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特許7337544電源システム及び船舶、並びに制御方法、並びに制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】電源システム及び船舶、並びに制御方法、並びに制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B63J 99/00 20090101AFI20230828BHJP
   B63J 3/02 20060101ALI20230828BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230828BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20230828BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
B63J99/00 A
B63J3/02 A
H02J3/38 110
H02J3/32
H02J7/35 K
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019092951
(22)【出願日】2019-05-16
(65)【公開番号】P2020185945
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】518131296
【氏名又は名称】三菱重工マリンマシナリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】川波 晃
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03297122(EP,A1)
【文献】特開2012-047096(JP,A)
【文献】特開2011-256827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63J 99/00
B63J 3/02
H02J 3/38
H02J 3/32
H02J 7/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統へ接続された蓄電池と、
前記系統へ接続され、内燃機関を用いて発電を行う発電機と、
前記蓄電池の充電量に応じて、前記発電機の出力の上限値である最大許容負荷を変化させる制御装置と、
を備える電源システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記充電量が、想定される急負荷に対して予め設定された必要急負荷容量よりも大きい場合に、前記最大許容負荷を第1所定値に設定し、前記充電量が、前記必要急負荷容量以下の場合に、前記最大許容負荷を前記第1所定値よりも低い値に設定された第2所定値に設定する請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記充電量が予め設定した閾値以上の場合に、前記最大許容負荷を前記第1所定値に設定し、前記充電量が、前記閾値に対応する前記充電量未満であって、前記必要急負荷容量以下の場合に、前記最大許容負荷を前記第2所定値に設定する請求項2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記系統及び前記蓄電池へ接続され、排熱回収により発電を行う発電ユニットを備え、
前記制御装置は、前記発電機の出力と前記発電ユニットの出力との合計出力が前記系統側の要求負荷よりも小さくなった場合に、前記蓄電池を放電する請求項1から3のいずれか1項に記載の電源システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記発電ユニットの出力状態に応じて、前記発電ユニットの出力及び系統電力の少なくともいずれか1方により前記蓄電池を充電する請求項4に記載の電源システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記発電ユニットの出力状態が所定出力以上である場合に、前記充電量に応じて前記発電ユニットの出力及び前記系統電力の少なくともいずれか1方により前記蓄電池を充電し、前記発電ユニットの出力状態が前記所定出力未満である場合に、前記発電ユニットの出力及び前記系統電力の両方により前記蓄電池を充電する請求項5に記載の電源システム。
【請求項7】
前記系統へ接続された補助発電機を備え、
前記制御装置は、前記充電量が、想定される急負荷に対して予め設定された必要急負荷容量以下となった場合に、前記補助発電機を起動する請求項1から6のいずれか1項に記載の電源システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記補助発電機の出力の上限値を前記発電機の前記最大許容負荷と同等に設定する請求項7に記載の電源システム。
【請求項9】
前記補助発電機の容量は、前記発電機の容量よりも小さい請求項7または8に記載の電源システム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の電源システムを備える船舶。
【請求項11】
系統へ接続された蓄電池と、前記系統へ接続され、内燃機関を用いて発電を行う発電機とを備える電源システムの制御方法であって、
前記蓄電池の充電量に応じて、前記発電機の出力の上限値である最大許容負荷を変化させる工程を有する制御方法。
【請求項12】
系統へ接続された蓄電池と、前記系統へ接続され、内燃機関を用いて発電を行う発電機とを備える電源システムの制御プログラムであって、
前記蓄電池の充電量に応じて、前記発電機の出力の上限値である最大許容負荷を変化させる処理をコンピュータに実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システム及び船舶、並びに制御方法、並びに制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶では、例えば船内負荷が接続された系統(船内母線)に対して、ディーゼル発電機等が接続され、船内の負荷に対して電力供給を行っている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-137383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
船舶では、例えばバウスラスターの使用等によって一時的に急負荷が発生する場合がある。このため、ディーゼル発電機は、急負荷が発生していない通常運転時において最大出力を制限し、急負荷発生時に出力を増加できるように運転されている。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、効率的に内燃機関を用いて発電を行うことのできる電源システム及び船舶、並びに制御方法、並びに制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、系統へ接続された蓄電池と、前記系統へ接続され、内燃機関を用いて発電を行う発電機と、前記蓄電池の充電量に応じて、前記発電機の出力の上限値である最大許容負荷を変化させる制御装置と、を備える電源システムである。
【0007】
上記のような構成によれば、系統には蓄電池と内燃機関を用いて発電を行う発電機とが接続されており、蓄電池の充電量に応じて発電機の出力の上限値である最大許容負荷を設定するため、発電機の最大許容負荷を適切に設定し、効率的に内燃機関を用いて発電を行うことが可能となる。例えば、蓄電池の充電量が高い場合には、蓄電池の放電によっても急負荷に対応することができるため、発電機の最大許容負荷を高く設定することができ、内燃機関による発電の効率を向上させることが可能となる。
【0008】
上記電源システムにおいて、前記制御装置は、前記充電量が、想定される急負荷に対して予め設定された必要急負荷容量よりも大きい場合に、前記最大許容負荷を第1所定値に設定し、前記充電量が、前記必要急負荷容量以下の場合に、前記最大許容負荷を前記第1所定値よりも低い値に設定された第2所定値に設定することとしてもよい。
【0009】
上記のような構成によれば、充電量に応じて発電機の最大許容負荷を適切に設定することができる。このため、内燃機関による発電の燃費効率を向上させることが可能となる。
【0010】
上記電源システムにおいて、前記制御装置は、前記充電量が予め設定した閾値以上の場合に、前記最大許容負荷を第1所定値に設定し、前記充電量が、前記閾値に対応する前記充電量未満であって、想定される急負荷に対して予め設定された必要急負荷容量以下の場合に、前記最大許容負荷を前記第1所定値よりも低い値に設定された第2所定値に設定することとしてもよい。
【0011】
上記のような構成によれば、充電量が予め設定した閾値以上の場合には最大許容負荷を第1所定値とし、充電量が、該閾値に対応する充電量未満であって、想定される急負荷に対して予め設定された必要急負荷容量以下の場合に、最大許容負荷を第1所定値よりも低い値に設定された第2所定値とするため、充電量に応じて発電機の最大許容負荷を適切に設定することができる。このため、内燃機関による発電の燃費効率を向上させることが可能となる。
【0012】
上記電源システムにおいて、前記系統及び前記蓄電池へ接続され、排熱回収により発電を行う発電ユニットを備え、前記制御装置は、前記発電機の出力と前記発電ユニットの出力との合計出力が前記系統側の要求負荷よりも小さくなった場合に、前記蓄電池を放電することとしてもよい。
【0013】
上記のような構成によれば、発電機の出力と排熱回収により発電を行う発電ユニットの出力との合計出力が系統側の要求負荷よりも小さくなった場合に蓄電池を放電するため、蓄電池を用いて急負荷に対応することが可能となる。
【0014】
上記電源システムにおいて、前記制御装置は、前記発電ユニットの出力状態に応じて、前記発電ユニットの出力及び系統電力の少なくともいずれか1方により前記蓄電池を充電することとしてもよい。
【0015】
上記のような構成によれば、発電ユニットの出力状態に応じて発電ユニットの出力及び系統電力の少なくともいずれか1方により蓄電池を充電するため、発電ユニットの出力状態を考慮して蓄電池を効率的に充電することが可能となる。
【0016】
上記電源システムにおいて、前記制御装置は、前記発電ユニットの出力状態が所定出力以上である場合に、前記充電量に応じて前記発電ユニットの出力及び前記系統電力の少なくともいずれか1方により前記蓄電池を充電し、前記発電ユニットの出力状態が前記所定出力未満である場合に、前記発電ユニットの出力及び前記系統電力の両方により前記蓄電池を充電することとしてもよい。
【0017】
上記のような構成によれば、発電ユニットの出力状態が所定出力以上である場合に充電量に応じて発電ユニットの出力及び前記系統電力の少なくともいずれか1方により蓄電池を充電するため、充電量を考慮して蓄電池を効率的に充電することが可能となる。また、発電ユニットの出力状態が所定出力未満である場合に、発電ユニットの出力及び系統電力の両方により蓄電池を充電するため、発電ユニットの出力状態が所定出力未満であっても、効率的に蓄電池を充電することが可能となる。
【0018】
上記電源システムにおいて、前記系統へ接続された補助発電機を備え、前記制御装置は、前記充電量が、想定される急負荷に対して予め設定された必要急負荷容量以下となった場合に、前記補助発電機を起動することとしてもよい。
【0019】
上記のような構成によれば、蓄電池の充電量が予め想定される急負荷に対して設定された必要急負荷容量以下となった場合に補助発電機を起動する。補助発電機は起動に時間を要するため、補助発電機の起動が完了していない場合には、内燃機関によって、急負荷に対応する。また、急負荷の発生時までに補助発電機の起動が完了していれば、内燃機関と補助発電機とによって急負荷に対応することも可能である。
【0020】
上記電源システムにおいて、前記制御装置は、前記補助発電機の出力の上限値を前記発電機の前記最大許容負荷と同等に設定することとしてもよい。
【0021】
上記のような構成によれば、補助発電機についても発電機と同様に効率よく運転することが可能となる。
【0022】
上記電源システムにおいて、前記補助発電機の容量は、前記発電機の容量よりも小さいこととしてもよい。
【0023】
上記のような構成によれば、補助発電機をより適切な容量をすることができる。
【0024】
本発明の第2態様は、上記の電源システムを備える船舶である。
【0025】
本発明の第3態様は、系統へ接続された蓄電池と、前記系統へ接続され、内燃機関を用いて発電を行う発電機とを備える電源システムの制御方法であって、前記蓄電池の充電量に応じて、前記発電機の出力の上限値である最大許容負荷を変化させる工程を有する制御方法である。
【0026】
本発明の第4態様は、系統へ接続された蓄電池と、前記系統へ接続され、内燃機関を用いて発電を行う発電機とを備える電源システムの制御プログラムであって、前記蓄電池の充電量に応じて、前記発電機の出力の上限値である最大許容負荷を変化させる処理をコンピュータに実行させるための制御プログラムである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、効率的に内燃機関を用いて発電を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係る電源システムを備えた船舶の概略構成を示す図である。
図2】ディーゼル発電機の出力と燃費の関係を例示した図である。
図3】本発明の一実施形態に係るORCの概略構成を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る制御装置による電源システムの制御のフローチャートを示した図である。
図5】本発明の一実施形態に係る制御装置による電源システムの制御のフローチャートを示した図である。
図6】参考例に係る船舶の運用例を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る船舶の運用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明に係る電源システム及び船舶、並びに制御方法、並びに制御プログラムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、本実施形態では、電源システム10が船舶に適用される場合について説明するが、急な負荷変動が想定される装置等であれば船舶に限定されず適用することが可能である。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態に係る電源システム10を備えた船舶1の概略構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る電源システム10は、蓄電池11と、ディーゼル発電機(発電機)12と、ORC(発電ユニット)13と、補助発電機14と、制御装置15とを主な構成として備えている。各機器は、系統(船内電力系統)3を介して、船内における負荷(船内負荷)5へ電力を供給している。すなわち、電源システム10によって、系統3に接続された負荷で要求される電力(系統3側の要求負荷(船内要求電力))が賄われている。なお、船内負荷5と系統3との間の開閉器S1により接続状態を制御してもよい。
【0031】
船内負荷5とは、系統3における電力を消費して所定の動作や処理等が実行される機器が必要とする要求電力であり、例えば、航海中等に常時(長時間)稼働している電気系統や、バウスラスター等の一時的に稼働する機器等を含んでいる。バウスラスターは、船舶1を横方向に動かす装置であり、接岸や離岸する場合等の短時間に使用される。本実施形態では、一時的に稼働する機器(急負荷を生じさせる機器)としてバウスラスターを例として説明する。しかしながら、一時的(短時間)に通常の船内負荷5を上回るような負荷(例えば、ディーゼル発電機12の定格負荷を上回るような負荷)を生じさせる機器であればバウスラスターに限定されない。
【0032】
蓄電池11は、系統3へ接続されている。具体的には、蓄電池11は、電力変換装置16を介して系統3へ接続されている。蓄電池11は、船内の急負荷に対応して迅速に放電を行えるように設けられている。急負荷とは、バウスラスター等の短時間(所定期間)に使用される機器が稼働することによって発生する負荷である。なお、急負荷には、上記に限定されず、一時的な負荷増加が含まれることとしてもよい。蓄電池11は、蓄電している電力をすぐに放電することができるため、急負荷にも対応して電力を補うことが可能となる。
【0033】
蓄電池11は、例えば、リチウムイオン電池、鉛電池、ニッケル水素電池等の二次電池である。蓄電池11としては、出力密度、エネルギー密度が高いためリチウムイオン電池が用いられることが好ましい。なお、蓄電池11に対しては充電量を計測する計測器等が設けられており、充電量は制御装置15で用いられる。
【0034】
電力変換装置16は、系統3と蓄電池11(及び後述するORC13)とを接続し、電力を変換する装置である。電力変換装置16は、蓄電池11に対してコンバータ(双方向型DC/DCコンバータ)18が接続されており、インバータ(双方向型AC/DCインバータ)17を介して系統3へ接続されている。なお、インバータ17と系統3との間には開閉器S4が設けられており、接続状態が制御可能となっている。すなわち、蓄電池11を放電する場合には、蓄電池11から出力された直流電圧は、コンバータ18を介して電圧が調整され、コンバータ18から出力された直流電圧はインバータ17によって系統3側に適した周波数の交流電圧へ変換される。また、インバータ17及びコンバータ18は双方向型であるため、蓄電池11を充電する場合には、系統3の交流電圧は、インバータ17によって直流電圧へ変換され、コンバータ18を介して電圧が調整され、蓄電池11へ供給される。なお、後述するように、インバータ17とコンバータ18との間の直流電圧が流れる線上の点Aに、コンバータ(DC/ACコンバータ)19を介してORC13が接続されており、ORC13の発電電力が供給されるようになっている。電力変換装置16は、後述する制御装置15によって制御されている。
【0035】
なお、電力変換装置16の構成は、上記構成に限定されない。すなわち、系統3に対して、蓄電池11及びORC13が接続可能な構成であれば、図1に示す構成に限定されない。例えば、蓄電池11とORC13のそれぞれが、コンバータ及びインバータを介して系統3へ接続されることとしてもよい。
【0036】
ディーゼル発電機(発電機)12は、系統3へ接続され、内燃機関を用いて発電を行う。ディーゼル発電機12によって発電された電力は、系統3へ出力され、船内負荷5へ供給される。本実施形態では、発電機としてディーゼル発電式を用いる場合について説明するが、燃料を燃焼させて機械仕事を得る内燃機関を用いて発電を行うものであればディーゼル発電式に限定されない。なお、ディーゼル発電機12と系統3との間の開閉器S2により接続状態を制御してもよい。
【0037】
ディーゼル発電機12は、後述する制御装置15によって最大許容負荷が設定され、設定された最大許容負荷を出力の上限値として発電を行う。図2はディーゼル発電機12の出力と燃費の関係を示した図である。図2では、横軸をディーゼル発電機12の出力(例えばkW)とし、縦軸を燃費(例えばg/kWh)としている。なお、図2は、ディーゼル発電機12の出力と燃費の関係の一例である。図2に示すように、ディーゼル発電では、出力が高くなるほど、燃費(燃料消費率)が低くなるため、燃費効率が良い動作点で発電を行うことが可能となる。例えば、図2では、負荷30%に対して負荷60%では15%程燃費効率を向上させることができる。後述するように、制御装置15によって適切な最大許容負荷が設定されるため、適切に出力を高くすることができ発電効率を向上させることが可能となる。
【0038】
ORC(発電ユニット)13は、系統3及び蓄電池11へ接続され、排熱回収により発電を行う。本実施形態では、発電ユニットは、ORC(Organic Rankine Cycle System;有機ランキンサイクルシステム)として説明するが、発電ユニットについては、排熱回収により発電を行うものであれば、ORCに限定されない。
【0039】
図3は、ORC13の概略構成例を示す図である。ORC13は、有機熱媒体を熱源として発電を行う発電ユニットである。ORC13は、推進用メインエンジン(不図示)におけるディーゼル燃料の燃焼により発生する熱が伝達されるジャケット冷却水を利用し、ジャケット冷却水と有機熱媒体を熱交換してジャケット冷却水を熱源として発電を行う(排熱回収)。なお、熱源については、ジャケット冷却水に限定されず、エアクーラや排ガス、補機の排熱を用いることとしてもよい。図3に示すように、ORC13は、有機流体循環流路2aと、蒸発器2bと、パワータービン2cと、発電機2dと、凝縮器2eと、循環ポンプ2fとを有する。なお、ORC13の構成は図3に限定されない。
【0040】
推進用メインエンジンは、船舶1の推進力を発生させる主機関(主機)であり、燃料油及び燃料ガスの少なくともいずれか一方を主燃料として掃気空気とともに燃焼させる内燃機関である。推進用メインエンジンは、エンジンシリンダの外側に、冷却水の流れる通路であるウォータジャケットを有する。推進用メインエンジンは、冷却水入口から流入する冷却水をウォータジャケットに導いてウォータジャケットの周囲を冷却し、冷却水を冷却水出口から冷却水循環流路6へ排出する。推進用メインエンジンを冷却した冷却水は、冷却水循環流路6から流入し、蒸発器2bを通過して有機流体循環流路2aを循環する有機流体と熱交換させられ、冷却水循環流路6へ供給される。
【0041】
有機流体循環流路2aは、冷却水循環流路6を循環する推進用メインエンジンにおけるジャケット冷却水と熱交換させられる有機流体(作動流体。例えば有機熱媒体)を循環させる流路である。有機流体としては、水よりも沸点の低い流体が用いられる。したがって、有機流体循環流路2aを循環する有機流体は、高温の冷却水(例えば、約85℃)と熱交換することにより蒸発させられる。水よりも沸点の低い有機流体として、イソペンタン、ブタン、プロパン等の低分子炭化水素や、R134a、R245fa等の冷媒を用いることができる。
【0042】
蒸発器2bは、冷却水循環流路6を流通する推進用メインエンジンにおけるジャケット冷却水と有機流体とを熱交換させて有機流体を蒸発させる装置である。蒸発器2bは、循環ポンプ2fから有機流体循環流路2aを介して流入する有機流体を蒸発させるとともに蒸発させられた有機流体をパワータービン2cへ供給する。
【0043】
パワータービン2cは、蒸発器2bによって蒸発させられた気相の有機流体によって回転させられる装置である。パワータービン2cは発電機2dに連結されるロータ軸(図示略)を有し、ロータ軸の回転動力を発電機2dに伝達する。パワータービン2cに回転動力を与える仕事をした有機流体は、パワータービン2cから排出された後に凝縮器2eへ供給される。
【0044】
発電機2dは、パワータービン2cから伝達されるロータ軸の回転動力によって発電を行う装置である。発電機2dにより発電された電力は、ORC13の出力として系統3や蓄電池11へ供給される。
【0045】
凝縮器2eは、パワータービン2cから排出された有機流体を冷却水(例えば海水)によって冷却し、気相の有機流体を液相の有機流体に凝縮させる装置である。凝縮器2eによって凝縮された液相の有機流体は、有機流体循環流路2aを介して循環ポンプ2fへ供給される。
【0046】
循環ポンプ2fは、有機流体循環流路2aを介して凝縮器2eから供給される液相の有機流体を蒸発器2bへ圧送する装置である。循環ポンプ2fが有機流体を圧送することにより、有機流体が有機流体循環流路2a上を蒸発器2b、パワータービン2c、凝縮器2eの順に循環する。循環ポンプ2fが有機流体を吐出する吐出量は、例えば制御装置15によって制御される。
【0047】
図1に示すように、ORC13は電力変換装置16を介して系統3及び蓄電池11へ接続されている。具体的には、ORC13の出力は、コンバータ(DC/ACコンバータ)19を介してインバータ17とコンバータ18の間(直流電圧が流通する区間の点A)へ接続されている。すなわち、ORC13から出力された交流電圧は、コンバータ19によって直流電圧へ変換され、点Aへ供給される。ORC13の出力は、インバータ17を介することで系統3へ出力され、コンバータ18を介すことで蓄電池11へ供給される。なお、ORC13は電力を出力するのみであるため、コンバータ19は双方向としなくてもよい。図1の電力変換装置16のようにORC13と蓄電池11を接続することによって、ORC13から蓄電池11までの電力供給において、インバータ及びコンバータの数をより少なくすることができるため、電力変換に伴う損失を抑制することが可能となる。
【0048】
補助発電機14は、系統3へ接続されている。補助発電機14は、内燃機関により発電を行う発電機であり、例えばディーゼル発電式の発電機である。そして、補助発電機14の容量は、ディーゼル発電機12の容量よりも小さい。補助発電機14をメインのディーゼル発電機12と同じ容量とした場合と比較し、補助発電機14の容量を小さくした場合、最大許容負荷を高く設定でき、燃費効率のいい高負荷域で運転できる。補助発電機14は、系統3へ接続されており、系統3へ電力供給可能となっている。補助発電機14は、後述する制御装置15によって制御されている。なお、補助発電機14と系統3との間の開閉器S3により接続状態を制御してもよい。
【0049】
制御装置15は、電源システム10における各機器を制御する装置である。
【0050】
制御装置15は、例えば、図示しないCPU(中央演算装置)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体等から構成されている。後述の各種機能を実現するための一連の処理の過程は、プログラムの形式で記録媒体等に記録されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、後述の各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線または無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0051】
制御装置15は、蓄電池11の充電量に応じてディーゼル発電機12の出力の上限値である最大許容負荷を設定する。制御装置15は、充電量が、想定される急負荷に対して予め設定された必要急負荷容量よりも大きい場合に、最大許容負荷を第1所定値に設定し、充電量が、必要急負荷容量以下の場合に、最大許容負荷を第1所定値よりも低い値に設定された第2所定値に設定する。具体的には、制御装置15は、蓄電池11の充電量が予め設定した閾値以上の場合に、最大許容負荷を第1所定値に設定し、充電量が、該閾値に対応する充電量未満であって、想定される急負荷に対して予め設定された必要急負荷容量以下の場合に、最大許容負荷を第1所定値よりも低い値に設定された第2所定値に設定する。すなわち、制御装置15は、蓄電池11の充電量が高い場合にディーゼル発電機12の最大許容負荷を高く設定し、蓄電池11の充電量が低い場合にディーゼル発電機12の最大許容負荷を低く設定する。なお、最大許容負荷を第1所定値に設定する条件としては、蓄電池11の充電量が必要急負荷容量よりも大きくなった場合としてもよいし、蓄電池11の充電量が、必要急負荷容量に対応する充電量以上において予め設定された閾値以上となった場合としてもよい。
【0052】
なお、本実施形態では、蓄電池11の充電量に対して予め設定した閾値を90%(満充電量が100%)とし、ディーゼル発電機12の最大許容負荷に対して設定された第1所定値を85%(ディーゼル発電機12の定格出力が100%)、第2所定値を50%とする場合について説明する。なお、閾値や、第1所定値、第2所定値の具体的な値については上記に限定されない。
【0053】
蓄電池11の充電量に対する閾値は、常時(長時間)稼働している機器や、一時的に稼働する機器(想定される急負荷)等が要求する電力量に基づいて設定される。すなわち、蓄電池11に閾値以上の充電量が蓄電されていれば、蓄電池11の放電によって、想定される船内負荷5により確実に対応できる。ディーゼル発電機12の最大許容負荷に対する第1所定値は、ディーゼル発電機12の仕様に基づいて燃費の良い動作点で運転が行えるように設定される。すなわち、燃費効率の良い所定の動作点領域において設定される。ディーゼル発電機12の最大許容負荷に対する第2所定値は、第1所定値よりも低く、急負荷分に対応できるようにディーゼル発電機12の仕様に基づいて設定される。すなわち、第2所定値では、急負荷にそなえてディーゼル発電機12の出力が制限されるように設定される。
【0054】
船舶1では、バウスラスターを搭載しており、接岸や離岸を行う場合等に使用される。バウスラスターは系統3へ接続されている船内負荷5に含まれており、動作する場合には一時的に大きな電力を要する。すなわち、バウスラスターを稼働させると急負荷が発生する。このような急負荷が発生した場合に、例えばディーゼル発電機12で電力を補うこととすると、急負荷が発生していない状態においてディーゼル発電機12を低負荷で動作させておく必要がある。換言すると、急負荷に備えてディーゼル発電機12の出力を制限して運転しておく必要がある。このような場合には、ディーゼル発電機12は燃費の良い動作点で運転を行うことができないため、燃費効率が低い状態となってしまう。このため、本実施形態における電源システム10では、急負荷にも対応できるように、蓄電池11を備え、急負荷があった場合に放電可能としている。
【0055】
そして、制御装置15は、蓄電池11の充電量が予め設定した閾値以上である場合には、蓄電池11の放電によって急負荷に対応することができると想定して、ディーゼル発電機12の出力の上限値である最大許容負荷を第2所定値よりも大きな第1所定値(85%)と設定する。最大許容負荷が高く設定することで、ディーゼル発電機12を効率の良い動作点で運転させることが可能となる。
【0056】
また、制御装置15は、蓄電池11の充電量が予め設定した必要急負荷容量以下である場合には、蓄電池11の放電によって急負荷に対応できない可能性があると想定して、ディーゼル発電機12の出力の上限値である最大許容負荷を第1所定値よりも小さな第2所定値(50%)と設定する。このため、蓄電池11の充電量が閾値に満たない場合であっても、ディーゼル発電機12の最大許容負荷が第1所定値よりも低く設定されるため、急負荷が発生したとしても蓄電池11及びディーゼル発電機12で電力を賄うことが可能となる。なお、必要急負荷容量は、第1所定値に係る閾値(90%)よりも小さい容量に相当している。すなわち、閾値に対応する充電量よりも必要急負荷容量に対応する充電量の方が小さい。このため、蓄電池11の充電量が閾値以上となり最大許容負荷が第1所定値に設定されると、その後放電して蓄電池11の充電量が低下した場合であっても、蓄電池11の充電量が必要急負荷容量以上であれば、最大許容負荷は第1所定値として設定される。
【0057】
また、制御装置15は、ディーゼル発電機12の出力とORC13の出力との合計出力が系統3側の要求負荷(船内負荷5)よりも小さくなった場合に、蓄電池11を放電する。すなわち、制御装置15は、系統3側の要求負荷を、ディーゼル発電機12とORC13とで対応できなくなった場合に、蓄電池11を放電し、蓄電池11の電力も系統3へ供給する。このため、船内負荷5に対して幅広く対応することができる。また、船内負荷5に対してディーゼル発電機12の出力とORC13の出力とを優先的に用いるため、蓄電池11の放電を抑制し、蓄電池11の充電量の低下を抑制することができる。
【0058】
蓄電池11を放電した場合には、蓄電池11及びディーゼル発電機12によって急負荷に対応できない可能性がある。このため、制御装置15は、蓄電池11の充電量が、想定される急負荷に対して予め設定された必要急負荷容量以下となった場合に、補助発電機14を起動する。必要急負荷容量とは、予め想定される急な負荷変動の発生時に必要な電力量である。すなわち、蓄電池11の充電量が必要急負荷容量以上であれば、蓄電池11の放電によって急負荷に対応することが可能となる。例えば、必要急負荷容量は、一時的に動作する機器(バウスラスター)を一時的に動作させる場合に要する電力量に基づいて設定される。
【0059】
すなわち、蓄電池11の充電量が、必要急負荷容量以下となった場合には、蓄電池11及びディーゼル発電機12によって急負荷に対応できない場合がある。そこで、制御装置15は、蓄電池11の充電量が必要急負荷容量以下となった場合に、補助発電機14を起動する。補助発電機14は起動に時間を要するため、補助発電機14の起動が完了していない場合には、ディーゼル発電機12(最大許容負荷が第2所定値に設定されている)によって、急負荷に対応する。なお、急負荷の発生時までに補助発電機14の起動が完了していれば、ディーゼル発電機12と補助発電機14とによって急負荷に対応することも可能である。補助発電機14についても、効率の良い動作点で運転を行うため、補助発電機14の出力の上限値はディーゼル発電機12の最大許容負荷に基づいて設定する。具体的には、補助発電機14の出力の上限値はディーゼル発電機12の最大許容負荷と同等の値に設定される。例えば、ディーゼル発電機12の最大許容負荷が50%に設定されている場合には、補助発電機14の出力の上限値は、補助発電機14の定格を100%として、50%に設定される。
【0060】
また、制御装置15は、ORC13の出力状態に応じて、ORC13の出力及び系統電力の少なくともいずれか1方により蓄電池11を充電する。具体的には、制御装置15は、ORC13の出力状態が所定出力以上である場合に、充電量に応じてORC13の出力及び系統電力の少なくともいずれか1方により蓄電池11を充電し、ORC13の出力状態が所定出力未満である場合に、ORC13の出力及び系統電力の両方により蓄電池11を充電する。所定出力は、例えば80%(ORC13の出力の定格出力が100%)である。
【0061】
制御装置15は、ORC13の出力状態が所定出力以上である場合には、蓄電池11の充電量を参照し、蓄電池11の充電量が予め設定した下限値(例えば20%)未満である場合に、ORC13の出力と系統電力の両方を用いて蓄電池11を充電する。このため、ORC13の出力状態が十分であり、蓄電池11の充電量が低い状態である場合には、ORC13の出力と系統電力の両方により迅速に蓄電池11を充電することが可能となる。また、制御装置15は、ORC13の出力状態が所定出力以上である場合には、蓄電池11の充電量を参照し、蓄電池11の充電量が予め設定した下限値(例えば20%)以上である場合に、ORC13の出力を用いて蓄電池11を充電する。このため、ORC13の出力状態が十分であり、蓄電池11の充電量が下限値を下回っていない状態である場合には、ORC13の出力により蓄電池11を充電することが可能となる。なお、この場合には系統電力を充電に用いないため、船内負荷5へ安定的に電力供給を行うことができる。なお、ORC13の出力状態が所定出力以上であり、蓄電池11の充電量が予め設定した下限値(例えば20%)以上である場合には、系統電力によって蓄電池11を充電することとしてもよい。
【0062】
そして、制御装置15は、ORC13の出力状態が所定出力未満である場合には、ORC13の出力及び系統電力の両方により蓄電池11を充電する。すなわち、ORC13の出力状態が十分ではない場合には、ORC13の出力と系統電力の両方により迅速に蓄電池11を充電することが可能となる。
【0063】
次に、上述の制御装置15による電源システム10の制御について図4及び図5を参照して説明する。図4及び図5に示すフローは、船舶1が稼働中(航行中及び停泊中を含む)である場合において所定の制御周期で繰り返し実行される。なお、図4及び図5のフローでは、充電量が十分(第1所定値以上)である場合を想定している。
【0064】
まず、図4に示すように蓄電池11の充電量が90%(閾値)以上である場合(S101)に、ディーゼル発電機12の最大許容負荷を85%(第1所定値)に設定する(S102)。S101における充電量が閾値以上である場合とは、充電量が必要急負荷容量より大きな充電量に相当する閾値以上となっている場合である。閾値は、後述するS104において船内負荷が増加した場合に、所定期間は船内負荷の増加分を蓄電池11の放電で賄うことが可能なように設定されている。そして、ORC13の出力を系統3に送電する(S103)。
【0065】
そして、船内負荷5がディーゼル発電機12の出力(出力の上限)とORC13の出力との合計出力よりも大きいか否かを判定する(S104)。なお、出力の上限とは、最大許容負荷に対応している。船内負荷5がディーゼル発電機12の出力とORC13の出力との合計出力よりも大きくない場合(S104のNO判定)には、処理を終了する。
【0066】
船内負荷5がディーゼル発電機12の出力とORC13の出力との合計出力よりも大きい場合(S104のYES判定)には、蓄電池11を放電する(S105)。
【0067】
そして、蓄電池11の充電量が必要急負荷容量以下であるか否かを判定する(S107)。
【0068】
蓄電池11の充電量が必要急負荷容量以下でない場合(S107のNO判定)には、S105を繰り返し実行し、蓄電池11を放電する。そして、図5へ移行し、蓄電池11の充電量が必要急負荷容量以下である場合(S107のYES判定)には、ディーゼル発電機12の最大許容負荷を50%(第2所定値)に設定する(S108)。
【0069】
そして、補助発電機14を起動する(S109)。S109と並列して、ORC13の出力が80%(所定出力)以上であるか否かを判定する(S110)。ORC13の出力が80%(所定出力)以上でない場合(S110のNO判定)には、ORC13の出力と系統電力の両方により蓄電池11を充電する(S114)。
【0070】
ORC13の出力が80%(所定出力)以上である場合(S110のYES判定)には、蓄電池11の充電量が20%(下限値)未満か否かを判定する(S111)。蓄電池11の充電量が20%(下限値)未満である場合(S111のYES判定)には、ORC13の出力と系統電力の両方により蓄電池11を充電する(S112)。蓄電池11の充電量が20%(下限値)未満でない場合(S111のNO判定)には、ORC13の出力によって蓄電池11を充電する(S113)。
【0071】
制御装置15では図4及び図5のフローのように処理が実行され、電源システム10が制御されている。
【0072】
次に、制御装置15による電力変換装置16の制御について図1を参照して説明する。
電源システム10では、ORC13の出力と系統電力の両方を用いて蓄電池11を充電する場合と、ORC13の出力により蓄電池11を充電する場合と、蓄電池11の出力を系統3へ送電する場合と、ORC13の出力を系統3へ送電する場合と、蓄電池11の出力とORC13の出力を系統3へ送電する場合とがある。なお、インバータ17やコンバータ18、コンバータ19は、動作を停止させることによって電流の流通が停止されるものとする。
【0073】
ORC13の出力と系統電力の両方を用いて蓄電池11を充電する場合には、開閉器S4を閉として、インバータ17において交直変換を行い、コンバータ18において電圧変換(蓄電池11側へ電力供給)を行い、コンバータ19において交直変換を行うことによって、ORC13の出力及び系統電力の両方が蓄電池11へ供給される。
【0074】
ORC13の出力により蓄電池11を充電する場合には、開閉器S4を開として、インバータ17を停止させ、コンバータ18において電圧変換(蓄電池11側へ電力供給)を行い、コンバータ19において交直変換を行うことによって、ORC13の出力が蓄電池11へ供給される。
【0075】
蓄電池11の出力を系統3へ送電する場合には、開閉器S4を閉として、インバータ17において直交変換を行い、コンバータ18において電圧変換(蓄電池11側から電力送電)を行い、コンバータ19を停止させることによって、蓄電池11の出力を系統3へ送電する。
【0076】
ORC13の出力を系統3へ送電する場合には、開閉器S4を閉として、インバータ17において直交変換を行い、コンバータ18を停止させ、コンバータ19において交直変換を行うことによって、ORC13の出力を系統3へ送電する。
【0077】
蓄電池11の出力とORC13の出力を系統3へ送電する場合には、開閉器S4を閉として、インバータ17において直交変換を行い、コンバータ18において電圧変換(蓄電池11側から電力送電)を行い、コンバータ19において交直変換を行うことによって、ORC13の出力及び系統電力の両方が系統3へ送電される。
【0078】
なお、開閉器S4を閉として、インバータ17において交直変換を行い、コンバータ18において電圧変換(蓄電池11側へ電力供給)を行い、コンバータ19を停止させることによって、系統電力を蓄電池11へ供給することとしてもよい。
【0079】
なお、各機器間における電力変換及び電流の流れが制御可能であれば、電力変換装置16は図1の構成に限定されない。また、電力変換装置16の制御方法についても上記に限定されない。
【0080】
次に、船舶の運用例(船内負荷5に対する各機器の状態)について図6及び図7を参照して説明する。図6は参考例に係る船舶の運用例を示している。参考例とは、蓄電池11(及びORC13)を用いず、2台のディーゼル発電機(第1ディーゼル発電機及び第2ディーゼル発電機とする)によって急負荷に対応する例である。例えば、参考例の場合では、2台のディーゼル発電機で急負荷に対応するために、2台のディーゼル発電機の出力を制限(例えば定格出力の30%等)して運転を行う。図7は、本実施形態に係る船舶1の運用例を示している。なお、図6及び図7では、期間Ta(航海中の期間)が航海中を示し、期間Tb(入港中の期間)が入港する場合を示し、期間Tc(荷役中の期間)が荷役を行う場合(すなわち停泊中)を示している。図6及び図7において、推進用メインエンジンの負荷(図6及び図7の「メインエンジン負荷」)は、期間Taの航海中に一定であり、期間Tbの入港において減速のため減少し、期間Tcの荷役では停止しているため零となっている。また、図6及び図7において、同様の船内負荷5が発生しているものとする。
【0081】
まず、図6を参照して、参考例に係る船舶の運用例(船内負荷5に対する各機器の状態)を説明する。なお、参考例では、第1ディーゼル発電機及び第2ディーゼル発電機の最大許容負荷を60%で一定とする。
【0082】
期間Taの航海中では、例えば時刻T1において、船内負荷5に対して第1ディーゼル発電機で対応しており、第2ディーゼル発電機は停止している。時刻T2から船内負荷5が増加し、増加した船内負荷5に対しては、第1ディーゼル発電機及び第2ディーゼル発電機の2台で対応している。そして時刻T5において船内負荷5が一定となり、第1ディーゼル発電機で対応可能となると、第2ディーゼル発電機は停止される。
【0083】
期間Tbの入港では、時刻T6において、バウスラスター等によって発生する急負荷にそなえて第2ディーゼル発電機を起動して、第1ディーゼル発電機及び第2ディーゼル発電機を並列運転する。そして、時刻T7において、接岸等のためにバウスラスターが稼働されると、船内負荷5が急上昇する(急負荷発生)。このため、並列運転している第1ディーゼル発電機及び第2ディーゼル発電機の両方を用いて急負荷に対応する。
【0084】
図6の参考例では、第1ディーゼル発電機及び第2ディーゼル発電機を並列運転しているため、燃料の消費量も多く、燃費効率を高くすることが困難である。また、第1ディーゼル発電機及び第2ディーゼル発電機を並列運転して急負荷にそなえる必要があるため、並列運転時に出力を制限する必要があり、燃費が低下する傾向にある。
【0085】
次に、図7を参照して、本実施形態に係る船舶1の運用例(船内負荷5に対する各機器の状態)を説明する。なお、図7の例では、ディーゼル発電機12の最大許容負荷の第1所定値を85%とし、第2所定値を50%としている。例えば、ディーゼル発電機12の容量は、定格を500kWとすると、第1所定値の場合では425kWとなり、第2所定値の場合では250kWとなる。また、補助発電機14は定格を300kWとしている。
【0086】
期間Taの航海中では、例えば時刻T1において、船内負荷5に対してディーゼル発電機12とORC13により対応している。この時、蓄電地の充電率は閾値以上となっており、ディーゼル発電機12の最大許容負荷は第1所定値へ設定されている。そして、時刻T2において船内負荷5が増加すると、最大許容負荷を出力の上限としてディーゼル発電機12の出力を増加し、ディーゼル発電機12の出力とORC13の出力とで増加後の船内負荷5に対応している。なお、この場合には、ディーゼル発電機12の出力(最大許容負荷)とORC13の出力の合計出力が船内負荷5より大きい場合であり、蓄電池11の放電は行われない。
【0087】
時刻T3において船内負荷5がさらに増加すると、ディーゼル発電機12の出力(最大許容負荷)とORC13の出力の合計出力よりも船内負荷5が大きくなり、蓄電池11が放電される。すなわち、ディーゼル発電機12の出力と、ORC13の出力と、蓄電池11の放電とによって船内負荷5に対応する。そして、時刻T4において蓄電池11の充電量が必要急負荷容量以下となるまで低下するとディーゼル発電機12の最大許容負荷が第2所定値へ変更される。また、補助発電機14が起動される。すなわち、ディーゼル発電機12の出力(最大許容負荷は第2所定値へ設定)と、補助発電機14の出力とで船内負荷5に対応している。補助発電機14の出力の上限は、ディーゼル発電機12の最大許容負荷の設定値(第2所定値)と同等の負荷率に設定される。ディーゼル発電機12と補助発電機14の最大許容負荷を同等とすることで、両方ともバランスよく負荷率を高くし、燃費効率を向上させることが可能となる。仮に、一方の発電機の最大許容負荷を、もう一方の発電機の最大許容負荷よりも高くした場合(同じにせず、バランスを崩した場合)には、最大許容負荷が低く設定された側の発電機が、燃費効率の非常に悪い負荷帯で運転する可能性がある。なお、ディーゼル発電機12と補助発電機14とは定格容量が異なるため、最大許容負荷が同等に設定されたとしても図7のように出力は異なる。そして、蓄電池11の充電量は必要急負荷容量以下まで低下しているため、蓄電池11は充電へ切り替えられる。
【0088】
そして、時刻T5において船内負荷5が時刻T1の船内負荷5と同等まで低下し、ディーゼル発電機12の出力(最大許容負荷)とORC13の出力の合計出力が船内負荷5より大きくなる。また、時刻T5では蓄電池11の充電量が閾値以上となり、ディーゼル発電機12の最大許容負荷が第1所定値に設定される。また、補助発電機14は停止される。なお、補助発電機14については、ディーゼル発電機12の出力(最大許容負荷)とORC13の出力の合計出力が船内負荷5より大きくなった場合に停止することとしてもよいし、蓄電池11の充電量が閾値以上となった場合に停止することしてもよい。
【0089】
期間Tbの入港では、時刻T6において、入港(停止)のためにORC13の出力が低下し、船内負荷5に対応するためにディーゼル発電機12の出力が増加する。そして、時刻T7において、接岸等のためにバウスラスターが稼働されると、船内負荷5が急上昇する(急負荷発生)。このため、蓄電池11が急放電することによって急負荷に対応した電力を系統3へ出力する。
【0090】
本実施形態では、図7に示すように船内負荷5に対応して各機器が動作し、系統3へ適切に電力が供給される。
【0091】
時刻T1において、図6の参考例では第1ディーゼル発電機(1台)により船内負荷5へ対応しており、図7の本実施形態では、ディーゼル発電機12とORC13とにより船内負荷5へ対応している。本実施形態では、ORC13との併用によりディーゼル発電機12の出力は低下させているためディーゼル発電機12自体の燃費は低下する可能性がある。しかしながら、ORC13を用いることによって、ORC13で得た電力分(排熱回収により得た電力分)だけ、ディーゼル発電機12で発生させる電力を低下させることができるため、ディーゼル発電機12の燃料の消費自体が低減できる。すなわち、全体として消費する燃料の量を抑制することができるため、総合的に燃費効率を向上させることができる。
【0092】
また、時刻T2において、蓄電池11の充電率に基づいて最大許容負荷を高く設定することによって、ディーゼル発電機12を効率の良い動作点で運転させることが可能となる。
【0093】
また、時刻T3において、ディーゼル発電機12の出力と、ORC13の出力と、蓄電池11の放電とによって船内負荷5に対応している。このため、ディーゼル発電機12の最大許容負荷を高く設定していたとしても蓄電池11の放電によってより確実に負荷増加に対応することが可能となる。
【0094】
また、時刻T4において、本実施形態では図7のように蓄電池11の充電量が必要急負荷容量以下となった場合に、蓄電池11を充電しているため、蓄電池11の充電量をより確実に必要急負荷容量以上に保つことができる。また、ディーゼル発電機12と補助発電機14とを併用して船内負荷5に対応させ、ディーゼル発電機12及び補助発電機14の出力の上限である負荷率を同等とすることで、バランスよく負荷率を高くして燃費効率を向上させることができる。
【0095】
また、時刻T6において、本実施形態では図7のようにディーゼル発電機12とORC13とを併用することとしているため、ORC13で得た電力分(排熱回収により得た電力分)だけ、ディーゼル発電機12で発生させる電力を低下させることができるため、ディーゼル発電機12の燃料の消費自体が低減できる。すなわち、全体として消費する燃料の量を抑制することができるため、総合的に燃費効率を向上させることができる。
【0096】
また、時刻T7において、本実施形態では図7のように急負荷に対して蓄電池11の放電で対応することとしているため、急負荷により迅速で安定的に対応することができる。なお、参考例では図6のように、急負荷に対して第1ディーゼル発電機と第2ディーゼル発電機とで対応しているため、急負荷にそなえる必要があるため2台とも燃費効率の悪い、低負荷域で運転しなければならない。また、急激に発電機の出力を上昇させた場合には、黒煙が発生してしまう可能性もある。しかしながら、本実施形態のように、蓄電池11で対応することによって、ディーゼル発電機12への機器負担を抑制し、安定的に急負荷へ対応することができる。
【0097】
以上説明したように、本実施形態に係る電源システム及び船舶、並びに制御方法、並びに制御プログラムによれば、系統3には蓄電池11と内燃機関を用いて発電を行うディーゼル発電機12とが接続されており、蓄電池11の充電量に応じてディーゼル発電機12の出力の上限値である最大許容負荷を設定している。このため、ディーゼル発電機12の最大許容負荷を適切に設定し、効率的に内燃機関を用いて発電を行うことが可能となる。例えば、蓄電池11の充電量が高い場合には、蓄電池11の放電によっても急負荷に対応することができるため、ディーゼル発電機12を急負荷投入に備えて効率の悪い低負荷域で運転する必要がなくなる。すなわち、ディーゼル発電機12の最大許容負荷を高く設定することによって、内燃機関による燃費効率を向上させることが可能となる。
【0098】
また、充電量が予め設定した閾値以上の場合には最大許容負荷を第1所定値とし、充電量が、該閾値に対応する充電量未満であって、想定される急負荷に対して予め設定された必要急負荷容量以下の場合に、最大許容負荷を第1所定値よりも低い値に設定された第2所定値としている。このため、充電量に応じてディーゼル発電機12の最大許容負荷を適切に設定することができる。このため、内燃機関による燃費効率を向上させることが可能となる。
【0099】
また、ディーゼル発電機12の出力と排熱回収により発電を行うORC13の出力との合計出力が船内負荷5よりも小さくなった場合に蓄電池11を放電するため、蓄電池11を用いて急負荷にも対応することが可能となる。
【0100】
また、ORC13の出力状態に応じてORC13の出力及び系統電力の少なくともいずれか1方により蓄電池11を充電するため、ORC13の出力状態を考慮して蓄電池11を効率的に充電することが可能となる。
【0101】
また、ORC13の出力状態が所定出力以上である場合に充電量に応じてORC13の出力及び系統電力の少なくともいずれか1方により蓄電池11を充電するため、充電量を考慮して蓄電池11を効率的に充電することが可能となる。また、ORC13の出力状態が所定出力未満である場合に、ORC13の出力及び系統電力の両方により蓄電池11を充電するため、ORC13の出力状態が所定出力未満であっても、効率的に蓄電池11を充電することが可能となる。
【0102】
また、蓄電池11の充電量が予め想定される急負荷に対して設定された必要急負荷容量以下となった場合に補助発電機14を起動している。補助発電機14は起動に時間を要するため、補助発電機14の起動が完了していない場合には、ディーゼル発電機12(最大許容負荷が第2所定値に設定されている)によって、急負荷に対応する。そして、急負荷の発生時までに補助発電機14の起動が完了していれば、ディーゼル発電機12と補助発電機14とによって急負荷に対応することも可能である。
【0103】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 :船舶
2a :有機流体循環流路
2b :蒸発器
2c :パワータービン
2d :発電機
2e :凝縮器
2f :循環ポンプ
3 :系統
5 :船内負荷
6 :冷却水循環流路
10 :電源システム
11 :蓄電池
12 :ディーゼル発電機
13 :ORC
14 :補助発電機
15 :制御装置
16 :電力変換装置
17 :インバータ
18 :コンバータ
19 :コンバータ
S1-S4:開閉器
Ta :航海中の期間
Tb :入港中の期間
Tc :荷役中の期間

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7