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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂シート
(51)【国際特許分類】
   B29B 11/16 20060101AFI20230828BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20230828BHJP
【FI】
B29B11/16
B29K101:12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019024466
(22)【出願日】2019-02-14
(65)【公開番号】P2020131466
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】垣見 直毅
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 明
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-016138(JP,A)
【文献】特開平01-044736(JP,A)
【文献】特表2013-522412(JP,A)
【文献】特表2015-519459(JP,A)
【文献】特開2018-090814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16、15/08-15/14
C08J 5/04-5/10、5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維と樹脂を含む繊維強化樹脂シートの製造方法であって、
繊維フィラメント群を開繊させて繊維フィラメントを一方向に並列状に配列した一方向性長繊維群と、前記開繊時もしくは開繊後に、前記繊維フィラメント群から前記一方向性長繊維群とは別の任意な方向に配置される多方向性繊維を発生させて、強化繊維シートを得ること、
前記強化繊維シート表面に粉体樹脂を付与し、加熱溶融し冷却して前記粉体樹脂を溶融固化し、前記粉体樹脂が溶融固化した前記樹脂により前記多方向性繊維が前記強化繊維シートに接着固定され、前記樹脂が強化繊維シートの内部には含浸していないか又は一部含浸したセミプレグを繊維強化樹脂シートとして得ること、又は、前記強化繊維シートを樹脂液と接触させ、乾燥して、前記強化繊維シートに樹脂が含侵したプリプレグを繊維強化樹脂シートとして得ること、を含み、
前記多方向性繊維の発生は、炭素繊維フィラメント群に張力をかけた状態で、複数の開繊ロール又は複数のブリッジロールを通過させて行い、前記複数の開繊ロール又は前記複数のブリッジロールは、前記炭素繊維フィラメント群に対して接触状態で又は前記炭素繊維フィラメント群が屈曲するように配置され、前記複数の開繊ロール又は前記複数のブリッジロールの状態は、固定、回転、および幅方向への振動のうちの組み合せであり、前記複数の開繊ロール又は前記複数のブリッジロールの表面は、梨地、凹凸および鏡面のうちの組み合わせであり、
前記多方向性繊維の一部又は全部は、前記一方向性長繊維群の内部に入って、前記一方向性長繊維群を構成する繊維と立体的に交錯しており、
前記強化繊維を100質量%としたとき、前記多方向性繊維は10~40質量%であることを特徴とする繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項2】
前記多方向性繊維は、分離又は折れ曲がっている繊維である請求項1に記載の繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項3】
前記繊維強化樹脂シートの繊維体積(Vf)は、30~70体積%である請求項1又は2に記載の繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項4】
前記強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、弾性率が380cN/dtex以上の高弾性率繊維である請求項1~3のいずれかに記載の繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項5】
強化繊維と樹脂を含む繊維強化樹脂シートであって、
前記強化繊維は、複数の繊維フィラメントが並列状に配列された一方向性長繊維群と、前記樹脂により前記一方向性長繊維群に接着固定され前記一方向性長繊維群とは別の任意な方向に配置された多方向性繊維とを含み、
前記強化繊維を100質量%としたとき、前記多方向性繊維は10~40質量%であり、
前記多方向繊維の一部又は全部は、前記一方向性長繊維群の内部に入って、前記一方向性長繊維群を構成する繊維と立体的に交錯しており、
前記樹脂は、前記一方向性長繊維群の表面およびその付近に付着しており、前記一方向性長繊維群の表面は、前記樹脂が付着している部分と、前記樹脂が付着していない部分とを含むことを特徴とする繊維強化樹脂シート。
【請求項6】
前記多方向性繊維は、分離又は折れ曲がっている繊維である請求項5に記載の繊維強化樹脂シート。
【請求項7】
前記繊維強化樹脂シートの繊維体積(Vf)は、30~70体積%である請求項5又は6に記載の繊維強化樹脂シート。
【請求項8】
前記強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、弾性率が380cN/dtex以上の高弾性率繊維である請求項5~7のいずれかに記載の繊維強化樹脂シート。
【請求項9】
請求項5から8のいずれかの項に記載の繊維強化樹脂シートを用いて繊維強化樹脂成形品を製造する方法であって、
前記繊維強化樹脂シートを複数枚積層した状態で加熱および加圧して繊維強化樹脂成形品に成形することを含み、前記加圧により、前記一方向性長繊維群の表面およびその付近に付着した前記樹脂は、前記繊維強化樹脂シート内全体に含浸して、前記繊維強化樹脂シートのマトリックス樹脂となる、繊維強化樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化繊維シートの幅方向の引張に対して高い強度を有する繊維強化樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
各種繊維とマトリックス樹脂からなる繊維強化複合材は、その特徴として、力学物性に優れており、建築部材、ノートパソコンの筐体、ICトレイ、スポーツ用品、風車、自動車、鉄道、船舶、航空、宇宙などの一般産業用途等において広く用いられている。特に、加工性が良い強化繊維基材シートに樹脂を含浸させた繊維強化複合材は、軽量性と強度、剛性等を兼ね備えた材料として幅広い用途に用いられている。中でも連続繊維シートは不連続繊維シートと比較して引張強度が極めて高く、航空や宇宙、船舶、自動車、建造物の構造部材や外板等の強度が必要な部材においても有用視されている。
繊維強化複合材を製造する方法としては、製品の様態や要求物性に応じて様々な方法が適用可能である。マトリックス樹脂と炭素繊維基材からなるシート状の中間材料(プリプレグ、セミプレグ)を複数枚積層し、加熱や加圧といった手法を用いて成形させることで繊維強化複合材を製造することができる。
繊維強化複合材は、一方向に配列した炭素繊維を強化繊維基材とした複数枚のシートを繊維軸方向に対して、一方向や直行方向、異方向に積層することができ、各方向に対して物性の制御が行われる。
一方向性の繊維強化複合材は、炭素繊維の性能を可能な限り発現させるために、繊維を応力の方向に対して真直に配置させる。しかし、繊維強化複合材は、強化繊維における繊維方向に沿うようにして加えられる応力に対する強度および弾性率が極めて高いものの、繊維方向と垂直な応力が加わると低応力で繊維(フィラメント)間で破壊するという問題があった。そこで繊維メーカーでは炭素繊維表面にプラズマ照射などの濡れ性向上を、樹脂メーカーでは炭素繊維と良く接着(結合)する樹脂開発を行ってきた。
従来技術では、繊維方向に対して垂直方向の強度を向上させるために、(1)繊維界面の改質(炭素繊維フィラメントの表面に反応基を付加又は凹凸を付ける)、(2)樹脂の繊維界面との接着性を増す、(3)繊維表面に繊維と樹脂の両方に接着する薬剤を塗るなどの方法が採用されている。これらの方法は、繊維と樹脂の相性の問題があり、多方面での活用が難しくなるという課題があった。
【0003】
そこで、物理的に強度を高める方法が取られ、シートの繊維方向に対してフィラメント間を架橋する短繊維を配置する方法が検討されてきた。特許文献1では、短繊維をシートの上に配置して、耐引き裂き性を高めている。この技術は、短繊維が効果を及ぼしているものの、上部の表面のみであり内部には及んでいない。特許文献2では、シートの繊維方向に対して垂直方向に糸を補助繊維糸条により圧縮強度への影響を高めている。しかし、短繊維や補助繊維糸条では表面上のみの効果に留まる。特許文献3では、プリプレグの内部に短繊維(表現では長い繊維)を含ませている。本技術は、プリプレグ内部に短繊維を埋め込み、プリプレグの強度を高めている。さらには繊維を任意に選択することができる。しかし、短繊維では繊維シートそのものとの界面に対する接着がなく、アンカー効果としては弱いと考えられる。また、熱可塑性樹脂の含浸性(流動性)を考慮すると、プリプレグ内部に短繊維を均一に分散できるか懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-277530号公報
【文献】特開2005-22396号公報
【文献】特表2013-531717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上説明のとおり、従来技術は強化繊維の一体性及び繊維強化樹脂シートの幅方向の引張強度に問題があり、さらなる改善が求められていた。
本発明は、前記従来の問題を解決するため、強化繊維の一体性が高く、繊維強化樹脂シートの幅方向の引張強度の高い繊維強化樹脂シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の繊維強化樹脂シートは、強化繊維と樹脂を含む繊維強化樹脂シートであって、前記強化繊維は一方向性長繊維群と前記一方向性長繊維群に由来する多方向性繊維を含み、前記強化繊維を100質量%としたとき、前記多方向性繊維は10~40質量%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の繊維強化樹脂シートの強化繊維は、一方向性長繊維群と前記一方向性長繊維群に由来する多方向性繊維を含むことにより、強化繊維の一体性が高く、繊維強化樹脂シートの幅方向の引張強度の高い繊維強化樹脂シートを提供でき、故に、当該繊維強化樹脂シートを用いれば、垂直方向への引張強度が高い繊維強化樹脂成形品を提供できる。多方向性繊維は一方向性長繊維群を構成する繊維と交錯し、一方向性長繊維群の分割を抑えて一体化を高めているため、繊維強化樹脂シートの幅方向の引張強度を高め、故に、繊維強化樹脂成形品の垂直方向への引張強度を高めている。このため、樹脂の種類によっては影響されず、目的に応じて熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂が適用でき、汎用的な樹脂から特殊樹脂まで幅広く対応が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は本発明の一実施形態の樹脂一体化炭素繊維シートの模式的斜視図である。
図2図2は同、樹脂一体化炭素繊維シートの幅方向の模式的断面図である。
図3図3は本発明の一実施形態の樹脂一体化炭素繊維シートの製造方法を示す模式的工程図である。
図4図4は本発明の別の実施形態の樹脂一体化炭素繊維シートの製造方法を示す模式的工程図である。
図5図5A-Eは本発明の一実施形態の開繊装置の模式的説明図である。
図6図6図5Bの部分的拡大斜視図である。
図7図7は本発明の一実施形態の炭素繊維シートの模式的斜視図である。
図8図8は本発明の実施例1の成形体の一方向性長繊維群の繊維方向から見た断面を、光学顕微鏡を用いて20倍で撮影した写真である。
図9図9は、同断面写真から、多方向性繊維の割合を算出する説明図である。
図10図10は本発明の実施例2の成形体の一方向性長繊維群の繊維方向から見た断面を、光学顕微鏡を用いて20倍で撮影した写真である。
図11図11は比較例1の成形体の一方向性長繊維群の繊維方向から見た断面を、光学顕微鏡を用いて20倍で撮影した写真である。
図12図12は本発明の実施例と比較例の積層板のひずみと応力の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の繊維強化樹脂シートは、強化繊維と樹脂を含む。強化繊維は一方向性長繊維群と一方向性長繊維群に由来する多方向性繊維を含む。多方向性繊維は一方向性長繊維群から発生したものであり、一方向性長繊維群とは別の任意な方向に配置されている。多方向性繊維は、一方向性長繊維群を構成する繊維と交錯している。ここで交錯とは、絡み合いを含む。例えば、多方向性繊維の一部または全部は一方向性繊維内に存在し、一方向性繊維と立体的に交錯している。強化繊維を100質量%としたとき、多方向性繊維は10~40質量%であり、好ましくは12~35質量%、より好ましくは15~30質量%である。前記の範囲であれば、強化繊維シートの一体性が高く、幅方向の引張強度の高い繊維強化樹脂シートとなる。
【0010】
多方向性繊維は、一方向性長繊維群から分離した繊維及び/又は一方向性長繊維群を構成する繊維が折れ曲がっている繊維が好ましい。これにより、強化繊維シートの一体性が高く、幅方向の引張強度の高い繊維強化樹脂シートとなる。
【0011】
繊維強化樹脂シートを複数枚積層し加圧成形したときの成形体の幅方向の引張強度は、多方向性繊維を含まない繊維強化樹脂シートを複数枚積層し加圧成形したときの成形体の幅方向の引張強度より1~25%高いことが好ましく、より好ましくは2~20%高い。これにより、強化繊維シートの一体性が高く、幅方向の引張強度の高い繊維強化樹脂シートとなる。
【0012】
強化繊維の繊維方向の引張強度は、多方向性繊維を含まない強化繊維の繊維方向の引張強度の75%以上の強度であることが好ましく、より好ましくは75~95%であり、さらに好ましくは77~90%である。強化繊維は多方向性繊維を含むことにより引張強度は低下するが、一方向性長繊維群を構成する繊維と多方向性繊維との絡み合いもあるので、多方向性繊維を発生させた分ほどには低下しない。また、引張強度が弱くなった分は、シートの積層数をアップさせることにより調整できる。
【0013】
繊維強化樹脂シートは、1枚の繊維強化樹脂シート又は2枚以上積層させた繊維強化樹脂シートであることが好ましい。本発明の繊維強化樹脂シートは幅方向の引張強度が高いため、1枚でも取り扱いでき、複数枚積層させても取り扱いできる。また、複数枚積層する場合は、多方向性繊維を含まない繊維強化樹脂シートと一体化することもできる。
【0014】
強化繊維は開繊シートであるのが好ましい。例えば炭素繊維の場合、原料繊維群(トウ)が巻かれている供給ボビンを複数本準備し、繊維群を解除して引きそろえ、開繊して開繊シートとする。開繊シートは、通常は一方向性繊維群である。得られた開繊シートに樹脂を付与して繊維強化樹脂シートとする。
【0015】
繊維強化樹脂シートの繊維体積(Vf)は、30~70体積%が好ましく、より好ましくは40~65体積%であり、さらに好ましくは45~60体積%である。前記の割合であれば、繊維強化樹脂シートを複数枚積層状態で加熱・加圧して繊維強化樹脂成形品に成形する際に、樹脂は成形体のマトリックス樹脂になり、成形体の中間材として好ましい。
【0016】
強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、弾性率が380cN/dtex以上の高弾性率繊維であるのが好ましい。このような高弾性率繊維としては、例えばアラミド繊維、とくにパラ系アラミド繊維(弾性率:380~980cN/dtex)、ポリアリレート繊維(弾性率:600~741cN/dtex)、ヘテロ環ポリマー(PBO, 弾性率:1060~2200cN/dtex)繊維、高分子量ポリエチレン繊維(弾性率:883~1413cN/dtex)、ポリビニルアルコール繊維(PVA,強度:14~18cN/dtex)などがある(繊維の百科事典,522頁,2002年3月25日,丸善)。
【0017】
繊維強化樹脂シートは、強化繊維シート表面にマトリックス粉体樹脂またはフィルムを付与し熱融着させたセミプレグ及び強化繊維シートにマトリックス樹脂を含侵したプリプレグから選ばれる少なくとも一つであるのが好ましい。これらは繊維強化樹脂シートとして好適である。樹脂は、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂から選ばれる少なくとも一つ樹脂であれば、汎用的な樹脂から特殊樹脂まで幅広く対応が可能となる。
【0018】
セミプレグの場合、樹脂は強化繊維シートの表面付近に存在しており、成形工程で前記樹脂は強化繊維シート中に含浸することが好ましい。このような構造は、開繊した強化繊維シートに粉体の熱可塑性樹脂を付与し、圧力フリーで加熱溶融することにより得られる。
【0019】
プリプレグの場合は、樹脂は水系、溶剤系、又はこれらの混合系で溶解又は分散し、強化繊維シートを浸漬又は炭素繊維シートにコーティングなどで付与し、乾燥することにより得られる。
【0020】
本発明の強化繊維シートの製造方法は、炭素繊維を例に挙げると、炭素繊維フィラメント群を複数のロール又は開繊バーを通過させて炭素繊維フィラメント群を開繊させる際に、開繊工程で炭素繊維フィラメント群に張力をかけ、炭素繊維フィラメント群から多方向性繊維(以下、「架橋繊維」ともいう)を発生させ、前記炭素繊維フィラメント群を構成する炭素繊維フィラメントと交錯して配置させる。例えば、開繊工程で炭素繊維フィラメント群の張力を2.5N以上とし、前記炭素繊維フィラメント群から架橋繊維を発生させる。好ましい張力は5.0N以上である。この張力は、供給ボビンから開繊工程に供給する際の1供給ボビン(トウフィラメント15,000本)当たりの炭素繊維フィラメント群(トウ)の張力である。これにより架橋繊維が発生しやすくなる。
【0021】
前記ロール又は開繊バーは、炭素繊維フィラメント群を開繊する際に、幅方向に振動させてもよい。これにより効率よく炭素繊維フィラメント群を開繊できるとともに、架橋繊維が発生しやすくなる。炭素繊維フィラメント群はボビンに巻かれた状態で複数本供給され、幅方向に拡開されるとともに開繊され、1枚の開繊シートにされる。これにより、薄くて幅の広い開繊シートが得られる。
【0022】
強化繊維シートが炭素繊維シートである場合、本発明の炭素繊維シートは、炭素繊維フィラメント群が開繊され一方向に並列状に配列させた一方向性長繊維群と、前記一方向性長繊維群に由来する多方向性繊維を含む炭素繊維シートである。炭素繊維フィラメント群とは、多数本の炭素繊維フィラメントの束(以下、「炭素繊維未開繊トウ」ともいう)を意味する。開繊とは、トウを構成する多数本の炭素繊維を幅方向に解き分けて薄いシート状又はテープ状にすることをいう。好ましい厚さは0.02~0.4mmであり、さらに好ましくは0.02~0.3mmである。本発明で使用する炭素繊維未開繊トウは3~60Kが好ましく、さらに好ましくは12~60Kである。ここでKは1000本のことであり、市販品のラージトウは、例えば50K(50,000本)の場合、通常の幅12mm程度である。
【0023】
炭素繊維シートの面積10mm2あたり平均1本以上、炭素繊維シートの表面にかつ炭素繊維シートの一方向性長繊維群を構成する炭素繊維の配列方向(繊維方向)と異なる方向に、多方向性繊維(架橋繊維)が存在する。好ましくは、架橋繊維は炭素繊維シートの面積10mm2あたり平均25~150本であり、さらに好ましくは平均30~135本である。前記本数であれば、幅方向の強度が高く取り扱い性は良好である。架橋繊維の角度は、一方向性長繊維群を構成する炭素繊維の配列方向と異なる方向であればいかなる方向でもよく、炭素繊維の配列方向からゼロ度を超え、180度未満であればよい。最も効率的であるのは90度であるが、架橋繊維の角度を制御することは困難であり、あらゆる方向でよい。
【0024】
炭素繊維シートの少なくとも表面に部分的には樹脂が存在し、架橋繊維は、表面の樹脂により炭素繊維シートに接着固定されている。これにより、幅方向の強度が高く取り扱い性は良好となる。
【0025】
架橋繊維は、炭素繊維フィラメント群を由来とする炭素繊維となる。架橋繊維による作用機能は前記のとおりである。
【0026】
架橋繊維は、炭素繊維シートの表面に存在しており、片面でもよく、両面でもよい。好ましくは両面である。幅方向の強度及び取り扱い性からすると、両面に存在するのが好ましい。炭素繊維シートの内部にも炭素繊維シートの一方向性長繊維群を構成する炭素繊維と交錯する方向に架橋繊維が存在するのが好ましい。例えば、架橋繊維の一部は炭素繊維シートの表面に、残りは炭素繊維シートの内部に存在していてもよい。
【0027】
樹脂は、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂から選ばれる少なくとも一つであるのが好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ナイロン(ポリアミド)樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂、フェノキシ樹脂などが使用可能であるが、これらに限定されない。熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などが使用可能であるが、これらに限定されない。この中でも熱可塑性樹脂が好ましい。
【0028】
セミプレグの場合、炭素繊維シートへの樹脂の付着状態は、開繊された炭素繊維シートの表面付近に樹脂が溶融固化して付着しており、樹脂は炭素繊維シート内部には含浸していないか又は一部含浸しているのが好ましい。前記状態であると、樹脂一体化炭素繊維シートを複数枚積層状態で加熱・加圧して繊維強化樹脂成形品に成形するために好ましい。
【0029】
繊維強化樹脂シート(以下、「樹脂一体化炭素繊維シート」ともいう)の質量は10~3000g/m2が好ましく、より好ましくは20~2000g/m2であり、さらに好ましくは30~1000g/m2である。前記の範囲であれば実用的であり、様々な用途に好適である。
【0030】
樹脂一体化炭素繊維シート表面の樹脂は、炭素繊維シートを成形加工する際のマトリックス樹脂であるのが好ましい。これにより、樹脂一体化炭素繊維シートを複数枚積層状態で加熱・加圧して繊維強化樹脂成形品に成形できる。
【0031】
炭素繊維シート(以下「開繊シート」ともいう)の開繊は、炭素繊維束(トウ)の幅に対して3~400%拡開したものが好ましい。より好ましくは、5~330%である。これにより、炭素繊維メーカーの販売する炭素繊維束を拡開し、使用し易い開繊シートとし、様々な成形物に供給できる。供給糸の炭素繊維束(トウ)は3,000~50,000本/束が好ましく、この炭素繊維束(トウ)を10~280本供給するのが好ましい。このように炭素繊維束(トウ)を複数本供給して開繊し、1枚のシートにすると、炭素繊維束(トウ)と炭素繊維束(トウ)の間が開裂しやすいが、様々な方向性を有する架橋繊維が樹脂によりシートに接着固定されていると、トウ間の開裂も防止できる。
【0032】
架橋繊維(多方向性繊維)の平均長さは、1mm以上が好ましく、より好ましくは5mm以上、さらに好ましくは10~100mmである。架橋繊維の平均長さが10~100mmとすれば、炭素繊維の直径=0.007mmであるから、アスペクト比(長さL、直径d アスペクト比s=L/d)は1429~14286となる。架橋繊維の平均長さが前記の範囲であれば、幅方向の強度が高く、取り扱い性に優れた炭素繊維シートとなる。
【0033】
本発明の樹脂一体化炭素繊維シートの製造方法は、次の工程を含む。
A 炭素繊維フィラメント群を複数のロールを通過、開繊バーを通過、及びエアー開繊から選ばれる少なくとも一つの手段により開繊させ、一方向に並列状に配列させるに際し、前記開繊時もしくは開繊後に架橋繊維を前記炭素繊維フィラメント群から発生させる。開繊後に架橋繊維を発生させる場合は、この後にブリッジロールにより架橋繊維を発生させる。
B 炭素繊維シートに粉体樹脂を付与し、圧力フリーで加熱溶融し、冷却してセミプレグとするか、又は樹脂液と接触させてプリプレグとする。セミプレグは乾式であり、樹脂の付着量を正確に制御できることから好ましい。プリプレグは湿式であり、樹脂の付着量を正確に制御することは難しい。以下においては、セミプレグを例に挙げて説明する。
【0034】
具体的には、一例として下記の方法があり、図面を用いて説明する。以下の図において、同一符号は同一物を示す。
<エアー開繊工程+架橋繊維発生工程+粉体樹脂付与工程>
図3に示すように、炭素繊維フィラメント群(未開繊トウ)26を複数のニップロール30a,30b間でニップし、この間の押さえロール27a,27bの間に撓み空間28を設け、撓み空間28内の空気を吸引した状態で通過させる。これにより炭素繊維フィラメント群26を開繊させる(エアー開繊工程25)。撓み空間28は1個でもよいし複数設けてもよい。炭素繊維フィラメント群26は多数個の供給ボビン2からトウを集めて作成する。
開繊工程の後、開繊されたトウをニップロール30b,30c間でニップし、この間に設置された複数のブリッジロール29a-29dの間を通過させることで、架橋繊維を発生させる(架橋繊維発生工程33)。ブリッジロールは回転してもよく、幅方向に振動しても良い。ブリッジロールは、例えば表面が梨地、凹凸、鏡面、複数ロールで炭素繊維フィラメント群を屈曲、固定、回転、振動又はこれらの組み合わせにより架橋繊維を発生させる。12a-12gはガイドロールである。
その後、粉体供給ホッパー9からドライパウダー樹脂10を開繊シートの表面に振りかけ、圧力フリー状態で加熱装置11内に供給し加熱し、ドライパウダー樹脂10を溶融し、ガイドロール12e-12g間で冷却する。その後、開繊シートの裏面にも粉体供給ホッパー13からドライパウダー樹脂14を振りかけ、圧力フリー状態で加熱装置15内に供給し加熱し、ドライパウダー樹脂14を溶融し、冷却し、巻き上げロール16に巻き上げられる(粉体樹脂付与工程34)。
【0035】
<ロール開繊工程(+架橋繊維発生工程)+粉体樹脂付与工程>
図4に示すように、炭素繊維フィラメント群26を開繊ロール31a-31jの間を通過させることで、開繊時に架橋繊維を発生させる(ロール開繊工程32)。開繊ロールは固定又は回転してもよく、幅方向に振動しても良い。架橋繊維の発生が少ない場合は、開繊されたトウをニップロール30a,30b間でニップし、この間に設置された複数のブリッジロール29a-29bの間を通過させることで、架橋繊維を発生させる(架橋繊維発生工程33)。ロール開繊工程32により十分な架橋繊維が発生する場合は、架橋繊維発生工程33は不要である。その後は図3と同様な粉体樹脂付与工程34を通過させる。
【0036】
<ブリッジロール>
ブリッジロールとしては図3-4に示す物以外にも図5A-Eに示すブリッジロールなどがある。図5Aはガイドロール12a,12b間にブリッジロール29aを炭素繊維フィラメント群26に接触状態で配置した例である。図5Bはガイドロール12a,12b間にブリッジロール29aを炭素繊維フィラメント群26に屈曲状態で配置した例である。図5Cはガイドロール12a,12b間にブリッジロール29a,29bを炭素繊維フィラメント群26にニップ状態で配置した例である。図5Dはガイドロール12a,12b間にブリッジロール29a,29bを炭素繊維フィラメント群26に接触状態で配置した例である。図5Eはガイドロール12a,12b間にブリッジロール29a,29bを炭素繊維フィラメント群26に屈曲状態で配置した例である。このように炭素繊維フィラメント群をブリッジロールに接触又は屈曲させて通過させることで、架橋繊維を発生させることができる。ブリッジロール29a,29bは固定又は回転していてもよく、幅方向に振動していても良い。図6図5Bの斜視図である。
【0037】
粉体樹脂の付与は、粉体塗布法、静電塗装法、吹付法、流動浸漬法などが採用できる。炭素繊維シート表面に粉体樹脂を落下させる粉体塗布法が好ましい。例えばドライパウダー状の粉体樹脂を炭素繊維シートに振りかける。
【0038】
図1は本発明の一実施形態の樹脂一体化炭素繊維シート20の模式的斜視図、図2は同、樹脂一体化炭素繊維シート20の幅方向の模式的断面図である。開繊された炭素繊維シート21の表面には架橋繊維(多方向性繊維)22が様々な方向に配置している。また炭素繊維シート21の表面付近に樹脂23が溶融固化して付着しており、樹脂23は炭素繊維シート21内部には含浸していないか又は一部含浸している程度である。樹脂23は架橋繊維22を炭素繊維シート21の表面に接着固定している。図2に示すように、炭素繊維シート21の表面には架橋繊維22a,22bが存在する。架橋繊維22a,22bは一部が炭素繊維シート21の表面にあり、一部は炭素繊維シート21の内部に入って炭素繊維と交錯した状態である。これは開繊時又は開繊後に架橋繊維を発生させたためである。樹脂23は架橋繊維22を炭素繊維シート21の表面に接着固定している。また、樹脂23が付着している部分と、樹脂が付着していない部分24がある。樹脂が付着していない部分24は、樹脂一体化炭素繊維シート20を複数枚積層状態で加熱・加圧して繊維強化樹脂成形品に成形する際に、繊維シート内部の空気がこの部分から抜ける通路となり、加圧により表面の樹脂が繊維シート内全体に含浸しやすくなる。これにより樹脂23は炭素繊維シート21のマトリックス樹脂となる。
【0039】
図7は本発明の一実施形態の炭素繊維シート21は、一方向に配列されている一方向性長繊維群21aと、一方向性長繊維群21aに由来する架橋繊維(多方向性繊維)22a,22bが存在する。架橋繊維22a,22bは一部が炭素繊維シート21の表面にあり、一部は内部に入って炭素繊維と交錯した状態である。これにより、多方向性繊維(架橋繊維)が一方向性長繊維群を構成する繊維と交錯し、一方向性長繊維群の分割を抑えて一体化を高めているため、繊維強化樹脂シートの幅方向の引張強度を高めていると考えられる。
【実施例
【0040】
以下実施例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(1)炭素繊維未開繊トウ
炭素繊維未開繊トウは三菱ケミカル社製、品番:PYROFILE TR 50S15L、形状:レギュラートウ フィラメント15K(15,000本)、単繊維直径7μmを使用した。この炭素繊維未開繊トウの炭素繊維にはエポキシ系化合物がサイジング剤として付着されている。
(2)未開繊トウの開繊手段
図3に示す開繊装置を使用して開繊した。ニップロール30b,30c間の炭素繊維フィラメント群(トウ)の張力をトウフィラメント15K(15,000本)当たり10Nとした。開繊シートの巻き上げ速度は10m/分であった。このようにして炭素繊維フィラメント構成本数1,5000本のトウを40本から、開繊幅500mm、厚み0.2mmの開繊シートを作製した。開繊シートの質量は80g/m2であった。
(3)樹脂及び熱処理
ドライパウダー樹脂としてポリアミド樹脂(PA6、宇部興産社製、融点225℃)を使用した。ドライパウダー樹脂の平均粒子径は80μmであった。この樹脂は、炭素繊維1m2に対して平均片面16.3g、両面で32.6g付与した。加熱装置11,15内の温度は各240℃、滞留時間は各4秒とした。
(4)繊維強化樹脂成形体の作製
繊維強化樹脂成形体の試験片を作製した。この繊維強化樹脂成形体は樹脂一体化炭素繊維シートを11枚積層し、温度260℃、圧力3MPa、時間10分で加圧成形した。得られた成形体の一方向性長繊維群の繊維方向から見た断面を、光学顕微鏡を用いて20倍で撮影した写真を図8に示す。
(5)多方向性繊維の割合の測定
図8に示す成形体の一方向性長繊維群の繊維方向から見た断面写真から、次のように多方向性繊維(架橋繊維)の割合を算出した。図9はこの説明図である。
(a)任意の3点を選択して、繊維方向に200μm相当の幅×積層体厚み(=面)内で架橋繊維を観察した。
(b)架橋繊維は、「0°から逸れた繊維長さ50μm以下相当」として、定義した。
(c)架橋繊維が存在している場所を面としてとらえ、その厚さ方向に対して長さを測定した。
(d)架橋繊維面の総ての厚みを架橋繊維が存在しているものとして、割合を算出した。
なお、幅相当200μmと長さ50μmは、写真上の測定値を変換した概算値となる。ただし、幅相当200μm以内に存在する、長さ50μm以下でかつ両端部を確認できる架橋繊維のみを測定した。
得られた架橋繊維の存在割合は表1にまとめて示す。
【0041】
(実施例2)
図3のニップロール30b,30c間の炭素繊維フィラメント群(トウ)の張力をトウフィラメント15K(15,000本)当たり15Nとした以外は実施例1と同様に実施した。得られた成形体の一方向性長繊維群の繊維方向から見た断面を、光学顕微鏡を用いて20倍で撮影した写真を図10に示す。
【0042】
(比較例1)
開繊シートとして、丸八社製の開繊炭素繊維シートを使用した。このシートはエアー開繊シートであり、架橋繊維はほとんど含まないものである。この開繊シートにポリアミド樹脂を含浸し、プリプレグシートとした。成形体の成形は実施例1と同様に実施した。得られた成形体の一方向性長繊維群の繊維方向から見た断面を、光学顕微鏡を用いて20倍で撮影した写真を図11に示す。
以上の実施例、比較例の架橋繊維の存在割合を表1にまとめて示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1から明らかなとおり、実施例1及び実施例2は架橋繊維層の割合が10%以上であった。また、架橋繊維は厚さ全体に存在している状態だった。一方、比較例1は、架橋繊維層の割合が5%に満たなかった。
【0045】
<物性試験>
(1)繊維糸の引張試験
実施例1及び実施例2及び比較例1の繊維糸の強度を引張試験にて測定した。これは比較例1で使用される状態の繊維糸と実施例1及び実施例2で使用される架橋繊維が発生した状態のもので測定を実施した。樹脂を含まないもので測定した。
サンプル作製
・繊維束を200mm用意して、接着剤で両端に紙製のタブを取り付けた。
引張試験
・試験長:150mm
・試験速度:20mm/min
・測定値を繊度あたりに換算して、引張強度を算出
・引張弾性率と引張強度の値から、比較例1の値を100として実施例1、実施例2の割合を算出した。
【0046】
【表2】
【0047】
表2から、樹脂を含まない開繊シートは、比較例1に比べて実施例1及び実施例2の引張弾性率及び引張強度は低かった。
【0048】
(2)引張弾性率測定、垂直方向の引張強度測定、厚さを測定して、繊維割合(Vf)の算出
成形体の寸法:幅200mm、長さ25mm、厚さ1mm
評価試験
・JIS K 7165:2008に基づき、荷重と変異量を測定して、引張弾性率と引張強度を算出
・厚み測定と繊維割合(Vf)算出
【0049】
【表3】
【0050】
表3の引張弾性率と引張強度の平均値から、比較例1の値を100として実施例1及び実施例2の割合を算出した。
【0051】
【表4】
【0052】
表4から、実施例1及び実施例2は比較例1に対して強度が高いことがわかる。とくに実施例2では15%以上高かった。
次に、実施例1と2、比較例1の積層板のひずみと応力を測定した結果についても図12に示す。
図12から明らかなとおり、実施例1と2は比較例1よりひずみと応力が高い結果となった。とくに実施例2は効果が顕著に高かった。架橋繊維量が増えるにつれて、増加する結果を示した。
【0053】
以上の実施例、比較例から次のことが明らかである。
(1)本発明による繊維強化樹脂体は、架橋繊維の無いシートからなる繊維強化樹脂体と比較して、垂直方向への引張強度が高い樹脂体を提供できる。
(2)本発明は、架橋繊維を制御して繊維方向に対して垂直方向の強度を向上できる。
(3)本発明は、架橋繊維を制御するため、繊維方向の引張強度とトレードオフできる。
(4)本発明は、架橋繊維を制御するため、樹脂の種類によらず効果を発揮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の繊維強化樹脂成形体は、航空機用途、鉄道車両用途、船舶用途、自動車用途、スポーツ用途、風車等の建築部材、圧力容器、その他一般産業用途に好適である。
【符号の説明】
【0055】
2 供給ボビン
9,13 粉体供給ホッパー
10,14 ドライパウダー樹脂
11,15 加熱装置
12a-12g ガイドロール
16 巻き上げロール
20 繊維強化樹脂シート(樹脂一体化炭素繊維シート)
21 炭素繊維シート(開繊シート)
21a 一方向性長繊維群
22,22a,22b 多方向性繊維(架橋繊維)
23 樹脂
24 樹脂が付着していない部分
25 エアー開繊工程
26 炭素繊維フィラメント群(未開繊トウ)
27a,27b 押さえロール
28 撓み空間
29a-29d ブリッジロール
30a-30c ニップロール
31a-31j 開繊ロール
32 ロール開繊工程
33 架橋繊維発生工程
34 粉体樹脂付与工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12