(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】遮音パネル
(51)【国際特許分類】
G10K 11/16 20060101AFI20230828BHJP
B32B 3/12 20060101ALI20230828BHJP
B32B 3/24 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
G10K11/16 130
B32B3/12 B
B32B3/24 Z
(21)【出願番号】P 2021155846
(22)【出願日】2021-09-24
(62)【分割の表示】P 2020031435の分割
【原出願日】2016-02-25
【審査請求日】2021-09-24
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆志
(72)【発明者】
【氏名】青木 達彦
【合議体】
【審判長】五十嵐 努
【審判官】樫本 剛
【審判官】木方 庸輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-95283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/16 - 11/178
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に柱形状のセルが複数並設された中空板状の樹脂構造体と、シート体とを備えた遮音パネルであって、
前記樹脂構造体は、前記セルを柱形状に区画する側壁部と、当該側壁部の上部及び下部を閉塞する一対の閉塞壁を備えるとともに、当該一対の閉塞壁の少なくとも一方は、前記セルの内外を連通させる連通孔が形成された第1の閉塞壁とされ、
前記セルは、前記第1の閉塞壁がスキン層及び2層構造の壁部として構成された第1セルと、前記第1の閉塞壁がスキン層及び1層構造の壁部として構成された第2セルとを有し、前記第1セル及び前記第2セルは、それぞれX方向に列を成すように並設されていて、前記第1セルの列及び前記第2セルの列は、X方向に直交するY方向において交互に配列されていて、
前記第1セルにおける前記第1の閉塞壁の内表面から前記連通孔の開口縁までの長さは、前記第2セルにおける前記第1の閉塞壁の内表面から前記連通孔の開口縁までの長さよりも長く、
前記連通孔は、各セルにおいて異なる箇所に1箇所或いは複数箇所形成されており、
前記シート体は、前記一対の閉塞壁の一方が第1の閉塞壁とされた樹脂構造体では、該第1の閉塞壁の外表面に積層されており、前記一対の閉塞壁の双方が第1の閉塞壁とされた樹脂構造体では、該第1の閉塞壁の少なくとも一方の外表面に積層されており、
前記シート体は、前記第1の閉塞壁の外表面に部分的に接合されており、
前記シート体の目付量は1000g/m
2以上であり、比重は0.9以上であり、ヤング率は50MPa以上であることを特徴とする遮音パネル。
【請求項2】
前記連通孔は、前記第1の閉塞壁に不規則に形成されている請求項1に記載の遮音パネル。
【請求項3】
前記シート体は、前記第1の閉塞壁の外表面の周縁部分に接合されている請求項1又は2に記載の遮音パネル。
【請求項4】
前記シート体は、前記第1の閉塞壁との間に空間を形成するようにして接合されている請求項1~3のいずれか一項に記載の遮音パネル。
【請求項5】
内部に柱形状のセルが複数並設された中空板状の樹脂構造体と、シート体とを備えた遮音パネルであって、
前記樹脂構造体は、前記セルを柱形状に区画する側壁部と、当該側壁部の上部及び下部を閉塞する一対の閉塞壁を備えるとともに、当該一対の閉塞壁の少なくとも一方は、前記セルの内外を連通させる連通孔が形成された第1の閉塞壁とされ、
前記セルは、前記第1の閉塞壁がスキン層及び2層構造の壁部として構成された第1セルと、前記第1の閉塞壁がスキン層及び1層構造の壁部として構成された第2セルとを有し、前記第1セル及び前記第2セルは、それぞれX方向に列を成すように並設されていて、前記第1セルの列及び前記第2セルの列は、X方向に直交するY方向において交互に配列されていて、
前記第1セルにおける前記第1の閉塞壁の内表面から前記連通孔の開口縁までの長さは、前記第2セルにおける前記第1の閉塞壁の内表面から前記連通孔の開口縁までの長さよりも長く、
前記連通孔は、各セルにおいて異なる箇所に1箇所或いは複数箇所形成されており、
前記シート体は、前記一対の閉塞壁の一方が第1の閉塞壁とされた樹脂構造体では、該第1の閉塞壁の外表面に積層されており、前記一対の閉塞壁の双方が第1の閉塞壁とされた樹脂構造体では、該第1の閉塞壁の少なくとも一方の外表面に積層されており、
前記シート体は、前記第1の閉塞壁の外表面に部分的に接合されており、
前記連通孔の開口縁は、前記第1の閉塞壁の内表面より内側に位置していることを特徴とする遮音パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮音パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部に多角柱形状又は円柱形状をなす複数のセルが並設された中空板状の樹脂構造体が知られている。例えば、特許文献1に記載の樹脂構造体は、所定形状の熱可塑性樹脂製のシート材を折り畳むことにより、複数の六角柱形状のセルが区画されたコア層が形成されている。コア層の上下両面には、熱可塑性樹脂製のシート材であるスキン層が接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の中空板状の樹脂構造体は、比較的軽量で且つ十分な強度を有していることから、様々な用途で使用されることが想定される。しかし、特許文献1には、樹脂構造体を遮音材として使用することについて言及がない。物体の遮音性能は、その単位面積当りの質量と音の周波数の積の対数に比例するが、特許文献1に記載の樹脂構造体は比較的軽量であることから、遮音材として使用するためにはなお改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、内部に柱形状のセルが複数並設された中空板状の樹脂構造体と、シート体とを備えた遮音パネルであって、前記樹脂構造体は、前記セルを柱形状に区画する側壁部と、当該側壁部の上部及び下部を閉塞する一対の閉塞壁を備えるとともに、当該一対の閉塞壁の少なくとも一方は、前記セルの内外を連通させる連通孔が形成された第1の閉塞壁とされ、前記セルは、前記第1の閉塞壁がスキン層及び2層構造の壁部として構成された第1セルと、前記第1の閉塞壁がスキン層及び1層構造の壁部として構成された第2セルとを有し、前記第1セル及び前記第2セルは、それぞれX方向に列を成すように並設されていて、前記第1セルの列及び前記第2セルの列は、X方向に直交するY方向において交互に配列されていて、前記第1セルにおける前記第1の閉塞壁の内表面から前記連通孔の開口縁までの長さは、前記第2セルにおける前記第1の閉塞壁の内表面から前記連通孔の開口縁までの長さよりも長く、前記連通孔は、各セルにおいて異なる箇所に1箇所或いは複数箇所形成されており、前記シート体は、前記一対の閉塞壁の一方が第1の閉塞壁とされた樹脂構造体では、該第1の閉塞壁の外表面に積層されており、前記一対の閉塞壁の双方が第1の閉塞壁とされた樹脂構造体では、該第1の閉塞壁の少なくとも一方の外表面に積層されており、前記シート体は、前記第1の閉塞壁の外表面に部分的に接合されており、前記シート体の目付量は1000g/m2以上であり、比重は0.9以上であり、ヤング率は50MPa以上であることを特徴とする。
【0006】
上記の発明では、樹脂構造体の柱形状のセルを閉塞する上下の閉塞壁の少なくとも一方には、セル内外を連通させる連通孔が形成され、連通孔が形成された第1の閉塞壁の外表面にシート体が積層されている。この構成によれば、シート体の積層により遮音パネル全体の質量が増加することで、遮音パネルの遮音性が向上する効果に加え、連通孔が形成された第1の閉塞壁にシート体を積層することにより、さらに遮音性が向上する。これは、連通孔が形成された第1の閉塞壁上でシート体が膜振し、その結果、シート体の質量増加分以上に遮音性が向上しているものと考えられる。
【0007】
上記の構成において、前記連通孔は、前記第1の閉塞壁に不規則に形成されていることが好ましい。
上記の構成において、前記第1の閉塞壁に積層されている前記シート体は、前記第1の閉塞壁の外表面の周縁部分に接合されていることが好ましい。
【0008】
上記の構成において、前記シート体は、前記第1の閉塞壁との間に空間を形成するようにして接合されていることが好ましい。
上記課題を解決するため、本発明は、
内部に柱形状のセルが複数並設された中空板状の樹脂構造体と、シート体とを備えた遮音パネルであって、前記樹脂構造体は、前記セルを柱形状に区画する側壁部と、当該側壁部の上部及び下部を閉塞する一対の閉塞壁を備えるとともに、当該一対の閉塞壁の少なくとも一方は、前記セルの内外を連通させる連通孔が形成された第1の閉塞壁とされ、前記セルは、前記第1の閉塞壁がスキン層及び2層構造の壁部として構成された第1セルと、前記第1の閉塞壁がスキン層及び1層構造の壁部として構成された第2セルとを有し、前記第1セル及び前記第2セルは、それぞれX方向に列を成すように並設されていて、前記第1セルの列及び前記第2セルの列は、X方向に直交するY方向において交互に配列されていて、前記第1セルにおける前記第1の閉塞壁の内表面から前記連通孔の開口縁までの長さは、前記第2セルにおける前記第1の閉塞壁の内表面から前記連通孔の開口縁までの長さよりも長く、前記連通孔は、各セルにおいて異なる箇所に1箇所或いは複数箇所形成されており、前記シート体は、前記一対の閉塞壁の一方が第1の閉塞壁とされた樹脂構造体では、該第1の閉塞壁の外表面に積層されており、前記一対の閉塞壁の双方が第1の閉塞壁とされた樹脂構造体では、該第1の閉塞壁の少なくとも一方の外表面に積層されており、前記シート体は、前記第1の閉塞壁の外表面に部分的に接合されており、前記連通孔の開口縁は、前記第1の閉塞壁の内表面より内側に位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、内部に柱形状のセルが複数並設された中空板状の樹脂構造体の遮音性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】(a)は樹脂構造体の部分斜視図、(b)は(a)におけるβ-β線断面図、(c)は(a)におけるγ-γ線断面図。
【
図3】(a)は樹脂構造体のコア層を構成するシート材の斜視図、(b)は同シート材の折り畳み途中の状態を示す斜視図、(c)は同シート材を折り畳んだ状態を示す斜視図、(d)は樹脂構造体に連通孔を形成する状態を示す断面図。
【
図4】実施例の遮音パネルの配置状態を示す模式図。
【
図5】実施例の遮音パネルの配置状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した遮音パネルを
図1、
図2に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の遮音パネルは、樹脂構造体10と、その上面10aに積層されたシート体50とで構成されている。樹脂構造体10は、内部に柱形状のセルSが複数並設された中空板状に形成されており、上面10a及び下面は、長方形状に形成されている。樹脂構造体10の上面10aには、セルSの内外を連通させる連通孔15が形成されている。シート体50は、上面10aの全体を覆うように積層されている。シート体50は、周縁部分の全周にわたって樹脂構造体10の上面10aの周縁部分にタッカーを使用して鋲70により接合固定されている。
【0012】
以下、本実施形態の遮音パネルを構成する樹脂構造体10、シート体50のそれぞれについて説明する。
図2(a)に示すように、樹脂構造体10は、内部に複数のセルSが並設されたコア層20と、その上下両面に接合されたシート状のスキン層30、40とで構成されている。
図2(b)及び(c)に示すように、コア層20は、所定形状に成形された1枚の熱可塑性樹脂製のシート材を折り畳んで形成されている。そして、コア層20は、上壁部21と、下壁部22と、上壁部21及び下壁部22の間に立設されてセルSを六角柱形状に区画する側壁部23とで構成されている。
【0013】
図2(b)及び(c)に示すように、コア層20の内部に区画形成されるセルSには、構成の異なる第1セルS1及び第2セルS2が存在する。
図2(b)に示すように、第1セルS1においては、側壁部23の上部に2層構造の上壁部21が設けられている。この2層構造の上壁部21の各層は互いに接合されている。また、第1セルS1においては、側壁部23の下部に1層構造の下壁部22が設けられている。一方、
図2(c)に示すように、第2セルS2においては、側壁部23の上部に1層構造の上壁部21が設けられている。また、第2セルS2においては、側壁部23の下部に2層構造の下壁部22が設けられている。この2層構造の下壁部22の各層は互いに接合されている。また、
図2(b)及び(c)に示すように、隣接する第1セルS1同士の間、及び隣接する第2セルS2同士の間は、それぞれ2層構造の側壁部23によって区画されている。
【0014】
図2(a)に示すように、第1セルS1はX方向に沿って列を成すように並設されていて、上面視した場合に、隣り合う2つの第1セルS1が六角形の1辺を共有している。同様に、第2セルS2はX方向に沿って列を成すように並設されていて、上面視した場合に、隣り合う2つの第2セルS2が六角形の1辺を共有している。第1セルS1の列及び第2セルS2の列は、X方向に直交するY方向において交互に配列されている。そして、これら第1セルS1及び第2セルS2により、コア層20は、全体としてハニカム構造をなしている。
【0015】
図2(a)~(c)に示すように、上記のように構成されたコア層20の上面には熱可塑性樹脂製のシート材であるスキン層30が接合されている。また、コア層20の下面には、熱可塑性樹脂製のシート材であるスキン層40が接合されている。この実施形態では、コア層20における側壁部23の上部が、コア層20の上壁部21及びスキン層30で閉塞されている。したがって、コア層20の上壁部21とスキン層30とで、側壁部23の上部を閉塞する閉塞壁を構成する。同様に、コア層20における側壁部23の下部が、コア層20の下壁部22及びスキン層40で閉塞されている。したがって、コア層20の下壁部22とスキン層40とで、側壁部23の下部を閉塞する閉塞壁を構成する。なお、
図2(b)及び(c)では、図示されている3つのセルSのうち、最も左側のセルSに代表して符号を付しているが、他のセルSについても同様である。
【0016】
図2(b)及び(c)に示すように、樹脂構造体10の上面10aには、セルSの内外を連通させる連通孔15が設けられている。具体的には、
図2(b)に示すように、第1セルS1において連通孔15は、上面側のスキン層30及び2層構造の上壁部21を貫通するように設けられている。また、
図2(c)に示すように、第2セルS2において連通孔15は、上面側のスキン層30及び1層構造の上壁部21を貫通するように設けられている。すなわち、連通孔15は、各セルSの閉塞壁のうち、側壁部23の上部を閉塞する閉塞壁に設けられている。ここでは、連通孔15が形成された閉塞壁(樹脂構造体10の上面10a)が、請求項で言う第1の閉塞壁に相当する。
【0017】
図2(a)に示すように、連通孔15は、各セルSの上部の閉塞壁の略中央部分に1箇所ずつ設けられている。
図2(b)、(c)に示すように、各連通孔15の開口の直径は、セルSを上面視した場合の六角形の一辺の長さ以下に設定されている。具体的には、各連通孔15の開口の直径は、X方向に隣り合うセルSの中心同士の間隔P1の数分の1(例えば、0.5~2mm程度)に設定されている。
【0018】
次に、シート体50について説明する。本実施形態のシート体50は、樹脂構造体10の上面10a、すなわち、連通孔15が形成された閉塞壁の略全体を覆うように積層されている。シート体50としては、通常知られた合成樹脂製シートや、木材、合板、金属シート(金属箔)、紙、布、石膏ボード等を用いることができる。合成樹脂製シートの場合、例えばポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)等を挙げることができ、金属シートの場合、例えば鉛シートを挙げることができる。
【0019】
シート体50の厚みは、特に限定されないが、樹脂構造体10の厚みの数分の1~数十分の1(例えば、1~5mm程度)に設定されている。
また、シート体50として、通気性の無いものを用いることが遮音性を向上させる観点から好ましい。遮音性を向上させる観点から、シート体50の比重は、0.9以上であることが好ましく、1.4以上であることがより好ましい。同様に、シート体50の目付は、1000g/m2以上であることが好ましく、1500g/m2以上であることがより好ましい。シート体50の目付が2000g/m2以上であると、さらに効率的に遮音性を向上させることができる。特に、シート体50の比重が1.4以上であったり、目付が2000g/m2以上であったりすると、低周波領域から音響損失透過効果の顕著な増加が得られる点から好ましい。なお、ここで言う低周波領域とは、概ね200Hz~400Hzの領域のことを指す。以下の説明でも同様である。
【0020】
次に、遮音パネルを製造する方法を、
図3に従って説明する。
本実施形態の遮音パネルを製造する工程は、上面10aに複数の連通孔15が形成された樹脂構造体10を製造する工程と、樹脂構造体10の上面10aにシート体50を接合する工程とにより構成される。まず、樹脂構造体10を製造する工程について説明する。
【0021】
図3(a)に示すように、第1シート材100は、1枚の熱可塑性樹脂製のシートを所定の形状に成形することにより形成される。第1シート材100には、帯状をなす平面領域110及び膨出領域120が、第1シート材100の長手方向(X方向)に交互に配置されている。膨出領域120には、上面と一対の側面とからなる断面下向溝状をなす第1膨出部121が膨出領域120の延びる方向(Y方向)の全体にわたって形成されている。なお、第1膨出部121の上面と側面とのなす角は90度であることが好ましく、その結果として、第1膨出部121の断面形状は下向コ字状となる。また、第1膨出部121の幅(上面の短手方向の長さ)は平面領域110の幅と等しく、かつ第1膨出部121の膨出高さ(側面の短手方向の長さ)の2倍の長さとなるように設定されている。
【0022】
また、膨出領域120には、その断面形状が正六角形を最も長い対角線で二分して得られる台形状をなす複数の第2膨出部122が、第1膨出部121に直交するように形成されている。第2膨出部122の膨出高さは第1膨出部121の膨出高さと等しくなるように設定されている。また、隣り合う第2膨出部122間の間隔は、第2膨出部122の上面の幅と等しくなっている。
【0023】
なお、こうした第1膨出部121及び第2膨出部122は、シートの塑性を利用してシートを部分的に上方に膨出させることにより形成されている。また、第1シート材100は、真空成形法や圧縮成形法等の周知の成形方法によって1枚のシートから成形することができる。
【0024】
図3(a)及び(b)に示すように、上述のように構成された第1シート材100を、境界線P、Qに沿って折り畳むことでコア層20が形成される。具体的には、第1シート材100を、平面領域110と膨出領域120との境界線Pにて谷折りするとともに、第1膨出部121の上面と側面との境界線Qにて山折りしてX方向に圧縮する。そして、
図3(b)及び(c)に示すように、第1膨出部121の上面と側面とが折り重なるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なることによって、一つの膨出領域120に対して一つのY方向に延びる角柱状の区画体130が形成される。こうした区画体130がX方向に連続して形成されていくことにより中空板状のコア層20が形成される。なお、この実施形態では、第1シート材100を折り畳むために圧縮する方向が、セルSが並設される方向(X方向)である。
【0025】
上記のように第1シート材100を圧縮するとき、第1膨出部121の上面と側面とによってコア層20の上壁部21が形成されるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とによってコア層20の下壁部22が形成される。なお、
図3(c)に示すように、上壁部21における第1膨出部121の上面と側面とが折り重なって2層構造を形成する部分、及び下壁部22における第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なって2層構造を形成する部分がそれぞれ重ね合わせ部131となる。
【0026】
また、第2膨出部122が折り畳まれて区画形成される六角柱形状の領域が第2セルS2となるとともに、隣り合う一対の区画体130間に区画形成される六角柱形状の領域が第1セルS1となる。本実施形態では、第2膨出部122の上面及び側面が第2セルS2の側壁部23を構成するとともに、第2膨出部122の側面と、膨出領域120における第2膨出部122間に位置する平面部分とが第1セルS1の側壁部23を構成する。そして、第2膨出部122の上面同士の当接部位、及び膨出領域120における上記平面部分同士の当接部位が2層構造をなす側壁部23となる。また、第1セルS1では、一対の重ね合わせ部131によってその上部が区画され、第2セルS2では、一対の重ね合わせ部131によってその下部が区画されている。なお、こうした折り畳み工程を実施するに際して、第1シート材100を加熱処理して軟化させた状態としておくことが好ましい。
【0027】
このようにして得られたコア層20の上面及び下面には、それぞれ熱可塑性樹脂製の第2シート材が熱溶着により接合される。コア層20の上面に接合された第2シート材はスキン層30となり、コア層20の上壁部21と共に側壁部23の上部を閉塞する。コア層20の下面に接合された第2シート材は、スキン層40となり、コア層20の下壁部22と共に側壁部23の下部を閉塞する。
【0028】
なお、第2シート材(スキン層30、40)をコア層20に熱溶着する際には、第1セルS1における2層構造の上壁部21(重ね合せ部131)が互いに熱溶着される。同様に、第2セルS2における2層構造の下壁部22(重ね合せ部131)が互いに熱溶着される。
【0029】
上記工程により、X方向に第1セルS1又は第2セルS2がそれぞれ列を成すように多数並設され、Y方向に第1セルS1及び第2セルS2が交互に多数並設された樹脂構造体10が得られる。
【0030】
次に、樹脂構造体10の一方の閉塞壁(上面10a)に多数の連通孔15を形成する。連通孔15は、ドリル、針、パンチ等の貫通部材60で樹脂構造体10の上面10aを貫通させることにより形成される。
図3(d)に示すように、貫通部材60は、隣り合うセルSの中心同士の各間隔と略同一の間隔で複数配列された構成となっている。複数の貫通部材60の下方側に樹脂構造体10を配置して固定し、貫通部材60を下降移動させる。このようにして、樹脂構造体10の上面10aには、各セルSの略中央部分に各1箇所ずつの連通孔15が形成される。以上の工程を経て、その上面10aに複数の連通孔15が形成された樹脂構造体10が製造される。
【0031】
次に、樹脂構造体10において連通孔15が形成された上面10a(第1の閉塞壁)にシート体50を接合して遮音パネルを製造する工程について説明する。
シート体50は、樹脂構造体10の上面10aと略同一の形状、大きさに設定されている。連通孔15が形成された樹脂構造体10の上面10aの全体を覆うように、シート体50を位置合わせして積層する。続いて、タッカーを使用して、シート体50の周縁部分全周にわたって、複数箇所で鋲70により樹脂構造体10に接合する。これにより、
図1に示すような遮音パネルが得られる。なお、タッカーによる接合では、鋲70が、連通孔15が形成された位置に重なる場合があるが、複数箇所で接合していることにより接合強度が特に問題とはならない。
【0032】
次に、上記実施形態の遮音パネルの作用をその効果とともに説明する。
(1)上記実施形態においては、連通孔15が形成された樹脂構造体10の上面10aに、シート体50が積層されている。そのため、音響透過損失効果が向上し、樹脂構造体10単体の場合よりも遮音性が向上する。
【0033】
一般的に、同一材料で出来ている壁材の音響透過損失効果は、その壁材の単位面積当りの質量と音の周波数の積の対数に比例する。上記実施形態の遮音パネルでは、シート体50の質量増加による音響透過損失効果以上に遮音性が向上する。これは、連通孔15が形成された上面10aとの間でシート体50が膜振することによる効果であると考えられる。
【0034】
(2)上記実施形態では、樹脂構造体10の上面10aの周縁部分にシート体50が部分的に接合されている。このため、シート体50のずれを抑制しつつ、シート体50の膜振による音響透過損失効果を好適に発揮することができる。
【0035】
(3)上記実施形態では、樹脂構造体10を構成する複数のセルS全部に1箇所ずつ連通孔15が形成されている。このため、樹脂構造体10の上面10aに接合されたシート体50の全体が振動しやすくなる。遮音パネル全体にわたって、音響透過損失効果を発揮することができる。
【0036】
(4)上記実施形態では、樹脂構造体10が複数のセルSを有する中空板状に形成され、各セルSに連通孔15が形成されている。このため、連通孔15を介して各セルSの内部空間に音圧が入り、その内部空間において音圧を効果的に低減できる。すなわち、樹脂構造体10の各セルSは、いわゆる「ヘルムホルツ共鳴器」として機能することができる。そして、各セルSの「ヘルムホルツ共鳴器」としての機能によりシート体50の振動が促進され、遮音パネル全体の音響透過損失効果が向上する。
【0037】
上記実施形態は以下のように変更してもよく、また、以下の変更例を組み合わせて適用してもよい。
・上記実施形態では、樹脂構造体10の上面10aのみに複数の連通孔15を形成したが、樹脂構造体10の上面10a及び下面の双方に複数の連通孔15を形成する構成としてもよい。この場合、1つのセルSにおいて上部の閉塞壁と下部の閉塞壁の双方に連通孔15が形成されてもよく、一方のみに形成されていてもよい。
【0038】
・上記実施形態では、樹脂構造体10の上面10aのみに複数の連通孔15を形成し、連通孔15が形成された上面10aのみにシート体50を積層したが、これに限定されない。樹脂構造体10の上面10a及び下面の双方に複数の連通孔15を形成した場合、いずれかの面にシート体50を積層してもよく、双方の面にシート体50を積層してもよい。双方の面にシート体50を積層する場合、樹脂構造体10全体をシート体50で包み込むようにしてもよい。
【0039】
・上記実施形態では、連通孔15を各セルSの略中央部分に1箇所形成したが、連通孔15の形成箇所及び個数はこれに限定されない。また、上記実施形態では、樹脂構造体10全体に連通孔15を規則的に形成したが、連通孔15を不規則に形成してもよい。例えば、連通孔15を各セルSで異なる箇所に1箇所形成してもよく、或いは、複数箇所形成してもよい。また、連通孔15が形成されたセルSと連通孔15が形成されないセルSとを混在させたり、樹脂構造体10の上面10a又は下面の一部の領域に、連通孔15が局在させたりしてもよい。
【0040】
・上記実施形態では、シート体50を樹脂構造体10の上面10aの周縁部分の全周にわたって複数箇所で接合したが、接合部分及び接合箇所の数はこれに限定されない。樹脂構造体10の上面10aの四隅に接合してもよく、上面10aの内方部分に接合箇所を設けてもよい。要は、シート体50全体が樹脂構造体10の上面10a全体に接合されて密着した態様でなければよい。
【0041】
・上記実施形態では、シート体50を樹脂構造体10の上面10aの周縁部分にタッカーの鋲70により接合したが、接合方法はこれに限定されない。両面テープや接着剤等により接着してもよい。また、樹脂構造体10及びシート体50の周縁部分に沿う形状の一対の外枠を作成して、樹脂構造体10及びシート体50を一対の外枠間に挟み込むようにしてもよく、樹脂構造体10及びシート体50の周縁部分を複数の枠で挟み込むようにしてもよい。或いは、細い棒体を組み合わせて格子状にした枠体をシート体50の上に載置し、シート体50とともに樹脂構造体10に接合してもよい。
【0042】
・上記実施形態では、樹脂構造体10の上面10aに直接シート体50を積層して接合したが、これに限定されない。樹脂構造体10の上面10aに不織布等を積層し、その上にシート体50を接合してもよく、或いは、樹脂構造体10の上面10aとシート体50との間に空間を形成するようにしてシート体50を積層して接合してもよい。
【0043】
・上記実施形態では、樹脂構造体10の上面10a及び下面を長方形状に形成したが、これに限定されない。三角形状、五角形状等の多角形状であってもよく、真円形状、楕円形状の円形状であってもよく、不定形状であってもよい。
【0044】
・上記実施形態では、シート体50を樹脂構造体10の上面10aと略同一の大きさ、形状に形成したが、これに限定されない。樹脂構造体10の上面10aより大きくてもよく、小さくてもよい。また、シート体50の形状も、樹脂構造体10の上面10aと異なる形状とすることができる。そのため、樹脂構造体10の上面10a全体を覆う大きさ、形状でなくてもよい。
【0045】
・上記実施形態では、シート体50を樹脂構造体10の上面10aと略同一の大きさに形成して、上面10aに対してシート体50一枚を積層したが、これに限定されない。上面10aの半分の大きさに形成したもの二枚を並べて積層してもよく、複数枚のシート体50を並べて積層して樹脂構造体10の上面10aを覆うようにしてもよい。
【0046】
・シート体50を合成樹脂材料で形成する場合、合成樹脂材料中に、各種機能性樹脂を添加したものを使用してもよい。例えば、熱可塑性樹脂に難燃性の樹脂を添加して難燃性を高めることが可能である。また、タルクや無機材料等を混ぜて比重を大きくすることも可能である。
【0047】
・コア層20及びスキン層30、40の材料は、合成樹脂材料であれば問わない。また、シート体50と同様に各種機能性樹脂を添加してもよい。なお、樹脂構造体10の一部に合成樹脂以外の材料が含まれていても、大半の材質が合成樹脂製であれば、それは、樹脂構造体10であるといえる。
【0048】
・樹脂構造体10は、一枚の第1シート材100を折り畳み成形してコア層20を形成するのに限らず、複数枚の第1シート材を用いてコア層を形成してもよい。例えば、帯状の第1シート材を所定間隔毎に屈曲させ、これら複数の第1シート材を並設することでコア層を形成してもよい。この変更例の場合、各第1シート材において屈曲させた部分がセルの側壁部を構成することになる。
【0049】
・上記実施形態では、樹脂構造体10として、シート材を折り畳むことによって複数のセルSが並設された構造のものを用いたが、これに限定されない。押出成形によって断面ハーモニカ状に形成された構造の中空板材を用いてもよい。
【0050】
・セルSの形状は特に六角柱形状に限定されるものではない。例えば、円柱形状でもよいし、四角柱形状、八角柱形状などの多角柱形状であってもよい。また、セルSの形状は、例えば、錐台形状や錐台形状の頂面同士を突き合わせたような形状であってもよい。すなわち、全体として柱形状をなしているのであればどのような形状であってもよい。さらに、コア層20内において異なる形状のセルSが混在していてもよいし、各セルSが隣接せず、セルSとセルSとの間に空間(隙間)が生じていてもよい。セルSとセルSとの間に空間(隙間)が生じている場合、連通孔15は、セルSの内外を連通するような部分に形成されているだけでなく、セルSとセルSとの間の空間部分に形成されていてもよい。
【0051】
・上記実施形態では、樹脂構造体10として、シート材を折り畳むことによって形成されたコア層20に、スキン層30、40を積層後、連通孔15を形成する構成としたが、これに限定されない。例えば、押出成形によってコア層20を形成後、スキン層30、40として、あらかじめ複数の連通孔15が形成されたものをコア層20に積層する構成としてもよい。
【0052】
・スキン層30、40を熱溶着でコア層20に接合するのに限らず、例えば、接着剤等でスキン層30、40をコア層20に貼り付けて接合してもよい。また、コア層20とスキン層30、40との間に例えば熱可塑性樹脂製の接着層を介在させ、この接着層の接着力により、スキン層30、40をコア層20に接合してもよい。
【0053】
・上記実施形態では、コア層20を折り畳んで圧縮する方向(X方向)をセルSが並設された方向として説明したが、これは一例に過ぎない。例えば、
図2(a)において、X方向に対して30°傾斜した方向、60°傾斜した方向においても、隣り合うセルSは六角形の一辺を共有しており、互いに並設されているといえる。また、ハニカム構造以外の場合、多角形の一辺を共有していなくても、また、多少のずれが生じていても、全体として列をなしていれば、セルは並設されているといえる。
【0054】
・遮音パネルとして、シート体50の表面に、さらに布、紙、金属シート等を巻いたものを積層して用いてもよい。また、遮音パネルに、布、紙、金属シート等を巻いて用いてもよい。
【実施例】
【0055】
次に、本発明の遮音パネルの音響透過損失効果の試験について説明する。
[試験1]
試験1では、樹脂構造体10の連通孔15が形成された側の面にシート体50を接合することによる音響透過損失効果について評価した。
【0056】
音響透過損失の計測は、JIS-A1416に準じて行った。以下の試験2~7における音響透過損失の計測も同様である。
具体的には、残響室2室(音源室及び受音室)の間(隔壁開口部)に試験体となる遮音パネルを配置して、音響透過損失を計測して遮音性を評価した。音源室側からランダムノイズを出力し、音源室内で十分拡散した音の平均音圧レベルと、試験体を透過して受音室側に放射されて拡散した音の平均音圧レベルを測定した。加えて受音室の残響時間を測定し、下記式(1)、(2)により音響透過損失R(dB)を算出した。
【0057】
A=0.16V/T ・・・ (1)
R=L
1-L
2+10log
10S/A ・・・ (2)
L
1 ;音源室における室内平均音圧レベル(dB)
L
2 ;受音室における室内平均音圧レベル(dB)
S ;開放した試験開口に等しい広さの試験体の面積(m
2)
A ;受音室の等価吸音面積(m
2)
V ;受音室の容積(m
3)
T ;受音室の残響時間(sec)
遮音パネルの配置状態の模式図を
図4に示す。遮音パネルを構成する樹脂構造体10は、いずれも厚み30mmであり、一方の面のみに直径1.0mmの連通孔15が形成されているものを使用した。条件1A(
図4(a))は、樹脂構造体10のみを、連通孔15が音源側を向くようにして音源室と受音室との間に配置した。条件1B(
図4(b))は、樹脂構造体10の連通孔15が形成されている面の周縁部分に同形状のシート体50を接合した遮音パネルを、シート体50が音源側を向くように配置した。条件1C(
図4(c))は、条件1Bと同様の遮音パネルを、シート体50が受音側を向くように配置した。条件1D(
図4(d))は、樹脂構造体10の連通孔15が形成されていない面の周縁部分に同形状のシート体50を接合した遮音パネルを、シート体50が受音側を向くように配置した。接合したシート体50は、いずれも塩化ビニル系シートで厚み1.2mmである。各遮音パネルの構成と配置状態は表1に示すとおりである。表1において、シート体50の積層側で閉塞側とあるのは、樹脂構造体10において連通孔15が形成されていない側のことを言う。
【0058】
【表1】
試験1から次のような結果が得られた。条件1Aと条件1Dとの結果から、樹脂構造体10の連通孔15が形成されていない面にシート体50を接合したものでは、樹脂構造体10のみに比べて、周波数全域にわたってやや音響損失透過効果が向上した。条件1Dでは、シート体50による質量増加の影響により音響損失透過効果がやや向上しているものと考えられる。これに対して、条件1Aと条件1Bとの結果から、条件1Bでは、低周波領域から音響損失透過効果の顕著な増加が見られた。また、条件1Cでも、同様の結果が得られた。
【0059】
これらのことより、樹脂構造体10の連通孔15が形成されている面にシート体50を接合することにより、シート体50の質量増加による音響透過損失効果以上に遮音性が向上することがわかった。また、樹脂構造体10の連通孔15が形成されている面にシート体50を接合したものでは、シート体50を音源室側に設置した場合も、受音室側に設置した場合も、同程度の音響透過損失効果が得られることがわかった。
【0060】
[試験2]
試験2では、遮音パネルを構成する樹脂構造体10について、樹脂構造体10に形成されたセルSの中空容積、樹脂構造体10に形成された連通孔15の直径による音響透過損失効果について評価した。
【0061】
その結果、樹脂構造体10に形成されたセルSの中空容積が大きいほうが、低周波領域から音響損失透過効果が増加した。セルSの中空容積は、1000mm3以上であることが好ましく、2000mm3以上であることがより好ましかった。3000mm3以上であると、さらに効率的に遮音性を向上させることができた。特に、セルSの中空容積が3000mm3以上であると、低周波領域から音響損失透過効果の顕著な増加が見られた。この効果は、シート体50(連通孔15)を音源側に配置した場合も受音側に配置した場合も同様であった。
【0062】
また、樹脂構造体10に形成された連通孔15の直径が小さいほうが、低周波領域から音響損失透過効果が増加した。セルSの直径は、0.3~3.0mmであることが好ましく、0.75~2.0mmであることがより好ましかった。
【0063】
[試験3]
試験3では、遮音パネルを構成する樹脂構造体10の両面に連通孔15が形成された遮音パネルを用いて、音響透過損失効果を評価した。遮音パネルの配置状態の模式図を
図5に示す。
【0064】
遮音パネルを構成する樹脂構造体10、シート体50は、
図5(a)~(c)ですべて同一のものを使用した。
図5(a)は、樹脂構造体10のみを音源室と受音室との間に配置したもの、
図5(b)は、樹脂構造体10の一方の面にシート体50を接合した遮音パネルを、シート体50を受音側に向けて配置したもの、
図5(c)は、樹脂構造体10の双方の面にシート体50をそれぞれ接合した遮音パネルを配置したものである。
【0065】
その結果、両面に連通孔15が形成された樹脂構造体10に対して、一方の面にシート体50を積層することにより音響損失効果が増加し、両面にシート体50を積層することにより、さらに音響透過損失効果が増加した。また、一方の面のみにシート体50を積層したものより、両面にシート体50を積層したもののほうが低周波領域から音響透過損失効果が増加した。
【0066】
[試験4]
試験4では、遮音パネルを構成するシート体50について、目付の違いによる音響透過損失効果について評価した。遮音パネルを構成する樹脂構造体10は同一のものを用いて、それぞれシート体50の目付が異なるものを積層した。
【0067】
その結果、シート体50の目付が大きいほうが、低周波領域から音響透過損失効果が増加した。音響透過損失効果を増加させる観点と、遮音パネル全体の質量を好適な範囲に抑える観点から言うと、シート体50の目付は、1000g/m2以上であることが好ましく、1500g/m2以上であることがより好ましく、2000g/m2であることがさらに好ましかった。また、シート体50を好適に膜振させる観点から言うと、シート体50のヤング率は、50MPa以上であることが好ましく、90MPa以上であることがより好ましかった。特に、シート体の目付が2000g/m2以上である場合や、ヤング率が90MPa以上である場合には、低周波領域から音響損失透過効果の顕著な増加が見られた。
【0068】
[試験5]
試験5では、樹脂構造体10へのシート体50の接合方法による音響透過損失効果を評価した。
【0069】
その結果、樹脂構造体10にシート体50を部分的に接合した場合には、全体を接合した場合より音響透過損失効果が増加した。シート体50の接合面積が少なく、樹脂構造体10上でシート体50が膜振を起こすような状態とすることにより、音響効果損失効果を増加させることができることがわかった。
【符号の説明】
【0070】
S…セル、S1…第1セル、S2…第2セル、10…樹脂構造体、10a…上面、15…連通孔、20…コア層、21…上壁部(閉塞壁)、22…下壁部(閉塞壁)、23…側壁部、30…スキン層(閉塞壁)、40…スキン層(閉塞壁)、50…シート体、60…貫通部材。