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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】組織修復のための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/04 20060101AFI20230828BHJP
   A61B 17/56 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
A61B17/04
A61B17/56
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018161183
(22)【出願日】2018-08-30
(65)【公開番号】P2019042507
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】15/692,720
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514046806
【氏名又は名称】メドス・インターナショナル・エスエイアールエル
【氏名又は名称原語表記】Medos International SARL
【住所又は居所原語表記】Chemin-Blanc 38, CH-2400 Le Locle, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ジェイ・オルファノス
(72)【発明者】
【氏名】キルスティン・エイチ・アアーズボールド
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・オトランド
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-510789(JP,A)
【文献】特開2005-237966(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0065114(US,A1)
【文献】特表2016-530001(JP,A)
【文献】特開2011-025036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/04
A61B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用装置であって、
第1のインプラントであって、円柱状であり、その対向する底面のうち一方の底面他方の底面から遠ざかる方向にテーパ状の端部の形状であり、前記他方の底面円周方向外向きに突出した縁部を有する、第1のインプラントと、
変化可能な形態を有する第2のインプラントと、
前記第1のインプラントと前記第2のインプラントとを連結する可撓性要素であって、摺動結び目で閉じられた調節可能ループを形成し、前記摺動結び目から延びる第1及び第2の自由端を有する、可撓性要素と、を含み、
前記可撓性要素の前記第1の自由端が、張力がかけられることによって前記調節可能ループのサイズを減少させ、それによって前記第2のインプラントの前記形態を変化させるように構成されている、外科用装置。
【請求項2】
前記摺動結び目が、前記可撓性要素の前記第1の自由端の周りに前記可撓性要素の前記第2の自由端を巻き付けることによって形成されている、請求項1に記載の外科用装置。
【請求項3】
前記第1のインプラントが、連結機構を介して前記調節可能ループに連結されている、請求項1に記載の外科用装置。
【請求項4】
前記第1のインプラントが実質的に剛性であり、前記第2のインプラントが実質的に非剛性かつ形状適合性である、請求項1に記載の外科用装置。
【請求項5】
前記第1及び第2のインプラントが実質的に剛性である、請求項1に記載の外科用装置。
【請求項6】
前記第1及び第2のインプラントが実質的に非剛性かつ形状適合性である、請求項1に記載の外科用装置。
【請求項7】
前記第1及び第2のインプラントが前記調節可能ループに摺動可能に連結されている、請求項1に記載の外科用装置。
【請求項8】
前記第2のインプラントが前記調節可能ループの長さに沿って形成された部材を含み、これによって、前記調節可能ループのサイズの減少が前記第2のインプラントの長さを減少させるとともにその直径を増大させる、請求項1に記載の外科用装置。
【請求項9】
前記部材が、前記調節可能ループの一部分の周りに巻き付けられた縫合糸ストランドで形成されている、請求項8に記載の外科用装置。
【請求項10】
変化可能な形態を有する第3のインプラントと、
第2の摺動結び目で閉じられた第2の調節可能ループを形成し、第3及び第4の自由端を有する、第2の可撓性要素と、
を更に含み、
前記第2の可撓性要素に前記第3のインプラントが連結され、前記第3の自由端が、張力がかけられることによって前記第2の調節可能ループのサイズを減少させ、それによって前記第3のインプラントの前記形態を変化させるように構成され、
前記第1のインプラントが前記第2の調節可能ループに連結されている、請求項1に記載の外科用装置。
【請求項11】
前記第1及び第2のインプラントは、前記調節可能ループ内に配置されており、前記摺動結び目は、前記第2のインプラントの直ぐ隣に配置され、前記可撓性要素の前記第1の自由端が、張力がかけられることによって前記調節可能ループのサイズを減少させるとき、前記摺動結び目は、前記第2のインプラントに直接接触するように構成されている、請求項1に記載の外科用装置。
【請求項12】
前記第1のインプラントが軟組織の片側の手術部位の骨へと配置され、前記第2のインプラントが前記軟組織の反対側に配置されるように、前記第1のインプラントと前記第2のインプラントとが前記調節可能ループ上で離間している、請求項11に記載の外科用装置。
【請求項13】
組織を骨に取り付けるための外科用アセンブリであって、
組織貫通遠位先端を備えたシャフトを有する送達装置であって、前記シャフトが、前記シャフトの長さの少なくとも一部分に沿ってその側壁を通って延在する長手方向溝を有する、送達装置と、
配置可能なインプラント構造体であって、
前記送達装置に付随する第1のインプラントであって、円柱状であり、その対向する底面のうち一方の底面他方の底面から遠ざかる方向にテーパ状の端部の形状であり、前記他方の底面は、円周方向外向きに突出した縁部を有する、第1のインプラントと、
変化可能な形態を有する第2のインプラントと、
前記第1のインプラントと前記第2のインプラントとを連結する可撓性要素であって、摺動結び目で閉じられた調節可能ループを形成し、前記摺動結び目から延びる第1及び第2の自由端を有する可撓性要素と、を含む、インプラント構造体と、を含み、
前記可撓性要素の前記第1の自由端が、張力がかけられることによって前記調節可能ループのサイズを減少させ、それによって前記第2のインプラントの前記形態を変化させるように構成されている、外科用アセンブリ。
【請求項14】
前記第1のインプラントが、前記シャフトの前記長手方向溝内に着脱可能に配置され、第2のインプラントが、前記長手方向溝の外側に配置されている、請求項13に記載のアセンブリ。
【請求項15】
前記第1及び第2のインプラントが、前記シャフトの前記長手方向溝内に着脱可能に配置されている、請求項13に記載のアセンブリ。
【請求項16】
前記送達装置が、前記組織貫通遠位先端及び前記長手方向溝を有する針を含む、請求項13に記載のアセンブリ。
【請求項17】
前記第1及び第2のインプラントは、前記調節可能ループ内に配置されており、前記摺動結び目は、前記第2のインプラントの直ぐ隣に配置され、前記可撓性要素の前記第1の自由端が、張力がかけられることによって前記調節可能ループのサイズを減少させるとき、前記摺動結び目は、前記第2のインプラントに直接接触するように構成されている、請求項13に記載のアセンブリ。
【請求項18】
前記第1のインプラントが軟組織の片側の手術部位の骨へと配置され、前記第2のインプラントが前記軟組織の反対側に配置されるように、前記第1のインプラントと前記第2のインプラントとが前記調節可能ループ上で離間している、請求項17に記載のアセンブリ。
【請求項19】
前記調節可能ループに前記第1及び第2のインプラントが連結されており、
前記第2のインプラントが前記調節可能ループの長さに沿って形成された部材を含み、これによって、前記調節可能ループのサイズの減少が前記第2のインプラントの長さを減少させるとともにその直径を増大させる、請求項14に記載のアセンブリ。
【請求項20】
前記部材が、前記調節可能ループの一部分の周りに巻き付けられた縫合糸ストランドで形成されている、請求項19に記載のアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概してノットレス組織修復のための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な負傷及び症状が、軟組織の修復、又は軟組織の骨及び/又は周辺組織への再付着を必要とする。例えば、肩の回旋腱板腱が上腕骨から部分的に又は完全に引き裂かれたときのように(腱板断裂)、通常であれば健康な組織が骨から剥離した場合、治癒及び自然な再付着を生じさせるために、組織を骨に再付着させる手術が必要となる場合が多い。これらの外科的修復を実施するために、数多くの装置及び方法が開発されてきた。より良い結果をもたらす方法のいくつかは、縫合糸アンカーなどの縫合固定部材の使用を含むものであり、この縫合糸固定部材は通常、1つ又は2つ以上の縫合糸取り付け機構を有するアンカー本体と、縫合糸アンカーを組織若しくは骨の中に、又は組織若しくは骨に隣接して保持するための、組織又は骨係合機構とを有している。特定の傷害に応じて、縫合糸の1つ又は2つ以上のセグメントと連結された、あるいは縫合糸の1つ又は2つ以上のセグメントで相互に連結された1つ又は2つ以上の縫合糸アンカーが、修復を実施するために使用され得る。
【0003】
単一の種類の組織の実質において、例えば膝の半月板において断裂が生じる場合(半月板断裂)にもまた、外科手術が必要となることがある。そのような断裂を修復する1つの方法は、ある長さの縫合糸を組織に通し、縫合糸を結ぶことによって、断裂を縫合して閉鎖することである。縫合糸はまた、そのような組織の断裂を修復するために、1つ又は2つ以上の縫合糸アンカーと共に使用され得る。縫合糸は、修復手技の間に外科医によって結ばれた結び目を用いて、あるいは、外科医が外科手術の間に結び目を結ぶことを必要とせずに1つ又は2つ以上のアンカーと1本又は2本以上の縫合糸とを連結して緊張させることができる「ノットレス(knotless)」装置及び方法を用いて、縫合糸アンカー及び組織に締結することができる。ノットレス式の固定は、内視鏡又は関節鏡による修復など、低侵襲外科手術に特に有用なものであり、低侵襲外科手術において、外科医は、小さな経皮切開、小径のカニューレ、又は内視鏡チューブを通して挿入された器具を使用して、手術部位にて縫合糸を遠隔式で操作しなければならず、これにより、結び目結びプロセスは困難でかつ時間を要するものとなり得る。
【0004】
剥離又はその他の損傷を受けた組織を修復するために、多くの縫合糸固定システムが開発されているがこれらにはいくつかの欠点がある。例えば、肩の不安定性の修復などの外科処置は、縫合糸を幾分煩雑なやり方で通す複数の段階を伴うことがあり、結び目を結ぶことが潜在的に必要となることがあり、また外科処置を複雑化及び延長する他の工程を行うことが必要となることがあり、よってその結果に影響を及ぼす場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、組織修復装置、システム、及び方法の改良が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一般に、手術部位において外科用構造体を配置するためのシステム及び方法が提供される。
【0007】
一態様では、外科用装置が提供され、これはいくつかの実施形態において、第1のインプラントと、変化可能な形態を有する第2のインプラントと、第1のインプラントと第2のインプラントを連結する可撓性要素であって、摺動結び目で閉じられた調節可能ループを形成し、かつ結び目から延びる第1及び第2の自由端を有する可撓性要素と、を含む。この可撓性要素の第1の自由端は、張力がかけられることによってループのサイズを減少させ、それによって第2のインプラントの形態を変化させるように構成される。
【0008】
外科用装置は、任意の数の変形例を有し得る。例えば、可撓性要素の第1の自由端の周りに可撓性要素の第2の自由端を巻き付けることによって、摺動結び目を形成することができる。別の例として、第1のインプラントは、連結機構を介してループに連結され得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、第1のインプラントは実質的に剛性であり得、第2のインプラントは実質的に非剛性かつ形状適合性であり得る。いくつかの実施形態では、第1及び第2のインプラントは、実質的に剛性であり得る。いくつかの実施形態では、第1及び第2のインプラントは、実質的に非剛性かつ形状適合性であり得る。いくつかの実施形態では、第1及び第2のインプラントは、ループに摺動可能に連結されていてもよい。
【0010】
第2のインプラントは、多様に異なり得る。例えば、第2のインプラントは、ループを含み得るか、又はループの長さに沿って形成された部材であってよく、これによって、ループのサイズの減少によって、第2のインプラントの長さを減少させ、かつその直径を増大させるようにする。いくつかの実施形態では、この部材は、ループの一部分に巻き付けられた縫合糸ストランドから形成することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、外科用装置は更に、変化可能な形態を有する第3のインプラントと、第2の摺動結び目で閉じられた第2の調節可能ループを形成し、かつ第3及び第4の自由端を有する、第2の可撓性要素とを含み得る。第2の可撓性要素には第3のインプラントが連結されてよく、第3の自由端は、張力がかけられることによって第2のループのサイズを減少させ、それによって第3のインプラントの形態を変化させるように構成することができる。第1のインプラントは、第2のループに連結することができる。
【0012】
別の態様において、組織を骨に付着させるための外科用アセンブリが提供され、これはいくつかの実施形態において、送達装置及び配置可能なインプラント構造体を含む。送達装置は、組織貫通遠位先端を備えたシャフトを有してよく、このシャフトは、シャフトの少なくとも一部分に沿ってその側壁を通って延在する長手方向溝を有する。この配置可能なインプラント構造体は、送達装置に付随する第1のインプラントと、変化可能な形態を有する第2のインプラントと、第1のインプラントと第2のインプラントとを連結する可撓性要素であって、この可撓性要素は、摺動結び目で閉じられた調節可能ループを形成し、かつ摺動結び目から延びる第1及び第2の自由端を有する可撓性要素とを有することができる。この可撓性要素の第1の自由端は、張力がかけられることによってループのサイズを減少させ、それによって第2のインプラントの形態を変化させるように構成され得る。
【0013】
システムは、数多くの変形例を有し得る。例えば、第1のインプラントは、シャフトの溝内に着脱可能に配置することができ、第2のアンカーは、溝の外側に配置することができる。別の例として、第1及び第2のインプラントは、シャフトの溝内に着脱可能に配置され得る。いくつかの実施形態において、送達装置は、組織貫通遠位先端及び長手方向溝を有する針を含み得る。
【0014】
更に他の態様において、外科的方法が提供され、方法は、いくつかの実施形態において、第1のインプラントと、第2のインプラントと、予め結ばれた摺動結び目を有し、第1のインプラントと第2のインプラントとを連結するループを形成する可撓性要素と、を有する構造体を、手術部位へと前進させることと、第1のインプラントが、軟組織に隣接する骨内へと貫通させられて軟組織の第1の側に位置し、第2のインプラントが軟組織の第2の反対側に配置されるように、構造体を手術部位内に配置することと、摺動結び目から延びる可撓性要素の結んでいない端に張力をかけることで可撓性要素を摺動結び目に通して摺動させることによってループのサイズを減少させるとともに第2のインプラントの形態を変化させ、それにより、少なくとも第2のインプラントを第1のインプラントの方向に動かすことと、を含む。
【0015】
この方法は、様々な形で異なりうる。例えば、縫合糸に張力をかけることには、第1の末端縫合糸を引っ張ることによって摺動結び目をロックすることが含まれ得る。別の例として、第2のアンカーは、第2のアンカーの少なくとも1つの寸法が減少するように形態を変化させることができる。この少なくとも1つの寸法には、例えば、第2のアンカーの長さが含まれ得る。
【0016】
いくつかの実施形態において、構造体を手術部位内に配置することには、構造体が着脱可能に付随している外科用器具の針の遠位先端を組織に貫通させることが含まれ、それによって遠位先端が、軟組織の第2の側から軟組織の第1の側へと通され、かつ骨内へと前進させられることで第1のアンカーを骨内に配置し、このとき第2のアンカーは、遠位先端が第2の側から第1の側へと通される際に組織の第2の側に配置される。
【0017】
他の実施形態において、構造体を手術部位内に配置することは、構造体が着脱可能に付随している外科用器具の針の遠位先端を組織に貫通させることによって遠位先端が軟組織の第1の側から軟組織の第2の側へと通されることで第2のアンカーを第2の側に配置することと、針を第1の側へと引き戻すことと、針の遠位先端を骨内へと前進させて第1のアンカーを骨内に配置することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本開示は、以下の詳細な説明を添付図面と併せ読むことで、より完全に理解されよう。
図1】外科用装置の一実施形態の斜視概略図である。
図2】外科用装置が埋め込まれている肩関節の側面断面図である。
図3】送達装置の一実施形態の斜視図である。
図4図3の送達装置の遠位部分の斜視図である。
図5】送達装置の一実施形態の遠位部分の斜視図である。
図6】送達装置の別の一実施形態の遠位部分の斜視図である。
図7A】送達装置の更に別の一実施形態の遠位部分の斜視図である。
図7B】送達装置の更に別の一実施形態の遠位部分の斜視図である。
図7C】外科用装置の一実施形態の斜視図である。
図8A】患者の肩関節の組織修復を行う方法の一実施形態を示す、側面概略図である。
図8B図8Aの方法を示す別の側面斜視図である。
図8C図8Bの方法を示す別の側面斜視図である。
図8D図8Cの方法を示す別の側面斜視図である。
図9】患者の肩関節の組織修復を行う方法の別の一実施形態を示す、側面概略図である。
図10】外科用装置の一実施形態の斜視概略図である。
図11】外科用装置の別の一実施形態の斜視概略図である。
図12】外科用装置の更に別の一実施形態の斜視概略図である。
図13】外科用装置のまた別の一実施形態の斜視概略図である。
図14】外科用装置のまた別の一実施形態の斜視概略図である。
図15】外科用装置のまた別の一実施形態の斜視概略図である。
図16図15の外科用装置が埋め込まれている肩関節の側面断面図である。
図17A】患者の肩関節の組織修復を行う方法の一実施形態を示す、側面概略図である。
図17B図17Aの方法を示す別の側面概略図である。
図17C図17Bの方法を示す別の側面概略図である。
図17D図17Cの方法を示す別の側面概略図である。
図17E図17Dの方法を示す別の側面概略図である。
図18A】外科用装置の一実施形態の斜視概略図である。
図18B図18Aの外科用装置の別の斜視図である。
図18C】外科用装置の別の一実施形態の斜視概略図である。
図19A】患者の肩関節の組織修復を行う方法の一実施形態を示す、側面概略図である。
図19B図19Aの方法を示す別の側面概略図である。
図19C図19Bの方法を示す別の側面概略図である。
図20A】送達装置の針の一実施形態を示す斜視図である。
図20B図20Aの針の別の斜視図である。
図21】送達装置の針の別の一実施形態を示す斜視図である。
図22】外科用装置の一実施形態の斜視概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本明細書で開示する装置及び方法の構造、機能、製造、及び使用の原理の全体的な理解が得られるように、特定の例示的な実施形態を説明する。これらの実施形態の1つ又は2つ以上の実施例が、添付の図面に示されている。当業者であれば、本明細書で具体的に説明され、かつ添付の図面に例示される装置及び方法が、非限定的な例示的実施形態であること、並びに本発明の範囲が、特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解するであろう。1つの例示的な実施形態に関連して例示又は説明される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。このような改変及び変形は、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0020】
更に、本開示においては、実施形態の同様の参照符合を付した構成要素は概して同様の特徴を有するものであり、したがって、特定の実施形態において、同様の参照符合を付した各構成要素の各特徴について必ずしも完全に詳しく述べることはしない。加えて、開示されるシステム、装置及び方法の説明で直線寸法又は円寸法が使用される範囲において、かかる寸法は、かかるシステム、装置及び方法と組み合わせて使用することができる形状の種類を限定しようとするものではない。当業者には、任意の幾何学的形状についてかかる直線寸法及び円寸法に相当する寸法を容易に決定することができる点が認識されるであろう。システム及び装置並びにその構成要素のサイズ及び形状は、少なくともシステム及び装置が用いられる被験者の解剖学的構造、システム及び装置がそれらと共に用いられる構成要素のサイズ及び形状、並びにシステム及び装置が用いられる方法及び処置によって決まり得る。更に、「実質的」は、製造のばらつき、温度変化、その他のパラメータに基づく範囲として定義される。
【0021】
一般に、組織修復構造体(本明細書では外科用装置とも呼ばれる)が提供される。組織修復構造体は、例えば縫合糸などの可撓性要素を介して連結された、第1及び第2のインプラント又は縫合糸アンカーを含む。可撓性要素は、それ自体に連結されかつ摺動結び目を介して閉じられた第1及び第2のインプラントを有する調節可能なループを形成し、この可撓性要素は、結び目から延びる第1及び第2の自由端を有する。摺動結び目は、第1の自由端の周りで第2の自由端を包み込むことによって形成することができ、これにより第1の自由端は、緊張端(ポストリム端)となる。
【0022】
組織修復構造体は、縫合糸アンカーを使用した既存の組織修復アプローチに比べて、少ない工程数を伴うやり方で配置することができる。具体的には、送達装置(縫合糸通過器又は針など)を使用して、インプラントの一方を軟組織の片側の手術部位の骨に配置し、インプラントのもう一方の側を、軟組織の第2の反対側に配置することができる。このように、可撓性要素の調節可能なループは、その相対する側に第1及び第2のインプラントを有する軟組織にまたがることができる。インプラントが所望の位置に位置決めされると、可撓性要素の第1の自由端(外科医からアクセス可能であるように手術部位から延びている)には、張力をかけることができ、それによって可撓性要素が摺動結び目を通って摺動し、それによって、少なくとも第2インプラントが第1インプラントに向かって移動するようにループのサイズを小さくし、それによって軟組織を骨に近付けることができる。いくつかの実施形態では、第2のインプラントは、第1の自由端に張力がかけられているときに形態が変化するように変化可能な形態を有することができる。
【0023】
本明細書に記載の外科用装置は、好適な送達装置を使用して配置することができる。例えば、遠位部分(例えば送達装置のシャフトの一部、又はシャフトに連結された針など)は、その長さの少なくとも一部に沿って側壁を通って延びる長手方向溝を有する。この長手方向溝は、外科用装置の1つ以上のインプラントを着座させることができる。いくつかの実施形態では、この溝は、骨内に埋め込まれるように構成された第1のインプラントを着座させ、このとき、第2のインプラント(調整可能ループを介して第1のインプラントに連結され、かつ、軟組織の周囲側に配置されている)は、第1のインプラントを着座させる溝の外側に配置される。第2のインプラントは、簡略化された「受動的な」形で配置することができ、これにより第2のインプラントは、軟組織の一方の側にある埋入部位において、送達装置が軟組織の別の側に移動したときに、その送達装置から切り離される。このように、送達装置の遠位端を、第1のインプラントが所望の位置の骨内に配置され軟組織の側へと通過させる作業は、軟組織の反対側にある第2のインプラントを実質的に同時に配置することを含む。あるいは、第2のアンカーの「受動的な」配置は、送達装置が関節スペースから除去される際にも起こり得、それによって送達装置は、第1のインプラントが所望の位置で骨内に配置される前に軟組織を通過し、第2のインプラントは、経路を通って後退した後、送達装置が関節から除去される際に、送達装置から切り離される。これにより、送達装置を除去する作業は更に、軟組織の反対側に第2のインプラントを実質的に同時に配置することを含む。このようにして、インプラントがいったん配置されると、あとは必要なのは、例えば手術部位の解剖学的特性、修復される欠損の範囲、及び/又はその他の要因に基づいて、可撓性要素の一方の自由端に張力をかけて、ループのサイズを調節することだけである。
【0024】
したがって、本明細書に記載の技法は、より少ない構成要素数を有する組織修復システムを提供する。このシステムは、縫合糸を通すために、及び縫合糸アンカーを所望の方法で配置するために、追加の器具を必要としないので、従来型システムに比較して簡略化された方法で使用することができる。更に、本明細書に記載の技法では、同じ工程の一部として、縫合糸通しとインプラント配置とを行うことが可能になる。縫合糸通しの別個の工程が単純化又は省略されるので、外科手技(例えば、肩不安定性修復)を、より迅速にかつ少ない操作手順数で行うことができる。また、本明細書に記載の技法では、埋め込み可能な構造体の可撓性要素の張力に対して、改善された制御が提供される。既存のシステムでは、アンカーが骨に埋入された後、手術用縫合糸に張力をかけることはできないが、本明細書に記載の組織修復構造体では、少なくとも1つのインプラントが骨内に埋め込まれた後に、可撓性要素に張力をかけることができる。
【0025】
外科用装置の第1及び第2のインプラントは、数多くの様々な形態を有することができる。例えば、第1のインプラントは実質的に剛性であり得、第2のインプラントは実質的に非剛性かつ形状適合性であり得る。別の実施形態では、第1及び第2のインプラントの両方が剛性であり得、又は両方が非剛性かつ形状適合性であり得る。第1及び第2のインプラントそれぞれは、異なる数のインプラントを含み、2つ以上のインプラントの形態であってもよい。
【0026】
図1は、変化可能な形態を有する第1のインプラント102及び第2のインプラント104を含む組織修復構造体又は外科用装置100の一実施形態を示している。外科用装置100は更に、第1のインプラント102と第2のインプラント104とを連結する可撓性要素106を有する。図1に示すように、可撓性要素106は、摺動結び目110によって閉じられ、かつ、結び目110から延びる第1及び第2の尾部又は自由端112、114を有する、調節可能ループ108を形成する。図示のように、第1及び第2のインプラント102、104は、調整可能ループ108に連結されている。
【0027】
図1において、摺動結び目110は、単に例示目的のため、緩んだ形態で示されていることに注意されたい。配置準備済み形態(例えば、この形態で外科用装置100が好適な送達装置に付随している)において、可撓性要素106によって形成された摺動結び目110は、予め結ばれたより堅い結び目の形態である。図示の実施形態において、摺動結び目110、並びに本明細書に記述される他の摺動結び目は、例えば米国特許第8,828,053号「Methods and devices for repairing and anchoring damaged tissue」に開示されているように形成することができ、この全体が参照により本明細書に組み込まれる。ただし、摺動結び目110は、その他の様々な方法で形成し得ることが理解されよう。摺動結び目110は、係止端とも呼ばれる第2の自由端114が第1の自由端112(これは、ポストリム部とも呼ばれる)の周りにループ状になるように形成される。摺動結び目110、並びに本明細書に記載される他の摺動結び目は、図示目的のため、特定の方法で形成されるように示されていることが理解されよう。任意の他の好適な種類の摺動係止結び目を用いることができる。また、この実施形態において、また本明細書に記載される他の実施形態においても、摺動結び目は、インプラント配置の前又は後に、インプラントを通って通過又は破断できないように形成される。
【0028】
第1の自由端112は、張力がかけられることによってループ108のサイズを減少させ、それによって第2のインプラント104の形態を変化させるように構成される。可撓性要素106は、縫合糸又は他の任意の可撓性要素の形態であってよい。
【0029】
第1及び第2のインプラント102、104は、任意の数の様々な形態を有し得る。例えば、図示の実施形態のように、第1のインプラント102は実質的に剛性であり得、一方第2のインプラント104は実質的に非剛性かつ形状適合性であり得る。第1のインプラント102は、任意の好適な形状を有し得る。例えば、図1の実施例のように、第1のインプラント102は概ね円柱状であってよく、その短い側のうち一方116は鋭角のテーパ状の端部の形状であってよく、他方の対向する短い側118は、概ね平坦であってよい。ただし、側18は、例えば突出した縁部119などの他の要素を有し得る。例えば、テーパ状端部116及びエッジ119のような要素は、インプラント102と骨との係合を容易にすることができる。また、これら又は他の要素のうちの1つ又は2つ以上は、切断面を有してもよい。第1のインプラント102は、概ね円柱形を含む任意の他の適切な形状を有し得ることが理解されよう。第1のインプラント102は、実質的に剛性であってよく、又は、実質的に非剛性かつ形状適合性であり得る。第1のインプラント102の長い側及び短い側は、対称的又は非対称的であってよく、追加的に又は代替的に、1つ又は2つ以上の突出した、あるいは窪んだ特徴のような任意の他の要素を有してもよい。
【0030】
図示の実施例において、可撓性要素106は1つの位置120で第1のインプラント102を通過し、これにより第1のインプラント102はこの単一位置でループ108に連結される。ただし、他の実施形態において、可撓性要素は、第1のインプラントの複数の位置で第1のインプラントを通過し得ることが理解されよう。また、いくつかの実施形態において、第1のインプラントは、連結機構を介して、又は他の形で、ループに連結され得る。第1のインプラント102は、可撓性要素106に摺動可能に連結され得る。ただし、いくつかの実施形態において、第1のインプラント102は、可撓性要素106に固定的に連結され得る。例えば、可撓性要素106の一部は、第1のインプラント102に、圧着、接着剤による接着、インプラント102の周りに結び付ける、などによって取り付けることができる。
【0031】
第2のインプラント104は、様々な形態を有し得る。図示の実施例では、上述のように、第2のインプラント104は実質的に非剛性かつ形状適合性である。図1に示すように、第2のインプラント104は、ループ108の長さに沿って形成された部材の形態であってよく、これにより、ループ108のサイズの減少によって、第2のインプラント104の長さを減少させ、直径を増大させるようにする。例えば、第2のインプラント104は、ループ108の部分に巻き付けられた縫合糸ストランド(可撓性要素106から別体とすることが可能)から形成することができる。縫合糸ストランドは、ループ108の部分に任意の好適な方法で巻き付けることができ、これによって、縫合糸ストランドは収縮するか又は他の形態変化を行って、その直径を増大させることができる。例えば、縫合糸は、ループ108の一部分の周囲で相互に絡め、編まれ、又は織られていてよく、あるいはそれ以外の操作で第2のインプラント104を形成することができる。第2のインプラント104は、第2のインプラント104が組織に押し付けられたとき、及び/又はポストリム部112が後述のように引っ張られたときに、(直径が)より幅広でより短い形態に押しつぶすことができるような、蛇腹状に形成することができる。いくつかの実施形態において、第2のインプラント104は、米国特許第9,173,645号「Anchor assembly including expandable anchor」に開示されるアンカー本体と同様に形成することができ、この全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
図示の実施形態において、第1及び第2のインプラント102、104は、ループ108に摺動可能に連結される。ただし、他の実施形態において、少なくとも第1のインプラントが、ループ108に固定的に取り付けられてもよいことが理解されよう。記載された技法に従った外科用装置の第1及び第2のインプラントは、多くの形で異なり得ることが理解されよう。例えば、下記で詳述されるように、第1及び第2のインプラントは、2つ以上のインプラントをそれぞれに含むことができる。いくつかの実施形態において、第1のインプラントは、2つ以上のインプラントを包含することができ、第2のインプラントは、単一のインプラントとすることができる。他の実施形態では、第1のインプラントは単一のインプラントとすることができ、第2のインプラントは2つ以上のインプラントを包含することができる。
【0033】
第1のインプラント及び第2のインプラントは、同一又は異なる数のインプラントを含むことができ、各インプラントは、実質的に剛性であってよく、又は実質的に非剛性かつ形状適合性であってもよい。例えばいくつかの実施形態では、第1のインプラントは実質的に剛性であり得、第2のインプラントは実質的に非剛性かつ形状適合性であり得る。別の例として、いくつかの実施形態では、第1及び第2のインプラントは、実質的に剛性であり得る。更なる例として、いくつかの実施形態では、第1及び第2のインプラントは、実質的に非剛性かつ形状適合性であり得る。インプラントは、直接ループに連結することができ(例えば、ループの一部分が1箇所又はそれ以上の場所で通過できる)、又は、連結部材を介して連結することができる。更にいくつかの実施形態では、2つ以上の装置が、第1のインプラントを介して互いに連結され得る。例えば、各装置は、可撓性要素と、変化可能な形態を有する第2のインプラントとを含み得、この装置は、装置の別個の可撓性要素が同じ第1のインプラントに連結されるように第1のインプラントを共有することができる。
【0034】
例示的な実施形態では、図1の外科用装置100などの外科用装置は、第1のインプラントが骨に付着させられる軟組織に隣接して骨内に配置され、第2のインプラントが軟組織の第2の反対側に配置されるようにして患者の体内の外科的部位に配置することができる。第2のインプラントの形態は、摺動結び目から延びる可撓性要素の結んでいない端に張力をかけることによって変化させることができ、可撓性要素を摺動結び目に通して摺動させてループのサイズを減少させ、これによって第2のインプラントの形態を変化させることができる。
【0035】
外科的方法は下記で詳述されるが、図2は一般に、関節唇損傷207を修復するために肩関節201内に配置される外科用装置100’(図1の装置100と同様)の一実施形態を示す。損傷207は、バンカート関節唇損傷、SLAP損傷(前部から後部への上関節唇損傷)、又は任意の他の損傷であり得る。外科用装置100’は、これも下記で述べられるように、好適な送達装置を使用して、より少ない工程数で配置することができる。図2に示すように、可撓性要素106’を介して連結されてループ及び摺動結び目110’を形成している第1及び第2のインプラント102’、104’を有する外科用装置100’は、第1のインプラント102’が関節唇205の一方の側の関節窩203内に配置されるように位置付けることができる。変化後の形態にある第2のインプラント104’は、関節唇205の反対側に配置される。摺動結び目110’から延びる末端112’(図1の可撓性要素106の末端112と同様であり得る)に張力がかかっているとき、可撓性要素106’は摺動結び目110’を通って摺動し、これによってループのサイズを小さくし、第2のインプラント104’の形態を変化させる。このようにして、第2のインプラント104’が第1のインプラント102’に向かって動き、関節唇205を関節窩203に取り付け、これによって損傷207を修復する。
【0036】
記述されている外科用装置を使用して組織を骨に取り付けるための外科用アセンブリは、任意の好適な送達装置を含み得る。図3は、組織貫通遠位先端302dを備えたシャフト302を有する送達装置300の一実施形態を示す。シャフト302の少なくとも一部分は、シャフト302の長さの少なくとも一部に沿って、その側壁を通って延びる長手方向溝304を有する。例示的な実施形態では、図3に示すように、シャフト302は、中央部分306と、中央部分306から遠位方向に延びる針308とを有する。よって、この実施例において、針308は、中央部分306に連結された別の部品であってもよく、又は、シャフト302の中央部分306と一体的及び/又はモノリシックに形成することができ、その側壁を通って延びる長手方向溝304と、シャフト302の組織貫通遠位先端302dに一致する遠位先端308dとを有する。
【0037】
針308の長さの少なくとも一部分に沿って延びる長手方向溝304は、外科用装置(例えば図1の外科用装置100、又は任意の他の装置)の第1及び第2のインプラントの少なくとも一方を、着脱可能に着座させることができる。よって、図4は、針308の溝304が、縫合糸の形態の可撓性要素406を介して、第1及び第2のインプラント(図では見えない)を有する外科用装置400を着座させているところを示す。可撓性要素406の少なくとも一部分は、この実施例で概略的に示されるように、溝304を越えて延在することができる。また、第2のインプラント(例えば、図1における第2のインプラント104と同様のインプラント)は、溝304の外側に配置することができ、いくつかの実施形態においては、シース内に、又は、送達装置のシャフトに付随するエンクロージャ内に配置され得る。
【0038】
上述のように、針308は単に例示目的で示されており、長手方向溝は、送達装置のシャフトの遠位部分に形成され得る、外科用装置のインプラントのうち少なくとも1つを着座させるように構成されており、シャフトは遠位組織貫通先端を有することが、理解されよう。更に、針は、遠位側でシャフトに連結されてよく、又はシャフトの一部であってもよく、様々な形態を有することができる。例えば、針は、直線状、曲線状、螺旋状、又はコークスクリュー状であってよく、特定の外科手技に適した、様々な解剖学的位置に通すための、任意の他の適切な形態を有してもよい。針の遠位先端部も、様々な方法で構成することができる。例えば、少なくとも1つの実施形態では、図4に示すように、針308の遠位先端308dは、実質的に平坦な最遠位側表面305を備えて傾いていてよい。
【0039】
図3に戻ると、送達装置300は、そこから遠位方向に延びるシャフト302を有する近位ハンドル310を有し得る。近位ハンドル310に近位側で連結されたアクチュエータ312は、これを作動させることで外科用装置400を配置するように構成することができる。例えば、送達装置300は、1つ又は2つ以上のプッシャーロッド、又はその他の作動要素を含み得、これは、外科用装置の1つ又は2つ以上のインプラントを、インプラントが着座している溝に沿って遠位側に前進させ、送達装置300との係合から外すように構成され得る。第1及び第2のインプラントの両方が送達装置の針上に装填されている実施形態において、送達装置は、第1及び第2のインプラントの両方を「能動的に」配置するよう作動させることができ、これは任意の順序で行うことができる。実施に応じて、第1及び第2のインプラントの両方を配置するのに同じプッシャーロッドを使用することができ、又は、第1及び第2のインプラントのそれぞれを、それぞれのプッシャーロッドを使用して配置することができる。例えば、インプラントは、針内の様々なレベルに配置することができ、別個のプッシャーロッドを作動させて各インプラントを遠位側に前進させることができる。加えて、送達装置300は、インプラントの挿入の深さを示すように構成された深さインジケータを有することができる。例えば、シャフト302又はアクチュエータ312の少なくとも一方に、1つ又は2つ以上の深さインジケータ(例えば、マーク)を配置することができる。いくつかの実施形態では、ハンドル310は、深さインジケータへの視覚的アクセスを与える窓又はその他の開口を有し得る。
【0040】
配置前形態において、第1及び第2のインプラントの一方が針の外側に配置されている(すなわち、針の溝に着座していない)実施形態では、そのようなインプラントは「受動的に」配置することができ、一方、溝内に着座しているインプラントは、下記に詳述されるように、能動的又は「受動的に」配置することができる。
【0041】
外科用装置は、数多くの方法で着脱可能に針に付随させることができる。例えば、第1及び第2のインプラントの少なくとも一方は、針の側壁を通って延びる長手方向溝内に着座することができる。上述のように、図4に示すように、外科用装置400の各インプラントを溝304に着座させることができる。図5は、シャフト602と、シャフト602から遠位に延びる針608とを有する、送達装置600の遠位部分の一実施形態を示している。図示のように、針608を通って延びる長手方向溝604の中には、外科用装置500が着脱可能に着座している。具体的に、この実施例において、第1のインプラント502は溝604内に着座しており、可撓性要素506を介して第1のインプラント502に連結している第2のインプラント(図示なし)は、シャフト602の管腔(図示なし)内に配置することができる。ただし、他の実施形態では、第2のインプラント(変化可能な形態を有するインプラントなど)は、第1のインプラント502に近接して溝604内に着座させることもできる。図5に示すように、可撓性要素506は、シャフト602の遠位端602dの下に延在する。この実施例において、可撓性要素506は、第1のインプラント502の2箇所で第1のインプラント502に連結されているが、ただし、この点に関して本明細書に記述される技法は制限されず、可撓性要素は、1箇所で、又は2箇所を超える場所で(例えば3箇所などで)第1のインプラントに連結され得ることが理解されよう。図5には示されていないが、図1の外科用装置100と同様に、外科用装置500は、可撓性要素506の末端同士を互いに連結することにより形成された摺動係止結び目を備えたループを有する。
【0042】
図6は、シャフト702と、シャフト702から遠位に延びる針708(これはシャフトの一部分であり得る)とを有する、送達装置700の遠位部分の一実施形態を示している。図示のように、針708を通って延びる長手方向溝704の中には、外科用装置800が着脱可能に着座している。具体的に、この実施例では、第1のインプラント802は溝704内に着座しており、その一方で、可撓性要素806を介して第1のインプラント802に連結され、かつ溝704の外に配置されている第2のインプラント(図示なし)は、その内部を通じてシャフト702の少なくとも一部分が配置されている外側シース703内に配置され得る。外側シース703は、第2のインプラントが所望の位置に配置されるまで、第2のインプラントを保護することができる。図6に示すように、可撓性要素806はシース703の下に延在する。外側シース703は、第1のインプラント802が能動的に配置された後で、かつ第2のインプラントが受動的に配置される前に、シース703を除去できるように着脱可能とすることができる。他の実施形態において、シース703は、近位側に移動可能なように構成することができ、これによってその管腔内に着座している第2のインプラントを露出させることができる。シース703は、シャフト702とは別体の部品であってよく、又は、いくつかの実施形態において、シース703はシャフト702の一部であってもよい。この実施形態において、第1のインプラント802は、縫合糸ストランド715を介して可撓性要素806に連結され得る。図6には示されていないが、図1の外科用装置100と同様に、外科用装置800は、外科用装置800の可撓性要素806の末端同士を互いに連結することにより形成された摺動係止結び目を備えたループを有する。
【0043】
いくつかの実施形態では、上記のように、外科用装置の少なくとも一部分は、外科用装置のシャフトの遠位部分に着脱可能に付随させることができる。例えば、いくつかの実施形態において、インプラントのうち1つ(例えば骨内に配置されるように構成された第1のインプラント)が、送達装置のシャフト内のボア又は溝内に着座することができ、一方、別の第2のインプラントは、シャフトの溝の外側に配置することができる。このようにして、配置時に、第2のインプラントを受動的に配置することができる。図7Aは、シャフト922の長さの少なくとも一部に沿って、その側壁を通って延びる長手方向溝924を有するシャフト922を有する、送達装置901の遠位部分の一実施形態を示す。この例では、外科用装置900は、第1のインプラント902が溝924内に着座し、かつ、可撓性要素906を介して第1のインプラント902に連結している第2のインプラント904が、シャフト602の溝924の外に配置されるように、シャフト922に連結されている。
【0044】
可撓性要素906は、摺動結び目910で閉じられている調節可能ループ908を形成し、この結び目から延びる尾部又は自由端を有し、この端の一方である自由端912が、部分的に図示されている。この実施例では、第1のインプラント902は実質的に剛性であり得、第2のインプラント904は実質的に非剛性かつ形状適合性であり、変化可能な形態を有し得る。インプラントの他の形態も可能であり、例えば、第1のインプラントは少なくとも部分的に非剛性であり得る。外科用装置900は、後述されるように、第1のインプラント902を能動的に配置すること(例えば、送達装置901のプッシャーロッドを作動すること)、及び、第2のインプラント904を関節からいったん引き戻した後に第2のインプラント904を受動的に配置することによって、配置され得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、外科用装置の第1及び第2のインプラントの両方を、送達装置のシャフト(又はそこから延びる針)の溝内に着座させることができる。第1及び第2のインプラント(それぞれが2つ以上のインプラントの形態であり得る)は、任意の好適な方法で溝に着座させることができる。例えば、変化可能な形態を有する第2のインプラントは、第1のインプラントに対して遠位にあってよい。第1及び第2のインプラントは、溝に沿って離間していてよく、あるいは、これらは互いに隣接していてもよい。図7Bは、送達装置901’の遠位部分の一実施形態を示し、これは、シャフト922’の長さの少なくとも一部に沿って、その側壁を通って延びる長手方向溝924’を有するシャフト922’を有する。この例では、外科用装置900’(図7Aの外科用装置900と同様のものであり得る)はシャフト922’に連結され、これによって、可撓性要素906’を介して連結されている第1及び第2のインプラント902’、904’の両方が、溝924’内に着座している。可撓性要素906’は、結び目910’から延びる自由端を有する摺動結び目910’で閉じられた調節可能ループ908’を形成しており、第1の端912’は、図7Bに示されるように張力をかけるように構成されている。
【0046】
図7Bに示すように、第2のインプラント904’は、第1のインプラント902’よりも、シャフト922’の遠位端922d’により近い位置で溝924’内に着座しており、第1及び第2のインプラント902’、904’は互いに離間している。ただし、上述のように、インプラントは、互いに対して任意の好適な関係で溝内に着座していてよいことが理解されよう。この例では、図7Aの実施例と同様に、第1のインプラント902’は実質的に剛性であり得、第2のインプラント904’は実質的に非剛性かつ形状適合性であり、変化可能な形態を有し得る。ただし、インプラントの他の構成も可能である(例えば、第1のインプラントは、非剛性であってもよい)。外科用装置900は、第1のインプラント902’を能動的に配置させること(例えば、送達装置901’のプッシャーロッドを作動すること)、及び第2のインプラント904’を能動的に配置させること(例えば、第1のインプラント902’を配置するのに使用された送達装置901’と同じプッシャーロッド又は別のプッシャーロッドを作動すること)によって、配置され得る。
【0047】
図7Cは、図7A及び7Bにそれぞれ示される外科用装置900、900’と同様であり得る外科用装置900’’の一実施形態を示す。図示のように、外科用装置900’’は第1及び第2のインプラント902’’、904’’を有しており、これらは、摺動結び目910’’で閉じられている調節可能ループ908’’を形成する可撓性要素906’’を介して連結され、結び目910’’から延びる第1及び第2の自由端912’’、914’’を有している。この例では、結び目910’’は第1のインプラント902’’に隣接して配置され、第1の自由端912’’は、張力がかけられることによってループ908’’のサイズを小さくし、これにより第2のインプラント904’’の形態を変化させるように構成されている。この例では、可撓性要素906’’は、インプラント902’’の3箇所(第1のインプラント902’’の本体の開口部913’’、915’’、917’’を通る3箇所)で、第1のインプラント902’’を通過している。ただし、この構成は単に例示のために示されていることが理解されよう。
【0048】
更に、この具体的な装置は、図7A~7Cに単に例示のために示されていることも理解されよう。図1の外科用装置100、又は本明細書に記述されている他の外科用装置のいずれも、図7A及び7Bに示されるように、又は他の形で、送達装置のシャフトに着脱可能に付随させることができる。
【0049】
一般に、本明細書に記述されるインプラントは、アンカーとも称され、患者の体内に埋め込まれるように構成されている。インプラントは、任意の好適な縫合糸の形態であり得る可撓性要素を介して連結されるように構成される。例えば、縫合糸はDYNACORD(登録商標)縫合糸であり得るが、付加的に又は代替的に、任意の他の種類の縫合糸を使用することができる。このインプラントを有する外科用装置は、組織修復術に使用することができ、例えば、肩関節、膝関節、又は股関節(tip)などの関節における関節形成術、肩の断裂回旋腱板を修復するための回旋腱板修復術、膝の半月板断裂を修復するための半月板修復術などに使用することができる。
【0050】
第1及び第2のインプラントは、様々な材料のうちの任意のもので製造することができる。インプラントは、吸収性又は非吸収性のものであり得る。例えば、第1のインプラントは、少なくとも部分的に剛性であってよく、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ乳酸又はポリラクチド(PLA)、BIOCRYL(登録商標)RAPIDE(登録商標)、コラーゲン、ステンレス鋼等により作製することができる。そのようなインプラントは、種々の技術、例えば、オーバーモールド成形などの射出成形プロセスによって、又は二次成形加工などの二次成形プロセスによって形成することができる。インプラントは、例えば、特定の解剖学的位置での使用に適した、及び特定の患者で用いるのに適した、任意の様々な寸法を有することができる。
【0051】
第2のインプラントは、例えば実質的に非剛性かつ形状適合性の部材であり、好適な縫合糸で形成することができる。例えば、縫合糸は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)及びポリジオキサノン(PDS)を含む、部分生体吸収性の高強度縫合糸であり得る。いくつかの実施形態において、縫合糸は、ORTHOCORD(登録商標)縫合糸、DYNACORD(登録商標)縫合糸、又は任意の他のタイプの縫合糸であり得る。更に、第2のインプラントは、テープ、布地、又は任意の他の形状適合性材料で形成され得る。いくつかの実施形態において、第2のインプラントを製造する材料(例えば、縫合糸)は、組織の成長及び治癒を促進する材料でコーティングするか又は他の方法で付随させることができる。
【0052】
上述のように、第2のインプラントは、第2のインプラントを第1のインプラントに連結する可撓性要素の一部分の周りで、その材料を、相互に絡め、編み込み、包み込み、編み、又はそれ以外の方法で連結することによって形成することができる。いくつかの実施形態では、第2のインプラントは、コラーゲン又は他の類似の材料から形成することができる。第2のインプラントは、少なくとも部分的に吸収性であり得る。第1及び第2のインプラントのそれぞれが、実質的に剛性、又は実質的に非剛性のいずれかであり得ることが理解されよう。また、第1及び第2のインプラントの各々が、1つ又は2つ以上のインプラントを包含し得る。
【0053】
本明細書に記載されている外科用装置は、様々な方法で送達装置(縫合糸通過装置とも呼ばれることがある)を用いて配置することができる。外科用装置の構成及び外科用装置が送達装置に付随させられる方法に応じて、外科用装置の少なくとも1つのインプラントを、能動的に配置することができる。図8A~8Dは、外科用装置のインプラントの1つが能動的に配置され、同時に別のインプラントが受動的に配置されるように手術部位に外科用装置を配置する方法の一実施形態を示す。外科用装置は、欠損又は損傷1007を修復する外科手技中に、患者の肩関節1001(肩甲上腕関節)に埋め込まれる。損傷1007は、例えば、関節唇及び/又は関節包の損傷、例えばバンカート損傷であり得る。様々な他の損傷も、本明細書に記載される方法を用いて修復することができる。
【0054】
図8A~8Dの実施例では、送達装置1100が、外科用装置(組織修復構造体とも呼ばれる)1200(図8Aには図示されていない)を手術部位へと送達する様子が概略的に示されている。送達装置1100は、組織を貫通するように構成されている遠位先端1102dと、外科用装置1200の少なくとも1つのインプラントを着座させるように構成された長手方向溝とを備えた、シャフト1102を有する。シャフトの遠位部分は、針の形態であり得る(例えば、図3及び4の針308)。
【0055】
図8Aに示されるように、孔1011を、関節窩1003内に形成することができる。骨孔1011は、任意の好適な様式で作製することができる。例えば、手術部位にガイド(図示なし)を通すことができ、好適な器具(例えばドリル)を使用して、孔1011を所望の位置に形成することができる。更にいくつかの実施形態では、外科用装置1100のシャフト1102の遠位端1102dを使用して、骨孔を形成することができる。骨孔1011は、既存の外科手技中に形成する必要がある骨孔よりも小さなサイズを有し得る。例えば、少なくとも1つの実施形態において、骨孔1011の直径は約2mmとすることができる。骨孔1011の直径は約1mm~約4mmであり得る。
【0056】
更に図8Aに示すように、組織修復構造体1200を手術部位へと前進させることができる。具体的には、外科用装置1100のシャフト1102の遠位端1102dを関節の周囲側から通して、関節包1009を通り、関節唇1005を通ることができ、これにより図8Aに示すように、関節唇1005から骨孔1011に隣接して延在するようにできる。図8Aには示されていないが、シャフト1102は組織修復構造体1200に付随しており、これによって構造体1200の第1のインプラント1202が、シャフト1102の長手方向溝内に着座し、構造体1200の第2のインプラント1204が、溝の外側に配置される。
【0057】
シャフト1102の遠位端1102dは、損傷1007を修復するのに適切でありかつ第2のインプラント1204の埋入部位となる位置で、軟組織に穿刺することができる。図8Bに示すように、シャフト1102の遠位端1102dが、骨孔1011に向かって前進しこの中に入り、第1のインプラント1202が、好適な形でシャフト1102から骨孔1011内へと配置される。いくつかの実施形態において、第1のインプラント1202が骨孔1011内に配置されると、触覚的及び/又は聴覚的フィードバックを受け取ることができる。送達装置1100は、手術部位に向かって遠位方向に前進し、これによって、図8Bに示すように、シャフト1102の遠位端1102dは、取り付けられる軟組織の一方の側(例えば関節唇1005の関節窩側)に配置され、第2のインプラント1204は、軟組織の反対側(例えば関節1001の外側)に配置される。このようにして、第1のインプラント1202を能動的に(すなわち送達装置を使用して)配置する工程は、第2のインプラント1204を受動的に(すなわち、送達装置を使用せずに)埋入部位に配置する工程と、実質的に同時に実施される。シャフト1102の遠位端1102dが関節包及び関節唇(又は、手技によっては関節唇のみ)に穿刺すると、第2のインプラント1204は、介入なしに、軟組織(この例では関節包)の非関節側に残される。例えば、シャフト1102の遠位端1102dが軟組織を通って骨孔1011に向かって移動すると、第2のインプラント1204はシース(例えば、図6のシース703、又は任意の他の構造)から放出される。これにより、送達装置1100が手術部位へと前進する際に、第2のインプラント1204は関節1001の外側に残る。図示されているように、インプラント1202、1204を連結する可撓性要素1206の第1及び第2の末端121、1214は、可撓性要素1206により形成される調節可能ループ1208を閉じる摺動結び目1210から延びている。外科用装置1200の第1の末端1212は、摺動結び目1210から延びていてよく、これにより第1の末端1212は関節1001の外に配置される。第1の末端1212(これは「ポスト」とも呼ばれる)の周囲に巻き付けられている第2の末端1214は、第1の末端1212よりも大幅に短くてよいことが理解されよう。
【0058】
第1のインプラント1202が孔1011内に配置された後、送達装置1100のシャフト1102が近位側に引き戻される。シャフト1102が関節1001の外側で近位側に引き戻されると、第2のインプラント1204は、図8Cに示すように、関節包1009の外周側に配置されたままになる。上述のように、配置前に、第2のインプラント1204をシャフト1102の外側に配置することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、受動的に配置する前に、第2のインプラント1204は、シャフト1102の長手方向溝内、シャフトの遠位端1102d(例えば、シャフトの針)の近傍に着座する。シャフト1102の遠位端1102dが軟組織に穿刺して除去された後、この実施例では、第2のインプラント1204は、軟組織の反対側、例えば、関節包1009の外周側に受動的に配置され得る。
【0059】
送達装置1100を手術部位及び関節1001から除去することができ、これにより、外科用装置1200の第1の末端1212は関節1001の外側に残る。例えば、図8Dの矢印1015で示す方向に、第1の末端1212に張力をかけることができる。その結果、可撓性要素1206が摺動結び目1210を通って摺動し(又は、可撓性要素1206に沿って摺動結び目1210が摺動するとも言える)、ループ1208のサイズを小さくし、第2のインプラント1204の形態を変化させる。このようにして、図8Dに示すように、第2のインプラント1204が第1のインプラント1202に向かって動かされると、第2のインプラント1204の少なくとも1つの寸法が変化し、これによって関節包1009及び関節唇1005が関節窩1003に向かって移動され、損傷1007を閉じる。例えば、図8Dに示すように、第2のインプラント1204の直径又は幅が増加し得る一方でその長さは低減され得る。いくつかの実施形態において、第2のインプラント1204を更に押圧するか又はその他の操作を行うことにより、埋め込み部位での埋入を支援することができる。所望により、第1の末端1212に張力をかけた後、切断して長さを短くすることができる。
【0060】
したがって、縫合糸を通過させ、少なくとも1つのインプラントを配置させるために、同じ装置(例えば、図8A~8Cの送達装置1100)の使用を伴う手技を用いて、手術部位に外科用装置を配置することができる。よって、縫合糸通しとアンカー配置とが同一工程で実施される。縫合糸を通すための別の装置は不要であり、結び目結びも不要となり得る。これにより、外科手技の完了に要する工程数を削減することができる。また、形成する骨孔の大きさを小さくすることができ、これは骨に対する影響を低減する。
【0061】
図8A~8Dに示す実施例において、外科用装置は、関節包と関節唇組織の両方を関節窩に取り付けるよう配置されている。図9は、関節窩に関節唇組織のみを取り付けるための外科用組織修復手技の一例を示している。図9の外科手技は、図8A~8Dの手技と同様に肩関節1301で実施することができ、よって、組織修復手技の結果のみを図9に示す。具体的には、図1に示すように、可撓性要素1406を介して連結された第1及び第2のインプラント1402、1404を有する外科用装置1400が配置され、これによって、第1のインプラント1402が、関節唇1305の一方の側で、関節窩1303の骨孔1311内に配置される。第2のインプラント1404は、関節唇1305の反対側(外周側)に配置される。可撓性要素1406の第1及び第2の自由端1412、1414は、第1の末端1412の一部分の周りに第2の末端1414を巻き付けることによって形成されたループ1408を閉じる摺動結び目1410から延びるように図示されている。図9は、第1の自由端1412に張力がかけられて可撓性要素1406が摺動結び目1410を通って摺動した後の外科用装置1400を示しており、第2のインプラント1404が第1のインプラント1402に近付けられることにより、ループ1408のサイズが小さくなり、よって、第2のインプラント1404の形態が変化する。
【0062】
肩関節の損傷を修復するために本明細書に記載されている外科用装置の使用は、単に例示目的で示されていることが理解されよう。本明細書に記載される技法に従って組織を修復するための、外科用装置1100又は任意の他の外科用装置は、膝の半月板の修復、又は他の種類の損傷又は他の欠損を修復するのにも使用することができる。
【0063】
上述のように、少なくともいくつかの実施形態では、本明細書に記載の外科用装置は、連結要素を介して可撓性要素に連結された1つ又は2つ以上のインプラントを有し得る。図10は、変化可能な形態を有する第1のインプラント1502及び第2のインプラント1504を含む外科用装置1500の一実施形態を示す。第1及び第2のインプラントは、可撓性要素1506を介して連結されている。図10に示すように、この実施形態では、第1のインプラント1502は、縫合糸タグ又はその他の機能などの連結機構1516を介して可撓性要素1506に連結され得る。連結機構1516は様々な構成を有することができ、この実施形態では、可撓性要素1506に連結されたステム要素1522と、第1のインプラント1502とステム要素1522との間に連結されたループ要素1524とを有している。ループ要素1524は、図10に示すように、第1のインプラント1502の位置1520において第1のインプラントを通過することができる。ステム及びループ要素1522、1524は、互いに連結された別々の要素であってもよいし、同じ縫合糸ストランド又はその他の要素で形成することもできる。例えば、図12に示すように、図示の実施形態において、ループ1524は、ステム1522の自由端を第1のインプラント1502に通し(又は他の方法で連結させ)、ステム1522の長さに沿った点1525でステム1522に取り付ける(例えばステム1522の材料を通す)ことにより形成することができ、これによってループ1524が形成される。連結機構は、任意の他の構成を有することができる。連結機構1516の全体又はその一部は、少なくとも部分的に可撓性又は形状適合性であってよく、これにより、第1のインプラント1512の骨孔への配置が容易になる。
【0064】
第1のインプラント1512の特定の形状(図1の第1のインプラント102の形状と同様)は、単に例示目的で示されており、第1のインプラントは任意の好適な形状及び大きさを有することができることが理解されよう。同様に、第2のインプラント1504は、可撓性要素1506の一部分の周りに縫合糸又はその他の要素を連結することにより形成することができるが、任意の他の好適な構成を有することができる。図10に示すように、可撓性要素1506は、摺動結び目1510によって閉じられた調節可能なループ1508を形成し、結び目1510から延びる第1及び第2の自由端1512、1514を有する。図1の外科用装置100の摺動結び目110と同様に、摺動結び目1510は、単に例示目的のため、緩んだ形態で図10に示されていることに注意されたい。配置準備済み形態において、第2の自由端1514を第1の自由端1512の周りに巻き付けることにより形成された摺動結び目1510は、予め結ばれた結び目の形態である。第1の自由端1512は、張力がかけられることでループ1508のサイズを減少させ、それによって第2のインプラント1504の形態を変化させ、第2のインプラント1504を第1のインプラント1502に近付けるように移動させるように構成されている。
【0065】
外科用装置の第2のインプラント(例えば骨孔に挿入されるインプラントから、軟組織の反対側に配置されたインプラント)は、様々な形態を有することができる。図11は、可撓性要素1606を介して互いに連結された第1のインプラント1602及び第2のインプラント1604を含む外科用装置1600の一実施形態を示している。図11に示すように、この実施例では、第2のインプラント1604は概ね円筒形の部材であり、図11に示すように、第2のインプラント1604の位置1626、1628を通り抜ける(又は他の方法でこれに連結される)可撓性要素1606を有している。この実施形態では、第2のインプラント1604は少なくとも部分的に剛性である。図10の第1のインプラント1502と同様に、第1のインプラント1602は、図10の連結機構1516と同様の構成を有する連結機構1616を介して可撓性要素1606に連結される。他の実施例として、第1のインプラント1602は、軟組織の一方の側で骨孔内に埋め込まれるように構成され、第2のインプラント1604は軟組織の対向する側に配置されるように構成される。可撓性要素1606は、摺動結び目1610(単に例示目的のため、緩んだ形態で示されている)で閉じられた調節可能ループ1608を形成し、結び目1610から延びる第1及び第2の自由端1612、1614を有する。使用中、第1の自由端1612は、張力がかけられることでループ1608のサイズを減少させ、それによって第2のインプラント1604の形態を変化させ、第2のインプラント1604を第1のインプラント1602に近付けるように移動させることができる。
【0066】
外科用装置の第1及び第2のインプラントの各々が、1つ又は2つ以上のインプラントを包含し得る。例えば、いくつかの実施形態では、第1のインプラントは、骨内に埋め込まれるように構成され、外科用装置の可撓性要素に連結された2つのインプラントの形態であってもよい。少なくとも1つの実施形態では、2つのタンデムインプラントの形態の第1のインプラントが、連結機構を介して可撓性要素(例えば縫合糸)に連結されてもよい。このような第1のインプラントの構成は、使用時に、このような2個の部品からなる第1のインプラントが骨に埋め込まれ、可撓性要素の自由端に張力がかけられ(例えば引っ張られ)て外科手術を完了する際に、トグル効果を生成することが可能になる。
【0067】
図12は、可撓性要素1706を介して互いに連結された第1のインプラント1702及び第2のインプラント1704を含む外科用装置1700の実施形態を示している。この実施例では、第2のインプラント1704は、2つの別個のインプラント1702a、1702bの形態であり、これらはそれぞれ、図10の第1のインプラント1502と同様であり得る。インプラント1702a、1702は、ループ1724を形成する連結機構1716を介して可撓性要素1706に連結される。ループ1724は、任意の好適な方法で、又は他の方法で、それ自体で連結機構1716を閉じることによって、形成することができる。例えば、少なくともいくつかの実施形態では、ループ1724は、例えば、ラゲージタグ技術を使用して、又は他の技術を用いて、連結機構1716の材料を穿孔することによって形成することができる。いくつかの実施形態において、連結機構1716は、連結機構1716の材料に可撓性要素1706を通すことにより、可撓性要素1706に連結することができる。インプラント1702a、1702は、任意の好適な方法でループ1724に連結される。例えば、ループ1724を形成する連結機構1716の一部分が、1箇所又は複数の箇所で、インプラント1702a、1702のそれぞれの孔を通ることができる。
【0068】
変化可能な形態を有する第2のインプラント1704は、図10の第2のインプラント1504と同様であり得る。可撓性要素1706は、摺動結び目1710(予め結ばれた形態で示されている)で閉じられた調節可能なループ1708を形成しており、結び目1710から延びる第1及び第2の自由端1712、1714を有する。使用中、第1の自由端1712は、張力がかけられることでループ1708のサイズを減少させ、それによって第2のインプラント1704の形態を変化させ、第2のインプラント1704を第1のインプラント1702に近付けるように移動させることができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、外科用装置の第2のインプラント(変化可能な形態を有し得る)は、2つ以上のインプラントの形態であり得る。例えば、図13は、第1のインプラント1802と、それぞれ変化可能な形態を有する2つのインプラント1804a、1804bの形態の第2のインプラントと、を有する外科用装置1800の一実施形態を示す。第1のインプラント1802と、第2のインプラント1804a、1804bとは、摺動結び目1810を介して閉じられた調節可能ループ1808を形成する可撓性要素1806を介して連結することができる。摺動結び目1810は、張力がかけられるように構成された可撓性要素1806の第1の自由端1812の周りに、可撓性要素1806の第2の自由端1814を巻き付けることにより形成される。図14は、第1のインプラント1902と、それぞれ変化可能な形態を有する2つのインプラント1904a、1904bの形態の第2のインプラントと、を有する同様の外科用装置1900の一実施形態を示す。第1のインプラント1902と、第2のインプラント1904a、1904bとは、摺動結び目1910を介して閉じられた調節可能ループ1908を形成し、かつ第1及び第2の自由端1912、1914を有する、可撓性要素1906を介して連結される。この実施例では、図10の第1のインプラント1502と同様の、第1のインプラント1902は、連結機構1916(例えば、縫合糸タグ又はその他の機能)を介して可撓性要素1906に連結されている。いくつかの実施形態において、第1のインプラント1902は、2つ以上のインプラントの形態であり得る。例えば、第1のインプラント1902は、2つのインプラント1702a、1702bの形態である外科用装置1700(図12)の第1のインプラントと同様であり得る。また、いくつかの実施形態では、第1のインプラント1902は、3つ以上のインプラントの形態であり得る。
【0070】
いくつかの実施形態において、外科用装置は、複数の可撓性要素を含むことができる。可撓性要素は、例えば、骨孔内に埋め込まれるように構成された第1のインプラントを介して、様々な方法で互いに連結することができる。図15は、第1及び第2の可撓性要素2006、2006’を有する組織修復構造体又は外科用装置2000の一実施形態を示し、可撓性要素2006、2006’のそれぞれが図1の可撓性要素106と概ね同様であるような要素を有する。ただし、図15に示す実施例では、可撓性要素2006、2006’は、第1のインプラント2002を介して互いに連結されている。例えば、可撓性要素2006、2006’は、第1のインプラント2002のある位置2020で第1のインプラント2002をそれぞれが通り抜けることができるが、可撓性要素2006、2006’は他の様々な方法で第1のインプラント2002に連結され得る。例えば、可撓性要素2006、2006’は、1つ又は2つ以上の別個の連結機構を介して第1のインプラント2002に連結することができる。他の変形例として、可撓性要素2006、2006’のそれぞれが、第1のインプラント2002の複数の位置で、第1のインプラント2002を通り抜けることができる。
【0071】
図15に示すように、第1の可撓性要素2006は、変化可能な形態(例えば図1の第2のインプラント104と同様)を有する、それ自体に連結された第2のインプラント2004を有する。第1の可撓性要素2006は、摺動結び目2010(結び目2010が予め結ばれる前の、緩んだ形態で示されている)を介して閉じられた調節可能なループ2008を形成し、可撓性要素2006は、結び目2010から延びる第1及び第2の自由端2012、2014を有する。同様に、第2の可撓性要素2006’は、変化可能な形態(例えば図1の第2のインプラント104と同様)を有する、それ自体に連結された第3のインプラント2004’を有する。
【0072】
第2の可撓性要素2006’は、摺動結び目2010’(結び目2010’が予め結ばれる前の、緩んだ形態で示されている)を介して閉じられた調節可能なループ2008’を形成し、第2の可撓性要素2006’は、結び目2010’から延びる第3及び第4の自由端2012’、2014’を有する。第2の可撓性要素2006’は2つの自由端を有するため、自由端2012’、2014’はそれぞれ、単に説明目的のため「第3」及び「第4」と呼ばれることに注意されたい。
【0073】
第1の可撓性要素2006の第1の自由端2012は、張力がかけられることで可撓性要素2006に摺動結び目2010を通って摺動させることによって、ループ2008のサイズを減少させ、かつ、第2のインプラント2004の形態を変化させて、これによって、少なくとも第2のインプラント2004を第1のインプラント2002に向かって動かすように構成されている。同様に、第2の可撓性要素2006’の第3の自由端2012’は、張力がかけられることで第2の要素2006’に、摺動結び目2010’を通って摺動させることによって、ループ2008’のサイズを減少させ、かつ、第3のインプラント2004’の形態を変化させて、これによって、少なくとも第3のインプラント2004’を第1のインプラント2002に向かって動かすように構成されている。
【0074】
組織修復構造体2000は、例えば、軟組織の一方の側の関節窩で第1のインプラント2002を能動的に配置することによって、及び更に、軟組織の反対側で第2及び第3のインプラント2004、2004’を能動的に配置することによって、目的部位に埋め込むことができる。ただし、いくつかの実施形態では、第2及び第3のインプラント2004、2004’は受動的に配置されてもよい。
【0075】
図16は、損傷2007を修復するために肩関節2001内に配置される外科用装置2000の一実施形態を概略的に示す。外科用装置2000は、好適な送達装置を用いて配置することができる。図16に示すように、外科用装置2000は、第1のインプラント2002が関節唇2005の一方の側の関節窩2003に埋め込まれるように配置される。第1のインプラント2002は、関節窩2003に形成された孔に好適な方法で埋め込むことができる。第1の可撓性要素2006に連結された第2のインプラント2004と、第2の可撓性要素2006’に連結された第3のインプラント2004’は(それぞれ変化させられた形態で示されている)、関節唇2005の相対する側に配置され、これによってそれぞれのループ2008、2008’が関節唇にまたがる。第2のインプラント2004及び第3のインプラント2004’は、任意の順序で配置可能である。また、第2及び第3のインプラント2004、2004’は、第1のインプラント2002の配置に関して任意に配置可能である。第1の可撓性要素2006の第1の末端2012と、第2の可撓性要素2006’の第3の末端2012’(これらは、外科用装置2000の配置を完了するために張力がかかっている)は、それぞれの摺動結び目(これらは小さいため図16には示されていない)から延びている。
【0076】
上述のように、外科用装置は、様々な技法を使用して手術部位に配置することができる。上記の図8A~8Dは、外科用装置のインプラントの1つを能動的に配置し、別の1つのインプラントを受動的に配置した、外科用装置1100の配置のための技法を示している。図17A~17Eは、外科用装置の両方のインプラントを能動的に配置する方法の一実施形態を示す。具体的には、送達装置に付随する各インプラント(例えば、送達装置のシャフト(針の形態であり得る)に形成された溝に着座している)は、1つ又は2つ以上のプッシュロッド又は送達装置の他の機構を用いて、配置することができる。
【0077】
図17A及び17Bに示すように、組織を穿刺するように構成されている遠位先端2202dを備えたシャフト2202を有する送達装置2200を使用して、肩関節2101の関節窩側(2113)から関節唇2105及び関節包2109を通るよう遠位先端2202dを通過させることができる。遠位先端2202dが関節唇2105の外周側(2115)にあるとき、第2のインプラント2304(これは例えば、図1の第2のインプラント104に類似のものであり得る)が図17Bに示すように配置される。第2のインプラント2304は、例えば、プッシュロッド又は送達装置2200の他の好適な機構(図示なし)を作動させることにより配置することができる。更に、第2のインプラント2304は、軟組織に「捕捉」又は「トグル」することにより、溝から送達装置のシャフトに受動的に配置することができる。例えば、シャフトの遠位先端が軟組織を穿刺してから除去される(引き戻される)と、第2のインプラント2304は組織に係合し(すなわち、組織に接触し)、インプラントの形状、組織との相互作用、又は溝内の配置によって、送達装置から切り離される。図17Bに示すように、第2のインプラント2304は、関節唇2105の外周側2115に配置される。
【0078】
送達装置2200は、シャフト2202の遠位先端2202dを関節窩側2113に引き戻すように操作され、その際、図17Cに示すように、送達装置2200を作動させて第1のインプラント2302(これは例えば、図1の第1のインプラント102に類似のものであり得る)を配置することができる。図示のように、第1のインプラント2302は、関節窩2103内の予め形成された孔2111内へと前進する。ただしいくつかの実施形態では、孔2111は、シャフト2202の遠位先端2202dを骨内へと前進させることによって形成することができる。第1のインプラント2302は、例えば、プッシュロッド又は送達装置2200の他の好適な機構(図示なし)を作動させることにより配置することができる。図17Dに示すように、が第1のインプラント2302骨孔2111内に配置された時点で、送達装置2200が関節2101から引き戻される。このようにして、第1のインプラント2302が関節唇2105の一方の側に配置され、第2のインプラント2304(摺動結び目で閉じられたループ2308を形成する可撓性要素2306を介して第1のインプラント2302に連結されている)は、関節唇2105の対向する外周側に配置される。可撓性要素2306の第1の末端2312は、関節2101の外側でアクセス可能である。図17Eに示すように、第1の末端2312は、矢印2313で示すように張力をかけることができ、これによってループ2308のサイズを小さくし、第2のインプラント2304の形態を変えることができる(変化した形態が示されている)。このようにして、少なくとも第2のインプラント2304が第1のインプラント2302に向かって移動され、関節唇2105はこれによって望ましい位置へと動かされて、損傷2107を修復し、こうして組織修復手技が完了する。
【0079】
図17A~17Eは、単に例示目的のため、第1のインプラント2302の配置の前に第2のインプラント2304を配置する様子を示していることが理解されよう。例えば、外科用装置の第1及び第2のインプラントが能動的に配置されるいくつかの実施形態では、第1のインプラントを骨孔内に配置してから、関節の外周側に第2のインプラントを配置することができる。
【0080】
上述の実施形態において、組織を骨に取り付けるために手術部位に配置されるように構成された外科用装置は、少なくとも第1及び第2のインプラントを含む。ただし他の実施形態では、外科用装置は、その自由端の一方を摺動結び目を介して他方に連結することによってループを形成する可撓性要素に連結された単一のインプラントを有することができる。図18A及び18Bは、摺動結び目2410を介して閉じられている調節可能ループ2408を形成する可撓性要素2406に連結されているインプラント2402を有する外科用装置2400の一実施形態を示す。装置2400の単一のインプラントは、例えば、図1の第1のインプラント102に類似のものであり得る。図18Aに示すように、摺動結び目2410は、張力をかけるように構成された可撓性要素2406の第1の自由端2412の周りに、可撓性要素2406の第2の自由端2414を巻き付けることにより形成することができる。図18Aは、緩んだ形態の摺動結び目2410を示し、図18Bは、外科用装置2400が配置されている予め結ばれた形態の摺動結び目2410を示す。
【0081】
外科用装置のインプラントは、装置の可撓性部材に様々な方法で連結することができる。例えば、図18Cは、連結機構2516を介して可撓性要素2506に連結されたインプラント2502を有する外科用装置2500の一実施形態を示している。連結機構2516は、図10の連結機構1516と同様であってもよく、又は任意の他の形態を有していてもよい。可撓性要素2506は、張力をかけるように構成された可撓性要素2506の第1の自由端2512の周りに可撓性要素2506の第2の自由端2514を巻き付けることにより形成された摺動結び目2510(図18Cに予め結ばれた形態で示す)を介して閉じられる調節可能ループ2508を形成する。
【0082】
図19A~19Cは、単一のインプラントを有する外科用装置を手術部位に配置するための外科的方法の一実施形態を示している。図示の実施形態において、図19Aに示すように、外科用装置2700は、可撓性要素2706に連結されたインプラント2702が、肩関節2601の関節窩側から外周側に向かって位置2612で関節唇2605を通って、及び位置2613で関節包2609を通って、通過するように(例えば、送達装置の穿刺針を用いて)、操作することができる(例えば、好適な送達装置を用いて)。また図19Aに示すように、外科用装置2700が位置2613で関節包2609を通り抜けた後、外科用装置2700は、位置2615で関節窩側に向かって関節包2609を通過することによって、関節窩側に戻ることができる。いくつかの外科手技において、外科用装置のインプラントは、関節唇のみを通り抜けることができることが理解されよう。更に図19Aに示すように、外科用装置2700は、関節の関節窩側から関節の外周側に向かって、関節唇2605及び関節包2609を通り抜けた後、関節包を通って関節窩側に戻り、これにより、可撓性要素2706によって形成されたループ2708の部分2708aが、関節窩スペース内に残される。外科用装置2700は、インプラントを受容するための関節窩スペース内にループ2708の一部分を配置できるような他の方法でも配置可能であることが、理解されよう。本明細書に記載の他の実施形態において、ループ2708は、第1の自由端2712の周りに可撓性要素2706の第2の自由端(図示なし)を連結することによって形成された摺動係止結び目2710を介して閉じられている。インプラント2702は次に、図19Bに示すように、関節唇2605から関節窩スペース内へと延びるループ2708の部分2708aを通り抜け、関節窩2603の孔2611内へと前進する。孔2611は、好適な器具を用いて予め形成することができ、又はいくつかの実施形態では、外科用装置2700を配置するために使用される送達装置の遠位先端を使用して、骨孔を形成することができる(これは、インプラント2702を骨孔内に前進させるのと実質的に同時に行うことができる)。
【0083】
インプラント2702がループ2708の部分2708aを通り抜け、骨孔2611内に埋め込まれたら、第1の自由端2712に張力をかけ、これによってループ2708のサイズを小さくし、よって関節包2609及び関節唇2605を関節窩2603に向かって移動させることができる。このようにして、損傷2607のような損傷を修復することができる。
【0084】
本明細書に記載の外科用装置は、多くの変形例を有し得る。例えば、外科用送達装置のシャフトの遠位端の針は、様々な形態を有することができる。上述のように、針は、直線状、曲線状、螺旋状、又は任意の他の形態を有することができ、針の曲率は、様々な解剖学的位置で組織に通すために選択することができる。針は、少なくともいくつかの実施形態では、プッシャーロッドのストローク回数を低減できるように構成することができる。
【0085】
図20A及び20Bは、概ね螺旋形状を有する送達装置の針2808の一実施形態を示している。針2808は外科用装置のシャフト2802に対して遠位側に連結することができ、又は、針2808はシャフト2802の一体化部分とすることができる。図20Aに示すように、針2808は、その長さの一部分に沿ってその中に形成され、かつ外科用装置の1つ又は2つ以上のインプラントを着脱可能に着座させるように構成されている、長手方向溝2804を有し得る。これにより、単に例示目的で示されるように、溝2804の中にはインプラント2822が着座している。溝2804は、針2808の遠位端2808dとの間に延在し、針2808のより近位側の点(図示なし)まで延びる。本明細書に記載の外科用装置を送達及び配置することができる任意の送達装置は、図20A及び20Bの針2808と同様に構成された針、又は任意の他の針を有することができる。
【0086】
図21は、概ねコークスクリュー様の形状を有する送達装置の針2908の別の一実施形態を示している。針2908は外科用装置のシャフト2902に対して遠位に連結することができ、又は、針2908はシャフト2802の一体の部分とすることができる。図21に示すように、針2908は、その長さの一部分に沿ってその中に形成され、かつ外科用装置の1つ又は2つ以上のインプラントを着脱可能に着座させるように構成されている、長手方向溝2904を有し得る。本明細書に記載の外科用装置を送達及び配置することができる任意の送達装置は、図21の針2908と同様に構成された針を有することができる。
【0087】
上述のように、外科用装置のインプラントは様々な構成を有することができる。外科用装置には、第1及び第2のインプラントが含まれ、第1のインプラントは軟組織の一方の側の骨孔内に挿入されるように構成され、第2のインプラントは軟組織の反対側に配置されるように構成されてよい。少なくともいくつかの実施形態では、第2のインプラントは、コラーゲン又はその他の類似のポリマーで少なくとも部分的に形成され得る。
【0088】
図22は、第1のインプラント3002(これは実質的に剛性の固定部材であり得る)と、第1の自由端3012及びそこから延びる第2の自由端(図示なし)を有する予め結ばれた摺動結び目3010を介して閉じられたループ3008を形成する可撓性要素3006を介して連結されている第2のインプラント3004とを含む外科用装置3000の一実施形態を示す。この実施形態では、第2のインプラント3004(概ね円板として成形することができる)は、コラーゲンで形成することができる。第2のインプラントにおけるコラーゲンの使用は、手術部位での組織の治癒及び再生を促進することができる。組織は、そのようなインプラントと一体化することができる。図22に示すように、この実施形態では、第1のインプラント3002は、縫合糸タグ(例えば円形、編組、若しくは平形縫合糸)又は任意のその他の形状などの、連結機構3016を介して可撓性要素3006に連結され得る。連結機構3016は、第1のインプラント3002を通って形成された1つ又は2つ以上の孔を通すことにより、第1のインプラント3002に連結することができる。連結機構3016は、可撓性要素3006に連結されるループを形成することができる。第2のインプラント3004は、少なくとも部分的に形態が変化可能となるように構成され得る。例えば、第2のインプラント3004は、少なくとも部分的に柔軟性であり得る。少なくとも1つの実施形態において、第2のインプラント3004の直径は約6mm~約8mmであり、第2のインプラント3004の厚さは約1mmであり得る。ただし、第2のインプラント3004は任意の他の好適な寸法を有し得る。第1の末端3012は、張力がかけられることによってループ3008のサイズを減少させ、第2のインプラント3004を第1のインプラント3002に向かって移動させるように構成された緊張端とすることができる。
【0089】
例示的な一実施形態に関連して例示又は説明した特徴は、本開示の範囲内に含まれることを意図した任意の数の改変及び変形例を有し得る。例えば、本システム及び方法は、関節鏡による肩関節修復術に関連して説明されているが、このシステム及び方法は、患者の膝関節又は股関節における損傷の修復にも使用することができる。
【0090】
当業者には、上述の実施形態に基づいて本発明の更なる特徴及び利点が認識されよう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によって示される場合を除き、具体的に示され説明される内容により限定されるものではない。本明細書に引用されるすべての刊行物及び参照文献はそれらの全容を参照によって本明細書に明示的に援用するものである。
【0091】
〔実施の態様〕
(1) 第1のインプラントと、
変化可能な形態を有する第2のインプラントと、
前記第1のインプラントと前記第2のインプラントとを連結する可撓性要素であって、摺動結び目で閉じられた調節可能ループを形成し、前記結び目から延びる第1及び第2の自由端を有する可撓性要素と、を含み、
前記可撓性要素の前記第1の自由端が、張力がかけられることによって前記ループのサイズを減少させ、それによって前記第2のインプラントの前記形態を変化させるように構成されている、外科用装置。
(2) 前記摺動結び目が、前記可撓性要素の前記第1の自由端の周りに前記可撓性要素の前記第2の自由端を巻き付けることによって形成されている、実施態様1に記載の外科用装置。
(3) 前記第1のインプラントが、連結機構を介して前記ループに連結されている、実施態様1に記載の外科用装置。
(4) 前記第1のインプラントが実質的に剛性であり、前記第2のインプラントが実質的に非剛性かつ形状適合性である、実施態様1に記載の外科用装置。
(5) 前記第1及び第2のインプラントが実質的に剛性である、実施態様1に記載の外科用装置。
【0092】
(6) 前記第1及び第2のインプラントが実質的に非剛性かつ形状適合性である、実施態様1に記載の外科用装置。
(7) 前記第1及び第2のインプラントが前記ループに摺動可能に連結されている、実施態様1に記載の外科用装置。
(8) 前記第2のインプラントが前記ループの長さに沿って形成された部材を含み、これによって、前記ループのサイズの減少が前記第2のインプラントの長さを減少させるとともにその直径を増大させる、実施態様1に記載の外科用装置。
(9) 前記部材が、前記ループの部分の周りに巻き付けられた縫合糸ストランドで形成されている、実施態様7に記載の外科用装置。
(10) 変化可能な形態を有する第3のインプラントと、
第2の摺動結び目で閉じられた第2の調節可能ループを形成し、第3及び第4の自由端を有する、第2の可撓性要素と、
を更に含み、
前記第2の可撓性要素に前記第3のインプラントが連結され、前記第3の自由端が、張力がかけられることによって前記第2のループのサイズを減少させ、それによって前記第3のインプラントの前記形態を変化させるように構成され、
前記第1のインプラントが前記第2のループに連結されている、実施態様1に記載の外科用装置。
【0093】
(11) 組織を骨に取り付けるための外科用アセンブリであって、
組織貫通遠位先端を備えたシャフトを有する送達装置であって、前記シャフトが、前記シャフトの長さの少なくとも一部分に沿ってその側壁を通って延在する長手方向溝を有する、送達装置と、
配置可能なインプラント構造体であって、
前記送達装置に付随する第1のインプラントと、
変化可能な形態を有する第2のインプラントと、
前記第1のインプラントと前記第2のインプラントとを連結する可撓性要素であって、摺動結び目で閉じられた調節可能ループを形成し、前記摺動結び目から延びる第1及び第2の自由端を有する可撓性要素と、を含むインプラント構造体と、を含み、
前記可撓性要素の前記第1の自由端が、張力がかけられることによって前記ループのサイズを減少させ、それによって前記第2のインプラントの前記形態を変化させるように構成されている、外科用アセンブリ。
(12) 前記第1のインプラントが、前記シャフトの前記溝内に着脱可能に配置され、第2のアンカーが、前記溝の外側に配置されている、実施態様11に記載のアセンブリ。
(13) 前記第1及び第2のインプラントが、前記シャフトの前記溝内に着脱可能に配置されている、実施態様11に記載のアセンブリ。
(14) 前記送達装置が、前記組織貫通遠位先端及び前記長手方向溝を有する針を含む、実施態様11に記載のアセンブリ。
(15) 外科的方法であって、
第1のインプラントと、第2のインプラントと、予め結ばれた摺動結び目を有し、前記第1のインプラントと前記第2のインプラントとを連結するループを形成する可撓性要素と、を有する構造体を、手術部位へと前進させることと、
前記第1のインプラントが、軟組織に隣接した骨内へと貫通させられて前記軟組織の第1の側に位置し、前記第2のインプラントが前記軟組織の第2の反対側に配置されるように、前記構造体を前記手術部位内に配置することと、
前記摺動結び目から延びる前記可撓性要素の結んでいない端に張力をかけることで前記可撓性要素を前記摺動結び目に通して摺動させることによって前記ループのサイズを減少させるとともに前記第2のインプラントの形態を変化させ、それにより、少なくとも前記第2のインプラントを前記第1のインプラントの方向に動かすことと、を含む、方法。
【0094】
(16) 前記縫合糸に張力をかけることが、前記第1の末端縫合糸を引っ張ることによって前記摺動結び目をロックすることを含む、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記第2のアンカーが、該第2のアンカーの少なくとも1つの寸法が減少するように形態を変化させる、実施態様15に記載の方法。
(18) 前記少なくとも1つの寸法が、前記第2のアンカーの長さを含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記構造体を前記手術部位内に配置することが、
前記構造体が着脱可能に付随している外科用器具の針の遠位先端を前記組織に貫通させることを含み、それによって前記遠位先端が、前記軟組織の前記第2の側から前記軟組織の前記第1の側へと通され、かつ前記骨内へと前進させられることで前記第1のアンカーを前記骨内に配置し、このとき前記第2のアンカーは、前記遠位先端が前記第2の側から前記第1の側へと通される際に前記組織の前記第2の側に配置される、実施態様15に記載の方法。
(20) 前記構造体を前記手術部位内に配置することが、
前記構造体が着脱可能に付随している外科用器具の針の遠位先端を前記組織に貫通させることを含み、それによって前記遠位先端が、前記軟組織の前記第1の側から前記軟組織の前記第2の側へと通されることで前記第2のアンカーを前記第2の側に配置する、ことと、
前記針を前記第1の側に引き戻すことと、
前記針の前記遠位先端を前記骨内に前進させて前記第1のアンカーを前記骨内に配置することと、を含む、実施態様15に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図17D
図17E
図18A
図18B
図18C
図19A
図19B
図19C
図20A
図20B
図21
図22