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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】油圧作動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/035 20120101AFI20230828BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20230828BHJP
   F16H 57/05 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
F16H57/035
F16H57/04 J
F16H57/05
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023500639
(86)(22)【出願日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2022001519
(87)【国際公開番号】W WO2022176474
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-04-24
(31)【優先権主張番号】P 2021026686
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕介
(72)【発明者】
【氏名】長岡 文一
(72)【発明者】
【氏名】金 暉
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-019889(JP,A)
【文献】特開2014-119049(JP,A)
【文献】特開2015-117723(JP,A)
【文献】特開2016-130541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/035
F16H 57/04
F16H 57/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケースに設けられた油路と、
前記ケースに設けられると共に、被支持部材を支持する支持部材と、を有する油圧作動装置であって、
前記油路は、当該油路と前記ケース内の空間とを連通する開口部を有し、
前記支持部材は、前記開口部に挿入されており、
前記油路と前記ケース内の空間との連通は、前記支持部材によって遮断されている、油圧作動装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記支持部材は、当該支持部材を前記油路の開口部に挿入する方向に沿う押圧力が付与された状態で、締結部材によってケースに固定されている、油圧作動装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記油路は、潤滑油を供給する潤滑油路である、油圧作動装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1において、
前記油圧作動装置は、無段変速機であって、
前記無段変速機は、
一対のプーリと、
前記一対のプーリに巻きかけられた無端環状部材と、を有しており、
前記被支持部材は、前記無端環状部材をガイドするガイド部材であり、
前記支持部材は、前記ガイド部材を支持する、油圧作動装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1において、
前記支持部材は、有底筒状を成しており、
前記支持部材の側壁には、当該側壁を貫通する貫通孔が形成されており、
前記支持部材は、開口端側から前記油路の開口部に挿入されていると共に、前記貫通孔が、前記油路と連通しており、
前記油路内の油は、前記開口端または前記貫通孔のいずれか一方から前記支持部材の内部空間に流入したのち、前記開口端または前記貫通孔の他方から前記油路に排出される、油圧作動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧作動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、油圧作動装置であるチェーン式無段変速機に設けられたチェーンガイドが開示されている。チェーンガイドは、支持部材を介して、ケースに取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-208796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のケースには、複数の油路が形成されている。
油路の一部は、ケースに開口している。油路の開口は、封止部材により封止される。
油圧作動装置において、部品点数の増加の低減が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様における油圧作動装置は、
ケースと、
前記ケースに設けられた油路と、
前記ケースに設けられると共に、被支持部材を支持する支持部材と、を有する油圧作動装置であって、
前記油路は、当該油路と前記ケース内の空間とを連通する開口部を有し、
前記支持部材は、前記開口部に挿入されており、
前記油路と前記ケース内の空間との連通は、前記支持部材によって遮断されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明のある態様によれば、部品点数の増加を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本実施形態にかかる無段変速機を説明する図である。
図2図2は、ケースを説明する図である。
図3図3は、ケースを説明する図である。
図4図4は、ケースを説明する図である。
図5図5は、バリエータにおけるチェーンガイドの配置を説明する図である。
図6図6は、チェーンガイドを説明する図である。
図7図7は、チューブ状部材を説明する図である。
図8図8は、チューブ状部材を説明する図である。
図9図9は、チューブ状部材を説明する図である。
図10図10は、チューブ状部材の配置を説明する図である。
図11図11は、リブを説明する図である。
図12図12は、ケース内油路を説明する図である。
図13図13は、ケース内油路を説明する図である。
図14図14は、変形例にかかる無段変速機を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のある態様における油圧作動装置の適用例として、車両用のチェーン式無段変速機を説明する。
【0009】
図1は、無段変速機1を説明する図である。
無段変速機1では、エンジン(図示せず)の回転駆動力が、トルクコンバータ2と前後進切替機構3とを介して、バリエータ4に入力される。回転駆動力は、バリエータ4で変速されたのち、リダクションギア5と差動装置6とを介して駆動輪(図示せず)に伝達される。
【0010】
バリエータ4は、一対のプーリ(プライマリプーリ41、セカンダリプーリ42)と、一対のプーリに巻き掛けられたチェーン43と、を有している。チェーン43は、複数のリンクプレート(図示せず)をロッカーピン(図示せず)で連結した無端環状部材である。
プライマリプーリ41とセカンダリプーリ42は、互いに平行な回転軸X1、X2回りに回転可能に設けられている。
【0011】
プライマリプーリ41は、固定プーリ411と、回転軸X1方向に変位可能な可動プーリ415と、を有している。
固定プーリ411と可動プーリ415は、回転軸X1の径方向に延びるシーブ部412、416を有している。これらシーブ部412、416は、互いに対向するシーブ面412a、416aを有する。シーブ面412a、416aは、回転軸X1に対して傾斜している。
【0012】
プライマリプーリ41では、これらシーブ面412a、416aの間に、チェーン43が巻き掛けられるV溝が設けられている。
プライマリプーリ41では、可動プーリ415の回転軸X1方向の変位により、V溝の溝幅が変更されて、プライマリプーリ41におけるチェーン43の巻き掛け半径が変更される。
【0013】
セカンダリプーリ42もまた、固定プーリ421と、回転軸X2方向に変位可能な可動プーリ425と、を有している。
固定プーリ421と可動プーリ425は、回転軸X2の径方向に延びるシーブ部422、426を有している。これらシーブ部422、426は、互いに対向するシーブ面422a、426aを有する。シーブ面422a、426aは、回転軸X2に対して傾斜している。
【0014】
セカンダリプーリ42では、これらシーブ面422a、426aの間に、チェーン43が巻き掛けられるV溝が設けられている。
セカンダリプーリ42では、可動プーリ425の回転軸X2方向の変位により、V溝の溝幅が変更されて、セカンダリプーリ42におけるチェーン43の巻き掛け半径が変更される。
【0015】
エンジンの回転駆動力は、トルクコンバータ2と前後進切替機構3とを介してプライマリプーリ41に入力される。プライマリプーリ41に入力された回転駆動力は、チェーン43を介してセカンダリプーリ42に伝達される。
このとき、プライマリプーリ41とセカンダリプーリ42におけるチェーン43の巻き掛け半径を変更することで、プライマリプーリ41に入力された回転駆動力が変速されて、セカンダリプーリ42に伝達される。
【0016】
セカンダリプーリ42に伝達された回転駆動力は、リダクションギア5に伝達される。リダクションギア5は、回転軸X2に平行な回転軸X3回りに回転可能に設けられている。リダクションギア5には、差動装置6のファイナルギア60が回転伝達可能に噛合している。
【0017】
よって、セカンダリプーリ42からリダクションギア5に伝達された回転駆動力は、ファイナルギア60を介して差動装置6に伝達される。そして、差動装置6に連結された駆動シャフト61が、回転軸X3に平行な回転軸X4回りに回転する。そして、駆動シャフト61が連結された駆動輪(図示せず)が、伝達された回転駆動力で回転する。
【0018】
これらトルクコンバータ2、前後進切替機構3、バリエータ4、リダクションギア5及び差動装置6は、変速機ケース10に収容される(図1参照)。
変速機ケース10は、コンバータハウジング11と、ケース12と、サイドカバー13と、から構成される。これらコンバータハウジング11とケース12とサイドカバー13は、回転軸X1方向で順番に重ね合わせられている。
【0019】
図1に示すように、コンバータハウジング11は、トルクコンバータ2を収容する。コンバータハウジング11は、回転軸X1方向でエンジンブロック(図示せず)に取り付けられる。コンバータハウジング11とエンジンブロックとは、ボルト(図示せず)で固定される。
【0020】
ケース12は、前後進切替機構3、バリエータ4、リダクションギア5及び差動装置6を収容する。ケース12は、回転軸X1方向でコンバータハウジング11に取り付けられる。ケース12とコンバータハウジング11とは、ボルトBで固定される。
【0021】
サイドカバー13は、回転軸X1方向でケース12に取り付けられる。サイドカバー13とケース12とは、ボルトBで固定される。
【0022】
図2は、ケース12をサイドカバー13側から見た斜視図である。
図3は、ケース12をサイドカバー13側から見た正面図である。
図4は、ケース12をコンバータハウジング11側から見た正面図である。
なお、図3では、バリエータ4を仮想線で記載してある。また、図4では、前後進切替機構3、リダクションギア5及びファイナルギア60を仮想線で記載してある。
図3では、サイドカバー13との接合面の位置を判り易くするために、接合面にハッチングを付して示している。図4では、コンバータハウジング11との接合面と、弧状壁123、124の位置を判り易くするために、接合面と、弧状壁123、124とにそれぞれハッチングを付して示している。
【0023】
図2に示すように、ケース12は、中間壁部125を有している。中間壁部125は、ケース12の内部空間に形成されている。中間壁部125は、回転軸X1、X2と交差する向きで形成されている。ケース12の内部空間は、中間壁部125によって、空間S1(図3参照)と、空間S2(図4参照)と、に区画される。空間S1は、回転軸X1、X2方向における中間壁部125の一方側(サイドカバー13側)に位置し、空間S2は、他方側(コンバータハウジング11側)に位置する。
【0024】
図3に示すように、空間S1は、中間壁部125を環状壁121で囲んで形成される凹部内の空間である。図4に示すように、空間S2は、中間壁部125を環状壁122で囲んで形成される凹部内の空間である。環状壁121と環状壁122は、中間壁部125から互いに離れる方向に延びている(図2における紙面前後方向)。
【0025】
ケース12の空間S1には、バリエータ4が収容される(図3における仮想線参照)。また、ケース12の空間S2には、前後進切替機構3、リダクションギア5及び差動装置6(ファイナルギア60)が収容される(図4における仮想線参照)。
【0026】
図3に示すように、ケース12の中間壁部125には、貫通孔125a、125bが形成されている。貫通孔125a、125bは、プライマリプーリ41とセカンダリプーリ42の回転軸X1、X2と交差する領域に形成されている。空間S1と空間S2は、これら貫通孔125a、125bを介して連通している。
【0027】
図4に示すように、ケース12の中間壁部125には、貫通孔125cが形成されている。貫通孔125cは、ファイナルギア60の回転軸X4と交差する領域に形成されている。空間S2は、貫通孔125cを介して、環状壁121の外側の領域(空間S1外の領域)とも連通している(図3参照)。
【0028】
図4に示すように、中間壁部125の空間S2側では、貫通孔125aを囲む弧状壁123と、貫通孔125cを囲む弧状壁124と、が形成されている。空間S2のうち、弧状壁123で囲まれた領域は、前後進切替機構3を収容する収容室R1を構成する。また、空間S2のうち、弧状壁124で囲まれた領域は、ファイナルギア60を収容するデフ室R2を構成する。
【0029】
図3に示すように、バリエータ4は、ケース12の空間S1内に収容されている。チェーン43は、空間S1内でプライマリプーリ41とセカンダリプーリ42とに巻き掛けられている。
プライマリプーリ41とセカンダリプーリ42との間の領域では、チェーン43は、シーブ面412a、416a(図1参照)、またはシーブ面422a、426a(図1参照)に接触していないため、振れやすい。そこで、無段変速機1は、チェーン43の振れを低減するためのチェーンガイド9A、9B(図5参照)を備えている。
【0030】
図5は、バリエータ4におけるチェーンガイド9A、9Bの配置を説明する図である。
なお、図5は、図3の仮想線で示したバリエータ4に対応している。また、図5では、説明の便宜上、一方のチェーンガイド9Aを断面の模式図で示すと共に、他方のチェーンガイド9Bを側面図で示している。また、チェーン43を簡略的に表記している。
【0031】
図5に示すように、チェーンガイド9A、9Bは、チェーン43におけるプライマリプーリ41とセカンダリプーリ42とに巻き掛けられていない領域に配置されている。
チェーンガイド9A、9Bは、直線Lm1を挟んで対称となる位置関係で配置されている。直線Lm1は、プライマリプーリ41の回転軸X1と、セカンダリプーリ42の回転軸X2とを結ぶ線である。
チェーンガイド9Aとチェーンガイド9Bは、鉛直線VL方向で、直線Lm1の上側と下側にそれぞれ配置されている。鉛直線VLは、無段変速機1の車両への搭載状態を基準とした線である。
【0032】
図5に示すように、チェーンガイド9Aは、チェーンガイド支持軸7Aで揺動可能に連結されている。チェーンガイド9Bは、チェーンガイド支持軸7Bで揺動可能に連結されている。これらチェーンガイド支持軸7A、7Bは、直線Lm1を挟んで対称となる位置関係で配置されている。
回転軸X1、X2方向から見て、チェーンガイド支持軸7A、7Bは、チェーン43の内側に配置されている。チェーンガイド支持軸7A、7Bは、後記するチューブ状部材8A、8Bでそれぞれ支持されている。
【0033】
本実施形態にかかるチェーンガイド9A、9Bは、同一の形状を有している。以下の説明においては、チェーンガイド9Bを例に挙げて説明する。チェーンガイド9Aの説明は省略する。
【0034】
図6は、チェーンガイド9Bを説明する図であり、中間壁部125側から見たチェーンガイド9Bを斜視図で示している。図6では、チューブ状部材8Bをチェーンガイド支持軸7Bから離間させている。
図7は、チューブ状部材8Bを説明する斜視図である。
図8は、チューブ状部材8Bを説明する図であり、図7のチューブ状部材8Bを長手方向に沿って切断した断面の模式図である。
図9は、チューブ状部材8Bを説明する図であり、図8のA-A断面の模式図である。
図10は、空間S1内におけるチューブ状部材8A、8Bの配置を説明する図であり、図5におけるA-A断面の模式図である。
【0035】
図6に示すように、チェーンガイド9Bは、一対のガイド部材91R、91Lから構成されている。これらガイド部材91R、91Lは同一形状である。チェーンガイド9Bは、ガイド部材91R、91Lを、回転軸X1、X2に平行な直線Lx1方向で重ね合わせて形成される。
【0036】
ガイド部材91Rは、ガイド部910Ra、910Rbと、ガイド部910Ra、910Rb同士を接続する接続部911Rと、を有している。ガイド部910Ra、910Rbは、チェーン43の厚み方向(図6における、上下方向)の一方側と他方側に配置される。接続部911Rは、チェーン43の側方(図6における右側)に配置される。
ガイド部材91Rのガイド部910Ra、910Rbと接続部911Rは、同一の材料から一体に形成されている。ガイド部910Ra、910Rbは、チェーン43の長手方向に沿って配置された板状部材である。接続部911Rは、ガイド部910Ra、910Rbの長手方向の中央部同士を接続している。
【0037】
ガイド部材91Lは、ガイド部910La、910Lbと、ガイド部910La、910Lb同士を接続する接続部911Lと、を有している。ガイド部910La、910Lbは、チェーン43の厚み方向(図6における、上下方向)の一方側と他方側に配置される。接続部911Lは、チェーン43の側方(図6における左側)に配置される。
ガイド部材91Lのガイド部910La、910Lbと接続部911Lは、同一の材料から一体に形成されている。ガイド部910La、910Lbは、チェーン43の長手方向に沿って配置された板状部材である。接続部911Lは、ガイド部910La、910Lbの長手方向の中央部同士を接続している。
【0038】
ガイド部材91R、91Lは、直線Lx1方向で重ね合わされる。ガイド部910Ra、910La同士、及びガイド部910Rb、910Lb同士が、チェーン43の長手方向の全長に亘って互いに接触する。
チェーン43は、ガイド部材91Rのガイド部910Ra、910Rb及び接続部911Rと、ガイド部材91Lのガイド部910La、910Lb及び接続部911Lとで囲まれた空間内に配置される。
【0039】
ここで、ガイド部材91R、91Lは、チェーンガイド支持軸7Bに連結される連結部912R、912Lを有している。連結部912R、912Lもまた、ガイド部910Ra、910Laと一体に形成されている。
【0040】
連結部912R、912Lは、それぞれガイド部910Ra、910Laの長手方向における中央部に形成されている。連結部912R、912Lは、直線Lx1方向で重ね合わせて、ボルトBで連結される。これにより、ガイド部材91R、91Lは、直線Lx1方向で重なった状態が維持される。
【0041】
[チェーンガイド支持軸7B]
図6に示すように、チェーンガイド支持軸7Bは、回転軸X1、X2に平行な軸線Lx2に沿う向きに配置された一本の軸状部材である。チェーンガイド支持軸7Bは、小径軸部70と、大径軸部71とを有している。
【0042】
図10に示すように、チェーンガイド支持軸7Bは、軸線Lx2方向における一端7a側(図中、左側)が小径軸部70となっており、他端7b側(図中、右側)が大径軸部71となっている。小径軸部70と大径軸部71との境界は段差面73となっている。段差面73は、軸線Lx2に直交する平坦面である。
【0043】
チェーンガイド支持軸7Bの小径軸部70は、軸線Lx2方向からサイドカバー13の挿入孔131に挿入されている。チェーンガイド支持軸7Bの段差面73は、軸線Lx2方向から挿入孔131の周縁部131aに当接している。
【0044】
チェーンガイド支持軸7Bの大径軸部71は、フランジ状の支持板711を有している。支持板711は、軸線Lx2方向における大径軸部71の途中位置に形成されている。なお、大径軸部71の途中位置とは、軸線Lx2方向における大径軸部71の一端と他端の間のことである。
支持板711は、大径軸部71の外周から、軸線Lx2の径方向外側に延出している。支持板711は、軸線Lx2周りの周方向の全周に亘って大径軸部71を囲んでいる(図6参照)。
【0045】
図10に示すように、チェーンガイド支持軸7Bの他端7bには、挿入穴72が開口している。挿入穴72は、大径軸部71の内側を、軸線Lx2方向に延びている。挿入穴72には、チューブ状部材8Bが軸線Lx2方向から挿入されている(図6参照)。
【0046】
[チューブ状部材8B]
図7に示すように、チューブ状部材8Bは、一本の鋼管を長手方向における一端と他端の間において2か所で屈曲させて形成したものである。
具体的には、図8に示すように、チューブ状部材8Bは、軸線Lx2に沿う向きに配置された第1筒状部80と、軸線Lx3に沿う向きに配置された第2筒状部81と、を有している。軸線Lx3は軸線Lx2に平行である。これら第1筒状部80と第2筒状部81は、筒状の接続部82を介して接続されている。第1筒状部80は、チューブ状部材8Bの長手方向における一端8a側(図中、左側)に位置し、第2筒状部81は、他端8b側(図中、右側)に位置する。
【0047】
図8に示すように、第1筒状部80は、軸線Lx2に直交する底壁部802と、底壁部802の外周を全周に亘って囲む筒壁部801を有している。
筒壁部801は、底壁部802から軸線Lx2方向における他方側(図中、右側)に延びている。筒壁部801は、軸線Lx2方向における他方側で、接続部82に接続している。
【0048】
接続部82は、軸線Lx2と軸線Lx3とに交差する軸線Laに沿う向きに配置されている。接続部82は、軸線La方向における第1筒状部80とは反対側で第2筒状部81に接続している。
【0049】
第2筒状部81は、軸線Lx3を囲む筒壁部811を有している。筒壁部811は、接続部82から軸線Lx3方向における他方側(図中、右側)に延びている。筒壁部811は、軸線Lx3方向における他方側の端面(他端8b)に、開口端811cを有している。
【0050】
チューブ状部材8Bは、全体として有底筒状を成している。第1筒状部80、接続部82及び第2筒状部81の内部空間は連通しており、チューブ状部材8B内で1つの油路85を形成している。油路85の一端は、第1筒状部80の底壁部802で封止される。油路35の他端は、第2筒状部81の開口端811cを通して外部と連通している。
【0051】
図8に示すように、チューブ状部材8Bの第1筒状部80には、フランジ状の支持板803が形成されている。支持板803は、軸線Lx2方向における筒壁部801の途中位置に形成されている。なお、筒壁部801の途中位置とは、軸線Lx2方向における筒壁部801の一端と他端の間のことである。支持板803は、筒壁部801の外周から、軸線Lx2の径方向外側に延出している。支持板803は、軸線Lx2周りの周方向の全周に亘って筒壁部801を囲んでいる(図9参照)。
【0052】
支持板803は、軸線Lx2の径方向(図中、上下方向)の内径側領域803aと、外径側領域803bと、を有する。内径側領域803aは、外径側領域803bよりも軸線Lx2方向における他方側(図中、右側)にオフセットしている。支持板803は、軸線Lx2の径方向における外径側領域803bの内側に凹部803cを有している。
【0053】
図8に示すように、第2筒状部81は、帯状のブラケット813を有している。ブラケット813は、軸線Lx3方向における筒壁部811の途中位置に形成されている。なお、筒壁部811の途中位置とは、軸線Lx3方向における筒壁部811の一端と他端の間のことである。ブラケット813は、厚み方向を軸線Lx3方向に沿わせて、筒壁部811に固定されている。
【0054】
図9に示すように、軸線Lx3方向から見て、ブラケット813の長手方向に沿う直線Lpは、軸線Lx2と軸線Lx3を交差する。
筒壁部811は、直線Lp方向におけるブラケット813の一方側(図中、上側)に位置している。直線Lp方向におけるブラケット813の他方側(図中、下側)には、当該ブラケット813を厚み方向に貫通する貫通孔813aが形成されている。
【0055】
図7に示すように、第2筒状部81の筒壁部811には、当該筒壁部811を厚み方向に貫通する貫通孔815が形成されている。貫通孔815は、チューブ状部材8Bの他端8b側に位置している。軸線Lx3方向における貫通孔815とブラケット813との距離はT1に設定されている。
【0056】
図9に示すように、貫通孔815は、チューブ状部材8Bの外部と油路85とを連通している。また、軸線Lx3方向から見て、貫通孔815は、直線Lpに対して軸線Lx3周りの周方向に位置をずらして形成されている。貫通孔815と軸線Lx3を結ぶ直線Lqは、ブラケット813の長手方向に沿う直線Lpに対して傾斜している。
【0057】
図10に示すように、チューブ状部材8Bの第1筒状部80が、軸線Lx2方向からチェーンガイド支持軸7Bの挿入穴72に挿入される。
また、チューブ状部材8Bの第2筒状部81が、中間壁部125に形成された挿入孔128に挿入される。第2筒状部81は、軸線Lx3方向から挿入孔128に挿入される。ボス部129が、ケース12の中間壁部125に形成されている。ブラケット813は、軸線Lx3に平行な軸線Lx4方向からボス部129にボルトBで固定される。
挿入孔128とボス部129は、中間壁部125における直線Lm1よりも下側に形成されている(図11参照)。
【0058】
この状態において、チェーンガイド支持軸7Bとチューブ状部材8Bは、サイドカバー13とケース12とに跨がって取り付けられている。チェーンガイド支持軸7Bとチューブ状部材8Bは、軸線Lx2に沿う方向で、空間S1を横断している。
【0059】
図10に示すように、チェーンガイド支持軸7Bの支持板711と、チューブ状部材8Bの支持板803は、軸線Lx2方向に間隔を空けて配置される。軸線Lx2方向における支持板711と支持板803の間には、前記したチェーンガイド9Bの連結部912L、912Rが配置される。
【0060】
ベルト43の振動は、チェーンガイド9Bで受けたのち、チェーンガイド支持軸7Bとチューブ状部材8Bとを通って、最終的にケース12とサイドカバー13に分散される。これにより、ベルト43の振動は低減される。
【0061】
ここで、図10に示すように、チューブ状部材8Bの第1筒状部80がチェーンガイド支持軸7Bの挿入穴72に挿入されると共に、支持板803の凹部803cが、チェーンガイド支持軸7Bの他端7b側を収容している。これにより、チューブ状部材8Bは、チェーンガイド支持軸7B自体がベルト43の振動を受けて軸線Lx2の径方向に振れることを防ぎつつ、当該チェーンガイド支持軸7Bを支持している。
すなわち、チューブ状部材8Bとチェーンガイド支持軸7Bとの関係において、チューブ状部材8Bが支持部材を構成し、チェーンガイド支持軸7Bが被支持部材を構成する。
【0062】
図10に示すように、チェーンガイド9Aもまた、連結部912L、912Rを有している。チェーンガイド9Aは、連結部912L、912Rを介してチェーンガイド支持軸7Aに連結されている。
【0063】
チェーンガイド支持軸7Aは、一本の軸状部材であり、前記したチェーンガイド支持軸7Bと同じ基本形状を有している。
【0064】
以下、チェーンガイド支持軸7Aについて説明する。
以下の説明では、チェーンガイド支持軸7Aのうち、チェーンガイド支持軸7Bと異なる部分について説明する。チェーンガイド支持軸7Bと共通する部分については同じ符号を用いて説明する。
【0065】
図10に示すように、チェーンガイド支持軸7Aは、回転軸X1、X2(図6参照)に平行な軸線Lx5に沿う向きで配置されている。
【0066】
チェーンガイド支持軸7Aは、小径軸部70と、大径軸部71とを有している。小径軸部70は、軸線Lx5方向におけるチェーンガイド支持軸7Aの一端7a側に位置し、大径軸部71は他端7b側に位置する。
【0067】
図10に示すように、チェーンガイド支持軸7Aの小径軸部70は、軸線Lx5方向からサイドカバー13の挿入孔132に挿入される。チェーンガイド支持軸7Aの段差面73は、軸線Lx5方向から挿入孔132の周縁部132aに当接する。
【0068】
チェーンガイド支持軸7Aの内側には、軸線Lx5方向に延びる油路75が形成されている。油路75は、小径軸部70と大径軸部71を軸線Lx5方向に貫通している。油路75は、チェーンガイド支持軸7Aの一端7aと他端7bにそれぞれ開口している。
【0069】
図10に示すように、大径軸部71では、軸線Lx5方向における支持板711と他端7bとの間の領域に、噴射孔76が形成されている。噴射孔76は、大径軸部71を軸線Lx5に直交する方向に貫通しており、油路75と空間S1とを連通している。
【0070】
チェーンガイド支持軸7Aの油路75には、他端7b側からチューブ状部材8Aが挿入されている。
チューブ状部材8Aは、一本の鋼管を長手方向における一端と他端の間において2か所で屈曲させて形成したものであり、前記したチューブ状部材8Bと同じ基本形状を有している。
【0071】
以下、チューブ状部材8Aについて説明する。
以下の説明では、チューブ状部材8Aのうちチューブ状部材8Bと異なる部分について説明する。チューブ状部材8Bと同じ部分については、同じ符号を用いて説明する。
【0072】
チューブ状部材8Aは、第1筒状部80の底壁部802を有しておらず、油路85が、長手方向における両端に開口している点でチューブ状部材8Bと相違している。また、チューブ状部材8Aは、第2筒状部81に貫通孔815を有していない点でチューブ状部材8Bと相違している。
【0073】
図10に示すように、チューブ状部材8Aは、第1筒状部80が、軸線Lx5方向からチェーンガイド支持軸7Aの油路75に挿入される。チューブ状部材8Aは、第2筒状部81が、中間壁部125に形成された挿入孔126内に挿入される。第2筒状部81は、軸線Lx5に平行な軸線Lx6方向から挿入孔126内に挿入される。ブラケット813は、ケース12の中間壁部125に形成されたボス部127にボルトBで固定される。挿入孔126とボス部127は、中間壁部125における直線Lm1よりも上側に形成されている(図11参照)。
【0074】
この状態において、チェーンガイド支持軸7Aとチューブ状部材8Aは、サイドカバー13とケース12とに跨がって取り付けられている。チェーンガイド支持軸7Aとチューブ状部材8Aは、軸線Lx5に沿う方向で、空間S1を横断している。
【0075】
ここで、図10に示すように、チューブ状部材8Aの第2筒状部81が挿入される挿入孔126は、中間壁部125内でケース内油路15と連通している。また、チューブ状部材8Bの第2筒状部81が挿入される挿入孔128は、中間壁部125内でケース内油路16と連通している。
これらケース内油路15、16は、ファイナルギア60(図4参照)の回転によって掻き上げられたケース12内の潤滑油OLを、ケース12内の所定の領域に供給するため潤滑油路である。
【0076】
[ケース内油路15]
図10に示すように、ケース内油路15は、中間壁部125内を軸線Lx6方向に延びている。軸線Lx6方向におけるケース内油路15の他端15bは、前記した空間S2側の弧状壁123(図4参照)に開口している。軸線Lx6方向におけるケース内油路15の一端15aには、挿入孔126が接続されている。
【0077】
挿入孔126は、軸線Lx6方向に延びている。挿入孔126は、軸線Lx6方向におけるケース内油路15と反対側(空間S1側)の端部が、中間壁部125の表面に開口している(図11参照)。ケース内油路15は、挿入孔126を介して空間S1と連通している。挿入孔126は、ケース内油路15の一部を構成する。
【0078】
チューブ状部材8Aの第1筒状部80がチェーンガイド支持軸7Aの油路75に挿入され、第2筒状部81が挿入孔126に挿入される。これにより、チューブ状部材8Aの油路85は、第1筒状部80側でチェーンガイド支持軸7Aの油路75と連通し、第2筒状部81側でケース内油路15と連通する。
【0079】
また、チェーンガイド支持軸7Aの小径軸部70が挿入されるサイドカバー13の挿入孔132には、当該サイドカバー13内に形成された油路135が連通している。
従って、ケース内油路15は、チューブ状部材8Aの油路85と、チェーンガイド支持軸7Aの油路75とを介して、サイドカバー13の油路135と連通している。
【0080】
これにより、ファイナルギア60の回転によって掻き上げられた潤滑油OLの一部は、ケース内油路15の他端15b(図4参照)から流入し、一端15aからチューブ状部材8Aの油路85に供給される。そして、油路85に供給された潤滑油OLは、チェーンガイド支持軸7Aの油路75を通って、最終的にサイドカバー13の油路135へと移動する。油路75を通る潤滑油OLの一部は、噴射孔76から噴射されて、チェーン43を潤滑する。
【0081】
[ケース内油路16]
ケース内油路16は、中間壁部125に設けられたリブ18(図2参照)内に形成されている。リブ18は、中間壁部125から回転軸X1、X2方向における空間S1側(図2における紙面手前側)に膨出している。
【0082】
図11は、リブ18を説明する図であり、図3のA領域の拡大図である。
図12は、リブ18内に形成されたケース内油路16を説明する図であり、図11におけるA-A断面の模式図である。
図13は、チューブ状部材8Bの配置を説明する図である。
なお、図12では、チューブ状部材8Bを仮想線で記載してある。また、図12図13では、デフ室R2のファイナルギア60は省略してある。
【0083】
図11に示すように、リブ18は、中間壁部125から紙面手前側に膨出して形成されている。リブ18は、回転軸X1と回転軸X2を結ぶ直線Lm1よりも下側に位置している。リブ18は、直線Lrに沿う向きで設けられている。直線Lrは、回転軸X1と回転軸X4を結ぶ直線Lm2に、略平行な線である。リブ18は、環状壁121を内側から外側に横断している。直線Lr方向におけるリブ18の一端部18a(図中、左側)は、空間S1内に位置していると共に、貫通孔125aの近傍に位置している。直線Lr方向におけるリブ18の他端部18b(図中、右側)は、空間S1外に位置していると共に、貫通孔125cの近傍に位置している。
【0084】
リブ18の一端部18a側(図中、左側)には、前記した挿入孔128とボス部129が形成されている。挿入孔128は、直線Lr上に位置している。ボス部129は、挿入孔128から見てリブ18の他端部18b側で、直線Lrよりも下側に位置している。
【0085】
図12に示すように、リブ18内には、ケース内油路16が形成されている。
回転軸X4方向から見て、ケース内油路16は、デフ室R2と重なる領域を回転軸X4の径方向に延びている。なお、図4では、ケース内油路16の位置を破線で示している。
【0086】
図12に示すように、ケース内油路16は、外径側油路161と、内径側油路162と、接続油路163と、を有する。
【0087】
外径側油路161は、回転軸X4に沿う向きで設けられている。外径側油路161の一端161aは、挿入孔128に連通している。外径側油路161の他端161bは、前記した弧状壁123(図4参照)に開口している。
【0088】
外径側油路161の一端161aに連通した挿入孔128は、回転軸X4に沿う向きで、外径側油路161と直列に設けられている。挿入孔128と外径側油路161は、同心に配置されている。
挿入孔128は、回転軸X4方向における外径側油路161と反対側(図12における下側)の端部が、中間壁部125(リブ18)の表面に開口している。ケース内油路16の外径側油路161は、挿入孔128を介して空間S1と連通している。挿入孔128は、ケース内油路16の一部を構成する。
【0089】
回転軸X4方向における挿入孔128の途中位置には、接続油路163の一端163aが開口している。なお、挿入孔128の途中位置とは、回転軸X4方向における挿入孔128の一端と他端の間のことである。
接続油路163は、リブ18内を直線Lr方向(図12における左右方向)に延びている。接続油路163の他端163bは、環状壁121の外部に向けて開口している。この他端163bの開口は、埋栓Hsで封止されている。埋栓Hsは、例えば公知のホロセット等が挙げられる。
【0090】
接続油路163の他端163b側には、内径側油路162の一端162aが開口している。
内径側油路162は、回転軸X4の径方向で外径側油路161よりも内径側に位置している。内径側油路162は、回転軸X4方向に延びると共に、他端162bがデフ室R2(図4参照)に開口している。
【0091】
ここで、図11における拡大領域に示すように、挿入孔128とボス部129とを結ぶ直線Lsは、直線Lrに対して傾斜している。
直線Lsに対する直線Lrの傾きは、前記したチューブ状部材8Bのブラケット813における、直線Lpに対する直線Lqの傾き(図9参照)と同じである。
また、図12に示すように、回転軸X4方向におけるリブ18の表面と直線Lrとの距離はT2に設定されている。この距離T2は、前記したチューブ状部材8Bのブラケット813と貫通孔815との距離T1(図7参照)と同じである(T2=T1)。
【0092】
図13に示すように、チューブ状部材8Bの第2筒状部81が挿入孔128に挿入される。チューブ状部材8B内の油路85は、開口端811cを介して外径側油路161と連通する。
そして、図11の拡大領域に示すように、第2筒状部81を挿入孔128に挿入した状態で、ブラケット813がボス部129に固定される。ブラケット813の長手方向に沿う直線Lp(図9参照)が、挿入孔128とボス部129を結ぶ直線Lsと一致する位置に配置される。
この状態において、第2筒状部81の中心と貫通孔815とを結ぶ直線Lq(図9参照)が、接続油路163の中心を通る直線Lrと一致する。
これにより、第2筒状部81の内部空間が、貫通孔815を介して、接続油路163と連通する。よって、チューブ状部材8B内の油路85は、貫通孔815を介して、接続油路163と連通する(図13の拡大領域参照)。
【0093】
前記したとおり、挿入孔128は、ケース内油路16の一部を構成する。そのため、チューブ状部材8Bを挿入孔128に挿入することで、チューブ状部材8Bの油路85もまた、ケース内油路16の一部を構成する。油路85は、外径側油路161と接続油路163との間に介在した油路となる(図13参照)。
【0094】
ファイナルギア60の回転によって掻き上げられた潤滑油OLの一部は、外径側油路161の他端161b(図4参照)から流入し、一端161a側からチューブ状部材8B内の油路85内に移動する(図13における、矢印A)。
【0095】
油路85の一端(図13における、下側)は、底壁部802で封止されている。そして、油路85には、開口端811c側から潤滑油OLが順次流入する。そのため、油路85の内部は、最終的に潤滑油OLで満たされる。
【0096】
油路85が潤滑油OLで満たされた状態で、さらに開口端811c側から潤滑油OLが流入すると、油路85内の圧が高まる。潤滑油OLは、貫通孔815から接続油路163へ放出される。これにより、外径側油路161から油路85を通って接続油路163へと流れる潤滑油OLの流れが形成される(図13における、矢印B)
【0097】
貫通孔815から接続油路163に移動した潤滑油OLは、当該接続油路163を一端163a側から他端163b側に移動する(図13における、矢印C)。
接続油路163の他端163bは、埋栓Hsで封止されている。従って、接続油路163を移動する潤滑油OLは、埋栓Hsによって向きが変えられて、一端162aから内径側油路162内に移動する。
【0098】
内径側油路162を通る潤滑油OLは、他端162bからデフ室R2に戻される(図13における、矢印D)。デフ室R2に戻された潤滑油OLは、再度ファイナルギア60の回転によって掻き上げられる(図4参照)。
【0099】
ここで、ケース12は、鋳造により製造される。図示は省略するが、ケース12のケース内油路15、16は、ケース12の鋳造時に、鋳型内の所定位置にそれぞれ中子を配置したのち、金属溶湯を注湯して固化させることで形成される。中子は、ケース内油路15、16にそれぞれ対応した形状を有している。
【0100】
中子は、鋳型内での姿勢を維持するために、一部を鋳型に当接させている。そのため、固化後のケース12には、中子と鋳型とが当接していた部分がケース内油路15、16の開口部となって表れる。
図11に示すように、本実施形態では、挿入孔126、128や、接続油路163の他端163b側(図12参照)が、ケース内油路15、16の開口部に相当する。
【0101】
ケース内油路15は、バリエータ4側に潤滑油OLを供給するために使用される。そのため、ケース内油路15の開口部となる挿入孔126は、開口したまま使用される。
一方、ケース内油路16は、潤滑油OLをデフ室R2に戻すために使用される。潤滑油OLを確実にデフ室R2に戻すために、ケース内油路16の開口部となる挿入孔128及び接続油路163の他端163b側は、封止部材で封止される。
【0102】
図13に示すように、挿入孔128には、チューブ状部材8Bが挿入される。接続油路163の他端163bには、埋栓Hsが挿入される。本実施形態では、チューブ状部材8Bと埋栓Hsがそれぞれ封止部材に相当する。
【0103】
例えば、チューブ状部材8Bをケース12における挿入孔128以外の場所に取り付けた場合、挿入孔128を封止する埋栓を別途用意することになる。そうすると、使用する埋栓の数(部品点数)が増加する。
【0104】
これに対して、本実施形態にかかるチューブ状部材8Bは、ケース12における挿入孔128に挿入されている(図13参照)。これにより、チューブ状部材8Bは、チェーンガイド支持軸7Bを支持するとともに、挿入孔128を介してのケース内油路16と空間S1との連通を遮断している
すなわち、チューブ状部材8Bは支持部材としての機能と、埋栓としての機能とを兼ねている。挿入孔128を封止するための埋栓を別途用いなくても良い。
【0105】
なお、チューブ状部材8Bに代えて、油路85及び貫通孔815を有しない中実の軸部材を用いても、チェーンガイド支持軸7Bの支持部材の機能と、挿入孔128の埋栓の機能とを兼ねることができる。しかしながら、軸部材を挿入孔128に挿入すると、外径側油路161から接続油路163への潤滑油OLの通流が妨げられる恐れがある。この場合、潤滑油OLが通流できるように軸部材を挿入孔128に浅く挿入することも考えられる。しかしながら、チェーンガイド支持軸7Bを支持するための支持強度が低下する。
【0106】
本実施形態にかかるチューブ状部材8Bは、中空の鋼管であり、油路85及び貫通孔815を有している。チューブ状部材8Bでは、油路85と貫通孔815がケース内油路16の一部を構成する。よって、チューブ状部材8Bを挿入孔128に深く挿入しても、ケース内油路16の潤滑油OLの流れを妨げない。これにより、チェーンガイド支持軸7Bを支持するための支持強度を向上できる。
【0107】
下記に、本発明のある態様における無段変速機1(油圧作動装置)の例を列挙する。
(1)無段変速機1は、
ケース12と、
ケース12に設けられたケース内油路16(油路)と、
ケース12に設けられると共に、チェーンガイド支持軸7B(被支持部材)を支持するチューブ状部材8B(支持部材)と、を有する。
ケース内油路16は、当該ケース内油路16とケース12内の空間S1とを連通する挿入孔128(開口部)を有する。
チューブ状部材8Bは、挿入孔128に挿入されている。
ケース内油路16とケース12内の空間S1との連通は、チューブ状部材8Bによって遮断されている。
【0108】
このように構成すると、チューブ状部材8Bは、チェーンガイド支持軸7Bを支持しつつ、挿入孔128を封止できる。
これにより、チェーンガイド支持軸7Bを支持する支持部材と、挿入孔128を封止する埋栓とをそれぞれ用いなくても良い分、部品点数が削減される。
【0109】
(2)チューブ状部材8Bは、第2筒状部81を軸線Lx3方向から挿入孔128に挿入する。チューブ状部材8Bは、軸線Lx3方向(挿入方向)に平行な軸線Lx4方向に沿ってボルトB(締結部材)の締付力(押圧力)が付与された状態で、ケース12に固定されている。
【0110】
チューブ状部材8Bは、ケース内油路16の外径側油路161から油路85に流入する潤滑油OLによって圧力を受ける。この圧力は、チューブ状部材8Bを挿入孔128から抜く方向(図13における下向き)に作用する。
そこで、上記のように構成すると、チューブ状部材8Bに付与されるボルトBの締結力は、潤滑油OLから受ける圧力に抗する方向となる。
これにより、チューブ状部材8Bが挿入孔128から抜けることを防止し、チューブ状部材8Bによる挿入孔128のシール性を向上できる。
【0111】
(3)ケース内油路16は、デフ室R2に潤滑油OLを供給する潤滑油路である。
ケース内油路16に設けられた挿入孔128は、チューブ状部材8Bで封止されている。
【0112】
挿入孔128が空間S1側に開口していると、ケース内油路16内の潤滑油OLの一部は、空間S1側に漏出する。そうすると、デフ室R2に戻る潤滑油OL量が減少する。また、別途埋栓を用いて挿入孔128を封止すると、部品点数の増加につながる。
そこで、上記ように構成すると、ファイナルギア60の回転によって掻き上げられた潤滑油OLを確実にデフ室R2に戻しつつ、部品点数が増加することを低減できる。
【0113】
(4)無段変速機1は、
一対のプーリを構成するプライマリプーリ41、セカンダリプーリ42と、
これらプライマリプーリ41とセカンダリプーリ42とに巻きかけられたチェーン43(無端環状部材)と、を有している。
チェーンガイド支持軸7Bに連結されたチェーンガイド9Bは、チェーン43をガイドするガイド部材である。
チューブ状部材8Bは、チェーンガイド9Bに連結するチェーンガイド支持軸7Bを支持する。
【0114】
このように構成すると、チェーン式の無段変速機1において、使用する部品点数を削減できる。
【0115】
(5)チューブ状部材8Bは、底壁部802と、当該底壁部802を囲む第1筒状部80と、接続部82と、第2筒状部81と、を有する有底筒状を成している。
チューブ状部材8Bは、第2筒状部81の筒壁部811(側壁)に、当該筒壁部811を貫通する貫通孔815が形成されている。
チューブ状部材8Bは、第2筒状部81の開口端811c側から挿入孔128に挿入されていると共に、貫通孔815が、ケース内油路16の接続油路163と連通している。
ケース内油路16内の潤滑油OLは、外径側油路161から開口端811cを通ってチューブ状部材8Bの油路85(内部空間)に流入したのち、貫通孔815から接続油路163に排出される。
【0116】
このよう構成すると、チューブ状部材8Bの油路85が、ケース内油路16の一部となる。これにより、ケース内油路16における潤滑油OLの流れをスムーズに変更できる。
また、チューブ状部材8を挿入孔128に深く挿入しても、潤滑油OLの流れを妨げない。これにより、チェーンガイド支持軸7Bを支持するための支持強度を向上できる。
【0117】
また、このようなケース12によるチューブ状部材8Bの支持構造100(図13参照)は、チェーンガイド支持軸7Bの支持と、挿入孔128の封止とを1つのチューブ状部材8Bで兼ねることができる。
【0118】
チューブ状部材8Bの支持構造100では、
ケース12と、
ケース12に設けられたケース内油路16と、
ケース12に設けられると共に、チェーンガイド支持軸7Bを支持するチューブ状部材8Bと、を有する。
ケース内油路16は、当該ケース内油路16とケース12内の空間S1とを連通する挿入孔128を有する。
チューブ状部材8Bは、挿入孔128に挿入されている。
チューブ状部材8Bは、ケース内油路16とケース12内の空間S1との連通を遮断しつつ、ケース12で支持される。
【0119】
このように構成すると、チューブ状部材8Bは、チェーンガイド支持軸7Bを支持しつつ、挿入孔128を封止できる。
これにより、チェーンガイド支持軸7Bを支持する支持部材と、挿入孔128を封止する埋栓とをそれぞれ用いなくても良い分、部品点数が削減される。
【0120】
本実施形態にかかる無段変速機1では、チューブ状部材8Bの開口端811cがケース内油路16の外径側油路161と連通し、貫通孔815が接続油路163と連通している場合を例示したが、この態様に限定されない。例えば、以下の変形例のようにしてもよい。
【0121】
図14は、変形例にかかる無段変速機1Aを説明する図である。
変形例にかかる無段変速機1Aでは、本実施形態にかかる無段変速機1と異なる部分のみを説明する。
【0122】
図14に示すように、無段変速機1Aでは、挿入孔128Aは、軸線Lx2に直交する直線Lr’方向に延びており、接続油路163’と直列に接続されている。直線Lr’方向における挿入孔128Aの途中位置には、外径側油路161が接続している。なお、挿入孔128Aの途中位置とは、直線Lr’方向における挿入孔128Aの一端と他端の間のことである。
チューブ状部材8B’は、一本の鋼管を長手方向における一端と他端の間において1か所で屈曲させて形成したものであり、略L字形状を成している。
具体的には、チューブ状部材8B’は、直線Lx2に沿う向きに配置された第1筒状部80と、直線Lr’に沿う向きに配置された第2筒状部81’と、を有している。
【0123】
チューブ状部材8B’の第2筒状部81’を挿入孔128Aに挿入すると、貫通孔815がケース内油路16の外径側油路161と連通し、開口端811cが接続油路163’と連通する。
【0124】
変形例にかかる無段変速機1Aでは、潤滑油OLは、外径側油路161から貫通孔815を通ってチューブ状部材8B’の油路85に流入する。潤滑油OLは、開口端811cから接続油路163’に排出される。そして、潤滑油OLは、接続油路163’から内径側油路162を通って、デフ室R2に排出される(図14における、矢印E~H参照)。
【0125】
本発明のある態様として、無段変速機1Aは、例えば、以下の構成を有する。
(5)チューブ状部材8B’は、有底筒状を成している。
チューブ状部材8B’は、第2筒状部81’の筒壁部811(側壁)に、当該筒壁部811を貫通する貫通孔815が形成されている。
チューブ状部材8B’は、第2筒状部81の開口端811c側から挿入孔128Aに挿入されていると共に、貫通孔815が、ケース内油路16の外径側油路161と連通している。
ケース内油路16内の潤滑油OLは、外径側油路161から貫通孔815を通ってチューブ状部材8B’の油路85に流入したのち、開口端811cから接続油路163’に排出される。
【0126】
このように構成すると、チューブ状部材8B’の油路85が、ケース内油路16の一部となる。これにより、ケース内油路16における潤滑油OLの流れをスムーズに変更できる。
【0127】
本実施形態では、無端環状部材がチェーン43であるチェーン式の無段変速機1を例示したが、この態様に限定されない。例えば、無端環状部材がベルトであるベルト式の無段変速機あってもよい。ベルトは、複数の板状のエレメントを積層して環状に配置したものなどが挙げられる。具体的には、エレメントは、両側にスリットを有する。ベルトは、スリットを挿通させた環状リングでエレメントの各々を結束して構成される。
【0128】
また、本実施形態では、油圧作動装置が、車両用のチェーン式無段変速機である場合を例示したが、この態様に限定されない。ケース内に油路が設けられている油圧作動装置であれば、車両以外にも適用できる。
【0129】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0130】
1 無段変速機(油圧作動装置)
1A 無段変速機(油圧作動装置)
12 ケース
128 挿入孔(開口部)
128A 挿入孔(開口部)
16 ケース内油路
41 プライマリプーリ
42 セカンダリプーリ
43 チェーン(無端環状部材)
7B チェーンガイド支持軸(被支持部材)
8B チューブ状部材(支持部材)
8B’ チューブ状部材(支持部材)
9B チェーンガイド(ガイド部材)
802 底壁部
811 筒壁部
811c 開口端
815 貫通孔
85 油路(内部空間)
B ボルト(締結部材)
Lx3 軸線(挿入方向)
OL 潤滑油
S1 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
図11
図12
図13
図14