IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

7337549感光性樹脂積層体の支持フィルムおよび感光性樹脂積層体
<図面はありません>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】感光性樹脂積層体の支持フィルムおよび感光性樹脂積層体
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20230828BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20230828BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20230828BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20230828BHJP
   H05K 3/06 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
G03F7/11 503
G03F7/004 512
B32B27/36
C08J7/04 Z
H05K3/06 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019098228
(22)【出願日】2019-05-27
(65)【公開番号】P2020194023
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-12-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222462
【氏名又は名称】東レフィルム加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】辻内 直樹
(72)【発明者】
【氏名】杉山 竜一
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-062645(JP,A)
【文献】特開2018-136510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11
G03F 7/004
B32B 27/36
C08J 7/04
H05K 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムの感光性樹脂層が積層される側の面に、シリコーン変性アルキド樹脂を含有する塗布層を有し、
シリコーン変性アルキド樹脂におけるシリコーン変性率が、シリコーン変性アルキド樹脂固形分100質量%に対して1~20質量%であり、
塗布層がさらにメラミン架橋剤を含有し、
塗布層の表面自由エネルギーが20~35mJ/m である、感光性樹脂積層体の支持フィルム。
【請求項2】
シリコーン変性アルキド樹脂の含有量が塗布層の固形分総量100質量%に対して40質量%以上である、請求項1に記載の感光性樹脂積層体の支持フィルム。
【請求項3】
樹脂フィルムと塗布層との間にアンカー層が配置されている、請求項1または2に記載の感光性樹脂積層体の支持フィルム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の感光性樹脂積層体の支持フィルムの塗布層上に感光性樹脂層が積層されてなる、感光性樹脂積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂積層体の支持フィルム、および前記支持フィルムに感光性樹脂層を積層してなる感光性樹脂積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
支持フィルム上に感光性樹脂層が積層された感光性樹脂積層体は、例えば、半導体素子または半導体素子が実装されるプリント配線板の製造に用いられている。これらの製造において、感光性樹脂積層体は、配線パターンマスクフィルムを介して露光され現像されてレジストパターンが形成される。感光性樹脂積層体を構成する支持フィルムは、露光前もしくは現像前に感光性樹脂層から剥離される。
【0003】
従来から、感光性樹脂積層体の支持フィルムとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂フィルム、あるいはこれらの樹脂フィルムに離型剤、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、長鎖アルキル樹脂、ポリオレフィン樹脂などの離型剤をコートしたものが知られている(特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-162055号公報
【文献】特開2008-175957号公報
【文献】特開2017-222032号公報
【文献】特開2018-165765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した従来の支持フィルムでは、感光性樹脂層の塗布性および感光性樹脂層の剥離性が十分ではなかった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、感光性樹脂層の塗布性および感光性樹脂層の剥離性が良好な感光性樹脂積層体の支持フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は以下の発明によって達成された。
[1]樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、シリコーン変性アルキド樹脂を含有する塗布層を有する、感光性樹脂積層体の支持フィルム。
[2]シリコーン変性アルキド樹脂の含有量が塗布層の固形分総量100質量%に対して40質量%以上である、[1]に記載の感光性樹脂積層体の支持フィルム。
[3]塗布層がさらにメラミン架橋剤を含有する、[1]または[2]に記載の感光性樹脂積層体の支持フィルム。
[4]樹脂フィルムと塗布層との間にアンカー層が配置されている、[1]~[3]のいずれかに記載の感光性樹脂積層体の支持フィルム。
[5][1]~[4]のいずれかに記載の感光性樹脂積層体の支持フィルムの塗布層上に感光性樹脂層が積層されてなる、感光性樹脂積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の感光性樹脂積層体の支持フィルムは、感光性樹脂層の塗布性および感光性樹脂層の剥離性が良好である。
【0009】
また、本発明の感光性樹脂積層体の支持フィルムを用いた感光性樹脂積層体は、感光性樹脂層が均一で外観良好であり、かつ感光性樹脂層からの支持フィルムの剥離性が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の感光性樹脂積層体の支持フィルムは、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、シリコーン変性アルキド樹脂を含有する塗布層を有する。以下、「感光性樹脂積層体の支持フィルム」を「支持フィルム」と言うことがある。
【0011】
[塗布層]
塗布層は、シリコーン変性アルキド樹脂を含有する。
【0012】
本発明において、アルキド樹脂とは、多価アルコールと多塩基酸との縮合体を骨格とする化学構造に、さらに脂肪油や脂肪酸を反応させて変性した樹脂をいう。
【0013】
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の二価アルコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の三価アルコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、マンニット、ソルビット等の四価以上のアルコールが挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
上記多塩基酸としては、例えば、無水フタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などの飽和多塩基酸や、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水シトラコン酸などの不飽和多塩基酸、シクロペンタジエン-無水マレイン酸付加物、テルペン-無水マレイン酸付加物、ロジン-無水マレイン酸付加物などのその他の多塩基酸が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
上記脂肪油や脂肪酸としては、大豆油、アマニ油、キリ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、ヤシ油などの脂肪油、およびこれらの脂肪酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、エレオステアリン酸、リシノレイン酸、脱水リシノレイン酸などの油脂および油脂脂肪酸などが挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
シリコーン変性アルキド樹脂を得るためのシリコーン変性剤としては、アルコキシシリル基やシラノール基を有する化合物を用いることができる。具体的には、ジメチルポリシロキサン等の有機基を有するオルガノポリシロキサンなどが挙げられ、有機基の一部がフェニル基、エチル基、イソプロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、水酸基、ビニル基等で置換されていてもよい。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
シリコーン変性アルキド樹脂におけるシリコーン変性率は、感光性樹脂層の良好な塗布性および良好な剥離性を発現させるという観点から、シリコーン変性アルキド樹脂固形分100質量%に対して1~20質量%が好ましく、2~15質量%がより好ましく、3~10質量%が特に好ましい。
【0018】
シリコーン変性アルキド樹脂は市販されており、それらを使用することができる。市販品としては、信越化学工業(株)の商品名KS-881、KS-882、KS-883、X-62-9022、X-62-9027、X-62-950A、東レ・ダウコーニング(株)製の商品名SR2107、SR2114、東芝シリコーン(株)の商品名TSR180、日立化成(株)の商品名“テスファイン(登録商標)”309、同319、TA31-209Eなどがある。
【0019】
塗布層は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。塗布層が架橋剤を含有することによって、さらに感光性樹脂層の塗布性と剥離性が良好となる。
【0020】
架橋剤としては、例えば、エポキシ架橋剤、イソシアネート架橋剤、オキサゾリン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、メラミン架橋剤等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
上記の中でも、メラミン架橋剤が特に好ましい。メラミン架橋剤を用いることによって、感光性樹脂層の塗布性と剥離性が一段と向上する。
【0022】
エポキシ架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0023】
イソシアネート架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート等が挙げられる。
【0024】
オキサゾリン架橋剤としては、例えば、2,2′-ビス(2-オキサゾリン)、2,2′-エチレン-ビス(4,4′-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2′-p-フェニレン-ビス(2-オキサゾリン)、ビス(2-オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィドなどのオキサゾリン基を有する化合物や、オキサゾリン基含有ポリマーが挙げられる。
【0025】
カルボジイミド架橋剤としては、p-フェニレン-ビス(2,6-キシリルカルボジイミド)、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン-1,4-ビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)などのカルボジイミド基を有する化合物や、カルボジイミド基を有する重合体であるポリカルボジイミドが挙げられる。
【0026】
メラミン架橋剤として用いられるメラミン化合物とは、トリアジン環の3つの炭素原子にアミノ基がそれぞれ結合した、いわゆるメラミン[1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン]のアミノ基に種々の変性を施した化合物の総称であり、トリアジン環が複数縮合したものも含む。変性の種類としては、3つのアミノ基の水素原子の少なくとも1つがメチロール化されたメチロール化メラミン化合物が好ましく、さらに、メチロール化メラミン化合物のメチロール基を炭素数が1~4の低級アルコールで部分もしくは完全にエーテル化したアルキルエーテル化メラミン化合物が好ましい。
【0027】
エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールが挙げられる。
【0028】
メラミン架橋剤は市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、DIC(株)の“スーパーベッカミン(登録商標)”J-820-60、同J-821-60、同J-1090-65、同J-110-60、同J-117-60、同J-127-60、同J-166-60B、同J-105-60、同G840、同G821、三井化学(株)の“ユーバン(登録商標)”20SB、同20SE60、同21R、同22R、同122、同125、同128、同220、同225、同228、同28-60、同2020、同60R、同62、同62E、同360、同165、同166-60、同169、同2061、住友化学(株)の“スミマール(登録商標)”M-100、同M-40S、同M-55、同M-66B、日本サイテックインダストリーズの“サイメル(登録商標)”303、同325、同327、同350、同370、同235、同202、同238、同254、同272、同1130、(株)三和ケミカルの“ニカラック(登録商標)”MS17、同MX15、同MX430、同MX600、ハリマ化成(株)のバンセミンSM-975、同SM-960、日立化成(株)の“メラン(登録商標)”265、同2650Lなどが挙げられる。
【0029】
前述したシリコーン変性アルキド樹脂の市販品の中には、シリコーン変性アルキド樹脂を硬化するための架橋剤として、メラミン架橋剤などが配合されているものがある。このような市販品を用いる場合には、上記した架橋剤を新たに添加することは必ずしも必要ではないが、添加することは妨げない。
【0030】
塗布層は、膜の硬化を促進させるために酸触媒を含有することが好ましい。酸触媒としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。これらの中でも、p-トルエンスルホン酸が好ましく用いられる。
【0031】
塗布層におけるシリコーン変性アルキド樹脂の含有量は、感光性樹脂層の塗布性と剥離性とを良好にするという観点から、塗布層の固形分総量100質量%に対して、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が特に好ましい。一方、シリコーン変性アルキド樹脂の含有量が多くなり過ぎると、塗布層の強度(硬度)が低下し耐溶剤性や耐熱性が低下することがあるので、シリコーン変性アルキド樹脂の含有量は、97質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下が特に好ましい。
【0032】
塗布層が架橋剤を含有する場合の架橋剤の含有量は、感光性樹脂層の塗布性と剥離性を向上させるという観点から、塗布層固形分総量100質量%に対して、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が特に好ましい。一方、架橋剤の含有量が多くなり過ぎると、剥離性が低下することがあるので、架橋剤の含有量は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下が特に好ましい。
【0033】
塗布層が酸触媒を含有する場合の酸触媒の含有量は、塗布性と剥離性を向上させるという観点から、塗布層の固形分総量100質量%に対して、0.1~10質量%が好ましく、0.3~5質量%がより好ましく、0.5~3質量%が特に好ましい。
【0034】
塗布層は、さらに、粒子を含有することができる。塗布層に粒子を含有させることによって塗布層表面に微細な凹凸構造を形成することができる。
【0035】
上記観点から、粒子の平均粒子径は0.1μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましく、0.5μm以上が特に好ましい。また、粒子の平均粒子径が大きくなりすぎると、塗布層中での分散性が悪化したり、塗布層の塗布性が悪化したり、塗布層から粒子が脱落することがあるので、粒子の平均粒子径は5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、1μm以下が特に好ましい。
【0036】
塗布層における粒子の含有量は、塗布層の固形分総量100質量%に対して0.1~20質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましく、1~7質量%が特に好ましい。
【0037】
粒子としては、有機粒子、無機粒子、有機・無機複合粒子を用いることができる。有機粒子としては、アクリル樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン・メラミン樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ポリウレタン樹脂粒子、エポキシ樹脂粒子、ポリオレフィン樹脂粒子、ポリカーボネート樹脂粒子、ポリアミド樹脂粒子、フッ素樹脂粒子などが挙げられる。無機粒子としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、ゼオライトなどが挙げられる。有機・無機複合粒子としては、アクリル・シリカ複合粒子、メラミン・シリカ複合粒子、ベンゾグアナミン・シリカ複合粒子、ベンゾグアナミン・メラミン・シリカ複合粒子、ポリスチレン・シリカ複合粒子などが挙げられる。
【0038】
塗布層は、さらに、バインダー樹脂を含有することができる。かかるバインダー樹脂としては、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0039】
塗布層は、シリコーン変性アルキド樹脂を含有する組成物を樹脂フィルム上に塗布し、加熱硬化して形成されることが好ましい。すなわち、塗布層を形成するための組成物は、熱硬化性組成物であることが好ましい。
【0040】
組成物を硬化させる際の条件(加熱温度、時間)は特に限定されないが、加熱温度は70℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、150℃以上が特に好ましい。上限は300℃程度である。加熱時間は3~300秒が好ましく、5~200秒がより好ましい。
【0041】
組成物は、例えば、ウェットコーティング法により塗布することができる。ウェットコーティング法としては、例えば、リバースコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ダイコート法、スピンコート法、エクストルージョンコート法、カーテンコート法等が挙げられる。
【0042】
塗布層の厚みは、30~1000nmが好ましく、50~600nmがより好ましく、70~450nmが特に好ましい。
【0043】
塗布層の表面自由エネルギーは、20~35mJ/mが好ましく、21~33mJ/mがより好ましく、22~30mJ/mが特に好ましい。塗布層の表面自由エネルギーが上記範囲であることによって、感光性樹脂層の塗布性と剥離性がさらに向上する。
【0044】
シリコーン変性アルキド樹脂を含有する塗布層は、表面自由エネルギーを上記範囲に調整することが可能であり、さらに架橋剤を含有することによって表面自由エネルギーを上記範囲に容易に調整することができる。
【0045】
ここで、表面自由エネルギーは、接触角計、例えば、協和界面科学(株)の「Drop Master DM501」を用いて測定することができる。詳細は後述する。
【0046】
塗布層の表面状態は、感光性樹脂層の塗布性と剥離性を良好にするという観点から、比較的平滑であることが好ましい。具体的には、塗布層の表面粗さSRaは100nm以下が好ましく、60nm以下がより好ましく、40nm以下が特に好ましい。
【0047】
一方、塗布層の表面粗さSRaは、支持フィルムの滑り性や巻き取り性を確保するという観点から、1nm以上が好ましく、3nm以上がより好ましく、5nm以上が特に好ましい。
【0048】
また、例えば、回路基板の作製工程における感光性樹脂層とフォトマスクとの剥離性を良好にするという観点から、感光性樹脂層表面に微細凹凸構造を形成することが好ましい。これは、表面に微細凹凸構造を有する塗布層を用いることによって可能になる。この場合の塗布層の表面粗さSRaは10nm以上が好ましく、20nm以上が好ましく、25nm以上が特に好ましい。上限は100nm以下が好ましい。このような塗布層は、前述したように塗布層に粒子を含有させることによって、あるいは後述するように樹脂フィルムの塗布層を積層する側の表面粗さSRaを制御することによって得ることができる。
【0049】
ここで、表面粗さSRaは、光干渉型顕微鏡、例えば、(株)菱化システム製の「VertScan」を用いて測定することができる。
【0050】
本発明における塗布層は、樹脂フィルムの片面のみに設けてもよいし、両面に設けてもよい。樹脂フィルムの片面のみに本発明における塗布層を設ける場合は、樹脂フィルムの他方の面に離型層を設けることができる。離型層は、従来から一般的に知られている、シリコーン系離型剤、長鎖アルキル系離型剤、ポリオレフィン系離型剤などの離型剤を含有することができる。
【0051】
[樹脂フィルム]
本発明の支持フィルムに用いられる樹脂フィルムとしては、特に限定されず、各種プラスチックフィルムを使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム等のセルロースフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、アクリルフィルム、環状オレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられる。
【0052】
これらのプラスチックフィルムの中でも、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、環状オレフィンフィルムが好ましく、特にポリエステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムの中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、特に二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0053】
樹脂フィルムとしてポリエステルフィルムを使用する場合は、樹脂フィルムの表面粗さSRaを制御するという観点から、3層積層構成のポリエステルフィルムが好ましい。3層積層構成としては、A層/B層/A層またはA層/B層/C層が挙げられる。ここで、A層、B層およびC層は、それぞれ組成が異なることを意味する。生産設備の簡易化や生産性向上の観点から、A層/B層/A層の3層積層構成のポリエステルフィルムが好ましく用いられる。
【0054】
上記3層構成において、A層またはC層は粒子を含有することが好ましい。A層またはC層に含有させる粒子の平均粒子径および/または含有量を調整することによって、ポリエステルフィルムの表面粗さSRaを制御することができる。
【0055】
樹脂フィルムの塗布層を積層する側の表面粗さSRaは、100nm以下が好ましく、60nm以下がより好ましく、40nm以下が特に好ましい。また、上記表面粗さSRaは、1nm以上が好ましく、3nm以上がより好ましく、5nm以上が特に好ましい。
【0056】
樹脂フィルムの塗布層を積層する側の面とは反対面の表面粗さSRaは、支持フィルムの滑り性や巻き取り性を向上させるという観点から、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、15nm以上が特に好ましい。また、上記表面粗さSRaは、50nm以下が好ましく、40nm以下がより好ましく、30nm以下が特に好ましい。
【0057】
樹脂フィルムの厚みは、10~200μmが好ましく、15~150μmがより好ましく、20~100μmが特に好ましい。
【0058】
[アンカー層]
樹脂フィルムと塗布層との間に、樹脂フィルムと塗布層との密着力を向上させるためのアンカー層を配置することが好ましい。
【0059】
樹脂フィルムと、シリコーン変性アルキド樹脂を含有する塗布層との密着性を向上させるという観点から、アンカー層は、シラン化合物と有機配位子を有する金属錯体とを含有することが好ましい。
【0060】
シラン化合物としては、下記の一般式(1)で表される化合物、または該化合物の加水分解物の縮合物あるいは部分縮合物が好ましく用いられる。
【0061】
Si(X)a(Y)b(R)c ・・・一般式(1)
(式中、Xは、アルキレン基に、グリシドキシ基、メルカプト基、(メタ)アクリロキシ基およびアミノ基からなる群より選ばれる一種が結合した基、アルケニル基、ビニル基またはハロアルキル基を表し、Yは加水分解性基を表し、Rは炭化水素基を表し、aは0または1、bは2または3、cは0~2の整数を表し、a+b+c=4である。)
Yで表される加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソプロペノキシ基、アセトキシ基、ブタノキシム基、ケトキシム基、アミノ基等が挙げられ、これらは一種もしくは複数種を併用することができる。中でも、メトキシ基、エトキシ基が良好な加水分解性を有することから好ましい。
【0062】
Rで表される炭化水素基としては、炭素数が1~12の炭化水素基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0063】
一般式(1)で表されるシラン化合物として、具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、5-ヘキセニルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0064】
有機配位子を有する金属錯体の中心金属としては、アルミニウム、ジルコニウムおよびチタンからなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。中でも、アルミニウム、ジルコニウムが好ましく、特にアルミニウムが好ましい。さらに、有機配位子を有する金属錯体は、上記中心金属を有するキレート化合物が好ましく、特にアルミニウムキレート化合物が好ましい。
【0065】
アルミニウムを中心金属とする、有機配位子を有する金属錯体の具体例としては、ビス(エチルアセトアセテート)(2,4-ペンタンジオネート)アルミニウム、アルミニウムトリス(アセチルアセトネ-ト)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウム-ジ-n-ブトキシド-モノエチルアセトアセテート、アルミニウム-ジ-イソプロポキシド-モノメチルアセトアセテート等が挙げられる。
【0066】
ジルコニウムを中心金属とする、有機配位子を有する金属錯体の具体例としては、例えば、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムモノアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート等が挙げられる。
【0067】
チタンを中心金属とする、有機配位子を有する金属錯体の具体例としては、例えば、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、テトラメチルチタネート等のチタンオルソエステル類、チタンアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート、ポリチタンアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、チタンエチルアセトアセテート、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0068】
アンカー層の厚みは、10~200nmが好ましく、20~150nmがより好ましく、30~100nmが特に好ましい。
【0069】
[感光性樹脂積層体]
本発明の感光性樹脂積層体は、本発明の支持フィルムの塗布層上に感光性樹脂層が積層されたものである。感光性樹脂積層体は、感光性樹脂層上に保護フィルムが積層されていてもよいが、材料コスト、生産性、およびドライフィルムレジスト工程の効率化の観点から、保護フィルムは積層されていないことが好ましい。
【0070】
感光性樹脂積層体が保護フィルムを積層しない場合は、支持フィルムは樹脂フィルムの両面に塗布層を設けるか、あるいは樹脂フィルムの塗布層が積層された面とは反対面に離型層を設けることが好ましい。
【0071】
感光性樹脂積層体を構成する感光性樹脂層は、従来から用いられている感光性樹脂層を用いることができる。感光性樹脂層としては、ネガ型感光性樹脂層あるいはポジ型感光性樹脂層が一般的に知られており、本発明の支持フィルムはいずれの感光性樹脂層にも適用できるが、ネガ型感光性樹脂層への適用が有効である。
【0072】
ネガ型感光性樹脂層の基本組成としては、例えば、熱可塑性樹脂、分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する重合性モノマー、および光重合開始剤を必須成分とするものが用いられる。
【0073】
上記熱可塑性樹脂は、使用する現像液に可溶であるかまたは膨潤するものであれば種々のものが使用できる。例えば、アルカリ水溶液を現像液とする場合は、例えばノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸共重合樹脂などが使用できる。これらの中でもポリ(メタ)アクリル酸共重合樹脂が好ましく用いられる。
【0074】
ポリ(メタ)アクリル酸共重合樹脂としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸およびスチレンを共重合成分として含む重合体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸およびアクリル酸n-ブチルを共重合成分として含む重合体、あるいはメタクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルを共重合成分として含む重合体が挙げられる。
【0075】
また、上記熱可塑性樹脂には、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を併用することもできる。
【0076】
上記の熱可塑性樹脂の配合量は、感光性樹脂層の固形分総量100質量%に対して、10~90質量%が好ましく、20~80質量%がより好ましく、30~70質量%が特に好ましい。
【0077】
分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する重合性モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルアクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサメチルジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート等の多官能性モノマーが挙げられる。
【0078】
上記の多官能性モノマーと共に単官能性モノマーを適当量併用することもできる。単官能性モノマーの例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルフタレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0079】
上記のエチレン性不飽和基を有する重合性モノマーの配合割合は、感光性樹脂層の固形分総量100質量%に対して5~80質量%が好ましく、17~70質量%がより好ましく、25~60質量%が特に好ましい。
【0080】
光重合開始剤としては、公知のものを用いることができる。例えば、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾリル二量体、2,2’,5-トリス-(o-クロロフェニル)-4-(3,4-ジメトキシフェニル)-4’,5’-ジフェニルイミダゾリル二量体、2,4-ビス-(o-クロロフェニル)-5-(3,4-ジメトキシフェニル)-ジフェニルイミダゾリル二量体、2,4,5-トリス-(o-クロロフェニル)-ジフェニルイミダゾリル二量体、2-(o-クロロフェニル)-ビス-4,5-(3,4-ジメトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、2,2’-ビス-(2-フルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、2,2’-ビス-(2,3-ジフルオロメチルフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、2,2’-ビス-(2,4-ジフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体などのトリアリールイミダゾリル二量体、ベンゾフェノン、4,4‘-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4‘-ビス(ジブチルアミノ)ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン誘導体、アントラキノン、ナフトキノン等のキノン誘導体、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、ジクロロアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体、フェニルグリオキシレート、α-ヒドロキシイソブチルフェノン、ジベンゾスパロン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパノン、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン等のプロパノン誘導体、トリブロモフェニルスルホン、トリブロモメチルフェニルスルホン等のスルホン誘導体、2,4,6-[トリス(トリクロロメチル)]-1,3,5-トリアジン、2,4-[ビス(トリクロロメチル)]-6-(4′-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-[ビス(トリクロロメチル)]-6-(4′-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-[ビス(トリクロロメチル)]-6-(ピペロニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-[ビス(トリクロロメチル)]-6-(4′-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン誘導体、アクリジンおよび9-フェニルアクリジン等のアクリジン誘導体などが挙げられ、これらは1種または2種以上を併用できる。
【0081】
光重合開始剤の含有量としては、感光性樹脂層の固形分総量100質量%に対して、0.1~10質量%が好ましく、1~8質量%がより好ましく、2~6質量%が特に好ましい。
【0082】
感光性樹脂層は、さらに、導電性フィラーを含有することができる。導電性フィラーとしては、例えば、Ag、Au、Cu、Pt、Pb、Sn、Ni、Al、W、Mo、酸化ルテニウム、Cr、Ti、インジウムが挙げられ、これらの導電フィラーを単独、合金、あるいは混合粉末として用いることができる。上記の導電性フィラーを含有する感光性樹脂層は、感光性導電性ペースト層として適用される。
【0083】
感光性樹脂層は、さらに、必要に応じてその他の添加剤として、熱重合禁止剤、可塑剤、着色剤、変色剤、密着促進剤、酸化防止剤、溶剤、表面張力改質剤、安定剤、連鎖移動剤、消泡剤、難燃剤等の添加剤を適宜添加することができる。
【0084】
感光性樹脂層は、上述した熱可塑性重合体、重合性モノマー、光重合開始剤などを有機溶媒に溶解あるいは分散した塗布液をウェットコーティング法により塗布し、乾燥および必要に応じて硬化させることによって形成することができる。有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、トルエン、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0085】
ウェットコーティング法としては、例えば、リバースコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ダイコート法、スピンコート法、エクストルージョンコート法、カーテンコート法等が挙げられる。
【0086】
感光性樹脂層の厚みは、0.3~20μmが好ましく、0.5~15μmがより好ましく、1.0~10μmが特に好ましい。
【0087】
感光性樹脂積層体を用いた回路基板の作製は、例えば、次のような工程で行われる。
【0088】
i)感光性樹脂積層体の感光性樹脂層の表面と、基板上の銀、銅、インジウム-スズ酸化物などの金属からなる導電性基材層とが密着するようにラミネートする工程。
【0089】
ii)次に、導体回路パターンを焼き付けたフォトマスクを、感光性樹脂積層体上に置き、その上から、感光性樹脂層に紫外線(例えば、365nmにピークを有するI線、405nmにピークを有するH線)を照射して、露光する工程。
【0090】
上記露光工程において、感光性樹脂積層体から支持フィルムを剥離し、感光性樹脂層上に直接フォトマスクを置いて露光してもよい。感光性樹脂層とフォトマスクとの間に支持フィルムが介在しないことによって解像度が向上する。
【0091】
iii)フォトマスクおよび感光性樹脂積層体の支持フィルムを剥離した後、感光性樹脂層を現像する工程。
【0092】
iv)導電性基材層中の露出した部分をエッチングする工程。
【0093】
v)感光性樹脂層を除去する工程。
【0094】
また、上記のようにして作製された回路基板の保護膜として感光性樹脂層を用いることがある。この工程では、感光性樹脂層を回路基板のほぼ全面を覆うように積層した後、回路基板端部とフレキシブルプリントサーキット(FPC)とを接続するための接続部を露出させるために、マスク露光および現像が行われる。詳細を以下に示す。
【0095】
vi)上記作製された回路基板と感光性樹脂積層体の感光性樹脂層表面とが密着するようにラミネートする工程。
【0096】
vii)次に、フォトマスクを感光性樹脂積層体上に置き、その上から、感光性樹脂層に紫外線(例えば、365nmにピークを有するI線、405nmにピークを有するH線)を照射して、露光する工程。
【0097】
上記露光工程において、感光性樹脂積層体から支持フィルムを剥離し、感光性樹脂層上に直接フォトマスクを置いて露光してもよい。感光性樹脂層とフォトマスクとの間に支持フィルムが介在しないことによって解像度が向上する。
【0098】
viii)フォトマスクおよび感光性樹脂積層体の支持フィルムを剥離した後、感光性樹脂層を現像する工程。
【実施例
【0099】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0100】
[測定方法および評価方法]
(1)塗布層の表面自由エネルギーの測定
表面自由エネルギーおよびその各成分(分散力、極性力、水素結合力)の値が既知の3種の液体として、水、ジヨードメタン、1-ブロモナフタレンを用い、23℃、65%RH下で、接触角計DropMasterDM501(協和界面科学(株)製)にて、各液体の塗布層上での接触角を測定した。1つの測定面に対し5回測定を行いその平均値を接触角(θ)とした。この接触角(θ)の値および各液体の既知の値(Panzerによる方法IV(日本接着協会誌第15巻、第3号、第96頁に記載)の数値から、北崎・畑の式より導入される下記式を用いて各成分の値を計算した。
【0101】
(γSd・γLd)1/2+(γSp・γLp)1/2+(γSh・γLh)1/2=γL(1+cosθ)/2
ここで、γLd、γLp、γLhは、それぞれ測定液の分散力、極性力、水素結合力の各成分を表し、θは測定面上での測定液の接触角を表し、また、γSd、γSp、γShは、それぞれ積層膜表面の分散力、極性力、水素結合力の各成分の値を表し、γLは各液体の表面エネルギーを表す。既知の値およびθを上記の式に代入して得られた連立方程式を解くことにより、測定面(塗布層表面)の3成分の値を求めた。
【0102】
下記式の通り、求められた分散力成分の値と極性力成分の値と水素結合力成分の値の和を、表面自由エネルギー(E)の値とした。
【0103】
E=γSd+γSp+γSh
(2)表面粗さSRaの測定
樹脂フィルムおよび塗布層の表面粗さSRaは、光干渉型顕微鏡((株)菱化システム社製、VertScan2.0、型式:R5300 GL-Lite-AC)を用いて、観察モード=Waveモード、面補正=4次、フィルター=530nmWhite、対物レンズ=50倍、測定領域=252.69×189.53μmにて表面形態観察し、求めた。測定は1サンプルにつき5回行い、その平均値から求めた。尚、樹脂フィルムの表面粗さSRaは、塗布層を塗布する面の表面粗さSRaである。
【0104】
(3)塗布層に含有する粒子の平均粒子径の測定
塗布層の断面を電子顕微鏡で観察し、その断面写真から、無作為に選択した30個の粒子のそれぞれの最大長さを計測し、それらを算術平均した値を粒子の平均粒子径とした。
【0105】
(4)感光性樹脂層の塗布性試験
実施例および比較例で作製した支持フィルムの塗布層上に、下記の感光性樹脂層用塗工液を乾燥膜厚が6μmとなるようにワイヤーバーで塗布し、80℃で乾燥して感光性樹脂層を形成し、感光性樹脂積層体を得た。
【0106】
<感光性樹脂層用塗工液>
下記の熱可塑性樹脂60質量部(固形分換算)、下記の重合性モノマー36質量部、下記の光重合開始剤3.5質量部、下記の着色剤0.5質量部をそれぞれメチルエチルケトンに溶解もしくは分散して、固形分濃度が35質量%の塗工液を調製した。
・熱可塑性樹脂;メタクリル酸(25質量%)/メタクリル酸メチル(50質量%)/スチレン(25質量%)の共重合体の41質量%溶液(溶媒組成=メチルエチルケトン/エタノール=(質量比)7/3)、
・重合性モノマー;トリメチロールプロパントリアクリレート16質量部とポリエチレングリコール(数平均分子量600)ジメタクリレート20質量部、
・光重合開始剤;2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾリル二量体3質量部と4,4‘-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン0.5質量部、
・着色剤;メチルバイオレット。
【0107】
<感光性樹脂層の塗布性評価>
上記のようにして作製したサンプルの中央部をサイズ15cm×20cmに切り抜いて評価サンプルとした。評価サンプルの反対面あるいは表面から1000ルクスの光を当て、ピンホールおよびハジキの発生状況を目視で観察した。3枚の評価サンプルを評価し、以下の基準で評価した。
A(良);3枚ともピンホールおよびハジキの発生がない。
B(可);3枚の内の1枚にピンホールまたはハジキが認められる。
C(不可);3枚の内の2枚以上にピンホールまたはハジキが認められる。
【0108】
(5)剥離性評価
上記で作製した感光性樹脂積層体の感光性樹脂層の面を銅基板(シリコンウエハ上に銅めっき膜を有するもの)上に熱ラミネートし、常温で1時間放置後、感光性樹脂積層体の感光性樹脂層から支持フィルムを剥離し、その剥離性を以下に基準で評価した。
A(良);簡単にスムーズに剥離できる場合。
B(可);少し力をかければ剥離できる場合。
C(不可);かなり力をかけなければ剥離できない場合。
【0109】
[樹脂フィルム]
支持フィルムを構成する樹脂フィルムとして下記のポリエステルフィルムを用意した。
【0110】
<ポリエステルフィルム1>
東レ(株)のポリエステルフィルム(“ルミラー(登録商標)” R75X)を用意した。このポリエステルフィルムは、厚みが25μmであり、表面粗さSRaが25nmであった。
【0111】
<ポリエステルフィルム2>
東レ(株)のポリエステルフィルム(“ルミラー(登録商標)” FB40)を用意した。このポリエステルフィルムは、厚みが16μmであり、表面粗さSRaが8nmであった。
【0112】
<ポリエステルフィルム3>
ユニチカ(株)のポリエステルフィルム(“エンブレット(登録商標)”S-38)を用意した。このポリエステルフィルムは、厚みが38μmであり、表面粗さSRaが33nmであった。
【0113】
[実施例1]
以下の要領で支持フィルムを作製した。
【0114】
ポリエステルフィルム1の一方の面に、下記の塗布層用組成物p1をグラビアコーターで塗布し、100℃で予備乾燥後、160℃で加熱乾燥して塗布層を積層した。塗布層の厚みは300nmであった。塗布層の表面自由エネルギーは31mJ/mであり、塗布層の表面粗さSRaは22nmであった。
【0115】
<塗布層用組成物p1>
・シリコーン変性アルキド樹脂;信越化学工業(株)製の商品名「X-62-9022」(シリコーン変性率が1質量%、メラミン架橋剤含有)を100質量部
・酸触媒;p-トルエンスルホン酸(信越化学工業(株)製の商品名「CAT-PC-80」)を1.3質量部
・溶媒;トルエンを245質量部、メチルエチルケトンを165質量部
[実施例2]
塗布層用組成物を下記組成物p2に変更する以外は、実施例1と同様にして支持フィルムを作製した。塗布層の表面自由エネルギーは28mJ/mであり、塗布層の表面粗さSRaは22nmであった。
【0116】
<塗布層用組成物p2>
・シリコーン変性アルキド樹脂;信越化学工業(株)製の商品名「KS-881」(シリコーン変性率が5質量%、メラミン架橋剤含有)を100質量部
・酸触媒;p-トルエンスルホン酸(信越化学工業(株)製の商品名「CAT-PC-80」)を1.3質量部
・溶媒;トルエンを240質量部、メチルエチルケトンを160質量部
[実施例3]
塗布層用組成物を下記組成物p3に変更する以外は、実施例1と同様にして支持フィルムを作製した。塗布層の表面自由エネルギーは25mJ/mであり、塗布層の表面粗さSRaは22nmであった。
【0117】
<塗布層用組成物p3>
・シリコーン変性アルキド樹脂;信越化学工業(株)製の商品名「KS-883」(シリコーン変性率が10質量%、メラミン架橋剤含有)を100質量部
・酸触媒;p-トルエンスルホン酸(信越化学工業(株)製の商品名「CAT-PC-80」)を1.3質量部
・溶媒;トルエンを240質量部、メチルエチルケトンを160質量部
[実施例4]
塗布層用組成物を下記組成物p4に変更する以外は、実施例1と同様にして支持フィルムを作製した。塗布層の表面自由エネルギーは21mJ/mであり、塗布層の表面粗さSRaは22nmであった。
【0118】
<塗布層用組成物p4>
・シリコーン変性アルキド樹脂;信越化学工業(株)製の商品名「KS-882」(シリコーン変性率が20質量%、メラミン架橋剤含有)を100質量部
・酸触媒;p-トルエンスルホン酸(信越化学工業(株)製の商品名「CAT-PC-80」)を1.3質量部
・溶媒;トルエンを240質量部、メチルエチルケトンを160質量部
[実施例5]
塗布層用組成物を下記組成物p5に変更する以外は、実施例1と同様にして支持フィルムを作製した。塗布層の表面自由エネルギーは29mJ/mであり、塗布層の表面粗さSRaは22nmであった。
【0119】
<塗布層用組成物p5>
・シリコーン変性アルキド樹脂;日立化成(株)製の商品名「テスファイン309」(シリコーン変性アルキド樹脂/メラミン架橋剤(質量比)=65/35、シリコーン変性率が3質量%)を100質量部
・酸触媒;p-トルエンスルホン酸(信越化学工業(株)製の商品名「CAT-PC-80」)を1.3質量部
・溶媒;トルエンを420質量部、メチルエチルケトンを280質量部
[実施例6]
塗布層用組成物を下記組成物p6に変更する以外は、実施例1と同様にして支持フィルムを作製した。塗布層の表面自由エネルギーは28mJ/mであり、塗布層の表面粗さSRaは35nmであった。
【0120】
<塗布層用組成物p6>
・シリコーン変性アルキド樹脂;信越化学工業(株)製の商品名「KS-881」(シリコーン変性率が5質量%、メラミン架橋剤含有)を100質量部
・酸触媒;p-トルエンスルホン酸(信越化学工業(株)製の商品名「CAT-PC-80」)を1.3質量部
・粒子;メラミン・シリカ複合粒子(日産化学工業(株)製の“オプトビーズ(登録商標)”500SL、平均粒子径0.5μm)を2質量部
・溶媒;トルエンを240質量部、メチルエチルケトンを160質量部
[実施例7]
実施例2において、ポリエステルフィルム1をポリエステルフィルム2に変更する以外は実施例2と同様にして支持フィルムを作製した。塗布層の表面自由エネルギーは28mJ/mであり、塗布層の表面粗さSRaは7nmであった。
【0121】
[実施例8]
実施例2において、ポリエステルフィルム1をポリエステルフィルム3に変更する以外は実施例2と同様にして支持フィルムを作製した。塗布層の表面自由エネルギーは28mJ/mであり、塗布層の表面粗さSRaは31nmであった。
【0122】
[実施例9]
以下の要領で支持フィルムを作製した。
【0123】
ポリエステルフィルム1の一方の面に、下記のアンカー層用組成物をグラビアコーターで塗布し、120℃で乾燥加熱後、引き続き、上記の塗布層用組成物p2をグラビアコーターで塗布し、100℃で予備乾燥後、160℃で加熱乾燥して、アンカー層と塗布層を積層した。アンカー層の厚みは50nm、塗布層の厚みは300nmであった。塗布層の表面自由エネルギーは28mJ/mであり、塗布層の表面粗さSRaは20nmであった。
【0124】
<アンカー層用組成物>
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製の商品名「BY24-846B」;含有量98質量%)5質量部、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製の商品名「XIAMETER」OFS-6030 SILANE、含有量99質量%)1質量部、アルミニウムキレートとしてビス(エチルアセトアセテート)(2,4-ペンタンジオネート)アルミニウム(東レ・ダウコーニング(株)製の商品名「BY24-846E」;含有量38質量%)2質量部をトルエン50質量部とイソプロピルアルコール50質量部の混合溶媒に添加混合して調製した。
【0125】
[比較例1]
ポリエステルフィルム1の一方の面に、下記の塗布層用組成物p7をグラビアコーターで塗布し、100℃で予備乾燥後、160℃で加熱乾燥して塗布層を積層した。この塗布層の厚みは300nmであった。塗布層の表面自由エネルギーは19mJ/mであり、塗布層の表面粗さSRaは22nmであった。
【0126】
<塗布層用組成物p7>
付加反応型の硬化性シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング(株)製の商品名「LTC750A」)40質量部、硬化剤であるPL-50T(信越化学工業(株)製)0.4質量部をトルエン500質量部、n-ヘプタン500質量部に混合した。
【0127】
[比較例2]
塗布層用組成物を下記組成物p8に変更する以外は、比較例1と同様にして支持フィルムを作製した。塗布層の表面自由エネルギーは45mJ/mであり、塗布層の表面粗さSRaは20nmであった。
【0128】
<塗布層用組成物p8>
メラミン系樹脂((株)三羽研究所製の商品名「RP-50」)20質量部、酸性リン酸エステル(城北化学工業(株)製の商品名「JP-502」)5質量部を、トルエン50質量部およびシクロヘキサノン50質量部に混合した。
【0129】
[比較例3]
塗布層用組成物を下記組成物p9に変更する以外は、比較例1と同様にして支持フィルムを作製した。塗布層の表面自由エネルギーは36mJ/mであり、塗布層の表面粗さSRaは22nmであった。
【0130】
<塗布層組成物p9>
アルキル変性アルキド樹脂とメラミンとの混合物(日立化成(株)の「テスファイン」305)を固形分換算で10質量部、酸触媒としてp-トルエンスルホン酸(日立化成(株)の「ドライヤー」900)を固形分換算で0.15質量部を、トルエン45質量部に混合した。
【0131】
<評価>
上記で得られた支持フィルムについて、評価した結果を表1に示す。
【0132】
【表1】