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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】紫外線硬化性シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20230828BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20230828BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20230828BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20230828BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20230828BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
H01L23/30 R
C09J183/04
C09J11/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022577633
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(86)【国際出願番号】 JP2022045907
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2021205233
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000221111
【氏名又は名称】モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】望月 紀久夫
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-220384(JP,A)
【文献】特開2013-087199(JP,A)
【文献】特開2015-110752(JP,A)
【文献】特開2015-214637(JP,A)
【文献】国際公開第2013/084425(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/240122(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/240124(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/111141(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
H01L23/28- 23/31
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、アルケニル基含有量が平均して0.025~0.049mmol/gであるポリオルガノシロキサン;
(B)1分子中に少なくとも3個の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン;及び
(C)紫外線により活性化する白金系触媒
を含む、紫外線硬化性シリコーン組成物であって、
(A)成分は、分子主鎖の両末端に各1つのビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンのみを含み、
(B)成分は、(B1)3~6個のSiO 4/2 単位及び6~12個のc1 HSiO1/2単位(式中、Rc1は、独立して、C-Cアルキル基又はC-C20アリール基である)が結合しているポリオルガノハイドロジェンシロキサンのみを含み、
(B)成分は、(A)成分のアルケニル基1モルに対して、ケイ素原子に結合した水素原子の数が1.~1.モルの範囲であり、
(C)成分は、環状ジエン化合物を配位子に有する白金系触媒である、紫外線硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
(B)成分のケイ素原子に結合した水素原子の含有量が、平均して5.5mmol/g以上である、請求項1に記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
第1剤及び第2剤からなる紫外線硬化性シリコーン組成物であって、
第1剤が(A)成分及び(C)成分を含み、(B)成分を含まず;第2剤が(B)成分を含み、(C)成分を含まない、請求項1又は2に記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の紫外線硬化性シリコーン組成物の硬化物を含む、封止材。
【請求項5】
電子部品封止材、光学部品封止材又は貼り合わせ材である、請求項に記載の封止材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化性シリコーン組成物に関し、特に、その硬化物が電子部品封止材、光学部品封止材、貼り合わせ材等の封止材に好適に使用できる紫外線硬化性シリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の半導体素子、これらの半導体素子、コンデンサ、抵抗器等を実装した電気・電子部品;レンズ、ミラー、フィルター、プリズム等の光学部品等における弾性接着剤、封止材、コーティング材、電気絶縁シール材等として、耐熱性に優れ、これらの部品に対する良好な密着性及び接着性が得られることから、シリコーン組成物が使用されている。特に、ヒドロシリル化を利用した紫外線硬化性付加反応型のシリコーン組成物は、短時間の紫外線照射により硬化するため生産性に優れ、部材同士を良好に接着させることができるため、広く使用されている。
【0003】
このような紫外線硬化性シリコーン組成物として、特許文献1には、(A)1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を平均0.1個以上有するオルガノポリシロキサン;(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン;及び(C)光活性型白金錯体硬化触媒:を所定の割合で含有する、対物レンズ駆動装置用ダンピング材用の紫外線硬化性オルガノポリシロキサンゲル組成物が開示されており、所定のポリマー設計上の利点と、紫外線照射による速硬化性とを兼ね備えた組成物とすることができることが示されている。
【0004】
また、特許文献2には、(A)25℃における粘度が50~100,000mPa・sであり、1分子中に少なくとも2つのアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン;(B)ケイ素原子に直結した水素原子(Si-H基)を分子鎖の両側の末端のみに有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン等のオルガノハイドロジェンポリシロキサン;及び(C)特定の化合物群から選ばれる1種以上の光活性型ヒドロシリル化反応触媒;を所定の割合で含み、所定の粘度を有する画像表示装置用紫外線硬化型液状シリコーン組成物が開示されており、100℃以下の温和な温度条件において数分から数十分で硬化が可能であり、機械特性及び光学特性が良好な硬化物を与えることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-213132号公報
【文献】特開2019-210351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に開示されている紫外線硬化性シリコーン組成物は、紫外線の照射により硬化して、所定の機械特性及び光学特性を示すものの、組成物の保存安定性が悪く、経時により組成物の粘度が上昇したり、組成物の硬化性が変動し、硬化物の品質が安定しなかったりする問題があった。
保存安定性の問題を解決すべく、2剤型の組成物とすることも行われている。しかし、その場合でも、2剤のうちの1剤である光活性型硬化触媒を含む組成物は、経時により粘度及び硬化性の変動が見られ、保存安定性を改善した2剤型の紫外線硬化性シリコーン樹脂組成物が、求められている。
【0007】
本発明は、硬化性及び保存安定性に優れた紫外線硬化性シリコーン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、紫外線硬化性シリコーン組成物を構成するアルケニル基含有ポリオルガノシロキサン及びポリオルガノハイドロジェンシロキサンに着目し、鋭意研究を重ねた結果、該ポリオルガノシロキサン中のアルケニル基含有量を所定の範囲内とし、所定のポリオルガノハイドロジェンシロキサンを使用することにより、硬化性を損なうことなく、組成物の保存安定性を改善できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
本発明は、以下の[1]~[9]に関する。
[1](A)1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、アルケニル基含有量が平均して0.3mmol/g以下であるポリオルガノシロキサン;(B)1分子中に少なくとも3個の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン;及び(C)紫外線により活性化する白金系触媒を含む、紫外線硬化性シリコーン組成物。
[2](A)成分におけるアルケニル基がビニル基であり、ビニル基の含有量が平均して0.001~0.3mmol/gである、[1]に記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
[3](B)成分のケイ素原子に結合した水素原子の含有量が、平均して5.5mmol/g以上である、[1]又は[2]に記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
[4](B)成分が、(B1)Rc1 HSiO1/2単位(式中、Rc1は、独立して、C-Cアルキル基又はC-C20アリール基である)及びSiO4/2単位を含むポリオルガノハイドロジェンシロキサンを含む、[1]~[3]のいずれか1つに記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
[5](B1)成分が、3~6個のSiO4/2単位及び6~12個のRc1 HSiO1/2単位が結合しているポリオルガノハイドロジェンシロキサンである、[4]に記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
[6](C)成分が環状ジエン化合物を配位子に有する白金系触媒である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
[7]第1剤及び第2剤からなる紫外線硬化性シリコーン組成物であって、第1剤が(A)成分及び(C)成分を含み、(B)成分を含まず;第2剤が(B)成分を含み、(C)成分を含まない、[1]~[6]のいずれか1つに記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
[8][1]~[7]のいずれか1つに記載の紫外線硬化性シリコーン組成物の硬化物を含む、封止材。
[9]電子部品封止材、光学部品封止材又は貼り合わせ材である、[8]に記載の封止材。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、硬化性及び保存安定性に優れた紫外線硬化性シリコーン組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
紫外線硬化性シリコーン組成物は、(A)1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、アルケニル基含有量が平均して0.3mmol/g以下であるポリオルガノシロキサン;(B)1分子中に少なくとも3個の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン;及び(C)紫外線により活性化する白金系触媒を含む。(A)成分のアルケニル基含有量を平均して0.3mmol/g以下とし、(B)1分子中に少なくとも3個の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンを使用することにより、硬化性及び保存安定性に優れた紫外線硬化性シリコーン組成物とすることができる。
【0012】
本明細書において用いられる場合、「有機基」とは、炭素を含有する基を意味する。有機基の価数はnを任意の自然数として「n価の」と記載することにより示される。したがって、例えば「1価の有機基」とは、結合手を1つのみ有する、炭素を含有する基を意味する。結合手は、炭素以外の元素が有していてもよい。価数を特に明示しない場合でも、当業者であれば文脈から適した価数を把握することができる。
【0013】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」とは、炭素及び水素を含む基であって、分子から少なくとも1個の水素原子を脱離させた基を意味する。かかる炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、1つ又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい、炭化水素基としては、炭素数1~20の炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよく、飽和又は不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つ又はそれ以上の環構造を含んでいてもよい。なお、かかる炭化水素基は、その末端又は分子鎖中に、1つ又はそれ以上の窒素原子(N)、酸素原子(O)、硫黄原子(S)、ケイ素原子(Si)、アミド結合、スルホニル結合、シロキサン結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基等の、ヘテロ原子又はヘテロ原子を含む構造を有していてもよい。
【0014】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子;1個又はそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、5~10員の不飽和ヘテロシクリル基、C6-10アリール基及び5~10員のヘテロアリール基から選択される基が挙げられる。
【0015】
本明細書において、アルキル基及びフェニル基は、特記しない限り、非置換であっても、置換されていてもよい。かかる基の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の基が挙げられる。
【0016】
本明細書においてシロキサン化合物の構造を説明する場合、シロキサン化合物の構造単位を以下のような略号によって記載することがある。以下、これらの構造単位をそれぞれ「M単位」「D単位」等ということがある。
M:(CHSiO1/2
:H(CHSiO1/2
Vi:CH=CH(CHSiO1/2
D:(CHSiO2/2
:H(CH)SiO2/2
Vi:CH=CH(CH)SiO2/2
T:CHSiO3/2
Q:SiO4/2(四官能性)
シロキサン化合物は、上記の構造単位を組み合わせて構築されるものであるが、上記構造単位のメチル基がフッ素のようなハロゲン、フェニル基のような炭化水素基等、他の基に置き換わったものを少なくとも部分的に含んでいてもよい。また、例えばD 2020と記した場合には、D単位が20個続いた後D単位が20個続くことを意図するものではなく、各々の単位は任意に配列していてもよいことが理解される。シロキサン化合物は、T単位又はQ単位により、3次元的に様々な構造を取ることができる。
【0017】
<(A)1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、アルケニル基含有量が平均して0.3mmol/g以下であるポリオルガノシロキサン>
(A)成分は、1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、アルケニル基含有量が平均して0.3mmol/g以下であるポリオルガノシロキサンである。(A)成分は、紫外線硬化性シリコーン組成物のベースポリマーとして機能する。アルケニル基は、分子主鎖の分子鎖末端に結合していても、分子鎖途中の側鎖に結合していても、両方に結合していてもよい。本明細書において、分子主鎖とは、分子中で相対的に最も長い結合鎖を表す。(A)成分の分子構造は、シロキサン結合が主骨格であるものであれば、特に制限されず、直鎖状、分岐鎖状、環状又は三次元網目状のいずれでもよく、シロキサン骨格が2価の有機基により中断されていてもよい。(A)成分は、単独でも、二種以上を併用してもよい。
【0018】
(A)成分は、1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有する。(A)成分は、1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有する複数のポリオルガノシロキサンの混合物であることができる。例えば、(A)成分は、1分子中に1個のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンと、1分子中に2個以上のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンとの混合物であることができる。硬化性を向上させ、硬化物に適度な硬度を与える観点から、(A)成分は、(A)成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンを30質量%以上含むことが好ましく、50質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことがさらに好ましい。(A)成分100質量%に対する、1分子中に2個以上のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンの含有量の上限は100質量%である。
なかでも、硬化性及び保存安定性のバランスを図り、硬化物に適度な硬度を与える観点から、(A)成分は、1分子中に2個のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンを含むことが好ましく、分子主鎖の両末端に各1つのアルケニル基を有する直鎖状のポリオルガノシロキサンを含むことがより好ましい。この場合、(A)成分は、(A)成分100質量%に対して、1分子中に2個のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンを30質量%以上含むことが好ましく、50質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことがさらに好ましい。(A)成分100質量%に対する、1分子中に2個のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンの含有量の上限は100質量%である。
【0019】
(A)成分のアルケニル基含有量は、平均して0.3mmol/g以下である。アルケニル基含有量を上記範囲とすることにより、硬化性及び保存安定性がともに優れた紫外線硬化性シリコーン組成物とすることができる。ここで、(A)成分が、1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有する複数のポリオルガノシロキサンの混合物である場合、(A)成分のアルケニル基含有量は、該混合物の平均値である。
(A)成分のアルケニル基含有量は、H NMR測定により、CH=CH-基及びCH-基のピーク面積から、CH=CH-基及びCH-基のモル比を求め、該モル比から特定される(A)成分の分子量とCH=CH-基のモル数とから算出される値である。また、H NMR測定に加え、29Si NMR測定により各単位(MVi単位、D単位等)の比を算出した結果を併用してもよい。
(A)成分が複数のポリオルガノシロキサンの混合物である場合、(A)成分のアルケニル基含有量は、上記内容で測定されるのが好ましいが、各ポリオルガノシロキサンのアルケニル基含有量とその混合比が判明している場合、それぞれのアルケニル基含有量にその混合比を乗じた値を合計して算出される平均値を、前記(A)成分のアルケニル基含有量としてもよい。
【0020】
硬化性と保存安定性のバランスの観点から、(A)成分のアルケニル基含有量は、平均して0.001~0.3mmol/gであることが好ましく、0.003~0.24mmol/gであることがより好ましく、0.010~0.20mmol/gであることがさらに好ましく、0.025~0.10mmol/gであることがさらにより好ましい。
【0021】
アルケニル基は、炭素-炭素二重結合を有しており付加反応が可能な基であれば特に制限はされない。アルケニル基の炭素数は、2~20であることが好ましく、2~8であることがより好ましく、2~6であることがさらに好ましい。アルケニル基は分岐構造又は環構造を有していてもよい。アルケニル基を構成する炭化水素における炭素-炭素二重結合の位置は、任意の位置を採ることができる。反応性の点から、炭素-炭素二重結合は基の末端にあることが好ましい。アルケニル基の好ましい例としては、ポリオルガノシロキサンの合成が容易であることから、ビニル基が挙げられる。すなわち、(A)成分におけるアルケニル基がビニル基であり、ビニル基の含有量が平均して0.001~0.3mmol/gであることが好ましい。
【0022】
本発明の一態様において、(A)成分は、1分子中に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも1個有する。(A)成分は、後述する(B)成分のヒドロシリル基(Si-H基)との付加反応により、網状構造を形成する。(A)成分は、代表的には、一般式(1):
SiO(4-m-n)/2 (1)
(式中、
は、脂肪族不飽和結合を有しない、非置換又は置換の1価の炭化水素基であり;
は、アルケニル基であり;
mは、0~2の整数であり;
nは、1~3の整数であり、但し、m+nは1~3である。)
で示されるアルケニル基含有シロキサン単位を、分子中に少なくとも1個有する。
【0023】
は、脂肪族不飽和結合を有しない、非置換又は置換の1価の炭化水素基である。R1は、具体的には、アルキル基、例えばC-Cアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル等);シクロアルキル基、例えばC~C10シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル等);アリール基、例えばC~C20アリール基(例えば、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、アントラセニル等);アラルキル基、例えばC~C13アラルキル基(例えば、2-フェニルエチル、2-フェニルプロピル等);置換炭化水素基、例えばハロゲン置換炭化水素基(例えば、クロロメチル、クロロフェニル、3,3,3-トリフルオロプロピル等)が挙げられる。合成の容易さ等の点からアルキル基が好ましく、中でもメチル、エチル及びプロピルが好ましく、より好ましくはメチルである。屈折率を調整するために、アリール基を併用することができ、中でも、合成の容易さ等の点からフェニルが好ましい。
【0024】
硬化性及び保存安定性に優れた紫外線硬化性シリコーン組成物を得る観点から、(A)成分は、分子主鎖の両末端に各1つのアルケニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンを含むことが好ましい。本発明の一態様において、直鎖状ポリオルガノシロキサンは、例えば、式(I):
【化1】

(式中、
a1は、独立して、C-Cアルケニル基であり、
b1は、独立して、C-Cアルキル基又はC-C20アリール基であり、
n1は、直鎖状ポリオルガノシロキサンのアルケニル基含有量を平均して0.3mmol/g以下とする数である)で表すことができる。
【0025】
-Cアルケニル基は、例えば、ビニル基、アリル基、3-ブテニル基、及び5-ヘキセニル基等が挙げられる。C-Cアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。C-C20アリール基は、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントラセニル基等が挙げられる。
【0026】
a1は、合成が容易で、また硬化前の組成物の流動性及び硬化物の耐熱性を損ねないという点から、ビニル基が好ましい。Rb1は、合成が容易で、組成物の流動性、硬化物の機械的強度等のバランスが優れているという点から、C-Cアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。よって、(A)成分は、両末端がジメチルビニルシロキサン単位で閉塞され、中間単位がジメチルシロキサン単位からなるポリメチルビニルシロキサンが好ましい。
(A)成分100質量%中の、両末端がジメチルビニルシロキサン単位で閉塞され、中間単位がジメチルシロキサン単位からなるポリメチルビニルシロキサンの含有量は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。前記含有量の上限は100質量%である。
【0027】
(A)成分は、両末端がジメチルビニルシロキサン単位で閉塞され、中間単位がジメチルシロキサン単位からなるポリメチルビニルシロキサンと、その他の直鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンとの混合物であってもよい。
【0028】
本発明の好ましい一態様において、(A)成分におけるアルケニル基がビニル基であり、ビニル基の含有量が0.001~0.3mmol/gである。硬化性と保存安定性のバランスの観点から、(A)成分のビニル基の含有量は、平均して0.001~0.3mmol/gであることが好ましく、0.003~0.24mmol/gであることがより好ましく、0.010~0.20mmol/gであることがさらに好ましく、0.025~0.10mmol/gであることがさらにより好ましい。
【0029】
(A)成分は、市販されているものを利用することができる。また、公知の反応によりアルケニル基を導入したポリオルガノシロキサンを用いてもよい。(A)成分としては、置換基の位置又は種類、重合度等により区分して、1種類の化合物のみを用いてもよいし、2種類以上の化合物を混合して用いてもよい。(A)成分はポリオルガノシロキサンであるので、種々の重合度を有するポリオルガノシロキサンの混合物であってもよい。
【0030】
取り扱い性、硬化性及び保存安定性のバランスの観点から、(A)成分の配合量は、紫外線硬化性シリコーン組成物100質量%に対して70.0~99.8質量%であることが好ましく、80.0~99.7質量%であることがより好ましく、90.0~99.7質量%であることがさらに好ましい。
【0031】
<(B)1分子中に少なくとも3個の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン>
(B)成分は、1分子中に少なくとも3個の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンである。(B)成分は、架橋剤として機能し、(A)成分のアルケニル基との付加反応により、網状構造を形成する。(B)成分は、1分子中に2個の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンに比べ、組成物の硬化性に優れ、(A)成分と網状構造を形成できるため、(A)成分のように、アルケニル基含有量が少ないポリオルガノシロキサンを使用した場合でも、保存安定性を維持しつつ、硬化性及び硬化物の機械的特性に優れた組成物とすることができる。
【0032】
(B)成分の水素原子は、分子鎖末端のケイ素原子に結合していても、分子鎖途中のケイ素原子に結合していても、両方に結合していてもよい。(B)成分の分子構造は、シロキサン結合が主骨格であるものであれば、特に制限されず、直鎖状、分岐鎖状、環状又は三次元網目状のいずれでもよく、シロキサン骨格が2価の有機基により中断されていてもよい。また、(B)成分は、ケイ素原子に結合した水酸基又はメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基を有していてもよい。(B)成分は、単独でも、二種以上を併用してもよい。
【0033】
(B)成分は、代表的には、一般式(2):
SiO(4-p-q)/2 (2)
(式中、
は、脂肪族不飽和結合を有しない、非置換又は置換の1価の炭化水素基であり;
pは、0~2の整数であり;
qは、1~3の整数であり、但し、p+qは1~3である。)
で示されるケイ素原子に結合した水素原子を含有するシロキサン単位を、分子中に少なくとも3個有する。Rとしては、一般式(1)におけるRと同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。(B)成分において、ケイ素原子に結合した水素原子は、一分子中、3~100個であることが好ましく、より好ましくは、5~50個である。
【0034】
組成物の硬化性及び硬化物の機械的特性の観点から、(B)成分のケイ素原子に結合した水素原子の含有量は、平均して5.5mmol/g以上であることが好ましく、6.0~12.0mmol/gであることがより好ましく、7.0~11.0mmol/gであることがさらに好ましく、8.0~11.0mmol/gであることが特に好ましい。
【0035】
硬化性及び硬化物の機械的特性を確保する観点から、(B)成分は、(B1)Rc1 HSiO1/2単位(式中、Rc1は、独立して、C-Cアルキル基又はC-C20アリール基である)及びSiO4/2単位を含むポリオルガノハイドロジェンシロキサンを含むことが好ましい。(B)成分が(B1)成分を含むことにより、硬化物を網状化して、硬度を調整するのに寄与することができる。(B1)成分は、分岐状、環状及び三次元網目構造(SiO4/2単位が密集した構造)のいずれであってもよい。Rc1は、合成の容易さ等の点から、C-Cアルキル基が好ましく、メチルが特に好ましい。
なかでも、(B1)成分は、3~6個のSiO4/2単位及び6~12個のRc1 HSiO1/2単位が結合しているポリオルガノハイドロジェンシロキサンであることが好ましく;[Rc1 HSiO1/2[SiO4/2、[Rc1 HSiO1/2[SiO4/2、[Rc1 HSiO1/210[SiO4/2、[Rc1 HSiO1/212[SiO4/2のように、3~6個のSiO4/2単位が環状シロキサン骨格を形成し、各SiO4/2単位に2個のRc1 HSiO1/2単位が結合している、環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンであることが特に好ましい。
【0036】
硬化性及び硬化物の機械的特性を確保する観点から、(B)成分100質量%に対する(B1)成分の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。(B)成分100質量%に対する(B1)成分の含有量の上限は、100質量%である。
【0037】
(B)成分の23℃における粘度は、1~100mPa・sが好ましく、1~50mPa・sがより好ましい。粘度は、JIS K 6249に準拠して、回転粘度計を用いて、No.1又は2ローター、60rps、23℃の条件で測定した値である。
【0038】
(B)成分は、市販されているものを利用することができる。また、公知の反応により(B)成分を合成することもできる。(B)成分としては、置換基の位置又は種類、重合度等により区分して、1種類の化合物のみを用いてもよいし、2種類以上の化合物を混合して用いてもよい。(B)成分はポリオルガノハイドロジェンシロキサンであるので、種々の重合度を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンの混合物であってもよい。
【0039】
取り扱い性、硬化性及び保存安定性のバランスの観点から、(B)成分は、(A)成分のアルケニル基1モルに対して、ケイ素原子に結合した水素原子の数が0.6~2.2モルの範囲となるように配合することが好ましく、0.8~1.8モルの範囲であることがより好ましく、1.0~1.6モルの範囲であることがさらに好ましく、1.2~1.4モルの範囲であることが特に好ましい。
【0040】
<(C)紫外線により活性化する白金系触媒>
(C)成分は、紫外線により活性化し、(A)成分のアルケニル基と、(B)成分のヒドロシリル基(Si-H基)との間の付加反応を促進するための触媒である。触媒活性が良好な観点から、(C)成分は、環状ジエン化合物を配位子に有する白金系触媒であると好ましい。(C)成分は、単独でも、二種以上を併用してもよい。
【0041】
環状ジエン化合物を配位子に有する白金系触媒としては、(1,5-シクロオクタジエニル)ジフェニル白金錯体、(1,5-シクロオクタジエニル)ジプロピル白金錯体、(2,5-ノルボラジエン)ジメチル白金錯体、(2,5-ノルボラジエン)ジフェニル白金錯体、(シクロペンタジエニル)ジメチル白金錯体、(メチルシクロペンタジエニル)ジエチル白金錯体、(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジフェニル白金錯体、(メチルシクロオクタ-1,5-ジエニル)ジエチル白金錯体、(シクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体、(シクロペンタジエニル)エチルジメチル白金錯体、(シクロペンタジエニル)アセチルジメチル白金錯体、(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体、(メチルシクロペンタジエニル)トリヘキシル白金錯体、(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体、(ジメチルフェニルシリルシクロペンタジエニル)トリフェニル白金錯体、(シクロペンタジエニル)ジメチルトリメチルシリルメチル白金錯体等を挙げることができる。
【0042】
(C)成分の配合量は、(A)成分及び(B)成分の合計質量に対して、白金金属質量として0.1~500ppmとなる量であることが好ましく、1~100ppmとなる量であることがより好ましく、3~70ppmとなる量であることがさらに好ましく、5~20ppmとなる量であることが特に好ましい。(C)成分の配合量が0.1ppm未満では、紫外線照射による付加反応が遅くなる、又は硬化しなくなる場合があり、500ppmを超えると、紫外線硬化性シリコーン組成物の保存安定性の悪化及び硬化物の黄変が発生しやすくなり、高コストになる。
【0043】
<その他の成分>
紫外線硬化性シリコーン組成物は、その目的・効果を損なうものでない限り、その他の成分を配合することができる。その他の成分としては、難燃剤、接着性付与剤、耐熱付与剤、希釈剤、フュームドシリカ等のチクソ性付与剤、無機又は有機顔料、付加反応硬化触媒の抑制剤、ポリオルガノシロキサン以外の樹脂等を適宜配合することができる。また、紫外線硬化性シリコーン組成物は、(A)成分以外のポリオルガノシロキサン、例えば、アルケニル基非含有のポリオルガノシロキサン;(B)成分以外のポリオルガノハイドロジェンシロキサン、例えば、1分子中に2個以下の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン;(C)成分以外の付加反応硬化触媒、例えば、加熱により活性化する付加反応硬化触媒;等を配合することができる。その他の成分は、それぞれ単独でも、2種以上の組合せであってもよい。
【0044】
<好ましい組成物の態様>
紫外線硬化性シリコーン組成物は、(A)~(C)成分をすべて含む1液型の組成物であってもよく;組成物の保存安定性のいっそうの改善を考慮して、(B)成分及び(C)成分をそれぞれ別の容器に含む2液型の組成物であってもよい。
2液型の組成物とする場合、第1剤が(A)成分及び(C)成分を含み、(B)成分を含まず;第2剤が(B)成分を含み、(C)成分を含まないことが好ましい。この場合、第2剤は、(A)成分を含んでいてもよい。2液型の組成物では、使用時に第1剤及び第2剤を混合し、紫外線硬化性シリコーン組成物を作製する。
実施例では、(A)成分のアルケニル基と(C)成分との相互作用が保存安定性に与える影響のみに焦点を当てるべく、(A)成分及び(C)成分のみからなる第1剤と、(B)成分のみからなる第2剤と、からなる2液型の組成物について、第1剤についてのみエージング処理を行い、評価を行っている。(A)成分及び(C)成分に加え、(B)成分をさらに含む1液型の組成物についても同様に、(A)成分の使用によって、組成物の保存安定性は改善される。
【0045】
<紫外線硬化性シリコーン組成物の製造方法>
1液型の紫外線硬化性シリコーン組成物は、(A)~(C)成分、さらに必要に応じてその他の成分をプラネタリー型ミキサー等の混合機で混合することにより得ることができる。混合時には、必要に応じて50~150℃の範囲で加熱しながら混合してもよい。紫外線硬化性シリコーン組成物が粉体を含む場合、均一仕上げのために、高剪断力下で混練操作を行うことが好ましい。混練装置としては、3本ロール、コロイドミル、サンドグラインダー等があるが、中でも3本ロールによる方法が好ましい。
【0046】
2液型の紫外線硬化性シリコーン組成物では、第1剤及び第2剤を別々に調製する。第1剤は、(A)成分、(C)成分、さらに必要に応じてその他の成分をプラネタリー型ミキサー等の混合機で混合することにより得ることができる。第2剤は、(B)成分、さらに必要に応じて(A)成分及びその他の成分をプラネタリー型ミキサー等の混合機で混合することにより得ることができる。混合時には、必要に応じて50~150℃の範囲で加熱しながら混合してもよい。第1剤及び/又は第2剤が粉体を含む場合、1液型の紫外線硬化性シリコーン組成物と同様に、混練操作を行うことが好ましい。
【0047】
紫外線硬化性シリコーン組成物は、23℃における粘度が、塗布時の展延性の点から、100,000mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは、50~50,000mPa・sである。紫外線硬化性シリコーン組成物が第1剤及び第2剤からなる2液型の組成物である場合、第1剤及び第2剤の粘度は、好ましくは、10~100,000mPa・sであり、より好ましくは、50~50,000mPa・sであり、特に好ましくは、100~20,000mPa・sである。紫外線硬化性シリコーン組成物は、遮光下、常温以下の温度で保存されるのが好ましい。紫外線硬化性シリコーン組成物、第1剤及び第2剤の粘度は、粘弾性測定装置を使用し、25mmコーンプレートを用い、せん断速度10/s、23℃の条件で測定した値である。
【0048】
<紫外線硬化性シリコーン組成物の硬化方法>
紫外線硬化性シリコーン組成物は、紫外線の照射により硬化させることができる。照射量は、100~10,000mJ/cmが好ましく、より好ましくは300~6,000mJ/cmであり、さらに好ましくは500~5,000mJ/cmである。なお、照射量は、UVAの測定値である。ここで、UVAは、315~400nmの範囲の紫外線をいう。組成物は、紫外線の波長、例えば、250~450nmの範囲を有する紫外線を照射したときの硬化性が良好である。このような波長の紫外線を放出する光源として、例えば、ウシオ電機株式会社製の高圧水銀ランプ(UV-7000)、メタルハライドランプ(UVL-4001M3-N1)、韓国:JM tech社製のメタルハライドランプ(JM-MTL 2KW)、三菱電機株式会社製の紫外線照射灯(OSBL360)、株式会社GSユアサ製の紫外線照射機(UD-20-2)、株式会社東芝製の蛍光ランプ(FL-20BLB))、Heraeus社製のHバルブ、Hプラスバルブ、Vバルブ、Dバルブ、Qバルブ及びMバルブ、シーシーエス株式会社製のLEDランプ(HLDL-155UV)等が挙げられる。
【0049】
組成物の硬化時間は、紫外線の照射量にもよるが、概ね30分以下であり、好ましくは10分以下である。組成物の硬化が進行したかどうかは、目視によって判断することもできるが、貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”が等しくなるまでの時間、貯蔵弾性率G’が所定の値に達するまでの時間等によって定量的に評価することもできる。例えば、紫外線照射後23℃の条件で、貯蔵弾性率G’が100Paに達するまでの時間が30分以内、好ましくは10分以内であると、硬化にかかる時間が短く取り扱い性に優れているといえるため、好ましい。
【0050】
紫外線硬化性シリコーン組成物の硬化物は、封止材として好適に使用することができる。紫外線硬化性シリコーン組成物の硬化物を封止剤として用いた物品は、接着面及び封止箇所の耐水性及び耐久性能に優れているため、該硬化物は、電子部品封止材、光学部品封止材又は貼り合わせ材として、好適に使用することができる。また、紫外線硬化性シリコーン組成物は、ポットライフ及び保存安定性に優れている。そのため、例えば、液晶、プラズマ、有機EL等の画像表示装置の貼り合わせ用の接着剤として、あるいは、LED素子又はOLED素子の封止のための封止剤として用いることができる。
【実施例
【0051】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。表示は、特に断りがない限り、質量部又は質量%である。
【0052】
<使用成分>
使用した各成分は、以下のとおりである。ここで、記号は以下を意味する。
M:(CHSiO1/2
:H(CHSiO1/2
Vi:CH=CH(CHSiO1/2
D:(CHSiO2/2
:H(CH)SiO2/2
Vi:CH=CH(CH)SiO2/2
Q:SiO4/2(四官能性)
【0053】
(A)成分:1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、アルケニル基含有量が平均して0.3mmol/g以下であるポリオルガノシロキサン
以下に示す、両末端がMVi単位で閉塞され、中間単位がD単位からなるポリメチルビニルシロキサンを使用した。
Vim1Vi(1):ビニル基含有量が平均して0.030mmol/g
Vim2Vi(2):ビニル基含有量が平均して0.049mmol/g
Vim3Vi(3):ビニル基含有量が平均して0.075mmol/g
Vim4Vi(4):ビニル基含有量が平均して0.178mmol/g
Vim5Vi(5):ビニル基含有量が平均して0.227mmol/g
【0054】
(A’)成分:(A)成分以外のポリオルガノシロキサン
Vim6Vi(6):ビニル基含有量が平均して0.341mmol/g
Vim7Vi(7):ビニル基含有量が平均して0.887mmol/g
Vim3Vi(3)/MDViQレジン=60/40:ビニル基含有量が平均して0.475mmol/g(MDViQレジンは、1分子中に5個のビニル基を有し、ビニル基含有量は、1.075mmol/gである。)
【0055】
なお、(A)及び(A’)成分のアルケニル基含有量は、H NMR測定により、CH=CH-基及びCH-基のピーク面積から、CH=CH-基及びCH-基のモル比を求め、該モル比から特定される(A)及び(A’)成分の分子量とCH=CH-基のモル数とからそれぞれ算出した。具体的には、(A)又は(A’)成分の5質量%重クロロホルム溶液を調製し、H NMR測定を行った。6ppm付近に現れるSiCH=CH基のピーク面積及び0ppm付近に現れるSiCH基のピーク面積から、CH=CH-基及びCH-基のモル比を求め、該モル比から(A)又は(A’)成分の分子量及びCH=CH-基のモル数を算出した。こうして得た(A)及び(A’)成分の分子量とCH=CH-基のモル数とから、(A)及び(A’)成分のアルケニル基含有量をそれぞれ算出した。
【0056】
(B)成分:1分子中に少なくとも3個の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン
平均単位式がM で示される架橋性ポリメチルハイドロジェンシロキサン(SiH量:10.78mmol/g)
【0057】
(C)成分:紫外線により活性化する白金系触媒
(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体(Strem Chemicals, Inc.社製(ドイツ)、白金量:61.1質量%)
【0058】
実施例1
紫外線による触媒の活性化を防止するため、(C)成分の取り扱いは、イエロールーム内で行った。(C)成分をMVim2Vi(2)により0.05質量%に希釈した。MVim1Vi(1)100質量部に、前記(C)成分の希釈液3.4質量部((C)成分:0.00170質量部、MVim2Vi(2):3.39830質量部)及び(B)成分0.36質量部を添加、混合して、実施例1の1液型紫外線硬化性シリコーン組成物を得た。
【0059】
実施例2~6及び比較例1~3
実施例1における(A)~(C)成分及びその配合量を、表1のように変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2~6及び比較例1~3の1液型紫外線硬化性シリコーン組成物を得た。
【0060】
【表1】
【0061】
<測定方法>
粘度及びゲル化時間の測定は、遮光条件下で行われた。
【0062】
[粘度]
粘弾性測定装置MCR301(Anton Paar社製)を使用し、紫外線硬化性シリコーン組成物の23℃における粘度(Pa・s)を、25mmコーンプレートを用い、せん断速度10/s、90秒値として測定した。結果を表2に示す。
【0063】
[ゲル化時間]
紫外線硬化性シリコーン組成物について、粘弾性測定装置MCR301(Anton Paar社製)を使用し、紫外線の照射前後の貯蔵弾性率G’を経時的に測定した。前記粘弾性測定装置を使用し、8mmパラレルプレートを用い、周波数1Hzにて、紫外線硬化性シリコーン組成物の23℃における貯蔵弾性率G’の測定を開始した。照度100mW/cmの紫外線を紫外線硬化性シリコーン組成物に10秒間照射(照射量1,000mJ/cm)し、照射開始時から貯蔵弾性率G’が100Paに達するまでの時間をゲル化時間とした。ゲル化時間が短いほど速硬化性であり、硬化性に優れていると判断した。なお、ゲル化時間の測定は、紫外線の照射開始60分後まで行い、その時点で貯蔵弾性率G’が100Paに達していない場合は、ゲル化時間:>60分とした。結果を表2に示す。
【0064】
[保存安定性]
実施例1~6及び比較例1~3の紫外線硬化性シリコーン組成物において、エージング処理が組成物の粘度及びゲル化時間に与える影響を調べた。
【0065】
実施例1-1
紫外線による触媒の活性化を防止するため、(C)成分の取り扱いは、イエロールーム内で行った。(C)成分をMVim2Vi(2)により0.05質量%に希釈した。MVim1Vi(1)100質量部に、前記(C)成分の希釈液3.4質量部((C)成分:0.00170質量部、MVim2Vi(2):3.39830質量部)を添加、混合して、第1剤を得た。第1剤を遮光性黒色の樹脂製容器に移し、密閉した。(B)成分をそのまま第2剤として使用した。このようにして、実施例1と同一配合である実施例1-1の2液型紫外線硬化性シリコーン組成物を得た。
【0066】
実施例2-1~6-1及び比較例1-1~3-1
実施例1-1における(A)~(C)成分及びその配合量を、表1のように変更した以外は実施例1-1と同様にして、実施例2-1~6-1及び比較例1-1~3-1の2液型紫外線硬化性シリコーン組成物を得た。
【0067】
実施例1-1~6-1及び比較例1-1~3-1の2液型紫外線硬化性シリコーン組成物において、各第1剤を含む遮光性容器を60℃に設定した乾燥機内に2週間保存し、エージング処理を行った。表1に示す配合に従い、エージング処理後の第1剤に、それぞれ第2剤を添加、混合して、紫外線硬化性シリコーン組成物を得た。こうして得た組成物について、粘度及びゲル化時間を測定した。結果を表2に示す。
さらに、1液型の組成物の粘度に対する、第1剤をエージング処理後に調製した組成物の粘度の変化率、及び1液型の組成物のゲル化時間に対する、第1剤をエージング処理後に調製した組成物のゲル化時間の変化量を算出した。結果を表2に示す。表中、n.d.は、測定不能であったことを示す。
【0068】
【表2】
【0069】
表2に示すとおり、(A)1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、アルケニル基含有量が平均して0.3mmol/g以下であるポリオルガノシロキサン;(B)1分子中に少なくとも3個の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン;及び(C)紫外線により活性化する白金系触媒を含む、実施例の紫外線硬化性シリコーン組成物は、ゲル化時間が短く、硬化性に優れ、かつ、第1剤をエージング処理後に調製した組成物の粘度及びゲル化時間の変化が少なく、保存安定性に優れていた。特に、(A)成分のアルケニル基含有量が平均して0.025~0.10mmol/gである実施例1~3及び1-1~3-1は、第1剤をエージング処理後に調製した組成物のゲル化時間の変化がよりいっそう少なく、また、エージング処理の有無に関わらず、ゲル化時間が短く、硬化性に優れており、好ましい。
【0070】
(A)成分の代わりに、1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、アルケニル基含有量が平均して0.3mmol/gを超えるポリオルガノシロキサンを用いた比較例1~3及び1-1~3-1の紫外線硬化性シリコーン組成物は、第1剤をエージング処理後に調製した組成物の粘度及びゲル化時間の変化が大きく、保存安定性が劣っており、また、エージング処理の有無に関わらず、ゲル化時間が長く、硬化性に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0071】
紫外線硬化性シリコーン組成物の硬化物は、電子部品封止材、光学部品封止材又は貼り合わせ材として有用である。
【要約】
硬化性及び保存安定性に優れた紫外線硬化性シリコーン組成物を提供する。
(A)1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、アルケニル基含有量が平均して0.3mmol/g以下であるポリオルガノシロキサン;(B)1分子中に少なくとも3個の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン;及び(C)紫外線により活性化する白金系触媒を含む、紫外線硬化性シリコーン組成物。