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特許7337561アナログスイッチ回路、ボリウム回路、半導体集積回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】アナログスイッチ回路、ボリウム回路、半導体集積回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/00 20060101AFI20230828BHJP
   H03H 7/25 20060101ALI20230828BHJP
   H03K 17/14 20060101ALI20230828BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
H03K17/00 D
H03H7/25
H03K17/14
H03K17/687 G
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019117292
(22)【出願日】2019-06-25
(65)【公開番号】P2021005750
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】酒井 光輝
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-84761(JP,A)
【文献】特開2009-200825(JP,A)
【文献】特公昭62-42408(JP,B2)
【文献】特開2004-357169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K17/00
H03K17/14
H03K17/16
H03K17/687-17/695
H03G1/00-7/08
H03H7/24-7/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御信号に応じてオン状態とオフ状態が切り替え可能なアナログスイッチ回路であって、
入力電圧を受けるメイン入力端子と、
出力端子と、
上側電源電圧を受ける上側電源端子と、
下側電源電圧を受ける下側電源端子と、
前記メイン入力端子と前記出力端子の間に並列に設けられたメインNMOSトランジスタおよびメインPMOSトランジスタと、
前記上側電源電圧と前記入力電圧に応じたハイサイド電圧および前記入力電圧と前記下側電源電圧に応じたローサイド電圧を生成する電圧生成回路を含み、前記ハイサイド電圧および前記ローサイド電圧にもとづいて、前記メインNMOSトランジスタおよび前記メインPMOSトランジスタそれぞれのゲートおよびバックゲートを制御可能に構成されるコントローラと、
を備え、
前記ハイサイド電圧は、前記上側電源電圧と前記入力電圧を分圧した電圧であり、
前記ローサイド電圧は、前記入力電圧と前記下側電源電圧を分圧した電圧であることを特徴とするアナログスイッチ回路。
【請求項2】
制御信号に応じてオン状態とオフ状態が切り替え可能なアナログスイッチ回路であって、
入力電圧を受けるメイン入力端子と、
出力端子と、
上側電源電圧を受ける上側電源端子と、
下側電源電圧を受ける下側電源端子と、
前記メイン入力端子と前記出力端子の間に並列に設けられたメインNMOSトランジスタおよびメインPMOSトランジスタと、
前記上側電源電圧と前記入力電圧に応じたハイサイド電圧および前記入力電圧と前記下側電源電圧に応じたローサイド電圧を生成する電圧生成回路を含み、前記ハイサイド電圧および前記ローサイド電圧にもとづいて、前記メインNMOSトランジスタおよび前記メインPMOSトランジスタそれぞれのゲートおよびバックゲートを制御可能に構成されるコントローラと、
を備え、
前記ハイサイド電圧は、前記上側電源電圧を、前記入力電圧との差分に応じてオフセットした電圧であり、
前記ローサイド電圧は、前記下側電源電圧を、前記入力電圧との差分に応じてオフセットした電圧であることを特徴とするアナログスイッチ回路。
【請求項3】
制御信号に応じてオン状態とオフ状態が切り替え可能なアナログスイッチ回路であって、
入力電圧を受けるメイン入力端子と、
出力端子と、
上側電源電圧を受ける上側電源端子と、
下側電源電圧を受ける下側電源端子と、
前記メイン入力端子と前記出力端子の間に並列に設けられたメインNMOSトランジスタおよびメインPMOSトランジスタと、
前記上側電源電圧と前記入力電圧に応じたハイサイド電圧および前記入力電圧と前記下側電源電圧に応じたローサイド電圧を生成する電圧生成回路を含み、前記ハイサイド電圧および前記ローサイド電圧にもとづいて、前記メインNMOSトランジスタおよび前記メインPMOSトランジスタそれぞれのゲートおよびバックゲートを制御可能に構成されるコントローラと、
を備え、
前記ハイサイド電圧をVH、前記ローサイド電圧をVL、前記上側電源電圧をV DD 、前記下側電源電圧をV SS 、前記入力電圧をV IN とし、a ,a ,b ,b を非ゼロの定数、V C1 ,V C2 を定数とするとき、
VH=a ・V IN +b ・V DD +Vc
VL=a ・V IN +b ・V SS +Vc
を満たすことを特徴とするアナログスイッチ回路。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記制御信号が第1レベルのときに、前記メインNMOSトランジスタのゲートに前記ハイサイド電圧を、前記メインPMOSトランジスタのゲートに前記ローサイド電圧を印加し、
前記制御信号が第2レベルのときに、前記メインNMOSトランジスタのゲートに前記ローサイド電圧を、前記メインPMOSトランジスタのゲートに前記ハイサイド電圧を印加することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のアナログスイッチ回路。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記メインNMOSトランジスタのバックゲートに、前記ローサイド電圧を印加し、
前記メインPMOSトランジスタのバックゲートに、前記ハイサイド電圧を印加することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のアナログスイッチ回路。
【請求項6】
前記上側電源電圧と前記入力電圧の電圧差が所定の第1しきい値より小さいときに、前記ハイサイド電圧を、前記入力電圧に依存しない第1固定電圧となり
前記下側電源電圧と前記入力電圧の電圧差が所定の第2しきい値より小さいときに、前記ローサイド電圧を、前記入力電圧に依存しない第2固定電圧となることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のアナログスイッチ回路。
【請求項7】
前記第1固定電圧は前記上側電源電圧であり、
前記第2固定電圧は前記下側電源電圧であることを特徴とする請求項に記載のアナログスイッチ回路。
【請求項8】
制御信号に応じてオン状態とオフ状態が切り替え可能なアナログスイッチ回路であって、
入力電圧を受けるメイン入力端子と、
出力端子と、
上側電源電圧を受ける上側電源端子と、
下側電源電圧を受ける下側電源端子と、
前記メイン入力端子と前記出力端子の間に並列に設けられたメインNMOSトランジスタおよびメインPMOSトランジスタと、
前記上側電源電圧と前記入力電圧に応じたハイサイド電圧および前記入力電圧と前記下側電源電圧に応じたローサイド電圧を生成する電圧生成回路を含み、前記ハイサイド電圧および前記ローサイド電圧にもとづいて、前記メインNMOSトランジスタおよび前記メインPMOSトランジスタそれぞれのゲートおよびバックゲートを制御可能に構成されるコントローラと、
を備え、
前記電圧生成回路は、
前記上側電源端子と前記上側電源電圧が発生する第1出力ノードの間に設けられる第1抵抗と、
前記上側電源端子と前記メイン入力端子の間に直列に設けられる第2抵抗および第3抵抗と、
ベースが前記第2抵抗と前記第3抵抗を接続する第1内部ノードに接続され、コレクタが前記第1出力ノードに接続されるNPN型の第1トランジスタと、
前記第1トランジスタのエミッタと、前記メイン入力端子の間に設けられる第4抵抗と、
前記下側電源端子と前記ローサイド電圧が発生する第2出力ノードの間に設けられる第5抵抗と、
前記下側電源端子と前記メイン入力端子の間に直列に設けられる第6抵抗および第7抵抗と、
ベースが前記第6抵抗と前記第7抵抗を接続する第2内部ノードに接続され、コレクタが前記第2出力ノードに接続されるPNP型の第2トランジスタと、
前記第2トランジスタのエミッタと、前記メイン入力端子の間に設けられる第8抵抗と、
を含むことを特徴とするアナログスイッチ回路。
【請求項9】
前記第1トランジスタおよび前記第2トランジスタは、ダーリントントランジスタであることを特徴とする請求項に記載のアナログスイッチ回路。
【請求項10】
制御信号に応じてオン状態とオフ状態が切り替え可能なアナログスイッチ回路であって、
入力電圧を受けるメイン入力端子と、
出力端子と、
上側電源電圧を受ける上側電源端子と、
下側電源電圧を受ける下側電源端子と、
前記メイン入力端子と前記出力端子の間に並列に設けられたメインNMOSトランジスタおよびメインPMOSトランジスタと、
前記上側電源電圧と前記入力電圧に応じたハイサイド電圧および前記入力電圧と前記下側電源電圧に応じたローサイド電圧を生成する電圧生成回路を含み、前記ハイサイド電圧および前記ローサイド電圧にもとづいて、前記メインNMOSトランジスタおよび前記メインPMOSトランジスタそれぞれのゲートおよびバックゲートを制御可能に構成されるコントローラと、
を備え、
前記電圧生成回路は、
一端が前記上側電源端子に接続される第1抵抗と、
前記上側電源電圧と前記入力電圧の差分に応じた電流を、前記第1抵抗に流す第1電流源と、
一端が前記下側電源端子に接続される第2抵抗と、
前記入力電圧と前記下側電源電圧の差分に応じた電流を、前記第2抵抗に流す第2電流源と、
を含み、
前記第1抵抗の他端に前記ハイサイド電圧が発生し、
前記第2抵抗の他端に前記ローサイド電圧が発生することを特徴とするアナログスイッチ回路。
【請求項11】
前記第1電流源は、前記上側電源電圧が所定の第1しきい値より低くなるとオフとなり、
前記第2電流源は、前記下側電源電圧が所定の第2しきい値より低くなるとオフとなることを特徴とする請求項10に記載のアナログスイッチ回路。
【請求項12】
制御信号に応じて遮断、導通が切り替え可能なアナログスイッチ回路であって、
入力電圧を受けるメイン入力端子と、
出力端子と、
上側電源電圧を受ける上側電源端子と、
下側電源電圧を受ける下側電源端子と、
前記メイン入力端子と前記出力端子の間に並列に設けられたメインNMOSトランジスタおよびメインPMOSトランジスタと、
前記メインNMOSトランジスタのゲートに、ハイサイド電圧とローサイド電圧のうち前記制御信号に応じた一方を印加する第1ドライバと、
前記メインPMOSトランジスタのゲートに、前記ハイサイド電圧と前記ローサイド電圧のうち前記制御信号に応じた他方を印加する第2ドライバと、
前記上側電源端子と前記ハイサイド電圧が発生する第1出力ノードの間に設けられる第1抵抗と、
前記上側電源端子と前記メイン入力端子の間に直列に設けられる第2抵抗および第3抵抗と、
ベースが前記第2抵抗と前記第3抵抗を接続する第1内部ノードに接続され、コレクタが前記第1出力ノードに接続されるNPN型の第1トランジスタと、
前記第1トランジスタのエミッタと、前記メイン入力端子の間に設けられる第4抵抗と、
前記下側電源端子と前記ローサイド電圧が発生する第2出力ノードの間に設けられる第5抵抗と、
前記下側電源端子と前記メイン入力端子の間に直列に設けられる第6抵抗および第7抵抗と、
ベースが前記第6抵抗と前記第7抵抗を接続する第2内部ノードに接続され、コレクタが前記第2出力ノードに接続されるPNP型の第2トランジスタと、
前記第2トランジスタのエミッタと、前記メイン入力端子の間に設けられる第8抵抗と、
を備えることを特徴とするアナログスイッチ回路。
【請求項13】
それぞれが前記入力電圧を分圧した電圧を受ける少なくともひとつのサブメイン入力端子と、
それぞれが前記少なくともひとつのサブメイン入力端子の対応するひとつと前記出力端子の間に設けられる、少なくともひとつのサブNMOSトランジスタと、
それぞれが前記少なくともひとつのサブメイン入力端子の対応するひとつと前記出力端子の間に設けられる、少なくともひとつのサブPMOSトランジスタと、
をさらに備え、
前記少なくともひとつのサブNMOSトランジスタのバックゲートに、前記ローサイド電圧が印加され、前記少なくともひとつのサブPMOSトランジスタのバックゲートに、前記ハイサイド電圧が印加されることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載のアナログスイッチ回路。
【請求項14】
直列に接続される複数の抵抗素子を含み、一端に入力信号が印加される抵抗分圧回路と、
前記抵抗分圧回路の複数のタップに対応して設けられる複数のアナログスイッチ回路と、
前記複数のアナログスイッチ回路を制御するボリウムコントローラと、
を備え、前記複数のアナログスイッチ回路の少なくともひとつは、請求項1から12のいずれかに記載のアナログスイッチ回路であることを特徴とするボリウム回路。
【請求項15】
直列に接続される複数の抵抗素子を含み、一端に入力信号が印加される抵抗分圧回路と、
前記抵抗分圧回路の複数のタップの電圧を受ける請求項13に記載のアナログスイッチ回路と、
を備えることを特徴とするボリウム回路。
【請求項16】
請求項14または15に記載のボリウム回路を備えることを特徴とする半導体集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログスイッチ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
アナログ信号を扱う電子回路には、アナログ信号の伝達、遮断を切り替えるためのアナログスイッチが用いられる。アナログスイッチはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)スイッチあるいはトランスファゲートとも称される。図1は、アナログスイッチ10の基本構成を示す図である。アナログスイッチ10は、並列接続されるNMOS(N-channel MOS)トランジスタ12とPMOS(P-channel MOS)トランジスタ14を含む。制御信号CNTがハイのとき、NMOSトランジスタ12のゲートに電源電圧VDDが、PMOSトランジスタ14のゲートに接地電圧VSSが印加され、アナログスイッチ10がオン状態となる。反対に、制御信号CNTがローのとき、NMOSトランジスタ12のゲートに接地電圧VSSが、PMOSトランジスタ14のゲートに電源電圧VDDが印加され、アナログスイッチ10がオフ状態となる。非特許文献1には、入力端子INと出力端子OUTを入れ替え可能なアナログスイッチが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-50289号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】新日本無線、4回路アナログスイッチデータシート、[online]、インターネット<URL:https://www.njr.co.jp/products/semicon/PDF/NJU4066B_J.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高電圧が入力されるアプリケーションでは、CMOSスイッチを、高耐圧素子で構成する必要がある。ところが高耐圧プロセスは、低耐圧プロセスに比べてコストが高くなり、またトランジスタの集積度が低下する。
【0006】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、NMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタの耐圧よりも高い入力電圧を伝送可能なアナログスイッチ回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、制御信号に応じてオン、オフが切り替え可能なアナログスイッチ回路に関する。アナログスイッチ回路は、入力電圧を受けるメイン入力端子と、出力端子と、上側電源電圧を受ける上側電源端子と、下側電源電圧を受ける下側電源端子と、メイン入力端子と出力端子の間に並列に設けられたメインNMOSトランジスタおよびメインPMOSトランジスタと、上側電源電圧と入力電圧に応じたハイサイド電圧、または入力電圧と下側電源電圧に応じたローサイド電圧を生成する電圧生成回路を含み、ハイサイド電圧およびローサイド電圧にもとづいて、メインNMOSトランジスタおよびメインPMOSトランジスタそれぞれのゲートおよびバックゲートを制御可能に構成されるコントローラと、を備える。
【0008】
本発明の別の態様もまた、アナログスイッチ回路である。このアナログスイッチ回路は、入力電圧を受けるメイン入力端子と、出力端子と、上側電源電圧を受ける上側電源端子と、下側電源電圧を受ける下側電源端子と、メイン入力端子と出力端子の間に並列に設けられたNMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタと、NMOSトランジスタのゲートに、ハイサイド電圧とローサイド電圧のうち制御信号に応じた一方を印加する第1ドライバと、PMOSトランジスタのゲートに、ハイサイド電圧とローサイド電圧のうち制御信号に応じた他方を印加する第2ドライバと、上側電源端子とハイサイド電圧が発生する第1出力ノードの間に設けられる第1抵抗と、上側電源端子と入力端子の間に直列に設けられる第2抵抗および第3抵抗と、ベースが第2抵抗と第3抵抗を接続する第1内部ノードに接続され、コレクタが第1出力ノードに接続されるNPN型の第1トランジスタと、第1トランジスタのエミッタと、入力端子の間に設けられる第4抵抗と、下側電源端子とローサイド電圧が発生する第2出力ノードの間に設けられる第5抵抗と、下側電源端子と入力端子の間に直列に設けられる第6抵抗および第7抵抗と、ベースが第6抵抗と第7抵抗を接続する第2内部ノードに接続され、コレクタが第2出力ノードに接続されるPNP型の第2トランジスタと、第2トランジスタのエミッタと、入力端子の間に設けられる第8抵抗と、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のある態様によれば、NMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタの耐圧よりも高い入力電圧を伝送でき、また耐圧より大きい電源電圧下で使用できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】アナログスイッチの基本構成を示す図である。
図2】実施の形態に係るアナログスイッチ回路の回路図である。
図3】アナログスイッチ回路の構成例を示す回路図である。
図4図4(a)、(b)は、図3のアナログスイッチ回路の動作を説明する図である。
図5】VIN=0Vのときのハイサイド電圧VHおよびローサイド電圧VLそれぞれの、電源電圧VDD、VSSに対する依存性を示す図である。
図6】実施例1に係るコントローラの回路図である。
図7図7(a)~(d)は、図6のコントローラを用いたときのアナログスイッチ回路のオン抵抗を示す図である。
図8】実施例2に係るコントローラの回路図である。
図9図9(a)~(c)は、図8のコントローラの動作を説明する図である。
図10図10(a)~(d)は、図8のコントローラを用いたときのアナログスイッチ回路のオン抵抗を示す図である。
図11】実施例3に係るコントローラの回路図である。
図12】アナログスイッチ回路を備えるボリウム回路の回路図である。
図13】実施例4に係るマルチプレクサの回路図である。
図14】アナログスイッチ回路を備えるボリウム回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
本明細書において、「部材Aが、部材Bに接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0014】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0015】
図2は、実施の形態に係るアナログスイッチ回路300の回路図である。アナログスイッチ回路300は、入力端子IN、出力端子OUT、制御端子CNT、上側電源端子VDD、下側電源端子VSSを有する。上側電源端子VDD、下側電源端子VSSにはそれぞれ、上側電源電圧VDD、下側電源電圧VSSが供給される。たとえば上側電源電圧VDDは正の電源電圧であり、下側電源電圧VSSは負の電源電圧である。
【0016】
入力端子INには、アナログの入力電圧VINが入力される。基本的には、入力電圧VINは、VDD~VSSの電圧範囲で変動する。
SS≦VIN≦VDD
【0017】
アナログスイッチ回路300は、制御端子CNTに第1レベル(たとえばハイ)が入力されるとき、オン状態となり、制御端子CNTに第2レベル(たとえばロー)が入力されるとき、オフ状態となる。オン状態において、出力端子OUTには入力電圧VINと等しい電圧VOUTが発生し、オフ状態において出力端子OUTはハイインピーダンスとなる。以下、制御端子CNTに与えられる信号を、制御信号CNTと称する。
【0018】
アナログスイッチ回路300は、メインNMOSトランジスタ(以下、単にNMOSトランジスタともいう)302、メインPMOSトランジスタ(以下、単にPMOSトランジスタともいう)304、コントローラ310を備える。NMOSトランジスタ302およびPMOSトランジスタ304は、入力端子INと出力端子OUTの間に並列に設けられる。
【0019】
コントローラ310は、上側電源電圧VDDと入力電圧VINに応じたハイサイド電圧VHと、入力電圧VINと下側電源電圧VSSに応じたローサイド電圧VLを生成する電圧生成回路320を備える。ハイサイド電圧VH、ローサイド電圧VLはそれぞれ、以下の式を満たす。
IN≦VH≦VDD
SS≦VL≦VIN
【0020】
コントローラ310は、ハイサイド電圧VHとローサイド電圧VLにもとづいて、NMOSトランジスタ302およびPMOSトランジスタ304それぞれのゲートおよびバックゲートを制御可能に構成される。
【0021】
たとえばコントローラ310は、オン状態において、NMOSトランジスタ302のゲートにハイサイド電圧VHを、PMOSトランジスタ304のゲートにローサイド電圧VLを印加する。またコントローラ310は、オフ状態において、NMOSトランジスタ302のゲートにローサイド電圧VLを、PMOSトランジスタ304のゲートにハイサイド電圧VHを印加する。
【0022】
またコントローラ310は、オン状態、オフ状態の両方において、NMOSトランジスタ302のバックゲートにローサイド電圧VLを固定的に印加し、PMOSトランジスタ304のバックゲートにハイサイド電圧VHを固定的に印加するとよい。
【0023】
以上がアナログスイッチ回路300の基本構成である。続いてアナログスイッチ回路300の具体的な構成例を説明する。
【0024】
図3は、アナログスイッチ回路300の構成例を示す回路図である。コントローラ310は、電圧生成回路320およびドライバ330を備える。
【0025】
電圧生成回路320は、上側電源電圧VDD、下側電源電圧VSSおよび入力電圧VINにもとづいて、ハイサイド電圧VHおよびローサイド電圧VLを生成する。電圧生成回路320は、ハイサイド電圧生成回路322とローサイド電圧生成回路324を含む。
【0026】
ハイサイド電圧生成回路322は、上側電源電圧VDDと入力電圧VINにもとづいて、ハイサイド電圧VHを生成する。ローサイド電圧生成回路324は、下側電源電圧VSSと入力電圧VINにもとづいて、ローサイド電圧VLを生成する。
【0027】
たとえばハイサイド電圧生成回路322は、上側電源電圧VDDと入力電圧VINを分圧して、ハイサイド電圧VHを生成してもよい。同様にローサイド電圧生成回路324は、入力電圧VINと下側電源電圧VSSを分圧して、ローサイド電圧VLを生成してもよい。この場合のハイサイド電圧VH、ローサイド電圧VLは式(1)、(2)で表される。
VH=(α×VDD+β×VIN)/(α+β) …(1)
VL=(γ×VIN+δ×VSS)/(γ+δ) …(2)
α、β、γ、δは定数である。α=δ、β=γとしてもよい。
【0028】
式(1)、(2)は定数項Vc,Vcを含んでもよい。
VH=(α×VDD+β×VIN+Vc)/(α+β) …(1’)
VL=(γ×VIN+δ×VSS+Vc)/(γ+δ) …(2’)
【0029】
あるいはハイサイド電圧生成回路322は、上側電源電圧VDDを、入力電圧VINとの差分(VDD-VIN)に応じて低電位側にオフセットすることにより、ハイサイド電圧VHを生成してもよい。同様にローサイド電圧生成回路324は、下側電源電圧VSSを、入力電圧VINとの差分(VIN-VSS)に応じて高電位側にオフセットすることにより、ローサイド電圧VLを生成してもよい。この場合のハイサイド電圧VH、ローサイド電圧VLは式(3)、(4)で表される。
VH=VDD-m(VDD-VIN) …(3)
VL=VSS+n(VIN-VSS) …(4)
m、nは定数である。
【0030】
式(3)、(4)は定数項Vc,Vcを含んでもよい。
VH=VDD-m(VDD-VIN)+Vc …(3’)
VL=VSS+n(VIN-VSS)+Vc …(4’)
【0031】
ドライバ330には、ハイサイド電圧VHとローサイド電圧VLが供給されている。ドライバ330は、制御信号CNTがオンレベル(たとえばハイ)のときにNMOSトランジスタ302のゲートにハイサイド電圧VHを、PMOSトランジスタ304のゲートにローサイド電圧VLを印加する。またドライバ330は、制御信号CNTがオフレベル(たとえばロー)のときにNMOSトランジスタ302のゲートにローサイド電圧VLを、PMOSトランジスタ304のゲートにハイサイド電圧VHを印加する。
【0032】
ドライバ330の構成は特に限定されないが、たとえば第1ドライバ332および第2ドライバ334を含む。第1ドライバ332は、ハイサイド電圧VHとローサイド電圧VLのうち、制御信号CNTに応じた一方を出力可能に構成される。第2ドライバ334は、ハイサイド電圧VHとローサイド電圧VLのうち、制御信号CNTに応じた他方を出力可能に構成される。
【0033】
第1ドライバ332および第2ドライバ334は、バッファあるいはインバータを用いて構成することができる。図3の構成例において、第2ドライバ334は、制御信号CNTを反転し、PMOSトランジスタ304のゲート信号VGPを生成する。第1ドライバ332は、第2ドライバ334の出力VGPを反転し、NMOSトランジスタ302のゲート信号VGNを生成する。
【0034】
式(1’)、(3’)を一般化すると、式(5)を得る。同様に式(2’)、(4’)を一般化すると、式(6)を得る。
VH=a・VIN+b・VDD+Vc…(5)
VL=a・VIN+b・VSS+Vc…(6)
【0035】
パラメータa,b,Vcは、想定される電源電圧VDDと入力電圧VINの組み合わせにおいて、NMOSトランジスタ302のゲート-ドレイン間電圧(ゲート-ソース間電圧)、ドレイン-バックゲート間電圧(ソース-バックゲート間電圧)が、NMOSトランジスタの耐圧を超えないように決定される。
【0036】
同様に、パラメータa,b,Vcは、想定される電源電圧VSSと入力電圧VINの組み合わせにおいて、PMOSトランジスタ304のゲート-ソース間電圧(ゲート-ドレイン間電圧)、ソース-バックゲート間電圧(ドレイン-バックゲート間電圧)が、PMOSトランジスタの耐圧を超えないように決定される。なお、ここでいう耐圧とは、端子間の耐圧であり、対基板間の耐圧ではないことに留意されたい。端子間電圧を向上させるためには高耐圧が必要である一方で、対基板耐圧は、低耐圧プロセスであっても半導体基板(エピ基板)に分離絶縁膜を埋め込むことにより比較的容易に高めることができる。
【0037】
以上がアナログスイッチ回路300の構成である。続いてその動作を説明する。
【0038】
図4(a)、(b)は、図3のアナログスイッチ回路300の動作を説明する図である。ここでは式(5)、(6)においてVC1=VC2=0、a=a=1としている。図4(a)には、VDD=20V,VSS=-20Vのときの、ハイサイド電圧VHおよびローサイド電圧VLそれぞれの、入力電圧VINに対する依存性が示される。図4(b)には、VDD=10V,VSS=-10Vのときの、ハイサイド電圧VHおよびローサイド電圧VLそれぞれの、入力電圧VINに対する依存性が示される。
【0039】
図5は、VIN=0Vのときのハイサイド電圧VHおよびローサイド電圧VLそれぞれの、電源電圧VDD、VSSに対する依存性を示す図である。
【0040】
以上がアナログスイッチ回路300の動作である。このアナログスイッチ回路300によれば、CMOSスイッチのゲート、バックゲートに、入力電圧VINおよび上側電源電圧VDDに応じたハイサイド電圧と、入力電圧VINおよび下側電源電圧VSSに応じたローサイド電圧VLを印加することにより、PMOSトランジスタ、NMOSトランジスタそれぞれにおいて、ゲート-ソース間電圧、ゲート-ドレイン間電圧、ソース-バックゲート間、ドレイン-バックゲート間に印加される電圧を抑制することができる。
【0041】
たとえば図4(a)の例では、±20Vの電源電圧の環境下であっても、端子間電圧は14V以下に抑えられているため、NMOSトランジスタ302、PMOSトランジスタ304は15V程度で足りることとなる。
【0042】
続いてコントローラ310の具体的な構成例を説明する。
【0043】
(実施例1)
図6は、実施例1に係るコントローラ310Aの回路図である。コントローラ310Aは、ハイサイド電圧生成回路322A、ローサイド電圧生成回路324Aを含む。最も簡易には、ハイサイド電圧生成回路322A、ローサイド電圧生成回路324Aは、抵抗分圧回路で構成することができる。ハイサイド電圧生成回路322Aは、抵抗R11,R12を含む。ハイサイド電圧VHは、式(7)で表される。
VH=(R12・VDD+R11・VIN)/(R11+R12) …(7)
式(5)に対応付けると、
=R11/(R11+R12)
=R12/(R11+R12)
Vc=0
となる。
【0044】
同様にローサイド電圧生成回路324Aは抵抗R13,R14を含み、ローサイド電圧VLは式(8)で表される。
VH=(R14・VSS+R13・VIN)/(R13+R14) …(8)
式(6)に対応付けると、
=R13/(R13+R14)
=R14/(R13+R14)
Vc=0
となる。
【0045】
図7(a)~(d)は、図6のコントローラ310Aを用いたときのアナログスイッチ回路300のオン抵抗を示す図である。図7(a)~(d)は、電源電圧VDDおよびVSSが、±22V,±7.5V,±5V,±2.5Vのときのオン抵抗を示す。
【0046】
図7(a)~(d)から分かるように、図6の実施例1の構成では、電源電圧VDD(VSS)が小さくなったときに、アナログスイッチのオン抵抗が大きくなる。低オン抵抗が要求される用途では、アナログスイッチ回路300を、低電源電圧の状態で使用することが難しくなる。実施例2では、低電源圧状態でも使用可能な回路について説明する。
【0047】
(実施例2)
図8は、実施例2に係るコントローラ310Bの回路図である。コントローラ310Bは、上側電源電圧VDDと入力電圧VINの電圧差が所定の第1しきい値より小さいときに、ハイサイド電圧VHを、入力電圧VINに依存しない固定電圧VH_FIXとする。この固定電圧VH_FIXは、上側電源電圧VDDとすることが望ましい。同様にコントローラ310Bは、下側電源電圧VSSと入力電圧VINの電圧差が所定の第2しきい値より小さいときに、ローサイド電圧VLを、入力電圧VINに依存しない固定電圧VL_FIXとする。この固定電圧VL_FIXは、下側電源電圧VSSとすることが望ましい。
【0048】
より詳しくは、コントローラ310Bは、ハイサイド電圧生成回路322Bおよびローサイド電圧生成回路324Bを含む。
【0049】
ハイサイド電圧生成回路322Bは、第1抵抗R21~第4抵抗R24、第1トランジスタQ21を含む。第1抵抗R21は、上側電源端子VDDとハイサイド電圧VHが発生する第1出力ノードNO1の間に設けられる。
【0050】
第2抵抗R22および第3抵抗R23は、上側電源端子VDDと入力端子INの間に直列に設けられる。NPN型の第1トランジスタQ21は、ベースが第2抵抗R22と第3抵抗R23を接続する第1内部ノードN21に接続され、コレクタが第1出力ノードNO1に接続される。トランジスタQ21は、ダーリントントランジスタであってもよい。第4抵抗R24は、第1トランジスタQ21のエミッタと、入力端子INの間に設けられる。
【0051】
第5抵抗R25は、下側電源端子VSSとローサイド電圧が発生する第2出力ノードNO2の間に設けられる。第6抵抗R26および第7抵抗R27は、下側電源端子VSSと入力端子INの間に直列に設けられる。PNP型の第2トランジスタQ22は、ベースが第6抵抗R26と第7抵抗R27を接続する第2内部ノードN22に接続され、コレクタが第2出力ノードNO2に接続される。第8抵抗R28は、第2トランジスタQ22のエミッタと、入力端子INの間に設けられる。
【0052】
ハイサイド電圧生成回路322Bの動作を説明する。第1内部ノードN21には、上側電源電圧VDDと入力電圧VINを分圧した第1電圧Vが発生する。
=(VDD×R23+R22×VIN)/(R22+R23) …(9)
【0053】
第1トランジスタQ21はエミッタフォロアとして動作し、第1トランジスタQ21のエミッタ電圧VE1は式(10)で表される。VBE(Q1)は第1トランジスタQ21のベースエミッタ間電圧である。
E1=V-VBE(Q1) …(10)
【0054】
第4抵抗R24に流れる電流、すなわち第1トランジスタQ21のコレクタ電流Ic1は、式(11)で表される。
Ic1=(VE1-VIN)/R24 …(11)
【0055】
このコレクタ電流Ic1が第1抵抗R21に流れると電圧降下が発生する。ハイサイド電圧VHは式(12)で表される。
VH=VDD-R21×Ic1 …(12)
【0056】
式(12)に、式(9)~(11)を代入して整理すると、式(13)を得る。
【数1】
【0057】
ここで、第1トランジスタQ21は、そのベースエミッタ間電圧が、しきい値VBE(Q1)より小さくなるとオフとなり、電流Ic1は流れなくなる。この状態は上側電源電圧VDDと入力電圧VINの電位差が、とあるしきい値より小さくなったとき、具体的には、(VDD-VIN)×R23/(R22+R23)<VBE(Q1)となったときに発生する。このときのハイサイド電圧VHは、入力電圧VINには依存せず、上側電源電圧VDDと等しい。
【0058】
ローサイド電圧生成回路324Bもハイサイド電圧生成回路322Bと同様に動作する。第2内部ノードN22には、下側電源電圧VSSと入力電圧VINを分圧した第2電圧Vが発生する。
=(VSS×R27+R26×VIN)/(R26+R27) …(14)
【0059】
第2トランジスタQ22はエミッタフォロアとして動作し、第2トランジスタQ22のエミッタ電圧VE2は式(15)で表される。VBE(Q2)は第2トランジスタQ22のベースエミッタ間電圧である。
E2=V+VBE(Q2) …(15)
【0060】
第8抵抗R28に流れる電流、すなわち第2トランジスタQ22のコレクタ電流Ic2は、式(16)で表される。
Ic2=(VIN-VE2)/R28 …(16)
【0061】
このコレクタ電流Ic2が第5抵抗R25に流れると電圧降下が発生する。ローサイド電圧VLは式(17)で表される。
VL=VSS+R25×Ic2 …(17)
【0062】
式(17)に、式(14)~(16)を代入して整理すると、式(18)を得る。
【0063】
【数2】
【0064】
ここで、第2トランジスタQ22は、そのベースエミッタ間電圧が、しきい値VBE(Q2)より小さくなるとオフとなり、電流Ic2は流れなくなる。この状態は、下側電源電圧VSSと入力電圧VINの電位差が、とあるしきい値より小さくなったとき、具体的には、(VIN-VSS)×R27/(R26+R27)<VBE(Q2)となったときに発生する。このときのローサイド電圧VLは、入力電圧VINには依存せず、下側電源電圧VSSと等しくなる。
【0065】
第1トランジスタQ21および第2トランジスタQ22を、ダーリントントランジスタとすることにより、その段数によって、定電圧VBE(Q1)、VBE(Q2)を適切に設定することができる。
【0066】
図9(a)~(c)は、図8のコントローラ310Bの動作を説明する図である。図9(a)、(b)は、電源電圧VDD(VSS)を一定し、正弦波の入力電圧VINを入力したときの、ハイレベル電圧VHおよびローレベル電圧VLを示す。図9(a)では、電源電圧VDD(VSS)が十分に大きく、電流Ic1,Ic2が流れている状態を示す。この状態では、ハイサイド電圧VH、ローサイド電圧VLは、入力電圧VINに追従して変動する。図9(b)は、電源電圧VDD(VSS)が小さくなり、電流Ic1,Ic2が流れないときの状態を示す。この状態では、ハイサイド電圧VH、ローサイド電圧VLは、入力電圧VINには依存せず、一定レベルとなる。
【0067】
図9(c)は、入力電圧VINを0Vの一定として、電源電圧VDD(VSS)を変化させたときのハイレベル電圧VHおよびローレベル電圧VLを示す。VDD<6Vの領域において、VH=VDDが成り立っており、|VSS|<6Vの領域において、VL=VSSが成り立っている。
【0068】
図10(a)~(d)は、図8のコントローラ310Bを用いたときのアナログスイッチ回路300のオン抵抗を示す図である。図10(a)~(d)は、電源電圧VDDおよびVSSが、±22V,±7.5V,±5V,±2.5Vのときのオン抵抗を示す。
【0069】
図10(a)~(d)を、図7(a)~(d)と対比すると分かるように、図8の実施例2によれば、電源電圧VDD(VSS)が小さくなったときに、アナログスイッチのオン抵抗を小さくすることができる。これにより、アナログスイッチ回路300を、低電源電圧の状態で使用することが可能となる。
【0070】
(実施例3)
図11は、実施例3に係るコントローラ310Cの回路図である。コントローラ310Cは、第1電流源CS1、第2電流源CS2、第1抵抗R31、第2抵抗R32を備える。第1抵抗R31、第2抵抗R32は、図8の抵抗R21、R25に対応する。
【0071】
第1電流源CS1は、上側電源電圧VDDと入力電圧VINの差分に応じた電流Ic1を生成し、上側電源電圧VDDと入力電圧VINの差分が所定のしきい値より小さくなるとオフとなる。この第1電流源CS1は、図8の抵抗R22,R23,R24および第1トランジスタQ21に対応付けることができる。
同様に、第2電流源CS2は、入力電圧VINと下側電源電圧VSSの差分に応じた電流Ic2を生成し、入力電圧VINと下側電源電圧VSSの差分が所定のしきい値より小さくなるとオフとなる。第2電流源CS2は、図8の抵抗R26,R27,R28および第2トランジスタQ2に対応付けることができる。
【0072】
続いてアナログスイッチ回路300の用途を説明する。アナログスイッチ回路300は、ボリウム回路に用いることができる。
【0073】
図12は、アナログスイッチ回路300を備えるボリウム回路400Aの回路図である。ボリウム回路400AはオーディオICに集積化される。ボリウム回路400Aは、抵抗分圧回路410、複数のアナログスイッチ回路300_1~300_N(N≧2)およびボリウムコントローラ420Aを備える。抵抗分圧回路410は、直列に接続された複数の抵抗を含み、オーディオ入力信号VAUDを分圧する。複数のアナログスイッチ回路300_1~300_Nは、抵抗分圧回路410から引き出されたタップTP1~TPNと接続される。ボリウムコントローラ420Aは、複数のコントローラ310_1~310_Nのうちボリウムの設定値VOLに応じたひとつがオンとなるように、制御信号CNT1~CNTNを生成する。この構成において、各アナログスイッチ回路300_i(i=1~N)は、対応するタップTPiに現れる分圧後の電圧を、入力電圧VINとして動作してもよい。
【0074】
(実施例4)
図12のボリウム回路400Aは、アナログスイッチ回路300それぞれが、コントローラ310を備えることとなり、タップTPの個数Nが増えると、回路面積が大きくなる。そこで、実施例4では、タップTPの個数が多い場合に好適な多入力アナログスイッチ回路(マルチプレクサ)500について説明する。
【0075】
図13は、実施例4に係るマルチプレクサ500の回路図である。マルチプレクサ500は、メイン入力端子INと、サブ入力端子IN~INを有し、全部でM+1個の入力端子を有する。メイン入力端子INには入力電圧VINが供給される。サブ入力端子IN~INには、入力電圧VINを異なる分圧比で分圧して得られるサブ入力電圧VIN1~VINMが供給される。マルチプレクサ500は、複数の入力電圧VIN0~VINMのうち、複数の制御信号CNT~CNTに応じたひとつを選択し、出力端子OUTから出力する。
【0076】
マルチプレクサ500は、メインNMOSトランジスタMN、メインPMOSトランジスタMP、M個のサブNMOSトランジスタMN~MN、M個のサブPMOSトランジスタMP~MPおよびコントローラ510を備える。
【0077】
コントローラ510は、電圧生成回路520と、メインドライバ530_0と、M個のサブドライバ530_1~530_Mを備える。
【0078】
メインNMOSトランジスタMN、メインPMOSトランジスタMP、電圧生成回路520およびメインドライバ530_0はそれぞれ、図3のNMOSトランジスタ302、PMOSトランジスタ304、電圧生成回路320、ドライバ330に対応する。したがって電圧生成回路520は、ハイサイド電圧VHおよびローサイド電圧VLを生成する。
【0079】
ドライバ530_#(#=0,1,…M)は、対応する制御信号CNTに応じて、対応するNMOSトランジスタとPMOSトランジスタのペアMNおよびMPのゲート信号VGN,VGPを生成する。ゲート信号VGN,VGPは、ハイサイド電圧VHおよびローサイド電圧VLのいずれかを取り得る。
【0080】
複数のNMOSトランジスタMN~MNのバックゲートには、ローサイド電圧VLが供給され、複数のPMOSトランジスタMP~MPのバックゲートには、ハイサイド電圧VHが供給される。
【0081】
以上がマルチプレクサ500の構成である。このマルチプレクサ500によれば、電圧生成回路520を、複数の入力端子で共有化することができるため、アナログスイッチ回路300を複数個並べてマルチプレクサを構成する場合に比べて、回路面積を削減できる。
【0082】
図14は、アナログスイッチ回路300を備えるボリウム回路400Bの回路図である。ボリウム回路400Bは、抵抗分圧回路410、ボリウムコントローラ420B、マルチプレクサ500_1,500_2,MUX1,MUX2を備える。ボリウム回路400Bは、オーディオICに集積化される。
【0083】
抵抗分圧回路410は、直列に接続される複数の抵抗素子を含み、一端にオーディオ入力信号VAUXが印加される。
【0084】
マルチプレクサ500_1は抵抗分圧回路410の上位の複数のタップに対応付けて設けられる。マルチプレクサMUX1は、抵抗分圧回路410の下位の複数のタップに対応付けて設けられる。マルチプレクサMUX2は、上位の複数のタップのうち、もっとも低いタップの電圧Vと、マルチプレクサMUX1の出力電圧Vを受ける。マルチプレクサ500_2は、マルチプレクサ500_1の出力電圧Vと、マルチプレクサMUX2の出力Vを受ける。
【0085】
ボリウムコントローラ420Bは、ボリウムの設定値VOLに応じて、マルチプレクサ500_1,500_2,MUX1,MUX2を制御する。たとえば抵抗分圧回路410の分圧比が、0.5dB刻みで設計されており、0dB~-9.5dBまでの上位のタップが、マルチプレクサ500_1と接続されている。この場合、マルチプレクサ500_1のサブ入力端子の個数Mは19となる。マルチプレクサMUX1には、-10dB以下の下位のタップの電圧が入力されている。
【0086】
マルチプレクサ500_1およびマルチプレクサ500_2は、図13のアーキテクチャを用いて構成される。したがってマルチプレクサ500_1は、電圧V(=VAUD)をメイン入力電圧として動作し、マルチプレクサ500_2は、マルチプレクサ500_1の出力電圧Vをメイン入力電圧として動作する。
【0087】
一方、マルチプレクサMUX1,MUX2については、それらに入力される電圧の振幅が小さいため、CMOSスイッチのバックゲート電圧を、一定レベル(たとえば±7.5V)に固定するとよい。
【0088】
ボリウムコントローラ410Bはボリウムの設定値VOLが変更されると、変更前のボリウム値に対応するタップから変更後のボリウム値に対応するタップを、順に1ステップ(0.5dB)刻みで順に選択していく。
【0089】
なお、マルチプレクサ500_2が正常に動作するためには、メイン入力端子INに常に電圧が印加されていなければならない。そこで、下位のタップ(-9.5dB以下)の電圧が選択される際に、マルチプレクサ500_1は、最下位のサブ入力端子INの電圧Vを選択し、電圧Vがマルチプレクサ500_2のメイン入力端子INに供給されるように動作する。
【0090】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0091】
(変形例1)
実施の形態では、上側電源電圧VDDを正電圧、下側電源電圧VSSを負電圧としたが、その限りではない。たとえば上側電源電圧VDDを正電圧、下側電源電圧VSSを接地電圧(0V)としてもよいし、上側電源電圧VDDを接地電圧(0V)、下側電源電圧VSSを負電圧としてもよい。
【0092】
(変形例2)
図2において、NMOSトランジスタ302およびPMOSトランジスタ304のバックゲートに、ローサイド電圧VL、ハイサイド電圧VHを印加しつつ、それらのゲートには、ハイサイド電圧VH、ローサイド電圧VLとわずかに異なる電圧VH’,VL’を印加してもよい。たとえばVH’,VL’は、VH,VLをレベルシフトした電圧であってもよいし、VH,VLを分圧した電圧であってもよい。
【0093】
あるいは、NMOSトランジスタ302およびPMOSトランジスタ304のゲートに、ローサイド電圧VL、ハイサイド電圧VHを印加しつつ、それらのバックゲートには、ハイサイド電圧VH、ローサイド電圧VLとわずかに異なる電圧VH’,VL’を印加してもよい。
【0094】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0095】
300 アナログスイッチ回路
IN 入力端子
OUT 出力端子
CNT 制御端子
VDD 上側電源端子
VSS 下側電源端子
302 NMOSトランジスタ
304 PMOSトランジスタ
310 コントローラ
320 電圧生成回路
322 ハイサイド電圧生成回路
324 ローサイド電圧生成回路
330 ドライバ
332 第1ドライバ
334 第2ドライバ
R21 第1抵抗
R22 第2抵抗
R23 第3抵抗
R24 第4抵抗
R25 第5抵抗
R26 第6抵抗
R27 第7抵抗
R28 第8抵抗
NO1 第1出力ノード
NO2 第2出力ノード
N21 第1内部ノード
N22 第2内部ノード
Q21 第1トランジスタ
Q22 第2トランジスタ
400 ボリウム回路
410 抵抗分圧回路
500 マルチプレクサ
510 コントローラ
520 電圧生成回路
530 ドライバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14