(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】ガンマ線検出システムおよびその較正方法
(51)【国際特許分類】
G01T 1/20 20060101AFI20230828BHJP
G01T 1/17 20060101ALI20230828BHJP
A61N 5/10 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
G01T1/20 E
G01T1/17 E
A61N5/10 H
(21)【出願番号】P 2022562793
(86)(22)【出願日】2021-04-14
(86)【国際出願番号】 EP2021059665
(87)【国際公開番号】W WO2021209501
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-12-06
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522275946
【氏名又は名称】テラペット・エスエイ
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【氏名又は名称】永田 豊
(72)【発明者】
【氏名】パーム・マーカス
(72)【発明者】
【氏名】バルグレン・クリスティーナ
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0251709(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0276953(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0193330(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0252825(US,A1)
【文献】米国特許第09958559(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/20
G01T 1/17
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号処理および制御システム(30)を含む計算システムと、標的ゾーン(4)からのガンマ線放出を検出するように構成された少なくとも1つの検出モジュール(14)を含む検出モジュールアセンブリ(13)と、を含む、ガンマ線検出システム(10)であって、
各検出モジュールは、前記標的ゾーンに概ね面するように方向付けられた主要表面(40a)およびシンチレータ層のエッジを画定する横方向小表面(40b)を有する少なくとも1つのモノリシックシンチレータプレート(16)と、前記少なくとも1つのモノリシックシンチレータプレートのエッジに結合され、前記信号処理および制御システムに接続された、複数の光子検出器と、を含み、
前記少なくとも1つのモノリシックシンチレータプレートは、前記
複数の光子検出器によって測定可能な強度を有する固有シンチレーション事象を引き起こす放射線を本質的に放射する同位体を有する材料を含み、
前記ガンマ線検出システムは、前記
複数の光子検出器によって出力された複数の前記固有シンチレーション事象の測定に基づいて空間較正手順を実行するように構成された較正モジュールを含み、前記空間較正手順は、前記複数の光子検出器の出力の関数として前記モノリシックシンチレータプレートにおけるシンチレーション事象の空間位置を決定するためのものであることを特徴とする、ガンマ線検出システム。
【請求項2】
前記
モノリシックシンチレータプレートは、シンチレーション材料層と、前記シンチレーション材料層の主要表面上にまたはこれに隣接して配置された放射性材料層と、を含み、前記放射性材料層は、放射線を本質的に放出する同位体を有する前記材料を構成するか、あるいは、
前記
モノリシックシンチレータプレートは、放射線を本質的に放出する同位体を有する前記材料を構成する放射性材料を合成的にドープしたシンチレーション材料を含むか、あるいは、
前記
モノリシックシンチレータプレートは、ルテチウムを含有するシンチレーション結晶を含み、較正プロセスは、固有のLu-176活性を使用する、請求項1に記載のガンマ線検出システム。
【請求項3】
前記信号処理および制御システムは、予め定義された上位エネルギー閾値を超える光子検出器測定出力を除外するように構成されたエネルギーフィルタを含み、
前記エネルギーフィルタは、予め定義された下位エネルギー閾値を下回る光子検出器測定出力を除外するように構成されている、請求項1に記載のガンマ線検出システム。
【請求項4】
少なくとも2つの積層されたシンチレータプレートを含み、
前記
空間較正手順は、1つのプレートから放出され、もう1つのプレートで吸収される目的の予め定義されたエネルギー(例えば、202または307keV)を有するガンマ線を選択し、未知のエネルギーを有するβ
-スペクトルの影響を抑制するために、前記少なくとも2つのシンチレータプレート間で一致する固有シンチレーション事象を測定することを含む、請求項1に記載のガンマ線検出システム。
【請求項5】
前記較正モジュールは、
前記モノリシックシンチレータプレートにおける
前記固有シンチレーション事象の2次元空間位置の自己組織化マップを計算するためのアルゴリズムを含む、請求項1に記載のガンマ線検出システム。
【請求項6】
前記較正モジュールは、前記
モノリシックシンチレータプレートのエッジ付近の
前記固有シンチレーション事象の2次元空間位置の空間分解能を改善するために局所分散最小化を計算するためのアルゴリズムを含む、請求項1に記載のガンマ線検出システム。
【請求項7】
複数の光子検出器(18)は、前記主要表面に入射するガンマ線から前記
モノリシックシンチレータプレートにおける
前記固有シンチレーション事象を検出するように構成された前記エッジのそれぞれに対して取り付けられている、請求項1に記載のガンマ線検出システム。
【請求項8】
前記検出モジュールアセンブリは、
前記標的ゾーンを囲み、イオンビームを放出するためのギャップ(42)またはオリフィスを含む、請求項1に記載のガンマ線検出システム。
【請求項9】
少なくとも3つのシンチレータプレートを含み、
前記
空間較正手順は、1つがβ崩壊電子からの寄与を含む、3つの局所的シンチレーション事象を選択するために、前記少なくとも3つのシンチレータプレート間で一致している固有シンチレーション事象を測定することを含む、請求項1に記載のガンマ線検出システム。
【請求項10】
組織のゾーンのイオンビーム照射のためのイオンビーム療法システム(6)であって、
患者支持体(7)と、少なくとも回転軸を中心として前記患者支持体に対して移動可能なイオンビームエミッタ(8)と、請求項1から9のいずれか一項に記載のガンマ線検出システムと、を含む、イオンビーム療法システム。
【請求項11】
信号処理および制御システム(30)を含む計算システムと、標的ゾーン(4)からのガンマ線放出を検出するように構成された少なくとも1つの検出モジュール(14)を含む検出モジュールアセンブリ(13)と、を含むガンマ線検出システム(10)
の作動方法であって、各検出モジュールは、前記標的ゾーンに概ね面するように方向付けられた主要表面(40a)およびシンチレータ層のエッジを画定する横方向小表面(40b)を有する少なくとも1つのモノリシックシンチレータプレート(16)と、前記少なくとも1つのモノリシックシンチレータプレートのエッジに結合され、前記信号処理および制御システムに接続された、複数の光子検出器と、を含み、前記
モノリシックシンチレータプレートは、前記
複数の光子検出器によって測定可能な強度を有する固有シンチレーション事象を引き起こす放射線を本質的に放射する同位体を有する材料を含み、
前記
作動方法は、
前記複数の光子検出器
が、複数の前記固有シンチレーション事象の強度および時間を検出することと、
前記信号処理および制御システムが、前記複数の光子検出器によって出力されたシンチレーション事象の前記検出された強度および時間の値をコンピューティングシステムに送信することと、
前記コンピューティングシステム
が、較正モジュールプログラムを実行して前記
複数の光子検出器の出力の関数として前記モノリシックシンチレータプレートにおけるシンチレーション事象の空間位置を決定することと、
を含むことを特徴とする、
ガンマ線検出システムの作動方法。
【請求項12】
前記ガンマ線検出システム(10)が、予め定義された上位エネルギーレベルを超える、検出された強度
を、除外
し、予め定義された下位エネルギーレベルを下回る、検出された強度
を、除外
する、請求項11に記載の
ガンマ線検出システムの作動方法。
【請求項13】
前記モノリシックシンチレータプレートにおける
前記固有シンチレーション事象の2次元空間位置の自己組織化マップ
を、前記較正モジュール
プログラムのアルゴリズム
が、計算
する、請求項11に記載の
ガンマ線検出システムの作動方法。
【請求項14】
前記
モノリシックシンチレータプレートのエッジ付近の
前記固有シンチレーション事象の2次元空間位置の空間分解能を改善するための局所分散最小化
を、前記較正モジュール
プログラムのアルゴリズム
が、計算
する、請求項11に記載の
ガンマ線検出システムの作動方法。
【請求項15】
1つのプレートから放出され、もう1つのプレートで吸収される目的の予め定義されたエネルギー(例えば、202または307keV)を有するガンマ線を選択し、未知のエネルギーを有するβ
-スペクトルの影響を抑制するために、
前記ガンマ線検出システム(10)が、前記少なくとも2つのシンチレータプレート間で一致する、
前記固有シンチレーション事象を測定することを含む、請求項11に記載の
ガンマ線検出システムの作動方法。
【請求項16】
1つがβ崩壊電子からの寄与を含む、3つの局所的シンチレーション事象を選択するために、
前記ガンマ線検出システム(10)が、前記少なくとも3つのシンチレータプレート間で一致している
前記固有シンチレーション事象を測定することを含む、請求項11に記載の
ガンマ線検出システムの作動方法。
【請求項17】
前記予め定義された上位エネルギー閾値は、200keV~1200keVの範囲内である、請求項3に記載のシステム。
【請求項18】
前記予め定義された上位エネルギー閾値は、200keV~400keVの範囲内である、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記予め定義された上位エネルギー閾値は、200keV~230keVの範囲内である、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記予め定義された下位エネルギー閾値は、0keV~90keVの範囲内である、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記予め定義された下位エネルギー閾値は、20keV~90keVの範囲内である、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記予め定義された下位エネルギー閾値は、65keV~90keVの範囲内である、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記予め定義された上位エネルギー閾値は、200keV~1200keVの範囲内である、請求項12に記載の
ガンマ線検出システムの作動方法。
【請求項24】
前記予め定義された上位エネルギー閾値は、200keV~400keVの範囲内である、請求項23に記載の
ガンマ線検出システムの作動方法。
【請求項25】
前記予め定義された上位エネルギー閾値は、200keV~230keVの範囲内である、請求項24に記載の
ガンマ線検出システムの作動方法。
【請求項26】
前記予め定義された下位エネルギー閾値は、0keV~90keVの範囲内である、請求項23に記載の
ガンマ線検出システムの作動方法。
【請求項27】
前記予め定義された下位エネルギー閾値は、20keV~90keVの範囲内である、請求項26に記載の
ガンマ線検出システムの作動方法。
【請求項28】
前記予め定義された下位エネルギー閾値は、65keV~90keVの範囲内である、請求項27に記載の
ガンマ線検出システムの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンビーム放出装置のためのガンマ線検出システム、およびガンマ線検出システムを較正する方法に関する。イオンビーム放出装置は、特に、イオンビーム療法のための、例えば腫瘍の陽子線照射のための、医療装置に関するものとすることができる。検出システムは、ガンマ線を検出するためのものである。検出システムは、イオンビーム療法での治療中に線量および飛程のモニタリングのために使用され得る。検出システムの使用は、人間または動物への照射療法に限定されず、検出システムは、他の用途のため従来の陽電子放射断層撮影(PET)スキャナまたはコンプトンカメラとしても使用され得る。
【背景技術】
【0002】
陽子線またはイオンビーム療法は、外部放射線療法の最も精密な方法の1つである。入射線量が高く、身体を通過する間に徐々に減少する光子ビームとは異なり、イオンビームは、組織を貫通し、その軌道の終点付近にそのエネルギーの大部分を蓄積させることができ、これはブラッグピークとして知られる。本文では、一般的な意味での「イオン」という用語への言及は、陽子を含む、負の電荷または正の電荷を持つイオンを包含することも理解されたい。
【0003】
放射線療法のための従来のイオンビームシステムでは、照射の線量は典型的には、標的組織ゾーンに向けられる、定義されたエネルギーの狭いビームによって送達され、ビームの透過深さは、ビームのエネルギーを調節することによって制御される。組織を通過する間に、イオンは、核反応を受け、その一部がガンマ線の放出を引き起こす。治療モニタリングのために検出され得る、2つのタイプのガンマ線がある:1)陽電子放出同位体の生成による同時発生ガンマ線(Coincident gamma rays)。2)標的核の励起による即発ガンマ線。第1のタイプは、厳密に患者のどこに照射線量が蓄積されているかに関する情報を与えるために陽電子放射断層撮影(PET)スキャンを使用して検出され得る。
【0004】
臨床過程で使用される従来のPETスキャンは、以下のように実施され得る:
-オフライン。これにより、PETスキャンは照射後に行われ、しばしば、患者を照射室からPETスキャナを収容する別室に移動させる間に数分の遅れを伴う。数分程度の寿命の同位体のみが検出され得る。
-インルーム。これにより、PETスキャンは、治療室に設置されたPETスキャナを使用して、照射後すぐに行われる。オフラインシステムに比べ、照射からスキャンまでの遅延は減少するが、それでも、患者を治療位置からPETスキャナまで移動させることによりいくらかの遅延がある。
-インビーム。これにより、陽電子消滅活性の測定は、治療部位に組み込まれるかまたはガントリーに直接組み込まれるカスタマイズされたPETスキャナにより、照射中に行われる。リアルタイムにデータを取得することで、より正確な線量および飛程の制御が可能であり、それは、寿命が短い同位体からのガンマ線を検出することができるためである。
【0005】
陽子線飛程を確認するための、別のそれ自体既知の技術は、例えばコンプトンカメラを使用した、即発ガンマ線(PG)放出の測定を介するものである。PG放出は、陽子線放出と実質的に同時であり、したがって、治療中、放出から検出まで本質的に遅延はない。よって、PG検出は、著しい飛程偏差の迅速な検出を可能にするが、PG検出は、治療中に実施されなければならず、画像再構成は、処理するのが、より複雑である。
【0006】
同時発生ガンマ線および即発ガンマ線の正確な検出には、検出システムの較正が必要となり得る。
【0007】
従来の分割型検出器では、個々の結晶のアレイが光子検出器のアレイに連結されており、どの個別の結晶でシンチレーション事象が起こったかを識別すれば十分である。よって、シンチレーション事象の空間座標を、シンチレーション結晶の次元に対応する精度で、決定することができる。1つのシンチレータで生成された光が単一の光子検出器チャネルに結合される、1対1結合が使用される場合、空間較正が不必要である。
【0008】
モノリシック結晶ガンマ線検出器(「モノリシック検出器」)が、PETスキャナにおいてますます使用されている。最も一般的な構成は、面結合型検出器(face-coupled detector)であり、光子検出器の2次元アレイがモノリシックシンチレーション結晶の最も大きな面のうちの1つまたは2つを覆っている。このような構成は、シンチレーション事象と光子検出器との間に比較的短い光路長を有するが、面全体を覆うのに比較的多数の光子検出器を必要とする。代替的な構成は、例えばWO2018/081404 A1に記載されるような、エッジ結合型検出器(edge-coupled detector)であり、光がモノリシックシンチレータのエッジにおいて集められる。これにより、光子検出器の総数は減少するが、光路長は増大する。いずれの場合も、モノリシック検出器の利点は、従来の分割型結晶ガンマ線検出器のように、個々の結晶セグメントの有限なサイズにより空間分解能が制限されないことである。モノリシック検出器の別の利点は、潜在的に低い製造コストであり、それは、シンチレーション結晶および光子検出器の数が著しく減少され得るためである。
【0009】
モノリシック検出器における各シンチレーション事象については、いくつかの光子検出器が光に曝露され、さらなる分析が、シンチレーション事象の元の座標を決定するのに必要である。空間較正手順、すなわち、モノリシックシンチレータの内側の位置に対する複数の光子検出器の応答のマッピングは、分割型検出器よりも複雑である。既知の較正方法は以下を含む:
1:コリメート点線源を使用した較正
モノリシック検出器を較正する第1の方法は、これを、既知のエネルギーのコリメート放射線源に曝露することである。入射光の位置および方向が周知であるので、放射線に対する各チャネルの応答は、吸収される放射線の座標の関数として特徴付けられ得る。線源は、検出器の面にわたりさまざまな位置で十分なデータを取得するためにロボットシステムにより検出器に対して移動され得る。このようなプロセスは、時間がかかり、特殊な設備(コリメート線源およびロボットシステム)ならびに複雑な制御プロセスを必要とする。
2:複数のファンビーム[Xin2019]
第2の方法は、検出器を複数のファン放射線ビームに曝露することであり、例えば、1つのファンがxz平面にあり、別のファンがyz平面にあり、そしておそらくは、第3のファンがxy平面にある。データ処理アルゴリズムを使用して、例えばxz平面およびyz平面内の2つのファンから取得信号の共通データセットを抽出する。この共通データセットは、これら2つの平面の交点に対応する。シンチレータ容積にわたってファンビームを転置させると、検出器の完全3次元の空間較正をもたらす。ファンビーム当たりの較正位置の数は、コリメート線源を使用した較正位置の数と比べて大幅に減少され得るが、このプロセスは同様に、特殊な設備(ファン線源(fan sources)、機械的アクチュエータ)ならびに複雑な制御プロセスを必要とする。この第2の方法は、製造中は実用的となり得るが、エンドユーザの建物(病院または研究室など)に既に設置されている検出システムの較正について、以下の欠点を有する:
-較正に必要なすべての補助設備の設置が必要とされる。
-交差するデータサブセットを適切に選択するために、シンチレータの内側におけるシンチレーション事象の空間分布を正確に知ることが必要である。この分布は、むき出しのシンチレータが放射線源に直接曝露される場合には、例えばモンテカルロシミュレーションを用いて、計算するのがかなり簡単であるが、既に組み立てられた検出システムの場合、形状がはるかに複雑である;
-ファンビームを位置付けて照準を定めるための利用可能な空間が制限され得る;
-各シンチレータが、個別に較正されなければならない;
-較正設備を設置し、較正を実施し、較正設備を取り除くのに、肉体労働(Manual work)が必要である;
-放射性が高い可能性がある較正線源の使用は、較正中に検出器の部屋へのアクセスを妨げるかまたは制限する。
3:非コリメート線源[Palomares2019]
第3の方法は、検出器を非コリメート放射線源、例えば点線源に曝露し、多数のサンプルを「盲目的に」取得することである。このデータセットは、次に、コホネンの自己組織化マップ(SOM)[Kohonen1982]などの自己組織化技術を使用して、さらに処理され得る。シンチレーション結晶当たりの個々の光子検出器の数がMである場合、この自己組織化技術は、本質的に、M次元データセットの各サンプルを、シンチレータ断面または容積に対応する、ニューロンまたはノードの2または3次元グリッドにマッピングするのに役立つ。M次元空間において類似しているデータサンプルは、シンチレータ断面または容積内の隣接サンプルとなる。予測されるシンチレーション事象分布に一致させるために、結果として得られた、シンチレータ容積内のサンプル密度分布のさらなる補正が必要な場合がある。
この方法の利点は、移動可能な較正設備を必要としないこと、および、複数の検出器モジュールを同時に較正できる能力を含む。
しかしながら、いくつかの欠点がある:
-各シンチレータの内側のシンチレーション事象分布の詳細な予測が、自己組織化マップを適切に補正するのに必要である。各タイプの検出器構成のモンテカルロシミュレーションが必要とされる。
-大きな検出器アセンブリでは、単一の線源は、シンチレータと線源との間の距離により、許容可能な時間内にすべてのモジュールについて十分大きな較正セットを与えるのに不十分となり得る。
-大きな検出器アセンブリでは、複数の線源、または単一の点線源の繰り返しの移動が、すべての個々のシンチレータを較正するために依然として必要とされ得る。
-線源と較正される1つまたは複数のシンチレータ検出器との間の経路が、物体(例えば、台、カウチ、もしくはロボットアーム)により遮られ得、遮る物体および/または放射線源を移動させる、連続した較正が必要になる。
-線源は、較正される各シンチレータに対して正確かつ的確に位置付けられなければならない。以前の較正方法と同じように、これは、既に組み立てられ設置されたシステムでは困難となり得る。
-人手介入、放射性が高い可能性がある線源の輸送および取り扱い、ならびに、部屋の占有が、較正を実施するのに依然として必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一般的な目的は、イオンビーム放出装置に組み込むための、費用対効果が高く正確なガンマ線検出システムを提供することである。
【0011】
具体的な用途の1つにおけるイオンビーム放出装置は、医療分野ではイオンビーム放出療法のためのものである。
【0012】
本発明のさらに具体的な目的は、経済的かつ効率的な方法で較正され得るガンマ線検出システムを提供することである。
【0013】
人手介入なしに、または人手介入を最小限にして、自動化された方法で較正され得るガンマ線検出システムを提供することが有利である。
【0014】
携帯用もしくは移動可能なアプリケーションのためまたは頻繁に変化し得る操作環境のためのもので、正確で信頼性の高い検出のために経済的かつ効率的に較正され得る、ガンマ線検出システムを提供することが有利である。
【0015】
光子検出器の応答に大きな影響を与え、新たな較正を必要とする可能性がある、例えば周囲温度の日々の変化または季節変化により、必要に応じて容易に較正され得るガンマ線検出システムを提供することが有利である。
【0016】
高精度で目的の主要なガンマ線エネルギー(511keV)に好都合にかつ特に較正され得る、PETスキャン適用のためのガンマ線検出システムを提供することが有利である。
【0017】
88~681keVのすべてのエネルギーに対して好都合に較正および検証され得るガンマ線検出システムを提供することが有利である。
【0018】
個々の光子検出器間の相対的なタイミングオフセットが較正され得るガンマ線検出システムを提供することが有利である。
【0019】
個々の光子検出器のエネルギー依存性タイミングオフセットが較正され得るガンマ線検出システムを提供することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本明細書に開示されるのは、本発明の一態様によれば、信号処理および制御システムを含む計算システムと、標的ゾーンからのガンマ線放出を検出するように構成された少なくとも1つの検出モジュールを含む検出モジュールアセンブリと、を含むガンマ線検出システムであり、各検出モジュールは、標的ゾーンに概ね面するように方向付けられた主要表面およびシンチレータ層のエッジを画定する横方向小表面を有する少なくとも1つのモノリシックシンチレータプレートと、前記少なくとも1つのシンチレータプレートのエッジに結合され、信号処理および制御システムに接続された、複数の光子検出器と、を含む。モノリシックシンチレータプレートは、光子検出器によって測定可能な強度を有する固有シンチレーション事象を引き起こす放射線を本質的に放射する同位体を有する材料を含む。ガンマ線検出システムは、前記複数の光子検出器によって出力された複数の前記固有シンチレーション事象の測定に基づいて空間較正手順を実行するように構成された較正モジュールを含み、空間較正手順は、光子検出器の出力の関数としてシンチレータプレートにおけるシンチレーション事象の空間位置を決定するためのものである。
【0021】
一実施形態では、前記シンチレータプレートは、シンチレーション材料層と、シンチレーション材料層の主要表面上にまたはこれに隣接して配置された放射性材料層と、を含み得、前記放射性材料層は、放射線を本質的に放出する同位体を有する前記材料を構成する。
【0022】
別の実施形態では、前記シンチレータプレートは、放射線を本質的に放出する同位体を有する前記材料を構成する放射性材料を合成的にドープしたシンチレーション材料を含み得る。
【0023】
さらに別の実施形態では、前記シンチレータプレートは、天然に存在する同位体、例えばルテチウムを含有するシンチレーション結晶を含み得、較正プロセスは、固有の放射性活性、例えばLu-176活性を使用する。
【0024】
有利な実施形態では、信号処理および制御システムは、予め定義された上位エネルギーレベルを超える光子検出器測定出力を除外するように構成されたエネルギーフィルタを含む。
【0025】
実施形態では、予め定義された上位エネルギーレベルは、約200keV~約1200keVの範囲の値を有し得る。
【0026】
有利な実施形態では、予め定義された上位エネルギーレベルは、約200keV~約400keVの範囲、好ましくは約200keV~約230keVの範囲、例えば約202keV付近の値を有し得る。
【0027】
実施形態では、エネルギーフィルタは、予め定義された下位エネルギー閾値を下回る光子検出器測定出力を除外するようにさらに構成され得る。
【0028】
実施形態では、予め定義された下位エネルギー閾値は、約0keV~約90keVの範囲内であってよい。
【0029】
有利な実施形態では、予め定義された下位エネルギーレベルは、約20keV~約90keVの範囲、好ましくは約65keV~90keVの範囲、例えば約88keVの値を有し得る。
【0030】
有利な実施形態では、ガンマ線検出システムは、少なくとも2つのシンチレータプレート、特に積層されたシンチレータプレート、および/または隣接して配置されたシンチレータプレートを含み、較正手順は、1つのプレートから放出され、もう1つのプレートで吸収される目的の予め定義されたエネルギー(例えば、202または307keV)を有するガンマ線から局所的シンチレーション事象を選択し、未知のエネルギーを有するβ-スペクトルの影響を抑制するために、前記少なくとも2つのシンチレータプレート間で一致する固有シンチレーション事象を測定することを含む。
【0031】
有利な実施形態では、較正モジュールは、シンチレーションプレートにおける固有シンチレーション事象の2次元空間位置の自己組織化マップを計算するためのアルゴリズムを含む。
【0032】
有利な実施形態では、ガンマ線検出システムは、少なくとも3つのシンチレータプレートを含み、較正手順は、1つがβ電子からの寄与を含む、最大で3つの局所的シンチレーション事象を選択するために、前記少なくとも3つのシンチレータプレート間で一致している固有シンチレーション事象を測定することを含む。
【0033】
有利な実施形態では、較正モジュールは、シンチレータプレートのエッジ付近の固有シンチレーション事象の2次元空間位置の空間分解能を改善するために局所分散最小化(local variance-minimization)を計算するためのアルゴリズムを含む。
【0034】
有利な実施形態では、複数の光子検出器は、主要表面に入射するガンマ線からシンチレータプレートにおけるシンチレーション事象を検出するように構成された前記エッジに対して取り付けられる。
【0035】
有利な実施形態では、検出モジュールアセンブリは、標的ゾーンを囲み、イオンビームを放出するためのギャップまたはオリフィスを含む。
【0036】
本明細書には、組織のゾーンのイオンビーム照射のためのイオンビーム療法システムも開示され、これは、患者支持体と、少なくとも回転軸を中心として患者支持体に対して移動可能なイオンビームエミッタと、ガンマ線検出システムと、を含む。
【0037】
本明細書には、信号処理および制御システムを含む計算システムと、標的ゾーンからのガンマ線放出を検出するように構成された少なくとも1つの検出モジュールを含む検出モジュールアセンブリと、を含むガンマ線検出システムを較正する方法も開示され、各検出モジュールは、標的ゾーンに概ね面するように方向付けられた主要表面およびシンチレータ層のエッジを画定する横方向小表面を有する少なくとも1つのモノリシックシンチレータプレートと、前記少なくとも1つのシンチレータプレートのエッジに結合され、信号処理および制御システムに接続された、複数の光子検出器と、を含み、シンチレータプレートは、光子検出器によって測定可能な強度を有する固有シンチレーション事象を引き起こす放射線を本質的に放射する同位体を有する材料を含む。この方法は、複数の光子検出器によって複数の前記固有シンチレーション事象の強度および時間を検出することと、複数の光子検出器によって出力されたシンチレーション事象の前記検出された強度および時間の値をコンピューティングシステムに送信することと、コンピューティングシステムにおいて較正モジュールプログラムを実行して光子検出器の出力の関数としてシンチレータプレートにおけるシンチレーション事象の空間位置を決定することと、を含む。
【0038】
この方法の有利な実施形態では、シンチレーションプレートにおける固有シンチレーション事象の2次元空間位置の自己組織化マップが、較正モジュールのアルゴリズムによって計算される。
【0039】
この方法の有利な実施形態では、2つの空間座標およびシンチレーション事象エネルギーに対応する3次元自己組織化マップが、較正モジュールのアルゴリズムによって計算される。
【0040】
この方法の有利な実施形態では、シンチレータプレートのエッジ付近の固有シンチレーション事象の2次元空間位置の空間分解能を改善させるための局所分散最小化が、較正モジュールのアルゴリズムによって計算される。
【0041】
この方法の一実施形態では、較正手順は、1つのプレートから放出され、もう1つのプレートで吸収される目的の予め定義されたエネルギー(例えば、202または307keV)を有するガンマ線を選択し、未知のエネルギーを有するβ-スペクトルの影響を抑制するために、前記少なくとも2つのシンチレータプレートの間で一致する固有シンチレーション事象を測定することを含む。
【0042】
この方法の有利な実施形態では、予め定義された上位エネルギーレベルを超える光子検出器測定出力は除外される。
【0043】
この方法の有利な実施形態では、予め定義された下位エネルギーレベルを下回る光子検出器測定出力は除外される。
【0044】
実施形態では、予め定義された上位エネルギーレベルは、約200keV~約1200keVの範囲の値を有し得る。
【0045】
有利な実施形態では、予め定義された上位エネルギーレベルは、約200keV~約400keVの範囲、好ましくは約200keV~約230keVの範囲、例えば約202keV付近の値を有し得る。
【0046】
この方法の実施形態では、予め定義された下位エネルギー閾値を下回る光子検出器測定出力は、さらに除外され得る。
【0047】
実施形態では、予め定義された下位エネルギー閾値は、約0keV~約90keVの範囲内であってよい。
【0048】
有利な実施形態では、予め定義された下位エネルギーレベルは、約20keV~約90keVの範囲、好ましくは約65keV~90keVの範囲、例えば約88keVの値を有し得る。
【0049】
本発明のさらなる目的および有利な特徴は、特許請求の範囲、および添付の図面に関連する本発明の実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1a】本発明の実施形態による、ガンマ線検出システムを備えたイオンビーム療法システムの斜視図である。
【
図1b】本発明の実施形態によるガンマ線検出システムの検出モジュールアセンブリの概略図である。
【
図2a】本発明の実施形態による検出モジュールアセンブリのエッジ結合型光子検出器を有するシンチレーション結晶の概略斜視図である。
【
図2b】本発明の実施形態による検出モジュールアセンブリの面結合型光子検出器を有するシンチレーション結晶の別の実施形態の概略斜視図である。
【
図3a】本発明の実施形態によるガンマ線検出システムの検出モジュールアセンブリの斜視概略図である。
【
図3b】検出モジュールの内側部分を見るために一部の光子検出器支持基板を取り除いた、
図3aと同様の図である。
【
図3c】本発明の実施形態による検出モジュールのシンチレータプレートの一部の詳細な概略断面図である。
【
図3d】電気光学シャッター(EOS)を含む検出モジュールのシンチレータプレートの簡略化した概略図である。
【
図4】Lu-176の崩壊スキームを、関連するガンマ線およびβエネルギーと共に示す。
【
図5】シンチレータにおけるLu-176からの吸収エネルギースペクトルの例のプロットを示し、本発明の実施形態による自己較正のための適切なエネルギーウィンドウ(>88keVおよび<202keV)を示すものである。
【
図6】本発明の実施形態による、ソフトウェアモジュールを示すコンピューティングシステム、およびガンマ線検出システムのブロック図である。
【
図7】本発明の実施形態による、光子検出器の出力に接続された、
図6のコンピューティングシステムの取得回路のブロック図である。
【
図8a】サンプリングプロセスのためにシンチレータプレートに結合した光子検出器の出力を示し、較正セットのフォーマットを示している:各サンプルはベクトルとして扱われ、各光子検出器の応答はベクトルの要素を形成する。
【
図8b】サンプリングプロセスのためにシンチレータプレートに結合した光子検出器の出力を示し、較正セットのフォーマットを示している:各サンプルはベクトルとして扱われ、各光子検出器の応答はベクトルの要素を形成する。
【
図9】1つの層で発生するシンチレーション事象、および、そこからの崩壊生成物の透過を示す、2つの積層されたシンチレーションプレートの例の概略図である。
【
図10】光子検出器にエッジ結合され、方向Zにおいてエアギャップによって囲まれたモノリシックシンチレータ内部のシンチレーション事象からの光子経路の概略図であり:シンチレータとエアギャップの屈折率差が大きいため、ほとんどの光子はエッジに対して完全に内側で反射されるが、ごく一部のシンチレーション光子は直接シンチレータを抜けてエアギャップの反対側にある光子検出器の2Dアレイに到達し、これは、シンチレーション事象の元の座標を測定するのに使用され得る。
【
図11】固有放射能と画素一致事象(pixel-coincidence events)を用いた画素検出器のエネルギー較正の例の概略図である。
【
図12】本発明の実施形態によるモノリシック2層エッジ結合型検出器からの実験データのプロットを示し、核崩壊が1つの層で発生し、逃げる1つまたは2つのガンマ線がもう1つの層で吸収され検出される、層一致事象(layer-coincidence events)のエネルギースペクトルを示している。
【
図13a】
図12と同じ事象の2Dヒストグラムを示し、γ
2=202keVおよびγ
3=307keVに対応するエネルギーが破線の四角で示されている。
【
図13b】
図12と同じ事象の2Dヒストグラムを示し、γ
2=202keVおよびγ
3=307keVに対応するエネルギーが破線の四角で示され、
図13aとは異なるエネルギーフィルタウィンドウを示している。
【
図14】本発明の実施形態の実験検証セットアップを概略的に示し、放射性線源(Na-22)の片側に配置されたエッジ結合型モノリシックシンチレータを示しているが、画素検出器がもう一方の側に配置されている。モノリシックおよび画素検出器の同時トリガを使用して、それぞれ反対の陽電子消滅511keVガンマ線からデータを取得する。画素検出器をモノリシック検出器よりも線源から離して配置することで、モノリシック検出器での空間較正分解能を画素検出器のピッチよりも良好にすることができる。
【
図15a】単層較正セット(全事象<202keV)を用いた空間精度(spatial precision)のヒストグラムを示す。
【
図15b】2層較正セット(単一の202keVガンマ線の吸収に一致する同時発生事象)を用いた空間精度のヒストグラムを示す。
【
図16】コホネンの自己組織化マップと本発明の実施形態による局所分散最小化技術を用いた空間精度の比較を示すプロットを示し、それによって、誤差は、シンチレータ中心からの最大座標距離の関数としてプロットされている。
【
図17a】エッジ当たり8個の光子検出器を有するエッジ結合型検出器を有するモノリシックシンチレータプレートについて実験室データから計算された平均光子検出器応答マップのプロットを示す。
【
図17b】エッジ当たり8個の光子検出器を有するエッジ結合型検出器を有するモノリシックシンチレータプレートについて実験室データから計算された平均光子検出器応答マップのプロットを示し、プロットは異なる反復でのマップを示している。
【
図17c】エッジ当たり8個の光子検出器を有するエッジ結合型検出器を有するモノリシックシンチレータプレートについて実験室データから計算された平均光子検出器応答マップのプロットを示し、プロットは異なる反復でのマップを示している。
【
図18a】2Dグリッド上のサンプルに2Dグリッドのノードをマッピング(訓練)した、一般的なSOMの例の計算結果を示すプロットで、線は各サンプルのベストマッチングユニット(BMU)を示している。
【
図18b】2Dグリッド上のサンプルに2Dグリッドのノードをマッピング(訓練)した、一般的なSOMの例の計算結果を示すプロットで、線は各サンプルのベストマッチングユニット(BMU)を示している。
【
図18c】2Dグリッド上のサンプルに2Dグリッドのノードをマッピング(訓練)した、一般的なSOMの例の計算結果を示すプロットで、線は各サンプルのベストマッチングユニット(BMU)を示している。
【
図18d】2Dグリッド上のサンプルに2Dグリッドのノードをマッピング(訓練)した、一般的なSOMの例の計算結果を示すプロットで、線は各サンプルのベストマッチングユニット(BMU)を示している。
【
図18e】2Dグリッド上のサンプルに2Dグリッドのノードをマッピング(訓練)した、一般的なSOMの例の計算結果を示すプロットで、線は各サンプルのベストマッチングユニット(BMU)を示している。
【
図18f】2Dグリッド上のサンプルに2Dグリッドのノードをマッピング(訓練)した、一般的なSOMの例の計算結果を示すプロットで、線は各サンプルのベストマッチングユニット(BMU)を示している。
【
図19a】SOMアルゴリズムに密度補正の仕組みを組み込んだ効果を示すプロットである。
図19aでは密度補正が適用されない(つまりオリジナルのSOM法[Kohonen1982])ため、コーナーおよびエッジ付近にサンプルが集まっている。
【
図19b】SOMアルゴリズムに密度補正の仕組みを組み込んだ効果を示すプロットである。
図19bでは、同じデータに密度補正関数を用いて、より均一なサンプル分布をもたらしている。
【
図20a】エッジ当たり5つの光子検出器を持つ50×50mmのエッジ結合型シンチレータにおける、単一(事象1)および2つ(事象2)のシンチレーション事象の場所を示している。
【
図20b】4つのエッジに沿った事象1および事象2の対応する光子検出器信号を示している。
【
図21】2層事象からのサンプルを用いた、本発明の実施形態による1つの検出器のエネルギーヒストグラムを示し、202+307keVのエネルギーピークが示されている。
【
図22】3D SOMの原理、または層の同時の空間較正およびエネルギー特性評価を図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図面を、
図1から参照すると、本発明の実施形態による、特にイオンビーム放射線療法、または組織のゾーンの陽子線照射のための、イオンビーム療法システム6が図示されている。この実施形態では、患者5が、少なくとも回転軸および並進運動軸の周りでイオンビームエミッタ8に対して可動である患者支持体7上に位置付けられる。患者支持体7は、特に、固定基準(例えば地面)に対して少なくとも1つの軸、特に水平軸Xに沿って少なくとも並進運動で移動可能であってよく、イオンビームエミッタは、固定基準(例えば地面)に対して前記水平軸Xの周りを回転可能であってよい。しかしながら、患者支持体および/またはイオンビームエミッタは、イオンビームエミッタを患者に対して任意の位置および角度に位置付けることができる完全に三次元の動きまで、複数の軸に沿って、かつその周りを、並進運動および/または回転で移動可能であってよい。
【0052】
イオンビーム療法システムは、ガンマ線検出システム10をさらに含む。ガンマ線検出システム10は、特定の実施形態において、1つ以上の軸に沿ってまたはその周りで患者支持体に対して相対的に移動可能であることもできる。一実施形態において、ガンマ線検出システムは、少なくとも並進運動方向に沿って、特に水平軸X方向に沿って、また変形例では、イオンビームエミッタ8と協調して前記水平軸を中心とした回転でも、移動可能である。
【0053】
変形例(図示せず)では、固定基準に対して静止しているか、または地面などの固定基準に対して並進運動のみで移動する、ガンマ線検出システムを有することが可能である。
【0054】
好ましい実施形態では、ガンマ線検出システム10は、概ねリングまたは多角形の形状である検出モジュールアセンブリ13を含む。一実施形態において、検出モジュールアセンブリは、開口部42を含んで、イオンビームエミッタ8がこの開口部を通してイオン(例えば、陽子)を透過させることを可能にすることができ、イオンビームエミッタ8の放出方向は、実質的に、検出モジュールアセンブリと同じ平面内になる。これにより、イオンビームを受ける標的ゾーンから放出されるガンマ線を同時にかつ効率的に検出することができる。検出モジュールアセンブリ13は、例えば、一般的な「C」形状を有して、C形状の対向する端部の間に開口部を提供し、イオンビームエミッタ8がこの開口部を通してイオンを透過させることを可能にし得る。しかしながら、変形例では、実質的に閉じたリング/多角形の形状、例えば概ね円筒形の検出モジュールアセンブリを設けてもよく、オリフィスがその一部を通り、イオンビーム1がそこを通って透過することを可能にする(不図示の変形例)。
【0055】
イメージングモダリティによっては、画像は、511keVの陽電子-電子消滅ガンマ線と応答線LOR27の同時検出の処理、またはコンプトンコーン25からのコンプトンカメラ画像再構成から生成され得る。いくつかのアプリケーションでは、画像を生成するために、LOR27とコンプトンコーン25の交点27bを利用することが有利となり得る。
【0056】
イオンビームエミッタ8の回転軸Xの方向における検出モジュールアセンブリ13の長さは、変形例に応じて、約5~10cmから約50~100cm、または全身スキャナの場合は100~200cmの範囲であってよい。軸方向の長さがより短い検出構成の場合、検出モジュールアセンブリ13の並進運動は、場合によってはイオンビームエミッタと連動して、イオンビーム療法中に実行され得る。検出モジュールアセンブリはまた、一実施形態によれば、イオンビーム放出後、または診断中(例:例えば癌の検出において、従来のPETスキャナとして使用される)に、標的ゾーンのスキャンのために並進運動させられてもよい。標的ゾーン全体にわたって延びるのに十分な長さを有する検出モジュールアセンブリでは、患者に対して静止している検出モジュールアセンブリを有することが可能であり、それによって、イオンビームまたはイオンビームエミッタの変位に、検出システムが追随しない場合がある。
【0057】
検出モジュールアセンブリの動きは、イオンビームエミッタの動きと平行であるかもしくは対応してもよく、または、標的の位置、標的環境、ならびにイオンビームエミッタ8の位置および傾斜角度の関数として標的から放出される即発ガンマ線および陽電子消滅ガンマ線の検出を最適化するように構成された異なる動きに従ってもよいことにさらに留意されたい。イオンビームエミッタおよび検出システムの最適な動きは、特に、サンプル組織上でのシステムの較正から得ることができる。
【0058】
本発明の実施形態に係るイオンビーム療法システム6に用いられるガンマ線検出システム10の重要な利点は、陽子線放出中にリアルタイムで検出が行われ、即発ガンマ線だけでなく陽電子消滅ガンマ線も捕捉できることである。さらに、陽子線放出後のある時間の間または治療中の連続した陽子線放出パルスの合間に放出される陽電子消滅ガンマ線を検出することもできる。これにより、標的ゾーンに対する陽子線吸収は、連続的にモニタリングされ、検出システムからのフィードバックにより、治療中または治療後の標的ゾーンの動きを考慮して標的ゾーンの正確なターゲティングを行うために調整され、かつ従来のシステムに関連して以前に議論したウォッシュアウト効果等の他の問題を回避することができる。
【0059】
標的によって放出された即発ガンマ線は、コンプトンカメラとして機能する検出器で検出され得、一方、陽電子消滅ガンマ線は、PETスキャナ機能原理を用いる検出モジュールで検出され得、これらの検出方法の両方が、本発明の実施形態による検出アセンブリの検出モジュールに統合されている。PET検出は、イオンビーム放出中、イオンビーム放出の合間、およびイオンビーム放出後に動作してよく、または代替的に、イオンビーム放出パルスの合間およびイオンビーム放出パルス後にのみスイッチを入れられてもよいことに留意されたい。イオンビーム放出中は、即発ガンマ線放出の割合が非常に高く、これにより、陽電子放出消滅からの同時発生ガンマ線の測定の精度および信頼性が低くなり得るが、イオンビーム放出後のある持続時間にわたって、即発ガンマ線放出が低く、陽電子消滅ガンマ線放出が(それ自体周知のように)ある時間にわたり続き、イオンビーム放出中およびその後に測定を実行することができる。
【0060】
検出モジュールアセンブリ13は、複数の検出モジュール14を含む。検出モジュール14は、
図2aに図示されるような実施形態では、セグメントを形成するように整列して配置され得る。ただし、他のさまざまな構成が可能であり、これにより、セグメントを形成するように整列されるか、または、実質的に円形の配置もしくは多角形の配置(図示のとおり)で位置付けられる、モジュールの数は、変化し得る。
【0061】
検出モジュール14は、コンプトンカメラおよびPETスキャナの両方として機能するように構成されてもよい。
【0062】
各検出モジュール14は、1つまたは複数の積層されたシンチレータプレート16と、シンチレータプレートにおけるシンチレーション事象を検出するように配置された複数の光子検出器18と、を含み得る。
【0063】
本発明の実施形態によれば、
図2a、
図2bおよび
図3bに概略的に示されているように、シンチレータプレートは、標的ゾーンまたは軸Zに概ね面するように方向付けられた主要表面40a、およびシンチレータプレートのエッジまたは輪郭を画定する横方向小表面40bを有する。簡略化のために、横方向小表面40bは、本明細書において「エッジ」とも呼ばれるものとする。
【0064】
複数の積層されたシンチレータプレートを有する実施形態では、検出モジュール14におけるシンチレータプレート16の積層方向は、主要表面40aに直交している。
【0065】
好ましい実施形態によれば、光子検出器18は、例えば
図2aに示されるように、シンチレータプレート16のエッジ40b上に配置される。これは、本明細書において、エッジ結合型シンチレータプレートとも呼ばれる。
【0066】
別の実施形態によれば、光子検出器18は、例えば
図2bに示されるように、標的4から離れる方向に向いたシンチレータプレート16の主要表面40a上に配置される。これは、本明細書では、面結合型シンチレータプレートとも呼ばれる。複数の積層されたシンチレータプレートを有する実施形態では、光子検出器は、標的27cから最も遠い最外シンチレータプレート上に配置されてもよい。面結合型シンチレータの積層は、層ごとに別々の事象を分解するために、典型的には、シンチレータ層ごとに光子検出器の1つのアレイを有し;別の状況では、ただ単一の厚いシンチレータを使用することができる。変形例では、光子検出器は、積層内のそれぞれのまたは選択されたシンチレータプレート上に位置付けられ得、光子検出器は、同時発生および即発ガンマ放射線に対して少なくとも部分的に透明である。
【0067】
検出モジュールは、実施形態によれば、半径方向ギャップのないシンチレータプレートの積層を、または他の実施形態によれば、半径方向ギャップ17を含むシンチレータプレートの積層を、含み得る。
【0068】
半径方向ギャップ17は、コンプトンカメラが機能するのに特に有用であり、それによって、最内シンチレータプレート、すなわち標的ゾーンに最も近いものは、コンプトンカメラのための散乱シンチレータプレートとして作用し、シンチレータ要素の半径方向最外積層は、1つまたは複数の吸収体シンチレータプレートとして作用する。変形例に応じて、散乱シンチレータプレートは、互いに密接に積層された1つ以上のシンチレータプレートを含み得、吸収体シンチレータプレートは、1つまたは複数の密接に積層されたシンチレータプレートを含み得る。
【0069】
シンチレータプレートの主要表面40aは、ガンマ線が入射する表面であり、例えば主要表面に実質的に直交していてよく、シンチレータプレートの対向する側面間に延びる、エッジ40bは、好適な実施形態に従って光子検出器18が配置されるシンチレータプレートのエッジを形成する。エッジ結合型検出器の状況において、主要表面40aは、光子検出器に光学的に結合されていない面のいずれかであり、それによって、較正中、隣接する層からのガンマ線は「上」または「下」から来ることができ、検出器動作中、ガンマ線の大部分はスキャン物体(標的)から来る。
【0070】
光子検出器の好ましい配列は、相互作用深さ(DOI)測定(Z方向)の精度および/または読み出しチャネル数の削減と、シンチレーションプレートの主要表面(X-Y平面)におけるシンチレーション位置決定の精度との関係を最適化しようとする。
【0071】
好適な実施形態によると、シンチレータプレートのエッジ40bに沿って、エッジ光スプレッダ材料層26が提供され得る。エッジ光スプレッダ材料26の機能は、シンチレーション光を広げることであり、1つのエッジ40bに非常に近いシンチレータに入射するガンマ線からのシンチレーション光は、前記1つのエッジに近接するいくつかの光子検出器により検出可能となるように十分に広がる。
【0072】
好適な実施形態によると、シンチレータ層のエッジ40bは、エッジを通した光子検出器への光伝送を最適化し、かつ/または、(例えば、空気、可変ギャップ等に起因する)一定でない界面により生じ得る不整合を回避するために層を通した光子の一貫した予測可能な透過を提供する、界面材料を含む、検出器-シンチレータ光学界面22をさらに備えることができる。光学界面はまた、空間分解能を向上させるために、シンチレータエッジの近くで発生するシンチレーション事象からの光を複数の光子検出器上に広げる役割を果たす。
【0073】
シンチレータ層の1つ以上に沿って、電気光学シャッター(EOS)24がさらに提供され得、これは、検出器モジュール14の動作状態に応じて、光子が光子検出器へとエッジを通過するか、または光子検出器への通過が阻止されるよう、オン(光学的に透明)またはオフ(吸収もしくは反射)に切り替えられるように電子的に動作する。
【0074】
本明細書でいう半径方向は、検出モジュールを示す図面に示される方向Zに対応することに留意されたい。
【0075】
シンチレータプレート16のエッジ40bに沿って配置された光子検出器18は、光子検出器支持基板20上に設けられてよく、これは、例えば、光子検出器を検出モジュール14の信号処理および制御システム30に接続するための回路トレースを有する回路基板の形態であってよい。
【0076】
検出モジュールアセンブリ13の信号取得・処理および制御システム30は、例えば、回路基板32と、その上に取り付けられた電子部品34と、を含むことができ、これは、例えば検出モジュールの処理および制御用のマイクロプロセッサおよびメモリを含む。回路基板32は、モジュールの最外半径方向端部に取り付けられ、回路基板32を光子検出器支持基板20に、さらに画像再構成のためガンマ線検出システム10の電子制御システムに、接続するためのコネクタ36a、36bを含み得る。
【0077】
信号処理および制御システム30は、検出モジュール内に設置されるかもしくは検出モジュールの外部にあるコンピューティングシステムの一部を形成するか、またはこれに接続され得、あるいは、一部がイオンビーム放出装置の外部にあってもよく、ソフトウェアの実行、ならびに光子検出器からのデータの計算および評価は、検出モジュールアセンブリの電子回路内、および/またはガンマ線検出システムのハードウェアコンポーネントの外部にあるがこれに接続されているコンピューティングデバイスにおいて、集中または分散方式で行われ得ることが理解される。
【0078】
エッジ結合型検出器の実施形態では、支持基板20は、検出モジュールアセンブリ13の隣接する検出モジュール14間のギャップを有利に最小化するエッジコネクタ36bを有するシリコン光電子増倍管アレイ基板として構成されてもよい。
【0079】
別の実施形態では、面結合型光子検出器の場合、光子検出器は、シンチレータプレートに面する回路基板32の一方の面に取り付けられ得る。積層されたシンチレータプレート上に面結合型光子検出器を有する変形例では、その各層で光子検出器に電気的に接続するために、1つ以上の支持基板20が提供されてもよい。
【0080】
エッジ結合型の実施形態では、光子検出器18は、個別層光子検出器18aおよび/またはストリップ多層光子検出器18bを含み得る。特定の実施形態では、光子検出器18は、複数の積層されたシンチレータプレート16のエッジを横切って半径方向(Z方向)に延びるストリップ多層光子検出器18bと、個々のシンチレータ層上に位置付けられる個別層光子検出器18aと、の両方を含み得る。検出モジュール14は、例えば
図17a~
図17eに示されるように、モジュールの各側面に複数のストリップ多層光子検出器18bを含み、さらにモジュールの各側面に、または側面のいくつかのみに、または変形例によっては1つの側面のみに、個別層光子検出器18aの列(column)を含むことができる。個別層光子検出器18aは、入射ガンマ線が吸収される1つまたは複数の層の決定を可能にし、一方、多層ストリップ光子検出器18bは(場合によっては、照明された個別層光子検出器と組み合わせて)、吸収されたガンマ線の入射位置を半径方向に直交する平面(すなわち、シンチレータプレート16の主要表面40aに平行な平面)内で決定することを可能にする。
【0081】
ストリップ多層光子検出器18bの使用の重要な利点は、測定精度を低下させることなく、所与の数の積層されたシンチレータプレートについて信号処理および制御電子機器によって処理される必要があるチャネルの数を減少させることである。したがって、データ処理要件が、設備の関連コストと同様に著しく低減され、または代替的に、相互作用深さ測定におけるより高い精度が、所与の数の読み出しチャネルに対してより多数の積層されたシンチレータプレートを有することによって得られる。
【0082】
本発明のようにモノリシックシンチレータプレートを使用する場合、正確な測定を確実にするためには、シンチレータ結晶容積内のどの位置でシンチレーション事象が発生したかを正確に判断する必要がある。これは、各シンチレーション事象に対して、多数の光子検出器(エッジ結合型または面結合型のいずれか)が光に曝露されるため、空間較正プロセスを必要とし、シンチレーション事象の元の座標を決定するためにさらなる分析が必要となる。
【0083】
本発明の一態様によれば、較正プロセスは、シンチレータ結晶16の材料の固有放射線の光子検出器18による測定値を用いて、信号処理および制御システム30ならびに/またはより一般的にはコンピューティングシステムにおいて較正ソフトウェアモジュールを実行することにより行われる。固有放射線を利用することによって、検出器を外部放射線源に曝露する必要性がなくなり、これは様々な理由で非常に有利である。必要な設備が少ないので、装置の製造コストだけでなく、その後の保守および運用コストも削減される。さらに、固有放射線が常に存在するため、人手介入、電動アクチュエータの設置、または検出器のある部屋への立ち入りを必要とせず、いつでも信号処理および制御システムで較正を実行することが可能である。
【0084】
較正プロセスは、光子検出器からの測定出力を受信する信号処理および制御システム30内で実行される較正ソフトウェアモジュールによって、人手介入または制御なしに実行され得、したがって、イオンビーム放出装置が動作していないときにいつでも完全に自動化され実行され得る。さらに、固有放射線は、その長い寿命のために本質的に安定しており、その後の較正は、製造から廃棄/解体までの検出器の動作寿命全体にわたり、信号処理および制御システム30のメモリに格納されている、以前に計算された較正データと比較され得る。
【0085】
従来のPET検出器に使用される、最も広く使用されているシンチレータ材料のうちのいくつかは、ルテチウム:LSO(ルテチウムオキシオルトシリケート)、LYSO(ルテチウムイットリウムオキシオルトシリケート)、およびLSF(ルテチウム微細ケイ酸塩(lutetium fine silicate))を含有する。天然ルテチウムは、3.76×10
10年の半減期でHf-176に崩壊する同位体Lu-176を2.6%含有する。この結果、シンチレータ結晶1cm
3当たり約307Bqの固有バックグラウンド率が生じる。Lu-176は、
図4に示されているように、主に、β
-放出と、その後のガンマ放出を介して崩壊する。放出される電子の運動エネルギーは、0~593keV(99.66%)または0~192keV(0.34%)の間で変化する。
【0086】
本発明の実施形態によれば、シンチレータプレートは、ルテチウムを含有する材料を含み、較正プロセスは、固有Lu-176活性を使用する。
【0087】
エネルギースペクトルのピーク[
図5]は、崩壊系列に沿った、以下の放出されたガンマ線のうちの1つ以上の吸収に対応する:88keV(γ
1)、202keV(γ
2)、および307keV(γ
3)。結晶に蓄積される全エネルギーのスペクトルは、結晶の寸法に大きく依存し、それは、ガンマ線が結晶から逃げるか逃げないかの確率、また、比較的程度は低いが、β粒子が逃げる確率に、これが影響するためである。エネルギースペクトルは、放出されたβ粒子の運動エネルギーが0~593keVで比較的広い分布を有するという事実によって、さらに複雑になり、この上位範囲はすべてのガンマ線の和に近い。
【0088】
理想的な較正用線源の場合、光はシンチレータ内の単一の(局所的な)既知の点から放出されるはずである。しかし、シンチレータ結晶中のLu-176の崩壊が、先験的に知られている位置で起こっているわけでもなければ、シンチレーションプロセスが1つの点で起こっているわけでもない。異なるエネルギーの複数のガンマ線が放出され得る。放出されたガンマ線の50%、95%、99%を吸収するのに必要な平均距離を表1にまとめた。
【表1】
この表は、異なるエネルギーでの放出されたβ
-粒子の飛程(連続減速近似飛程R
csda)も示す[Berger2005]。
【0089】
88keVのガンマ線放出の場合、ガンマ放射線の約50%が、放出点から約0.25mm以内で吸収され、ガンマ放射線の約95%が、約1.1mm以内で吸収される。
図4にも示すように、ガンマ放出の確率は15.5%に過ぎず:よって、内部転換を介した脱励起の方が、はるかに可能性が高く、射出される軌道電子の飛程はさらに短くなる。176-HfのK殻の結合エネルギーは約65.3keVであり、射出される電子の運動エネルギーは88-65.3=22keVと低くなり得る。
【0090】
しかし、202keVのガンマ線では、ガンマ放射線の約50%が放出点から約1.8mm超だけそれて、その後、シンチレータにおいて吸収される。
【0091】
本発明は、ルテチウムを含有する一般的な無機結晶シンチレータに限定されず、記載された較正手順が適用可能となるために十分な大きさ(シンチレーション光子の数)、および速度(1秒当たりの崩壊)の実際的に特徴付け可能なシンチレーション事象を生成する固有放射能を示す任意のシンチレータに適用可能である。
【0092】
(十分な)固有放射能を示さないシンチレータ材料は修正され得、放射性同位体は、シンチレータまたはモジュール製造プロセス中に、例えばシンチレータ容積全体に均質に、シンチレーション材料中に導入されるか、またはシンチレータ表面40a上もしくはこれに近接したコーティング(例えば、β-放出を介して崩壊するC-14同位体を含有する、炭素コーティング)もしくは薄層に均質に分布される。同位体の選択は、適用によって決まるであろう。
【0093】
一例は、Sr-90であり、これは、β-崩壊を介して崩壊し、電子エネルギーは最大546keVであり、半減期は約29年である。ガンマ放出がなく、電子の飛程が比較的短い(前述した表1参照)ことは、有利となり得、それは、崩壊によるシンチレーション光が崩壊の場所にほぼ限定されるためである。これにより、異なるシンチレータ間の影響が低減され、事象検証プロセスが簡略化され得る。別の利点は、放出された電子が検出器の内側で容易に吸収され、患者および職員への放射線被曝が最小限に抑えられることである。
【0094】
別の例はNa-22であり、これは、β+崩壊を介して崩壊し、その後、電子-陽電子消滅が続き、反平行な511keVのガンマ線を生成する。PETスキャナの場合、これは、検出器のエネルギー較正に有利であり、それは、ガンマエネルギーが目的の運転ガンマエネルギー(operational gamma energy)と正確に一致するためである。しかし、動作中は、本質的に放出されるガンマ線と標的からのガンマ線を区別することが問題になる場合がある。
プラスチックシンチレータなどの低Zシンチレータ(low-Z scintillator)では、一般的な高Zシンチレータ(LYSO、LSO、CsI(Tl)、BGO、NaI(Tl))に比べてガンマ線の阻止能が低くなっている。高い空間較正精度を達成するためには、固有較正のために短飛程β-線源を導入することが有利である。
【0095】
較正用光源としてのγ1と低エネルギーβ-の使用
シンチレータ容積がガンマ線の飛程に比べて大きい場合、ほとんどのガンマ線は、シンチレータの内側で吸収されるが、それは、ほとんどの崩壊がシンチレータの本体(bulk)内で起こり、表面近くでは発生しないためである。しかし、シンチレータがガンマ線の飛程に比べて小さい場合、かなりの割合のガンマ線が、シンチレーション光を発生させずにシンチレータから逃げる。これらのガンマ線は、代わりに隣接するシンチレータで吸収され得る。同様に、シンチレータの表面付近で放出されたβ-粒子もシンチレータから逃げ得る。
【0096】
2つのガンマ線の吸収に対応する最小エネルギーは、88keV+202keV=290keVである。2つ以上のガンマ線に由来し得るシンチレーション事象をフィルタリングして除去するために、E<290keVの上位エネルギー限界を適用することができる。しかし、このエネルギーは、単一の88keVのガンマおよび<202keVのβ-、または、202keVのガンマおよび<88keVのβ-によっても蓄積され得ることに注意されたい。後者の場合、β-は、放出点の近くで停止する可能性があるが、202keVのガンマは、吸収される前にさらに移動することができ:シンチレーション光は本質的には、2つの点線源に似ている、空間的に離れた2つの場所から放出される。放出されたガンマ線のコンプトン散乱により、290keVを下回る全エネルギーの非局所的なシンチレーションが起こる可能性もある。
【0097】
ほとんどの非局所的事象を否定するためには、上位エネルギー限界を低くする必要がある。E<202keVの上位エネルギー限界では、主に88keVのγ線とβ-からのシンチレーション光が、測定される光信号に寄与する。β-エネルギーは、この場合、114keV、または、88keVのγ線の飛程より十分に低い、数十μmの飛程に制限される。
【0098】
原理的には、β-粒子からの寄与が、202keVのγからの寄与に比べて無視できるようなエネルギー限界を設定すれば、多少高いエネルギー限界を適用することができる。そうすると、シンチレーション光は主に、明るい点線源(202keVのガンマ)から来て、β-粒子からの微弱な線源により汚染されることになる。
【0099】
しかし、本発明の有利な実施形態では、較正方法は、場合によっては隣接し、互いに近接している、複数のモノリシックシンチレーション検出器のアセンブリに適用可能である。202keVのγ線は、1つのシンチレータで放出され、別のシンチレータで吸収される可能性が高いので、前述の実施形態では、較正のための許容可能な事象の上位エネルギー限界を安全に202keV未満に設定することが有利である。これにより、隣接するモジュール間の「汚染」の影響を、また潜在的には、アセンブリの中心にあるモジュールと、アセンブリの周辺モジュールとの間の異なる較正精度を、最小限に抑える。後述するように、正しい較正を行うためには、シンチレータ容積内のシンチレーション事象の空間分布に関する何らかの事前知識が必要である。最も単純な仮定は、シンチレータ内のシンチレーション事象の均質な分布である。これは、以下の場合にかなり正確な仮定である:
・シンチレータの寸法に比べ、電子飛程が短い。これは、一次β-エネルギーが最大の593keVに近い場合でも、シンチレータ結晶の寸法がミリメートルオーダーであれば同じである。
・88keVのγ線のみを考慮する(すなわち、隣接するモジュールからの無視できる寄与)
【0100】
コンプトン散乱ガンマ線が発生することもあるが、88keVのガンマ(および数百keVまで)については、光電吸収が支配的である。
【0101】
結論として、較正データセットに含めるシンチレーション事象の上位エネルギー限界は、より高エネルギーのγ線を除外するために、202keV未満が好ましい。
【0102】
下位エネルギー限界は、例えば88keVに設定することができる。実際には、主に取得およびデジタル化器具の制限によって決まる。下位エネルギー限界が低すぎる場合、較正データセットが、ノイズに支配された事象によって汚染される可能性がある。
【0103】
上位エネルギー閾値は、最終的には所望の較正精度に依存する。例えば、分解能が粗い、より大きなシンチレータシステムの場合、1つの176-Lu崩壊からのガンマ線が全てシンチレータに吸収された事象を受け入れることができる。その場合、上位エネルギー限界は、88+202+307+593keV=1190keVとなる。
【0104】
分解能を向上させるために、γ3が吸収された事象を除外したい場合がある。γ1がシンチレータからほとんど逃げないと仮定した場合、上位エネルギー限界は307keVまたは307+88keV=395keVに設定することができる。
【0105】
より良い分解能のために、γ2も、前述したように排除されなければならず、エネルギー閾値は約202keVである。
【0106】
光子検出システムが非常に高感度であり、非常に高い精度が望まれる場合には、すべてのガンマ線からの寄与を排除したいと思うかもしれない。この場合、エネルギー閾値は88-65.3keV=22.7keVと低く設定すべきであり、176-Hfのγ1がK殻からの内部転換(IC)を介して脱励起されるのを除外する。γ1が逃げる可能性を排除したい場合には、γ2のICを除外することで、エネルギー閾値は202-63.5keV=138.5keVと設定される。γ1が逃げるのを無視すると、エネルギー閾値は88+202-63.5keV=226.5keVに設定される。
【0107】
γ2およびγ3を較正光源として使用する
前項で述べたように、上位エネルギー閾値を<202keV、例えば100または150または175keVに設定すると、光量が少ないために、シンチレータエッジに沿ったいくつかの光子検出器がトリガされない可能性がある。そのため、多くのサンプルは、含有する元素がゼロになってしまう。この問題の大きさは、上位および下位エネルギートリガ閾値の正確な選択、トリガ方式、側面当たりの光子検出器の数、読み出しノイズ、シンチレータ材料の選択、光結合効率、光子検出効率、およびデジタル化閾値などの要因によって決まる。
【0108】
多層シンチレータプレートとエッジ結合型光子検出器を用いた実施形態では、より高エネルギーのガンマ線(γ
2=202keVおよび/またはγ
3=307keV)を利用する1つの方法は、これらのガンマ線が1つの層から逃げるが隣接する層で吸収され得るという事実を利用することであろう。これらの事象は、隣接/近接する層間の同時トリガによって識別され得る。1つの層に蓄積したエネルギー(おおよそ層ごとの全ての光子検出器の合計で得られる)が、202または307keVに対応する適切なトリガウィンドウに一致する場合、その層からのサンプルは、以下に述べる較正ソフトウェアモジュールの自己組織化アルゴリズムのためのトレーニングサンプルとして使用され得る。このような事象の例を
図9に示しており、307keVのガンマが第1の層である崩壊層から逃げ、第2の層で吸収されている。
【0109】
隣接するシンチレータ層を較正用放射線源として利用することは、いくつかの点から有利である:
・目的のエネルギーウィンドウを202または307keV付近のウィンドウ領域まで増やすことができ、これにより、非トリガ光子検出器の潜在的問題、または、自己組織化マップの重み(後述)を<202keVから例えば511keV(陽電子放射断層撮影で最も一般的な目的のエネルギー)、もしくは数MeV(例えばイオンビーム療法の飛程確認のために、ガンマ線検出器をコンプトンカメラとして使用する場合)までスケールアップした場合の非線形の問題が軽減される。
・202または307keVのガンマ線は、88keVのガンマ線の吸収と放出されたβ粒子の(未知の)エネルギーからの信号とは異なり、鋭いエネルギー吸収ピークをもたらす。ピークが鋭くなるほど、γ1+β-の広いエネルギースペクトルと比較して、エネルギー較正に使用するのに適する。
【0110】
逃げるガンマ線は相互作用する前に1つ以上のシンチレータを通過し得るので、「隣接する」という用語は必ずしも主要面が隣接するシンチレータ(major-face adjacent scintillators)に限定されないことに注目されたい。
【0111】
3層事象
2層事象では、サンプルのうちの1つのみが較正に使用される。さらに、202または307keVの吸収を識別しようとして、関係する層のうちの1つに高エネルギー閾値の制限が課されるため(
図13b)、2層事象のごく一部のみが局所的な較正サンプルの作成に適する。しかし、まだ曖昧な点がある:高エネルギー層からのサンプルは、崩壊層と誤って識別される可能性があり、それは、高い蓄積エネルギーが、202keVのガンマ線と崩壊層から逃げる307keVのガンマ線との同時吸収または相互作用によっても生じ得るためである。また、ベータ電子エネルギーは、崩壊層でのエネルギー蓄積が202または307keVの吸収に近くなるようなものであってもよい。これらの事象では、崩壊層からのサンプルは、較正サンプルとして誤って使用されることになる。ベータ電子のエネルギースペクトル(低エネルギーの可能性が高い)により、選択されたすべての較正サンプルのエネルギーが、低エネルギー側に偏る可能性がある。
【0112】
また、例えば307keVのガンマ線の吸収として識別された較正サンプルが、実際には、202keVのガンマ線とコンプトン散乱した307keVのガンマ線(または、総エネルギー蓄積が202もしくは307keVに近い、崩壊層から逃げたガンマ線の何らかの他の運動学的組み合わせ)の吸収であることも可能である。このような誤認があると、非局所的事象が空間較正に使用され、その結果、較正マップが歪むことになる。
【0113】
本発明の有利な実施形態では、較正サンプルを作成するために、3層事象が追加的または代替的に使用される。202および307keVのガンマ線は、第1の崩壊層から逃げ、第2および第3の層で相互作用し得る(短飛程の88keVのガンマ線も可能性はあるが、ありそうもない)。逃げたガンマ線が第2および第3の層で吸収されれば、関係する3つの層でのエネルギー蓄積により、統計的に高い信頼性で基礎となるプロセスを特定することができる:つまり、第2および第3の層が、202および307keVを吸収し、第1の層が、88keVにベータ電子エネルギーを加えたものに対応するエネルギーを吸収する。このタイプの事象の特色(signature)は、3つの層すべてにおいてエネルギー蓄積が十分に局所化されているため、較正に特に有利となる。よって、このタイプの事象は、3つの十分局所化されたサンプルを直接生成し:1つは、崩壊層からのもの(局所化しているがエネルギーは正確には不明)であり、2つは既知のエネルギーのもの(202または307keV)である。
【0114】
511keVでの具体的なエネルギー較正:
PETスキャンアプリケーションのための検出器を較正および検証するためには、511keVのガンマ線を放出するガンマ線源に曝露することが有利であろう。本発明の有利な実施形態では、202および307keVのガンマ線をこのために利用することができる。202および307keVのガンマ線が第1の崩壊層から逃げて、ともに第2の層で吸収される2層事象の識別は、509keVにおいてエネルギーヒストグラムのピークを生じ、すなわち目的の主要エネルギーとの差が0.4%未満になる。従来の画素化検出器では、逃げたこれら2つのガンマが同じシンチレータ画素で同時に吸収される確率は、層状モノリシック構造を用いる本発明における確率と比較して、非常に低い。
【0115】
まとめると、固有放射線によって引き起こされる3種類の事象と、それらを較正に利用する方法が、説明されてきた:
・1層事象
〇1つの層がその他の層と非同期的にトリガされる
〇事象の検証には、1つ(または複数)のエネルギーウィンドウが使用される。
〇空間較正では、シンチレーション事象が局所化されていることを確信できるように、エネルギーウィンドウを定義しなければならない。LYSOの場合、このために、γ
2およびγ
3を拒否する必要があり、それは、これらが吸収される前に崩壊点から遠くへ移動する可能性があるためである。
・2層事象
〇2つの層が同時にトリガされる。
〇例えば
図13bのように、関与する2つの層に対して有効なエネルギーの組み合わせが定義されて、既知のエネルギーの単一のガンマ線の吸収が層のうちの1つで起こったことが特定される。LYSOの場合、1つの層におけるエネルギーは約202または307keV(+/-いくらかの測定精度マージン)とすべきである。
〇さらに、202+307keVの事象が、511keV付近での検出器のエネルギー測定精度を検証するために使用され得る。
・3層事象
〇3つの層が同時にトリガされる。
〇エネルギーウィンドウは、202および307keVのガンマ線が第1の崩壊層から逃げて、異なる第2および第3の層で吸収された、3層事象を識別するために使用される。
〇各有効事象は、異なる3つの層からの3つの較正サンプルをもたらし:2つは既知のエネルギーのものであり、1つは未知のエネルギーのものである。
【0116】
サンプル検証プロセス
エネルギーウィンドウおよび層一致に基づく、潜在的な較正サンプルの第1の検証ステップは、上述されている。さらなる検証ステップは、例えば、エッジプロファイル(凹状、凸状など)の検証、以前の較正セットとの比較、非トリガチャネルの存在に関係するか、または、個々の光子検出器チャネルからのタイムスタンプ情報に関係することができる。すべての検証ステップに合格したサンプルは、較正セットに保存される。
【0117】
発明の実験検証
実験のセットアップ
シンチレータ層の数:2[
図9]
各シンチレータ層の寸法:26.5×26.5×3mm
シンチレータ間のギャップ:13.8mm
エッジ(層)ごとの光子検出器の数:8(32)
【0118】
2層エッジ検出器に対する1次元エネルギーヒストグラムの一例が、一致事象に関する
図12に示される。エネルギーはADC(アナログデジタル変換器)単位であり、1層当たりのすべてのエッジ光子検出器のADC値の和として計算されており、202および307keVのガンマからのピークは、明確に区別可能である。
【0119】
同じデータセットの2次元ヒストグラムを
図13a、
図13bに示す。各検出器の202および307keVのエネルギー領域が、層1については垂直に向けられた領域として、下流の層2については水平に向けられた領域として見ることができる。高密度の重複領域(暗いエリア)は、両方の層の蓄積エネルギーが202または307keVに一致するため、202または307keVのガンマ線がどちらの層で実際に吸収されたのかが不明である、事象を含む。β
-は0~593keVのエネルギー分布を有するので、一方の層が88keVのガンマ線に加えて202-88keV=114keVまたは307-88=219keV付近のエネルギーを有するβ
-を吸収し、もう一方の層が202または307keVのガンマ線を吸収したことが可能である。例えばコンプトン散乱を含む他の吸収方式も可能である。
【0120】
破線の長方形は、空間較正セットに使用され得る事象の一致トリガエネルギーウィンドウ(coincidence trigger energy windows)の例を示す。88keVのガンマ線およびβ-の飛程が比較的短く、エネルギー蓄積がほとんど点状とみなされ得るので、原理上は、上記の重複領域を含めることも可能である。
【0121】
エネルギースペクトルで見えないのは、202および307keV両方のガンマ線が一方の層から放出されるが、もう一方の層で吸収される事象である。テストしたシンチレータ検出器構成では、このタイプの事象の確率は低かった。
図21は、509keVのピークがより顕著である別のセットアップによる例を示す。
【0122】
較正ソフトウェアモジュールによって正確な空間較正を実行するためには、隣接するシンチレータ層からの202keVおよび307keVのガンマ線の吸収を伴う事象の各シンチレータ層における空間分布を正確に知ることが有利となる。これは、Lu-176の濃度がシンチレータ内で均一であると仮定して、例えばモンテカルロシミュレーションを用いて、事前に容易に計算またはシミュレーションすることができる。例えば、多層構成(>2層)において、中央層は、片側に隣接層を有しない「上部」および「下部」層と比較して、他の層からガンマ線を吸収する可能性がより高い。多モジュール構成では、モジュール間のガンマ線の逃げ(および散乱)も考慮する必要がある場合がある。
【0123】
この較正方式はまた、単層方式と比較して、「エッジ効果」または「コーナー効果」の影響を受けやすく、すなわち、シンチレーション事象の空間およびエネルギー分布は、本体よりもシンチレータの表面に近いところで大きく異なる可能性がある。代わりに88keVのガンマ線および低エネルギーのβ-を較正に用いる場合、シンチレータ内の事象分布はより均一になる;ガンマおよびβ-がシンチレータから逃げることはほとんどないため、事象分布はLu-176分布に類似するものの、シンチレータ表面のすぐ近くでは偏差が顕著となり得る。
【0124】
座標マッピング
較正データセットの取得後、特定のサンプルをシンチレータ表面にわたる2D座標に関連付けるために、信号処理および制御システムによる後処理が必要である。本発明の実施形態では2つのこのような方法が考えられる:(1)コホネンの自己組織化マップ(SOM)、および(2)本発明者らによって考案された局所分散最小化法。
【0125】
較正用トレーニングセット
トレーニングセットを形成する較正データセットは、N
sのサンプルからなり、各サンプルは、次元N
kのベクトルである。エッジ当たりN
eの光子検出器を有する正方形エッジ検出器の場合、N
k=4×N
eであり、データセット全体は、N
s×N
k(行×列)の行列で表すことができる。
図8a、
図8bに例を示しており、エッジごとにN
e=5の光子検出器がある。
【0126】
評価セット
較正事象の空間座標が既知である場合、較正データセットはさらに、複数のサブセット、例えばトレーニングセットと評価セットに分割されてもよい。これは、較正パラメータのトリミングおよび調整に特に有用である。固有シンチレーション事象の位置を測定するために、
図10に示されるように、光子検出器118の2次元アレイをシンチレータのいずれかの表面の近くに配置し、シンチレータ16の上および下にエアギャップ119を設けることもできる。シンチレータの屈折率が高いため、(等方的に放出される)光子の大部分は、全内部反射を介してエッジ光子検出器18に到達する。しかしながら、シンチレーション光子の一部は、2D光子検出器アレイ118に衝突し、この情報は、シンチレーション事象の起源を決定するために使用され得る。起源を知ることは、自己較正手順のパラメータおよび事象検証基準を最適化するのに有利であり得る。複数(>1)の同時シンチレーション事象の場合、このセットアップは、例えば単一(局所化、有効)および複数(非局所化、無効)のシンチレーション事象の特色で機械学習アルゴリズムを訓練することによって、較正セットについてそれらを直接拒否することができるように、これらの事象の特色に関する情報を与えることもできる。
【0127】
コホネンの自己組織化マップ
原理:SOMの計算は、2次元グリッドをより高次元のデータセット(ここではトレーニングセットC)にマッピングすることを目的としており、個々のサンプルが互いにどのように関連しているかについての予備知識は必要ない。2Dグリッドの各ノードは、より高次元の座標にマッピングされ、その結果、データ点Cにできるだけ広がることを目的とした、伸張され、折り畳まれ、歪んだ2D表面が得られる。各データ点は、次に、最も近いグリッド点、つまりノードにリンクされる。後述するように、互いに類似しているサンプルは、同じかまたは隣接するノードにリンクされる。本発明の実施形態によるモノリシックシンチレータプレート16の自己較正の状況では、SOMは、本質的にはシンチレータを離散グリッドに分割する。SOMを初期化するために、トレーニングセットからのサンプルは、次に、グリッドの任意の点にランダムに割り当てられ得る(他の初期化手段も可能である)。較正ソフトウェアモジュールの反復ソートアルゴリズムは、次にすべてのサンプルを次のように並べ替えることを目的とする:
・同じグリッド点におけるサンプルが類似する:および
・隣接するグリッド点におけるサンプルも類似する。
隣接するグリッド点間の類似性が基準であるため、自己ソートアルゴリズムはグローバルに並べられたデータセットをもたらす。信頼性の高い較正を行うためには、かなり多数のサンプル(グリッド点当たり≫1のサンプル)が必要であることに注意されたい。
【0128】
シンチレータの境界(コーナー、エッジ)付近で発生したシンチレーション事象からのサンプルは、片側に、その他よりも多くの隣接サンプル(sample-neighbors)を有する。この非対称性により、境界のサンプルは、ソート手順中に、最終的にエッジおよびコーナーに向かって拡散する。
【0129】
オリジナルのSOMでは、サンプル密度、すなわちグリッド点当たりのサンプル数が考慮されておらず、境界(シンチレータのエッジおよびコーナー)付近で人為的に高いサンプル密度を生成する傾向があることは、この方法のそれ自体周知のアーチファクトである。以下では、本発明者らは、これを、最適化後の補正としてではなく、既に反復計算プロセス中に補正する方法も提案する。SOMは、サンプルを2次元超のグリッドにマッピングするために使用することもできる。
【0130】
ノード
Nk次元データセットは、xおよびyにおいてシンチレータの空間的広がりに対応する2Dグリッドにマッピングされる。このグリッドは、例えば、デカルト格子または六角格子または千鳥格子または別の適切なグリッドスタイルで配置され得る、ノードのセットである。例えば、エッジ付近の分解能がより細かいグリッドを採用してもよい。簡略化のため、図示の実施形態では2Dデカルト格子のみを論じるが、本方法を他のタイプのグリッドに適用できることは、当業者には明らかであろう。シンチレータが長方形ではなく、例えば3辺もしくは6辺を有する多角形である場合、または少なくとも1つの曲面で囲まれる場合、グリッドのレイアウトはそれに応じて調整されてもよい。
【0131】
重み
各ノードi,jは、次元N
kの重みベクトル
と関連し、これは、ノードをサンプル空間の座標にマッピングする。コホネンの自己組織化マップの原理は、各データサンプルが、そのデータサンプルに最も類似した重みベクトルを有するノードにマッピングされることである(後述の「ベストマッチングユニット」参照)。さらに、ノードの重みは隣接するノードの重みに応じて繰り返し更新される(後述の「重みの調整」参照)。
【0132】
ベストマッチングユニット(BMU)
あるサンプルsの「ベストマッチングユニット」すなわちBMUを定義する1つの方法は、重みベクトルがサンプルに対して最も短いユークリッド(Euclidian)を持つノードを見つけることであり、すなわち以下のとおりである:
【数1】
当業者にとっては、例えば、|s[k]-w[i,j,k]|の合計を使用するか、または、低加重光子検出器(low-weighted photon detectors)のフィルタリングを使用する、すなわちs[k]が何らかの閾値を下回るkを放棄することで、代替のBMUの定義が適用可能であることは明らかであろう。
【0133】
サンプルの正規化
異なるサンプルは異なるエネルギーのシンチレーション事象に起因し得るため、また、光子放出と光子検出の確率的性質により、検出された光子の数はサンプルごとに異なる。「検出された光子」という用語は、光子検出器からのスカラー値を示すためにここで使用される。実際に測定される量は、例えば、(デジタル化された)電荷積分、ベースライン補正された電荷積分、タイムオーバー閾値(time-over-threshold value)、発射された単一光子アバランシェダイオードの数、または同様の量であってよい。ノイズ、器具のアーチファクト、および他の不完全性のさまざまな出所も、同様にサンプル間のばらつきを引き起こす。異なるエネルギーのサンプルを重みベクトルのベストマッチングユニットに一致させるために、サンプルのある種の正規化を実行することが必要である。簡潔にするため、本発明者らはここで、各正規化サンプルの光子検出器(photon detector sum)が1に等しくなるように、直接的な正規化を用いるプロセスを説明する:
【数2】
SOMのすべてのサンプルがほぼ同じエネルギーを有する場合、サンプルの正規化は必要ない。
【0134】
サンプル補正
サンプルは、正規化の前に他の補正を受けることができる。このような補正は、分析計算、シミュレーションまたは以前の較正に基づいて、例えば、各光子検出器からのダークカウントの予想数を減じること、または個々の光子検出器もしくは光子検出器のグループ(例えば、同じシンチレータエッジに沿った光子検出器、もしくは同じシンチレータ層に結合された光子検出器)に、量子効率もしくは光結合効率の変動を補償するための何らかの倍率を乗じること、からなることができる。
【0135】
近傍関数(Neighbor function)
近傍関数は、2つのノード(i
1,j
1)および(i
2,j
2)がどれだけ近いかを示す指標であり、最適化手順の重要な要素である。従来の近傍関数はガウス関数である:
【数3】
ここで、デカルト格子の場合:
Δ
2=(i
2-i
1)
2+(j
2-j
1)
2
であり、σはパラメータであり、これは、典型的には、最初は、ノードグリッドの反対側の端部にあるノードが(類似していれば)互いに引き合うことができるほど大きいが、その後、反復回数が増えるにつれてサイズが小さくなり、ノードの重みは、何らかの最終値に向かって収束していく。ある上位距離閾値Wを超えて離れたノードの場合、近傍関数はゼロに切り詰められ得、例えば、W=2σまたはW=3σである。
【0136】
当業者にとっては、例えば、異なる特徴的形状の近傍関数が使用されてもよいことが同様に明らかであろう。例えば以下のとおりである:
【数4】
・(Wを超えて離れているノードの場合、近傍関数は値0をとる。)
しばしば、指数関数的に減少していく値が、σに使用され:
【数5】
ここで、tは反復回数である。
【0137】
重み調整
重みは以下に従って更新される:
w
t+1[i,j,k]=w
t[i,j,k]+α
tβ
t(s
norm[k]-w
t[i,j,k])
αは、ノードとサンプルとの間の引力を定義するパラメータであり、典型的には、範囲[0,1]にあり、例えば以下のとおりである:
【数6】
【0138】
当業者には、σおよびαの値を徐々に減少させるための他の方式が使用され得ることが、認識されるであろう。
【0139】
密度および補正
反復自己組織化プロセスの最後に、空間サンプル密度が、ノード当たりのBMUにマッチしたサンプル数で与えられる。この密度は、理想的にはシンチレータ領域におけるシンチレーション事象の予想分布に一致するはずである。しかし、上記で定義したような、標準的なBMUマッチングでは、シンチレータのコーナーに、エッジに沿って、また、光子検出器の中心付近に、密度の高いサンプルクラスタが形成される傾向がある。これは、シンチレーション事象の実際の分布を反映しない密度アーチファクトであり、サンプルからシンチレーション事象座標へのマッピングを歪めることになる。このアーチファクトを補正する方法の2つの例は以下のとおりである:
1.Palomares2019で提案されているような、最適化後の補正(Monge-Kantorovichの最適化を使用:Delzanno2008)
2.サンプル密度に、既に最適化プロセスにある、予想されるシンチレーション事象分布をよりよく反映させる。
【0140】
有利な実施形態では、本発明者らは、BMUマッチングを以下に調整することによって密度強制(density forcing)を実施することを提案する:
【数7】
ここで、関数f(ρ[i,j])は、サンプル密度ρ[i,j]の関数であり、これは、既に密度の高いノード(already highly populated nodes)の引力を減少させ、その結果、より均質な密度をもたらす役割を果たす。f(ρ)の1つの実施例は、単純に、f(ρ)=ρ、またはf(ρ)=ρ
pを設定して(p≧1、例えば、p=2、p=3、またはp=4)、密度の高いノードを、より「反発する」ようにすることである。
【0141】
密度補正を行った場合と行わなかった場合の最終的な自己組織化マップの比較例を
図19aおよび
図19bに示し、各サンプルが、そのそれぞれのBMUノード(ノードグリッド=24×24)の周りにプロットされている。
図19aではエッジクラスタリング効果が明確に見えるのに対し、
図19bではサンプル密度がより均質である。
【0142】
密度関数は、例えばモンテカルロシミュレーションによって与えられるような、予想されるシンチレーション事象分布ρref[i,j]に従って調整され得、(モンテカルロ参照と比較して)密度の低いノードがより高い引力を有し、密度の高いノードがより低い引力を有する。密度補正は、例えば、比ρ[i,j]/ρref[i,j]の関数とすることができる。
【0143】
加速:適応的なグリッド密度
自己最適化に必要な計算時間は、連続して微細化されたシミュレーショングリッドを用いることで大幅に短縮することができる:
1.ノードグリッドおよびノードの重みを、粗いグリッド、例えば、
で、初期化する。
2.一定の反復回数、または何らかの収束基準を満たすまで最適化を実行する。
a.収束基準は、ノードの重みベクトルの変化が、ある閾値未満であることである。
3.グリッド密度を
まで上げる。
a.σおよびWは、新しいグリッド分解能に滑らかに一致するようにスケーリングされ得る。
4.より細かいグリッドで、新しいノードの重みを補間する。
5.所望の空間分解能が満たされるまで、ポイント2.を繰り返す。
【0144】
加速:サンプルセットの削減
計算時間を短縮するもう1つの方法は、自己組織化プロセスに参加するサンプルの数を連続して増やしていくことである。比較的少ないサンプル数(ノード当たり)で開始し、ノード重みマップが徐々に収束していくにつれて、徐々にまたは段階的に、より多くのサンプルを最適化手順に含めることができる。例えば、グリッド密度を増加させるたびに、自己組織化プロセスに参加する、より多くのサンプルを導入することができ、ノード当たりの平均サンプル数が一定となる。
【0145】
サンプル排除
隣接するサンプルと著しく異なると思われるサンプルは排除され得る。このようなサンプルは、電子ノイズにより生じ得る。別の原因として考えられるのは、同時のシンチレーション事象であり、例えば、1つの点で1つの88keVガンマ線が光電吸収され、同時に、コンプトン散乱された202keVのガンマ線が別の点で吸収される。総エネルギーは許容ウィンドウ内であるが、光は2つの異なる場所から発生するため、このような事象の光子検出パターンは、1つのガンマ線の光電吸収によるシンチレーション光と比較して歪んでしまうであろう。
【0146】
図20aは、1つの点から発生した事象(事象1)と、2つの異なる場所から発生した別の事象(事象2)の例を示す。
図20bは、各エッジに沿った光子検出器の対応する応答を示している。事象1のような事象は、通常、凸状または単調に増加/減少するエッジプロファイルをもたらすのに対し、事象2のような事象は、シンチレーション事象間の距離および個々のシンチレーション事象の相対エネルギーに応じて、1つ以上のエッジに沿って凹状のエッジプロファイルをもたらし得る。したがって、エッジプロファイルの特徴的形状は、サンプルを検証するために使用され得る。
【0147】
許容されるエッジプロファイルの基準は、複数の、同時であるが空間的に離れたシンチレーション事象に由来する可能性が高いサンプルを破棄するために使用され得る。
そのような基準は、以下に基づき得る:
・分析計算
・シミュレーション
・例えば、放射性較正線源または電子ビームを使用した測定
・シンチレーション光を模倣した光源を使用した測定
・以前の較正からのデータ
・隣接するサンプルから大きく逸脱した較正サンプルの特定(例えばユークリッド距離)
最初の5つのカテゴリーに基づくデータおよび検証基準は、廃棄するサンプルを迅速に特定するために使用することができる。自己ソートアルゴリズムに基づく較正の状況では、最後のカテゴリーは、隣接サンプルおよび逸脱サンプルを識別するために、少なくともデータの予備的空間ソーティングを実行することを必要とする。機械学習アルゴリズムは、事象2のような事象の識別に使用され得る。
【0148】
本発明の実施形態によれば、初期較正データのセットが予め定義され、信号処理および制御システム30の不揮発性メモリ31に格納され、予め定義された較正データは、点状に近い事象、すなわちシンチレーション光生成のほとんどが所望の空間分解能に比較して十分に小さい容積セグメント内で発生する事象に対する許容基準に対応する。これは、取得した較正データセットをシンチレータの横方向空間寸法に対応する2次元マップにマッピングするプロセスを容易にし、それは、光源が点源に似ているという意味で、個々のサンプルが「クリーン」であるためである。
【0149】
重みマップの向き
組織化プロセスは教師なしであるため、収束した重みマップがシンチレータ上の光子検出器の物理的な場所に対して正しく向けられない可能性がある。重みマップは、例えば、xもしくはy軸に沿って鏡のように映されるか、または、z軸に沿って90度、180度、もしくは270度回転され得る。光子検出器の物理的な場所は既知であるので、これは、各重みマップの最大値の位置がその関連する光子検出器の既知の位置と一致するように重みマップをひっくり返すか、鏡のように映すか、または回転させることによって容易に自動的に補正され得る。
【0150】
重みおよび分散マップ
最適化手順が最終的な解(solution)に収束すると、各光子検出器kについて、各ノードでの平均重みおよび分散のマップを計算することができる:
【数8】
式中、X
ijは、ノード(i,j)におけるBMUを持つデータのサブセットである。
平均および分散は、ゼロでないサンプル要素のみから計算してもよいし、他の何らかの適格性指標(例えば、外れ値排除)に合格したサンプル要素のみから計算してもよい。
【0151】
BMUからのLowessマップ
数量μ[i,j,k]および
は、BMUがノード[i,j]であるサンプルからのみ計算される。グリッドが細かいほどノード当たりのサンプルが少なくなり、平均および分散がアーチファクトおよびノイズの影響を受けやすくなる。(微細なノードグリッドを使用することにより)微細な空間分解能を維持しつつ、ノード当たりのサンプル数が少ないことによるノイズを抑制するために、本発明の実施形態によれば、システムは、例えば、μおよび
に対し次数1(より高い次数も使用され得る)の2次元局所重み付け回帰、Lowess平滑化を適用することによりBMUマップをさらに平滑化する追加ステップを取ることができる。
【0152】
自己組織化コホネンマップ-例
自己組織化手順の原理は、サンプルの2次元セットをノードの2次元グリッドにマッピングすることにより説明できる。以下に示す例では、サンプルは、ウィンドウx∈[0,3]およびy∈[0,3]内の点の25×25のグリッドからなり、これらは、7×7のノードのセットにマッピングされる。密度不均質性は、ρ4に比例して罰せられる(punished)。
【0153】
図18aは、0回の反復後のマッピングを示す。サンプルは円形のマーカーとしてプロットされている。各ノードの重みベクトルはサンプルと同じ次元であり、各ノードの重みベクトルは正方形としてプロットされている。各サンプルのBMU、またはベストマッチングノードは、サンプルとマッチングノードとの間の線として描かれている。同様に、隣接するノード間、すなわち、ノード(i,j)と(i-1,j)、(i,j-1)などとの間に線が引かれている。0回の反復では、ノードの重みベクトルはランダムに生成される。
【0154】
図18bは、4回の反復後のマッピングを示す。ノードは、いまやサンプルの中央内の狭い領域に分布している。60回の反復の後(
図18d)、ノードは「分離」しており、ソートされていることが明らかになり始めている。密度補正の結果、各サンプルのBMUは必ずしも最も近いノードではなく:あるサンプルの最も類似したBMUにすでに多くの他のサンプルが存在する場合、別のノードがBMUとして選択される可能性が高いことに注意されたい。140回の反復の後(
図18e)、ノードの重みはサンプルが広がる領域の大きな割合に広がっている。約490回の反復の後(
図18f)、ノードの重みは安定した解に収束している。
【0155】
局所LOWESS分散最小化
本発明の別の実施形態では、ノードの境界領域のエッジおよびコーナーに近接して(すなわち、シンチレータのエッジおよびコーナーに近接して)アーチファクトを受け、空間精度を制限する、コホネンのSOMの弱点を克服するために、コホネンの自己組織化マップの代替物が提案される。シンチレータの中心では、各ノード、またはニューロンは、四方の周囲のニューロンとサンプルを争っている。しかし、境界のノードは、シンチレータの中心に近いニューロンとのみサンプルを争っている。この非対称な争いは、平均光子検出器応答μ[i,j,k]のノードマップの勾配を境界において抑制する効果がある。これは、グリッドを改良することである程度は克服できるが、より長い計算時間を費やすこととなり、これは、ノード数がグリッド分解能と共に二次的に増加することに加え、ノード当たりの平均サンプル数を統計的に許容できるレベルに維持するために、より大きな較正セットが必要になるという事実によるものである。
【0156】
本発明の実施形態によるこの有利な方法は、各ノードにおける局所分散を最小化することを目的とする。この特徴は、正しく組織化された較正セットの自然な性質としてとらえられる。手順の一例は、以下の通りであってよい:
1.物理シンチレータの(x,y)範囲の空間座標に対応する、ノードグリッドを定義する。
2.オプションとして、すべてのサンプルをサンプルの重心に対応するノード座標に初期化する(モノリシック面結合型検出器の場合)。モノリシックエッジ結合型検出器の場合、初期化座標の一例は、両側のエッジにある光子検出器からの平均重心である。例えば、シンチレータ表面のより大きな部分をカバーするために、重心値に線形スケーリングを適用する、他の初期化座標も可能である。
3.全サンプルの割り当てられた座標から、シンチレータ表面x,yにわたる全光子検出器kの局所的に重み付けをした2次元回帰マップ(「LOWESSマップ」)を生成する:L
μ(t=0,x,y,k)およびL
σ(t=0,x,y,k)。
4.すべてのサンプルm∈[0,N
s]に対して反復し、各サンプルをLowessマップ上のベストマッチングノードに移動させる。本発明者らは、「ベストマッチングノード」の異なる指標を試したが、同様の結果であった(tはエポックを示す):
a.局所分散最小化:
【数9】
b.最尤法による最小化:
【数10】
c.新しいBMUのセットから、エポックt+1に対する新しいLowessマップを計算する。
d.本発明者らがSOMについて提案したものと同様に、BMUマッチングは、サンプル密度を直接考慮するように調節され得る。均一なサンプル密度を達成したい場合、上記a)を単純に例えば以下に調節することができ:
【数11】
ここで、ρ[i,j]は、ノード[i,j]におけるサンプル数である。密度が高すぎるノードは、密度が少なすぎるノードよりも反発しやすい。ここで、0.5の例示的な最小密度値が、すべての未実装ノード(non-populated nodes)(ρ=0)で同じ数値(0)になるのを避けるために使用された。これは主に、較正手順の初期に、いくつかのノードが未実装の場合、またはノード当たりの平均サンプル数が少ない場合に、重要である。
5.解が収束するまでステップ4を繰り返す。
【0157】
安定した解に達するために、有利な実施形態によれば、計算の始めにおける2次元Lowess回帰の広い半径を使用する(σの連続的に縮小する値を使用するコホネンの近傍関数と同様)。
【0158】
同様に、例えば、あらかじめ定義されたエポック数の後、または何らかの安定性基準(例えば、あるエポックから次のエポックへのLowessマップ要素の変化の振幅に基づく)が満たされたときに、グリッド分解能を連続的に増大させることも可能である。エッジごとにNeの光子検出器を有するモノリシックエッジ結合型検出器、またはNe×Neの光子検出器を有するモノリシック面結合型検出器の場合を考えると、Ne×Neのノードのグリッドで最適化を開始し、その後、所望の空間分解能が満たされるまでエッジ当たりのノードの数を増やすことができる。
【0159】
例えば、さまざまなタイプの重み関数を使用して、Lowess回帰のさまざまなバリエーションが可能である。さらに、サンプルが離散的なノードに割り当てられている場合、各ノードに割り当てられたサンプルの平均と分散から、例えば線形補間、2次補間、もしくはバイキュービック補間を、またはサンプルセットから同様の補間手法を行うことも可能である。
【0160】
アルゴリズムを安定させるために、各反復で新しいBMUに移動するサンプル数を全サンプルの何分の一か、例えば25%または50%に制限することもできる。
【0161】
この手法の主な利点は、Lowessマップが局所補間から生成されるため、エッジのマップ値がより中心にあるサンプルによる制約をあまり受けず、より急なエッジ勾配が可能になることである。
【0162】
モンテカルロ検証:コホネンのSOM 対 局所分散最小化
コホネンのSOMと本発明の有利な態様による局所分散最小化法の精度を比較するために、本発明者らは、モンテカルロシミュレーションのデータセットを使用し、ここでは、固定エネルギーのガンマビームを、-24.5mmから+24.5mmまで(50×50グリッド点)1×1mmグリッドで50×50×6mmのシンチレータに向けた。モンテカルロ検証を使用する利点は、各シンチレーション事象の座標が正確に分かることである。
【0163】
シンチレータには、各エッジに沿って5つの光子検出器が搭載されている(Nk=5×4=20)。ガンマ線とシンチレータの相互作用ごとに、シンチレーション光子は光子検出器または他の媒体に吸収されるまで追跡された。各検出器によって検出された光子の数は記録された。大規模なデータセット(500,000超のサンプル)が、各ガンマ線のx,y座標と共に保存された。このデータセットの一部をSOMと局所分散ミニマイザ(local-variance minimizer)両方の訓練データとして、いずれの場合も同じ最終ノード数(30×30ノード)を用いて、使用した。最後に、2つのオプティマイザの予測能力を、(訓練に使われなかった)検証用サンプルセットを使ってテストした:検証用セットの各サンプルはそのBMUにマッチし、マッチしたBMUの座標とガンマ線の実際の相互作用座標(モンテカルロシミュレーションの入力座標)の差が算出された。
【0164】
特に興味深いのは、シンチレータのエッジに近いサンプルに対する2つの手法の精度を比較することである。シンチレータの中心をx=y=0と定義すると、実際のシンチレーション事象座標と、マッチしたノードの座標との間のユークリッド距離である、空間誤差
【数12】
を、r=max(|x|,|y|)(中心ではゼロ、シンチレータのエッジでは+25mm)の関数として、評価することができる。
【0165】
図16は、SOMおよび局所分散最小化手法の両方についてrの関数としてΔを示す(評価セット全体についてのΔ(r)の1次元Lowess回帰)。シンチレータの中心領域(r<20)において、2つの手法は、同様の精度を示す。しかしながら、シンチレータの周辺(r≧20)では、局所分散最小化は、著しく良好な空間精度をもたらし:エッジ(r=25)では、最大で2倍である。
【0166】
シンチレータの外側5mm(r∈[20,25])が、シンチレータ表面の36%、すなわち検出された事象の3分の1超を表すことに注目することが重要である。したがって、有利な実施形態による局所分散最小化の手法は、固有放射能を用いた空間較正だけでなく、外部放射能源を用いた任意のモノリシック検出器の空間較正においても、全体的な空間精度の著しい改善を表す。
【0167】
研究室での検証
このセクションでは、実験検証のセットアップ、およびデータ取得の結果について説明する。寸法、仕様、閾値、エッジ当たりの画素数、シンチレータ材料、光子検出器のタイプなどの任意の数は、例示目的の単なる例であり、本発明の範囲内で他の構成および値が可能であることが理解される。
【0168】
本発明の実現可能性をテストするため、本発明者らは、シンチレータエッジ当たり8つの光子検出器を有する2層のLYSOシンチレータを用いて、正方形のエッジ結合型モノリシック検出器を製作した。モノリシック検出器を放射性点源(Na-22、直径0.25mm)の片側に置き、8×8のシンチレータアレイ検出器を3.3mmピッチの8×8のSiPM(シリコン光電子増倍管)アレイに結合させたものに対向させた。モノリシック検出器は、
図14に示すように、画素検出器よりも線源の近くに設置された。陽電子消滅時には、2つの対向する同時の511keVガンマ線が、線源から放出される。画素検出器に吸収されているガンマ線の位置は既知であり、モノリシック検出器に吸収されているガンマ線の位置は、点源を介して画素検出器からモノリシック検出器までの相互作用線によって推測することが可能である。画素検出器をモノリシック検出器よりも線源から遠くに配置することで、モノリシック検出器での空間分解能を画素検出器のピッチよりも良好にすることができる。
【0169】
検証手順のステップは以下の通りであった:
1.モノリシック検出器上で固有放射能から光子検出器データを取得する
2.2つの別々の較正セットを生成する:
a.較正セット1,C1:1層事象。88~180keVに対応するエネルギーフィルタを適用し、ウィンドウ外の事象をすべて棄却した
b.較正セット2、C2:202keVのガンマ線を用いた2層事象。両方のシンチレータ層がトリガされた事象のみが使用された。層1でのエネルギー蓄積が220keV±20keVであり、層2でのエネルギー蓄積が>300keVの事象のみを許容することにより、さらなるフィルタリングを行った。これにより、層2から放出されたγ2が層1で吸収された事象のほとんどが選択される。
3.2つの較正セットに対して、コホネンのSOMまたは局所分散最小化に従って、較正マップを生成する。
4.放射能源を挿入し、モノリシック検出器および画素検出器における同時の事象からデータを取得する。
5.ステップ3からの較正マップおよびステップ4からのモノリシックサンプルを使って、画素検出器上でどの画素がトリガされたかを予測する。実際にトリガされた画素と比較し、モノリシック検出器においてxおよびyの空間的な差異εxおよびεyを計算する。
【0170】
ε
x、ε
y、および較正セットC
1およびC
2を使用した絶対誤差
【数13】
のヒストグラムが、
図15aおよび
図15bに示されている。C
1では、50,000サンプルが、訓練に使用され、C
2では、20,000サンプルが使用された。絶対誤差の中央値は両較正セットで約1mmである。
【0171】
3層事象を利用した同時のエネルギーおよび空間較正
上記の3層を用いた局所的な較正サンプルの生成では、崩壊層で未定義のエネルギー(88keV+β電子エネルギー)の較正サンプルを生成することになる。これらのサンプルの蓄積エネルギーは、本質的には連続的エネルギー分布から取られることになる。したがって、これらのサンプルは、上述したのと同様の方法で実施され得る、3次元自己組織化マップでの使用によく適しており:横座標xおよびyが2つのパラメータで、蓄積エネルギーが第3のパラメータである。一例として、3次元較正ノードグリッドを使用することができ、ここで、その次元の1つはエネルギー蓄積に対応する。
【0172】
あるいは、
図22に示されるように、複数の個別のSOMマップのセットで較正サンプルを配置してもよく、各マップは、小エネルギー範囲E_0、E_1、…、E_nに対応する。ソートする前に、サンプルは、例えば、シンチレーションエネルギーに相関する、全ての光子センサのサンプル和に従って、特定のSOMに割り当てられ得る。先に説明したSOMアルゴリズムは、エネルギー次元に沿って補間lowessマップでlowessマップを定期的に更新することによって、追加の次元をカバーするように適応されてもよく、これは、個々のlowessマップを単調なエネルギー順序で維持するのに役立つ。BMUマッチングを適用する場合、サンプルは異なるマップ間を自由に移動することができる。
【0173】
収束すると、Lowessマップ当たり(つまり小エネルギー範囲当たり)の最終サンプル数は、ベータ電子スペクトルに対応する高エネルギーテールと202および307keVに対応するピークを持つ、エネルギーヒストグラムを反映したものになる。この小エネルギー範囲ごとのサンプル周波数は、88~681keVのすべてのエネルギーの局所的事象に対する検出器応答の較正に使用することができる。この方法は、異なるエネルギーのサンプルを比較する際のサンプル正規化に関する特有の問題を解決するものである。
【0174】
ルックアップテーブル
較正出力は、シンチレーション座標の高速再構成のために、ルックアップテーブルの形で電子的に保存することができる。
【0175】
〔図面で参照される特徴のリスト〕
患者5
標的ゾーン(例えば、腫瘍)4
イオンビーム療法システム6(例えば、陽子線療法システム)
患者支持体7
イオンビームエミッタ8
イオンビーム1
ガンマ線検出システム10
検出モジュールアセンブリ13
開口部42
検出モジュール14
シンチレータプレート/層16
主要表面40a
小(横方向)表面40b(「エッジ」とも呼ばれる)
半径方向ギャップ17
光子検出器18
個別層光子検出器18a(「光子検出器画素」または単に「画素」とも呼ばれる)
ストリップ多層光子検出器18b(「光子検出器ストリップ」または単に「ストリップ検出器」とも呼ばれる)
光子検出出力信号37
光子検出器支持体(基板)20
検出器-シンチレータ光学界面22
電気光学シャッター(EOS)24
エッジ光スプレッダ26
コンピューティングシステム
信号処理および制御システム30
不揮発性メモリ31
回路基板32
電子部品34
マイクロプロセッサ、メモリ
コネクタ36a、36b
座標マッピング評価セットアップ
光子検出器のアレイ118
エアギャップ119
コンプトンコーン25
応答線(LOR)27
コンプトンコーン-LOR交点27b
関心体積(標的ゾーン)27c
【0176】
〔先行技術文献〕
特許文献
米国特許第10,393,895 B2号(Palomares2019)
WO2019/183594 A1(Xin2019)
非特許文献
Alva-Sanchez2018: H. Alva-Sanchez et.al, Understanding the intrinsic radioactivity energy spectrum from 176Lu in LYSO/LSO scintillation crystals, Scientific Report 8, Art 17310 (2018)
Afanaciev2015: Afanaciev, K.G., Artikov, A.M., Baranov, V.Y. et al. Response of LYSO:Ce scintillation crystals to low energy gamma-rays. Phys. Part. Nuclei Lett. 12, 319-324 (2015). https://doi.org/10.1134/S1547477115020028
Kohonen1982: Kohonen, T. Self-organized formation of topologically correct feature maps. Biol. Cybern. 43, 59-69 (1982). https://doi.org/10.1007/BF00337288
Berger2005: Berger, M.J., Coursey, J.S., Zucker, M.A., and Chang, J. (2005), ESTAR, PSTAR, and ASTAR: Computer Programs for Calculating Stopping-Power and Range Tables for Electrons, Protons, and Helium Ions (version 2.0.1). [オンライン]で利用可能: http://physics.nist.gov/Star. National Institute of Standards and Technology, Gaithersburg, MD [2020年1月31日にアクセス].
Delzanno2008: G. L. Delzanno et.al, An optimal robust equidistribution method for two-dimensional grid adaptation based on Monge-Kantorovich optimization, Journal of Computational Physics 227 (2008) 9841-9864. https://doi.org/10.1016/j.jcp.2008.07.020
他の参考文献
コホネンの自己組織化マップの説明:
・https://en.wikipedia.org/wiki/Self-organizing_map
【0177】
〔実施の態様〕
(1) 信号処理および制御システム(30)を含む計算システムと、標的ゾーン(4)からのガンマ線放出を検出するように構成された少なくとも1つの検出モジュール(14)を含む検出モジュールアセンブリ(13)と、を含む、ガンマ線検出システム(10)であって、
各検出モジュールは、前記標的ゾーンに概ね面するように方向付けられた主要表面(40a)およびシンチレータ層のエッジを画定する横方向小表面(40b)を有する少なくとも1つのモノリシックシンチレータプレート(16)と、前記少なくとも1つのモノリシックシンチレータプレートのエッジに結合され、前記信号処理および制御システムに接続された、複数の光子検出器と、を含み、
前記少なくとも1つのモノリシックシンチレータプレートは、前記光子検出器によって測定可能な強度を有する固有シンチレーション事象を引き起こす放射線を本質的に放射する同位体を有する材料を含み、
前記ガンマ線検出システムは、前記光子検出器によって出力された複数の前記固有シンチレーション事象の測定に基づいて空間較正手順を実行するように構成された較正モジュールを含み、前記空間較正手順は、前記複数の光子検出器の出力の関数として前記モノリシックシンチレータプレートにおけるシンチレーション事象の空間位置を決定するためのものであることを特徴とする、ガンマ線検出システム。
(2) 前記シンチレータプレートは、シンチレーション材料層と、前記シンチレーション材料層の主要表面上にまたはこれに隣接して配置された放射性材料層と、を含み、前記放射性材料層は、放射線を本質的に放出する同位体を有する前記材料を構成するか、あるいは、
前記シンチレータプレートは、放射線を本質的に放出する同位体を有する前記材料を構成する放射性材料を合成的にドープしたシンチレーション材料を含むか、あるいは、
前記シンチレータプレートは、ルテチウムを含有するシンチレーション結晶を含み、較正プロセスは、固有のLu-176活性を使用する、実施態様1に記載のガンマ線検出システム。
(3) 前記信号処理および制御システムは、予め定義された上位エネルギー閾値を超える光子検出器測定出力を除外するように構成されたエネルギーフィルタを含み、
オプションとして、前記エネルギーフィルタは、予め定義された下位エネルギー閾値を下回る光子検出器測定出力を除外するように構成されている、実施態様1または2に記載のガンマ線検出システム。
(4) 少なくとも2つの積層されたシンチレータプレートを含み、
前記較正手順は、1つのプレートから放出され、もう1つのプレートで吸収される目的の予め定義されたエネルギー(例えば、202または307keV)を有するガンマ線を選択し、未知のエネルギーを有するβ-スペクトルの影響を抑制するために、前記少なくとも2つのシンチレータプレート間で一致する固有シンチレーション事象を測定することを含む、実施態様1から3のいずれかに記載のガンマ線検出システム。
(5) 前記較正モジュールは、シンチレーションプレートにおける固有シンチレーション事象の2次元空間位置の自己組織化マップを計算するためのアルゴリズムを含む、実施態様1から4のいずれかに記載のガンマ線検出システム。
【0178】
(6) 前記較正モジュールは、前記シンチレータプレートのエッジ付近の固有シンチレーション事象の2次元空間位置の空間分解能を改善するために局所分散最小化を計算するためのアルゴリズムを含む、実施態様1から5のいずれかに記載のガンマ線検出システム。
(7) 複数の光子検出器(18)は、前記主要表面に入射するガンマ線から前記シンチレータプレートにおけるシンチレーション事象を検出するように構成された前記エッジのそれぞれに対して取り付けられている、実施態様1から6のいずれかに記載のガンマ線検出システム。
(8) 前記検出モジュールアセンブリは、標的ゾーンを囲み、イオンビームを放出するためのギャップ(42)またはオリフィスを含む、実施態様1から7のいずれかに記載のガンマ線検出システム。
(9) 少なくとも3つのシンチレータプレートを含み、
前記較正手順は、1つがβ電子からの寄与を含む、3つの局所的シンチレーション事象を選択するために、前記少なくとも3つのシンチレータプレート間で一致している固有シンチレーション事象を測定することを含む、実施態様1から8のいずれかに記載のガンマ線検出システム。
(10) 組織のゾーンのイオンビーム照射のためのイオンビーム療法システム(6)であって、
患者支持体(7)と、少なくとも回転軸を中心として前記患者支持体に対して移動可能なイオンビームエミッタ(8)と、実施態様1から9のいずれかに記載のガンマ線検出システムと、を含む、イオンビーム療法システム。
【0179】
(11) 信号処理および制御システム(30)を含む計算システムと、標的ゾーン(4)からのガンマ線放出を検出するように構成された少なくとも1つの検出モジュール(14)を含む検出モジュールアセンブリ(13)と、を含むガンマ線検出システム(10)を較正する方法であって、各検出モジュールは、前記標的ゾーンに概ね面するように方向付けられた主要表面(40a)およびシンチレータ層のエッジを画定する横方向小表面(40b)を有する少なくとも1つのモノリシックシンチレータプレート(16)と、前記少なくとも1つのモノリシックシンチレータプレートのエッジに結合され、前記信号処理および制御システムに接続された、複数の光子検出器と、を含み、前記シンチレータプレートは、前記光子検出器によって測定可能な強度を有する固有シンチレーション事象を引き起こす放射線を本質的に放射する同位体を有する材料を含み、
前記方法は、
前記複数の光子検出器によって複数の前記固有シンチレーション事象の強度および時間を検出することと、
前記複数の光子検出器によって出力されたシンチレーション事象の前記検出された強度および時間の値をコンピューティングシステムに送信することと、
前記コンピューティングシステムにおいて較正モジュールプログラムを実行して前記光子検出器の出力の関数として前記モノリシックシンチレータプレートにおけるシンチレーション事象の空間位置を決定することと、
を含むことを特徴とする、方法。
(12) 予め定義された上位エネルギーレベルを超える、検出された強度が、除外され、オプションとして、予め定義された下位エネルギーレベルを下回る、検出された強度が、除外される、実施態様11に記載の方法。
(13) モノリシックシンチレータプレートにおける固有シンチレーション事象の2次元空間位置の自己組織化マップが、前記較正モジュールのアルゴリズムによって計算される、実施態様11または12に記載の方法。
(14) 前記シンチレータプレートのエッジ付近の固有シンチレーション事象の2次元空間位置の空間分解能を改善するための局所分散最小化が、前記較正モジュールのアルゴリズムによって計算される、実施態様11から13のいずれかに記載の方法。
(15) 1つのプレートから放出され、もう1つのプレートで吸収される目的の予め定義されたエネルギー(例えば、202または307keV)を有するガンマ線を選択し、未知のエネルギーを有するβ-スペクトルの影響を抑制するために、前記少なくとも2つのシンチレータプレート間で一致する、固有シンチレーション事象を測定することを含む、実施態様11から14のいずれかに記載の方法。
【0180】
(16) 1つがβ電子からの寄与を含む、3つの局所的シンチレーション事象を選択するために、前記少なくとも3つのシンチレータプレート間で一致している固有シンチレーション事象を測定することを含む、実施態様11から15のいずれかに記載の方法。
(17) 前記予め定義された上位エネルギー閾値は、200keV~約1200keVの範囲内である、実施態様3に記載のシステムまたは実施態様12に記載の方法。
(18) 前記予め定義された上位エネルギー閾値は、200keV~約400keVの範囲内である、実施態様17に記載のシステムまたは方法。
(19) 前記予め定義された上位エネルギー閾値は、200keV~230keVの範囲内、例えば約202keVである、実施態様18に記載のシステムまたは方法。
(20) 前記予め定義された下位エネルギー閾値は、0keV~90keVの範囲内である、実施態様17から19のいずれかに記載のシステムまたは方法。
【0181】
(21) 前記予め定義された下位エネルギー閾値は、20keV~90keVの範囲内である、実施態様20に記載のシステムまたは方法。
(22) 前記予め定義された下位エネルギー閾値は、65keV~90keVの範囲内、例えば約88keVである、実施態様21に記載のシステムまたは方法。