(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】アスファルト舗装用両面粘着テープ、アスファルトの舗装方法及びアスファルト舗装構造
(51)【国際特許分類】
E01C 23/00 20060101AFI20230828BHJP
E01C 23/02 20060101ALI20230828BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20230828BHJP
【FI】
E01C23/00 A
E01C23/02
C09J7/30
(21)【出願番号】P 2022053080
(22)【出願日】2022-03-29
【審査請求日】2023-03-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511224966
【氏名又は名称】株式会社石川建設
(74)【代理人】
【識別番号】100130498
【氏名又は名称】佐野 禎哉
(72)【発明者】
【氏名】石川 英明
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特許第5856904(JP,B2)
【文献】特許第4647995(JP,B2)
【文献】特開2011-057805(JP,A)
【文献】特開平10-088509(JP,A)
【文献】特開2020-026703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00-17/00
E01C 21/00-23/24
C09J 7/00- 7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装区画のほぼ鉛直面をなす舗装打継断面に接着して用いられるテープであって、
粘着剤層と、該粘着剤層の少なくとも片面に着脱可能に接着された剥離ライナーとからなり、
前記粘着剤層を少なくともストレートアスファルトが65~90重量%、合成ゴム系粘着剤が35~10重量%混合したものであり、
前記粘着剤層の片面又は両面の少なくとも一部に、前記合成ゴム系粘着剤と同一又は異なる合成ゴム系粘着剤からなる接着強化部を設けていることを特徴とするアスファルト舗装用両面粘着テープ。
【請求項2】
前記接着強化部は、前記粘着剤層の片面又は両面に、点状、面状、線状、帯状又はこれらのうち複数の形状を組み合わせた形態で配置したものである請求項1に記載のアスファルト舗装用両面粘着テープ。
【請求項3】
前記接着強化部は、前記粘着剤層の片面又は両面の表面全体に配置したものである請求項1に記載のアスファルト舗装用両面粘着テープ。
【請求項4】
前記合成ゴム系粘着剤は、ホットメルト型の熱可塑性エラストマーである請求項1乃至
3の何れかに記載のアスファルト舗装用両面粘着テープ。
【請求項5】
前記粘着剤層の厚みは、200μm~5000μmである請求項1乃至4の何れかに記載のアスファルト舗装用両面粘着テープ。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載のアスファルト舗装用両面粘着テープを使用するアスファルトの舗装方法であって、
舗装区画のほぼ鉛直面をなす舗装打継断面に前記アスファルト舗装用両面粘着テープの前記粘着
剤層及び前記接着強化部を接着した後、前記舗装打継断面に接着されていない側の前記剥離ライナーを剥がした状態で、前記舗装区画内に加熱アスファルト混合物を打設することを特徴とするアスファルトの舗装方法。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れかに記載のアスファルト舗装用両面粘着テープを使用したアスファルト舗装構造であって、
舗装区画のほぼ鉛直面をなす舗装打継断面に、前記アスファルト舗装用両面粘着テープの前記粘着
剤層及び前記接着強化部が接着された状態、且つ前記剥離ライナーが剥がされた状態で、前記舗装区画内に打設された加熱アスファルト混合物によって溶融した前記アスファルト舗装用両面粘着テープの前記粘着剤層及び前記接着強化部が、前記加熱アスファルト混合物及び前記舗装打継断面と一体化していることを特徴とするアスファルト舗装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト舗装の修復時に用いられるアスファルト舗装用両面粘着テープと、それを用いたアスファルトの舗装方法及びアスファルト舗装構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アスファルト舗装の修復を行う際に、従前は、アスファルト舗装の既設表層の表面から円板カッターを回転させて切断し、その切断部に囲まれた部分の表層を取り除いてできた凹部の土面をローラで転圧した後、砕石や砂等の路盤材を所定の厚みにレーキなどで敷きならしてローラで転圧し、路盤材でできた路盤の表面と既設表層の切断面にアスファルト乳剤をエアスプレー又はエンジンスプレーで散布してから、加熱アスファルト混合物を打設してトンボなどで敷きならし、ローラで転圧して仕上げを行うという方法が行われていた。
【0003】
このような従前の方法で補修したアスファルト舗装においては、加熱アスファルト混合物の硬化後にできた新設表層と古い既設表層との境界部では、アスファルト混合物の骨材の結合力が弱いため、骨材や砂等が車両の通過等による振動で崩れ、周囲に飛散するという問題や、境界部の隙間から雨水が染みこんで含水比が上がると地盤が緩み、歪みが表層にまで及んでひび割れが生じるといった問題があった。
【0004】
斯かる問題の対策として、両面粘着テープを舗装切断面に貼り付ける工法が考えられていた。この工法では、既設表層の切断面に、まずプライマーを塗布し、30~60分養生し、その後に両面粘着テープを貼り付けて圧着し、剥離紙を剥がしてから加熱アスファルト混合物を打設して施工する、という方法が採用される。しかしながら、この工法で用いられる両面粘着テープの厚さが約5mmと分厚く、加熱アスファルト混合物が接触しても熱が伝わりにくいため、テープ自体が接着剤とはならないという問題があった。
【0005】
また、別の対策として、新設表層と既設表層との境界部の表面(上面)に、その境界部を覆うようにアスファルト舗装用両面粘着テープを貼り、接着後に剥離紙を剥がして粘着層を残し、その上に加熱アスファルト混合物を打設するというアスファルトの舗装工法を本願発明者が案出している(特許文献1参照)。しかし、この工法では、粘着層を構成する粘着剤の接着力が十分ではなく、雨水がかかると剥がれてしまうという問題があった。
【0006】
そこで本発明者は、より優れた接着剤を利用したアスファルト舗装用両面粘着テープを開発している(特許文献2参照)。このアスファルト舗装用両面粘着テープは、鉛直面またはそれに近い舗装区画の舗装打継面に接着して使用されるものであり、粘着剤層と、この粘着材層の少なくとも片面に接着された剥離ライナーとからなり、粘着剤層を構成する粘着剤を少なくともストレートアスファルトを70~90重量%、合成ゴム系粘着剤を30~10重量%の割合で混合したもの、又はストレートアスファルトを65~75重量%、合成ゴムを4~8重量%、粘着付与剤を15~20重量%、可塑剤を4~8重量%の割合で混合したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4647995号公報
【文献】特許第5856904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に開示されたアスファルト舗装用両面粘着テープは、「アステープ」(登録商標)の商品名で販売されており、また国土交通省のNETIS(新技術情報提供システム)に登録され(2013年8月29日、NETIS登録番号KK-130019-A)、さらにVE評価(活用効果評価済み技術)登録(2019年12月5日、NETIS登録番号KK-130019-VE)されている。アステープを使用してアスファルト舗装の修復工事を行うことで、火気を用いることなく舗装打継断面における既設表層と新設表層の継目を密着させられることから、安全性の向上と工期短縮というメリットが得られている。このことから、当該技術分野での評価が高まり、実際のアスファルト舗装修復現場においても多く利用され、有用なものであると認識されるようになっている。
【0009】
その後のアスファルト舗装用両面粘着テープの使用状況の検証や改良研究の結果、舗装打継面への接着性能をより向上させることが、舗装作業性の大幅な向上と、新設表層と既設表層との継目(舗装境界部)のひび割れや雨水の侵入、土砂や骨材の飛散の防止に繋がることが判明してきた。このことから、本発明は、本発明者が発明したアスファルト舗装修復現場において舗装打継面に接着して用いる舗装用両面粘着テープの性能向上を主たる目的とし、さらにはそれを用いた作業性の高い舗装方法と良好な舗装構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、舗装区画のほぼ鉛直面をなす舗装打継断面に接着して用いられるテープであって、粘着剤層と、この粘着剤層の少なくとも片面に着脱可能に接着された剥離ライナーとからなり、粘着剤層を少なくともストレートアスファルトが65~90重量%、合成ゴム系粘着剤が35~10重量%を混合したものであり、粘着剤層の片面又は両面の少なくとも一部に、粘着剤層を構成する合成ゴム系粘着剤と同一又は異なる合成ゴム系粘着剤からなる接着強化部を設けていることを特徴としている。
【0011】
本発明のアスファルト舗装用両面粘着テープが適用される舗装としては、簡易アスファルト舗装(以下、簡易舗装)又はアスファルト舗装が想定される。簡易舗装は、骨材(砕石、砂、石粉など)を瀝青材料(ストレートアスファルト等)で結合した表層及び路盤で構成される。アスファルト舗装は、骨材(砕石、砂、石粉など)を瀝青材料(ストレートアスファルト等)で結合した表層と基層及び路盤で構成される。表層は加熱アスファルト混合物で作られ、基層は路盤の上にあって通常は加熱アスファルト混合物で作られる。また、砂利道の路面を整正して瀝青材料を散布浸透させた防塵処理や表面処理等にも本発明のアスファルト舗装用両面粘着テープを適用することができる。
【0012】
瀝青材料として、舗装用石油アスファルト、改質アスファルト、石油アスファルト乳剤等が使用され、改質アスファルトとして、アスファルトにゴム、樹脂等の高分子材料を添加したゴム、樹脂入りや、ブローイング操作で粘度を高めたセミブローンアスファルトがある。接着剤として使用される石油アスファルト乳剤は、乳化剤と安定剤を含む水中に、比較的軟質な石油アスファルトを分散させたものであり、カチオン系(K)とアニオン系(A)が使用される。締め固めには転圧機、ロードローラ、振動ローラまたはタイヤローラ等が用いられる。
【0013】
アスファルト舗装用両面粘着テープの粘着剤層として、ストレートアスファルト液が65~90重量%、合成ゴム系粘着剤が35~10重量%の混合物が用いられる。合成ゴム系粘着剤には、合成ゴムの他、粘着付与剤、可塑剤等の補助成分が含有されていてもよい。接着強化部に用いる合成ゴム系粘着剤は、粘着剤層に含まれる合成ゴム系粘着剤と同一のものとしてもよいし、異なるものとしてもよい。また、アスファルト舗装用両面粘着テープは、粘着剤層の片面だけに接着強化部と剥離ライナーを有するものとすることや、粘着剤層の両面に接着強化部と各1枚(計2枚)の剥離ライナーを有する構造とすることもできる。剥離ライナーには、紙またはポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等のフィルムの片面または両面に、低エネルギー表面を有するシリコーンやフッ素樹脂等が塗着されたものを使用することができる。
【0014】
このような本発明のアスファルト舗装用両面粘着テープでは、従来のアスファルト舗装用両面粘着テープ(前述の「アステープ」(登録商標))と比べて、粘着剤層の表面(片面又は両面)に接着強化部を設けていることによって、舗装打継面への接着性が格段に向上する。そのため、一方の剥離ライナーを剥がし、舗装区画内と隣接する既設表層との境界であるほぼ垂直に切断された舗装打継面に、この接着強化部を押し付けて粘着剤層を貼り付け、もう一方の剥離ライナーを剥がして使用を開始すると、舗装区画内に加熱アスファルト混合物を打設している作業工程中にアスファルト舗装用両面粘着テープが剥がれてくるといった不具合が生じにくくなり、従来のアスファルト舗装用両面粘着テープを用いた舗装方法と同じく火気を用いなくても舗装打継断面における既設表層と新設表層との継目を密着させられることができることと相俟って、作業性が格段に向上することとなる。舗装打継面に貼り付けられたアスファルト舗装用両面粘着テープの粘着剤層と接着強化部は、熱せられた加熱アスファルト混合物によって溶融し、その加熱アスファルト混合物と一体化して新設表層と既設表層との継目(舗装境界部)が強固に固まるため、アスファルト舗装の良好な補修ができ、長期に亘ってひび割れが生じ難い安定したアスファルト舗装を維持することができる。したがって、舗装境界部からの雨水の浸入や土砂・骨材の飛散も有効に防止することができる。
【0015】
このような本発明のアスファルト舗装用両面粘着テープにおいて、接着強化部として、粘着剤層の片面又は両面に、点状、面状、線状、帯状又はこれらのうち複数の形状を組み合わせた形態で配置することで、粘着剤層の表面全体に接着強化部を設ける態様と比較して、より少ない量の接着強化部で舗装打継断面への十分な接着性能を得ることができる。なお、本発明においては、粘着剤層の片面又は両面の全面に接着強化部を設けた態様を採用し、さらに接着性能を向上することもできるものである。することを否定するものではない。
【0016】
粘着剤層及び接着強化部に用いられる合成ゴム系粘着剤は、ホットメルト型の熱可塑性エラストマーであることが望ましい。この場合、舗装区画内に打設された加熱アスファルト混合物によって、粘着剤層に含まれるストレートアスファルト成分と共に、着剤層及び接着強化部の合成ゴム系粘着剤も溶融し、新設表層と一体化し易くなる。
【0017】
また、粘着剤層の厚みを200μm~5000μmとすれば、舗装打継断面に貼り付けるのに適した厚さであり、またアスファルト舗装用両面粘着テープの保管性、運搬性も良好である。
【0018】
このような本発明のアスファルト舗装用両面粘着テープを使用する好適なアスファルトの舗装方法は、舗装区画のほぼ鉛直面をなす舗装打継断面にアスファルト舗装用両面粘着テープの粘着剤層及び接着強化部を接着した後、舗装打継断面に接着されていない側の剥離ライナーを剥がした状態で、舗装区画内に加熱アスファルト混合物を打設することを特徴とするものである。打設後の加熱アスファルト混合物は、敷きならしや転圧ローラーによって仕上げられる。
【0019】
このようにして仕上げられたアスファルト舗装構造は、舗装区画のほぼ鉛直面をなす舗装打継断面に、アスファルト舗装用両面粘着テープの粘着剤層及び前記接着強化部が接着された状態、且つ剥離ライナーが剥がされた状態で、舗装区画内に打設された加熱アスファルト混合物によって溶融したアスファルト舗装用両面粘着テープの粘着剤及び接着強化部が、加熱アスファルト混合物及び舗装打継断面と一体化したものとなる。したがって、既設表層と新設表層との継目(舗装境界部)が目立たず、その継目からひび割れが生じたり、そこから雨水が浸入して劣化したり、土砂や骨材が飛散するなどの問題が生じにくく、補修後も良好なアスファルト舗装を維持することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のアスファルト舗装用両面粘着テープは、従来のものと同様のストレートアスファルトと合成ゴム系粘着剤を含有する粘着剤層に加えて、その粘着剤層の表面に接着強化部を設けた構成としているため、舗装打継面に対する従来のものよりも優れた接着性能を有することとなり、既設表層と新設表層との継目を施行後も安定的に維持することができる。それにより、舗装境界部からの雨水の浸入や、土砂や骨材の飛散も効果的に防止できるアスファルト舗装構造が得られ、アスファルト舗装の寿命を延長やランニングコストの低減も実現することができることとなる。また、本発明のアスファルトの舗装方法によれば、本発明のアスファルト舗装用両面粘着テープを用いることでアスファルト舗装の修復工事の作業性が向上し、工期の短縮にも寄与することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態であるアスファルト舗装用両面粘着テープを示す概観斜視図。
【
図2】同実施形態のアスファルト舗装用両面粘着テープとその一変形例を示す断面模式図。
【
図3】同実施形態のアスファルト舗装用両面粘着テープを用いて行われるアスファルト補修工事対象のアスファルト舗装と舗装区画を示す模式的平面図。
【
図4】同実施形態を適用したアスファルト舗装構造を
図3におけるA-A線断面模式図。
【
図5】同実施形態を適用した他のアスファルト舗装構造を
図4に対応して示す断面模式図。
【
図6】同実施形態を適用したさらに他のアスファルト舗装構造を
図4に対応して示す断面模式図。
【
図7】本発明のアスファルト舗装用両面粘着テープにおける接着強化部の変形例を示す図。
【
図8】本発明のアスファルト舗装用両面粘着テープにおける接着強化部の変形例を示す図。
【
図9】本発明のアスファルト舗装用両面粘着テープにおける接着強化部の変形例を示す図。
【
図10】本発明のアスファルト舗装用両面粘着テープにおける接着強化部の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態としてのアスファルト舗装用両面粘着テープ1とそれを用いて行われるアスファルト舗装方法、並びに同方法により施工されたアスファルト舗装構造Xについて、図面を参照して説明する。
【0023】
図1(a)(b)及び
図2(a)に示す本実施形態のアスファルト舗装用両面粘着テープ1は、軟質の板状に形成された粘着剤層(
図1では黒色で示している)11と、粘着剤層11の片面11a(説明の便宜上、以下、「オモテ面」という)にのみ貼り付けて設けた接着強化部12と、粘着剤層11の接着強化部12を設けていない側の面11b(説明の便宜上、以下、「ウラ面」という)に着脱可能に貼り付けた剥離ライナー13とから構成される。製造されたアスファルト舗装用両面粘着テープ1は、保管時及び使用前の状態では、
図1に示すように、粘着剤層11のオモテ面11aが内側(すなわち、剥離ライナー13が外側)となるようにロール状に巻回した状態としている。
【0024】
なお、本実施形態のアスファルト舗装用両面粘着テープ1’は、
図2(a)に示した粘着剤層11のオモテ面11aだけに接着強化部12を有しウラ面11bだけに剥離ライナー13を貼り付けた構成の他、変形例として、
図2(b)に示すように、粘着剤層11の両面11a、11bに接着強化部12、12を貼り付け、さらに各1枚(計2枚)の剥離ライナー13、13を貼り付けた構成とすることもできる。
【0025】
本実施形態のアスファルト舗装用両面粘着テープ1を構成する各部について、具体的な一例を示す。まず、粘着剤層11は、ストレートアスファルトと合成ゴム系粘着剤を主として混合したものである。本実施形態では、粘着剤層11は、ストレートアスファルト(昭和瀝青工業株式会社製)を65重量%、合成ゴム系粘着剤としてホットメルト型の熱可塑性エラストマーであるポリスチレン・ポリイソプレンゴム(日本ゼオン株式会社製、商品名「QUINTAC3450」)を10重量%含有し、さらに他の組成に、粘着付与剤として水添テルペン樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製、商品名「クリアロンP-115」)を18重量%、可塑剤として鉱物油(日本サン石油株式会社製、商品名「SUN N STOCK 46」)を7重量%含有している。
【0026】
これらの成分の混合法法は次の通りである。140~160℃に昇温させた2軸ニーダーの中に、合成ゴム系粘着剤と粘着付与剤を投入し、溶解させて30~120分混ぜ合わせて溶液とする。次に、この溶液中に、130~180℃で溶解させたストレートアスファルトを撹拌しながら投入し、さらに撹拌しながら可塑剤を投入して30~120分混ぜ合わせる。この溶液が均一に混ぜ合わされたことを確認し、ニーダーから他の容器へ取り出した後、冷却させることで、軟質で固形の粘着剤ブロックとする。
【0027】
この粘着剤ブロックを、粘着剤溶解装置のタンクに投入し、140~180℃に昇温して溶解させる。溶解した粘着剤を、ポンプで高温のままダイコーターで送りこむ。ダイコーターヘッドから高温、高圧力の粘着剤を長尺な剥離ライナー13に押し出して板状にコーティングする。それと同時に、剥離ライナー上で板状となって冷え固まってきた粘着剤(粘着剤層11)の上から、接着剤付与装置の吐出口から粘着剤層11の片方の面(オモテ面11a)の幅方向中央部に溶融した接着剤を間欠的に滴下し、等間隔で円板状(コイン状)の接着強化部12を形成する。
【0028】
ここで、接着強化部12を構成する接着剤には、粘着剤層11に含有させたものと同じ合成ゴム系粘着剤としてホットメルト型の熱可塑性エラストマーであるポリスチレン・ポリイソプレンゴム(日本ゼオン株式会社製、商品名「QUINTAC3450」)を採用している。接着強化部12を構成する合成ゴム系粘着剤と粘着剤層11に含まれる合成ゴム系粘着剤とを共通のものとしたことにより、粘着剤層11と接着強化部12の親和性を高めることができる。具体的な接着強化部12の組成は、前述のポリスチレン・ポリイソプレンゴム(QUINTAC3450)100重量部に対して、鉱物油(株式会社MORESCO製、商品名「モレスコホワイトP-40」)10重量部を混合したものである。
【0029】
また、剥離ライナー13の原材料は、例えば上質紙又はグラシン紙30~110g当たりについて、その両面に10~40g/m2のポリエチレン樹脂をラミネートし、さらにその両面にシリコーン樹脂を塗布したものである(剥離ライナー13として、株式会社サンエー化研製、商品名「WHT-64B、上質紙64gに対してポリエチレンを片面につき20gラミネート、総厚100μm」を使用)。
【0030】
剥離ライナー13上に接着強化部12を付与した粘着剤層11が載った状態で、一定の長さに切断して冷却しながら巻き取ることで(あるいは、冷却しながら巻き取って一定の長さで切断してもよい)、アスファルト舗装用両面粘着テープ1のロール状の製品が完成する。例えば、粘着剤層11の厚さを、舗装打継断面にしっかりと貼り付けることができる200μm~5000μm、総厚をそれよりも僅かに大きいものとし、幅を5~10cm、長さを10~50mとしてロール状に巻回したものをアスファルト舗装用両面粘着テープ1の製品とすることができるが、これに限らずアスファルト舗装用両面粘着テープ1の厚さや幅や長さは適宜設定することができる。
図1に示した例では、粘着剤層11の幅5cm、厚さ1cm、接着強化部12の直径2cm、厚さ0.5cm、間隔22cm、剥離ライナー13の幅6cm、長さ50mのアスファルト舗装用両面粘着テープ1を製品としたものである。
【0031】
図3及び
図4は、上述のようなアスファルト舗装用両面粘着テープ1を用いて補修工事を行ったアスファルト舗装2をそれぞれ模式的な平面図及び断面図として示したものである。アスファルト舗装2は、骨材(砕石、砂、石粉等)を瀝青材料(ストレートアスファルト等)で結合した加熱アスファルト混合物を硬化させて造った表層21と、その下側に位置する加熱アスファルト混合物からなる基層22と、さらにその下側に位置する路盤23で構成される(路盤23の下には路床や路体が存在するが、ここでは説明を割愛する)。表層21のうち、
図3における二重線で囲った矩形(補修区画211)の外側が既設表層21Aであり、その内側が補修工事を行った新設表層21Bである。
【0032】
アスファルト舗装2の補修工事は、概ね次のようにして行われる。まず、アスファルト舗装2の既設表層21Aの表面に設定された舗装区画211に沿って円板カッターを回転させて切断し、その切断部に囲まれた部分の既設表層を取り除いて基層22の上に凹部を造り、この凹部の基層22の表面をローラ等で敷きならす。場合によっては、既設表層と共に古い基層や路盤の一部を取り除き、砕石や砂等の路盤材を所定の厚みにレーキなどで敷きならしてローラで転圧し、路盤材でできた路盤23の表面と側面(切断面)にアスファルト乳剤をエアスプレー又はエンジンスプレーで散布し、加熱アスファルト混合物を打設してトンボなどで敷きならし、ローラで転圧して基層22を造る。
【0033】
次いで、基層22の上の凹部において、既設表層21Aの切断面が露出しているほぼ鉛直の舗装打継断面21Asに、アスファルト舗装用両面粘着テープ1の粘着剤層11のオモテ面11a側を接着強化部12と共に貼り付ける。アスファルト舗装用両面粘着テープ1は、適宜の長さで切断すればよい。また、基層22の表面には、規定量(0.4L/m2)のアスファルト乳剤24(例えば、前田道路株式会社製、商品名「マエダゾル(PK-4)」)を散布する。この状態で、舗装打継断面21Asに貼り付けたアスファルト舗装用両面粘着テープ1から剥離ライナー13を剥がし、粘着剤層11のウラ面11bを露出させる。
【0034】
このように準備した基層22の上の凹部に、加熱アスファルト混合物(市販の加熱アスファルト合材として、例えば光アスコン株式会社製の再生密粒度アスファルト)を規定の厚さに敷きならし、プレートコンパクター、ローラなどで厚密になるように転圧することで、新設表層21Bが造られる。加熱アスファルト混合物と比較してアスファルト舗装用両面粘着テープ1の粘着剤層11及び接着強化部12の厚みは十分薄いので、高温の加熱アスファルト混合物に接した粘着剤層11及び接着強化部12はすぐに全体が溶融して、隣接する既設表層21Aと新設表層21Bと境界部における断面の凹凸に含浸し、接着面積を増大させながら舗装打継断面21As及び新設表層21Bと一体化することで、本実施形態のアスファルト舗装構造Xができる。
【0035】
このように、本実施形態のアスファルト舗装用両面粘着テープ1では、粘着剤層11に加えて接着強化部12を有していることから、舗装打継断面21Asへの接着力(粘着力)が従来のものよりも遙かに大きいため、既設表層21Aと新設表層21との境界表面からの雨水の浸入防止力と、その境界部からの土砂や骨材の飛散防止力を強化することができ、補修後の耐久性が優れ、低ランニングコストのアスファルト舗装構造Xが得られる。また、従来よりも舗装打継断面21Asへの接着力が高いアスファルト舗装用両面粘着テープ1を用いた舗装工事を行うことで、作業中のアスファルト舗装用両面粘着テープ1の剥がれが生じ難くなり、工事の作業性向上と、工期短縮を実現することもできる。
【0036】
なお、
図3及び
図4に示したアスファルト舗装2に代えて、
図5に示すような簡易舗装2’を採用することもできる。簡易舗装2’は、アスファルト舗装2にある基層22がなく、表層21と路盤23で構成されるものである。表層21と路盤23、並びに新設表層21Bを構成するアスファルト舗装構造や補修工事の方法は、上述のアスファルト舗装2で説明した通りである。
【0037】
本実施形態のアスファルト舗装用両面粘着テープ1の用途としては、上述した他にも、
図6に示すように、アスファルト舗装又は簡易舗装の仕上げとして、あるいは既設表層同士の境界部の閉止にも用いることができる。すなわち、既設表層21Aと新設表層21Bとの境界表面、隣接する新設表層21Bと新設表層21Bとの境界表面、隣接する既設表層21Aと既設表層との境界表面に、本実施形態のアスファルト舗装用両面粘着テープ1における粘着剤層11のオモテ面11aと接着強化部12を密着させるように貼り付け、ウラ面11b側の剥離ライナー13を剥がす。このようにすることで、修復工事完成後の舗装の端部や舗装同士の継目を、火気を用いずにストレートアスファルト以上の接着力でシールすることができ、養生作業も省略できるため、効率的な施工が可能となり、継目からの骨材や土砂の飛散、雨水の浸入をより確実に防止し、さらに耐久性の高いアスファルト舗装を得ることができる。
【0038】
なお、本発明のアスファルト舗装用両面粘着テープ1は、以上に説明した実施形態の構成に限られるものではない。ここでは、上記実施形態で用いた符号と同じ符号で説明するが、例えば、接着強化部12については、上述した円板状をなすものの他にも、より小さな点状の接着強化部12を粘着剤層11の片面(オモテ面11a)に多数設けた態様(
図7)、複数の線状(筋状)の接着強化部12を粘着剤層11の片面(オモテ面11a)に設けた態様(
図8)、さらに幅広な帯状の接着強化部12を粘着剤層11の片面(オモテ面11a)に設けた態様(
図9)、粘着剤層11の片面(オモテ面11a)における大きな領域を占める単一の帯状をなす接着強化部12を設けた態様(
図10)など、種々の変形例を採用することができる。もちろん、これらの接着強化部12の複数の形状を組み合わせたものを採用してもよいし、粘着剤層11の片面(オモテ面11a)の全面を覆う最も幅広な接着強化部を採用してもよく、さらには粘着剤層のオモテ面11aとウラ面11bの両面に上述したような各種の接着強化部を設けることもできる。また、それに併せて、剥離ライナー13は粘着剤層11の片面又は両面に適宜配置すればよい。
【0039】
粘着剤層や接着強化部の組成(ストレートアスファルト、合成ゴム系粘着剤、鉱油、その他の成分)や配合割合、剥離ライナーの材質も、上述した実施形態に限られることなく、本発明の範囲内であれば適宜変更することができる。粘着剤層と接着強化部に用いられる合成ゴム系粘着剤は、共通の成分であれば上述の通り親和性が高まるが、異なる成分であっても差し支えない。
【0040】
本発明のアスファルト舗装用両面粘着テープを用いたアスファルト舗装方法やアスファルト舗装構造については、実施形態では典型的な例を簡略化して説明したが、通常のアスファルト舗装(簡易舗装を含む)やアスファルト舗装構造を実施するに際して、常法で用いられるストレートアスファルトに代えて本発明のアスファルト舗装用両面粘着テープを用いることができるのは謂うまでもない。
【0041】
その他、本発明のアスファルト舗装用両面粘着テープ、舗装方法、舗装構造の各部の構成についても上述した実施形態に限られることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、アスファルト舗装の修復工事に用いることで、修復作業の効率化や低コスト化に寄与し、補修後のアスファルト舗装の品質と耐久性を向上させることでメンテナンスコストも低減させることができるものである。
【符号の説明】
【0043】
1、1’…アスファルト舗装用両面粘着テープ
11…粘着剤層
12…接着強化部
13…剥離ライナー
2(、2’)…アスファルト舗装(、簡易アスファルト舗装)
21A…既設表層
21As…舗装打継断面
21B…新設表層
211…舗装区画
X…アスファルト舗装構造
【要約】
【課題】アスファルト舗装の修復工事における舗装打継断面に貼り付けて用いることで、工事の作業中に舗装打継断面から剥がれずに作業効率を向上することができるアスファルト舗装用両面粘着テープと、それを用いた舗装方法、舗装構造を提供する。
【解決手段】粘着剤層11と、この粘着剤層11の少なくとも片面に着脱可能に接着された剥離ライナー13を有して構成され、舗装区画211のほぼ鉛直面をなす舗装打継断面21Asに接着して用いられるアスファルト舗装用両面粘着テープ1において、粘着剤層11を少なくともストレートアスファルトが65~90重量%、合成ゴム系粘着剤が35~10重量%を混合したものとし、粘着剤層11の片面又は両面の少なくとも一部に、粘着剤層11を構成する合成ゴム系粘着剤と同一又は異なる合成ゴム系粘着剤からなる接着強化部12を設けた。
【選択図】
図1