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  • 特許-回路遮断器の電磁引き外し装置 図1
  • 特許-回路遮断器の電磁引き外し装置 図2
  • 特許-回路遮断器の電磁引き外し装置 図3
  • 特許-回路遮断器の電磁引き外し装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】回路遮断器の電磁引き外し装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 73/36 20060101AFI20230828BHJP
   H01H 71/24 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
H01H73/36 E
H01H71/24
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019124683
(22)【出願日】2019-07-03
(65)【公開番号】P2021012759
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕明
(72)【発明者】
【氏名】山中 佑太
(72)【発明者】
【氏名】古川 勇樹
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-107846(JP,U)
【文献】実開平02-095210(JP,U)
【文献】実開平01-083243(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 69/00 - 69/01
H01H 71/00 - 83/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路遮断器の本体ケースに固定される固定電磁片と、前記固定電磁片に組み付けられ、通常姿勢と遮断姿勢との間で姿勢変更可能とされた可動電磁片と、前記固定電磁片と前記可動電磁片との間に介在され、前記可動電磁片を前記通常姿勢側へ付勢する付勢手段とを備えており、
前記本体ケース内に配設された電路に対して設置され、前記電路に所定値を超える電流が流れると、前記付勢手段の付勢力に抗して前記可動電磁片が前記通常姿勢から前記遮断姿勢へと姿勢変更する回路遮断器の電磁引き外し装置であって、
前記固定電磁片が、上下方向へ延びる板状部を有し、前記板状部に開口が開設されているとともに、
前記可動電磁片が、前記開口を貫通した状態で、前記固定電磁片に組み付けられており、
前記固定電磁片の前記口の上縁に、前記可動電磁片側に向かって下方へ突出する第1の嵌入突起が設けられている一方、前記可動電磁片における前記第1の嵌入突起に対向する位置に、前記第1の嵌入突起側に向かって上方へ突出する第2の嵌入突起が設けられており、
コイルバネ状に形成された圧縮バネが、一端側に前記第1の嵌入突起を、他端側に前記第2の嵌入突起を夫々嵌入させた状態で前記付勢手段として設けられていることを特徴とする回路遮断器の電磁引き外し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電路に短絡電流等の過大電流が流れた場合に、それを検知して電路を遮断させるように動作する回路遮断器の電磁引き外し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回路遮断器には、電路に短絡電流等の過大電流が流れた場合に、それを検知して電路を遮断させるように動作する電磁引き外し装置が設けられることがある(たとえば特許文献1)。ここで、従来の電磁引き外し装置51について、図4をもとに簡略に説明する。電磁引き外し装置51は、回路遮断器の本体ケースに固定される固定電磁片52、固定電磁片52に組み付けられており、通常姿勢と遮断姿勢との間で姿勢変更可能とされた可動電磁片53、及び固定電磁片52と可動電磁片53との間に介在されるコイルバネ状に形成された引張バネ54等を備えてなる。引張バネ54は、一端が固定電磁片52に、他端が可動電磁片53に夫々掛止されており、縮む方向への負荷によって可動電磁片53を通常姿勢側へ付勢している。このような電磁引き外し装置51では、回路遮断器内に配設されている電路に所定値を超える電流が流れると、引張バネ54の付勢力に抗して可動電磁片53が通常姿勢から遮断姿勢へと姿勢を変更し、当該可動電磁片53の姿勢変更に伴って図示しない遮断機構部が動作することにより、電路が遮断されるようになっている。なお、55は、過大電流が流れた際に可動電磁片53を吸着する電磁力を発生させるためのコイル部であり、56は、コイル部を貫通するように設置された鉄芯である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-170383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の電磁引き外し装置では、組み立て作業、特に引張バネの設置作業が煩わしいという問題を抱えていた。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、従来よりも簡易に組み立てられる回路遮断器の電磁引き外し装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、回路遮断器の本体ケースに固定される固定電磁片と、前記固定電磁片に組み付けられ、通常姿勢と遮断姿勢との間で姿勢変更可能とされた可動電磁片と、前記固定電磁片と前記可動電磁片との間に介在され、前記可動電磁片を前記通常姿勢側へ付勢する付勢手段とを備えており、前記本体ケース内に配設された電路に対して設置され、前記電路に所定値を超える電流が流れると、前記付勢手段の付勢力に抗して前記可動電磁片が前記通常姿勢から前記遮断姿勢へと姿勢変更する回路遮断器の電磁引き外し装置であって、前記固定電磁片が、上下方向へ延びる板状部を有し、前記板状部に開口が開設されているとともに、前記可動電磁片が、前記開口を貫通した状態で、前記固定電磁片に組み付けられており、前記固定電磁片の前記口の上縁に、前記可動電磁片側に向かって下方へ突出する第1の嵌入突起が設けられている一方、前記可動電磁片における前記第1の嵌入突起に対向する位置に、前記第1の嵌入突起側に向かって上方へ突出する第2の嵌入突起が設けられており、コイルバネ状に形成された圧縮バネが、一端側に前記第1の嵌入突起を、他端側に前記第2の嵌入突起を夫々嵌入させた状態で前記付勢手段として設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、固定電磁片が、上下方向へ延びる板状部を有し、板状部に開口が開設されているとともに、可動電磁片が、開口を貫通した状態で、固定電磁片に組み付けられたものにおいて、固定電磁片の開口の上縁に、可動電磁片側に向かって下方へ突出する第1の嵌入突起を設ける一方、可動電磁片における第1の嵌入突起に対向する位置に、第1の嵌入突起側に向かって上方へ突出する第2の嵌入突起を設けている。そして、可動電磁片を通常姿勢側へ付勢する付勢手段として、コイルバネ状に形成された圧縮バネを、一端側に第1の嵌入突起を、他端側に第2の嵌入突起を夫々嵌入させた状態で設けた。したがって、付勢手段として引張バネを採用し、引張バネの両端を固定電磁片や可動電磁片に夫々掛止する等していた従来の電磁引き外し装置と比べると、付勢手段の設置、ひいては電磁引き外し装置の組み立てを簡易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】カバー部材が取り外された回路遮断器を示した斜視説明図である。
図2】回路遮断器の前後方向での断面を示した説明図である。
図3】本発明に係る電磁引き外し装置を示した斜視説明図である。
図4】従来の電磁引き外し装置を示した斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態となる電磁引き外し装置を備えた回路遮断器について図面にもとづき詳細に説明する。
図1は、カバー部材が取り外された回路遮断器1を示した斜視説明図である。図2は、回路遮断器1の前後方向での断面を示した説明図である。図3は、電磁引き外し装置11を示した斜視説明図である。
【0010】
回路遮断器1は、基台2に対して、その上方を覆うようにカバー部材(図示せず)を組み付けてなる合成樹脂製の本体ケースを有するものであって、本体ケースの後部には電源側端子4が、前部には負荷側端子3が夫々備えられている。また、基台2上には、負荷側端子3と電源側端子4とを電気的に接続すべく、前後方向へ延びる3つの電路が左右に並べて配設されている。各電路は、負荷側端子3から後方へ延びて前側電路の一構成要素となる第1固定金具5、前端に固定接点7が設けられ、電源側端子4から前方へ延びて後側電路を構成する第2固定金具6、及び後端に可動接点8が設けられ、後端側を上下動させて可動接点8を固定接点7に対して接触/離隔させることにより、前側電路と後側電路とを電気的に接続/遮断させる可動接点部材10等を備えてなる。
【0011】
また、各電路毎に、可動接点部材10を作動させるための遮断機構部9と、遮断機構部9を動作させるための操作部24とが設けられている。さらに、前側電路には、電路に短絡電流等の過大な電流が流れると動作する電磁引き外し装置11が設置されている。そして、回路遮断器1では、電路に所定値を超えるような過大電流が流れると電磁引き外し装置11が動作して操作部24が作動し、当該操作部24の作動をうけて遮断機構部9が動作することによって、可動接点8が固定接点7から離隔する方向へ可動接点部材10が作動し、最終的に電路が遮断される。なお、31は、遮断機構部9を介して可動接点部材10を作動させることで、電路をオン/オフ操作するためのハンドルである。
【0012】
ここで、本発明の要部である電磁引き外し装置11について詳細に説明する。
電磁引き外し装置11は、固定電磁片として機能する継鉄21、継鉄21に組み付けられる可動電磁片22、継鉄21と可動電磁片22との間に介在される圧縮バネ23、及び過大な電流が流れた際に可動電磁片22を吸着するための電磁力を発生させるコイル部55等を備えてなる。継鉄21は、上下方向へ延びる板状の本体25と、本体25の下端から前側へ折り曲げられており、コイル部55の鉄芯56を差し込み可能とされた連結部26とを有する。本体25の上部には開口27が開設されており、開口27の上縁における左右方向で略中央となる箇所には、下方(開口27内側であって、後述する可動電磁片22側)へ突出する第1の嵌入突起28が設けられている。そして、継鉄21は、本体25の厚み方向が前後方向となるような状態で基台2に固定されている。なお、30は、継鉄21を基台2に固定するための固定片であり、本体25の下部における左右両側縁に夫々設けられている。
【0013】
一方、可動電磁片22は、前方へ延びる被吸着部22aと、被吸着部22aの基端部から下方へ延びる作用部22bとを一体的に有する金属片であって、作用部22bを継鉄21の後側に位置させ、且つ、開口27を介して被吸着部22aを継鉄21の本体25よりも前方へ突出させた状態、すなわち継鉄21の開口27を前後方向へ貫通した状態で組み付けられている。また、作用部22bの基端部(被吸着部22aとの連結側)で、継鉄21への組み付け時に第1の嵌入突起28と対向する位置には、上方(第1の嵌入突起28側)へ突出する第2の嵌入突起29が設けられている。さらに、コイルバネ状に形成された圧縮バネ23が、一端側に第1の嵌入突起28を、他端側に第2の嵌入突起29を夫々嵌入させた状態で継鉄21と可動電磁片22との間に介在されており、伸びる方向への負荷によって可動電磁片22を通常姿勢側(被吸着部22aを鉄芯56から離隔させる側)へ付勢している。
【0014】
そして、電磁引き外し装置11では、電路に所定値を超える電流が流れると、圧縮バネ23の付勢力に抗して可動電磁片22が通常姿勢から遮断姿勢へと姿勢を変更する(具体的には、被吸着片22aが鉄芯56に吸着された前傾姿勢となる)。この姿勢変更に伴って、作用部22bが操作部24に干渉して作動させ、該操作部24の作動に伴い遮断機構部9、ひいては可動接点部材10が作動して、電路が遮断されることになる。
【0015】
以上のように構成される電磁引き外し装置11によれば、継鉄21に開設されている開口27を前後方向に貫通するような状態で、可動電磁片22が継鉄21に組み付けられており、該継鉄21の開口27上縁に、下方へ突出する第1の嵌入突起28が設けられている一方、可動電磁片22における第1の嵌入突起28に対向する位置に、上方へ突出する第2の嵌入突起29が設けられている。そして、可動電磁片22を通常姿勢側へ付勢する付勢手段として、コイルバネ状に形成された圧縮バネ23を、一端側に第1の嵌入突起28を、他端側に第2の嵌入突起29を夫々嵌入させた状態で設けた。したがって、可動電磁片を通常姿勢側へ付勢する付勢手段として引張バネを採用し、引張バネの両端を固定電磁片や可動電磁片に夫々掛止する等していた従来の電磁引き外し装置と比べると、付勢手段の設置、ひいては電磁引き外し装置11の組み立てを簡易に行うことができる。
【0016】
なお、本発明の回路遮断器の電磁引き外し装置に係る構成は、上記実施形態のものに何ら限定されることはなく、電磁引き外し装置の全体的な構造は勿論、付勢手段の設置等に係る構成についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で必要に応じて適宜変更することができる。
【0017】
たとえば、上記実施形態では、第1の嵌入突起を下方へ、第2の嵌入突起を上方へ夫々突設しているが、固定電磁片の開口上側において可動電磁片を貫通させた状態で取り付けたものにあっては、第1の嵌入突起を上方へ、第2の嵌入突起を下方へ夫々突設してもよく、第1の嵌入突起や第2の嵌入突起の具体的な突出方向については適宜設計変更可能である。
また、上記実施形態では、圧縮バネの取付姿勢が略鉛直方向に平行な姿勢となり、ひいては圧縮バネの付勢力が略鉛直方向に作用するように構成しているが、第1の嵌入突起や第2の嵌入突起の具体的な突出方向に関連して圧縮バネの取付姿勢についても適宜設計変更可能であり、たとえば第1の嵌入突起や第2の嵌入突起を夫々前後方向に傾斜させることで、圧縮バネの取付姿勢が鉛直方向から前後へ傾斜するようにし、圧縮バネの付勢力が該傾斜方向へ作用するように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0018】
1・・回路遮断器、2・・基台(本体ケース)、9・・遮断機構部、11・・電磁引き外し装置、21・・継鉄(固定電磁片)、22・・可動電磁片、22a・・被吸着部、22b・・作用部、23・・圧縮バネ、24・・操作部、25・・本体、27・・開口、28・・第1の嵌入突起、29・・第2の嵌入突起、55・・コイル部、56・・鉄芯。
図1
図2
図3
図4