IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 小畑 隆治の特許一覧

<>
  • 特許-淡水化装置 図1
  • 特許-淡水化装置 図2
  • 特許-淡水化装置 図3
  • 特許-淡水化装置 図4
  • 特許-淡水化装置 図5
  • 特許-淡水化装置 図6
  • 特許-淡水化装置 図7
  • 特許-淡水化装置 図8
  • 特許-淡水化装置 図9
  • 特許-淡水化装置 図10
  • 特許-淡水化装置 図11
  • 特許-淡水化装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】淡水化装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/14 20230101AFI20230828BHJP
   C02F 1/04 20230101ALI20230828BHJP
   B01D 1/00 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
C02F1/14 A
C02F1/04 G
B01D1/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023072980
(22)【出願日】2023-04-27
【審査請求日】2023-04-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502193565
【氏名又は名称】小畑 隆治
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】小畑 隆治
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-215670(JP,A)
【文献】特開2019-171368(JP,A)
【文献】特開2019-045047(JP,A)
【文献】特開2022-152562(JP,A)
【文献】米国特許第04210121(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01B1/00-1/08
B01D1/00-8/00
C02F1/04-1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略箱状体に形成され、側面の少なくとも一部と天面から、内部に光が透過可能である外箱と、
前記外箱の内部空間に、その全部が配置された略箱状体であり、側面及び天面から、内部に光が透過可能であると共に、その内部に貯留した原水を蒸留する内箱と、
前記内箱の内部で発生した水蒸気が供給され、前記水蒸気を結露させる水受部と、
前記水受部から水が供給され、間欠的に放水する放水器と、
前記放水器からの放水を受ける容器体であり、前記外箱の外部に水を排出する第1の排水経路に接続された集水部とを備える
淡水化装置。
【請求項2】
前記放水器の一端側に取り付けられた第1のワイヤーと、
前記第1のワイヤーの一部と嵌合すると共に、前記放水器の昇降動作または回転動作に伴い回転する第1の歯車部と、
前記第1の歯車部に固定され、同第1の歯車部と一体的に回転する軸部材であり、その一端側が前記内箱の内部空間、かつ、貯留した原水の水面より上方に配置された回転軸と、
前記内箱の内部空間に位置する前記回転軸に取り付けられ、同回転軸と共に回転する第1の羽根部材とを備える
請求項1に記載の淡水化装置。
【請求項3】
前記内箱及び前記水受部は、前記放水器を挟んで、その両側に1組ずつ設けられた、第1の内箱及び第1の水受部と、第2の内箱及び第2の水受部を有して構成され、
前記放水器の他端側に取り付けられた第2のワイヤーと、
前記第2のワイヤーの一部と嵌合すると共に、前記放水器の昇降動作または回転動作に伴い回転する第2の歯車部とを備え、
前記回転軸は、前記第1の歯車部及び前記第2の歯車部に固定され、同第1の歯車部及び同第2の歯車部と一体的に回転すると共に、その他端側が前記第2の内箱の内部空間、かつ、貯留した原水の水面より上方に配置され、
前記第2の内箱の内部空間に位置する前記回転軸に取り付けられ、同回転軸と共に回転する第2の羽根部材が設けられた
請求項2に記載の淡水化装置。
【請求項4】
前記内箱は、天面が開口したガラス製の略箱状体であり、その内部に貯留した原水を蒸留する内箱下部材と、強化ガラス製の略箱状体であり、その天面に前記水受部に水蒸気を供給する水蒸気供給部が形成されると共に、前記内箱下部材に上方から重なり、同内箱下部材と共に略箱状体を形成する内箱上部材で構成された
請求項1に記載の淡水化装置。
【請求項5】
前記放水器を昇降可能または回転可能に軸支する放水器回転軸が取り付けられ、かつ、前記内箱における前記放水器側の側面と平行に設けられた側壁を有する土台部を備え、
前記内箱の下部側、かつ、その外周面の全周に沿って、前記外箱の内周面側と同内箱の外周面側との間、及び、前記側壁と同内箱の外周面側との間に、光を反射する反射板部が架け渡され、
前記反射板部は、鉛直方向において、前記外箱の内周面側、又は、前記側壁側の位置よりも、前記内箱の外周面側の位置が低く形成されると共に、前記内箱の外周面側に、前記外箱の外部に水を排出する第2の排水経路が接続された
請求項1に記載の淡水化装置。
【請求項6】
前記放水器は、鹿威し構造により間欠的に放水を行い、
前記放水器は、一端側に、前記水受部から供給された水を受けて貯留可能であると共に、その端部が開口した貯水部が形成され、
前記貯水部の前記端部側には、前記鹿威し構造による前記放水器の昇降動作に伴い、前記開口を開閉する蓋部が取付けられた
請求項1に記載の淡水化装置。
【請求項7】
前記外箱は、側面の1つが、外側方向に向けて張り出した凹状に形成され、かつ、同側面は、内周面側に位置する光を反射可能な反射板と、外周面側に位置する前記反射板を支持する支持板で形成された
請求項1に記載の淡水化装置。
【請求項8】
前記外箱は、側面の1つに開閉可能な扉構造が設けられた
請求項1に記載の淡水化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は淡水化装置に関する。詳しくは、簡易な構造で管理が容易であると共に、社会に既にあるエネルギーを消費せずに、効率良く、海水等の塩分を多くふくむ水を、清浄な水に淡水化できる淡水化装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、異常気象の発生や、地球温暖化又は環境汚染の進行等により、自然水等の水資源の枯渇が深刻な問題となっている。
【0003】
とりわけ、地球温暖化の影響から土地の乾燥化が進み、砂漠化が進行しているため、地下水の塩分濃度が上昇する等して、生活用水の確保が難しい地方が著しく増加している。
【0004】
また、離島等では、飲料水、園芸植物等の灌漑水を目的として淡水を入手することは重要な問題である。
【0005】
このような自然環境の変化及び生活用水の使用量の増加等から、飲料水等の生活用水の確保が、世界各国において、極めて重要な課題となりつつある。
【0006】
こうしたなか、従来、海水等の無機あるいは有機の物質を多く含有した水から、清浄な淡水を得る方法として、蒸留法、逆浸透圧法、イオン交換膜を用いた電気透析法等が採用されている。
【0007】
また、例えば、蒸留法において、簡易な装置機構で淡水を得る淡水化装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
ここで、特許文献1に記載された淡水化装置では、原水タンクに海水を入れ、密閉蓋で密閉し、太陽熱で加熱して水蒸気を発生させる。また、発生した水蒸気を、断熱材を巻いたフレキシブルな送気ホースを経由して冷却箱に入れ、冷却蓋で密閉し、蓋を外から海水で冷却して内壁に結露水を得る構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】実用新案登録第3175759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載された淡水化装置では、原水タンクに海水を入れる作業や、海水を冷却蓋の表面に設けた気化促進布に散布する作業は、人力により行われており、作業者に負担を強いるものとなっている。
【0011】
また、そもそも、特許文献1に記載された淡水化装置では、人力を用いることを前提としているため、大規模な装置や多数の装置を用いて、大量の淡水を得ることが困難であった。
【0012】
また、真空ポンプを利用した多段蒸留装置や、極めて高い圧力を必要とする逆浸透圧法の利用では、消費エネルギーが大きく、装置が大型で高価になるため、現実的に運用する手段としては採用し難いものとなっている。
【0013】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、簡易な構造で管理が容易であると共に、社会に既にあるエネルギーを消費せずに、効率良く、海水等の塩分を多くふくむ水を、清浄な水に淡水化できる淡水化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明の淡水化装置は、略箱状体に形成され、側面の少なくとも一部と天面から、内部に光が透過可能である外箱と、前記外箱の内部空間に配置された略箱状体であり、側面及び天面から、内部に光が透過可能であると共に、その内部に貯留した原水を蒸留する内箱と、前記内箱の内部で発生した水蒸気が供給され、前記水蒸気を結露させる水受部と、前記水受部から水が供給され、間欠的に放水する放水器と、前記放水器からの放水を受ける容器体であり、前記外箱の外部に水を排出する第1の排水経路に接続された集水部とを備える。
【0015】
ここで、略箱状体に形成され、側面の少なくとも一部と天面から、内部に光が透過可能である外箱と、外箱の内部空間に配置された略箱状体であり、側面及び天面から、内部に光が透過可能であると共に、その内部に貯留した原水を蒸留する内箱によって、内箱の内部に貯留した原水を太陽光の熱で温め、水蒸気を得ることができる。また、外箱の内側に内箱を配置したことで、外箱の外気に比べて、外箱の内部の空気が温められやすくなり、熱効率を上げることができる。また、外箱を介して内箱を保護することが可能となる。
【0016】
また、水受部に、内箱の内部で発生した水蒸気が供給され、水蒸気を結露させることによって、水蒸気を液化させて水を得ることができる。即ち、原水を蒸留して、清浄な水を得ることができる。
【0017】
また、放水器に、水受部から水が供給され、間欠的に放水することによって、水受部から集水部へと水を移動させると共に、水の移動を利用して、放水器の昇降動作または回転動作を生じさせることができる。
【0018】
また、集水部が、放水器からの放水を受ける容器体であり、外箱の外部に水を排出する第1の排水経路に接続されたことによって、放水器から放水された水を集めて、第1の配水経路を介して、水を外箱の外部に排出することができる。即ち、淡水化装置から清浄な水を取り出すことが可能となる。
【0019】
また、放水器の一端側に取り付けられた第1のワイヤーと、第1のワイヤーの一部と嵌合すると共に、放水器の昇降動作または回転動作に伴い回転する第1の歯車部を備える場合には、放水器の昇降動作または回転動作を駆動力として、第1の歯車部を回転させることができる。
【0020】
また、第1の歯車部に固定され、第1の歯車部と一体的に回転する軸部材であり、その一端側が内箱の内部空間、かつ、貯留した原水の水面より上方に配置された回転軸と、内箱の内部空間に位置する回転軸に取り付けられ、回転軸と共に回転する第1の羽根部材を備える場合には、第1の歯車部及び回転軸の回転に伴い、第1の羽根部材が回転する。このことによれば、第1の羽根部材を回転させ、内箱の内部空間の気相部分に空気の流れ、特に上昇気流が生じることで、発生した水蒸気を上方に向けて排出しやすくなり、蒸留の効率を高めることができる。
【0021】
また、内箱及び水受部が、放水器を挟んで、その両側に1組ずつ設けられた、第1の内箱及び第1の水受部と、第2の内箱及び第2の水受部を有して構成された場合には、1つの放水器に対して、2組の内箱及び水受部から、清浄な水を供給することができる。これにより、より効率良く原水を淡水化することが可能となる。
【0022】
また、放水器の他端側に取り付けられた第2のワイヤーと、第2のワイヤーの一部と嵌合すると共に、放水器の昇降動作または回転動作に伴い回転する第2の歯車部を備える場合には、放水器の昇降動作または回転動作を駆動力として、第1の歯車部に加えて、第2の歯車部も回転させることができる。
【0023】
また、回転軸が、第1の歯車部及び第2の歯車部に固定され、第1の歯車部及び第2の歯車部と一体的に回転すると共に、その他端側が第2の内箱の内部空間、かつ、貯留した原水の水面より上方に配置され、第2の内箱の内部空間に位置する回転軸に取り付けられ、回転軸と共に回転する第2の羽根部材が設けられた場合には、第1の歯車部、第2の歯車部及び回転軸の回転に伴い、第2の羽根部材が回転する。このことによれば、第2の羽根部材を回転させ、第2の内箱の内部空間の気相部分に空気の流れ、特に上昇気流が生じることで、発生した水蒸気を上方に向けて排出しやすくなり、蒸留の効率を高めることができる。
【0024】
また、内箱は、天面が開口したガラス製の略箱状体であり、その内部に貯留した原水を蒸留する内箱下部材と、強化ガラス製の略箱状体であり、内箱下部材に上方から重なり、同内箱下部材と共に略箱状体を形成する内箱上部材で構成された場合には、原水を貯めた内箱下部材に、内箱上部材を重ねて、1つの内箱を構築することができる。また、内箱上部材が強化ガラス製であることから、通常のガラスよりも強度が高く、内箱上部材に対して、様々な加工が行いやすくなる。即ち、例えば、孔部を形成可能となり、回転軸の取付け等を実現することができる。
【0025】
また、内箱上部材に、その天面に水受部に水蒸気を供給する水蒸気供給部が形成される場合には、内箱下部材から原水から生じた水蒸気が、内箱上部材の天面に向かって上昇し、これを水受部に向けて供給することができる。
【0026】
また、放水器を昇降可能または回転動作に軸支する放水器回転軸が取り付けられ、かつ、内箱における放水器側の側面と平行に設けられた側壁を有する土台部を備える場合には、土台部を介して放水器を昇降可能に支持する構造となる。
【0027】
また、内箱の下部側、かつ、その外周面の全周に沿って、外箱の内周面側と内箱の外周面側との間、及び、側壁と内箱の外周面側との間に、光を反射する反射板部が架け渡された場合には、外箱の天面又は側面を透過した太陽光を反射して、内箱の内部をより一層温めやすくなる。この結果、蒸留の効率を高めることができる。
【0028】
また、反射板部は、鉛直方向において、外箱の内周面側、又は、側壁側の位置よりも、内箱の外周面側の位置が低く形成されると共に、内箱の外周面側に、外箱の外部に水を排出する第2の排水経路が接続された場合には、内箱の内部で発生した水蒸気の一部が水受部に供給されず、内箱から漏れ出て、外箱の内部空間で生じた結露した水を反射板部で集めることができる。また、結露した水を、第2の排水経路を介して、外箱の外部に排出することができる。即ち、水受部及び放水器を介在しない結露した水も、清浄な水として取り出すことが可能となる。
【0029】
また、放水器は、鹿威し構造により間欠的に放水を行い、放水器は、一端側に、水受部から供給された水を受けて貯留可能であると共に、その端部が開口した貯水部が形成され、貯水部の端部側には、鹿威し構造による放水器の昇降動作に伴い、開口を開閉する蓋部が取付けられた場合には、貯水部で一時的に水を溜め、蓋部で開口を抑えて、集水部に向けて水を放水する前に、貯水部から外部に水がこぼれることを抑止できる。即ち、例えば、鹿威し構造で、貯水部に水が溜まっていく状態では、蓋部が開口を閉塞している。また、水が一定量以上溜まって放水器が降下し、放水器から集水部に貯めた水を放水する際に、蓋部が開くことで、貯水部の水を外部にこぼすことなく、集水部に水を移動させることができる。また、放水器が、鹿威し構造により間欠的に放水することによって、水受部から集水部へと水を移動させると共に、鹿威し構造による放水器の昇降動作を生じさせることができる。
【0030】
また、外箱が、側面の1つが、外側方向に向けて張り出した凹状に形成され、かつ、側面は、内周面側に位置する光を反射可能な反射板と、外周面側に位置する反射板を支持する支持板で形成された場合には、装置を設置する場所に併せて、太陽光の光を効率良く利用することができる。即ち、例えば、装置が北半球の土地に設置される際には、太陽は南から差すため、外箱の側面のうち、日当たりが悪い北側に位置する側面を、凹状の反射板と支持板で構成する。こうすることで、南から指す太陽光を、反射板で反射して、内箱に太陽光が当たりやすくすることができる。
【0031】
外箱が、側面の1つに開閉可能な扉構造が設けられた場合には、扉構造から作業者が外箱の内部に入りやすくなり、保守作業等を行いやすくなる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る淡水化装置は、簡易な構造で管理が容易であると共に、社会に既にあるエネルギーを消費せずに、効率良く、海水等の塩分を多くふくむ水を、清浄な水に淡水化できるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施の形態の淡水化装置を複数設けた態様を示す概略平面図である。
図2】1つの淡水化装置の構造を示す概略斜視図である。
図3】外箱の一部、内箱及び放水器の内部構造を示す概略断面図である。
図4】内箱上部材の天面、水蒸気供給部及び水受け部の構造を示す概略図である。
図5】(a)は、放水器と周辺構造の概略正面図であり、(b)は、放水器に水を溜めている状態での、図5(a)における右側から見た第1歯車と放水器本体の周辺構造を示す概略側面図であり、(c)は、放水器本体から放水する状態での、図5(a)における右側から見た放水器本体と第2歯車の周辺構造を示す概略側面図である。
図6】(a)は、放水器本体の開口を蓋が閉塞した状態を示す概略側面図であり、(b)は、蓋が開き、放水器本体が放水する状態を示す概略側面図である。
図7】放水器本体の蓋の別バリエーションの構造を示す概略図である。
図8】外箱と内箱の間、及び、内箱と土台部の間にかけ渡された反射板の配置を示す概略平面図である。
図9】側面の1つに反射板を設けた構造を有する外箱の形状を示す概略平面図である。
図10】支持枠の構造を示す概略斜視図である。
図11】水車型の放水部の構造を示す概略図である。
図12】天秤・シーソー方式の放水部の構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[本発明の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
なお、以下に示す構造は、本発明を適用した淡水化装置の一例であり、本発明の内容はこれに限定されるものではなく、適宜設定変更することが可能である。
【0035】
本発明を適用した淡水化装置の一例である淡水化装置Aは、海水等の原水から、清浄な淡水を得るための装置であり、例えば、運用したい土地において、複数の淡水化装置Aを設置して、清浄な水を効率良く得るための装置である(図1参照)。
【0036】
ここで、図1では、一例として、3つの淡水化装置Aを、一例に並べて配置した状態を示している。また、図1に示すように、淡水化装置Aからは、排水経路100及び排水経路101を介して、淡水化装置Aの外部に、淡水化した清浄な水を取り出し可能に構成されている。
【0037】
また、排水経路100は、図示しない貯水タンク等に接続され、淡水化した清浄な水を集めるための経路である。また、排水経路101は、淡水化装置Aの近傍に設けた植物G(例えば、サボテン、アロエ、オリーブ等)に、清浄な水を撒くための経路である。なお、排水経路100及び排水経路101の用途は任意であり、適宜設定することができる。
【0038】
また、図1及び図2に示すように、淡水化装置Aは、外箱1と、内箱2aと、内箱2bと、放水部3を備えている。なお、図1及び図2では、内箱2a、内箱2b及び放水部3の位置関係を明確にするために、外箱1の内部構造を図示し、外箱1については外形を簡略的に示している。
【0039】
ここで、外箱1は、内箱2a、内箱2b及び放水部3を覆う箱状体であり、内箱2a、内箱2b及び放水部3を外部環境から保護すると共に、外箱1の内部空間の温度が温まりやすくするための部材である。
【0040】
また、内箱2a及び内箱2bは箱状体であり、その内部に海水等の原水を貯留して、蒸留するための部材である。
【0041】
また、放水部3は、内箱2a及び内箱2bの内部で生じた水蒸気から液化した水滴が供給され、鹿威し構造により、後述する集水部4に間欠的に水を移動させる部材である。また、放水部3は、鹿威し構造により、間欠的な昇降動作を生じさせる駆動部材である。
【0042】
また、図1及び図2に示すように、1つの外箱1の内部空間には、内箱2aと内箱2bの2つの箱状体が配置されている。また、外箱1の内部空間では、1つの放水部3を挟んでその両側に、内箱2aと内箱2bが配置されている。なお、淡水化装置Aでは、1つの放水部3に対して、2つの内箱2a及び内箱2bから清浄な水を供給する構造を示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、1つの放水部3に対して、1つの内箱から清浄な水を供給する態様や、1つの放水部3に対して、3つ以上の内箱を設けて、それぞれの内箱から清浄な水を供給する態様も採用しうる。
【0043】
続けて、詳細な構造を説明する。
【0044】
[外箱]
外箱1は、底面が開口した箱状体であり、天面及び側面はガラスで形成され、太陽光が透過可能となっている。そのため、外箱1に太陽光が照射されると、光が透過して、外箱1の内部空間の温度が温められやすい構造となっている。
【0045】
このように、外箱1の天面及び側面が、光が透過可能に形成されたことで、内箱2a及び内箱2bにおいて、海水等の原水が貯められた貯水部や、内箱2a及び内箱2bの内部の空気が温められ、原水を蒸発させて水蒸気が生じやすくすることができる。
【0046】
また、図3に示すように、外箱1は、その底面側の開口が鉛直下方に向くように配置されている。なお、図3では、外箱1の底部側の構造、内箱2a及び放水部3の内部構造を明確にするために、内箱2bを省略して、部分的な構造の概略断面を示している。
【0047】
また、図3に示すように、外箱1の底部側の端部には、金属製の枠部10が取付けられている。この枠部10がガラス製の外箱1を強固に支持することで、淡水化装置Aの設置場所に、外箱1を安定して配置可能となる。また、必要があれば、外箱1の四角の外縁及び天面四隅の部分にも金属製の枠部を取り付けることもできる。
【0048】
また、外箱1における天面は着脱式の構造とすることができる。例えば、外箱1のサイズが大きくなる構造では、天面を着脱式の構造とすることで、作業者等が、外箱1や外箱1の内部のメンテナンス等を行いやすくなる。
【0049】
なお、外箱1は、天面及び側面から構成された1つの箱状体となっているが、外箱1の構造としては、淡水化装置Aを設置する場所の外部環境に合わせて、箱状体を2つ以上設けた構造とすることができる。例えば、二重や三重、または、それ以上の数の箱状体で外箱を構築することも可能である。
【0050】
また、図3に示すように、淡水化装置Aを設置する土地にコンクリート基礎部103を設けて、その上に外箱1が設置されている。
【0051】
ここで、必ずしも、淡水化装置Aを設置する土地にコンクリート基礎部103を設けて、その上に外箱1が設置される必要はない。例えば、平坦な土地の地面上に直接、外箱1を設置することも可能である。但し、天候などによる土地の形状の変化等を受けにくく、外箱1を、より安定して設置できる点から、淡水化装置Aを設置する土地にコンクリート基礎部103を設けて、その上に外箱1が設置されることが好ましい。また、コンクリート基礎部103に変えて、耐重量性のあるレンガや石材等で基礎部を構築することも可能である。
【0052】
また、図3に示すように、外箱1の底面側、かつ、コンクリート基礎部103の上端面には、砂や砂利、活性炭、鉱物の焼成材等で構成された透水層104が設けられている。また、後述する内箱2aの下部に配置された反射板50と、放水部3の土台部31は、透水層104の上に配置されている。また、透水層104中の、反射板50の下部には、内箱2a及び反射板50を支持する支持枠8が設置されている。また、反射板50は、内箱2aを透過した太陽光を反射する部材である。また、透水層104中の、土台部31の下部には、放水部3を支持する支持枠9が設置されている。
【0053】
ここで、支持枠8は、重量物を支えることができる支持部材あり、四角形状の枠本体80と、桟部材81及び桟部材82を有している(図10参照)。また、枠本体80、桟部材81及び桟部材82のそれぞれには、水を通過させるための切り欠き83が形成されている。支持枠8をコンクリート基礎部103の上に設置し、透水層104で埋めて、内箱2a及び反射板50を支持する構造となる。また、支持枠9も支持枠8と同様の形状を有している。
【0054】
[内箱]
図3に示すように、内箱2aは、内箱下部材20a及び内箱上部材21aを有している。内箱下部材20aは、天面が開口したガラス製の箱状体であり、かつ、内箱上部材21aは、底面が開口した強化ガラス製の箱状体である。
【0055】
また、内箱上部材21aの方が、内箱下部材20aより大きく形成され、内箱下部材20aの上方から内箱上部材21aが重なって、内箱下部材20aを覆い、1つの箱が形成される。即ち、淡水化装置Aでは、外箱1と内箱2a(又は内箱2b)の二重箱の構造となっている。
【0056】
また、図3に示すように、内箱下部材20aの下部側は、海水等の原水Wを溜めておく貯留部200となっている。また、原水Wの水面には、柱状の木炭201が複数浮かべられている。
【0057】
この貯留部200に貯められた原水Wは、外箱1や、内箱上部材21a又は内箱下部材20aを透過した太陽光を受けて温度が上昇し、蒸発して水蒸気を生じるものとなる。
【0058】
また、貯留部200には、外箱1及び内箱上部材21aを挿通した図示しない原水供給管を介して、淡水化装置Aの外部から、適宜、原水Wが供給される構造となっている。また、原水Wを供給する手段は、駆動装置等を介して自動的に供給する手段や、手動ポンプを介して供給する手段等、適宜設定することができる。
【0059】
また、貯留部200の底部側には、図示しない残水排出管が接続されている。貯留部200の原水Wから継続的に水蒸気が発生し、塩濃度が高くなった原水Wが、この残水排出管を介して、適宜、淡水化装置Aの外部に排出される構造となっている。また、濃縮されて塩濃度が高くなった原水Wを別途取り出して、これから塩を取り出すことができ、副産物を得ることができる。
【0060】
また、貯留部200の水面に浮かべられた複数の木炭201は、外箱1や、内箱上部材21a又は内箱下部材20aを透過した太陽光を、貯留部200の水面に集光発熱するための部材である。
【0061】
ここで、必ずしも、貯留部200の水面には、柱状の木炭201が複数浮かべられる必要はない。但し、太陽光を集光発熱して、貯留部200の原水Wに光が当たりやすくなり、原水Wが蒸発する効率を高めることができる点から、貯留部200の水面には、柱状の木炭201が複数浮かべられることが好ましい。また、必ずしも木炭201が採用される必要はなく、木炭に変えて竹炭や活性炭等を用いることも可能である。
【0062】
また、内箱上部材21aの天面には、水蒸気供給路210が形成されている(図2図3及び図4参照)。また、内箱上部材21aのうち、放水部3側の側面上部には、水受部211が設けられている。
【0063】
この水蒸気供給路210は、貯留部200の原水Wが蒸発して生じた水蒸気を、水受部211に供給する経路である。
【0064】
また、水蒸気供給路210は、鉛直方向において、内箱上部材21aの天面に接続された位置から水受部211の位置に向けて、高さ位置が下がるように、斜め向きに形成されている。これにより、水蒸気が経路の途中で結露しやすくなり、かつ、液化した水が水受部211の方に移動しやすくなっている。なお、図4中では、水蒸気又は液化した水の移動する方向を矢印で示している。
【0065】
また、水蒸気供給路210は、必要に応じて、その外周面に断熱材を巻きつけ、水蒸気の液化を促進する構造とすることもできる。また、水蒸気供給路210は、図4において1つ設けられているが、複数設けることもできる。この際、複数の水蒸気供給路210のそれぞれを、1つの水受部211に繋げた構造とすることができる。また、水蒸気供給路210は、水蒸気供給路210となる部材を別途設けると共に、内箱上部材21aの天面に取り付け用の孔部を形成して、この孔部に部材を差し込んで、後付けで取り付ける構造とすることができる。
【0066】
また、水受部211は、供給された水蒸気を液化させる部分である。また、水受部211は、水蒸気供給経路の途中で液化した水を溜める部分でもある。さらに、水受部211は、液化した清浄な水を、放水部3に向けて供給する部分でもある。
【0067】
この水受部211では、水蒸気が供給されていない状態でも、容器中に一定量の正常な水が貯められている。また、水蒸気供給路210の先端210aは、水受部211に溜まった水の中に配置され、水中に水蒸気が送り込まれる構造となっている。水蒸気が供給されると、容器中に溜まった水に触れて、結露させ液化させることができる。また、液化した水も、水受部211の容器に溜まり、容器から溢れて放水部3側に向けて流れ出ない分は、後に供給されてくる水蒸気の液化を促す水となる。
【0068】
また、例えば、保守等の関係で、水蒸気が供給されてない状態でも、水受部211には、作業者を介して、清浄な水が一定量入れられるものとなる。また、水受部211は、内箱上部材21aの側面に対して後付け可能に構成されている。この際、例えば、側面に取り付け用の孔部を設けると共に、この孔部に嵌合するフック状部を水受部211側に設けて、フック状部を孔部に引っ掛けて、内箱上部材21aの側面に水受部211を取り付けることができる。
【0069】
また、水受部211の容器に溜まった水が、容器の貯留可能な量を超えて溢れると、後述する放水体本体30の貯水部300に流れていく(図3及び図4参照)。
【0070】
また、内箱上部材21aの天面の放水部3側には、屋根板213が設けられている。屋根板213は、水受部211の上方を覆う板状体であり、水受部211への太陽光の照射量を減らす日除けである。
【0071】
この屋根板213を設けることで、水受部211の容器に溜まった水の温度上昇を抑え、水蒸気が結露して液化する効率を高めることができる。また、屋根板213は、図4に示すように、内箱上部材21aの天面に対して、上方から取り付け可能に構成されている。この際、屋根板213を天面に引っ掛ける等の構造にして、取り付けることができる。なお、図4では、屋根板213の部材を、内箱上部材21aの天面から分離した状態を示している。
【0072】
ここで、必ずしも、内箱上部材21aの天面の放水部3側に、屋根板213が設けられる必要はない。但し、上述したように、水受部211への太陽光の照射量を減らし、水蒸気が結露して液化する効率を高めることができる点から、内箱上部材21aの天面の放水部3側に、屋根板213が設けられることが好ましい。
【0073】
なお、上述した、水蒸気供給路210、水受部211及び屋根板213は、内箱2bにも同様の構造が設けられている(図2又は図3参照)。また、内箱2bの構造は、内箱2aの構造と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0074】
[放水部]
図3及び図5(a)~図5(c)に示すように、放水部3は、放水器本体30と、土台部31を有している。また、放水部3には、プロペラ回転軸6が取り付けられている。
【0075】
ここで、放水器本体30は、筒状に形成された容器であり、水受部211からの水が供給され、鹿威し構造により、間欠的に水を集水部4に放水する部材である。また、放水器本体30は、鹿威し構造により、昇降動作を行い、プロペラ回転軸6の回転の駆動力を生じる部分でもある。
【0076】
また、土台部31は、放水器本体30を支持する部材であると共に、プロペラ回転軸6を回転させるための回転機構を有する部分でもある。回転機構の詳細は後述する。
【0077】
また、プロペラ回転軸6は、放水器本体30の昇降動作に伴って回転する軸体であり、内箱2a及び内箱2bの内部に設けられたプロペラ60(図1及び図3参照)を回転させる際の回転中心軸となる部材である。また、プロペラ回転軸6は、内箱上部材21aの側面に設けられたベアリング部214の位置でも回転自在に軸支されている(図3参照)。
【0078】
また、プロペラ60は、内箱2a及び内箱2bの内部空間で回転することで、原水Wの上方の気相部分に空気の流れを生じさせる部材である。このプロペラ60で空気の流れ、特に上昇気流が生じることで、発生した水蒸気を、上方の水蒸気供給路210に向けて排出しやすくなり、蒸留の効率を高めることができる。なお、プロペラ60の形状は、内箱2a及び内箱2bの内部の気相部分で空気の流れを生じることができれば特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。
【0079】
また、土台部31は、図2及び図3に示すように、正面視で略コ字状である金属製のブロック体であり、2つの側壁310及び側壁311を有している。なお、土台部はブロック体を成形可能であれば、金属製のものに限定されず、他の素材が採用されてもよい。
【0080】
また、側壁310と側壁311の間に、放水器回転軸312が取り付けられ、放水器本体30を昇降可能に軸支している(図3参照)。即ち、放水器回転軸312により、鹿威し構造が構築され、放水器本体30の昇降動作が可能となる。
【0081】
また、本願明細書における「鹿威し構造」とは、集水器本体30への水の溜まり具合に応じて、集水時と放水時で、その姿勢を変えるように昇降させるための構造である。
【0082】
より詳細には、集水時には、放水器本体30の貯水部300が上方に位置して、水受部211から供給される水が、貯水部300に溜められる。また、放水時には、一定量の水が貯水部300に溜まると、溜まった水の重みで、放水器本体30の貯水部300の設けられた側(先端側)が下がるように、放水器本体30が降下し、貯水部300から集水部4に向けて水が放出される。
【0083】
このように、鹿威し構造は、放水器本体30の昇降動作による放水を間欠的に行うことを可能にする構造である。なお、放水器本体30からの放水の詳細な動きは後述する。また、以下では、放水器本体30のうち、貯水部300が設けられた側を「先端側」と称し、その反対側を「後端側」と称するものとする。
【0084】
また、プロペラ回転軸6を回転させるための回転機構について説明する。図3及び図5(a)に示すように、放水器本体30の先端側と後端側のそれぞれの側面に、ワイヤー取付部30a及びワイヤー取付部30bが設けられ、同部材に、ボールチェーン状のワイヤー313及びワイヤー314の一端が取り付けられている(図3図5(a)~5(c)参照)。
【0085】
また、ワイヤー313の他端と、ワイヤー314の他端のそれぞれに、重り315及び重り316が取り付けられている。
【0086】
また、土台部31の側壁310の上部には取付塔317が設けられ、その上端にベアリング61が取り付けられている(図3及び図5(a)参照)。また、土台部31の側壁311の上部には取付塔318が設けられ、その上端にベアリング62が取り付けられている。
【0087】
また、ベアリング61に、ワイヤー314と嵌合する歯車部63が回転自在に取り付けられている(図3及び図5(a)参照)。また、ベアリング62に、ワイヤー313と嵌合する歯車部64が回転自在に取り付けられている。
【0088】
このワイヤー313及びワイヤー314は、放水器本体30の昇降動作に伴って移動する鎖状部材であり、ワイヤー中に設けられた複数のボール部(符号省略)が、歯車部64又は歯車部63に設けられた凹部(図示省略)に嵌合して、これらの歯車部材を回転させる駆動力を伝達する部材である。
【0089】
また、歯車部63及び歯車部64は、プロペラ回転軸6の軸体に固定され、プロペラ回転軸6と一体的に回転するよう構成されている。即ち、放水器本体30の鹿威し構造による回転に伴い、プロペラ回転軸6、歯車部63及び歯車部64が一体的に回転する構造となっている。
【0090】
また、側壁310の放水器本体30側には、筒状のガイド部319が設けられている(図3及び図5(a))。このガイド部319は、重り316を含むワイヤー314の他端側の一部を収容して、放水器本体30の昇降に併せて移動するワイヤー314の他端側の移動を案内する部材である。
【0091】
また、同様に、側壁311の放水器本体30側には、筒状のガイド部320が設けられている(図3及び図5(a)参照)。このガイド部320は、重り317を含むワイヤー313の他端側の一部を収容して、放水器本体30の昇降に併せて移動するワイヤー313の他端側の移動を案内する部材である。
【0092】
図5(b)に示すように、放水器本体30の昇降動作に併せて、歯車64に嵌合したワイヤー313が移動することで、歯車64が、図5(b)における時計回りの方向又は反時計周りの方向に回転する。また、歯車64の回転に伴い、プロペラ回転軸6とプロペラ60が回転し、内箱2aの内部で空気の流れが生じるものとなる。
【0093】
また、ワイヤー314の他端側と重り315は、ガイド部320の中を移動することで、ワイヤー314の他端側の移動を安定化させることができる。
【0094】
また、図5(c)に示すように、放水器本体30の昇降動作に併せて、歯車63に嵌合したワイヤー314が移動することで、歯車63が、図5(c)における時計回りの方向又は反時計周りの方向に回転する。また、歯車63の回転に伴い、プロペラ回転軸6とプロペラ60が回転し、内箱2bの内部で空気の流れが生じるものとなる。
【0095】
また、ワイヤー313の他端側と重り316は、ガイド部319の中を移動することで、ワイヤー313の他端側の移動を安定化させることができる。
【0096】
また、図3に示すように、放水器本体30の先端側の上部及び後端側の上部には、小プロペラ32が取り付けられている。この小プロペラ32は、放水器本体30が昇降する際に、放水器本体30の先端側の移動又は後端側の移動で回転して、放水器本体30の上方に空気の流れを生じさせる部材である。
【0097】
この小プロペラ32で空気の流れを生じることで、外箱1の内側、かつ、内箱2a及び内箱2bの外側の空間で、空気が対流しやすくなり、水受部211に風を送って、水受部211での水蒸気を冷却する効果を高めることができる。
【0098】
ここで、必ずしも、放水器本体30の先端側の上部及び後端側の上部には、小プロペラ32が取り付けられる必要はない。但し、上述したように、外箱1の内側、かつ、内箱2a及び内箱2bの外側の空間で、空気が対流しやすくなり、水受部211に風を送って、水受部211での水蒸気を冷却する効果を高めることができる点から、放水器本体30の先端側の上部及び後端側の上部には、小プロペラ32が取り付けられることが好ましい。また、ここでは、放水器本体30の昇降に伴い空気の流れを生じる構造であれば、小プロペラ32の形状が採用される必要はなく、羽根状の部材や、団扇状の部材を用いることもできる。
【0099】
続いて、放水器本体30の蓋33の構造について説明する。図6(a)に示すように、放水器本体30の先端側には、水受部211から供給される水を溜める貯水部300が形成されている。また、放水器本体30の先端には開口34が形成され、この開口を閉塞する蓋33が、ヒンジ35を介して回転可能に取り付けられている。
【0100】
即ち、放水器本体30の開口34が蓋33で閉塞された状態では、貯水部300に貯められた水は、貯水部300の外側に漏れないようになっている。
【0101】
また、蓋33のうち貯水部300を塞ぐ面には、ワイヤー36を介して、重り37が取り付けられている。また、貯水部300の中には、複数の孔(図示省略)が形成された仕切り壁38が設けられている(図6(a)及び図6(b)参照)。重り37は、ゴムや金属等で形成することができる。
【0102】
このワイヤー36及び重り37は、放水後、放水器本体30の先端が上昇して、貯水部300に水を溜める状態、即ち、貯水部300が上方に位置した、集水時の位置に戻った際に、放水器本体30の開口34を蓋33が閉塞するように、蓋を回転させる部材である。
【0103】
また、仕切り壁38は、重り37が放水器本体30の開口34の方に移動して、外に飛び出すことを抑止する部材である。また、仕切り壁38に形成された孔の一部には、ワイヤー36が挿通され、蓋33と重り37を接続することが可能となっている。また、仕切り壁38の孔は、水を通過させる役目も果たす。
【0104】
また、放水器本体30の先端部側の下方に集水部4が設けられている(図6(a)及び図6(b)参照)。集水部4は、本体容器40と、当接部41を有している。本体容器40は、放水器本体30から放水された水を受けて、一時的に貯める部分であり、その底部に排水経路100が接続されている。
【0105】
また、当接部41は、ゴム等の弾性体で形成された部分であり、放水器本体30が放水する際に、その先端と当接する部分である。当接部41は、放水器本体30の先端を受け止め、放水時に生じる衝撃を和らげる緩衝部材である。なお、当接部41は、ゴムの代わりにばね部材等を用いることもできる。
【0106】
図6(a)及び図6(b)を用いて、放水器本体30からの放水と、蓋33の開閉の動きを説明する。
【0107】
まず、放水器本体30が集水部4に水を放水した後、放水器本体30の先端が上昇して、集水時の向き(先端側と貯水部300が上方に位置する向き)に戻ると、重り37は自重で仕切り壁38から離れる方向に移動する(図6(a)参照)。
【0108】
この重り37の移動で、ワイヤー36が蓋33を引っ張り、開放状態の蓋33が回転して、放水器本体30の開口34が蓋33で閉塞される。これにより、開口34から水が漏れることなく、貯水部300に水を溜めることが可能となる。
【0109】
また、集水時の状態で、貯水部300に一定量の水が溜まると、放水器本体30の先端が降下して、その先端側が下方、即ち、集水部4の方に移動していく。この際、放水器本体30の降下の勢いにより、蓋33に慣性力が働き、ヒンジ35を介して、蓋33は開口34から離れるように回転して、開放状態となる。
【0110】
即ち、放水時には、蓋33が開口34を開放した状態となり、貯水部300に溜まった水は、集水部4の容器本体に放出される(図6(b)参照)。
【0111】
このように、放水体本体30は、その昇降動作に応じて、蓋33が開口34を閉塞又は開放する構造となっており、貯水部300に溜まった清浄な水が、放水体本体30から漏れ出ることを抑止しつつ、集水部4に水を移動させることができる。
【0112】
また、放水器本体の蓋における別途の態様としては、図7に示すような構造も採用しうる。図7に放水器本体30Aは、ヒンジ35aを介して回転する蓋33aを有している。また、蓋33aに凸部330aが設けられ、開口34aが形成された端面には、凹部340aが設けられている。
【0113】
この放水器本体30Aでは、放水時から集水時に戻る際に、蓋33aが自重で開口34aの方に回転して、凸部330aが凹部340aに嵌合することで、蓋33aが開口34aを閉塞する。また、放水時には、蓋33aに慣性力が働き、ヒンジ35aを介して、蓋33aは開口34aから離れるように回転して、開放状態となる。このような蓋33aの構造を採用することも可能である。
【0114】
次に、外箱1の内部空間で生じる結露を集める構造について説明する。淡水化装置Aでは、原則、内箱2a及び内箱2bの内部の原水Wを蒸留して、水蒸気を生じさせ、水受部211、放水器本体30等で、集水部4に清浄な水を集めて、排水経路100で装置の外部に送り出すことで、清浄な水を得ている。
【0115】
ここで、内箱2a及び内箱2bの内部で生じた水蒸気が、水蒸気供給路210を通らずに、継ぎ目等から漏れて、外箱1の内部空間、かつ、内箱2a及び内箱2bの外側に移動することがある。
【0116】
この外箱1の内部空間に生じた水蒸気が結露して液化した水は、内箱2a及び内箱2bの外周に沿って設けた、反射板構造7で集めるように構成されている(図8参照)。なお、反射板構造7は、内箱2aと、内箱2bで同様の構造であるため、以下、内箱2aを例に説明する。
【0117】
図8に示すように、平面視した状態で、内箱上部材21aの外周に沿って、反射板構造7が設けられている。この反射板構造7は、外箱1の内壁11と内箱上部材21aの外周面との間に設けられた反射板70と、土台部31の側壁310と内箱上部材21aの外周面との間に設けられた反射板71で構成されている。
【0118】
また、反射板70と反射板71が接続され、内箱上部材21aの外側を取り囲んだ構造となっている。また、反射板70及び反射板71は、太陽光を反射する板状部材で形成されている。
【0119】
また、図3に示すように、反射板70は、支柱73を介して、透水層104の上に設けられている。また、反射板71も同様に、支柱74を介して、透水層104の上に設けられている。
【0120】
また、図3に示すように、反射板70は、外箱1の内壁11から内箱上部材21aの外周面に向けて、斜め下方に傾いて配置されている。また、反射板71は、土台部31の側壁310から内箱上部材21aの外周面に向けて、斜め下方に傾いて配置されている。
【0121】
このように反射板構造7では、内箱上部材21aの外周面に向かって板状の部材が斜め下方に傾いた形状となっており、外箱1の内部空間に生じた水蒸気が結露して液化した水を、内箱2aの方で、水を一点に集中して集めることが可能となっている。
【0122】
また、反射板構造7の内箱2a側の一部は、排水経路101(図1参照)と繋がっており、図8における反射板構造7の符合70aで示した一点に、水を集中して集め、符合70の箇所に繋がった排水経路101を介して、淡水化装置Aの外部に取り出すことができる。
【0123】
この反射板構造7で集めた水も、内箱2a内部の原水Wから生じた水蒸気が結露したものであり、清浄な水を得ることができる。また、反射板70及び反射板71は、太陽光を反射する板状部材で形成されたことから、外箱1を透過した太陽光を反射して、内箱2aを温めやすくする機能も有している。
【0124】
このように、淡水化装置Aでは、反射板構造7を介して、水受部211や、放水器本体30を経由しない水についても、効率良く集めることができる。
【0125】
続いて、外箱1の別途の態様について説明する。外箱1は、天面及び側面の全てをガラスで形成する構造の他、淡水化装置を設置する場所に併せて、側面の一部を、凹状の反射部として形成することができる。
【0126】
例えば、図9に示す外箱1Aでは、3つの側面10Aと、1つの反射面11Aで構成されている(天面の記載は省略)。側面10Aは強化ガラスで形成されている。また、反射面11Aは、凹状の支持板及び反射板で形成されている。また、反射面11Aの一部は、開閉可能な扉構造110Aとなっており、ここを開閉して、作業者がメンテナンス等のため外箱1Aの中に出入り可能となる。
【0127】
この外箱1Aは、例えば、淡水化装置が、北半球の土地に設置される際には、日当たりが悪い北側に、反射面11Aが位置するように配置する。即ち、図9であれば、図中の下方が北で、図中の上方が南の方角となる。
【0128】
このような外箱1Aの構造とすることで、南側から指す太陽光を、反射面11Aで反射して、内箱に太陽光が当たりやすくすることができる。
【0129】
また、本発明の淡水化装置Aでは、放水部3が、鹿威し構造により間欠的な放水と昇降動作を生じさせる構造となっていたが、鹿威し構造の代わりに、例えば、以下のような構造も採用しうる。
【0130】
図11には、放水部として水車3Xを設けた構造を示している。水車3Xは、水受部211Xから水が供給され、回転しながら、図示しない集水部へと水を移動させる。また、水車3Xは回転軸6Xと一体化して回転し、内箱2Xの内部で、プロペラ60Xを回転させることが可能となっている。
【0131】
また、図12には、放水部として、天秤・シーソー方式の構造を採用している。シーソー90では、略L字状に配置された棒状部材91の先端に、水受92及び水受93の容器が取付けられている。また、棒状部材91は回転軸94を中心に、図12中における左右に90度回転して、水受92または水受93から水が放水されるようになっている。なお、図12では、水受93が図中の右方向に90度回転した状態の図を示している。
【0132】
即ち、図示しない内箱に設けられた水受部211Yから水が供給され、水受92に水が溜まり一定以上の重さになると、シーソー90が左側に90度回転して、水受92から放水される。この際、水受93が水受部211Yの下に位置するようになる。また、水受93に水が溜まり一定以上の重さになると、シーソー90が右側に90度回転して、水受93から放水される。
【0133】
なお、水受92または水受93が水受部211Yの下方に来た位置において、水受92または水受93を静止させるために、別途、緩衝部材を設けたり、マグネットの磁力等を利用したりして、水受92または水受93を静止させる態様とすることも可能である。
【0134】
また、棒状部材91には、強度を持たせるための硬い接続部材95が取り付けられている。また、水受93の下部にはボールチェーン状のワイヤー96と重り97が取り付けられ、ワイヤー96が歯車98に嵌合している。また、ワイヤー96の一部と、重り97は筒状のガイド部99の中に入り動きがガイドされる。なお、図には示していないが、水受92にも、これに対応するワイヤー、重り、ガイド部、歯車が設けられている。
【0135】
また、歯車98のうち、いずれか1つには図示しない回転軸が一体的に取り付けられ、この回転軸が内箱の内部に挿通され、内箱内部にある回転軸に取り付けられたプロペラが、シーソー90の回転に伴って回転する構造となっている。
【0136】
このように、本発明を適用した淡水化装置では、放水部として、水車型の構造や、天秤・シーソー方式の構造を採用することもできる。
【0137】
以上で説明した淡水化装置Aは、外箱1の内側に、内箱2a及び内箱2bを配置して、二重箱の構造として、太陽光の熱を利用して、内箱の内部の原水Wを蒸留することで、別途の社会に既にある消費エネルギーを用いることなく、簡易な構造で、淡水化した清浄な水を得ることができる。
【0138】
また、淡水化装置Aでは、放水器本体30を鹿威し構造として、この昇降を利用して、プロペラ回転軸6及びプロペラ60を回転させ、内箱2a及び内箱2bの内部に空気の流れ、特に上昇気流を生じさせることができる。これにより、内箱2a及び内箱2bの内部空間で、発生した水蒸気を、上方の水蒸気供給路210に向けて排出しやすくなり、蒸留の効率を高めることができる。
【0139】
また、淡水化装置Aは、構造が簡易であり、かつ、保守もしやすいことから、砂漠等の厳しい環境下の土地にも設置しやすいものとなっている。また、複数の淡水化装置Aを設置することで、海水等の原水Wから、効率良く、大量の清浄な水を得ることが可能である。
【0140】
以上のように、本発明の淡水化装置は、簡易な構造で管理が容易であると共に、社会に既にあるエネルギーを消費せずに、効率良く、海水等の塩分を多くふくむ水を、清浄な水に淡水化できるものとなっている。
【符号の説明】
【0141】
A 淡水化装置
W 原水
1 外箱
10 枠部
11 内壁
2a 内箱
20a 内箱下部材
21a 内箱上部材
200 貯留部
201 木炭
210 水蒸気供給路
210a (水蒸気供給路の)先端
211 水受部
213 屋根板
214 ベアリング部
2b 内箱
3 放水部
30 放水体本体
30a ワイヤー取付部
30b ワイヤー取付部
300 貯水部
31 土台部
310 側壁
311 側壁
312 放水器回転軸
313 ワイヤー
314 ワイヤー
315 重り
316 重り
317 取付塔
318 取付塔
319 ガイド部
320 ガイド部
32 小プロペラ
33 蓋
34 開口
35 ヒンジ
36 ワイヤー
37 重り
38 仕切り壁
4 集水部
40 本体容器
41 当接部
50 反射板
6 プロペラ回転軸
60 プロペラ
61 ベアリング
62 ベアリング
63 歯車部
64 歯車部
7 反射板構造
70 反射板
71 反射板
73 支柱
74 支柱
8 支持枠
80 枠本体
81 桟部材
82 桟部材
83 切り欠き
9 支持枠
100 排水経路
101 排水経路
103 コンクリート基礎部
104 透水層
G 植物

30A 放水体本体
33a 蓋
330a 凸部
34a 開口
340a 凹部
35a ヒンジ

1A 外箱
10A 側面
11A 反射面
110A 扉構造

2X 水車
211X 水受部
6X 回転軸
60X プロペラ

90 シーソー
91 棒状部材
92 水受
93 水受
94 回転軸
95 接続部材
96 ワイヤー
97 重り
98 歯車
99 ガイド部
211Y 水受部
【要約】
【課題】簡易な構造で管理が容易であると共に、社会に既にあるエネルギーを消費せずに、効率良く、海水等の塩分を多くふくむ水を、清浄な水に淡水化できる淡水化装置を提供する。
【解決手段】本発明を適用した淡水化装置の一例である淡水化装置Aは、外箱1と、内箱2aと、内箱2bと、放水部3を備えている。外箱1は、内箱2a、内箱2b及び放水部3を覆い、内箱2a、内箱2b及び放水部3を外部環境から保護すると共に、外箱1の内部空間の温度が温まりやすくする。また、内箱2a及び内箱2bは箱状体であり、その内部に海水等の原水を貯留して、蒸留する。また、放水部3は、内箱2a及び内箱2bの内部で生じた水蒸気から液化した水滴が供給され、鹿威し構造により、集水部4に間欠的に水を移動させ、間欠的な昇降動作を生じさせる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12