(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】光検出器及び距離測定装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/4863 20200101AFI20230828BHJP
G01S 17/10 20200101ALI20230828BHJP
G01S 17/931 20200101ALN20230828BHJP
【FI】
G01S7/4863
G01S17/10
G01S17/931
(21)【出願番号】P 2019046820
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 寛
(72)【発明者】
【氏名】松本 展
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/180277(WO,A1)
【文献】特開2015-078953(JP,A)
【文献】特開2015-127662(JP,A)
【文献】特開2019-032305(JP,A)
【文献】特開平07-098381(JP,A)
【文献】特開2009-222587(JP,A)
【文献】特表2019-505814(JP,A)
【文献】特表2018-537680(JP,A)
【文献】特表2017-520134(JP,A)
【文献】斎藤 繁 他,自動運転を目指した、サブレンジ合成(SRS)方式による長距離(250m)測距センシングシステムの開発,映像情報メディア学会 2018年冬季大会[CD-ROM],日本,一般財団法人映像情報メディア学会,2018年12月06日,ISSN: 1880-6953
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
17/00 - 17/95
G01B 11/00 - 11/30
G01C 3/00 - 3/32
G01J 1/00 - 1/60
11/00
H01L 27/14 - 27/148
27/30
29/76
31/00 - 31/02
31/08 - 31/10
31/18
H04N 5/222- 5/257
5/30 - 5/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の第1領域に形成され、各々が複数の光検出素子を含む第1グループ及び第2グループと、
前記第1グループ内の前記複数の光検出素子のうち複数の第1光検出素子を選択し、前記複数の第1光検出素子からの出力を積算するように構成された第1選択積算回路と、
前記第2グループ内の前記複数の光検出素子のうち複数の第2光検出素子を選択し、前記複数の第2光検出素子からの出力を積算するように構成された第2選択積算回路と、
を備え、
前記第1選択積算回路は、前記複数の第1光検出素子を前記第1グループ内の前記複数の光検出素子の部分として選択する場合、前記第1グループ内の前記複数の光検出素子のうち、前記複数の第1光検出素子からの出力を選択的に積算するように構成され、
前記第2選択積算回路は、前記複数の第2光検出素子を前記第2グループ内の前記複数の光検出素子の部分として選択する場合、前記第2グループ内の前記複数の光検出素子のうち、前記複数の第2光検出素子からの出力を選択的に積算するように構成され、
前記第1選択積算回路及び前記第2選択積算回路は、前記基板上の前記第1領域の外において、第1方向に沿って前記第1領域と並ぶ第2領域に形成され、
前記第1グループ及び前記第2グループは、前記第1方向と交差する第2方向に並ぶ、
光検出器。
【請求項2】
前記複数の第1光検出素子と、前記第1グループ内の前記複数の光検出素子のうち前記第1光検出素子以外の複数の第3光検出素子とは、前記第1方向に並ぶ、
請求項1記載の光検出器。
【請求項3】
前記複数の第1光検出素子は、前記第2方向に並ぶ第1部分を含む、
請求項2記載の光検出器。
【請求項4】
前記複数の第1光検出素子は、前記第2方向に並ぶ第2部分を更に含み、
前記第1部分及び前記第2部分は、前記第1方向に並ぶ、
請求項3記載の光検出器。
【請求項5】
基板上の第1領域に形成された複数の光検出素子と、
前記基板上の前記第1領域の外において、第1方向に沿って前記第1領域と並ぶ第2領域に形成された複数のスイッチ素子と、
を備え、
前記複数の光検出素子は、
前記第1方向に沿って並ぶ第1光検出素子及び第2光検出素子と、
前記第1光検出素子と前記第1方向と交差する第2方向に沿って並ぶ第3光検出素子と、
を含み、
前記複数のスイッチ素子は、
前記第1光検出素子の第1端及び前記第3光検出素子の第1端と電気的に接続された第1端を含む第1スイッチ素子と、
前記第2光検出素子の第1端と電気的に接続された第1端と、前記第1スイッチ素子の第2端と電気的に接続された第2端と、を含む第2スイッチ素子と、
を含む、光検出器。
【請求項6】
前記第1領域は、前記基板に沿う平面内において前記複数の光検出素子を内包する最小の矩形であり、
前記第2領域は、前記基板に沿う平面内において前記複数のスイッチ素子を内包する最小の矩形である、
請求項5記載の光検出器。
【請求項7】
前記複数の光検出素子は、
前記第1光検出素子及び前記第3光検出素子と前記第2方向に沿って並ぶ第4光検出素子及び第5光検出素子と、
前記第2光検出素子と前記第2方向に沿って並び、前記第4光検出素子と前記第1方向に沿って並ぶ第6光検出素子と、
を含み、
前記複数のスイッチ素子は、
前記第4光検出素子の第1端及び前記第5光検出素子の第1端と電気的に接続された第1端と、前記第1スイッチ素子のゲートと電気的に接続されたゲートと、を含む第3スイッチ素子と、
前記第6光検出素子の第1端と電気的に接続された第1端と、前記第3スイッチ素子の第2端と電気的に接続された第2端と、前記第2スイッチ素子のゲートと電気的に接続されたゲートと、を含む第4スイッチ素子と、
を含む、
請求項5記載の光検出器。
【請求項8】
前記第2領域内に形成された複数のインバータを更に備え、
前記複数のスイッチ素子は、
前記第1光検出素子の第1端及び前記第3光検出素子の第1端と電気的に接続された第1端を含む第5スイッチ素子と、
前記第5スイッチ素子の第2端と電気的に接続された第1端と、前記第2光検出素子の第1端と電気的に接続された第2端と、を含む第6スイッチ素子と、
を含み、
前記複数のインバータは、
前記第1スイッチ素子のゲートに電気的に接続された第1端と、前記第5スイッチ素子のゲートに電気的に接続された第2端と、を含む第1インバータと、
前記第2スイッチ素子のゲートに電気的に接続された第1端と、前記第6スイッチ素子のゲートに電気的に接続された第2端と、を含む第2インバータと、
を含む、
請求項5記載の光検出器。
【請求項9】
光源と、
前記光源からの出射光を投光し、外部からの前記出射光の反射光を受光するように構成された光学系と、
前記受光した反射光を検出するように構成された光検出器と、
制御回路と、
を備え、
前記光検出器は、
基板上の第1領域に形成され、各々が複数の光検出素子を含む第1グループ及び第2グループと、
前記基板上の前記第1領域の外において、第1方向に沿って前記第1領域と並ぶ第2領域に形成された第1選択積算回路及び第2選択積算回路と、
を含み、
前記第1グループ及び前記第2グループは、前記第1方向と交差する第2方向に並び、
前記第1選択積算回路は、前記制御回路からの選択信号に応じて、前記第1グループ内の前記複数の光検出素子のうち複数の第1光検出素子を選択し、前記複数の第1光検出素子からの出力を積算するように構成され、
前記第2選択積算回路は、前記選択信号に応じて、前記第2グループ内の前記複数の光検出素子のうち複数の第2光検出素子を選択し、前記複数の第2光検出素子からの出力を積算するように構成さ
れ、
前記第1選択積算回路は、前記複数の第1光検出素子を前記第1グループ内の前記複数の光検出素子の部分として選択する場合、前記第1グループ内の前記複数の光検出素子のうち、前記複数の第1光検出素子からの出力を選択的に積算するように構成され、
前記第2選択積算回路は、前記複数の第2光検出素子を前記第2グループ内の前記複数の光検出素子の部分として選択する場合、前記第2グループ内の前記複数の光検出素子のうち、前記複数の第2光検出素子からの出力を選択的に積算するように構成された、
距離測定装置。
【請求項10】
第1方向に並ぶ第1光検出素子及び第2光検出素子と、
前記第1光検出素子と前記第1方向と交差する第2方向に並ぶ第3光検出素子と、
前記第2光検出素子と前記第2方向に並び、前記第3光検出素子と前記第1方向に並ぶ第4光検出素子と、
前記第4光検出素子と前記第1方向に並び、前記第4光検出素子に対して前記第3光検出素子と反対方向に位置する第5光検出素子と、
前記第1光検出素子の出力端に接続される第1端と、第1出力線に接続される第2端と、制御端と、を含む第1スイッチ素子と、
前記第2光検出素子の出力端に接続される第1端と、前記第1出力線に接続される第2端と、制御端と、を含む第2スイッチ素子と、
前記第3光検出素子の出力端に接続される第1端と、第2出力線に接続される第2端と、制御端と、を含む第3スイッチ素子と、
前記第4光検出素子の出力端に接続される第1端と、前記第2出力線に接続される第2端と、制御端と、を含む第4スイッチ素子と、
前記第5光検出素子の出力端に接続される第1端と、前記第2出力線に接続される第2端と、制御端と、を含む第5スイッチ素子と、
前記第1スイッチ素子の制御端に接続される第1選択線と、
前記第2スイッチ素子の制御端に接続される第2選択線と、
前記第3スイッチ素子の制御端に接続される第3選択線と、
前記第4スイッチ素子の制御端に接続される第4選択線と、
前記第5スイッチ素子の制御端に接続される第5選択線と、
前記第1選択線に接続される第1端と、前記第3選択線に接続される第2端と、前記第4選択線に接続される第3端と、シフト線に接続される制御端と、を含む第6スイッチ素子と、
前記第2選択線に接続される第1端と、前記第4選択線に接続される第2端と、前記第5選択線に接続される第3端と、前記シフト線に接続される制御端と、を含む第7スイッチ素子と、
を備え、
前記第6スイッチ素子及び前記第7スイッチ素子は、前記シフト線からの制御信号に基づき、前記第2方向に並ぶ選択線間の電気的接続を前記第1方向又は前記第1方向と反対の方向にシフトさせる、
光検出器。
【請求項11】
前記第6スイッチ素子が前記第1選択線と前記第3選択線との間を電気的に接続する場合、前記第7スイッチ素子は前記第2選択線と前記第4選択線との間を電気的に接続し、
前記第6スイッチ素子が前記第1選択線と前記第4選択線との間を電気的に接続する場合、前記第7スイッチ素子は前記第2選択線と前記第5選択線との間を電気的に接続する、
請求項10記載の光検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、光検出器及び距離測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物に照射したレーザの反射光を検出する光検出器、及び当該光検出器を備える距離測定装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-187041号公報
【文献】特開2018-44923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
SN比の悪化を抑制しつつ、投受光系間のずれを調整する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の光検出器は、基板上の第1領域に形成され、各々が複数の光検出素子を含む第1グループ及び第2グループと、上記第1グループ内の上記複数の光検出素子のうち複数の第1光検出素子を選択し、上記複数の第1光検出素子からの出力を積算するように構成された第1選択積算回路と、上記第2グループ内の上記複数の光検出素子のうち複数の第2光検出素子を選択し、上記複数の第2光検出素子からの出力を積算するように構成された第2選択積算回路と、を備える。上記第1選択積算回路及び上記第2選択積算回路は、上記基板上の上記第1領域の外において、第1方向に沿って上記第1領域と並ぶ第2領域に形成され、上記第1グループ及び上記第2グループは、上記第1方向と交差する第2方向に並ぶ。上記第1選択積算回路は、上記複数の第1光検出素子を上記第1グループ内の上記複数の光検出素子の部分として選択する場合、上記第1グループ内の上記複数の光検出素子のうち、上記複数の第1光検出素子からの出力を選択的に積算するように構成される。上記第2選択積算回路は、上記複数の第2光検出素子を上記第2グループ内の上記複数の光検出素子の部分として選択する場合、上記第2グループ内の上記複数の光検出素子のうち、上記複数の第2光検出素子からの出力を選択的に積算するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る光検出器を含む距離測定装置の構成を説明するためのブロック図。
【
図2】第1実施形態に係る光検出器の機能構成を説明するためのブロック図。
【
図3】第1実施形態に係る光検出器の回路構成を説明するための回路図。
【
図4】第1実施形態に係る光検出器の全体的なレイアウトを説明するための平面図。
【
図5】第1実施形態に係る光検出器内のチャネルユニットと、当該チャネルユニットに対応する選択積算器と、のレイアウトを説明するための平面図。
【
図6】第1実施形態に係る光検出器内の光検出素子の断面構造を説明するための断面図。
【
図7】第1実施形態に係る光検出器内のスイッチ素子の断面構造を説明するための断面図。
【
図8】第1実施形態に係る距離測定装置における距離測定処理を説明するための模式図。
【
図9】第1実施形態に係る光検出器における反射光の検出範囲の選択処理を説明するための模式図。
【
図10】第2実施形態に係る光検出器の回路構成を説明するための回路図。
【
図11】第2実施形態に係る光検出器における反射光の検出範囲の選択処理を説明するための模式図。
【
図12】第3実施形態に係る光検出器の機能構成を説明するためのブロック図。
【
図13】第3実施形態に係る光検出器の回路構成を説明するための回路図。
【
図14】第3実施形態に係る光検出器における反射光の検出範囲の選択処理を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する構成要素については、共通する参照符号を付す。また、共通する参照符号を有する複数の構成要素を区別する場合、当該共通する参照符号に添え字を付して区別する。なお、複数の構成要素について特に区別を要さない場合、当該複数の構成要素には、共通する参照符号のみが付され、添え字は付さない。
【0008】
1.第1実施形態
第1実施形態に係る光検出器と、当該光検出器を備える距離測定装置と、について説明する。第1実施形態に係る距離測定装置は、例えば、レーザを使用して対象物との距離を測定するLiDAR(:Light detection and ranging)であり、第1実施形態に係る光検出器は、例えば、半導体基板上に集積可能なフォトマルチプライヤ(Semiconductor photon-multiplier、特にSiPM:Silicon photon-multiplier)である。
【0009】
1.1 構成
第1実施形態に係る光検出器を備える距離測定装置の構成について説明する。
【0010】
1.1.1 距離測定装置の構成
図1は、第1実施形態に係る距離測定装置の構成を説明するためのブロック図である。
【0011】
図1に示すように、距離測定装置1は、対象物2との間の距離を測定可能に構成される。距離測定装置1は、例えば、図示しない車載システムの一部に相当し得る。対象物2は、例えば、距離測定装置1が搭載された乗用車の前方又は後方に存在する、他の乗用車、歩行者、及び障害物等の有形の物体である。
【0012】
距離測定装置1は、制御計測回路11、レーザ光源12、スキャナ及び光学系13、並びに光検出器14を備える。
【0013】
制御計測回路11は、距離測定装置1の動作を全体的に制御する回路である。より具体的には、制御計測回路11は、レーザ光源12に対して発振信号を送出し、レーザ光源12によるレーザ出射を制御する。制御計測回路11は、スキャナ及び光学系13に対して走査信号を送出してスキャナ及び光学系13を物理的又は光学的に駆動させ、対象物2に投射されるレーザの走査方向を制御する。制御計測回路11は、光検出器14に対して選択信号を送出して、光検出器14内に照射される光を検出する光検出素子を選択する。また、制御計測回路11は、光検出器14からの光の検出結果として出力信号を受けると、当該出力信号に基づいて対象物2との間の距離を算出し、当該算出した距離を含む距離データを出力する。
【0014】
レーザ光源12は、制御計測回路11からの発振信号に基づいてレーザを出射し、スキャナ及び光学系13に出力する。レーザは、例えば、パルスレーザであり、所定のパルス幅及び周期で出射される。
【0015】
スキャナ及び光学系13は、例えば、スキャナ、並びに投光系及び受光系を含む光学系を含む。スキャナ及び光学系13は、制御計測回路11からの走査信号に基づいて内部のスキャナを駆動することにより、投光系を介して距離測定装置1の外部へ出射されるレーザの出射方向を変更可能に構成される。より具体的には、例えば、スキャナ及び光学系13は、1次元走査系を含み、当該1次元走査系によるレーザ走査を複数回繰り返すことによって所定の2次元範囲に対して網羅的にレーザを出射可能に構成される。なお、スキャナ及び光学系13のスキャナは、投光系が搭載されたステージ(図示せず)を回転することによってレーザを走査可能に構成されてもよく、光学系を構成するミラーを駆動することによってレーザを走査可能に構成されてもよい。
【0016】
また、スキャナ及び光学系13の受光系は、出射されたレーザが対象物2に反射して発生する反射光を含む光を光検出器14へと集光する。スキャナ及び光学系13の受光系は、反射光の他に、環境光や迷光(装置内部で発生する光)も受光するが、後者の光はノイズに該当する。以下、簡単のため、環境光も合わせて、単に「反射光」と呼ぶ。
【0017】
光検出器14は、スキャナ及び光学系13から反射光を受けると、例えば、レーザ光源12の出射するパルスレーザの周期毎に、当該反射光に含まれる光子の数に応じた電子を生成する。第1実施形態に係る光検出器14は、例えば、光子1個に対して約十万倍の電子を生成可能に構成される。光検出器14は、生成した電子の数に応じて出力信号を生成し、制御計測回路11に出力する。光検出器14の構成の詳細については、後述する。
【0018】
1.1.2 光検出器の構成
次に、第1実施形態に係る光検出器の構成について説明する。
【0019】
まず、
図2を参照して、第1実施形態に係る光検出器の機能構成について説明する。
【0020】
図2に示すように、光検出器14は、複数のチャネルユニット(グループ)CHU(CHU1、CHU2、…、CHUn)及び複数の選択器及び積算器(以下、説明の便宜上、単に「選択積算器」とも呼ぶ)XFR(XFR1、XFR2、…、XFRn)を含む(nは、2以上の整数)。選択積算器XFRiは、チャネルユニットCHUiに対応する(1≦i≦n)。
【0021】
複数のチャネルユニットCHUの各々は、複数のセルユニットCU(CU1、CU2、…、CUm)を含む(mは、2以上の整数)。複数のセルユニットCUの各々は、複数の光検出素子(検出セル)DC(DC1、DC2、…、DCk)を含む(kは、2以上の整数)。
【0022】
選択積算器XFRiは、複数の選択器S(S1、S2、…、Sm)と、積算器IGiと、を含む。選択積算器XFRi内の選択器Sjは、対応するチャネルユニットCHUi内のセルユニットCUjに対応する(1≦j≦m)。
【0023】
チャネルユニットCHUi内のセルユニットCUj内の全ての光検出素子DCの第1端は接地され、第2端は対応する選択積算器XFRi内の選択器Sjの第1端に共通接続される。選択器Sは、選択信号に基づいて、機能的に信号を通すか、通さないかの状態を選択できる電子回路である。選択積算器XFRi内の全ての選択器Sの第2端は、機能的に積算を行う積算器IGiに入力されてその出力は出力ノードCHoutiに接続される。また、複数の選択積算器XFRの各々の選択器Sjは、選択信号の供給元として同一の選択ノードSELjに共通接続される。
【0024】
以上のように構成することにより、選択ノードSELjを介して選択されたスイッチ素子Tjを介して、各チャネルユニットCHUi内のうちのスイッチ素子Tjに対応するセルユニットCUjが、出力ノードCHоutjに接続され、セルユニットCUjの出力が出力ノードCHoutjの出力に加算される。言い換えると、選択ノードSELjは、チャネルユニットCHUiについて、出力ノードCHоutiに出力されるセルユニットCUjを選択することができる。
【0025】
次に、
図3を参照して、第1実施形態に係る光検出器の回路構成について説明する。
図3は、
図2に対応し、
図2に示した光検出器14の機能構成を具体的な回路構成に落とし込んだものの一例である。
【0026】
図3に示すように、複数の光検出素子DCの各々は、例えば、直列に接続されたダイオードAPD及びクエンチ抵抗QDを含む。
【0027】
ダイオードAPDは、例えば、アバランシェフォトダイオード(Avalanche photo diode)であり、バイアス電源に接続された入力端と、クエンチ抵抗QDの第1端に接続された出力端と、を含む。光検出器14内の全てのダイオードAPDの入力端は、同一電圧に接続されており、各々の出力端に対して、アバランシェ降伏(avalanche break down)の降伏電圧以上(例えば-30V程度)にバイアスされる。これにより、ダイオードAPDは、スキャナ及び光学系13からの反射光を受けると、アバランシェ降伏を起こすことにより、ガイガー放電(Geiger discharge)を発生させることができる。
【0028】
クエンチ抵抗QDは、アバランシェ降伏を起こしたダイオードAPDの両端の電位差を降伏電圧以下に抑制するクエンチ抵抗として機能する。なお、1個のクエンチ抵抗QDに代えて、クエンチングをより高速に行うアクティブ・クエンチ回路を使用する構成でも構わない。すなわち、以下の説明において、クエンチ抵抗QDをアクティブ・クエンチ回路と置き換え、クエンチ抵抗QDの出力端をアクティブ・クエンチ回路の出力端と読み替えてもよい。クエンチ抵抗QDの場合、出力信号はアナログ電流信号となるが、アクティブ・クエンチ回路の場合は、出力信号がデジタル信号となる場合もある。クエンチ抵抗QD等により、ダイオードAPDは、ガイガー放電を停止することができ、一定時間の後に反射光を受光することにより、再びガイガー放電を発生させることができる。ダイオードAPDがガイガー放電を発生させてから再びガイガー放電を発生できるようになるまでの時間は、上述のレーザパルスの周期と比べて極めて小さいことにより、周期的な計測を実行可能になる。以下の説明では、当該計測の周期を「計測周期」とも呼ぶ。
【0029】
複数の選択積算器XFRの各々は、複数のスイッチ素子T(T1、T2、…、Tm)を含む。選択積算器XFRi内のスイッチ素子Tjは、対応するチャネルユニットCHUi内のセルユニットCUjに対応する(1≦j≦m)。スイッチ素子Tは、例えば、
図2における選択器Sに対応し、p型の極性を有するMOS(metal-oxide-semiconductor)トランジスタである。
【0030】
チャネルユニットCHUi内のセルユニットCUj内の全てのクエンチ抵抗QDの第2端は、対応する選択積算器XFRi内のスイッチ素子Tjの第1端に共通接続される。また、複数の選択積算器XFRの各々のスイッチ素子Tjは、同一の選択ノードSELjに共通接続される。選択積算器XFRi内の全てのスイッチ素子Tの第2端は、出力ノードCHоutiに並列接続される。このように、スイッチ素子Tを並列接続することにより、電流信号を積算することができ、積算器IGと等価な回路を構成することができる。
【0031】
なお、出力ノードCHоutには、例えば、0V~数V程度の電位に設定される。これにより、スイッチ素子Tがオン状態となった際、光検出素子DC内のダイオードAPDには、アバランシェ降伏を発生させることができる程度の逆バイアスが印加される。このため、光検出器14内のチャネルユニットCHUiは、計測周期毎に、選択されたセルユニットCUj内の複数の光検出素子DCにおいて発生した電流の合計を、出力ノードCHоutiに出力することができる。
【0032】
1.1.3 距離測定装置のレイアウト
次に、第1実施形態に係る光検出器のレイアウトを
図4及び
図5に示される平面図を用いて説明する。
図4では、複数のチャネルユニットCHU及び複数の選択積算器XFRの全体的なレイアウトが示される。
図5では、
図4に示された全体的なレイアウトのうち、或るチャネルユニットCHUi及び選択積算器XFRiの組の一部分の詳細なレイアウトが示される。
【0033】
まず、
図4を参照して、複数のチャネルユニットCHU及び複数の選択積算器XFRの全体的なレイアウトについて説明する。
【0034】
図4に示すように、光検出器14は、半導体基板20上に形成される。以下の説明では、半導体基板20の上面は、互いに垂直に交差するX軸とY軸の張るXY平面に沿って広がるものし、当該XY平面に対して垂直な軸をZ軸とする。そして、半導体基板20内から上面に向かう方向がZ軸正方向となるようなXYZ右手系が定義される。なお、Z軸は、例えば、スキャナ及び光学系13からの反射光の入射軸に一致し得る。
【0035】
半導体基板20上において、光検出器14は、2つの互いに重複しない領域、すなわち、センサ領域SeR及びスイッチ領域SwRを有する。センサ領域SeRは、例えば、平面視において半導体基板20上の全てのチャネルユニットCHUを内包する最小の矩形として定義される。スイッチ領域SwRは、例えば、平面視において半導体基板20上の全ての選択積算器XFRを内包する最小の矩形として定義される。センサ領域SeR及びスイッチ領域SwRは、例えば、X軸に沿って並ぶ。
【0036】
センサ領域SeR内において、複数のチャネルユニットCHUは、例えば、Y軸に沿って並ぶ。チャネルユニットCHUi内において、複数のセルユニットCUは、例えば、X軸に沿って並ぶ。各々が対応するチャネルユニットCHUi内に含まれる複数のセルユニットCUj同士は、Y軸に沿って並ぶ。
【0037】
セルユニットCUj内において、複数の光検出素子DCは、例えば、Y軸に沿って並ぶ。各々が対応するセルユニットCUj内に含まれる複数の光検出素子DC同士は、X軸に沿って並ぶ。
【0038】
以上のように配置されることにより、セルユニットCUは、X軸に沿って光検出素子DCの1個分の幅を有し、Y軸に沿って光検出素子DCのk個分の幅を有する。チャネルユニットCHUは、X軸に沿ってセルユニットCUのm個分の幅を有し、Y軸に沿ってセルユニットCUの1個分の幅を有する。センサ領域SeRは、X軸に沿ってチャネルユニットCHUのおよそ1個分の幅を有し、Y軸に沿ってチャネルユニットCHUのおよそn個分の幅を有する。なお、スイッチ領域SwRの形状は、センサ領域SeRと異なり、物理的及び光学的な制約がないため、比較的自由度が高く設計可能である。
【0039】
また、スイッチ領域SwR内において、複数の選択積算器XFRは、例えば、Y軸に沿って並ぶ。選択積算器XFRiと、対応するチャネルユニットCHUiとは、X軸に沿って並ぶ。
【0040】
以上のように配置されることにより、スイッチ領域SwRは、X軸に沿って選択積算器XFRのおよそ1個分の幅を有し、Y軸に沿って選択積算器XFRのおよそn個分の幅を有する。そして、上述の通り、スイッチ領域SwRとセンサ領域SeRとは、互いに重複しないように配置される。
【0041】
次に、
図5を参照して、チャネルユニットCHUi及び選択積算器XFRiの組の一部分の詳細なレイアウトについて説明する。
図5では、センサ領域SeR及びスイッチ領域SwRのうち、
図4に示された領域Vを拡大したものが示される。なお、
図5では、便宜上、半導体基板20上に形成された層間絶縁膜が適宜省略されて示される。
【0042】
図5に示すように、半導体基板20上のうち、センサ領域SeR内には、例えば、複数の光検出素子DCがマトリクス状に形成されている。光検出素子DCのうちY軸に沿って並ぶ光検出素子DCは、例えば、同一のセルユニットCUに属する。各光検出素子DC内のダイオードAPDは、半導体基板20上に概ね矩形状に形成される。当該ダイオードAPDが、スキャナ及び光学系13からの反射光の受光面(センサ面)として機能する。
【0043】
クエンチ抵抗QDは、例えば、平面視において、ダイオードAPDのセンサ面に対して細い帯状の形状を有する。クエンチ抵抗QDは、例えば、対応するダイオードAPDのセンサ面を反射光から遮らないように、平面視におけるダイオードAPDの縁において上方に形成され、コンタクトCaを介して接続される。
【0044】
同一のセルユニットCU内の複数のクエンチ抵抗QDの各々は、例えば、コンタクトCbを介して、上層に形成された配線Waに共通接続される。配線Waは、ダイオードAPDのセンサ面を反射光から遮らないように、概ねY軸に沿って並ぶ複数のダイオードAPDのセンサ面との重複部分が少なくなるように形成される。なお、意図しない寄生容量の発生を抑制するため、配線Waは、平面視においてコンタクトCaを迂回する場合がある。配線Waは、セルユニットCU毎に形成される。
【0045】
配線Waの上方には、コンタクトCcを介して配線Waと接続された、配線Wbが形成される。配線Wbは、例えば、ダイオードAPDのセンサ面を反射光から遮らないように、Y軸に沿って隣り合う2つのダイオードAPDの間を、X軸に沿って延びる。配線Wbは、セルユニットCU毎に形成される。
【0046】
配線Wbは、コンタクトCdを介して、対応するスイッチ素子Tの第1端に接続される。スイッチ素子Tの第2端は、コンタクトCeを介して配線Wcに接続される。配線Wcは、選択積算器XFR内の複数のスイッチ素子Tの第2端に共通接続される。スイッチ素子Tの第1端と第2端との間には、概ねY軸に沿って延びる配線Wsが形成される。配線Wsは、選択ノードSELに対応する。
【0047】
配線Wcの上方には、コンタクトCfを介して配線Wcと接続された、配線Wdが形成される。配線Wdは、例えば、出力ノードCHоutに対応する。
【0048】
以上のように構成することにより、センサ領域SeRとスイッチ領域SwRとは、互いに重複することなく配置される。具体的には、1つのチャネルユニットCHUと選択積算器XFRとの組の間は、X軸に沿って延びるm本の配線Wbを介して接続される。そして、m個のセルユニットCUは、スイッチ領域SwR内をY軸に沿って延びるm本の配線Wsによって、各々に対応するスイッチ素子Tを介して選択される。
【0049】
1.1.4 光検出素子及びスイッチ素子の断面構造
次に、第1実施形態に係る光検出素子及びスイッチ素子の断面構造について、それぞれ
図6及び
図7を用いて説明する。
図6及び
図7はそれぞれ、
図5に示されるVI-VI線、及びVII-VII線に沿う断面を示す。
【0050】
まず、
図6を参照して、光検出素子DCの断面構造について説明する。
【0051】
図6に示すように、半導体基板20は、例えば、p
+型のシリコン基板である。半導体基板20上には、p
-型半導体層21が形成される。
【0052】
p-型半導体層21上のうち、光検出素子DCが形成される領域には、p+型半導体層22及びn+型半導体層23が順に形成される。n+型半導体層23は、p+型半導体層22より表面側に位置し、例えば、平面視においてp+型半導体層22を覆う。なお、隣り合う2つの光検出素子DCの各々に形成されたp+型半導体層22及びn+型半導体層23の間には絶縁体24が形成される場合がある。これにより、隣り合う2つのp+型半導体層22及びn+型半導体層23は、互いに分離される。以上の様に、1つのp-型半導体層21、p+型半導体層22、及びn+型半導体層23の組が、ダイオードAPDを構成する。
【0053】
n+型半導体層23の上面上には、コンタクトCaとして機能する導電体25が設けられる。導電体25の上面上には、クエンチ抵抗QDとして機能する半導体又は導電体26(以下、便宜上、導電体26と呼ぶ)が、例えば、Y軸に沿って設けられる。導電体25の上面は、例えば、導電体26のY軸に沿う第1端の下面に接触する。
【0054】
導電体26のY軸に沿う第2端の下面には、コンタクトCbとして機能する導電体27が設けられる。導電体27の下面上には、配線Waとして機能する導電体28が、例えば、XY平面内に設けられる。1つの導電体28は、例えば、Y軸に沿って並ぶ複数の導電体27に共通接続される。なお、
図5において上述した通り、導電体28は、導電体25との間に発生する寄生容量を抑制するため、例えば、導電体25の直上を通過しないように設けられ得る。
【0055】
導電体28の上面上には、コンタクトCcとして機能する導電体29が設けられる。導電体29は、例えば、導電体28の上面のうち、Y軸に沿って隣り合う2つの光検出素子DCの間に設けられた絶縁体24の上方に設けられる。導電体29の上面は、例えば、配線Wbとして機能する導電体30のX軸に沿う第1端の下面に接触する。上述の通り、導電体30は、X軸に沿って延びるように設けられるため、Y軸に沿って隣り合う2つの光検出素子DCのセンサ面の間に設けられる。
【0056】
導電体25~30は、例えば、層間絶縁膜31によって覆われる。層間絶縁膜31は、例えば、スキャナ及び光学系13からの反射光を透過可能な材料が用いられる。
【0057】
次に、
図7を参照して、スイッチ素子Tの断面構造について説明する。
【0058】
図7に示すように、スイッチ領域SwRにおいて、p
-型半導体層21上には、例えば、全てのスイッチ素子Tが形成される領域を包含する範囲にn
+型半導体層32が形成される。n
+型半導体層32上には、p
+型半導体層33及び34が形成される。p
+型半導体層33及び34は、半導体基板20の上面上に形成されることにより、スイッチ素子Tのドレイン又はソースとして機能する。このように、スイッチ素子Tは、不純物拡散領域をn
+型半導体層32によって囲まれた領域に形成されるため、スイッチ領域SwRの外部の領域(例えば、センサ領域SeR)に起因するp
-型半導体層21内の電圧変動の影響を受けにくくなる。しかしながら、光検出素子DCには高電圧が印加されるため、スイッチ領域SwRをセンサ領域SeRから分離するために、スイッチ領域SwRとセンサ領域SeRとの間には、所定の間隔を設ける場合がある。
【0059】
p+型半導体層33及び34は、例えば、ゲート長に相当する間隔をあけてY軸に沿って並ぶ。p+型半導体層33及び34の間のn+型半導体層32の上面上には、ゲート絶縁膜として機能する絶縁体35が設けられる。絶縁体35は、例えば、酸化シリコン(SiO2)を含む。絶縁体35の上面上には、配線Wsとして機能する導電体36が設けられる。導電体36は、Y軸に沿って延びることにより、Y軸に沿って並ぶ複数のスイッチ素子T(図示せず)のゲートに共通接続される。
【0060】
p+型半導体層33の上面上には、コンタクトCdとして機能する導電体37が設けられる。導電体37の上面は、センサ領域SeRからX軸に沿って延びてスイッチ領域SwRに達した導電体30のX軸に沿う第2端の下面に接触する。p+型半導体層34の上面上には、コンタクトCeとして機能する導電体38が設けられる。導電体38の上面は、配線Wcとして機能する導電体39のX軸に沿う第1端の下面に接触する。
【0061】
以上のように構成することにより、光検出素子DCは、X軸に沿って延びる配線Wbを介してスイッチ素子Tに接続され、最終的に配線Wcに接続されることができる。
【0062】
なお、スイッチ領域SwRには、p型の極性を有するMOSトランジスタに加えて、n型の極性を有するMOSトランジスタも併せて形成され得る。この場合、n+型半導体層32上にp+型半導体層40が形成され、p+型半導体層40上にn+型半導体層41及び42が形成される。n+型半導体層41及び42は、半導体基板20の上面上に形成されることにより、n型MOSトランジスタのドレイン又はソースとして機能する。n+型半導体層41及び42は、例えば、ゲート長に相当する間隔をあけてY軸に沿って並ぶ。n+型半導体層41及び42の間のp+型半導体層40の上面上には、ゲート絶縁膜として機能する絶縁体43が設けられる。絶縁体43は、例えば、酸化シリコン(SiO2)を含む。絶縁体43の上面上には、配線として機能する導電体44が設けられる。導電体44を配線Wsとして機能させることにより、n型MOSトランジスタをスイッチ素子Tとして機能させることも可能である。
【0063】
1.2 動作
次に、第1実施形態に係る距離測定装置の動作について説明する。
【0064】
1.2.1 距離測定処理
図8は、第1実施形態に係る距離測定装置における距離測定処理を説明するための模式図である。
図8では、スキャナ及び光学系13から出射されたレーザが走査する領域と、当該レーザの走査によって得られる対象物2の距離データを可視化したものが模式的に示される。
図8の例では、レーザは、PQR空間に照射される。R軸は、距離測定装置1を搭載した乗用車等から対象物2に向かう軸であり、例えば、レーザの出射方向の中心に沿う。PQ面は、R軸に直交し、レーザの出射口から同心円状に広がる曲面である。P軸及びQ軸は、PQ面内において互いに直交する軸である。距離データは、例えば、当該PQ面への写像として生成される。以下の説明では、PQ面のうちレーザが通過する領域を、レーザ走査領域SAと定義する。
【0065】
距離測定装置1は、例えば、計測周期毎にレーザ走査領域SAより小さい検出領域DAに対応する複数の距離データを生成する。検出領域DAは、例えば、n個の画素PX(PX1、PX2、PX3、…、及びPXn)を含み、各画素PXに対して1つの距離データが生成される。n個の画素PXは、例えば、Q軸に沿って並ぶ。例えば、Q軸に沿って並ぶn個の画素PXは、Y軸に沿って並ぶn個のチャネルユニットCHUに対応する。すなわち、距離測定装置1は、計測周期毎に、出力ノードCHoutiから出力される出力信号に基づき、画素PXiに対応する距離データを生成する。
【0066】
距離測定装置1は、上述した計測周期毎の処理を、スキャナ及び光学系13を駆動することによって検出領域DAをP軸に沿って1次元的にシフトさせながら繰り返し実行する。これにより、距離測定装置1は、レーザ走査領域SA内の第1行S1に相当する領域に関して距離データを生成することができる。なお、連続する検出において、その検出領域同士が重なる場合と、離れている場合とがあるが、後者の場合が多い。
【0067】
そして、距離測定装置1は、上述した第1行S1に対して実行した処理と同等の処理を、レーザ走査領域SA内の第2行S2~第5行S5に対しても実行する。これにより、距離測定装置1は、レーザ走査領域SA内の全域にわたり、距離データを生成することができ、ひいては、空間PQR内に存在する物体までの距離データをレーザ走査領域SA内にマッピングすることができる。したがって、距離測定装置1は、空間PQR内の対象物2までの距離を認識することができる。
【0068】
レーザを用いた距離測定装置1では、より遠くの対象を精度よく測定するために、レーザ出射の投光角と、受光系の視野角(通常、視野角≧投光角)を狭く絞る必要がある。この視野角が検出領域に対応する。一方、
図8に示した検出領域DAの形状が示すように、
図8に示した例では、一度にnチャネル(画素)の測定を行うため、Q方向の投光角と視野角とは原理的に絞ることができず、大きくなる。したがって、遠くの対象を精度よく測定するためには、P方向の投光角と視野角とを小さくすることが重要となる。ここで、P方向は、センサ面におけるX方向に対応し、同一光学系においては、視野角は、センサ面の長さにほぼ比例する。
【0069】
1.2.2 センサ面選択処理
次に、第1実施形態に係る距離測定装置におけるセンサ面の選択処理について
図9を用いて説明する。
図9では、光検出器14内のセンサ領域SeRのうち、出力ノードCHоutに接続され積算される光検出素子DCを含む領域と、切断され積算されない光検出素子DCを含む領域と、が模式的に識別される。より具体的には、
図9の左部(A)及び右部(B)はそれぞれ、センサ領域SeRの互いに異なる領域で受光する場合が示される。また、
図9の例では、説明の便宜上、1つのチャネルユニットCHUあたり6個のセルユニットCU1~CU6を含む場合が示される(m=6)。
【0070】
図9(A)に示すように、センサ領域SeRのうち、セルユニットCU2及びCU3が並ぶ領域において光Laを受光する場合、選択ノードSELのうち、選択ノードSEL2及びSEL3には“L”レベルの信号が入力され、SEL1、及びSEL4~SEL6には“H”レベルの信号が入力される。“L”レベルは、スイッチ素子Tをオン状態にし得る論理レベルであり、“H”レベルは、スイッチ素子Tをオフ状態にし得る論理レベルである。これにより、各チャネルユニットCHUのうち、セルユニットCU2及びCU3内の光検出素子DCが選択的に出力ノードCHoutに電気的に接続され、セルユニットCU1及びCU4~CU6内の光検出素子DCは、出力ノードCHoutから電気的に切断される。このため、セルユニットCU1及びCU4~CU6内の光検出素子DCが受光する反射光以外の余分な光の影響を排除することができ、より遠くの物体からのレーザの反射光に基づく距離データを、より精度よく算出することができる。
【0071】
一方、
図9(B)に示すように、センサ領域SeRのうち、セルユニットCU4及びCU5が並ぶ領域において光Lbを受光する場合、選択ノードSELのうち、選択ノードSEL4及びSEL5には“L”レベルの信号が入力され、SEL1~SEL3、及びSEL6には“H”レベルの信号が入力される。これにより、各チャネルユニットCHUのうち、セルユニットCU4及びCU5内の光検出素子DCが選択的に出力ノードCHoutに接続され、セルユニットCU1~CU3及びCU6内の光検出素子DCは、出力ノードCHoutから切断される。このため、セルユニットCU1~CU3及びCU6内の光検出素子DCが受光する反射光以外の余分な光の影響を排除することができ、レーザの反射光に基づく距離データを精度よく算出することができる。
【0072】
1.3 本実施形態に係る効果
第1実施形態によれば、出力信号のSN比(Signal-to-noise ratio)の悪化を抑制することができる。本実施形態に係る効果について、以下に説明する。
【0073】
光検出器14が形成される半導体基板20は、センサ領域SeR及びスイッチ領域SwRに分けられる。スイッチ領域SwRは、半導体基板20上において、センサ領域SeRの外部に配置される。具体的には、スイッチ領域SwRは、センサ領域SeRに対してX方向に並ぶ。より具体的には、センサ領域SeRは、平面視において、形成される全ての光検出素子DCを含む最小の矩形として定義され、スイッチ領域SwRは、平面視において形成される全てのスイッチ素子Tを含む最小の矩形として定義される。これにより、センサ領域SeRにおける受光領域の面積に対するセンサ面の面積の比率(開口率)を高めることができ、反射光に対する感度を高めることができる。
【0074】
補足すると、半導体基板20のうちセンサ領域SeRには、ダイオードAPDにアバランシェ降伏を発生させるために、-30V程度の大きな逆バイアスが印可される。一方、同一の半導体基板20上にスイッチ素子Tを設けるには、スイッチ領域SwRにウェル領域として、例えば、n+型半導体層32が形成される。また、センサ領域SeRにおける大きな逆バイアスの影響からスイッチ領域SwRを分離するため、各領域間は、所定の間隔だけ離すことが要求され得る場合がある。この場合、センサ領域SeRとスイッチ領域SwRとが平面視において重複するように配置される場合、センサ領域SeR内に複数のウェル領域が混在し得、かつスイッチ素子が形成されるたびに分離のためのスペースが必要となり得る。したがって、センサ領域SeR内に反射光の検出に寄与しない面積が多く含まれ、結果として受光面の視野が広がってしまうため、より好ましくない。
【0075】
しかし、第1実施形態によれば、センサ領域SeR内には、光検出素子DCがスイッチ素子Tと分離されてX方向及びY方向にマトリクス状に形成される。このため、センサ領域SeR内にスイッチ領域SwRが含まれる場合よりも、センサ領域SeR内におけるセンサ面の密度を高めることができ、受光面の視野を小さくすることができる。
【0076】
また、Y方向に並ぶ複数の光検出素子DCは、セルユニットCUを構成し、1つのスイッチ素子Tを介して共通の出力ノードCHoutに接続される。X方向に並ぶ複数のセルユニットCUは、チャネルユニットCHUを構成し、互いに異なるスイッチ素子Tを介して共通の出力ノードCHoutに接続され、積算される。これにより、センサ領域SeR外に別途形成されたスイッチ素子Tを用いて、適切なセルユニットCUを選択することができる。このため、投光系と受光系との間にずれがある場合に、光学系の調整を行う代わりに、このシフト機能を用いることにより電気的に調整を行うことができる。当該電気的な調整は、例えば、特許文献2に記載された装置と同等な装置により、自動化することが可能である。また、経年劣化や振動、温度変化等の要因によって受光領域がX方向にずれた場合でも、適切なセルユニットCUを選択することにより、不要な環境光の影響を低減することができる。したがって、SN比の悪化を抑制することができ、ひいては、距離の測定可能距離及び精度の低下を抑制することができる。
【0077】
また、チャネルユニットCHU内の各セルユニットCUは、対応する1つの選択ノードSELによって同時に選択される。選択ノードSELは、スイッチ領域SwR内をY方向に沿って延びる。これにより、スイッチ領域SwRをセンサ領域SeRと分離しつつ、チャネルユニットCHUをY方向に配列させることができる。なお、Y方向に並ぶ複数のチャネルユニットCHUは、1次元(Y方向)に並ぶ複数の光検出素子DC(検出領域DA)に対応する。これにより、制御計測回路11は、スキャナ及び光学系13を走査させることによって、検出領域DAを1次元(P方向)にシフトさせることができ、レーザ走査領域SAにわたって距離データを得ることができる。
【0078】
2. 第2実施形態
次に、第2実施形態に係る距離測定装置について説明する。第2実施形態は、非選択のセルユニットCUが出力ノードCHoutとは異なるノードに電気的に接続されるようにする点、及び光検出素子DCの一部を光検出素子DCとして機能させない(ダミーセルとする)点において、第1実施形態と異なる。以下では、第1実施形態と同等の構成及び動作についてはその説明を省略し、第1実施形態と異なる構成及び動作について主に説明する。
【0079】
2.1 光検出器の構成
図10は、第2実施形態に係る光検出器の構成を説明するための回路図である。
図10は、第1実施形態における
図2に示した選択器Sを、スイッチ素子Tに加えてスイッチ素子Dを含む構成で実現するものである。
図10では、スイッチ領域SwR内の選択積算器XFR1及びXFR2の回路構成が主に図示される。説明の便宜上、スイッチ領域SwR内の他の選択積算器XFR3~XFRn、及びセンサ領域SeR内のチャネルユニットCHUの回路構成については省略されている。
【0080】
図10に示すように、チャネルユニットCHUiに対応する選択積算器XFRiは、スイッチ素子Tjに対応するスイッチ素子Djを含む(1≦i≦n、1≦j≦m)。すなわち、選択積算器XFRiには、m個のスイッチ素子Dが含まれる。
【0081】
より具体的には、チャネルユニットCHUi内のセルユニットCUj内の全てのクエンチ抵抗QDの第2端は、対応する選択積算器XFRi内のスイッチ素子Tj及びDjの各々の第1端に共通接続される。スイッチ素子Djは、例えば、p型の極性を有するMOSトランジスタである。全ての選択積算器XFR内の全てのスイッチ素子Dの各々の第2端は、出力ノードDMоutに共通接続される。
【0082】
また、スイッチ領域SwR内には、m個の選択ノードSELの各々に対応するインバータINVが設けられる。より具体的には、選択ノードSELjに対応するインバータINVjは、選択ノードSELjに接続されるm個のスイッチ素子Tjのゲートに共通接続される入力端と、当該m個のスイッチ素子Tjに対応するm個のスイッチ素子Djの各々のゲートに共通接続される出力端と、を含む。
【0083】
以上のように構成することにより、対応する2つのスイッチ素子T及びDは、選択ノードSELに入力される論理レベル(“H”レベルか“L”レベルか)に応じて、いずれか一方をオン状態にしつつ、他方をオフ状態にするように制御される。これにより、n個の出力ノードCHоutに電気的に接続されない全ての光検出素子DCは、出力ノードDMоutに電気的に接続される。このため、出力ノードCHoutに接続されない光検出素子DCが受光することによって、出力ノードCHoutへの出力が影響を受けることを抑制できる。
【0084】
なお、出力ノードDMоutには、例えば、出力ノードCHоutよりも、ダイオードAPDに生じる逆バイアス電圧が小さくなる電圧(ブレーク電圧以下であり、例えば、-3V~-8V)が供給される。これにより、出力ノードDMоutに接続された光検出素子DCが意図せず受光した場合においても、ダイオードAPDには、アバランシェ降伏を発生させることができる程度の逆バイアスは印加されない。このため、出力ノードDMоutに流れるガイガー電流を抑制することができる。加えて、第2実施形態では、光検出器14は、n個の出力ノードCHоutに、互いに異なる電圧を供給可能に構成される。より具体的には、例えば、光検出器14は、或る複数の出力ノードCHоutには、光検出素子DCにアバランシェ降伏を確実に発生させることができる程度の電圧(例えば、0V~数V)を供給する。一方、光検出器14は、残りの複数の出力ノードCHоutには、アバランシェ降伏が確実に発生しない程度の電圧(例えば、-10V程度)を供給する。これにより、センサ領域SeR内のチャネルユニットCHUを、光検出可能なチャネルユニットCHUと、光検出不可能なチャネルユニットCHUと、に分類することができる。なお、n個の出力ノードCHоutのうちのいずれにどちらの電圧を供給するかは、出荷後に設定可能に構成されてもよいし、予め固定されていてもよい。
【0085】
2.2 センサ面選択処理
次に、第2実施形態に係る距離測定装置におけるセンサ面の選択処理について
図11を用いて説明する。
図11は、第1実施形態における
図9の左部(A)に対応する。
【0086】
図11に示すように、センサ領域SeRのうち、セルユニットCU2及びCU3が並ぶ領域において光Laを受光する場合、選択ノードSELのうち、SEL2及びSEL3には“L”レベルの信号が入力され、SEL1、及びSEL4~SEL6には“H”レベルの信号が入力される。これにより、各選択積算器XFRのうち、スイッチ素子T2及びT3はオン状態となり、スイッチ素子D2及びD3がオフ状態となる。このため、各チャネルユニットCHUのうち、セルユニットCU2及びCU3内の光検出素子DCが選択的に出力ノードCHoutに電気的に接続される。
【0087】
一方、各選択積算器XFRのうち、スイッチ素子T1及びT4~T6はオフ状態となり、スイッチ素子D1及びD4~D6がオン状態となる。このため、各チャネルユニットCHUのうち、セルユニットCU1及びCU4~CU6内の光検出素子DCは出力ノードDMoutに電気的に接続される。
【0088】
したがって、セルユニットCU1及びCU4~CU6内の光検出素子DCが受光する光とそれに起因する電子の影響であるノイズを、出力ノードDMoutを介して排除することができる。また、この光が強い場合、それによって生じ得る周辺の光検出素子DCの飽和現象を抑制し、飽和に基づく使用不可時間を抑制、あるいは低減できる。
【0089】
また、
図11の例では、出力ノードCHoutのうち出力ノードCHout1及びCHoutnには、アバランシェ降伏を発生させない電圧が供給され、残りの出力ノードCHout2~CHout(n-1)には、アバランシェ降伏を発生させる電圧が供給される。これにより、センサ領域SeRの端部に相当するチャネルユニットCHU1及びCHUn内の光検出素子DCは、受光してもアバランシェ降伏が発生しないダミーセルとなる。このため、チャネルユニットCHU1及びCHUn内の選択セルユニットCUは、出力ノードCHoutへの出力に寄与しないように設定される。これにより、センサ領域SeRの上方あるいは下方から、センサ領域SeRへの電子の流入を防ぐことができ、光が強い場合の光検出素子DCの飽和現象を抑制し、飽和に基づく使用不可時間を抑制、あるいは低減できる。
【0090】
以上のように動作させることにより、センサ領域SeRのうち、出力に寄与する部分をより選択的に抽出することができる。
【0091】
2.3 本実施形態に係る効果
第2実施形態によれば、光検出素子DCは、スイッチ素子Tを介して出力ノードCHoutに接続され、スイッチ素子Dを介して出力ノードDMoutに接続される。互いに対応するスイッチ素子T及びDは、インバータINVによって、互いに反転した信号が入力されるように構成される。これにより、出力ノードCHoutから電気的に切断された全てのセルユニットCUは、出力ノードDMoutに電気的に接続される。このため、非選択の受光領域が受ける意図しない光(例えば、環境光)が出力ノードCHoutに与える影響を抑制することができる。したがって、出力信号のSN比の悪化を抑制することができる。更に、例えば、センサ領域SeR内に大量の光子が照射された場合、非選択のセルユニットCUで発生したガイガー電流が出力ノードCHoutに流れることを抑制することができ、出力の飽和状態を緩和することができる。
【0092】
また、出力ノードCHoutに接続される光検出素子DCには、アバランシェ降伏が発生し得る逆バイアスが印可されるのに対して、出力ノードDMoutに接続される光検出素子DCには、アバランシェ降伏がほとんど発生しない逆バイアスが印可される。これにより、出力ノードDMoutに流れる電流量を抑制することができる。
【0093】
また、センサ領域SeRの縁に当たる領域は、センサ領域SeR外に照射された環境光の影響を受けやすい。このため、センサ領域SeRの縁に当たる領域は、出力信号のSN比を悪化させやすい特性を有するため、常に選択されないように設定することが好ましい。
【0094】
第2実施形態によれば、センサ領域SeRの縁にあたる領域(具体的には、チャネルユニットCHU1及びCHUn)に位置する光検出素子DCは、受光してもアバランシェ降伏が発生しない逆バイアスが印可される。すなわち、出力ノードCHout1及びCHoutnには、他の出力ノードCHout2~CHout(n-1)よりも低い電圧が供給される。これにより、チャネルユニットCHU1及びCHUn内の光検出素子DCを、受光してもガイガー電流を発生させないダミーセルにすることができる。このため、センサ領域SeRの外部に照射される環境光の影響を排除することができ、出力信号のSN比の悪化を抑制することができる。
【0095】
3. 第3実施形態
次に、第3実施形態に係る距離測定装置について説明する。第3実施形態は、選択ノードSELと選択されるセルユニットCUとの対応関係を、隣り合うチャネルユニットCHU間で左右にシフトさせることができる点において、第1実施形態及び第2実施形態と異なる。以下では、第1実施形態と同等の構成及び動作についてはその説明を省略し、第1実施形態と異なる構成及び動作について主に説明する。
【0096】
3.1 光検出器の構成
まず、
図12を参照して、第3実施形態に係る光検出器の機能構成について説明する。
【0097】
図12は、第3実施形態に係る光検出器の機能構成を説明するためのブロック図である。
図12は、第1実施形態における
図2に対応する。
図12では、スイッチ領域SwR内の隣り合う2つの選択積算器XFRi及びXFR(i+1)、並びにこれらの間に設けられる構成のうち、選択ノードSEL(j-1)、SELj、及びSEL(j+1)に対応する構成が主に図示される(1≦i≦n-1、2≦j≦m-1)。また、
図12では、説明の便宜上、スイッチ領域SwR内の他の選択積算器XFR、及びセンサ領域SeR内のチャネルユニットCHUの回路構成については省略されている。
【0098】
図12に示すように、選択積算器XFRiと選択積算器XFR(i+1)との間には、シフタSHTが設けられる。シフタSHTは、選択積算器XFR(i+1)において選択器Sjに接続された選択ノードSELjを、選択積算器XFRiにおいて選択器S(j+1)、Sj、及びS(j-1)から選択されるいずれか1つに接続する機能を有する。
【0099】
より具体的には、例えば、選択積算器XFRi内において選択器Sjに選択信号を供給するノードをN<i,j>とし、ノードN<i+1,j>が選択ノードSELjに接続されているとする。この場合、シフタSHTは、ノードN<i+1,j>をノードN<i,j>、N<i,j+1>、又はN<i,j-1>のいずれかに接続する。そして、シフタSHTは、全ての選択ノードSELが同じ方向にシフトするように、選択積算器XFRiとXFR(i+1)との間のノードを接続する。
【0100】
以上のように構成することにより、選択ノードSELjによって選択される選択器Sを、選択積算器XFR(i+1)では選択器Sjが選択されるのに対し、選択積算器XFRiでは選択器S(j+1)又はS(j-1)にシフトさせることができる。
【0101】
次に、
図13を参照して、第3実施形態に係る光検出器の回路構成について説明する。
図13は、
図12に対応し、
図12に示した光検出器14の機能構成を具体的な回路構成に落とし込んだものの一例である。
【0102】
図13に示すように、選択積算器XFRiと選択積算器XFR(i+1)との間には、選択ノードSEL(j-1)、SELj、及びSEL(j+1)に対応するシフタSHTの構成として、スイッチ素子Sm(j-1)、Sm2(j-1)、Smj、Sm2j、Sm(j+1)、Sp(j-1)、Spj、Sp2j、Sp(j+1)、及びSp2(j+1)、並びにインバータINVm及びINVpが設けられる。スイッチ素子Sm(j-1)、Sm2(j-1)、Smj、Sm2j、Sm(j+1)、Sp(j-1)、Spj、Sp2j、Sp(j+1)、及びSp2(j+1)は、例えば、p型の極性を有するMOSトランジスタである。
【0103】
スイッチ素子Sm(j-1)及びSp(j-1)は、選択積算器XFRi内のスイッチ素子T(j-1)のゲート(すなわち、ノードN<i,j-1>)と、選択積算器XFR(i+1)内のスイッチ素子T(j-1)のゲート(すなわち、ノードN<i+1,j-1>)と、の間に直列に接続される。スイッチ素子Smj及びSpjは、選択積算器XFRi内のスイッチ素子Tjのゲート(すなわち、ノードN<i,j>)と、選択積算器XFR(i+1)内のスイッチ素子Tjのゲート(すなわち、ノードN<i+1,j>)と、の間に直列に接続される。スイッチ素子Sm(j+1)及びSp(j+1)は、選択積算器XFRi内のスイッチ素子T(j+1)のゲート(すなわち、ノードN<i,j+1>)と、選択積算器XFR(i+1)内のスイッチ素子T(j+1)のゲート(すなわち、ノードN<i+1,j+1>)と、の間に直列に接続される。
【0104】
スイッチ素子Sm2(j-1)は、ノードN<i,j-1>と、ノードN<i+1,j>と、の間に接続される。スイッチ素子Sm2jは、ノードN<i,j>と、ノードN<i+1,j+1>と、の間に接続される。
【0105】
スイッチ素子Sp2jは、ノードN<i,j>と、ノードN<i+1,j-1>と、の間に接続される。スイッチ素子Sp2(j+1)は、ノードN<i,j+1>と、ノードN<i+1,j>と、の間に接続される。
【0106】
インバータINVmは、スイッチ素子Sm2(j-1)及びSm2jの各々のゲートに共通接続される入力端と、スイッチ素子Sm(j-1)、Smj、及びSm(j+1)の各々のゲートに共通接続される出力端と、を含む。
【0107】
インバータINVpは、スイッチ素子Sp2j及びSp2(j+1)の各々のゲートに共通接続される入力端と、スイッチ素子Sp(j-1)、Spj、及びSp(j+1)の各々のゲートに共通接続される出力端と、を含む。
【0108】
以上のように構成することにより、スイッチ素子Sm(j-1)、Smj、及びSm(j+1)の組と、スイッチ素子Sm2(j-1)及びSm2jの組とは、インバータINVmに入力される論理レベル(“H”レベルか“L”レベルか)に応じて、いずれか一方の組をオン状態にしつつ、他方の組をオフ状態にするように制御される。
【0109】
これにより、スイッチ素子Sm(j-1)、Smj、及びSm(j+1)の組がオン状態となる場合、ノードN<i,j>は、スイッチ素子Smjを介してノードN<i+1,j>に電気的に接続される。このため、選択積算器XFR(i+1)内のスイッチ素子Tjが選択ノードSELjによって選択される場合、選択積算器XFRi内のスイッチ素子Tjもまた、選択ノードSELjによって選択される。
【0110】
一方、スイッチ素子Sm2(j-1)及びSm2jの組がオン状態となる場合、ノードN<i,j-1>は、スイッチ素子Sm2(j-1)を介してノードN<i+1,j>に電気的に接続される。このため、選択積算器XFR(i+1)内のスイッチ素子Tjが選択ノードSELjによって選択される場合、選択ノードSELjによって選択される選択積算器XFRi内のスイッチ素子は、スイッチ素子T(j-1)となる。
【0111】
このように、スイッチ素子Sm(j-1)、Smj、Sm(j+1)がオン状態となる状態から、スイッチ素子Sm2(j-1)及びSm2jがオン状態となる状態に切り替えることにより、選択積算器XFRi内で選択されるスイッチ素子を、スイッチ素子TjからT(j-1)へとシフトさせることができる。なお、当該シフトは、センサ領域SeRにおけるセルユニットCUjからセルユニットCU(j-1)への選択領域のシフトに対応する。以下の説明では、当該シフト方向を、「-X方向」とも呼ぶ。
【0112】
また、スイッチ素子Sp(j-1)、Spj、及びSp(j+1)の組と、スイッチ素子Sp2j及びSp2(j+1)の組とは、インバータINVpに入力される論理レベル(“H”レベルか“L”レベルか)に応じて、いずれか一方の組をオン状態にしつつ、他方の組をオフ状態にするように制御される。
【0113】
これにより、スイッチ素子Sp(j-1)、Spj、及びSp(j+1)の組がオン状態となる場合、ノードN<i,j>は、スイッチ素子Spjを介してノードN<i+1,j>に電気的に接続される。このため、選択積算器XFR(i+1)内のスイッチ素子Tjが選択ノードSELjによって選択される場合、選択積算器XFRi内のスイッチ素子Tjもまた、選択ノードSELjによって選択される。
【0114】
一方、スイッチ素子Sp2j及びSp2(j+1)の組がオン状態となる場合、ノードN<i,j+1>は、スイッチ素子Sp2(j+1)を介してノードN<i+1,j>に電気的に接続される。このため、選択積算器XFR(i+1)内のスイッチ素子Tjが選択ノードSELjによって選択される場合、選択ノードSELjによって選択される選択積算器XFRi内のスイッチ素子は、スイッチ素子T(j+1)となる。
【0115】
このように、スイッチ素子Sp(j-1)、Spj、Sp(j+1)がオン状態となる状態から、スイッチ素子Sp2j及びSp2(j+1)がオン状態となる状態に切り替えることにより、選択積算器XFRi内で選択されるスイッチ素子を、スイッチ素子TjからT(j+1)へとシフトさせることができる。なお、当該シフトは、センサ領域SeRにおけるセルユニットCUjからセルユニットCU(j+1)への選択領域のシフトに対応する。以下の説明では、当該シフト方向を、「+X方向」とも呼ぶ。
【0116】
なお、
図13の例では、スイッチ素子Sm(j-1)、Smj、Sm(j+1)、Sm2(j-1)、及びSm2jの組は、スイッチ素子Sp(j-1)、Spj、Sp(j+1)、Sp2j、及びSp2(j+1)の組よりも選択積算器XFRi側に設けられる場合が図示されているが、これに限られない。すなわち、スイッチ素子Sm(j-1)、Smj、Sm(j+1)、Sm2(j-1)、及びSm2jの組は、スイッチ素子Sp(j-1)、Spj、Sp(j+1)、Sp2j、及びSp2(j+1)の組よりも選択積算器XFR(i+1)側に設けられてもよい。
【0117】
また、上述したようなシフタの構成は、必ずしも、全ての隣り合う2つの選択積算器XFRi及びXFR(i+1)の間に設けられなくてもよい。
【0118】
3.2 センサ面選択処理
次に、第3実施形態に係る距離測定装置におけるセンサ面の選択処理について
図14を用いて説明する。
図14では、センサ領域SeRに照射される光Lcが、チャネルユニットCHUの並ぶ方向(すなわち、Y方向)に対して傾いて分布する場合が示される。より具体的には、
図14では、光Lcが、チャネルユニットCHU1~CHUiの範囲ではセルユニットCU2及びCU3が並ぶ領域に照射され、チャネルユニットCHU(i+1)~CHUnの範囲ではセルユニットCU3及びCU4が並ぶ領域に照射される場合が示される。
【0119】
図14に示すように、選択ノードSELのうち、選択ノードSEL3及びSEL4には“L”レベルの信号が入力され、選択ノードSEL1、SEL2、SEL5、及びSEL6には“H”レベルの信号が入力される。これにより、選択積算器XFRi~XFRn内において、スイッチ素子T3及びT4はオン状態となり、残りのスイッチ素子T1、T2、T5、及びT6がオフ状態となる。このため、チャネルユニットCHU(i+1)~CHUnのうち、セルユニットCU3及びCU4内の光検出素子DCが選択的に出力ノードCHoutに電気的に接続される。
【0120】
図14の例では、選択積算器XFRiとXFR(i+1)との間に、
図13で説明したシフタSHTの構成が設けられ、-X方向のシフトが実行されるように各種スイッチ素子Sm及びインバータINVmが制御される。これにより、選択積算器XFR1~XFRi内のスイッチ素子T2及びT3はそれぞれ、選択ノードSEL3及びSEL4からの“L”レベルの信号が入力されてオン状態となり、残りのスイッチ素子T1、及びT4~T6は“H”レベルの信号が入力されてオフ状態となる。このため、チャネルユニットCHU1~CHUiのうち、セルユニットCU2及びCU3内の光検出素子DCが選択的に出力ノードCHoutに電気的に接続される。
【0121】
以上のように動作させることにより、スキャナ及び光学系13からの反射光がチャネルユニットCHUの並ぶ方向に対して傾くような場合においても、センサ領域SeRから、出力に寄与する部分を選択的に抽出することができる。
【0122】
3.3 本実施形態に係る効果
第3実施形態によれば、スイッチ領域SwRには-X方向のシフタとして機能するスイッチ素子Sm及びインバータINVm、並びに+X方向のシフタとして機能するスイッチ素子Sp及びインバータINVpを含む。これにより、計測周期毎にセンサ領域SeRに照射される光Lcが、センサ領域SeR内においてチャネルユニットCHUの並ぶ方向(Y方向)に対して傾いている場合においても、光Lcの照射面を適切に選択することができる。すなわち、光Lcが+X方向に傾いている場合には+X方向のシフタを用いることによって、-X方向に傾いている場合には-X方向のシフタを用いることによって、選択されるセルユニットCUを光Lcに沿うようにシフトさせることができる。このため、投光系と受光系との間に光軸のずれがある場合に、光学系の調整を行う代わりに、このシフト機能を用いることにより電気的に調整を行うことができる。当該電気的な調整は、特許文献2に記載された装置と同等の装置により、自動化することが可能であり、調整の作業を自動化することが可能である。また、経年劣化や振動等によって光Lcの形状が当初の想定からずれても、SN比の悪化を抑制しつつ、適切な出力信号を得ることができる。
【0123】
4 その他
以上、種々の実施形態について説明したが、第1実施形態乃至第3実施形態は、これに限られず、種々の変形が適宜適用可能である。
【0124】
例えば、第1実施形態乃至第3実施形態では、各種スイッチ素子にp型の極性を有するMOSトランジスタが適用される場合について説明したが、これに限らず、各種スイッチ素子は、n型の極性を有していてもよい。
【0125】
また、第1実施形態乃至第3実施形態では、スイッチ素子T1~Tmが-X方向に配置されるのに対してセルユニットCU1~CUmが+X方向に配置される場合について説明したが、これに限られない。すなわち、スイッチ素子TとセルユニットCUの配置される方向は、一致していてもよい。
【0126】
また、第2実施形態では、センサ領域SeRのうち、チャネルユニットCHU1及びCHUnに対応する光検出素子DCをダミーセルにする場合について説明したが、これに限られない。例えば、センサ領域SeRの外縁全てがダミーセルとなる、すなわち、セルユニットCU1及びCUmに対応する光検出素子DCについても併せてダミーセルとなるようにしてもよい。この場合、セルユニットCU1及びCUmに対応する光検出素子DCは、アバランシェ降伏が発生しない程度の逆バイアスが常に供給されるように、他のセルユニットCUが接続されている出力ノードCHoutとは異なる配線に接続され得る。
【0127】
また、第3実施形態では、第1実施形態において説明した構成にシフタを追加する場合について説明したが、これに限られない。すなわち、第2実施形態において説明したように、スイッチ素子Dを含む構成おいても適用可能である。
【0128】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0129】
1…距離測定装置、2…対象物、11…制御計測回路、12…レーザ光源、13…スキャナ及び光学系、14…光検出器、20…半導体基板、21…p-型半導体層、22,33,34,40…p+型半導体層、23,32,41,42…n+型半導体層、24,35,43…絶縁体、25,26,27,28,29,30,36,37,38,39,44…導電体、31…層間絶縁膜。