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特許7337438血球および血小板由来の細胞外小胞を困窮化させた血液または血液誘導体を得るための中空糸の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】血球および血小板由来の細胞外小胞を困窮化させた血液または血液誘導体を得るための中空糸の使用
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20230828BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20230828BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20230828BHJP
【FI】
G01N33/48 H ZNA
C12Q1/06
C12N15/09 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020551850
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2019058028
(87)【国際公開番号】W WO2019185874
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】18165289.2
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516365769
【氏名又は名称】エクソソミクス・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】EXOSOMICS S.p.A.
(73)【特許権者】
【識別番号】522499575
【氏名又は名称】メディカ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】MEDICA S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ・キエジ
(72)【発明者】
【氏名】ナターシャ・ザロヴニ
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィデ・ゾッコ
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03093032(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0258379(US,A1)
【文献】特表2003-530984(JP,A)
【文献】特開2005-065725(JP,A)
【文献】特開2012-143554(JP,A)
【文献】特表2017-518517(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0304677(US,A1)
【文献】H. Hackstein et al.,Prospective quality control study of a novel gravity-driven whole blood separation system suitable for humanitarian crises,Vox Sanguinis,2017年,Vol.112,pp.806-809
【文献】高橋 恒夫 ほか,落差式血液成分分離装置の開発,Japanese Journal of Transfusion Medicine,Vol.35, No.1,1989年,pp.73-79
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
C12Q 1/06
C12N 15/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液サンプルまたは血液由来の液体サンプルを重力濾過に付すことにより細胞外小胞を困窮化させるための、ポロシティが200~500nmの中空糸のインビトロでの使用であって、かかる細胞外小胞が、中空糸のポロシティよりも下位の大きさを有し、赤血球、白血球、血小板およびその組み合わせからなる群より選択される血液成分を起源とする、中空糸のインビトロにおける使用。
【請求項2】
中空糸がポリエーテルスルホン製中空糸を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
中空糸がポリエーテルスルホン製中空糸から構成される、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
細胞外小胞が、微小小胞、エクソソーム、エキソマー、およびその組み合わせからなる群より選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
中空糸200nmのポロシティを有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
血液由来の液体サンプルが血漿サンプルである、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
赤血球、白血球、血小板、およびそのいずれかの組み合わせからなる群より選択される血液成分を起源とする、細胞外小胞を実質的に困窮化させる血液または血液誘導体を得るためのインビトロでの方法であって、血液サンプルまたは血液由来の液体サンプルをポロシティが200~500nmの中空糸を含むフィルターを介して重力濾過に付す工程、それにより細胞外小胞を実質的に困窮化させた血液または血液誘導体を得る工程を含め、かかる細胞外小胞が該中空糸のポロシティよりも下位にある大きさを有する、インビトロでの方法。
【請求項8】
血液サンプルまたは血液由来の液体サンプルの細胞外小胞の含量をインビトロにて分析する方法であって、
a)血液サンプルまたは血液由来の液体サンプルを、ポロシティが200~500nmの中空糸フィルターを介する重力濾過に付し、それにより濾液を得、
b)工程a)において得られた濾液中の細胞外小胞の含量を分析する
ことを含む、方法。
【請求項9】
中空糸がポリエーテルスルホン製中空糸を含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
中空糸がポリエーテルスルホン製中空糸から構成される、請求項7または8に記載の方法
【請求項11】
細胞外小胞が、微小小胞、エクソソーム、エキソマー、およびその組み合わせからなる群より選択される、請求項7~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
中空糸200nmのポロシティを有する、請求項7~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
血液由来の液体サンプルが血漿サンプルである、請求項7~12のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポロシティ(porosity)が20nmより上の中空糸、特にポリエーテルスルホン製中空糸を用い、血液および血液誘導体にて、血液由来の細胞外小胞、特に微小小胞、エクソソームおよびエキソマーを困窮化させること、ならびにかかる困窮化させたサンプルを得る方法および分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
細胞外小胞は細胞起源の30nm~2μmの膜実在物である。これらは、アポトーシス小体(1μmより上)、オンコソーム(1μmより上)、微小小胞(200nm~1μm)、エキソソーム(30~120nm)およびエキソマー(約35nm)で構成される(Van Der Polら、Zhangら)。
【0003】
中空糸(HF)は、特に透析の分野において使用される、一連の半透性障壁である(Ishiharaら)。その主な特徴は、そのポロシティ、すなわちその平均的な細孔径および細孔分布である。医学の分野において、それらは、典型的には、血液透析、血液濾過および血漿交換のためのフィルターとして使用される。
【0004】
中空糸は、セルロース、セルロースエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアミド、含窒素ポリマー、ガラス、シリカ、酢酸セルロース、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(塩化ビニル)(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTEE)、ポリエステル、セラミック、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンイミン機能性ポリアミドイミド(Torlon(登録商標))、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)を含め、種々の材料を用いて製造される(Seo-Hyun Pakら;Xing Yangaら;Hailin Zhuら;Amir Dashtiら;Ze-Lin Qiuら;Li FSら;Labreche Yら;Zhang Yら;Higa Mら, Mock 2007)。
【0005】
血液および血液誘導体を分析のためにどのように製造し得るかの例が文献にて記載されている。
血液誘導体の製造では、典型的には、血小板および白血球の活性化および溶血が問題となる。例えば、血小板は、血液サンプルの入った試験管を振盪するだけでその活性化が達成されてしまう(Blackら)。また、造血起源の細胞外小胞の存在は、実質由来および間質由来の細胞外小胞を単離し、分子分析するための既知の交絡因子であり、分析の信号対雑音の割合および結果の再現性に影響を与える。
【0006】
(従来技術)
中空糸は、そのポロシティが小胞を通過させない(WO2007127848、WO2001082958)、または中空糸が小胞と結合するように化学的に修飾されている(WO2015130956)かのいずれかを理由として、中空糸の有する小胞の保持能と関連して記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】遠心分離に付すか、200nmのポロシティのHF装置を通して濾過するか、あるいは20nmのポロシティのHF装置を通して濾過することで得られる血漿のナノ粒子の総数を示す。
図2】200nmのHF装置を通して濾過することで得られる血漿サンプル中で測定される血液由来のエクソソームの量、あるいは3人の転移性黒色腫患者の遠心分離によって得られる血漿中の対立遺伝子頻度による、BRAF遺伝子のコピー(コピー数/mL)を示す。
図3】200nmのポロシティの非HFセルロースフィルターを介する濾過により得られる血漿サンプル中にて測定される血液由来のエキソソームの量を示す。
図4】200nmのHF装置を介する濾過、または遠心分離によって得られる血漿サンプル中に存在する微小小胞の低分子RNA電気泳動図を示す。
図5】遠心分離に付すか、または200nmのポリエーテルスルホン製HF装置を介して濾過した後に測定した、健康なドナーの血液にスパイクされた腫瘍エキソソーム中の、BRAFV600E変異のレベル(A)、またはBRAFV600EvsBRAFWTの割合(B)を示す。
図6】200nmのHF装置を通して濾過することで、または遠心分離に付すことで得られる血漿サンプルにて測定されるCD9-およびTM9SF4-陽性エクソソームの量を示す。
図7】遠心分離に付すか、または200nmのポロシティのポリエーテルスルホン製HF装置を通して濾過した後の健康なドナーの血漿サンプルの脂質異常指数を示す。
図8】遠心分離に付すか、または200nmのポロシティのポリエーテルスルホン製HF装置を通して濾過することで得られる健康なドナーの血漿にスパイクされた腫瘍エキソソーム中のBRAFV600E変異のコピーのレベル(コピー数/mL)を示す。
図9】遠心分離に付すか、または200nmのポロシティのポリエーテルスルホン製HF装置を通して濾過する前後の脂質異常性血漿サンプルの脂質異常指数を示す。
図10】遠心分離機、あるいは200nmのポロシティ、または500nmのポロシティのポリエーテルスルホン製HFフィルターのいずれかを用いて全血より得られる血漿のナノ粒子の総数を示す。
図11】遠心分離に付すか、または500nmのポロシティのポリエーテルスルホン製HF装置を通して濾過するかのいずれかで得られる血漿サンプル中で測定されるCD9-、CD45-、CD61-およびCD235陽性エキソソームの量を示す。
図12】遠心分離に付すか、または200nmのポロシティのポリエーテルスルホン製HF装置を通して濾過することで得られる、転移性黒色腫患者の血漿中の野生型BRAF遺伝子のコピーのレベル(コピー数/mL)を示す。
図13】遠心分離に付すか、または200nmのポロシティのポリエーテルスルホン製HF装置を通して濾過することで得られる、転移性黒色腫患者の血漿中のBRAF遺伝子のコピーの対立遺伝子頻度(コピー数/mL)を示す。
図14】腫瘍エキソソームをスパイクした血漿サンプル中で測定され、200nmのHF装置を通して濾過するか、または遠心分離により得られる、TM9SF4-陽性エクソソームの量を示す。
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、意外にも、ポロシティが20nmよりも大きな中空糸フィルターを重力濾過で使用することで、特定の血液成分を起源とし、大きさが該中空糸のポロシティよりも下位にある、細胞外小胞を困窮化させることを、見出した。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の態様において、血液サンプルまたは血液由来の液体サンプルを重力濾過に付すことにより細胞外小胞を困窮化させるための、ポロシティが20nmよりも大きな中空糸のインビトロでの使用であって、かかる細胞外小胞が、中空糸のポロシティよりも下位の大きさを有し、赤血球、白血球、血小板およびその組み合わせからなる群より選択される血液成分を起源とする、中空糸のインビトロにおける使用が提供される。
【0010】
本発明の第2の態様において、赤血球、白血球、血小板、およびそのいずれかの組み合わせからなる群より選択される血液成分を起源とする、細胞外小胞を実質的に困窮化させる血液または血液誘導体を得るためのインビトロでの方法であって、血液サンプルまたは血液由来の液体サンプルをポロシティが20nmよりも大きな中空糸を含むフィルターを介して重力濾過に付す工程、それにより細胞外小胞(かかる細胞外小胞が該中空糸のポロシティよりも下位にある大きさを有する)を実質的に困窮化させた血液または血液誘導体を得る工程を含む、インビトロでの方法が提供される。
【0011】
本発明の第3の態様において、血液サンプルまたは血液由来の液体サンプルの細胞外小胞の含量をインビトロにて分析する方法であって、
a)血液サンプルまたは血液由来の液体サンプルを、ポロシティが20nmよりも大きな中空糸フィルターを介する重力濾過に付し、それにより濾液を得、
b)工程a)において得られた濾液中の細胞外小胞の含量を分析する
ことを含む、方法が提供される。
【0012】
当業者は、環境に応じ、自身の経験および当該分野において利用可能な文献に基づき、どの分析が実施され、それをどのように行うかが分かるであろう。かかる分析は、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)またはフローサイトメトリー(FACS)を用いて、特定のタンパク質をその表面に有する細胞外小胞の量を測定することに向けられてもよい。他の分析は、ナノ粒子トラッキング分析(NTA)を介してサンプル中にあるナノ粒子の総数を計数すること、または定量リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)または次世代シーケンシング(NGS)により遺伝子発現を測定することに向けられてもよい。
【0013】
本発明のいずれかの態様の下にある実施態様において、中空糸はポリエーテルスルホン製中空糸を含む。
本発明のいずれかの態様の下にある実施態様において、中空糸はポリエーテルスルホン製中空糸からなる。
【0014】
本発明のいずれかの態様の下にある実施態様において、中空糸は、セルロース、セルロースエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアミド、含窒素ポリマー、ガラス、シリカ、セルロースアセテート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(塩化ビニル)(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエステル、セラミック、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンイミン機能性ポリアミドイミド(トーロン(Torlon)(登録商標))およびポリ(ビニルアルコール)(PVA)の群より選択される、材料を含む。
【0015】
本発明のいずれかの態様の下にある実施態様において、中空糸は、セルロース、セルロースエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアミド、含窒素ポリマー、ガラス、シリカ、セルロースアセテート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(塩化ビニル)(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエステル、セラミック、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンイミン機能性ポリアミドイミド(トーロン(Torlon)(登録商標))およびポリ(ビニルアルコール)(PVA)の群より選択される、材料からなる。
【0016】
本発明のいずれかの態様の下にある実施態様において、ポロシティは、20nmより上、25nmより上、30nmより上、35nmより上、40nmより上、45nmより上、50nmより上、55nmより上、60nmより上、65nmより上、70nmより上、75nmより上、80nmより上、85nmより上、90nmより上、95nmより上、100nmより上、105nmより上、110nmより上、115nmより上、120nmより上、125nmより上、130nmより上、135nmより上、140nmより上、145nmより上、150nmより上、155nmより上、160nmより上、165nmより上、170nmより上、175nmより上、180nmより上、185nmより上、190nmより上、195nmより上、および200nmより上の群より選択される。
【0017】
本発明のいずれかの態様の下にある実施態様において、ポロシティは500nm未満である。
本発明のいずれかの態様の下にある実施態様において、ポロシティは、約150nm、約200nm、約250nm、約300nm、約350nm、約400nm、約450nm、約500nm、およびこれらの数値を含むいずれのインターバルの群からも選択される。
【0018】
本発明のいずれかの態様の下にある実施態様において、ポロシティは、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、およびこれらの数値を含むいずれのインターバルの群からも選択される。
本発明のいずれかの態様の下にある実施態様において、中空糸は、約150~約250nm、約150~約300nm、約150~約350nm、約150~約400nm、約150~約450nm、約150~約500nm、約200~約250nm、約200~約300nm、約200~約350nm、約200~約400nm、約200~約450nm、および約200~約500nmからなる一群の範囲から選択されるポロシティを有する。
【0019】
本発明のいずれかの態様の下にある実施態様において、中空糸は、150~250nm、150~300nm、150~350nm、150~400nm、150~450nm、150~500nm、200~250nm、200~300nm、200~350nm、200~400nm、200~450nm、および200~500nmからなる一群の範囲から選択されるポロシティを有する。
【0020】
本発明のいずれかの態様の下にある実施態様において、中空糸は約200nmのポロシティを有する。
本発明のいずれかの態様の下にある実施態様において、中空糸は200nmに等しいポロシティを有する。
本発明のいずれかの態様の下にある実施態様において、血液由来の液体サンプルは血漿サンプルである。
【0021】
本発明のいずれかの態様の下にある実施態様において、細胞外小胞は、微小小胞、エクソソーム、エキソマー、およびその組み合わせからなる群より選択される。
すべての実施態様は組み合わされて、本発明の上記した態様の下にある、新たな実施態様を形成してもよい。
【実施例
【0022】
発明を、この度、非限定例として記載する。
材料および方法
【0023】
A)血液採取
すべての患者は、午前中に採血を行うまで、夜中から空腹状態であった。血液は、CPD含有の血液バッグ(CompoFlow;Fresenius Kabi)に収集されるか、血漿用のK2-EDTA管(バクタイナー(VACUTAINER)(登録商標)、ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson)、パープルキャップ、REF367864、6.0ml)に収集されるかのいずれかであった。K2-EDTA管を、その後で5または6回、上下回転させ、垂直位置を維持し、さらなる処理に付すまで、室温(20~25℃)で貯蔵した。
【0024】
B)遠心分離による血漿の製造
遠心分離による血漿の製造は、全血を1500gで20~25℃にて10分間遠心分離に付すことで、採血から1時間以内に行われた。使い捨てパスツール(Pasteur)ピペット(Steroglass、REF:LPMW032653;5ml)を用いて血漿を集め、バッフィーコートの3~4mm上で止めておくことでそれが再び懸濁するのを回避した。サンプルを脂質、胆汁(Itterum)または溶血の痕跡について目視でチェックした。血漿を15mLのファルコン(Falcon)管に集め、緩やかに反転させ、標識を付したクライオ管(カタログ番号:BSM535,Biosigma)にてアリコートに供し、-20℃で貯蔵した。
【0025】
C)200nmのポロシティの非HFのセルロース製フィルターの濾過を介して得られる血漿
血漿を上記されるように遠心分離に付して製造し、200nmのポロシティの非HFのセルロース製フィルター(カタログ番号:190-9920;Nalgene)を介して濾過した。濾過した血漿を15mLのファルコン管に集め、2mLのマイクロ遠心管にてアリコートに供し、さらに使用するまで-20℃で貯蔵した。
【0026】
D)20/200nmのポロシティのポリエーテルスルホン製中空糸装置の濾過を介して得られる血漿
血漿は、一般に血液透析に使用される、20nmまたは200nmのポロシティの市販されているポリエーテルスルホン製中空糸装置(Plasmart 50;Medica Srl、Italy)の修飾バージョンを用いて得られた。該装置は、その長さを150mmから60mmに短くすることで修飾され、そうしてプライミングに必要とされる血液の容量を減らした。簡単に言えば、2つの側面の出口の1つを全血袋またはK2-EDTA管に接続する一方で、その装置の反対側の出口を空の袋に接続した。第3の側方出口を濾過された血漿を集めるための空の袋に接続した。血液袋を室温で少なくとも30分間放置し、使用前にゆっくりと混合した。
【0027】
40mLの全血を重力濾過により該装置を通して濾過し、15mL(30%)の血漿を側面袋にて集め、50mLのファルコン管に移し、2mLの微小遠心管へのアリコートに供し、-20℃で貯蔵した。全血およびその細胞成分を保持液にて濃縮し、サイドバッグに集めて廃棄した。
【0028】
E)ナノ粒子追跡分析(NTA)
分析する前に、血漿サンプルを13000gで遠心分離に付し、分析に影響を及ぼす可能性のある大きな小胞を除去し、PBSでさらに1:10000に希釈した。NTAは、LM10ナノサイト(Nanosight)機器(Malvern, UK)を用い、カメラレベルを16に、スライダーシャッターを13000に設定して行われた。粒子濃度は、3回の独立した測定の平均として、計算された。
【0029】
F)エライザによるエクソソームの数量化
血漿サンプルを室温で解凍し、1μLのプロテアーゼ阻害剤のカクテル(1000X;シグマ(Sigma)カタログ番号:P-834)を各サンプルに加え、タンパク質バイオマーカーを保存した。血漿サンプルを室温(RT)で20分間にわたって1200gで遠心分離に付し、残りの赤血球と細胞破片を除去した。得られた上清を集め、リン酸緩衝液(PBS)と1:1の容量割合に希釈した。
【0030】
簡単に言えば、100μlの希釈した血漿を、0.1μg/ウェルの抗-CD9抗体(カタログ番号:HBM-CD9-100、HansaBioMed Life Sciences Ltd)、抗-CD45抗体(カタログ番号:610265、BD)、抗-CD61抗体(カタログ番号:555752、BD);および抗-CD235抗体(カタログ番号:555569、BD)と、ならびに抗-TM9SF4抗体(2μg/ml)と一緒に、プレコートした96ウェルのプレートにて4℃で一夜インキュベートした。洗浄緩衝液(PBS-ツィーン(Tween) 0.05%)で3回洗浄した後、プレートをビオチン化抗-CD9抗体(カタログ番号:558749、BD Pharmigen)と一緒にインキュベートし、4℃で2時間インキュベートし、洗浄緩衝液で3回洗浄し、適合したポリ-HRP-ストレプトアビジン二次抗体(カタログ番号:21140、Pierce)と一緒に4℃で1時間インキュベートし、洗浄緩衝液で3回洗浄した。100μlの基質溶液(TMBlue POD;1:1 溶液AおよびB、Pierce)を各ウェルに添加することで比色反応を起こさせ、暗所にて室温で10分間インキュベートし、100μlの停止溶液(1N硫酸)を添加して反応を停止させた。O/D吸光度をM1000Tecanを用いて450nmで読み取り、結果をシグナル対バックグラウンド(Signal to Background;StB)比として表した。
【0031】
G)微小小胞ペレットの製造
遠心分離機を用いて得られた血漿および中空糸の濾過で得られた血漿を、さらに10000gにて室温で30分間遠心分離に付して微小小胞(MV)ペレットを得た。MVペレットを100μLのPBSに再び懸濁させてさらなる処理に付した。
【0032】
H)低分子RNAのMVペレットからの抽出および電気泳動図の分析
Overall Exosome Immunocapture and RNA extraction kit from human biofluids and cell media(カタログ番号:HBM-RNA-BOF-20;HansaBioMed Life Sciences Ldt, Estonia)を用い、製造業者の指示に従って、MVペレットからRNAを抽出し、15mLの溶出緩衝液にて溶出した。5マイクロリットルの抽出したRNAをRNA6000 Pico Kit(カタログ番号:5067-1513;Agilent Technologies)にロードし、バイオアナライザー(Bioanalyzer)機器を操作し、RNAの電気泳動図を得た。
【0033】
I)BRAFV600E-陽性腫瘍エクソソームを用いた血液サンプルのスパイク、およびエクソソーム関連のDNAの単離
健康なドナー患者からの全血(10mL)に、商業供給者より購入した80μlのBRAFV600E-陽性腫瘍エクソソーム(5.5μl/μl、COLO1細胞株、HansaBioMed Life Sciences Ldt)をスパイクした。
【0034】
スパイクされた腫瘍エクソソームからのエクソソーム関連のDNA(Exo-DNA)を、循環DNAを抽出するための市販のキット(seleCTEV(登録商標)low input DNA;Exosomics Siena Spa, Italy)を用いて抽出して精製した。簡単に言えば、独自仕様のペプチドを用い、血漿からエクソソームを捕捉し、2時間インキュベーションした後にペレット状にした。エクソソームペレットを独自仕様の溶解緩衝液で溶解させ、プロテイナーゼKで消化してDNAをタンパク質の複合体から放出させた。次に、サンプルにエタノールを補充し、シリカ膜スピンカラムにロードし、10000gで1分間にわたって遠心分離に付した。遠心分離に付した後、フロースローを廃棄した。製造業者の指示に従って2回の洗浄工程を行い、溶出する前に汚染溶媒および血漿由来の阻害剤を取り除いた。Exo-DNAを50μlの溶出緩衝液で溶出し、使用まで-20℃で貯蔵した。
【0035】
qPCRによるBRAFV600EおよびBRAFWT遺伝子の増幅
各qPCR反応は、10μlの精製Exo-DNA、1xのSsoAdvanced Universal Probes Mastermix(Biorad;US)、0.625μlのプライマー(10μM)および0.3125μlの蛍光プローブ(10μM)を25μlの総容量で含んだ。次のプライマーおよびプローブを用いた:
a)BRAFWT FW:TAGGTGATTTTGGTCTAGCTACAG+T;
b)BRAFWT RW:TTAATCAGTGGAAAAATAGCCTCA;
c)BRAFV600E FW:TAGGTGATTTTGGTCTAGCTACAG+A;
d)BRAFV600E RW:TTAATCAGTGGAAAAATAGCCTCA
e)プローブ:5’-FAM CCGAAGGGGATC+CAGACAA+CTGTTCAAACTGCCTTCGG-3BHQ1-3
【0036】
注意して混合した後、各反応を96ウェルのPCRプレートに三重重複にてロードし、次のqPCRプログラム:95℃で3分間(’)、95℃で5秒間(”)および60℃で30秒間を40サイクル、つづいて4℃での最終保持工程を開始した。BRAFV600Eの回収%を計算するのに、次式:[2^(Ct input -Ct isolation )]%
を用いた。
【0037】
L)液滴デジタルPCR(digital droplet PCR)によるBRAFV600E遺伝子コピーの検出
各液滴デジタルPCR反応は、10μlの精製Exo-DNA、2xのプローブ用のddPCR Supermix(カタログ番号:186301;Biorad)、20xのBRAF V600E用のMutation Detection Assay(アッセイID:dHsaMDV2010027;Biorad)および5μlのDNase不含水を含んだ。各反応を製造業者の指示に従ってロードし、次のddPCRプログラム:95℃で10分間、95℃で30秒間および56℃で1分間を40サイクル、つづいて4℃での最終保持工程を開始した。BRAF V600E遺伝子コピーおよび対立遺伝子頻度をQuantaSoft Software(Biorad)を用いて計算した。
【0038】
M)血漿サンプルの脂質異常性指数の数量化
脂質異常性指数は、製造業者の指示に従って、Cobas機器でSerum Index Gen.2キット(カタログ番号:05172179190;Roche)を用い、500μlの血漿より測定された。
【0039】
実施例1:200nmの細孔を備えた中空糸(HF)装置がナノ粒子に富む血漿を血液から効果的に分離する
図1は、遠心分離機、遠心分離機+200nmの非HFのセルロース製フィルター、200nmのポロシティまたは20nmのポロシティのポリエーテルスルホン製中空糸フィルターのいずれかを用い、全血より得られる血漿のナノ追跡分析(NTA)によるナノ粒子の総数を示す。
かくして、本発明の方法は、遠心分離機+非HFセルロース製フィルターと同様の総数のナノ粒子を得ることができる旨を示している。
【0040】
実施例2:全血を200nmのHF濾過に付して得られる血漿は、赤血球および白血球由来の細胞外小胞が、遠心分離機で得られる血漿よりも少ない
図2は、遠心分離によるか、あるいは抗CD9抗体(一般的なEVマーカー)、抗CD45抗体(一般的な白血球マーカー)、抗CD61抗体(一般的な血小板マーカー)、または抗CD235抗体(一般的な赤血球マーカー)を用いる、200nmのポロシティのポリエーテルスルホン製HF装置を介する濾過によるかのいずれかによって得られる、健康なドナーの血漿より捕捉される細胞外小胞の量を示す。
かくして、200nmのポロシティのポリエーテルスルホン製HF装置の使用が、サンプルにて、白血球、赤血球および血小板のいずれかより由来の細胞外小胞を困窮化させることが示される。
【0041】
実施例3:200nmの非HFのセルロース製カットフィルターは細胞外小胞の部分母集団を選択しない
図3は、遠心分離によるか、あるいは抗CD9抗体(一般的なEVマーカー)、抗CD45抗体(一般的な白血球マーカー)、抗CD61抗体(一般的な血小板マーカー)、または抗CD235抗体(一般的な赤血球マーカー)を用いる、200nmの非HFのセルロース製フィルターを介する濾過によるかのいずれかによって得られる、血漿より捕捉される細胞外小胞の量を示す。
かくして、かかるフィルターは、サンプルにて、白血球、赤血球および血小板のいずれかより由来の細胞外小胞を困窮化させないことが示される。
【0042】
実施例4:200nmのHF装置はこの大きさより下位にある粒子を真に選択する
図4は、(A)全血を遠心分離に付すことにより得られる血漿サンプル、および(B)全血を200nmのポロシティのポリエーテルスルホン製HF装置を介して濾過することにより得られる血漿サンプル、において得られる微小小胞の低分子RNA電気泳動図を示す。
これらのデータは、HF装置を介する濾過により得られる血漿には、遠心分離によって得られる血漿中に存在する特定の微小小胞が枯渇していることを示す。これらの微小小胞は文献から200nmより大きいことが知られており(Van der Polら)、かくして200nmのポロシティはこの大きさより下位にある粒子を真に選択する。
【0043】
実施例5:BRAFV600E陽性腫瘍のエクソソームは、200nmのHF装置で濾過した後の全血より得られる血漿中にて効率よく回収される
図5は、材料および方法において上記されるように、腫瘍エクソソームでスパイクされる、全血サンプルを遠心分離に付すか、または200nmのポリエーテルスルホン製HF装置を通して濾過するかのいずれかに付した後に測定される、かかる腫瘍エキソソーム中の、BRAFV600E変異のレベル(A)、またはBRAFV600EとBRAFWTの割合(B)を示す。
【0044】
そこでは、本発明の方法は、古典的な遠心分離方法と比べ、血漿サンプル中に認められる腫瘍エクソソームのレベルを有意に変化させないことが示される。
その上で、図5Bにおける違いは、BRAFWTを有する細胞外小胞における困窮化の結果として、本発明の方法がBRAFWTのレベルをどのように下げるかを強調する。
【0045】
実施例6:200nmのポロシティを用いるHF濾過は、代謝マーカーTM9SF4の偽陽性シグナルを除去する
図6は、遠心分離によるか、あるいは抗CD9抗体(一般的なEVマーカー)、または抗TM9SF4抗体(糖分解スイッチを受けている腫瘍実質細胞と間質細胞の両方に由来するが(Lozuponeら、2009;Lozuponeら、2015)、活性化された造血細胞にも由来する(Paolilloら)エクソソーム上で発現する代謝マーカー)を用いる、200nmのポロシティのポリエーテルスルホン製HF装置を介する濾過によるかのいずれかによって得られる、健康なドナーの血漿より捕捉されるエクソソームの量を示す。
【0046】
本発明の方法で得られる、健康なドナーの血漿からのTM9SF4陽性エクソソームのレベルは、陽性検出のために設定された診断閾値(点線)の下方にあることが図示される。反対に、遠心分離に付すことで得られる健康なドナーの血漿からのTM9SF4陽性エクソソームのレベルは、かかる診断閾値よりも上方にあり、偽陽性検出をもたらす。該結果は、HF濾過が血球の活性化による交絡効果を大幅に減少させ、実質細胞および間質細胞からのエクソソームでのバイオマーカーの検出を容易にすることを示唆する。
【0047】
実施例7:血液のHF濾過は血漿の脂質異常性指数を減少させる
図7は、遠心分離に付すか、200nmのポロシティのポリエーテルスルホン製HF装置を通して濾過した後の健康なドナーの血液より得られる3つの血漿サンプルの脂質異常性指数を示す。結果は、HF濾過が、遠心分離操作と比べて、3つの血漿サンプルの全てで脂質異常性指数を減らすことを示す。この結果は、少なくとも一部では、トリグリセリドに富むカイロミクロン、すなわち直径が70nm~1000nmの範囲にある小胞の減少によって説明され得る(De Haeneら)。
【0048】
実施例8:HF濾過による脂質異常性指数の減少は変異回復を改善する
図8は、遠心分離に付すか、200nmのポロシティのポリエーテルスルホン製HF装置を通して濾過することで得られる健康なドナーの血漿にてスパイクされる腫瘍エクソソーム中のBRAFV600E変異コピーのレベル(コピー数/mL)を示す。結果は、より多くの変異コピーが遠心分離に付した血漿よりもHF濾過に付した血漿から回収されることを示す。この変異回収の改善は、同じ血漿サンプルのセットで観察される脂質異常性指数の減少が観察されることと相関する。
【0049】
実施例9:脂質異常性血漿サンプルのHF濾過はその脂質異常性指数を減少させる
図9は、遠心分離に付すか、200nmのポロシティのポリエーテルスルホン製HF装置を通して濾過する前後の、3つの脂質異常性血漿サンプルの脂質異常性指数を示す。結果は、HF濾過が、遠心分離と比べて、3つすべての脂質異常性血漿サンプルの脂質異常性指数を低下させ、該装置のトリグリセリドに富むカイロミクロンのレベルを低下させる能力と一致することを示す。
【0050】
実施例10:500nmの細孔を備えた中空糸(HF)装置はナノ粒子に富む血漿を血液から効果的に分離する
図10は、遠心分離機、200nmのポロシティまたは500nmのポロシティのポリエーテルスルホン製フィルターのいずれかを用いて、全血から得られた血漿をナノ追跡分析(NTA)に供したナノ粒子の総数を示す。
かくして、500nmのポロシティを有するHFフィルターは、遠心分離機および200nmのポロシティを有するHFフィルターと比べて、同様のナノ粒子の総数を得ることができることが示される。予想通り、ナノ粒子の平均の大きさは、遠心分離機および200nmのポロシティを有するHFフィルターと比べて、500nmのHFフィルターでわずかに増加した。
【0051】
実施例11:全血の500nmHF濾過で得られる血漿は遠心分離で得られる血漿よりも赤血球および白血球由来の細胞外小胞が少ない
図11は、遠心分離によるか、あるいは抗CD9抗体(遺伝的EVマーカー)、抗CD45抗体(遺伝的白血球マーカー)、抗CD61抗体(遺伝的血小板マーカー)、または抗CD235抗体(遺伝的赤血球マーカー)を用いる500nmのポロシティのポリエーテルスルホン製HF装置を介する濾過によるか、のいずれかによって得られる健康なドナーの血漿より捕捉される細胞外小胞の量を示す。
このように、500nmのポロシティのポリエーテルスルホン製HF装置の使用は、サンプルにて、白血球および赤血球のいずれかより由来の細胞外小胞を困窮化させるが、血小板由来の細胞外小胞については有意な効果のなかったことが分かる。
【0052】
実施例12:HF濾過により、転移性黒色腫患者の血漿中の野生型BRAF遺伝子のレベルが減少する
図12は、遠心分離によるか、または200nmのポロシティのHF装置を通して濾過することによって得られる、5人の転移性黒色腫患者の血漿中の野生型BRAF遺伝子コピーのレベル(コピー数/mL)を示す。結果は、HF装置を用いて得られた5人の血漿サンプルの中の4つが、遠心分離によって得られるものよりもBRAF遺伝子コピー数が有意に少なかったことを示す。この結果はHF濾過ががん患者の血漿中の野生型DNAのレベルを減少させることを示す。
【0053】
実施例13:HF濾過は転移性黒色腫患者の血漿中のBRAFV600E変異の対立遺伝子頻度を改善する
図13は、遠心分離によるか、または200nmのポロシティのポリエーテルスルホン製HF装置を通して濾過することによって得られる、3人の転移性黒色腫患者の血漿中のBRAFV600E変異の対立遺伝子頻度を示す。結果は血漿のHF濾過が各サンプルにおいてBRAFV600Eの対立遺伝子頻度を改善することを示す。この結果はこれらのサンプルにおいて観察される野生型BRAF遺伝子コピーのレベルの減少と一致する。
【0054】
実施例14:200nmのポロシティを用いるHF濾過は腫瘍エキソソームの血漿からの検出を容易にする
図14は、遠心分離によるか、あるいは抗TM9SF4抗体(糖分解スイッチを受けている腫瘍実質細胞と間質細胞の両方に由来するエキソソーム上で発現する代謝マーカー)を用いる200nmのポロシティのポリエーテルスルホン製HF装置を通して濾過するかのいずれかによって、腫瘍エキソソームをスパイクした血液より得られる血漿より捕捉される腫瘍エクソソームの量を示す。
【0055】
TM9SF4陽性腫瘍エキソソームのレベルが、200nmのポロシティのポリエーテルスルホン製HF装置を通して濾過した、腫瘍エキソソームをスパイクした血液より得られる血漿中にて増大することが分かる。反対に、遠心分離によって血液より得られる血漿中では、血液由来の小胞によって作り出される高バックグラウンドのノイズに起因して、TM9SF4陽性腫瘍エキソソームのレベルに変化は観察されない。結果は、HF濾過が血球の活性化による交絡効果を大幅に減少させ、腫瘍エクソソームでのバイオマーカーの検出を容易にすることを示唆する。
【0056】
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図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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