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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】レーダ監視装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/292 20060101AFI20230828BHJP
   G01S 13/89 20060101ALI20230828BHJP
   G01S 7/12 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
G01S7/292
G01S13/89
G01S7/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019130952
(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公開番号】P2021015079
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 秀輔
(72)【発明者】
【氏名】仲野 剛
(72)【発明者】
【氏名】谷沢 昭行
(72)【発明者】
【氏名】浅香 沙織
(72)【発明者】
【氏名】新田 修平
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-132687(JP,A)
【文献】特開2002-139562(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0286989(US,A1)
【文献】木村英之, 佐野元昭, 関根松夫(東京工業大学),「ニューラルネットワークによるレーダターゲットのパターン認識」,電子情報通信学会技術研究報告(信学技報),1994年04月28日,Vol.94, No.27,pp.1-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
G06T 7/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を送信及び受信するアンテナと、
前記アンテナで受信される反射波から、目標とクラッタが混在する領域のビデオデータを生成する送受信部と、
前記ビデオデータに対して、前記クラッタと分離して前記目標を検出するための信号処理を実行する信号処理部と、
信号処理後の結果を表示するための表示部と、
を具備し、
前記信号処理部は、
目標とクラッタの特性に基づいて前記クラッタを抑圧するように、機械学習により学習されたパターン識別部を使用してクラッタ抑圧処理を実行するクラッタ抑圧処理部を含み、
前記クラッタ抑圧処理部は、
予め複数種のパターン識別部を含み、
ユーザにより選択されたパターン識別部を使用してクラッタ抑圧処理を実行する、レーダ監視装置。
【請求項2】
前記クラッタ抑圧処理部による前記クラッタの抑圧処理後に、前記ビデオデータから前記目標を検出する目標検出部を含む、請求項1に記載のレーダ監視装置。
【請求項3】
前記クラッタ抑圧処理部による前記クラッタの抑圧処理後に、前記ビデオデータから表示画面に表示する表示画像を生成する画像生成処理部を含む、請求項1に記載のレーダ監視装置。
【請求項4】
前記クラッタ抑圧処理部は、
目標とクラッタの特性として、前記ビデオデータの中で目標とクラッタの差異に基づいて機械学習により学習されたパターン識別部を使用して、当該クラッタを抑圧する、請求項1に記載のレーダ監視装置。
【請求項5】
前記パターン識別部は、
ある一定時間の目標とクラッタの空間上の分布または位相分布またはその両方の差異に基づいて機械学習され、目標とクラッタを分離することで当該クラッタを抑圧する、請求項1に記載のレーダ監視装置。
【請求項6】
前記クラッタ抑圧処理部は、
目標とクラッタの特性として、前記ビデオデータの中である一定時間の目標とクラッタの空間上の分布または位相分布またはその両方の差異に基づいて機械学習により学習されたパターン識別部を使用して、当該クラッタを抑圧する、請求項1に記載のレーダ監視装置。
【請求項7】
前記クラッタ抑圧処理部は、
前記表示画像の部分領域を指定される場合に、当該部分領域に対して前記クラッタの抑圧性能が異なるパターン識別部を使用してクラッタ抑圧処理を実行する、請求項3に記載のレーダ監視装置。
【請求項8】
前記表示画像の部分領域を指定される場合に、指定された領域ごとに異なるパターン識別部を使用してクラッタ抑圧処理を実行する、請求項3に記載のレーダ監視装置。
【請求項9】
前記画像生成処理部は、
指定される部分領域に対するクラッタ抑圧処理後の前記ビデオデータから、表示画面に拡大表示する前記部分領域の表示画像を生成する、請求項3に記載のレーダ監視装置。
【請求項10】
電波を送信及び受信するアンテナと、
前記アンテナで受信される反射波から、目標とクラッタが混在する領域のビデオデータを生成する送受信部と、
コンピュータとを具備するレーダ監視装置に適用するクラッタ抑圧方法であって、
前記コンピュータが、前記ビデオデータに対して、前記クラッタと分離して前記目標を検出するための信号処理を実行する処理と、
前記コンピュータが、信号処理後の結果を表示する処理とを備え、
前記信号処理を実行する処理は、
前記コンピュータが、目標とクラッタの特性に基づいて前記クラッタを抑圧するように、機械学習により学習されたパターン識別部を使用してクラッタ抑圧処理を実行する処理であり、
前記クラッタ抑圧処理を実行する処理は、
前記コンピュータが、予め複数種のパターン識別部から、ユーザにより選択されたパターン識別部を使用してクラッタ抑圧処理を実行する処理である、クラッタ抑圧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば船舶用のレーダ監視装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ監視装置は、一般に、アンテナから電波を送信し、反射波を前記アンテナで受信する。受信した信号は、受信器にて周波数変換やA/D変換等の受信処理によりビデオデータに変換された後に、信号処理が実行される。信号処理では、パルス圧縮処理や各種フィルタ、積分処理等により、ノイズやクラッタの信号が抑圧され、及び目標検出が実行される。表示処理では、信号処理の中間または最終データであるビデオデータ上に目標検出結果が描画され、表示画像が生成される。この表示画像は表示器で表示される。
【0003】
しかし、実際には、クラッタ強度が大きい環境下では、目標を検出できなくなることや、クラッタを目標として誤検出する問題がある。例えば、海面が荒れた状態となると、シークラッタ(sea clutter)の信号強度が大きくなる。従来は、シークラッタの信号を十分に抑圧することができず、目標を検出できず、シークラッタを目標として誤検出する問題があった。従来の手法では、例えば、MTIやパルスドップラフィルタでクラッタを抑圧することが考えられる。信号処理に適用した場合、波と同程度の速度で移動する水上目標の検出が困難となる。また、従来では、積分処理によって信号利得を改善する。この場合、シークラッタの信号強度が大きくなることで、目標とシークラッタの信号が同様に積分される場合があり、目標の検出が困難であった。また、表示器に表示される表示画像は、目標の視認性を向上するために信号処理の中間または最終のビデオデータを用いるが、クラッタが十分に抑圧できていないためクラッタが強調された視認性の低い表示画像となってしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-281504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、クラッタの強い状況においても、信号処理でクラッタを十分に抑圧することで、目標の検出率向上とクラッタの誤検出低減を実現できるレーダ監視装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態のレーダ監視装置は、アンテナと、送受信部と、信号処理部と、表示部を具備する。前記アンテナは、電波を送信及び受信する。前記送受信部は、前記アンテナで受信される反射波から、目標とクラッタが混在するビデオデータを生成する。前記信号処理部は、前記ビデオデータに対して、前記クラッタと分離して前記目標を検出するための信号処理を実行する。表示部は信号処理後の結果を表示する。前記信号処理部は、目標とクラッタの特性に基づいて前記クラッタを抑圧するように、機械学習により学習されたパターン識別部を使用してクラッタ抑圧処理を実行するクラッタ抑圧処理部を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に関するレーダ監視装置の構成を説明するためのブロック図。
図2】実施形態に関する信号処理部の構成を説明するためのブロック図。
図3】実施形態に関するクラッタ抑圧処理の一例を説明するための概念図。
図4】実施形態に関するクラッタ抑圧処理前の表示画像の一例を示す図。
図5】実施形態に関するクラッタ抑圧処理後の表示画像一例を示す図。
図6】実施形態に関するクラッタ抑圧処理後の表示画像の部分領域の一例を示す図。
図7】実施形態に関するレーダ監視装置の動作を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図面を参照して、実施形態を説明する。
[レーダ監視装置の構成]
図1は、本実施形態に関するレーダ監視装置1の構成を示すブロック図である。図1に示すように、レーダ監視装置1は、アンテナ部10、送受信部11及び信号処理部12を含むレーダ装置、及び監視員(ユーザ)がレーダ装置により検出される目標を確認するための表示部13を有する。
【0009】
アンテナ部10は、目標を含む所定の範囲に対して電波を送信し、当該目標からの反射波を含む電波を受信するアンテナ、及びアンプ(Amplifier)や移相器、サーキュレータ(circulator)等を含む。アンテナは、例えば、複数のアンテナ素子が配列されているアクティブ・アレーアンテナ(active array antenna)である。送受信部11は、アンテナ部10の送受信を制御し、アンテナから電波を送信する送信処理、及びアンテナにより受信される電波(反射波)を周波数変換やA/D変換等を実行して、デジタル信号であるビデオデータを生成する受信処理を実行する。
【0010】
信号処理部12は、ビデオデータのデジタル信号処理を実行し、本実施形態の主機能であるクラッタ抑圧処理、目標検出処理、及び表示画像生成処理を実行する。表示部13は、信号処理部12を制御する機能、及びクラッタ抑圧処理後の目標情報及び表示画像を、表示装置(端末装置)のディスプレイ上に表示する。なお、信号処理部12及び表示部13は、ハードウェア及びソフトウェアにより構成されるコンピュータにより実現される構成でもよい。
【0011】
図2は、信号処理部12の構成を示すブロック図である。図2に示すように、信号処理部12は、パルス圧縮処理部20、クラッタ抑圧処理部21、目標検出処理部23、画像生成処理部24、及び目標追跡処理部25を含む。パルス圧縮処理部20は、送受信部11の受信処理により生成されるビデオデータに対して、パルス圧縮処理を実行する。クラッタ抑圧処理部21は、パルス圧縮処理後のビデオデータに対して、目標とクラッタとを分離するためにクラッタ抑圧処理を実行する。
【0012】
目標検出処理部23は、クラッタ抑圧処理後のビデオデータに対して、目標を検出する目標検出処理を実行する。画像生成処理部24は、クラッタ抑圧処理後のビデオデータから、表示部13で表示処理される表示画像を生成する。目標追跡処理部25は、目標検出処理部23により検出される目標を追跡する処理を実行し、追跡した時系列の目標情報を出力する。
[レーダ監視装置の動作]
以下、図3から図6を参照して、本実施形態のクラッタ抑圧処理を説明する。さらに、図7のフローチャートを参照して、本実施形態のレーダ監視装置1の動作を説明する。本実施形態は、例えば、船舶に搭載されて、海上を監視するレーダ監視装置1に適用する。
【0013】
図7に示すように、レーダ監視装置1において、送受信部11は、アンテナ部10から送信した電波の反射波を受信する(S1)。送受信部11は、受信した反射波をA/D変換して、例えば海上の監視領域に対するビデオデータを生成する(S2)。信号処理部12は、パルス圧縮処理部20によりパルス圧縮処理後のビデオデータを、クラッタ抑圧処理部21に送出する(S3)。
【0014】
本実施形態では、図2に示すように、クラッタ抑圧処理部21は、複数種のパターン識別部22-1~22-n(代表としてパターン識別部22と表記)を含み、各パターン識別部22を使用してクラッタ抑圧処理を実行する(S4)。
【0015】
具体的には、クラッタ抑圧処理部21は、例えば表示部13の操作部から、監視員により選択されるパターン識別部22の種類、及び後述する部分領域座標を入力情報として入力し、当該入力情報に応じたパターン識別部22を使用してクラッタ抑圧処理を実行する。
【0016】
ここで、各パターン識別部22はそれぞれ、目標とクラッタの特性(パターンの種類)に基づいて、予め用意したサンプルデータ(訓練データ)を使用して、クラッタを有効に抑圧し、目標とクラッタを判別するパターン識別器を機械学習の手法で学習する。機械学習は、例えば深層ニューラルネットワークを適用した学習方法であるが、他の学習方法を適用してもよい。サンプルデータは、監視で使用するビデオデータである。例えば、海上であれば距離、方位及び時間軸を有するパルス圧縮後のビデオデータに相当する。上空であれば、距離、方位、仰角及び時間軸を有するパルス圧縮後のビデオデータとなる。また、パターンの種類は、時系列の目標とクラッタの特性に関連する監視環境を意味する。監視環境とは、例えば海上や上空のことであり、海上であればシークラッタやウェザークラッタの中に目標が存在し、上空であればグランドクラッタやシークラッタ、ウェザークラッタの中に目標が存在することが考えられる。即ち、各パターン識別部22はそれぞれ、監視環境に応じて機械学習し、例えば海面状態に関するシークラッタを有効に抑圧するように学習したものでもよい。
【0017】
即ち、パターン識別部22は、目標とクラッタの特性に基づいたパターンに対して前記クラッタを抑圧するクラッタ抑圧処理を実行する機能を実現する。なお、具体的な抑圧処理方法として、例えば振幅ビデオにおける目標とクラッタの振幅値のパターンを区別することで、クラッタを除去する処理を実行する。学習は、例えばパターン識別部22の出力として目標らしさを表す尤度とし、目標とシークラッタのパターンを学習させる。これによって学習されたパターン識別部22は、シークラッタの場合は尤度が小さくなり、目標の場合は尤度が大きくなる。学習に使用するサンプルデータは、例えば受信処理後のビデオデータをシミュレーションにより擬似的に生成したものでも良い。
【0018】
監視要員は、現在の監視環境下において、例えば、海面が荒れている場合に、シークラッタを抑圧するためのパターン識別部22の種類を選択する。クラッタ抑圧処理部21は、選択された種類のパターン識別部22を使用して、パルス圧縮処理後のビデオデータに対して、シークラッタと目標とが混在している領域から、当該シークラッタを効果的に抑圧するためのクラッタ抑圧処理を実行する。また、監視員は、現在の監視環境下において、例えば、雨や雲の天候状態が悪い場合に、気象状態に関するウェザークラッタを抑圧するためのパターン識別部22の種類を選択する。クラッタ抑圧処理部21は、選択された種類のパターン識別部22を使用して、パルス圧縮処理後のビデオデータに対してウェザークラッタを抑圧するためのクラッタ抑圧処理を実行する。
【0019】
図3は、本実施形態のクラッタ抑圧処理の一例を示す図である。例えば、海上を監視する場合、パルス圧縮処理後のビデオデータ30は、クラッタ抑圧処理前であるため、目標32とシークラッタ31が混在している。従って、このデータから目標32のみを検出するためには、シークラッタ31を十分に抑圧する必要がある。また、ビデオデータ30から表示画像を生成する場合、シークラッタ31を抑圧して、目標32の視認性を高めることが求められる。
【0020】
ここで、海上を監視する場合を例に、データの特徴について説明する。図3に示すように、目標32とシークラッタ31は、時系列の距離、方位のビデオデータである3次元データの中で差異がある。例えば、時間-距離のデータでは、シークラッタ31は振幅や信号の空間方向の幅が小さく短い線となる。一方、目標32は、シークラッタ31に比べて振幅及び空間方向の幅が大きく、連続性の高い線となる。本実施形態では、このような差異に着目して、サンプルデータを用いた機械学習により、目標32とシークラッタ31を分離するパターン識別部22の学習を実行できる。また、上空を監視する場合は、例えば時系列の距離、方位、仰角の4次元のビデオデータとなる。この場合は、振幅や速度、線の連続性、位相情報等からクラッタと目標を分離してもよい。
【0021】
図7に戻って、クラッタ抑圧処理部21は、監視要員により選択されるパターン識別部22の種類に応じたパターン識別部22を使用して、リアルタイムに目標とシークラッタを分離することで、シークラッタを抑圧できる。
【0022】
次に、目標検出処理部23は、クラッタ抑圧処理後のデータに対して、目標を検出する目標検出処理を実行する(S5)。例えば、クラッタ抑圧処理部21の出力を目標の尤度とした場合、目標検出とみなす尤度を閾値とする。閾値は外部の入力、例えば監視要員の操作により設定可能である。一方、画像生成処理部24は、クラッタ抑圧処理後のビデオデータから、表示部13で表示処理される表示画像を生成する(S7)。目標追跡処理部25は、目標検出処理部23により検出される目標を追跡する処理を実行し、追跡した目標情報を出力する(S6)。
【0023】
図4は、クラッタ抑圧処理前のビデオデータから、表示部13で表示処理される表示画像の一例を示す図である。図4に示すように、クラッタ抑圧処理前であるため、目標32とシークラッタ31が混在しており、視認性が低下している。このため、監視員は、当該表示画像から、特に信号強度の小さい小目標(海面上のブイや浮遊物等)32は視覚的に確認することが困難である。
【0024】
本実施形態では、図5に示すように、クラッタ抑圧処理後のビデオデータから、表示部13の表示画面全体において、シークラッタ31を抑圧できるため、特に小目標32の視認性を向上できる。ここで、機械学習によるパターン識別部22は、クラッタ抑圧性能が高い一方、計算量も増加する可能性がある。例えば、機械学習として深層ニューラルネットワークを適用した場合、層を深くすると性能向上が見込める。しかし、層が深くなるほど計算量が増加してしまう。このため、表示画面全体では、深層ニューラルネットワークを適用する機械学習において、階層の浅いパターン識別部22を用いることで、処理負荷の増加を抑制できる可能性がある。
【0025】
一方、本実施形態では、前述したように、クラッタ抑圧処理部21は、監視員によりパターン識別部22の種類を選択できると共に、部分領域座標を入力情報として入力できる。具体的には、図5に示すように、監視員が指定した目標32を含む部分領域50に応じて、画像生成処理部24は、クラッタ抑圧処理後のビデオデータから、表示部13で表示処理される拡大表示画像を生成する。この場合、クラッタ抑圧処理部21は、パターン識別部22の種類を変更することにより、クラッタ抑圧性能を高める機能を有する。
【0026】
具体的には、表示画面より部分領域50を選択した場合には、当該領域50に対してより処理負荷の高いパターン識別部22を用いることで、シークラッタ抑圧性能を向上できる。例えば、パターン識別部22に深層ニューラルネットワークを用いる場合、階層の深いネットワークを使用することで、シークラッタ抑圧性能を向上することができる。従って、図6に示すように、監視員が監視状況に応じて、注目したい部分領域50を拡大する共に、クラッタ抑圧性能を高めることで、高精度の目標検出を実現できる。このような本実施形態の機能は、衝突予防装置(ARPA)や自動船舶識別装置(AIS)などによるターゲットマークの拡大表示処理にも適用可能である。
【0027】
以上のように本実施形態によれば、目標とクラッタの特性に応じて、予め機械学習により学習している異なる種類のパターン識別部を選択して使用することにより、監視環境に適応する効果的なクラッタ抑圧を実現できる。従って、結果として、目標とクラッタが混在しているビデオデータから、目標を高精度で検出することが可能となる。特に、従来ではクラッタの影響で検出が困難であった小目標、例えば水上のブイや浮遊物、上空を飛ぶ小型無人機等の検出精度を向上できる。換言すれば、目標の検出精度を向上し、クラッタの誤検出を抑制できる。
【0028】
また、ビデオデータから表示画像を生成して、表示画面上に表示する場合に、監視員が指定した目標を含む部分領域を拡大表示すると共に、クラッタ抑圧性能を高くして、目標検出の精度を向上できる。また、クラッタ抑圧後のビデオデータを表示することで、特に小目標の視認性を向上できる。さらに、パターン識別部のクラッタ抑圧性能と処理範囲の広さは、処理負荷の観点でトレードオフの関係にある。本実施形態では、シークラッタ抑圧性能を部分領域の選択に応じて変化させることで、リアルタイム性を優先するようなことが可能となる。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
1…レーダ監視装置、10…アンテナ部、11…送受信部、12…信号処理部、
13…表示部、20…パルス圧縮処理部、21…クラッタ抑圧処理部、
22(22-1~22-n)…パターン識別部、23…目標検出処理部、
24…画像生成処理部、25…目標追跡処理部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7