(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】弾性緩衝体
(51)【国際特許分類】
E01D 19/04 20060101AFI20230828BHJP
【FI】
E01D19/04 101
(21)【出願番号】P 2023079073
(22)【出願日】2023-05-12
【審査請求日】2023-05-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503121088
【氏名又は名称】株式会社ビー・ビー・エム
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(72)【発明者】
【氏名】合田 裕一
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-116724(JP,A)
【文献】特開平11-071714(JP,A)
【文献】特開2008-057169(JP,A)
【文献】特開平10-132025(JP,A)
【文献】特開平09-316825(JP,A)
【文献】特開平11-303021(JP,A)
【文献】特開2002-317407(JP,A)
【文献】特開2006-125100(JP,A)
【文献】特開2005-330688(JP,A)
【文献】特開2007-032046(JP,A)
【文献】実開平03-012910(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造物と下部構造物との間に設けられ弾性部材からなり衝撃エネルギーの吸収と相対移動の変位量を規制する弾性緩衝体であって、
前記弾性緩衝体は、前記上部構造物と前記下部構造物のいずれか一方に基端部が取り付けられて内側に傾斜され先端部がいずれか他方の受圧部となる2つの側部緩衝部材と、2つの前記側部緩衝部材の間の空間に配置されて前記いずれか一方に基端部が着脱可能に取り付けられ先端部が前記いずれか他方の受圧部となる内部緩衝部材と、2つの前記側部緩衝部材の受圧部と前記内部緩衝部材の受圧部とを着脱可能に連結する平板部材と、を有し、
前記内部緩衝部材は、前記弾性緩衝体が吸収する
べき衝撃エネルギーに
応じて、変位(δ)と荷重(P)との関係が調整されて前記空間に配置される、
ことを特徴とする弾性緩衝体。
【請求項2】
前記内部緩衝部材は、受圧方向の中間部に屈曲部を備えて形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の弾性緩衝体。
【請求項3】
前記内部緩衝部材は、前記空間に複数並べて配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の弾性緩衝体。
【請求項4】
前記上部構造物と前記下部構造物とは、前記上部構造物と橋台または橋脚とからなる橋梁であり、前記上部構造物と前記橋台または前記橋脚とのいずれかに受圧構造部材を取り付けて受圧可能に構成されている、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の弾性緩衝体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性緩衝体に関する。
【背景技術】
【0002】
地震などによって構造物である建築物や橋梁などが大きく変位する際の衝撃エネルギーの吸収や相対変位量を規制するため弾性緩衝体が用いられる。例えば、建築物では、上部構造物である建物と下部構造物である基礎との間にゴムなどの弾性を利用する弾性緩衝体が設置され、橋梁では、上部構造物と下部構造物との間にゴムなどの弾性を利用する弾性緩衝体を設置しており、弾性緩衝体により地震時の衝撃エネルギーの吸収と変位量の規制を行って構造物同士の衝突による損傷や落橋などを防止する。例えば、特許文献1には、変位ストッパーとして、弾性材料の2つの立ち上がり片を頭部に向かって傾斜させて頭部同士で連続させ、立ち上がり片の脚部の内側に三角形状の凸部を形成したものが開示されており、凸部を形成することで、最大荷重と初期剛性を高めるようにしている。
【0003】
また、例えば、特許文献2には、衝撃吸収構造として衝撃負荷方向に樹脂や金属で構成した六角筒状や円形筒状のものを複数組み合わせた壁構造を備える衝撃吸収材が開示されており、衝撃力により壁構造が圧縮変形し、座屈変形や永久変形することで衝撃エネルギーを吸収するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-116724号公報
【文献】特開平11-71714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの変位ストッパーや衝撃吸収材では、構造物の仕様に応じて吸収すべき衝撃エネルギーを設定し、その設定に応じて変位ストッパーや衝撃吸収材が設計・製造される。変位ストッパーでは、構造物の仕様の変更に応じて脚部内側の三角形状の凸部の変更が必要となって新たな成型金型などを用意し、変位ストッパー全体を製造しなければならず、既設の変位ストッパーを交換する場合には、変位ストッパー全体を交換しなければないという問題がある。
【0006】
また、金属や樹脂による筒状の壁構造を備える衝撃吸収材でも、吸収すべき衝撃エネルギーに応じて、同様に、壁構造全体を製造しなければならず、特に大きな地震後には、衝撃エネルギーを吸収し座屈変形や永久変形した衝撃吸収材全体を必ず交換しなければならないという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、吸収すべき衝撃エネルギーの変更に簡単に対応でき、全体の製造や交換の必要がなく簡単に製造し交換できる弾性緩衝体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明の弾性緩衝体は、
上部構造物と下部構造物との間に設けられ弾性部材からなり衝撃エネルギーの吸収と相対移動の変位量を規制する弾性緩衝体であって、
前記弾性緩衝体は、前記上部構造物と前記下部構造物のいずれか一方に基端部が取り付けられて内側に傾斜され先端部がいずれか他方の受圧部となる2つの側部緩衝部材と、2つの前記側部緩衝部材の間の空間に配置されて前記いずれか一方に基端部が着脱可能に取り付けられ先端部が前記いずれか他方の受圧部となる内部緩衝部材と、2つの前記側部緩衝部材の受圧部と前記内部緩衝部材の受圧部とを着脱可能に連結する平板部材と、を有し、
前記内部緩衝部材は、前記弾性緩衝体が吸収するべき衝撃エネルギーに応じて、変位(δ)と荷重(P)との関係が調整されて前記空間に配置される、
ことを特徴とする。
【0009】
前記内部緩衝部材は、受圧方向の中間部に屈曲部を備えて形成されている、ことが好ましい。
【0010】
前記内部緩衝部材は、前記空間に複数並べて配置されている、ことが好ましい。
【0011】
前記上部構造物と前記下部構造物とは、前記上部構造物と橋台または橋脚とからなる橋梁であり、前記上部構造物と前記橋台または前記橋脚とのいずれかに受圧構造部材を取り付けて受圧可能に構成されている、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の弾性緩衝体によれば、吸収すべき衝撃エネルギーの変更に簡単に対応でき、全体の製造や交換の必要もなく簡単に製造し交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の弾性緩衝体を橋梁に適用した一実施の形態にかかる緩衝前と緩衝状態の正面図である。
【
図2】本発明の弾性緩衝体にかかり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図3】本発明の他の実施の形態の弾性緩衝体にかかり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図4】本発明のさらに他の実施の形態の弾性緩衝体にかかり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図5】本発明の弾性緩衝体を橋梁に適用した他の一実施の形態にかかる緩衝前と緩衝状態の正面図である。
【
図6】本発明の弾性緩衝体の変位と荷重との関係の説明図である。
【
図7】従来のゴム板を適用した橋梁の緩衝前と緩衝状態の正面図である。
【
図8】従来の緩衝体を適用した橋梁の緩衝前と緩衝状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の弾性緩衝体の実施の形態について図面を参照して説明する。
弾性緩衝体1の一実施の形態は、例えば、
図1および
図2に示すように、橋梁2に適用されて上部構造物が橋体3とされ、下部構造物が橋台4とされる。
弾性緩衝体1は、橋体(上部構造物)3と橋台(下部構造物)4との間に設けられ弾性部材からなり衝撃エネルギーの吸収と相対移動の変位量を規制するためのものである。弾性緩衝体1は、橋体3と橋台4のいずれか一方に基端部11が取り付けられて内側に傾斜され先端部12がいずれか他方の受圧部13となる2つの側部緩衝部材10と、2つの側部緩衝部材10の間の空間14に配置されていずれか一方に基端部21が着脱可能に取りけられ先端部22がいずれか他方の受圧部23となる内部緩衝部材20と、2つの側部緩衝部材10の受圧部13と内部緩衝部材20の受圧部23とを着脱可能に連結する平板部材30と、を有し、内部緩衝部材20は、弾性緩衝体1が吸収する衝撃エネルギーにより調整されて空間14に配置されて構成される。
【0015】
本実施の形態では、弾性緩衝体1が設けられる橋梁2は、上部構造物の橋体3と下部構造物の橋台4との間にゴム支承100が設置された免震構造とされており、ゴム支承100によって地震動に対し、地震エネルギーの吸収と水平方向の変位の吸収ができるように構成されている。
ゴム支承100は、例えば、積層弾性体101の上面に鋼板の上鋼製板102が設けられ、下面に鋼板の下鋼製板103が設けられるとともに、積層弾性体101に鉛プラグが装着され、積層弾性体101の外側がゴム被覆で覆われて構成されている。上鋼製板102および下鋼製板103が上部構造物の橋体3と下部構造物の橋台4との間にボルトを介して固定され、免震装置として用いられる。
【0016】
積層弾性体101は、例えば、形状が四角柱状に形成されるが、これに限定されるものでなく、円柱状など他の形状であってもよい。また、積層弾性体101は、弾性板および剛性板を積層して構成されている。積層される弾性板および剛性板の枚数は、特に限定するものではなく、必要な免震性能や設置スペースの高さなどの条件に合わせて適宜決定される。なお。ゴム支承100は、上記構成に限らず、一般に使用されているものであっても良い。また、橋梁2では、ゴム支承100に変えて他の支承を用いることもできる。
【0017】
免震構造とするゴム支承100を備えた橋梁2の橋体3と橋台4の擁壁4aとの間には、弾性緩衝体1が設けられ、地震時の衝撃エネルギーの吸収と変位量を規制し、橋体3と橋台4の擁壁4aとの衝突による橋体3および橋台4の損傷などを防止する。
弾性緩衝体1は、
図1および
図2(a),(b)に示すように、ゴムなどの弾性部材の2つの側部緩衝部材10を備える。側部緩衝部材10は、基端部11から先端部12に向かって内側に傾斜され、基端部11には、両側に突き出して取付部15が形成され、下部構造物の橋台4の擁壁4aの側面に取り付けられる。側部緩衝部材10は、先端部12が取付部15と平行な平坦面に形成されて受圧部13とされ、両側の受圧部13が1枚の鋼板などの金属の平板部材30に取り付けられ、垂直状態の平板部材30を介して上部構造物の橋体3の側面に当接、あるいは間隔を開けて対向するよう配置される。これにより、2つの側部緩衝部材10は、連結されて内側に横断面形状が台形状の空間14が形成される。平板部材30には、表面に座ぐり部(図示省略)が形成され、受圧部13に埋設された雌ねじ部(図示省略)にボルト(図示省略)で取り付けられ、ボルト頭部は、表面から引っ込んでおり、橋体3とボルト頭部が接触しないようにしてある。
なお、弾性緩衝体1のゴムなどの弾性材料は、何ら限定するものでなく、通常緩衝材として使用される天然ゴムやニトリルブタジエンゴムなどを広く用いることができる。
【0018】
弾性緩衝体1は、2つの側部緩衝部材10によって形成される台形状の空間14内に、
ゴムなどの弾性部材による内部緩衝部材20が配置され、基端部21に形成した取付部24にボルトを介して下部構造物の橋台4の擁壁4aの側面に取り付けられる。内部緩衝部材20の先端部22は受圧部23とされ、2つの側部緩衝部材10の受圧部13を連結する平板部材30に、平板部材30の表面に形成される座ぐり部(図示省略)と受圧部23に埋設された雌ねじ部(図示省略)を介してボルト(図示省略)で連結され、平板部材30を介して両側の受圧部13と中央部の受圧部23とが連結された平面状となっている。
【0019】
このように構成した弾性緩衝体1は、例えば、
図1に示す橋梁2などの緩衝用として設置され、橋梁2の上部構造物の橋体3と下部構造物の橋台4との間に設けられる。
弾性緩衝体1は、橋体3の側面と対向するよう橋台4の擁壁4aの側面に取り付けられる。また、
図5に示すように、上部構造物の橋体3に下方に突き出して受圧構造部材40を取り付ける。受圧構造部材40の側面41と橋台4の側面との間に弾性緩衝体1を対向するように設置して取り付けても良い。
なお、橋梁2を構成する下部構造物4は、橋台に限らず、橋脚であっても良い。
【0020】
弾性緩衝体1を備える橋梁2で必要とされる特性について
図6に示す変位δと荷重Pの関係を参照して検討する。
緩衝体は、地震発生時に大きな衝撃エネルギーを吸収する必要があるとともに、緩衝体からの反力が過大にならないようにする必要がある。変位開始時の大きな衝撃エネルギーを吸収するためには、緩衝材の初期の剛性を高める必要があり、
図7に示すように、ゴム板だけの緩衝材50のように、変位δに対して大きな荷重Pが発生する傾きの大きな特性aを持つようにすることが考えられる。しかし、剛性の高いだけの特性aの緩衝材50とすると,変位量が小さく、緩衝材50からの反力が大きくなってしまう。
【0021】
一方、緩衝材60は、
図8に示すように、岸壁に設置される防舷材と同様の構成であり、本願の弾性緩衝体1とは、内部緩衝部材20を有しない一体とされた両側2つの側部緩衝部材10だけの場合に相当する。緩衝材60は、その特性bを、
図6中に示すように、変位δの増加にともない比例して荷重Pが増加したのち略一定になり、その後大きな変位δに対し荷重Pが再び増大する。緩衝材60は、ゴム板だけの緩衝材50に比較すると、船体が接触する変位開始直後は、船体に加わる荷重(反力)Pを小さくし、緩衝材60の初期の剛性が小さく傾きの小さい特性とし、船体が押し付けられる状態では変位δに対して荷重Pが一定になる荷重Pを確保して大きな衝撃エネルギーを吸収する。
【0022】
これら緩衝材50,60に対し、弾性緩衝体1では、2つの側部緩衝部材10の間の空間14に内部緩衝部材20を配置し、基端部21の取付部24を側部緩衝部材10と同様に、橋台4の擁壁4aに取り付け、先端部22の受圧部23を平板部材30に取り付けておく。これにより、弾性緩衝体1は、その特性cを、
図6中に示すように、平板部材30を介して地震時の大きな荷重P(衝撃エネルギー)が加わると、2つの側部緩衝部材10と内部緩衝部材20に同時に衝撃力が伝わり、内部緩衝部材20を設置した分だけ初期の剛性が高く(変位δに対する荷重Pの傾きが大きく)、地震時の大きな荷重Pによる衝撃エネルギーを吸収できるとともに、緩衝材60に比べて一定となる荷重Pを大きくして変位δを規制でき、橋体3と橋台4の擁壁4aとの衝突による損傷を防止することができる。
【0023】
弾性緩衝体1では、内部緩衝部材20の変位δと荷重Pとの関係を弾性材料の選定や形状、内部緩衝部材20の厚さを変えて調整することで、弾性緩衝体1の変位δに対して略一定となる荷重Pの大きさを調整して特性dのようにすることができ、変形後の反力などを調整することができる。
さらに、弾性緩衝体1を設置する各々の橋梁に合わせて吸収すべき衝撃エネルギーや規制すべき変位量を変える場合には、2つの側部緩衝部材10を同一仕様としたまま、内部緩衝部材20の厚さを調整したり、使用する弾性材料の特性を変えることで、簡単に対応することができる。
また、弾性緩衝体1を交換する場合には、平板部材30を取り外した後、空間14内の内部緩衝部材20だけを取り外して簡単に交換することができる。
【0024】
また、弾性緩衝体1Aは、
図3に示すように、内部緩衝部材20Aの形状に変更を加えており、中間部に屈曲部25が形成してある。
このような屈曲部25を形成することで、弾性緩衝体1Aの荷重が大きくなると、直線状のものに比べて屈曲部25で座屈しやすくなり、これによって変形後増大した反力を抑えるように調整することができる。
【0025】
さらに、弾性緩衝体1Bは、
図4に示すように、内部緩衝部材20Bを2つに分離したものを併設して構成したものであり、弓状に湾曲させたものを、隙間を空けて向かい合わせるように構成してある。内部緩衝部材20Bは、分離した両方の基端部21Bが例えば、1つの取付部24Bを介してボルトによって、例えば下部構造物の橋台4の擁壁4aの側面(
図1参照)に取り付けられる。
このような分離した内部緩衝部材20Bを備えた弾性緩衝部材1Bによっても弾性緩衝体1Bの荷重Pが大きくなると、直線状のものに比べて湾曲させておくことで座屈のしやすさを調整でき、これによって変形後増大した反力を抑えるようにすることができ、初期の剛性を大きくしたり、反対に小さくするなどの調整を簡単にすることもできる。
【0026】
なお、弾性緩衝体1,1A,1Bでは、内部緩衝部材20,20A,20Bだけを調整するようにしたが、これに限らず、2つの側部緩衝部材10の変位δと荷重Pとの関係を弾性材料の選定や形状、厚さなどを変えて調整することもでき、弾性緩衝体1,1A,1Bの全体の特性や変形後の反力を調整することができる。
また、側部緩衝部材10を2つに分離し、同一のものを対称に配置して構成することで、1つの側部緩衝部材10を製造し、反転して設置することで、弾性緩衝体1とすることができ、成形金型を小さく、単純にすることができ、効率的に製造することができる。
さらに、弾性緩衝体1は、橋梁2に適用する場合には、橋軸方向に設置する場合に加えて橋軸直角方向にも同一構成のものを設置することで、水平面内での衝撃エネルギーの吸収と変位量を規制することができ、橋体と橋台の衝突などの損傷や落橋などを防止することができる。
また、弾性緩衝体1は、橋梁に限らず、建築物に適用することもでき、建物と基礎との間や上下に分割された建物の間などに適用することもでき、水平面内での衝撃エネルギーの吸収と変位量を規制することができる。
【0027】
以上、実施の形態とともに、具体的に説明したように、本発明の弾性緩衝体1は、橋体(上部構造物)3と橋台(下部構造物)4との間に設けられ弾性部材からなり衝撃エネルギーの吸収と相対移動の変位量を規制する弾性緩衝体1であって、弾性緩衝体1は、橋体3と橋台4のいずれか一方に基端部11が取り付けられて内側に傾斜され先端部12がいずれか他方の受圧部13となる2つの側部緩衝部材10と、2つの側部緩衝部材10の間の空間14に配置されていずれか一方に基端部21が着脱可能に取り付けられ先端部22がいずれか他方の受圧部23となる内部緩衝部材20と、2つの側部緩衝部材10の受圧部13と内部緩衝部材20の受圧部23とを着脱可能に連結する平板部材30と、を有し、内部緩衝部材20は、弾性緩衝体1が吸収する衝撃エネルギーにより調整されて空間14に配置されて構成される。
かかる構成によれば、上部構造物3と下部構造物4とのいずれか一方に基端部11、他方に先端部12を受圧部13として内側に傾斜させた2つの側部緩衝部材10を取り付け、2つの側部緩衝部材10の間の空間14内に内部緩衝部材20の基端部2lを上部構造物3と下部構造物4とのいずれか一方に着脱可能に取り付け、先端部22を受圧部23として、2つの受圧部13と受圧部23の3つを平板部材30で連結してあり、地震時に、内部緩衝部材20により平板部材30を介して伝達される衝撃エネルギーを初期の剛性を高めて吸収することができるとともに、変位中の荷重を大きくせずに反力を抑えることができ、上部構造物3と下部構造物4の衝突による損傷を防止することができる。
また、内部緩衝部材20を別体として空間14内に着脱できるようにしてあるので、弾性緩衝体1の交換を内部緩衝部材20だけの交換で簡単に行うことができる。また、内部緩衝部材20の厚さや使用する弾性材料の変更で、初期の剛性や吸収エネルギーおよび反力の調整が簡単にできる。弾性緩衝体1は、側部緩衝部材10,内部緩衝部材20および平板部材30を分解して運搬することができ、取り扱いが容易であり、組み立てや設置も簡単に行うことができる。
【0028】
内部緩衝部材20Aは、受圧方向の中間部に屈曲部25を備えて形成されている、ことが好ましい。かかる構成によれば、内部緩衝部材20Aの屈曲部25により弾性緩衝体1Aの初期の剛性や吸収エネルギーおよび反力の調整が簡単にできる。
【0029】
内部緩衝部材20Bは、空間14に複数並べて配置されている、ことが好ましい。かかる構成によれば、内部緩衝部材20Bを基端部21Bの取付部24Bを介して空間14に取り付けることで、弾性緩衝体1Bの初期の剛性や吸収エネルギーおよび反力の調整を簡単に行うことができる。
【0030】
上部構造物3と下部構造物4とは、上部構造物3と橋台4または橋脚とからなる橋梁2であり、上部構造物3と橋台4または橋脚とのいずれかに受圧構造部材40を取り付けて受圧可能に構成されている、ことが好ましい。かかる構成によれば、上部構造物の橋体3と下部構造物の橋台4または橋脚とのいずれかに受圧構造部材40を取り付けることで、弾性緩衝体1の設置スペースの確保が容易で自由度が広がり、他の構造物との干渉を防止して設置することができる。
【0031】
本発明は前述の実施形態に限られず、各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 弾性緩衝体
2 橋梁
3 橋体(上部構造物)
4 橋台(下部構造物)
10 側部緩衝部材
11 基端部
12 先端部
13 受圧部
14 空間
15 取付部
20 内部緩衝部材
21 基端部
22 先端部
23 受圧部
24 取付部
25 屈曲部
30 平板部材
40 受圧構造部材
41 側面
20A 内部緩衝部材
20B 内部緩衝部材
21B 基端部
24B 取付部
100 ゴム支承
【要約】
【課題】吸収すべき衝撃エネルギーの変更に簡単に対応でき、全体の製造や交換の必要がなく簡単に製造し交換できる弾性緩衝体を提供する。
【解決手段】弾性緩衝体1は、橋体3と橋台4との間に設けられ弾性部材からなり衝撃エネルギーの吸収と相対移動の変位量を規制する弾性緩衝体1で、弾性緩衝体1は、橋体3と橋台4のいずれか一方に基端部が取り付けられて内側に傾斜され先端部がいずれか他方の受圧部となる2つの側部緩衝部材10と、2つの側部緩衝部材10の間の空間に配置されていずれか一方に基端部が着脱可能に取り付けられ先端部がいずれか他方の受圧部となる内部緩衝部材20と、2つの受圧部と1つの受圧部とを着脱可能に連結する平板部材30と、を有し、内部緩衝部材20は、弾性緩衝体1が吸収する衝撃エネルギーにより調整されて構成される。
【選択図】
図1