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特許7337478超広幅連続コーティング装置及びそれを用いたセパレータの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】超広幅連続コーティング装置及びそれを用いたセパレータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/40 20210101AFI20230828BHJP
   B05C 1/08 20060101ALI20230828BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20230828BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20230828BHJP
   H01M 50/409 20210101ALI20230828BHJP
【FI】
H01M50/40
B05C1/08
B05D1/28
B05D7/00 A
H01M50/409
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017120515
(22)【出願日】2017-06-20
(65)【公開番号】P2017228527
(43)【公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-06-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-24
(31)【優先権主張番号】10-2016-0077388
(32)【優先日】2016-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ジョー ドン ジン
(72)【発明者】
【氏名】チョ キュ ユン
(72)【発明者】
【氏名】キム ユン ボン
(72)【発明者】
【氏名】イ ス ジ
(72)【発明者】
【氏名】クヮク ウォン スブ
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒェ ジン
【合議体】
【審判長】井上 信一
【審判官】山本 章裕
【審判官】畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-178697(JP,A)
【文献】特開2009-58827(JP,A)
【文献】特開2005-131635(JP,A)
【文献】特開2015-201323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
B05C 1/00-3/20
B41N 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムにコーティング液をコーティングする転写ローラと、
前記転写ローラの一部が挿入されて回転されるようにするローラ溝を備え、供給されるコーティング液が前記ローラ溝に満たされるハウジングと、
前記ハウジングにコーティング液を供給するコーティング液供給器と、を含み、
前記転写ローラは、2つ以上の接触式コーティングローラが連結具によって一体化されているものであって、前記転写ローラは、長さが2,000mm超であり、前記連結具の直径が、前記コーティングローラの直径より小さく、前記連結具は、前記転写ローラの長さに対して2~5%の長さを有し、前記基材フィルムの前記連結具に対応する部分はコーティングされないことを特徴とする、コーティング装置。
【請求項2】
前記連結具は、中心軸が前記コーティングローラの回転軸の延長線上にある、請求項1に記載のコーティング装置。
【請求項3】
前記コーティングローラは、グラビアロール、マイクログラビアロール、ワイヤバー、ミヤバー、ナノコータ、及びDMコータからなる群から選択される、請求項1に記載のコーティング装置。
【請求項4】
前記ハウジングは、表面がポリテトラフルオロエチレン及び超高分子量ポリエチレンから選択される何れか1つ以上からなる、請求項1に記載のコーティング装置。
【請求項5】
シートを延伸して基材フィルムを形成するステップと、
前記基材フィルムの片面または両面上にコーティング液をコーティングするステップと、
前記コーティングされたフィルムを長さ方向に切断するステップと、
前記切断されたフィルムをそれぞれ巻き取るステップと、を含み、
前記コーティングするステップでは、2つ以上の接触式コーティングローラが連結具によって一体化された転写ローラを用いるものであって、前記転写ローラは、長さが2,000mm超であり、前記連結具の直径が、前記コーティングローラの直径より小さく、前記連結具は、前記転写ローラの長さに対して2~5%の長さを有し、前記基材フィルムの前記連結具に対応する部分はコーティングされないことを特徴とする、超広幅セパレータの製造方法。
【請求項6】
前記コーティングされたフィルムを長さ方向に切断するステップでは、前記コーティングされたフィルムが連結具に当接する部分で、フィルムの長さ方向に平行にスリットされる、請求項5に記載の超広幅セパレータの製造方法。
【請求項7】
前記コーティングローラは、グラビアロール、マイクログラビアロール、ワイヤバー、ミヤバー、ナノコータ、及びDMコータからなる群から選択される、請求項5に記載の超広幅セパレータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超広幅セパレータの連続製造工程に適用される広幅コーティング装置に関し、より詳細には、従来の二次電池用セパレータの製造時に、接触式コーティングローラを用いたコーティング工程でコーティング幅が制限されていた問題を克服し、製造されるセパレータの物性を低下させることなく広幅で連続製造することで、生産性を極大化することができるコーティング装置及びそれを用いたセパレータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の高容量、高出力化の傾向に伴い、二次電池用セパレータにおいても物性向上の要求が増大している。このようなセパレータには、通常、ポリオレフィン系の基材フィルムが用いられており、気孔形成や延伸などの後続の工程により、優れた強度、弾性、気孔均一性などの特性を実現する。また、膜の表面または内部に存在する気孔には、無機物粒子を含むコーティング液を用いてコーティングする方法により活性層が形成され、イオン伝導特性が実現される。この際、セパレータ内に気孔構造が存在しないか、気孔が存在しても不均一に存在する場合には、気孔を通過するイオン電流の流れの不均衡により、電池の性能及び安定性が大きく低下し得る。このような構造的な点を含んで、二次電池に適用されるセパレータは、電気化学的特性の向上及び安定性の確保のための製造コストが高いため、これを低めるための技術開発が求められている状況である。
【0003】
一方、前記セパレータの製造工程においてコーティング工程は、膜の物性とイオン伝導度に影響を与える重要な工程である。コーティング工程には、通常、ディップ(dip)コーティング、ダイ(die)コーティング、スプレー(spray)コーティング、グラビア(gravure)コーティングなどの方法が用いられている。
【0004】
中でも、コーティング手段をコーティング液に直接接触し、基材フィルムの接触される表面に前記コーティング液を転写する接触式コーティング方法が主に用いられており、円滑なコーティングが行われるように、コーティング液が接触される表面にクロムなどがめっきされた転写ローラが用いられている。
【0005】
しかし、前記転写ローラは、製作が難しく、製作コストが高いため、セパレータの製造原価を上昇させる要因の一つである。また、接触式コーティング方法に適用される転写ローラは、製作に制約があってその長さが2m内に制限され、ローラの直径も約6mm程度であって、セパレータを連続的に製造する工程に適用する場合、広幅のコーティングが難しい。長さをより長く製作するとしても、ローラ自体の重量による撓みや揺れが発生して製品の不良をもたらすため、セパレータの生産性を向上させるには限界があるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであって、超広幅セパレータのコーティング装置及びそれを用いた超広幅セパレータの製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、超広幅コーティング装置のコーティングローラの長さ及び直径の制限がないため、広幅コーティングが可能であって、基材フィルムの幅に対する高いコーティング収率及び少ないコーティング組成物損失率で生産性を画期的に向上させることができる超広幅コーティング装置を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、コーティング性能に優れて、優れた熱安定性及びイオン伝導度の特性を有するセパレータを製造することができる超広幅コーティング装置を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、前記超広幅セパレータコーティング装置を用いて、高いコーティング収率及び少ないコーティング組成物損失率で連続製造可能な超広幅セパレータの連続製造方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような目的を達成するために、本発明は、超広幅セパレータの製造装置として、基材フィルムにコーティング液をコーティングする転写ローラと、前記転写ローラの一部が挿入されて回転されるようにするローラ溝を備え、供給されるコーティング液が前記ローラ溝に満たされるハウジングと、前記ハウジングにコーティング液を供給するコーティング液供給器と、を含み、前記転写ローラは、2つ以上の接触式コーティングローラが連結具によって一体化されていることを特徴とするコーティング装置を提供する。
【0011】
本発明の一実施形態によるコーティング装置において、前記連結具は、中心軸が前記コーティングローラの回転軸の延長線上にあり、隣接する2つのコーティングローラを締結させることができる。
【0012】
本発明の一実施形態によるコーティング装置において、前記連結具の直径が、コーティングローラの直径より小さいことができる。
【0013】
本発明の一実施形態によるコーティング装置において、前記コーティングローラは、グラビアロール、マイクログラビアロール、ワイヤバー、ミヤバー、ナノコータ、及びDMコータからなる群から選択されることができる。
【0014】
本発明の一実施形態によるコーティング装置において、前記ハウジングは、表面がポリテトラフルオロエチレン及び超高分子量ポリエチレンから選択される何れか1つ以上からなることができる。
【0015】
また、本発明は、超広幅セパレータを連続的に製造するインライン製造方法として、シートを延伸して基材フィルムを形成するステップと、前記基材フィルムの片面または両面上にコーティング液をコーティングするステップと、前記コーティングされたフィルムを長さ方向に切断するステップと、前記切断されたフィルムをそれぞれ巻き取るステップと、を含み、前記コーティングステップでは、2つ以上の接触式コーティングローラが連結具によって一体化された転写ローラを用いる、超広幅セパレータの製造方法を提供する。
【0016】
本発明の一実施形態による超広幅セパレータの製造方法において、前記連結具の直径が、コーティングローラの直径より小さいことができる。
【0017】
本発明の一実施形態による超広幅セパレータの製造方法において、前記連結具の長さは、前記転写ローラの長さに対して2~5%であることができる。
【0018】
本発明の一実施形態による超広幅セパレータの製造方法において、前記コーティングされたフィルムを長さ方向に切断するステップでは、前記コーティングされたフィルムが連結具に当接する部分で、フィルムの長さ方向に平行にスリットされることができる。
【0019】
本発明の一実施形態による超広幅セパレータの製造方法において、前記コーティングローラは、グラビアロール、マイクログラビアロール、ワイヤバー、ミヤバー、ナノコータ、及びDMコータからなる群から選択されることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の超広幅コーティング装置は、二次電池用セパレータを製造する工程で、前処理工程を経て供給される広幅の基材フィルムへの広幅コーティングが可能であって、セパレータの生産性を極大化することができる利点がある。すなわち、コーティング組成物が転写される基材フィルムの幅に対する高いコーティング収率及び少ないコーティング組成物損失率でセパレータの生産性を極大化することができる。
【0021】
また、従来の二次電池用セパレータに適用されるコーティングローラは、基材フィルム上に気孔及び前記気孔の全面に活性層を形成する手段であって、二次電池用セパレータの物性または電気化学的特性に制約があり、長さまたは直径が制限されていた。
【0022】
これに対し、本発明による超広幅コーティング装置は、転写ローラの長さを、既存の長さである2m以上、例えば、4m以上、6m以上の超広幅に拡張する場合にも、不均一なコーティング性や、コーティングローラの全長さに均等な荷重が加えられない問題が発生しない。
【0023】
したがって、転写ローラの長さ及び直径が制限されることなく均一な超広幅コーティングが可能であって、優れたセパレータの物性を実現することができる利点がある。
【0024】
さらに、供給されるフィルムの幅の長さに柔軟に適用することができ、移動、設置、維持及びメンテナンスが容易である利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態による超広幅コーティング装置を概略的に示した図である。
図2】本発明の一実施形態による連結具を含む転写ローラを概略的に示した図である。
図3】本発明の一実施形態による連結具の形態を概略的に示した図である。
図4】本発明の一実施形態による超広幅セパレータ製造装置を概略的に示した図である。
図5】本発明の一実施形態による超広幅セパレータ製造装置のうち、ワイヤバーコーティングを概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の超広幅連続コーティング装置及びそれを用いた超広幅セパレータの製造方法について詳細に説明する。
【0027】
本発明について、下記の実施形態によってより詳細に理解することができる。下記の実施形態は本発明の例示のためのものであって、添付の特許請求の範囲によって限定される保護範囲を制限するためのものではない。この明細書で、用いられる技術用語及び科学用語は、特に定義されない限り、この発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常的に理解している意味を有する。
【0028】
本発明の超広幅コーティング装置は、超広幅の基材フィルムにもコーティングが可能であるように、転写ローラの長さを自由に拡張することができる。それにもかかわらず、工程に適用した際に基材フィルムの撓みや揺れが発生しないため、円滑なコーティングが可能であり、高いコーティング均一性を確保することができる。また、基材フィルムの幅に対する高いコーティング収率で生産性を極大化することができ、セパレータの製造原価を画期的に低減することができることを見出し、本発明を完成した。
【0029】
図1は本発明の一実施形態による超広幅コーティング装置を示した図である。前記超広幅コーティング装置は、基材フィルムにコーティング液をコーティングする転写ローラ11と、前記転写ローラの下部が挿入されてコーティング液流入管31を介してコーティング液が満たされるローラ溝21を備えたハウジング22と、前記ハウジング22にコーティング液を供給するコーティング液供給器32と、前記転写ローラ11を回転させる動力を提供するモータ(motor)41と、を含む。
【0030】
この際、転写ローラ11は、コーティング対象である基材フィルムの一面にコーティング液をコーティングしてコーティング層を形成するものであって、表面がコーティング液に直接接触される。
【0031】
前記転写ローラ11は、その種類において、従来のグラビアロールまたはワイヤバーなどのような接触式コーティング手段を含み、必ずしもこれに制限されるものではない。好ましくは、グラビアロール、ワイヤバー、マイクログラビアロール、ミヤバー、ナノコータ、及びDMコータからなる群から選択される何れか1つであることができる。
【0032】
前記転写ローラ11は、長さ方向(基材フィルムを基準として幅方向)の長さが制限されない。これは、コーティング液に直接接触してコーティング対象物にコーティングするコーティング手段であって、従来の転写ローラが、その表面がクロムなどでめっきされなければならないなど、製作に多くの制約があるという問題のため製作される長さが制限的であったことと異なって、2つ以上のコーティング手段を結合させて長さを延長させることで、広幅のコーティングを行うことができる。
【0033】
特に、セパレータは、製造工程上、シートの熱処理または延伸によってフィルムの幅が非常に増加することになるが、この際、前記増加した幅のフィルムに比べてコーティングされる幅が著しく小さい。そのため、基材フィルムの幅の長さに対する、コーティングされる幅の長さの割合、いわゆるコーティング収率が非常に低くなる。これは、未コーティング部分を無駄にし、フィルム生産性を非常に低下させ、セパレータの原価を上昇させる要因であった。本発明は、このような問題を解決することができるだけでなく、コーティング均一性を高め、基材フィルム上の気孔及び気孔の全面にわたって活性層の安定的な構造を確保することができる。これは、セパレータの優れた物性を根本的に実現するようにする。
【0034】
前記転写ローラ11は、少なくとも2つ以上の接触式コーティングローラ12が連結具13によって一体化されていることを特徴とする。具体的に、図2に示されたように、前記連結具13は、連結しようとする2つのコーティングローラ12を締結することができる。この際、連結具13の形態は特に制限されるものではないが、図3に示されたように、連結具13がコーティングローラ12の一端に形成されたものを用いて連結具13を締結することができる。前記連結具の形態は、一例として、(a)のように締結前に「L」状の連結具13が備えられ、(b)のように互いに噛み合って締結されてもよく、他の例として、(c)のように雌雄ねじの形状を有する連結具13、14が備えられ、(d)のように互いに噛み合って締結されてもよい。
【0035】
前記連結具13の中心軸はコーティングローラ12の回転軸の延長線上にあり、コーティングローラ12の回転軸はモータ41によって回転されるため、連結具13は、モータ41の回転に応じて回転可能な程度のトルク圧力に耐えることができるものであれば、その材質が制限されない。また、連結具13は、回転軸の垂直な断面の形状が、球状、楕円状、多角状などの様々な形状で提供されることができ、コーティングローラの回転に影響を与えなければ、特に制限されない。
【0036】
また、前記連結具13の厚さは、コーティングローラ12の直径より小さいことができる。連結具13の厚さが、コーティングローラ12の直径と同一であるかまたは超える場合には、連結部の不均一なコーティングが誘発される。また、乾燥後トリミング(trimming)時に、無機物の飛散による異物が発生し、収率が低下する恐れがある。前記コーティングローラ12の直径はコーティングローラ12の回転軸に垂直な直径を意味し、前記連結具の厚さは連結具の回転軸に垂直な最長長さを意味する。
【0037】
前記ハウジング22は、転写ローラ11の下部が満たされたコーティング液に接触して載置されるようにローラ溝21を備える。ローラ溝は、下部に向かって断面積が次第に細くなる形態であってもよく、ローラの円周に応じて丸い形態であってもよいが、これに制限されない。この際、ローラ溝21の素材としては、表面がポリテトラフルオロエチレン(poly tetrafluoro ethylene)、すなわち、テフロン(登録商標、Teflon)や超高分子量ポリエチレン(UHMWPE、ultra high molecular polyethylene)から選択される何れか1つ以上からなることができる。この場合、コーティング液が吸収されず、化学的に安定するとともに、耐磨耗性及び潤滑性に優れるためより好ましい。
【0038】
前記転写ローラ11はハウジング22のローラ溝21に載置されるが、これは、コーティング液と接触された状態でローラ溝21に当接することを意味する。本発明のコーティング装置は、コーティング時に、コーティング層の厚さに応じてコーティング量を調節することができるドクターナイフをさらに備えることができる。
【0039】
図4は、本発明の一実施形態による超広幅セパレータ製造装置を概略的に示した図であって、超広幅のセパレータを連続的に製造するインライン製造装置の図である。
【0040】
本発明は、前記インライン製造装置を用いて超広幅セパレータを連続的に製造することができ、より好ましくは、二次電池用セパレータの製造に適用することができる。
【0041】
本発明の超広幅セパレータの製造方法は、シートを延伸して基材フィルムを形成するステップと、前記基材フィルムの片面または両面上にコーティング液をコーティングするステップと、前記コーティングされたフィルムを長さ方向に切断するステップと、前記切断されたフィルムをそれぞれ巻き取るステップと、を含み、前記コーティングステップは、2つ以上の接触式コーティングローラが連結具によって一体化された転写ローラを用いて行う。
【0042】
具体的に、本発明による超広幅セパレータの製造方法は、シート形成ステップと、コーティングステップと、乾燥ステップと、スリットステップと、巻き取りステップと、を含んで行われることができる。
【0043】
前記シート形成ステップは、基材フィルムの構成成分である高分子フィルム組成物を溶融押出し、溶融押出された組成物をダイキャストロール111により基材フィルムに形成するステップである。この際、シートは、延伸または熱処理手段210により延伸または熱処理される。このように延伸または熱処理された基材フィルムは、その片面または両面上に、本発明による超広幅コーティング装置310によりコーティング液をコーティングするコーティングステップを経る。この際、コーティングステップは、2つ以上の接触式コーティングローラが連結具によって一体化された転写ローラを用いて行われ、前ステップで延伸または熱処理により幅の長さが増大されたフィルムの全面に広幅のコーティングが可能である。その後、コーティングされたフィルムを乾燥器410により乾燥する乾燥ステップを経る。前記乾燥されたフィルムは長さ方向に切断するスリットステップを経るが、この際、前記乾燥されたフィルムが連結具に当接する部分で、フィルムの長さ方向に平行にスリットされる。このようにスリットされたフィルムは、それぞれ巻き取られる。ガイドローラ112、113、114、115及び巻き取りローラ510は、それぞれフィルムの移動及び巻き取りのために備えられるものであって、これは概略的な説明のために示されたものであるため、図面に限定されずに変形可能であることはいうまでもない。
【0044】
以下、超広幅セパレータの製造方法について例を挙げて説明する。
【0045】
ポリオレフィン樹脂を含む組成物を溶融押出してシートを成形し、製造されたシートを延伸して基材フィルムを成形した後、熱処理し、熱処理された基材フィルムの少なくとも一面を耐熱性樹脂を含有するコーティング液でコーティングすることで、二次電池用超広幅セパレータを製造する。この際、コーティングは、2つ以上のワイヤバー若しくはグラビアロールを連結具によって締結させ、モータ41によって互いに噛み合って回転するようにすることで、既存のコーティング幅の2倍以上の広幅のコーティングを可能とする。図5は、上述の超広幅セパレータの製造時に、コーティング工程にワイヤバーコーティングを適用した例を概略的に示した図である。連結具13は、広幅の基材フィルム10を連続的にコーティングし、且つ未コーティング部分を最小化してコーティング液を対象フィルムにコーティングすることができるように、3つのワイヤバー12を連結して一体化させる。すなわち、コーティング幅を基材フィルム10の幅程度の広幅にするために、既存のワイヤバー(Wire‐bar)コーティング方式でなく、「変形されたワイヤバーコーティング方式」を用いる。前記「変形されたワイヤバーコーティング方式」は、広幅コーティングに2つ以上の多数のワイヤバーを用いるコーティング方式であって、各ワイヤバーが互いに噛み合って1つのモータによって回転しながらコーティング層を形成することができる。この際、互いに噛み合う部分、すなわち、連結具部分はコーティングされない。これにより、広幅の基材フィルムの殆どを損失なしに連続的に均一にコーティングすることができ、特に、従来の未コーティング部分での収縮、または後工程でテンタータイプの乾燥器を経る場合に生じる垂れや皺を防止することができ、コーティング収率が増大して生産性が画期的に向上することができる。より具体的に、基材多孔膜の幅Bに対する全コーティング幅Cの割合であるコーティング収率を画期的に向上させる。これは、従来のワイヤバーなどによる個別コーティング手段によってコーティングされる幅c1、c2、c3に比べて最小で2倍以上広くなり、コーティング収率を画期的に高めることで、それによる生産性でより低コストのセパレータ製造が可能である。この際、2つ以上のコーティング手段によって結合される部分である連結具のサイズe1、e2は最小化することが好ましいが、好ましくは、転写ローラの長さに対して2~5%の長さを有することができる。前記範囲を満たす場合、連結具部分がコーティング液の供給に対してコーティングローラを支持するため、長さが長い広幅の転写ローラの撓みなどの問題が発生せず、均一なコーティングが可能であって、コーティング収率を極大化することができる。
【0046】
以下、下記実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、これに本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【0047】
(生産性の評価)
20時間以上連続生産時、単位時間(1hr)当たり熱処理工程後の基材フィルムの良品生産量(m/hr)と、熱処理工程が完了した基材フィルムにコーティングを施して製造されたセパレータの良品生産量(m/hr)との割合を用いた。生産性(%)の算出には、下記の式1を用いた。同一の基準で比較するために、本発明による製造方法及び非連続式製造方法で熱処理工程が行われたフィルム(コーティング前の基材フィルム)の単位時間当り生産量を基材フィルムの生産量とした。具体的に、巻き取られるロールの交替による損失、非連続式工程で発生する損失などは、基材フィルムの生産量に含まれるが、セパレータの生産量からは除外される。
【0048】
[式1]
生産性(%)=(セパレータの生産量(m/hr))/(基材フィルムの生産量(m/hr))×100
【0049】
[実施例1]
ポリオレフィン系樹脂(重量平均分子量が3.0×10g/mol、融点が135℃である高密度ポリエチレン)と希釈剤(diluent、40℃で動粘度が160cStであるパラフィンオイル)がそれぞれ28重量%及び72重量%含有された組成物を、二軸コンパウンダを用いて230℃で押出し、T-dieとキャストロールを用いてシートを製造した後、縦方向に112℃で7.5倍、横方向に126℃で6倍逐次延伸した。その後、1.5倍に熱延伸及び熱固定する熱処理を行った。製造された基材フィルムの幅は4,300mmであった。前記製造された基材フィルムにコーティングを連続的に行った。コーティング液としては、Al粉末(平均粒径0.5μm)、ポリビニルアルコール、アクリルラテックス固形分及び脱イオン水からなるものを使用した。
【0050】
コーティングは、幅107.5mmの連結具を2個用いてワイヤバー(長さ:1,400mm)3個を締結した変形ワイヤバーを用いる、変形ワイヤバーコーティング法により行った。連続工程により製造された基材フィルムの片面に前記コーティング液をコーティングした後、110℃に設定された区間で溶媒を乾燥及び除去することで、最終的に厚さ5.0μmのコーティング層を有するポリオレフィン系セパレータを製造した。コーティングされていない部分と膜の両端を切り出すことで、幅1,350mmの最終セパレータを3個得た。その生産速度は5m/minであり、生産された製品は500m単位でロールを交替した。巻き取りが終わったロールを新しいロールに交替する過程で、20mの製品損失が発生した。製造されたセパレータの生産性は、下記表1に示した。
【0051】
[実施例2]
製造されたシートを縦方向に115℃で6.5倍、横方向に127℃で6.5倍逐次延伸したことを除き、実施例1と同様に行っており、熱処理後に製造された基材フィルムの幅は4,200mmであった。
【0052】
前記方法により製造された基材多孔膜にコーティングを連続的に行った。
【0053】
コーティングに使用されたコーティング液は、Al粉末(平均粒径0.8μm)46wt%、溶融温度が220℃であるポリビニルアルコール1.9wt%、ガラス転移温度が-45℃であるアクリルラテックス固形分1.4wt%、及び脱イオン水50.7wt%で構成されたものであり、コーティング前に予め溶液を製造して使用した。
【0054】
コーティングは、幅105mmの連結具を2個用いてワイヤバー(長さ:1,300mm)3個を締結した変形ワイヤバーを用いる、変形ワイヤバーコーティング法により行った。連続工程により製造された基材フィルムの両面に前記コーティング液をコーティングした後、130℃に設定された区間で溶媒を乾燥及び除去することで、最終的に厚さ6.0μmのコーティング層を有するポリオレフィン系セパレータを製造した。コーティングされていない部分と膜の両端を切り出すことで、幅1,250mmの最終セパレータを3個得た。その生産速度は5m/minであり、生産された製品は500m単位でロールを交替した。巻き取りが終わったロールを新しいロールに交替する過程で20mの製品損失が発生した。製造されたセパレータの生産性は、下記表1に示した。
【0055】
[比較例1]
実施例2と同様の方法により基材フィルムを製造し、この際に製造された基材フィルムの幅は実施例2と同様に4,200mmであった。
【0056】
前記方法により製造された基材フィルムに、実施例2で使用したものと同様のコーティング液を用いてコーティングを連続的に行った。
【0057】
コーティングは、上記の方法により製造される基材フィルムに、1つのワイヤバーを用いた一般ワイヤバーコーティング法を適用した連続工程により、幅2,000mmに両面にコーティングした後、110℃に設定された区間で溶媒を乾燥及び除去することで、最終的に厚さ6.0μmのコーティング層を有するポリオレフィン系セパレータを製造した。コーティングされていない部分と膜の両端を切り出すことで、幅1,950mmの最終セパレータを得た。その生産速度は5m/min、最終製品の長さは500mとなった。巻き取りなどのその他の工程は、実施例2と同様に行った。
【0058】
[比較例2]
コーティング幅2,000mmの一般ワイヤバー両面コーティングに代えて、コーティング幅2,000mmの一般グラビア片面コーティングを用いたことを除き、比較例1と同様に行った。
【0059】
[比較例3]
コーティング幅2,000mmの一般ワイヤバー両面コーティングに代えて、コーティング幅2,000mmの一般ダイ(Die)両面コーティングを用いたことを除き、比較例1と同様に行った。この場合、基材フィルムの柔軟性及び乾燥器による揺れ現象によって均一にコーティングされず、製品化が不可能であった。
【0060】
[比較例4]
コーティング幅2,000mmの一般ダイを平行に取り付けることで片面コーティング時のコーティング幅を増やしたことを除き、比較例3と同様に行った。この場合、比較例3と同様に製品化が不可能であった。
【0061】
【表1】
【0062】
以上のように、本発明が限定された実施例により説明されたが、これは本発明のより全体的な理解のために提供されたものにすぎず、本発明は前記実施例によって限定されるものではない。本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から様々な修正及び変形が可能である。
【0063】
したがって、本発明の思想は、上述の実施例に限定して決まってはいない。添付の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等若しくは等価的変形がある全てのものなどが本発明の思想の技術的範囲に属するといえる。
【符号の説明】
【0064】
11 転写ローラ
12 接触式コーティングローラ
13、14 連結具
21 ローラ溝
22 ハウジング
31 コーティング液流入管
32 コーティング液供給器
41 モータ
111 キャストロール
112、113、114、115 がイドロール
210 延伸または熱処理手段
310 超広幅コーティング装置
410 乾燥器
510 巻き取りローラ
B 基材フィルムの幅
C 全コーティング幅
c1、c2、c3 コーティングされる幅
e1、e2 連結具のサイズ
図1
図2
図3
図4
図5