからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記試薬が、BUB1B、PINK1、およびG0S2の少なくとも1つにハイブリダイズする1つまたは複数の核酸プローブ、BUB1B、PINK1、およびG0S2の少なくとも1つの増幅または伸長のための1つまたは複数の核酸プライマー、ならびにメチル化G0S2核酸に特異的に結合する1つまたは複数の核酸プライマーからなる群より選択される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
キットまたはシステムであって
BUB1B、PINK1、およびG0S2の少なくとも1つの発現レベルおよびG0S2のメチル化状態を決定するための試薬を含み、
当該試薬は、BUB1B、PINK1、およびG0S2の少なくとも1つにハイブリダイズする1つまたは複数の核酸プローブ、BUB1B、PINK1、およびG0S2の少なくとも1つの増幅または伸長のための1つまたは複数の核酸プライマー、ならびにメチル化G0S2核酸に特異的に結合する1つまたは複数の核酸プライマーからなる群より選択され、
前記キットまたはシステムが、以下の用途のキットまたはシステムである:
a)ACCと診断された対象からのサンプルを、BUB1B、PINK1、およびG0S2の少なくとも1つの発現レベルならびにG0S2のメチル化状態を決定するための試薬と接触させ;かつ
b)BUB1B、PINK1、およびG0S2の発現レベルおよびG0S2のメチル化状態に基づいて、前記ACCを分子サブグループCOC1、COC2またはCOC3として性質決定する、
前記性質決定することは、BUB1B-PINK1発現スコアを決定することを含み、
閾値レベルを超えるBUB1B-PINK1発現スコアはCOC1を示し、閾値レベル未満のBUB1B-PINK1発現スコアおよび5%未満のG0S2メチル化はCOC2を示し、閾値レベル未満のBUB1B-PINK1発現スコアおよび5%を超えるG0S2メチル化はCOC3を示す、キットまたはシステム。
【請求項15】
メチル化DNAを検出する試薬をさらに含む、請求項14に記載のキットまたはシステム。
【請求項16】
前記試薬が重亜硫酸塩を含む、請求項15に記載のキットまたはシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は2017年11月29日に出願された米国仮出願第62/592,009号および2018年5月22日に出願された米国仮出願第62/674,883号の優先権および利益を主張するものであり、それらの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(開示の属する技術分野)
本開示は、癌を特徴付け、実施する処置方針を決定するための組成物、システム、および方法に関する。特に、本開示は、遺伝子発現およびメチル化プロファイルを用いて副腎皮質癌を層別および処置するための組成物、システム、および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
副腎皮質癌(ACC)は全体的に予後不良をともなう稀な悪性腫瘍である。ACCのための処置選択肢は限られており、手術が長期の寛解および回復をもたらすことができる唯一の処置法である。手術にもかかわらず、初期段階にある疾患を有している患者の3分の1は術後に転移を起こすため、全身性の処置を要する。このため、マージンなしの外科的切除に続いて、現在では、抗アドレナリン化合物ミトタンによる補助療法がほとんどのACC患者に対する標準処置の一部となっている。ミトタンの治療的血清レベルを達成するには、典型的には数カ月の薬物投与を必要とし、多くの患者は、その時期の間に不可避に再発する。補助的な細胞傷害性化学療法は、これらの高リスク患者に非常に有益である。患者の3分の1までは手術後に再発しないため、補助的な対処を必要としない。しかし、ACCにおけるリスク層別は困難である。
【0004】
細胞増殖の組織学的評価(KI67指数または有糸分裂数のいずれかによる)に基づいて、初期段階にある疾患を有している患者の再発リスクを層別する現在のアプローチは、いくつかの制限を有しており、高リスクACC患者を確実に同定できない。
【0005】
高リスク患者を同定し、処置する改善された方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、癌を特徴付け、実施する処置方針を決定するための組成物、システム、および方法に関する。特に、本開示は、遺伝子発現およびメチル化プロファイルを用いて副腎皮質癌を層別および処置するための組成物、システム、および方法に関する。
【0007】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるのは、副腎皮質癌(ACC)を性質決定する方法であって、a)ACCと診断された対象からのサンプルを、BUB1 Mitotic Checkpoint Serine/Threonine Kinase B(BUB1B)、PTEN Induces Ptative Kinase 1(PINK1)、およびG0/G1 Swich 2(G0S2)の少なくとも1つの発現レベルおよびG0S2のメチル化状態を決定する試薬と接触させることと;b)BUB1B、PINK1、およびG0S2の少なくとも1つの発現レベルならびにG0S2のメチル化状態に基づいて、前記ACCを分子サブグループCOC1、COC2、またはCOC3として性質決定することと、を含むまたはからなる、方法である。いくつかの実施形態では、前記性質決定することは、BUB1B-PINK1発現スコアを決定することを含む。いくつかの実施形態では、閾値レベルを超えるBUB1B-PINK1発現スコアはCOC1を示す。いくつかの実施形態では、閾値レベル未満のBUB1B-PINK1発現スコアおよび閾値レベル(例えば、5%)未満のG0S2メチル化はCOC2を示す。いくつかの実施形態では、閾値レベル未満のBUB1B-PINK1発現スコアおよび閾値レベル(例えば、5%)を超えるG0S2メチル化はCOC3を示す。いくつかの実施形態では、前記性質決定することは、予後(例えば、転移の見込み)を決定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、COC3分類がACCの転移および悪性の癌を示す。いくつかの実施形態では、前記方法は、前記分子サブグループに基づいて実施する処置方針を決定することをさらに含む。例えば、いくつかの実施形態において、前記実施する処置方針は、COC3腫瘍を有する対象における補助的な細胞傷害性化学療法(例えば、ミトタン)を含む。いくつかの実施形態では、前記方法は、前記処置を施すことをさらに含む。
【0008】
さらなる実施形態は、ACCを処置する方法であって、a)ACCと診断された対象からのサンプルを、BUB1B、PINK1、およびG0S2の少なくとも1つの発現レベルならびにG0S2のメチル化状態を決定するための試薬と接触させることと;b)BUB1B、PINK1、およびG0S2の発現レベルならびにG0S2のメチル化状態に基づいて、前記ACCを分子サブグループCOC1、COC2、またはCOC3として性質決定することと;c)COC3腫瘍を有する対象に補助的な細胞傷害性化学療法を施すことと、を含むまたはからなる、方法を提供する。
【0009】
さらに他の実施形態は、遺伝子発現およびメチル化を分析する方法であって、a)ACCと診断された対象からのサンプルを、BUB1B、PINK1、およびG0S2の少なくとも1つの発現レベルならびにG0S2のメチル化状態を決定する試薬と接触させることと;b)BUB1B、PINK1、およびG0S2の発現レベルおよびG0S2のメチル化状態を同定することと、を含むまたはからなる、方法を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記生物学的サンプルは、例えば、組織サンプル、生検サンプル、血液サンプル、または尿サンプルである。いくつかの実施形態では、前記試薬は、例えば、BUB1B、PINK1およびG0S2にハイブリダイズする1つまたは複数の核酸プローブ、BUB1B、PINK1およびG0S2の増幅または伸長のための1つまたは複数の核酸プライマー、またはメチル化G0S2核酸または修飾(例えば、重亜硫酸塩処理)G0S2核酸に特異的に結合する1つまたは複数の核酸プライマーである。
【0011】
さらなる実施形態は、BUB1B、PINK1、およびG0S2の少なくとも1つの発現レベルおよびG0S2のメチル化状態を決定する試薬を含むか、または当該試薬からなるキットまたはシステムを提供し、ここで、当該試薬は、例えば、BUB1B、PINK1、およびG0S2にハイブリダイズする1つまたは複数の核酸プローブ、BUB1B、PINK1、およびG0S2の増幅または伸長のための1つまたは複数の核酸プライマー、またはメチル化G0S2核酸または修飾(例えば、重亜硫酸塩処理)G0S2核酸に特異的に結合する1つまたは複数の核酸プライマーである。いくつかの実施形態において、前記キットまたはシステムは、メチル化DNAを検出する試薬(例えば、重亜硫酸塩)、緩衝液およびコントロールなどをさらに含む。
【0012】
追加の実施形態は、本明細書に含まれる教示に基づいて、関連技術の当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】
図3は、COC割り当てフローチャートを示す。
【
図4A】
図4Aは、BUB1BおよびPINK1の発現およびG0S2のメチル化が、ACC-TCGAに基づくCOC1~3を概括することを示す。
【
図4B】
図4Bは、BUB1BおよびPINK1の発現およびG0S2のメチル化が、ACC-TCGAに基づくCOC1~3を概括することを示す。
【
図4C】
図4Cは、BUB1BおよびPINK1の発現およびG0S2のメチル化が、ACC-TCGAに基づくCOC1~3を概括することを示す。
【
図4D】
図4Dは、BUB1BおよびPINK1の発現およびG0S2のメチル化が、ACC-TCGAに基づくCOC1~3を概括することを示す。
【
図4E】
図4Eは、BUB1BおよびPINK1の発現およびG0S2のメチル化が、ACC-TCGAに基づくCOC1~3を概括することを示す。
【
図4F】
図4Fは、BUB1BおよびPINK1の発現およびG0S2のメチル化が、ACC-TCGAに基づくCOC1~3を概括することを示す。
【
図4G】
図4Gは、BUB1BおよびPINK1の発現およびG0S2のメチル化が、ACC-TCGAに基づくCOC1~3を概括することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(定義)
本開示の理解を容易にするために、いくつかの用語および句を以下に定義する:
本明細書に使用されるとき、用語「感度」は、真陽性の数を真陽性および偽陰性の合計で割ることによって計算される、分析(例えば、方法、試験)の性能の統計的尺度として定義される。
【0015】
本明細書に使用されるとき、用語「特異性」は、真陰性の数を真陰性および偽陽性の合計で割ることによって計算される、分析(例えば、方法、試験)の性能の統計的尺度として定義される。
【0016】
本明細書に使用されるとき、用語「有益である(informative)」または「有益性(informativeness)」は、マーカーまたはマーカーのパネルの質をいい、特に、陽性サンプル中のマーカー(またはマーカーのパネル)を見つける可能性をいう。
【0017】
本明細書に使用されるとき、用語「転移」は、1つの臓器または身体の一部に由来する癌細胞が身体の別の部位に移動し、複製を続ける過程を意味する。転移細胞はその後、さらに転移する可能性のある腫瘍を形成する。したがって、転移とは、癌が、もともと発生した身体部位から他の身体部位に拡がることを意味する。本明細書に使用される用語「転移ACC癌細胞」は、転移したACC癌細胞を指すことが意図される。
【0018】
本明細書に使用される用語「新生物」は、組織の、新たな異常なあらゆる増殖を指す。したがって、新生物は、前癌性新生物または悪性新生物であり得る。用語「新生物特異的マーカー」は、新生物の存在を示すために使用され得る任意の生物学的物質を指す。生物学的物質の例としては、核酸、ポリペプチド、炭化水素、脂肪酸、細胞成分(例えば、細胞膜およびミトコンドリア)および細胞全体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書に使用されるとき、用語「アンプリコン」は、プライマー対を使用して生成される核酸をいう。アンプリコンは典型的には一本鎖DNA(例えば、非対称増幅の結果)であるが、RNAまたはdsDNAであってもよい。
【0020】
核酸と関連して、用語「増幅する」または「増幅」は、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの一部の多数のコピーの生成、典型的には少量のポリヌクレオチド(例えば、単一のポリヌクレオチド分子)から出発する生成であって、増幅産物またはアンプリコンが一般に検出可能である生成を指す。ポリヌクレオチドの増幅は、種々の化学的および酵素的プロセスを包含する。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはリガーゼ連鎖反応(LCR;例えば、米国特許第5,494,810号を参照のこと;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)における標的またはテンプレートDNA分子の1コピーまたは数コピーからの多数のDNAコピーの生成は、増幅の一形態である。増幅のさらなる種類としては、対立遺伝子特異的PCR(例えば、米国特許第5,639,611号を参照のこと;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、アセンブリPCR(例えば、米国特許第5,965,408号を参照のこと;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、ヘリカーゼ依存増幅(例えば、米国特許第7,662,594号を参照のこと;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、ホットスタートPCR(例えば、米国特許第5,773,258号および第5,338,671号を参照のこと;それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる)、配列間特異的PCR、逆PCR(例えば、Triglia, et al.(1988)Nucleic Acids Res.,16:8186を参照のこと;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、ライゲーション媒介PCR(例えば、Guilfoyle、R.et al.Nucleic Acids Research,25:1854-1858(1997);米国特許第5,508,169号を参照のこと;それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる)、メチル化特異的PCR(例えば、Herman et al.(1996)PNAS 93(13)9821-9826を参照のこと;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、ミニプライマーPCR多重化ライゲーション依存プローブ増幅(例えば、Schouten et al.、(2002)Nucleic Acids Research 30(12): e57;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、多重化PCR(例えば、Chamberlain et al.、(1988)Nucleic Acids Research 16(23)11141-11156; Ballabio et al.、(1990)Human Genetics 84(6)571-573;Hayden et al.、(2008)BMC Genetics 9:80を参照のこと;それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる)、ネステッドPCR、オーバーラップ伸長PCR(例えば、Higuchi et al.(1988)Nucleic Acids Research 16(15)7351-7367を参照のこと;参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる)、リアルタイムPCR(例えば、Higuchi et al.(1992)Biotechnology 10:413-417;Higuchi et al.(1993)Biotechnology 11:1026-1030を参照のこと;それぞれの全体が参照により本明細書中に組み込まれる)、逆転写PCR(例えば、Bustin、S.A(2000)J.Molecular Endocrinology 25:169-193を参照のこと;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、固相PCR、熱非対称インターレースPCR、タッチダウンPCR(例えば、Don et al.、Nucleic Acids Research(1991)19(14)4008; Roux、K(1994)Biotechniques 16(5)812-814; Hecker et al.、(1996)Biotechniques 20(3)478-485;それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる)が挙げられるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチド増幅はまた、デジタルPCRを使用して達成され得る(例えば、Kalinina et al.、Nucleic Acids Research.25; 1999-2004、(1997); VogelsteinおよびKinzler、Proc Natl Acad Sci USA、96; 9236-41、(1999); 国際特許公開第WO05023091A2号;米国特許出願公開第20070202525号を参照のこと;それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0021】
本明細書に使用されるとき、用語「相補的」または「相補性」は、塩基対合則によって関連付けられるポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)に関して使用される。例えば、配列「5’-A-G-T-3’」は配列「3’-T-C-A-5’」と相補的である。相補性は「部分的」であってもよく、この場合、核酸の塩基のいくつかのみが塩基対合則に従ってマッチする。または、核酸間で「完全な」または「全体的な」相補性が存在してもよい。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率および強度に大きく影響する。これは、増幅反応、ならびに核酸間の結合に依存する検出方法において特に重要である。
【0022】
本明細書に使用されるとき、用語「プライマー」は、精製された制限消化物にあるように天然に存在するか、または合成的に生成されるかにかかわらず、核酸ストランドに相補的なプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下(例えば、ヌクレオチドおよび誘導剤(例えば、生体触媒(例えば、DNAポリメラーゼなど)のような)の存在下で、かつ適切な温度およびpHで)に置かれる場合、合成の開始点となるオリゴヌクレオチドを指す。プライマーは増幅における最大効率のために典型的には一本鎖であるが、代わりに二本鎖であってもよい。二本鎖の場合、プライマーは一般に、まずその鎖を分離する処理を施してから、伸長産物を調製するために使用される。いくつかの実施形態では、プライマーはオリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、誘導剤の存在下で伸長産物の合成を準備するのに十分な長さである。プライマーの正確な長さは、温度、プライマーの供給源、および方法の使用を含む多くの要因に依存する。特定の実施形態では、プライマーはキャプチャプライマーである。
【0023】
本明細書に使用されるとき、用語「核酸分子」は、DNAまたはRNAを含むがこれらに限定されない、任意の核酸含有分子をいう。この用語は、DNAおよびRNAの既知の塩基類似物を含むいずれかを含む配列を包含し、当該既知の塩基類似物としては、4‐アセチルシトシン、8-ヒドロキシ-N6-メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、プソイドイソシトシン、5-(カルボキシヒドロキシル-メチル)ウラシル、5‐フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5‐カルボキシメチル‐アミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1‐メチルアデニン、1-メチルプソイド-ウラシル、1‐メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-メチルアデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシ-アミノ-メチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルケオシン、5’-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、オキシブトキソシン、プソイドウラシル、ケオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、プソイドウラシル、ケオシン、2-チオサイトシン、および2,6-ジアミノプリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本明細書に使用されるとき、用語「核酸塩基」は、「ヌクレオチド」、「デオキシヌクレオチド」、「ヌクレオチド残基」、「デオキシヌクレオチド残基」、「ヌクレオチド三リン酸(NTP)」、またはデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)を含む、当該分野で使用される他の用語と同義である。
【0025】
「オリゴヌクレオチド」は、少なくとも2つの核酸単量体ユニット(例えば、ヌクレオチド)、典型的には3つより多い単量体ユニット、より典型的には10より多い単量体ユニットを含む核酸を指す。オリゴヌクレオチドの正確なサイズは一般に、オリゴヌクレオチドの最終的な機能または使用を含む様々な要因に依存する。さらに説明すると、オリゴヌクレオチドは典型的には200残基未満の長さ(例えば、15~100)であるが、本明細書に使用されるとき、この用語はまた、より長いポリヌクレオチド鎖を包含することが意図される。オリゴヌクレオチドはしばしば、その長さによって言及される。例えば、24残基のオリゴヌクレオチドは、「24-mer」と呼ばれる。典型的には、複数のヌクレオシドモノマー(対イオンが存在するとき結合されている対イオン(例えば、H+、NH4
+およびNa+など)を含んでいる、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホラニリデートおよびホスホラミデートなどを含む)は、ホスホジエステル結合またはそのアナログによって結合されている。さらに、オリゴヌクレオチドは典型的には一本鎖である。オリゴヌクレオチドは任意に、任意の適切な方法で調製される。当該方法としては、既存配列もしくは天然配列の単離、DNA複製もしくは増幅、逆転写、適切な配列のクローニングと制限消化、または以下に挙げる方法による直接化学合成が挙げられるが、それらに限定されない。当該直接化学合成の方法としては、Narang et al.(1979)Meth Enzymol.68:90-99のホスホトリエステル法、Brown et al.(1979)Meth Enzymol.68:109-151のホスホジエステル法、Beaucage et al.(1981)Tetrahedron Lett.22:1859-1862のジエチルホスホラミダイト法、Matteucci et al.(1981)J Am Chem Soc.103:3185-3191のトリエステル法、自動合成法、または、米国特許第4,458,066号(「PROCESS FOR PREPARING POLYNUCLEOTIDES」。1984年7月3日にCaruthers et al.に発行)の固体サポート法、または当業者に公知の他の方法が挙げられる。参照により、これらの参考文献のすべてが組み込まれる。
【0026】
生体高分子の「配列」は、生体高分子中のモノマー単位(例えば、ヌクレオチドなど)の順序および同一性を指す。核酸の配列(例えば、塩基配列)は、典型的に5’から3’方向に読み取られる。
【0027】
本明細書に使用される「メチル化」とは、シトシンのC5位またはN4、アデニンのN6位におけるシトシンメチル化、または他の種類の核酸メチル化をいう。インビトロでは、増幅されたDNAはメチル化されていない。インビトロでは、DNA増幅法は増幅テンプレートのメチル化パターンを保持していないからである。ただし、「メチル化されていないDNA」または「メチル化されたDNA」は、元のテンプレートがそれぞれメチル化されていないまたはメチル化されている増幅されたDNAも指し得る。
【0028】
「メチル化状態」は、DNAの一部分の中にある特定の1つまたは複数のヌクレオチドにおけるメチル化の存在、非存在および/または量を指す。特定のDNA配列(例えば、本明細書に記載されるような遺伝子マーカーまたはDNA領域)のメチル化状態は、配列中のすべての塩基のメチル化状態を示し得るか、または配列中の塩基対のサブセット(例えば、1つ以上のシトシン)のメチル化状態を示し得るか、または配列中のどこでメチル化が起こるかの正確な情報を提供することなく、配列内の局所的なメチル化密度に関する情報を示し得る。メチル化状態は任意に、「メチル化値」によって表されるか、または示され得る。メチル化値は例えば、メチル化依存的な制限酵素による制限消化後に存在する完全なDNAの量を定量することによって、または重亜硫酸塩反応後の増幅プロファイルを比較することによって、または重亜硫酸塩処理DNAおよび未処理DNAの配列を比較することによって、生成され得る。従って、値(例えば、メチル化値)はメチル化状態を表し、従って、ある遺伝子座の多コピーにまたがるメチル化状態の定量的な指標として使用され得る。これは、サンプル中の配列のメチル化状態を閾値または参照値と比較することが望ましい場合に特に有用である。
【0029】
本明細書に使用されるとき、用語「対象」は特定の処置の受容者である任意の動物(例えば、哺乳類)を指し、当該任意の動物は、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類などを含むが、これらに限定されない。典型的には、用語「対象」および「患者」がヒト対象に関して本明細書に交換可能に使用される。
【0030】
本明細書に使用される、用語「非ヒト動物」はすべての非ヒト動物を指し、げっ歯類、非ヒト霊長類、ヒツジ、ウシ、反芻動物、ウサギ、ブタ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、鳥類などの脊椎動物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
用語「遺伝子」は、ポリペプチド、RNA(例えば、mRNA、tRNAおよびrRNAが挙げられるが、これらに限定されない)または前駆体の生成に必要なコード配列を含む核酸(例えば、DNA)配列をいう。ポリペプチド、RNA、または前駆体は、全長または断片の所望の活性または機能特性(例えば、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達など)が保持される限り、全長コード配列によって、またはコード配列の任意の部分によってコードされ得る。また、この用語は、構造遺伝子のコード領域を包含し、遺伝子が全長mRNAの長さに対応するように、5’末端および3’末端の両方のコード領域に隣接して、両方の端部で約1kbの距離にわたって位置する配列を含む。コード領域の5’側に位置し、mRNA上に存在する配列は、5’非翻訳配列と呼ばれる。コード領域の3’側または下流に位置し、mRNA上に存在する配列は、3’非翻訳配列と呼ばれる。用語「遺伝子」は、遺伝子のcDNA型およびゲノム型の両方を包含する。遺伝子のゲノム型またはクローンは、「イントロン」または「介在領域」または「介在配列」と呼ばれる非コード配列で中断されたコード領域を含む。イントロンは、核RNA(hnRNA)に転写される遺伝子のセグメントである。イントロンは、エンハンサーのような調節エレメントを含み得る。イントロンは、核転写物または一次転写物から除去または「スプライスアウト」される。したがって、イントロンは、メッセンジャーRNA(mRNA)転写産物には存在しない。mRNAは、新生ポリペプチドにおけるアミノ酸の配列または順序を特定するように翻訳中に機能する。
【0032】
本明細書に使用される、用語「遺伝子座」は、染色体上または連鎖地図上の核酸配列を指し、コード配列、ならびに遺伝子の調節に関与する5’および3’配列を含む。
【0033】
(発明の詳細な説明)
本開示は、癌を特徴付け、実施する処置方針を決定するための組成物、システム、および方法に関する。特に、本開示は、副腎皮質癌を層別および処置するために遺伝子発現およびメチル化プロファイルを利用するための組成物、システム、および方法に関する。
【0034】
近年、ACCは3つの分子サブタイプ、「COC1」、「COC2」、「COC3」から構成されることが明らかになった。COC1およびCOC2腫瘍はそれぞれ、より良好な予後および中程度の予後を示すが、COC3腫瘍は一様に不良な結果(8ヶ月の無事象の生存中央値)をもたらす。COC3腫瘍は、多くの標的分子の変化によっても区別される。これらの腫瘍は、細胞周期調節因子、いくつかの染色体切断点、および広範なCpGアイランド高メチル化(「CIMP-high」)においてしばしば遺伝子変化を有する。したがって、TCGA分子クラスに基づくACCの層別は、臨床的な価値のある、リスク評価の信頼できる方法である。具体的には、COC3腫瘍を他のACCサブタイプとを確実に区別することは、これらの高リスク患者を益しかつ低リスク患者における化学療法の適用を回避する、新たな補助戦略の開発および実行を容易にする。重要なことに、TCGAの知見を概括するために少数のバイオマーカーを使用し、かつ臨床判断と適合する期間における患者の層別を可能にするアプローチが有用である。
【0035】
したがって、本明細書で提供されるのは、ACCを分類する方法であって、少数の重要な遺伝子の発現および単一の遺伝子座のDNAメチル化を評価して、ACC-TCGAによって定義される分子カテゴリーに従ってACCサンプルを層別することを含む、方法である。
【0036】
I.ACC分類の同定
本明細書中に記載されるように、いくつかの実施形態において、1つまたは複数のACCマーカー(例えば、BUB1B、PINK1、またはG0S2)の発現またはレベルならびにG0S2のメチル化状態。いくつかの実施形態において、発現および/またはメチル化スコアは、ACCを性質決定するために用いられる。例えば、いくつかの実施形態において、閾値を超えるBUB1B-PINK1発現スコアはCOC1を示す。いくつかの実施形態において、閾値レベル未満のBUB1B-PINK1発現スコアおよび閾値レベル(例えば、5%)未満のG0S2メチル化はCOC2を示す。いくつかの実施形態において、閾値レベル未満のBUB1B-PINK1発現スコアおよび閾値レベル(例えば、5%)を超えるG0S2メチル化はCOC3を示す。(例えば、以下の実施例1および2を参照のこと)。
【0037】
例示的な検出およびスコアリング方法を以下に記載する。
【0038】
A.DNAおよびRNAの検出
いくつかの実施形態において、RNAは、ノーザンブロット分析によって検出される。ノーザンブロット分析は、RNAの分離、および相補的な標識プローブのハイブリダイゼーションを含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、RNA(または対応するcDNA)は、オリゴヌクレオチドプローブに対するハイブリダイゼーションによって検出される。ハイブリダイゼーションおよび検出のための種々の技術を用いる種々のハイブリダイゼーションアッセイが利用可能である。例えば、いくつかの実施形態において、TaqManアッセイ(PE Biosystems、Foster City、CA;例えば、米国特許第5,962,233号および第5,538,848号(これらのそれぞれは、参照により本明細書中に組み込まれる)が利用される。前記アッセイは、PCR反応の間に行われる。TaqManアッセイは、AMPLITAQ GOLD DNAポリメラーゼの5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を利用する。5’-レポーター色素(例えば、蛍光色素)および3’-クエンチャー色素を有するオリゴヌクレオチドからなるプローブは、PCR反応に含まれる。PCRの間に、プローブがその標的に結合されると、AMPLITAQ GOLDポリメラーゼの5’-3’核酸分解活性は、レポーターとクエンチャー色素との間でプローブを切断する。クエンチャー色素からのレポーター色素の分離は、蛍光の増加をもたらす。シグナルはPCRの各サイクルで蓄積し、蛍光光度計でモニターすることができる。
【0040】
いくつかの実施形態において、マイクロアレイが、癌マーカーmRNAレベルを測定するために利用される。当該マイクロアレイとしては、DNAマイクロアレイ(例えば、cDNAマイクロアレイおよびオリゴヌクレオチドマイクロアレイ);タンパク質マイクロアレイ;組織マイクロアレイ;トランスフェクションまたは細胞マイクロアレイ;化学化合物マイクロアレイ;および抗体マイクロアレイが挙げられるが、これらに限定されない。遺伝子チップ、DNAチップ、またはバイオチップとして一般に知られているDNAマイクロアレイは、固体表面(例えば、ガラス、プラスチック、またはシリコンチップ)に付着させた微小なDNAスポットの集合が、数千の遺伝子を同時に発現プロファイリングまたは発現レベルモニタリングするための1つのアレイを形成するものである。固定されたDNAセグメントは、プローブとして知られており、数千ものプローブを単一のDNAマイクロアレイに用いることができる。マイクロアレイを用いて、疾患細胞および正常細胞における遺伝子発現を比較することにより、疾患遺伝子を同定することができる。マイクロアレイは、種々の技術を用いて作製可能である。そうした技術としては、微細に先端の尖ったピンを用いたガラススライド上への印刷;予め作製されたマスクを使用するフォトリソグラフィー;動的マイクロミラーデバイスを使用するフォトリソグラフィー;インクジェット印刷;またはマイクロ電極アレイ上の電気化学が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
さらに他の実施形態では、逆転写酵素PCR(RT-PCR)を用いてRNAの発現を検出する。RT-PCRでは、RNAは逆転写酵素を用いて、相補的なDNAまたは「cDNA」に酵素的に変換される。次いで、cDNAをPCR反応のためのテンプレートとして使用する。PCR産物は任意の適切な方法によって検出され得る。当該方法としては、ゲル電気泳動およびDNA特異的な染色による染色もしくは標識プローブに対するハイブリダイゼーションが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、米国特許第5,639,606号、第5,643,765号、および第5,876,978号(それぞれ、参照により本明細書中に組み込まれる)に記載される、競合テンプレート法の標準化された混合物を用いる定量的な逆転写酵素PCRが利用される。
【0042】
いくつかの実施形態において、癌マーカーは、検出可能に標識されたプローブに対するハイブリダイゼーションおよび得られたハイブリッドの測定によって検出される。検出方法の例示的な非限定的な例を以下に記載する。
【0043】
1つの例示的な検出方法であるハイブリダイゼーション保護アッセイ(HPA)は、化学発光オリゴヌクレオチドプローブ(例えば、アクリジニウムエステル標識(AE)プローブ)を標的配列にハイブリダイズさせ、ハイブリダイズしていないプローブ上に存在する化学発光標識を選択的に加水分解し、残りのプローブから生じた化学発光をルミノメーターで測定することを含む。米国特許第5,283,174号、およびNelson et al、Nonisopic Probing,Blotting,and Sequencing、ch.17(Larry JKricka ed、2d.1995)を参照のこと。これらはそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0044】
2つの分子間の相互作用は、例えば、蛍光エネルギー移動(FRET)を用いて検出することもできる(例えば、Lakowicz et al.、米国特許第5,631,169号;Stavrianopoulos et al.、米国特許第4,968,103号を参照のこと。これらはそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる)。蛍光色素標識は、第1のドナー分子が放出した蛍光エネルギーが第2の「アクセプター」分子上の蛍光標識物によって吸収され、今度はこの蛍光標識物が吸収したエネルギーによって蛍光を発するように選択される。
【0045】
あるいは、「ドナー」タンパク質分子がトリプトファン残基の天然蛍光エネルギーを単に利用してもよい。「アクセプター」分子標識物が「ドナー」の標識物と区別され得るように、異なる波長の光を放出する複数の標識物が選択される。複数の標識物間のエネルギー移動の効率は、分子を隔てる距離に関連するので、分子間の空間的関係を評価することができる。結合が分子間で起こる状況では、「アクセプター」分子標識物の蛍光発光は最大でなければならない。FRET結合事象は、蛍光検出手段によって簡便に測定することができる。
【0046】
自己相補性を有する検出プローブの別の例は「分子ビーコン」である。分子ビーコンは、標的相補配列を有する核酸分子、増幅反応に存在する標的配列の非存在下でプローブを閉鎖立体配座に維持する親和性対(または核酸アーム)、およびプローブが閉鎖立体配座にある場合に相互作用する標識物対を含む。標的配列と標的相補配列とのハイブリダイゼーションは親和性対の構成要素を分離し、それによって、プローブを開放立体配座にシフトさせる。開放立体配座へのシフトは、標識対の相互作用の減少により検出可能である。標識物対は、例えば、蛍光色素およびクエンチャー(例えば、DABCYLおよびEDANS)であり得る。分子ビーコンは、例えば、米国特許第5,925,517号および第6,150,097号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されている。
非限定的な例として、相互作用する標識物を有するプローブ結合対(例えば、米国特許第5,928,862号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているもの)を、本開示の実施形態の方法に用いるよう適合させ得る。一塩基多型(SNP)を検出するために使用されるプローブシステムもまた、本発明で用い得る。さらなる検出システムとして、米国公開第20050042638号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているような「分子スイッチ」を挙げることができる。他のプローブ(例えば、挿入色素および/または蛍光色素を含むプローブ)も、本開示の実施形態の増幅産物方法の検出に有用である。例えば、米国特許第5,814,447号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0047】
いくつかの実施形態では、核酸シークエンシング法が検出のために用いられる。いくつかの実施形態では、シークエンシングは、第2世代(別名・次世代またはNext-Gen)、第3世代(別名・Next- Next-Gen)、または第4世代(別名・N3-Gen)のシークエンシング技術(パイロシークエンシング、ライゲーションによるシークエンシング、単分子シークエンシング、合成によるシークエンシング(SBS)、半導体シークエンシング、大規模並列クローン、大規模並列単分子SBS、大規模並列単分子リアルタイム、大規模並列単分子リアルタイムナノ細孔技術などが含まれるが、これらに限定されない)である。MorozovaおよびMarraは、Genomics,92:255(2008)(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)において、そのような技術のいくつかを概説している。当業者であれば、RNAは細胞内で安定性が低く、経験的にヌクレアーゼのアタックを受けやすいので、RNAは通常、シークエンシングの前にDNAに逆転写されることがわかるであろう。
【0048】
DNAシークエンシング技術は、蛍光に基づくシークエンシング方法を含む(例えば、Birren etal.、Genome Analysis: Analysis DNA,1、Cold Spring Harbor, NYを参照のこと。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、シークエンシングは自動シークエンシングである。いくつかの実施形態では、シークエンシングは、分割されている複数のアンプリコンの並列シークエンシングである(Kevin McKernan et al.のPCT公報WO2006084132。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態において、シークエンシングは並列オリゴヌクレオチド伸長によるDNAシークエンシングである(例えば、Macevicz et al.の米国特許第5,750,341号、およびMacevicz et al.の米国特許第6,306,597号を参照のこと。これらの両方とも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。シークエンシング技術のさらなる例として、Church polony技術(Mitra et al、2003、Analytical Biochemistry 320、55-65; Shendure et al、2005 Science 309、1728-1732;米国特許第6,432,360号;米国特許第6,485,944号;米国特許第6,511,803号;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、ピコタイターパイロシークエンシング技術(Margulies et al.,2005 Nature 437, 376-380;US 20050130173;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる);Solexa単一塩基追加技術(Bennett et al、2005、Pharmacogenomics、6、373-382; 米国特許第6,787,308号; 米国特許第6,833,246号。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、;Lynx massively parallel signature sequencing技術(Brenner et al.(2000))。Nat. Biotechnol. 18:630-634;米国特許第5,695,934号;米国特許第5,714,330号;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、およびAdessi PCRコロニー技術(Adessi et al.(2000))。Nucleic Acid Res.28、E87; WO 00018957;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)が挙げられる。
【0049】
次世代シークエンシング(NGS)法は、より古いシークエンシング法と比べてより低いコストを目標に、大規模並行ハイスループット戦略という特徴が共通する(例えば、Voelkerding et al.、Clinical Chem、55: 641-658、2009; MacLean et al.、Nature Rev.Microbiol、7: 287-296; それぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。NGS法は、典型的には、テンプレート増幅を使用するものと使用しないものとに大きく分けることができる。増幅を要する方法としては、Roche社によって454テクノロジープラットフォーム(例えば、GS 20およびGS FLX)として市販されているパイロシークエンシング、Life Technologies/Ion Torrent、Illumina、GnuBioによって市販されているSolexaプラットフォーム、およびApplied Biosystemsによって市販されているSupported Oligonucleotide Ligation and Detection(SOLiD)プラットフォームが挙げられる。単分子シークエンシングとしても知られる非増幅アプローチの例としては、Helicos BioSciencesによって市販されているHeliScopeプラットフォーム、およびVisiGen、Oxford Nanopore Technologies Ltd.、およびPacific Biosciencesによってそれぞれ市販されている新生プラットフォームが挙げられる。
【0050】
B.メチル化
哺乳動物において、メチル化はシトシン残基においてのみ、より具体的には、グアニン残基に隣接するシトシン残基(すなわち、しばしば「CpG」と示される配列CG)においてのみ生じる。DNAメチル化の部位を検出およびマッピングすることは、エピジェネティックな遺伝子調節を理解し、遺伝子調節の誤りに関連する癌および他の疾患状態を同定するための診断ツールを提供するために不可欠なステップである。
【0051】
特定の部位でのDNAメチル化の状態のマッピングは、DNA中の5-メチルシトシンの検出のためにFrommer et al.に記載されている重亜硫酸塩法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89: 1827-31(1992)、すべての目的のために参照によりその全体が本明細書中に明示的に組み込まれる)またはその変形によって現在行われている。5-メチルシトシンをマッピングする重亜硫酸塩法は、シトシンは亜硫酸水素イオン(重亜硫酸塩としても知られている)と反応するが、5-メチルシトシンは亜硫酸水素イオンと反応しないという知見に基づいている。この反応は、通常、以下の工程に従って行われる:まず、シトシンが重亜硫酸塩と反応してスルホン化シトシンを形成する。次に、スルホン化反応中間体の自然脱アミノ化により、スルホン化ウラシルが得られる。最後に、スルホン化ウリシルをアルカリ条件下で脱スルホン化してウラシルを形成する。ウラシルはアデニンと塩基対を形成する(したがってチミンのように振る舞う)のに対し、5-メチルシトシンはグアニンと塩基対を形成する(したがってシトシンのように振る舞う)ため、検出が可能である。これにより、例えば重亜硫酸塩ゲノムシークエンシング(Grigg G、&Clark S、Bioessays(1994)16:431-36;Grigg G、DNA Seq(1996)6: 189-98)によって、または、例えば米国特許第5,786,146号に開示されているメチル化特異的PCR(MSP)によって、非メチル化シトシンからメチル化シトシンを識別するのを可能にする。
【0052】
遺伝子のメチル化状態はしばしば、特定の部位(例えば、単一ヌクレオチドまたは目的のより長い配列(例えば、DNAの~100bpの部分配列まで))でメチル化されているDNAの個々の鎖の、当該特定の部位を含むサンプル中のDNAの総集団に対する、画分またはパーセンテージとして表される。伝統的に、メチル化されていない(例えば、天然の)遺伝子の量は、キャリブレーターを使用するPCRによって決定される。次いで、既知量のDNAを重亜硫酸塩処理し、得られたメチル化特異的配列を、リアルタイムPCRまたは同等の指数増幅のいずれかを用いて決定する。
【0053】
例えば、従来の方法は一般に、外部標準を使用することによって、非メチル化標的についての標準曲線を作成することを含む。標準曲線は、少なくとも2点から構築され、未メチル化DNAのリアルタイムCt値を既知の定量標準に関連付ける。次いで、メチル化標的についての第2の標準曲線を、少なくとも2つの点および外部標準から構築する。この第2の標準曲線は、メチル化DNAについてのCtを既知の定量標準に関連付ける。次に、メチル化集団および非メチル化集団について試験サンプルCt値を決定し、最初の2つの工程によって作製された標準曲線からDNAのゲノム当りの量を計算する。対象部位でのメチル化の割合は、集団中のDNAの総量に対するメチル化DNAの量、例えば、(メチル化DNAの数)/(メチル化DNAの数+非メチル化DNAの数)×100から計算される。
【0054】
本開示は、遺伝子のメチル化状態を測定する方法に関して限定されない。例えば、いくつかの実施形態において、メチル化状態は、ゲノム走査法によって測定される。例えば、1つの方法は制限ランドマークゲノムスキャニング(Kawai et al.、Mol.Cell.Biol.14:7421-7427、1994)を含み、別の例はメチル化感受性の任意プライムPCR(Gonzalgo et al.、Cancer Res.57:594-599、1997)を含む。いくつかの実施形態において、特定のCpG部位におけるメチル化パターンの変化は、メチル化感受性の制限酵素によるゲノムDNAの消化、続いて、関心領域のサザン分析(消化-サザン法)によってモニターされる。いくつかの実施形態においては、PCR増幅前に、メチル化感受性制限酵素を有するゲノムDNAの消化を含むPCRベースのプロセスを含む(Singer-Sam et al、Nucl.Acids Res.18:687、1990)。さらに、メチル化分析の出発点としてDNAの重亜硫酸塩処理を利用する他の技術が報告されている。こうした他の技術としては、メチル化特異的PCR(MSP)(Herman et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:9821-9826、1992)および重亜硫酸塩転換DNAから増幅したPCR産物の制限酵素消化(Sadri and Hornsby、Nucl.Acids Res.24:5058-5059、1996;およびXiong and Laird、Nucl.Acids Res.25:2532-2534、1997)が挙げられる。PCR技術は、遺伝子変異の検出(Kuppuswamy et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.55 USA 88:1143-1147、1991)および対立遺伝子特異的発現の定量化(Szaboand Mann、Genes Dev.9:3097-3108、1995;およびSinger-Sam et al.、PCR Methods Appl.1:160-163、1992)のために開発されてきた。このような技術は内部プライマーを用いる。内部プライマーは、PCR生成テンプレートにアニールし、アッセイされる単一ヌクレオチドの5’で直ちに終結する。いくつかの実施形態では、米国特許第7,037,650号に記載された「定量的Ms-SNuPEアッセイ」を用いた方法が用いられる。
【0055】
II.ACCの予後と処置
さらなる実施形態はACCを性質決定する(例えば、腫瘍の悪性または転移の可能性のような予後を示す、または実施する処置方針を決定するための)方法を提供する。例えば、いくつかの実施形態では、COC3分類がACCの転移および悪性の癌を示す。いくつかの実施形態では、COC3腫瘍を有する対象に、補助的な細胞傷害性化学療法(例えば、ミトタン)を投与し、COC1またはCOC2腫瘍を有する対象を、手術単独で処置する。いくつかの実施形態では、COC分類決定が(例えば、処置中または手術後に)繰り返される。
【0056】
いくつかの実施形態では、コンピュータベースの分析プログラムを使用して、検出アッセイによって生成された生データ(例えば、所定の1つまたは複数のマーカーの発現レベル)を、臨床医の予測値のデータに変える。臨床医は、任意の適切な手段を使用して予測データにアクセスすることができる。したがって、いくつかの好ましい実施形態では、本開示は、遺伝学または分子生物学の訓練を受けている可能性が低い臨床医が生データを理解する必要がないというさらなる利益を提供する。データは、最も有用な形態で臨床医に直接提示される。次いで、臨床医は対象の処置を最適化するために、情報を直ちに利用することができる。
【0057】
本開示は、アッセイを実施する研究所、情報提供者、医療関係者、および対象との間で情報を受信、処理、および送信することができる任意の方法を意図する。例えば、本開示のいくつかの実施形態において、サンプル(例えば、生検または血液または尿サンプル)を対象から得て、世界の任意の箇所(例えば、対象が住む国または情報が最終的に使用される国とは異なる国)にあるプロファイリングサービス(例えば、医療施設における臨床研究所、ゲノムプロファイリングビジネスなど)に提出し、生データを生成する。サンプルが組織または他の生物学的サンプルを含む場合、対象は医療センターを訪れて、サンプルを採取してもらい、プロファイリングセンターに送ってもらってもよい。あるいは、対象はサンプル(例えば、尿サンプル)を自身で収集し、それをプロファイリングセンターに直接送ってもよい。サンプルが以前に測定された生物学的情報を含む場合、当該情報を対象がプロファイリングサービスに直接送ってもよい(例えば、当該情報を含む情報カードをコンピュータによってスキャンし、データを電子通信システムを用いてプロファイリングセンターのコンピュータに送信してもよい)。プロファイリングサービスに受信されると、サンプルが処理され、対象に所望される診断情報または予後情報に特化したプロファイル(すなわち、発現データ)が生成される。
【0058】
次いで、プロファイルデータは、治療する臨床医が解釈するのに適したフォーマットで作成される。例えば、生の発現データを提供するのではなく、作成されたフォーマットは、対象についての診断またはリスク評価を、特定の治療選択肢の提案とともに示してよい。データは、任意の適切な方法によって臨床医に表示されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、プロファイリングサービスが、臨床医のために(例えば、治療現場で)印刷することができ、またはコンピュータモニタ上に臨床医に対して表示することができるレポートを生成する。
【0059】
いくつかの実施形態では、情報が最初に、治療現場で、または地域施設で分析される。次いで、生データを中央処理施設に送り、さらなる分析を行う、および/または臨床医あるいは患者に有用な情報に変換する。中央処理施設は、プライバシー(すべてのデータが均一なセキュリティプロトコルで中央施設に格納される)、速度、及びデータ分析の均一性という利点を提供する。次いで、中央処理施設は、対象の治療後のデータの最終結果を制御することができる。例えば、中央施設は、電子通信システムを使用して、臨床医、対象、または研究者にデータを提供することができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、対象が電子通信システムを使用してデータに直接アクセスすることができる。対象は、結果に基づいてさらなる介入(intervention)またはカウンセリングを選択することができる。いくつかの実施形態では、データが研究用途に使用される。例えば、データを用いて、疾患の特定の状態または段階の有用な指標として、または実施する処置方針を決定するためのコンパニオン診断として、マーカーを含ませるか除くかをさらに最適化することができる。
【0061】
III.組成物およびキット
本明細書中に記載される方法において使用する組成物として、BUB1B、PINK1、およびG0S2の発現レベル、ならびに上記のようなG0S2のメチル化状態を決定するための1つ以上の試薬を含むキットが挙げられるが、これに限定されない。いくつかの実施形態では、試薬は、例えば、BUB1B、PINK1およびG0S2にハイブリダイズする1つまたは複数の核酸プローブ、BUB1B、PINK1およびG0S2の増幅または伸長のための1つまたは複数の核酸プライマー、またはメチル化G0S2核酸に特異的に結合する1つまたは複数の核酸プライマーである。
【0062】
プローブはまた、アレイの形態で提供されてもよい。好ましい実施形態において、キットは、検出分析を実施するのに必要な成分のすべて(すべてのコントロール、分析を実施するための指示、および分析および結果の提示のための任意の必要なソフトウェアを含む)を含む。
【0063】
(実験)
以下の実施例は、本開示の特定の好ましい実施形態および態様を例証し、さらに例示するために示されており、本開示の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0064】
(実施例1)
ロジスティック回帰モデルを用いて、COC3ではG0S2がサイレンシングされていることから、G0S2の発現レベルはCOC3およびCOC2を確実に区別し得ると判断された。G0S2のプロモーター領域は、CIMP-high腫瘍においてのみ完全にメチル化される大きなCpGアイランドを特徴とし、プロモーターメチル化はG0S2サイレンシングと強く相関する。この観察について拡充するために、サンプルの集団(正常組織(肺、腎臓、肝臓、卵巣、副腎皮質)、副腎皮質腺腫、ACC、およびヒトACC由来NCI-H295R細胞株を含む)におけるG0S2プロモーターの標的化重亜硫酸塩シークエンシングを行った。NCIH295Rをこの集団に含めたのは、この細胞株がCOC3のTCGA分類と一致するいくつかの分子異常を有するからである。G0S2メチル化は、ACCのサブセットおよびNCI-H295R細胞株において観察された。サンプルは、G0S2メチル化の「全か無か」パターンを示した。遺伝子座全体が完全にメチル化されているか、またはメチル化されていないかのいずれかであり、これもまたTCGAと一致した。さらに、NCI-H295RのトランスクリプトームおよびメチロームをRNA-SeqおよびIllumina 850k EPICアレイによって性質決定し、この細胞株はG0S2の検出可能な発現を有さないこと、およびG0S2 CpGアイランドにわたるすべてのプローブのメチル化を有することが、決定された。最後に、EpiTect Methyl II PCR分析(Qiagen)を、NCI-H295R細胞株におけるG0S2メチル化状態を評価するための迅速なベンチトップ分析として使用し、遺伝子座が>99%メチル化されていることを確認した。
【0065】
試験を、十分に注釈されている臨床的な経過観察をともなっている~100のACC新鮮凍結サンプルを用いて実施する。BUB1B、PINK1、およびG0S2の発現レベルをTaqMan(登録商標)分析によって測定し、G0S2プロモーター領域のメチル化状態をEpiTect Methyl II PCR分析(Qiagen)によって測定する。さらなる検証として、G0S2のメチル化状態を、サンプルのサブセットにおける重亜硫酸塩シークエンシングによって確認する。これらのバイオマーカーを用いて、表1の概要に従って患者を層別する。ログランク検定は、これらの異なるサブグループの生存時間を比較するために使用される。最後に、Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比を算出し、多変量解析を行う。
【0066】
【0067】
(実施例2)
この実施例は、ACC-TCGAのCOC割り当てに従ってACCサンプルを層別するために、BUB1BおよびPINK1の発現ならびにG0S2のメチル化を評価することを説明する(
図1)。ACC-TCGAのマルチプラットフォーム分析は、ACCが異なる疾患なしの生存をともなう3つの分子サブタイプから構成されることを証明している。
図2は、研究に用いた患者コホートを示している。このコホートは、46人の成人ACC患者からの原発性腫瘍を含んでいる。全体の生存および疾患なしの生存はそれぞれAおよびBに描写されている。臨床病期分類は、パネルCに示されているENSAT基準に従う診断時に実施された。Dに示されている診断時のENSAT病期に従う全体の生存をDに示す。
【0068】
図3は、COCカテゴリーの割り当てを示している。全mRNAおよびgDNAを、46の凍結された原発性腫瘍サンプルのうちから回収した。BUB1B、PINK1、G0S2、およびハウスキーピング遺伝子GUSBの発現を、TaqMan分析により評価した。G0S2のメチル化を、メチル化感受性qPCRにより評価した。ROC曲線法を用いて、Δ
CT(BUB1B‐PINK1)のカットオフを臨床転帰に従って決定した。“COC1” BUB1B-PINK1スコアは、R0切除後の臨床観察期間が2年を超え、いずれの時点でも転移の証拠が認められない疾患なしの患者に割り当てられた。
【0069】
図4は、BUB1BおよびPINK1の発現およびG0S2のメチル化が独立コホートにおいてACC-TCGAに基づくCOC1~3を概括していることを示す。BUB1B-PINK1およびG0S2メチル化は、FMUSPコホートを3つの異なる臨床サブグループ(B)に層別する。COC3に指定されている腫瘍は、悪性の臨床的および組織学的マーカー(C、E)とも関連している。最後に、コホートでは、COC3の割り当ておよびG0S2のメチル化は、必ず転移(F、G)を予め示している。
【0070】
いくつかの実施形態では、ΔCTG0S2およびG0S2CpGアイランドのメチル化状態を用いて、患者をCOC3に割り当てる(>5% G0S2メチル化+/ΔCTG0S2>5)。いくつかの実施形態では、試料が高いG0S2 CpGアイランドメチル化と同時にG0S2発現を示す場合、試料をCOC3に割り当てるためにG0S2メチル化が優先される。COC1を定義するためのΔCTBUB1B-ΔCTPINK1のカットオフを決定するために、臨床転帰データを用いてCOCスコアを示す閾値を確立する。転帰良好な非COC3患者は、R0完全切除後の臨床観察から少なくとも2年以内に再発または疾患関連事象の証拠がなく、いずれの時点でも転移の証拠がない患者と同定される。転帰不良の非COC3患者は、いずれかの時点(診断を含む)で転移性病変を有する患者、またはR0完全切除後2年以内に再発または疾患関連事象を有する患者と同定される。「良好」または「不良」転帰に対する、2値の割り当てと組み合わせた、各非COC3患者サンプルについて計算された値ΔCTBUB1B-ΔCTPINK1を用いて、ROC曲線分析を行って、COC1を定義する適切な閾値または上記の値ΔCTBUB1B-ΔCTPINK1を決定する。閾値を超えるスコアを有する非COC3患者はCOC1に割り当てられる。閾値を下回るΔCTBUB1B-ΔCTPINK1を有しているすべての非COC3標本がCOC2に割り当てられる。
【0071】
本明細書において言及されたすべての刊行物および特許は、参照により本明細書に組み込まれる。開示の範囲および精神から逸脱することなく、記載されている本開示の方法およびシステムの様々な変更および変形が、当業者には明らかであろう。本開示は特定の好ましい実施形態に関連して説明されてきたが、請求されている開示はそのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際に、医学の当業者に明らかな開示を実施するための記載されたモードの種々の変更は、以下の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。