IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフトの特許一覧

<>
  • 特許-局部的な画像歪み修正を伴う画像検査 図1
  • 特許-局部的な画像歪み修正を伴う画像検査 図2
  • 特許-局部的な画像歪み修正を伴う画像検査 図3
  • 特許-局部的な画像歪み修正を伴う画像検査 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】局部的な画像歪み修正を伴う画像検査
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20230828BHJP
   B41F 33/00 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
G06T1/00 310Z
B41F33/00 280
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019052740
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2019169149
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】10 2018 204 362.0
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009232
【氏名又は名称】ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten-Anlage 52-60, D-69115 Heidelberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イマヌエル フェアゲン
(72)【発明者】
【氏名】フランク シューマン
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-232510(JP,A)
【文献】特開2005-309078(JP,A)
【文献】特開2015-197928(JP,A)
【文献】米国特許第06954290(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
B41F 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計算機(3,6)を用いた、被印刷材を処理する機械(4)における印刷生産物(8)の画像検査の方法であって、
画像検出システム(2)による画像検査の範囲において、作成された前記印刷生産物(8)が少なくとも1つの画像センサ(5)を用いて印刷画像(12)として検出され、デジタル化され、前記計算機(3,6)は、検出されたデジタルの前記印刷画像(12)をデジタルの基準画像(11)と比較し、前記比較の結果(13)を、前記検出されたデジタルの印刷画像(12)における歪んだ画像領域(14)を有する画像領域に関して調査し、歪んだ前記画像領域(14)に対する歪み修正係数を計算し、前記デジタルの基準画像(11)の歪み修正を、歪んだ前記画像領域(14)に対する、計算された前記歪み修正係数によって実行し、本刷りにおいて、前記検出されたデジタルの印刷画像(12)を前記計算機(3,6)によって、修正された前記デジタルの基準画像(11)と比較し、前記検出されたデジタルの印刷画像(12)が前記デジタルの基準画像(11)から偏差を有している場合には、誤って識別された前記印刷生産物が排除される方法において、
前記計算機が、前記歪み修正係数の計算に対して過度に少ない縁部を有している、前記デジタルの基準画像における画像領域を求め、前記画像領域にアンカー点(16)を挿入し、前記アンカー点は、前記印刷生産物の印刷時に一緒に印刷され、前記少なくとも1つの画像センサ(5)によって検出され、デジタル化され、したがって前記検出されたデジタルの印刷画像(12)の構成部分であり、次に、局部的な前記歪み修正係数の計算が前記計算機(3,6)によって、前記アンカー点(16)を用いて実行される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記アンカー点(16)は、前記デジタルの基準画像(11)の縁部に挿入され、したがって、作成された前記印刷生産物(8)の断裁枠(17)の外側に位置する、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記デジタルの基準画像(11)の縁部への前記アンカー点(16)の挿入は、前記計算機(3,6)によって、印刷プロセスの前段階において実行される、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記計算機(3,6)による前記歪み修正係数の計算は、各印刷タスクの開始時の前記画像検出システム(2)の記憶フェーズの間に、個々に、前記印刷タスクの特定の、前記検出されたデジタルの印刷画像(12)に対して実行される、
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
各印刷タスクの開始時の前記画像検出システム(2)の前記記憶フェーズの間に、前記計算機(3,6)によって前記歪み修正係数を計算するために、複数の前記検出されたデジタルの印刷画像(12)は、前記デジタルの基準画像(11)と比較され、ここで、前記比較の結果(13)から、数学的な演算によって、選択が行われる、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記計算機(3,6)による数学的な演算を用いた前記選択は、前記比較の結果(13)の平均値、中央値、極小値ならびに極大値の計算を含んでいる、
請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記計算機(3,6)は、前記デジタルの基準画像(11)の歪み修正に対して付加的にまたは択一的にそれぞれ、前記検出されたデジタルの印刷画像(12)と前記デジタルの基準画像(11)との比較の前に、目下比較されるべき、前記検出されたデジタルの印刷画像(12)の歪み修正を実行する、
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
規則的な間隔で、前記画像検査の間に、新たに、目下の、前記検出されたデジタルの印刷画像(12)に伴って更新された前記歪み修正係数は、歪んだ前記画像領域(14)に対して計算され、これによって前記デジタルの基準画像(11)が相応に修正される、
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記被印刷材を処理する機械(4)は、枚葉紙印刷機(4)であり、ここで、作成された前記印刷生産物(8)が印刷枚葉紙(8)上に印刷される、
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記枚葉紙印刷機(4)は、インクジェット印刷機またはオフセット印刷機(4)である、
請求項9記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被印刷材を処理する機械における印刷生産物の画像検査の方法に関する。
【0002】
本発明は、品質コントロールの技術領域に属する。
【背景技術】
【0003】
今日の印刷産業では、特に大型印刷機において、品質コントロールがいわゆるインライン検査システム(以降では画像検出システムと称される)を介して自動的に行われる。インラインとは、この場合には、画像検出システム、詳細には画像検出システムのカメラが、印刷機内に取り付けられていることを意味している。カメラはここでは、通常、最後の印刷機構の後に、またはコーティング機構等のさらなる後処理ステーションが存在する場合には、さらなる後処理ステーションの後に取り付けられ、印刷機によって作成された印刷製品を検出する。カメラは、1つのカメラであっても、複数のカメラを備えたカメラシステムであってもよい。他の画像センサを使用することも可能であるが、以降では簡略化して、「カメラ」とする。このように、カメラによって作成されたデジタルの印刷画像は、次に、画像処理計算機において、印刷主題の相応する良好な画像と比較される。このような良好な画像は、ここでは、前段階データから作成されても、記憶されてもよい。記憶はこの場合には、作成されるべき印刷主題を備えた一連の印刷製品が印刷され、画像検出システムのカメラによって検出されることを意味している。このような印刷手本はできるだけ、欠陥がないようにされているべきであり、したがって、画像検出システムによって検出された後に、デジタルの基準として画像処理計算機内に、良好な画像として格納される。次に、本刷りプロセスにおいて、画像検出システムのカメラによって、作成された印刷画像または作成された印刷画像の一部が検出され、記憶されたデジタルの良好な画像の基準または前段階データから作成された良好な画像の基準と比較される。ここで本刷りにおいて作成された印刷製品とデジタルの基準との間に偏差が確認されると、この偏差が、印刷工に示され、印刷工はその後、この偏差が容認可能なものであるか否か、またはこのように作成された印刷製品が刷り損じとして排除されるべきであるか否かを判断することができる。刷り損じとして識別された印刷枚葉紙は刷り損じポイントを介して外に出される。ここで、良好な画像の基準に欠陥がないということと、実際の印刷物および画像検出システムによって検出された印刷画像が、実際に印刷された印刷画像に実際にも相応するということと、の両方が極めて重要である。画像撮影によって、例えば照明不足、カメラのレンズの汚れまたはその他の影響源によって生じる欠陥が検査プロセスに悪影響を与えることがあってはならない。
【0004】
まさにこのような観点において検査に悪影響を与える極めて特殊な問題は、印刷機内の印刷基材搬送時の不規則性である。画像検出システムは、良好な画像撮影のために、搬送される印刷基材が画像検出システムのカメラをできるだけ静かにかつ規則的に通過するように指示されている。特に、枚葉紙印刷機の場合には、これは極めて重要である。ここで公知の問題は、印刷枚葉紙の搬送の際に、枚葉紙搬送誘導薄板にわたった搬送時に、枚葉紙の後方縁部に振動が与えられてしまう、すなわち枚葉紙の後方縁部がはね上がってしまうということである。いわば、枚葉紙端部の「翻り」である。これは、枚葉紙の始めの領域および中央の領域の画像検出に対しては問題にならないが、印刷枚葉紙上の枚葉紙端部に位置する、調査されるべき印刷画像は、この「翻り」によって悪影響を受ける。なぜならこれは、枚葉紙表面とカメラとの間の間隔が変化することによって、僅かな、変化する不鮮明さを、非線形の局部的な歪みの形態で、検出される印刷画像において生じさせるからである。このような不鮮明さは、デジタルの基準においては、当然、存在しないので、これは、検出された、撮影された印刷画像とデジタルの基準との比較の際に、印刷欠陥として分類される。印刷工による、画像検査方法の手動監視の場合には、印刷工は当然、これが本物の印刷欠陥でなく、フォールス・ポジティブ欠陥であることを識別し、これに相応してこのような欠陥表示を分類することができる。しかし完全に自動化された画像検査の場合には、このようなフォールス・ポジティブ欠陥または擬似欠陥を事前に除外することが必要になるだろう。
【0005】
したがってこのような歪みを補正するために、今日では多くの場合において、基準画像の歪みが修正される。
【0006】
したがって、特開2003-141520号公報(JP2003141520A)から、歪係数を用いてチルトスキャンから幾何学歪みを補正するモジュールを備えた画像読取装置が知られており、ここでは、この係数は、位置が異なる歪みに合わせられる。しかし、ここで使用されている局部的な画像歪係数は、移動する画像見本、すなわち印刷枚葉紙に起因する不鮮明さに相応していない。さらに、ここで開示された方法によって補正されるのは、線形の歪みだけであり、枚葉紙オフセット印刷において枚葉紙の後方縁部の上述したはね上がりによって生じる歪みのような非線形の歪みは補正されない。
【0007】
公開されていないドイツ特許出願DE102018201794.8から、この問題に対して、計算機による、被印刷材を処理する機械における印刷生産物の画像検査の方法が知られており、ここでは、画像検出システムによる画像検査の範囲において、作成された印刷生産物が少なくとも1つの画像センサを用いて検出され、デジタル化され、このようにして生じた、検出されたデジタルの印刷画像が計算機によって、デジタルの基準画像と比較され、計算機は、デジタルの基準画像に事前に歪み修正(Entzerrung)を施し、検出されたデジタルの印刷画像がデジタルの基準画像から偏差を有している場合には、誤って識別された印刷生産物が排除される。この方法は、デジタルの基準画像の歪み修正の前に、計算機が、検出されたデジタルの印刷画像をデジタルの基準画像と比較し、この比較の結果を、検出されたデジタルの印刷画像における歪んだ領域を有する画像領域に関して調査し、この歪んだ画像領域に対する適切な歪み修正係数を計算し、デジタルの基準画像の歪み修正を、この歪んだ画像領域に対する、計算された適切な歪み修正係数によって実行するという特徴を有している。
【0008】
しかし、このようなアプローチの欠点は、十分に角および縁部を有している画像対象物を含んでいる、印刷されるべき印刷画像においてしか、これが機能しないということである。このような縁部および角は、差の画像における局部的な歪みを有する領域を確実に識別することを可能にするために必要である。これに対して印刷画像がこのような角および縁部を必要数有していない場合には、この方法は使用不可能である。
【0009】
角および縁部を有していないこのような画像領域は、目立った線または画像対象物の移行を有していない領域である。例えば、これは、雲がある空が表された写真領域内にある。雲は、記載された非線形の局部的な歪みに対しても影響され、これによって画像検査におけるフォールス・ポジティブ欠陥の原因となる可視の対象物である。しかしこれは、非線形の局部的な歪みの位置が相応に突き止められる角もしくは縁部を提示しない。このような場合には、非線形の局部的な歪みは補正されず、デジタルの画像検査において、さらなる擬似欠陥を生じさせてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって本発明の課題は、局部的な、非線形の歪みを、容易に位置の突き止めが可能な角および縁部のない領域を備えた印刷画像においても補正することができる、印刷生産物の画像検査の方法を開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題は、計算機を用いた、被印刷材を処理する機械における印刷生産物の画像検査の方法によって解決され、ここで画像検出システムによる画像検査の範囲において、作成された印刷生産物が少なくとも1つの画像センサを用いて検出され、デジタル化され、計算機が、検出されたデジタルの印刷画像をデジタルの基準画像と比較し、この比較の結果を、検出されたデジタルの印刷画像における歪んだ領域を有する画像領域に関して調査し、この歪んだ画像領域に対する適切な歪み修正係数を計算し、デジタルの基準画像の歪み修正を、この画像領域に対する、計算された適切な歪み修正係数によって実行し、本刷りにおいて、検出されたデジタルの印刷画像を計算機によって、修正されたデジタルの基準画像と比較し、検出されたデジタルの印刷画像がデジタルの基準画像から偏差を有している場合には、誤って識別された印刷生産物が排除される。この方法は、計算機が、適切な歪み修正係数の計算に対して過度に少ない縁部を有している、デジタルの基準画像における画像領域を求め、この画像領域にアンカー点(Ankerpunkten)を挿入し、このアンカー点は、印刷生産物の印刷時に一緒に印刷され、少なくとも1つの画像センサによって検出され、デジタル化され、したがって検出されたデジタルの印刷画像の構成部分であり、次に、局部的な歪み修正係数の計算が計算機によって、このようなアンカー点を用いて実行される、という特徴を有している。本発明による方法は、差の画像化によって、局部的な非線形の歪みを有する印刷画像領域を識別するために、容易に位置が突き止められる角および縁部の形態の必要な画像内容を有していない、相応する印刷画像領域を有する、検査されるべき印刷画像で使用される。これを可能にするために、計算機は画像分析によって、画像領域がこのような記載された特性を有しているか否か、およびどの画像領域がこのような記載された特性を有しているかを求める。これは次に、このような画像領域に、必要な特性を有している付加的なアンカー点を挿入する。このようなアンカー点は当然、相応に、相応する画像の印刷時にともに印刷されなければならない。これはここで、画像センサによって、ともに検出され、デジタル化され、検査されるべき印刷画像の構成部分になる。このことは、相応する差の画像化の際に役立つ。次に局部的な歪み修正係数の計算が、付加的に挿入されたアンカー点に基づいて処理される。したがって、この方法は、元来不適切な画像領域を有する印刷画像に対しても局部的な非線形の歪みの補正を伴う画像検査に適用可能である。
【0012】
この方法の有利な発展形態は、属する従属請求項ならびに属する図面を用いた説明から明らかになる。
【0013】
本発明による方法の有利な発展形態では、アンカー点が、デジタルの基準画像の縁部に挿入され、したがって、作成された印刷生産物の断裁枠の外側に位置する。アンカー点は当然、元来の印刷画像を変えてはならない。したがってアンカー点は、各印刷画像の縁部に挿入され、アンカー点を後に、印刷生産物の印刷後に、切り離すことができる。このために必要な断裁枠は当然、相応の大きさを有しているべきである。すなわち、アンカー点は、できるだけ、印刷画像の縁部の近くに位置するべきであり、これによって、作成された印刷製品の後の断裁時に、元来作成されるべき印刷画像から消失する部分ができるだけ少なくなる。
【0014】
本発明による方法の別の有利な発展形態では、デジタルの基準画像の縁部へのアンカー点の挿入は、計算機によって、印刷プロセスの前段階において実行される。アンカー点はここで、計算機によって、印刷前段階において、デジタルの基準画像の縁部に挿入される。アンカー点の様式および正確な位置は、ここで相応に定められる。同時に、アンカー点は、印刷前段階において、デジタルの印刷見本にも挿入され、これも後に印刷される。印刷された画像は、次に、方法に即して、画像センサによって検出され、デジタル化され、デジタルの基準画像と検出されたデジタル化された印刷画像との比較時に、アンカー点は両方の場合において縁部に存在している。アンカー点は、印刷プロセスの前段階において挿入され、他方で局部的な非線形の歪みの計算および補正は、本発明による方法に相応に、印刷機の画像検出計算機において、印刷プロセスの間に実行される。
【0015】
本発明による方法の有利な発展形態では、歪み修正係数の計算が、各印刷タスクの開始時の画像検出システムの記憶フェーズの間に、個々に、この印刷タスクの特定の、検出されたデジタルの印刷画像に対して実行される。歪められた画像領域の算出およびこれに適した歪み修正係数の相応する計算は、各印刷タスクの開始時の、いずれにせよ必要な、画像検出システムの記憶フェーズの間に実行され得る。これによって、画像検出システムは、本発明による方法によって、印刷タスクの元来の本刷りの開始時に迅速に、使える状態にされる。ここでは、歪められた領域の算出は、デジタルの基準画像と検出された実際の印刷画像との比較によって、当然ながら常に、各特定の印刷画像に対してのみ行われ得る。ここで相応する基材領域内に存在している個々の印刷画像が、個々に相互に比較されるか、または一種のまとめられた全体画像として比較されるのかは、本発明による方法の作用には重要ではない。
【0016】
本発明による方法の別の有利な発展形態では、各印刷タスクの開始時の画像検出システムの記憶フェーズの間に、計算機によって歪み修正係数を計算するために、複数の検出されたデジタルの印刷画像が、デジタルの基準画像と比較され、ここで、この比較の結果から、数学的な演算によって、選択が行われる。本発明による方法が、画像検出システムの記憶フェーズの範囲において、複数の検出されたデジタルの印刷画像に対して実施されることによって、歪められた画像領域の算出およびここから結論される、これに関連する、局部的な歪み修正係数の計算が相応に改善される。乱れている印刷基材搬送は常に、局部的な非線形の歪みの形態の類似の欠陥画像を生じさせるが、枚葉紙の後方縁部の「翻り」による局部的な歪みへの正確な作用は、各画像撮影時に、僅かに異なっていることがあるので、これは特に重要である。したがって、このような変動を相応に補償するために、また画像検出システムの画像撮影の間に常に生じ得るその他の測定欠陥も補償するために、撮影を複数回行い、本発明に相応に評価することが合理的である。次に、このようにして存在する複数の結果から、種々の数学的な演算によって、実際に近い歪みが求められ、これによって、最適な局部的な歪み修正係数が計算される。
【0017】
本発明による方法の別の有利な発展形態では、計算機による、数学的な演算を用いたこの選択は、比較の結果の平均値、中央値、極小値ならびに極大値の計算を含んでいる。ここでまさにどのような数学的な演算が使用されるのかは、各優先順位に関連する。最も合理的であると思えるのは、複数回存在する結果から、局部的な画像歪みに対して、平均値を使用することである。しかし、検出された値が予期に反して極めて強く散乱している場合には、中央値の使用も完全に合理的である。局部的な画像歪みに関する極小値または極大値の使用も、個々のケースにおいて、完全に適切であり得る。
【0018】
本発明による方法の別の有利な発展形態では、計算機は、デジタルの基準画像の歪み修正に対して付加的にまたは択一的にそれぞれ、検出されたデジタルの印刷画像とデジタルの基準画像との比較の前に、目下比較されるべき、検出されたデジタルの印刷画像の歪み修正を実行する。上述したように、デジタルの基準画像を相応に歪み修正する代わりに、各検出されたデジタルの印刷画像を相応に歪み修正することも可能である。しかしこのような手法は、計算された歪み修正係数がその度毎に、新たに、各撮影されたデジタルの印刷画像に、デジタルの基準画像との比較の前に適用されなければならない、という欠点を有している。これとは逆の手法、すなわちデジタルの基準画像を歪み修正する手法は、該当する印刷画像に対して、1回だけ、計算された局部的な歪み修正係数の使用による整合が行われればよい、という利点を有している。
【0019】
本発明による方法の別の有利な発展形態では、規則的な間隔で、画像検査の間に、新たに、目下の、検出されたデジタルの印刷画像に伴って更新された歪み修正係数が、歪められた画像領域に対して計算され、これによってデジタルの基準画像が相応に修正される。デジタルの基準画像が一度相応に平滑化されると、これは通常の画像検査の範囲において、相応に検出された全てのデジタルの印刷画像に対して使用可能である。ここで、計算された局部的な歪み修正係数を新たに適用する必要はない。それにもかかわらず当然、本発明による方法を、規則的な間隔で、デジタルの基準画像に対して新たに実行することは合理的であり得る。なぜなら、印刷タスクの範囲において、乱れた印刷基材搬送によって生じる局部的な歪み作用が完全に変わってしまうことがあるからである。
【0020】
本発明による方法の別の有利な発展形態では、被印刷材を処理する機械は、枚葉紙印刷機であり、ここでは、作成された印刷生産物が印刷枚葉紙上に印刷される。原則的に、本発明による方法は多くの種類の印刷機に適用可能である。しかし特に、基材搬送時の特定の局部的な歪みは、とりわけ、印刷枚葉紙において生じる。なぜなら特に、個々の印刷枚葉紙は、枚葉紙搬送の際に、枚葉紙誘導薄板に突き当たることによって、相応する振動、すなわち枚葉紙端部の翻りを有するからである。すなわち本発明による方法は特に、枚葉紙印刷機およびこのような枚葉紙印刷機によって作成された印刷生産物の画像検査に適している。
【0021】
本発明による方法の別の有利な発展形態では、枚葉紙印刷機は、インクジェット印刷機またはオフセット印刷機である。特に、本発明による方法は目下、枚葉紙オフセット印刷機において使用されているが、インクジェット枚葉紙印刷機における使用も考えられる。
【0022】
本発明自体ならびに構造的かつ/または機能的に有利な本発明の発展形態を以降で、属する図面を参照して、少なくとも1つの有利な実施例に基づいて詳細に説明する。図面では、相応する要素に、それぞれ同じ参照符号が付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】画像検出/画像検査システムの例
図2】枚葉紙の後方縁部での「翻り」の発生の例
図3】角/縁部のない領域を有する印刷画像の差の画像化
図4】局部的に挿入されたアンカー点を有する印刷画像
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明による方法を使用する、画像検出システム2の例を示している。画像検出システム2は、通常は枚葉紙印刷機4内に統合されているカメラ5である、少なくとも1つの画像センサ5を備える。少なくとも1つのカメラ5は、印刷機4によって作成された印刷画像を撮影し、データを、評価のために計算機3、6に送信する。このような計算機3、6は、固有の別個の計算機6であってよく、例えば1つまたは複数の特定の画像処理計算機6であってよく、または印刷機4の制御計算機3と同一であってもよい。少なくとも、印刷機4の制御計算機3はディスプレイ7を有しており、このディスプレイ7上に、画像検査の結果が表示される。有利な実施例では、枚葉紙オフセット印刷機4が使用されるが、本発明による方法を同じように良好に、インクジェット印刷機において使用することができる。
【0025】
ここで、枚葉紙オフセット印刷機4内での印刷枚葉紙8の搬送時に、振動が、特に枚葉紙端部で生じる。この振動は、枚葉紙端部の翻りを生じさせ、これは同様に、画像検出システム2のカメラ5の画像撮影に悪影響を与える。このような事例は、図2に構造的に示されている。ここでは、枚葉紙誘導薄板10によって、印刷胴9上で、枚葉紙搬送がどのように制御されるのかが良好に見て取れる。しかし枚葉紙端部が枚葉紙誘導薄板10を離れるとすぐに、枚葉紙8内で、印刷胴9と枚葉紙誘導薄板10との間の搬送によって、加えられていた機械的な応力が放たれ、「翻り」の原因になる僅かな振動が生じる。印刷機構の直後に設置されているカメラ5は、まさに印刷された枚葉紙8を検出し、このようにして検出されたデジタルの印刷画像14を相応する画像処理計算機6に転送する。しかし、僅かな「翻り」によって、印刷が施された枚葉紙8とカメラ5との間の間隔が僅かに、高い周波数で変化する。これによって、翻っている枚葉紙8の端部で、僅かな歪みが生じてしまう。このような歪みは、これまで、印刷機4の使用者1によって手動で評価されなければならなかった、画像検査における擬似欠陥の原因になる。
【0026】
図3はここで、十分に必要な角および縁部を有していない画像領域が存在する場合の、非線形の局部的な歪みの補正を伴う画像検査の方法の使用の問題を示している。縁部のない領域を有しているデジタルの印刷前段階画像11を示している図3の第1の画像例では、画像11の上方の3分の1が雲を有する空の形態のこのような領域を有しており、下方の2つの3分の1においては、建物ならびにこの建物に対する前の場所が、十分な縁部を伴って示されていることが概略的に示されている。このような画像11が印刷されると、図3の第2の画像において見て取れるように、枚葉紙のはね上がりおよび翻りによって、印刷され、画像検出システム2によって検出された印刷画像12において、画像の上方の3分の1において、左側に、雲の中に、局部的な非線形の歪み14が生じる。結果として得られる、図3における第3の画像が示している差の画像13では、ここで、このような局部的な非線形の歪み14が相応に示されている。非線形に歪められた雲の領域が、捉えがたい霞14を形成しているにすぎないことが良く見て取れる。これは容易に自動的に検出可能ではなく、したがって必要な局部的な歪み修正係数は計算されない。したがって、このような非線形的な歪み14を補正する標準的な方法は、ここでは使用できない。
【0027】
図4は、このような問題に対する、相応する解決策を示している。前段階において、計算機によって、例えば雲を有するこのような重大な(臨界的な)領域が識別される。デジタルの前段階画像11を介して、相応する断裁枠17が設けられ、これは後に印刷される画像15のどの部分が、後処理の範囲において切り離されるのかを特定する。このような、後に切り離されるべき領域はここで、特に、付加的な、自動的に生成されたアンカー点16の挿入のために使用され、このアンカー点を用いて、非線形の局部的な歪み14を補正する方法を実施することができる。印刷された画像15の断裁は、画像検出システム2による品質コントロールの後に初めて行われるので、前段階画像11に、デジタルに挿入されたアンカー点16も一緒に印刷され、画像検出システム2のカメラ5によって相応に、一緒に検出される。これによって、方法に即した比較が、デジタルの前段階画像、すなわち基準画像11と、印刷され、検出されたデジタルの印刷画像12、15と、の間の差の画像化によって行われ、ここで、差の画像13は自動的に生成されたアンカー点16の形態の必要な縁部を有している。ここで、鮮明な角および縁部を有していない領域(例えば雲)も、付加的に挿入されたアンカー点16によって良好に歪み修正される。このようにして求められたパラメータによって、次に、局部的な歪み修正係数が、定められたアルゴリズムに従って計算される。このような歪み修正係数によって、次に、基準画像11の各領域の歪みが修正される。ここでこの基準画像11は、これが画像検査に対して良好に適しているように事前処理されている。ここで重要なのは、アンカー点16が、元来の印刷画像11、12が十分に、天然の角および縁部を有していない画像領域にのみ挿入されるということである。作成されるべき印刷画像11、12からの断裁枠17の切り離しは当然、できるだけ少なくあるべきであるので、アンカー点16は常に、相応する前段階画像11の最も外側の縁部に挿入される。しかし局部的な非線形の歪み14はいずれにせよ、多くの場合に、枚葉紙端部に発生するので、これは、本発明による方法にとって欠点ではない。
【符号の説明】
【0028】
1 使用者
2 画像検出システム
3 制御計算機
4 印刷機
5 画像センサ
6 画像処理計算機
7 ディスプレイ
8 印刷枚葉紙
9 印刷胴
10 誘導薄板
11 縁部のない領域を有する、デジタルの印刷前段階画像/基準画像
12 非線形の歪みを有する、印刷および検出された印刷画像
13 検出可能な縁部を有していない、かすみを伴う差の画像
14 検出可能な縁部を有していない、非線形の歪みからのかすみ
15 挿入されたアンカー点を伴う、印刷および検出された印刷画像
16 断裁枠外の、挿入されたアンカー点
17 断裁枠
図1
図2
図3
図4