(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】ドラフト装置ユニットのための支持フレームおよびこのようなドラフト装置ユニットを含むドラフト装置
(51)【国際特許分類】
D01H 5/56 20060101AFI20230828BHJP
【FI】
D01H5/56
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019139641
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】10 2018 005 998.8
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518264859
【氏名又は名称】ザウラー スピニング ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Spinning Solutions GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Carlstr. 60, 52531 Uebach-Palenberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ シファース
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ジーヴェルト
(72)【発明者】
【氏名】ハイコ テプケ
(72)【発明者】
【氏名】ローター イューディンガー
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-019365(JP,U)
【文献】特開2003-105643(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102006029132(DE,A1)
【文献】特開2004-107871(JP,A)
【文献】国際公開第2017/221093(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01H 5/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維機械の作業ユニットにおいて繊維束をドラフティングするためのドラフト装置ユニットのための支持フレーム(3)であって、前記支持フレーム(3)が、前記ドラフト装置ユニットに対応配置された荷重支持体(6)を旋回可能に支承するための少なくとも1つの支承箇所を有している、支持フレーム(3)において、
前記支持フレーム(3)が、前記繊維機械に、特に対応配置された前記作業ユニットに前記支持フレーム(3)を着脱可能に結合するための連結区分(5)および係止ユニット(12)を有して
おり、
前記係止ユニット(12)が、開放位置とロック位置との間で移動可能な、前記支持フレーム(3)の運転位置において前記繊維機械に設けられた係止受止め部(13)に係合可能な係止体(12)を有しており、
前記係止体(12)には、前記ロック位置に向かう方向に予荷重が加えられていることを特徴とする、支持フレーム(3)。
【請求項2】
前記作業ユニットの受止め区分(4)に配置するための前記連結区分(5)が、前記支持フレーム(3)を解放位置と運転位置との間で移動させるために形成されており、前記解放位置では、前記支持フレーム(3)が対応配置された前記作業ユニットから取出し可能であり、前記運転位置では、前記支持フレーム(3)が、該支持フレーム(3)に支承された荷重支持体(6)の運転のために、対応配置されている前記作業ユニットに位置固定的に配置されている、請求項1記載の支持フレーム(3)。
【請求項3】
前記連結区分(5)が、前記受止め区分(4)に、特に前記繊維機械のフレームステーに適合された切欠き(5)を有している、請求項2記載の支持フレーム(3)。
【請求項4】
前記切欠き(5)が、前記支持フレーム(3)と一体的に形成されている、請求項3記載の支持フレーム(3)。
【請求項5】
前記支持フレーム(3)が、前記荷重支持体に配置可能なトップローラ(7)に対応配置されたボトムローラを回転可能に支承するように構成されている、請求項1から
4までの
いずれか1
項に記載の支持フレーム(3)。
【請求項6】
前記支持フレーム(3)が、少なくとも1つの付加ユニットを収容するように、特に前記ボトムローラの駆動ユニット(8)、通信ユニットおよび/または前記駆動ユニットの制御機器(11)を配置するように構成されている、請求項
5記載の支持フレーム(3)。
【請求項7】
前記支持フレーム(3)は、前記少なくとも1つの付加ユニットを収容するための取付けレールを有している、請求項
6記載の支持フレーム(3)。
【請求項8】
前記支持フレーム(3)は、それぞれ荷重支持体(6)を旋回可能に支承するための2つの支承箇所を有していて、前記荷重支持体(6)が、特に前記荷重支持体(6)の間で少なくとも1つのトップローラ(7)を支承するように構成されている、請求項1から
7までの
いずれか1
項に記載の支持フレーム(3)。
【請求項9】
前記支持フレーム(3)が、操作エレメント、特にグリップエレメント(9)を有している、請求項1から
8までの
いずれか1
項に記載の支持フレーム(3)。
【請求項10】
少なくとも1つのトップローラ(7)を有する荷重支持体(6)を有しているドラフト装置ユニットを備えた繊維機械のためのドラフト装置であって、前記ドラフト装置ユニットが、請求項1から
9までの
いずれか1
項に記載の支持フレーム(3)を有していて、該支持フレーム(3)に前記荷重支持体(6)が旋回可能に支承されている、ドラフト装置。
【請求項11】
前記支持フレーム(3)に2つの荷重支持体(6)が配設されていて、該荷重支持体(6)の間に少なくとも1つのトップローラ(7)が備えられており、該荷重支持体(6)が、グリップエレメント(9)を介して互いに結合可能または結合されている、請求項
10記載のドラフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維機械の作業ユニットにおいて繊維束をドラフティングするためのドラフト装置ユニットのための支持フレームならびに少なくとも1つのトップローラを有する荷重支持体を備えたこのようなドラフト装置ユニットを含むドラフト装置に関する。
【0002】
繊維機械のためのドラフト装置は、先行技術から多様な構成で知られている。ドラフト装置は、繊維束をドラフティングするか、もしくは延伸のために働き、これにより繊維の横断面を減少させる。ドラフティング中に、繊維はできるだけ均一に互いに対してずらされ、これによりできるだけ均一な繊維束を達成することができる。
【0003】
繊維束をドラフティングするために、ドラフト装置は、通常、相前後して配置された複数のローラ対を有している。これらのローラ対は、互いに接触して配置されて、その間に延びる繊維束を挟み込む。ローラ対は、この場合、通常は駆動されるボトムローラと、このボトムローラに接触する上側の押圧ローラとから成っている。この上側の押圧ローラは、荷重支持体により回転可能に保持される。繊維束のドラフティングは、繊維束の、ローラ対の回転方向により規定された搬送方向で、ローラ対からローラ対へと周速度が増大することにより達成させられる。
【0004】
ドラフト装置ユニットでは冒頭で述べた形式の荷重支持体は、この荷重支持体に配置された上側の押圧ローラもしくはトップローラを予め規定された圧力で対応配置されたボトムローラに押し当てるために働き、これにより、トップローラは運転位置では圧力を加えられて、対応するボトムローラ上に載置する。冒頭で述べた形式の繊維機械のためのドラフト装置ユニットは、繊維機械のドラフト装置の構造群である。ドラフト装置ユニットは、その構成に応じて、完全なドラフト装置としても形成されていてよい。
【0005】
公知の繊維機械は、ドラフティングすべき各繊維束のための作業ユニット毎に、列置された複数のローラ対を備えた別個のドラフト装置を有している。複数のローラ対に、1つの荷重支持体が対応配置されている。ドラフト装置は通常、摩擦部分のみがオペレータにとって容易にメンテナンスされ、場合によっては交換され得るように、繊維機械内に統合されている。
【0006】
たとえば継続するクリーニングの実施、定期的な検査または故障原因の調査ならびにドラフティングすべき糸材料へのローラ対への適合のような保守作業または修理作業は、繊維機械にドラフト装置が組み込まれた状態において実施しなければならない。隣り合う作業ユニットおよび隣接する機器はこのような作業を困難にする。
【0007】
これを起点として、本発明の根底を成す課題は、繊維機械の作業ユニットにおいて繊維束をドラフティングするためのドラフト装置ユニットを改良して、ユーザにとって容易な形式で特に検査し、修理し、かつ/またはドラフティングすべき繊維束材料に適合することができるようにすることにある。
【0008】
本発明は、請求項1に記載の特徴を備えたドラフト装置ユニットのための支持フレームにより、かつ請求項12に記載の特徴を備えたドラフト装置により課題を解決する。支持フレームもしくはドラフト装置の有利な変化形は、従属請求項に記載されている。繊維機械は、好適にはリング精紡機、フライヤ、空気精紡機等のような、繊維束をドラフティングする紡績機である。
【0009】
本発明に係る支持フレームにとって特徴的であるのは、支持フレームが、繊維機械に、特に対応配置された作業ユニットに支持フレームの着脱可能な結合のための連結区分および係止ユニットを有していることにある。連結区分および係止ユニットを備えた支持フレームの構成は、支持フレームを快適な形式で繊維機械においてモジュール式に配置し、係止ユニットを介して運転位置において正確に位置決めし、かつ位置固定することを可能にする。係止ユニットのロック解除により、ドラフト装置ユニットは必要な場合に快適な形式で繊維機械もしくは作業ユニットから取り除かれ、もしくは取り出されることができる。
【0010】
支持フレームは、好適には、連結区分および係止ユニットを介して、繊維機械もしくは作業ユニットに設けられた対応する受止め区分に係合する。運転位置において、係止ユニットは、少なくとも1つのトップローラを有し、支持フレームに旋回可能に支承された荷重支持体の位置固定された配置を保証する。これにより、このドラフト装置ユニットを有するドラフト装置の確実な運転が保証されている。荷重支持体におけるメンテナンス作業および調節作業ならびにドラフティングすべき繊維束材料への押圧ローラの適合は、荷重支持体の簡単な取出し後に快適な形式で適切な作業場所において実施することができる。さらに支持フレームまたはこのような支持フレームを含むドラフト装置ユニットは簡単かつ廉価な形式で、適合または改良された新規の支持フレームもしくはドラフト装置ユニットと交換することができ、これによりたとえば既存のドラフト装置も単に改良されたドラフト装置ユニットの交換を介して改善することができる。
【0011】
繊維機械もしくは作業ユニットにおけるドラフト装置ユニットの配置ならびに繊維機械もしくは作業ユニットからのドラフト装置ユニットの取除きは、基本的には任意の形式で行うことができる。たとえば、支持フレームもしくはドラフト装置ユニットが解放位置と運転位置との間で線形に移動させられ得る構成が可能である。この場合、解放位置では、ドラフト装置ユニットが繊維機械に配置され、かつこの繊維機械から取り出すことができ、運転位置には、支持フレームもしくはドラフト装置ユニットが、対応配置されたドラフト装置が運転状態にある場合に配置されている。
【0012】
しかし、本発明の有利な変化形によれば、繊維機械もしくは作業ユニットの受止め区分における配置のための連結区分が、解放位置と運転位置との間で支持フレームを移動させるために形成されていることが規定されている。この場合、解放位置では、支持フレームもしくはドラフト装置ユニットが、対応配置された作業ユニットから取出し可能であり、運転位置では、支持フレームもしくはドラフト装置ユニットが、支持フレームに支承された荷重支持体の運転のために、対応配置された作業ユニットにおいて位置固定されて配置されている。本発明のこの構成によれば、支持フレームは、組付けのために、まず繊維機械の、対応して形成された受止め区分に配置されることが規定されている。この解放位置から、連結区分の対応する構成を介して、受止め区分の構成とは無関係に、運転位置への支持フレームの移動が行われる。この運転位置では、ドラフト装置ユニットが、次いで係止ユニットを介して繊維機械もしくは作業ユニットにおいて位置固定されている。
【0013】
解放位置と運転位置との間で支持フレームを移動させるための連結区分のこの構成は、連結区分への繊維機械もしくは作業ユニットの対応する適合もしくは連結区分の形を考慮した受止め区分の特別な構成を省略することを可能にする。支持フレームの基本的な移動性は、本発明のこの変化形により、既に連結区分の構成に基づいて生じる。連結区分は、最優先で受止め区分を介した繊維機械におけるドラフト装置ユニットの十分な支持を保証する。本発明のこの変化形の可能で好適な構成は、たとえば、連結区分が支持フレームに枢着式に結合されていて、これにより移動が受止め区分の構成とは関係なく、支持フレームの対応する構成により実現されることを規定する。
【0014】
上述のように、連結区分を介した、支持フレームもしくはドラフト装置ユニットと、繊維機械に設けられた受止め区分との結合の基本的な構成は、基本的に自由に選択可能である。しかし、本発明の有利な構成により、連結区分が、受止め区分に、特に繊維機械のフレームステーに適合された切欠きを有していることが規定されている。この構成は、支持フレームの特に簡単かつ廉価な構造および製造を可能にし、この場合、フレームステーの有利には円筒状の構成が、切欠きが対応して構成されている場合に、解放位置と運転位置との間でのドラフト装置ユニットの特に簡単な移動性を可能にする。
【0015】
フレームステーに支持フレームもしくはドラフト装置ユニットを配置するために有利に設けられた切欠きは、基本的には任意のエレメントにより形成することができ、このためにはたとえば支持フレームに配置されたフランジが設けられていてよく、このフランジは、対応する切欠きを備えている。しかし、本発明の特に有利な構成によれば、切欠きが支持フレームと一体的に形成されていることが規定されている。支持フレームにおける切欠きの形成は、付加的な構成部材を省略することを可能にし、これにより支持フレームのための製造コストを補足的に減少させることができる。さらに、支持フレームにおける切欠きの一体的な構成は、補足的な構成部材の使用および複数の切欠きの使用に対して重量に関する利点を有している。
【0016】
繊維機械もしくは作業ユニットにおいて運転位置で支持フレームもしくはドラフト装置ユニットを固定するための係止ユニットの構成は、基本的には任意の形式で行うことができる。たとえば、支持フレームにおいて磁気的または電気的に作用する係止エレメントを使用することも可能であり、この係止エレメントは運転位置において繊維機械に設けられた相応する構成部分と協働する。しかし、本発明の有利な変化形では、係止ユニットが、開放位置とロック位置との間で移動可能な、支持フレームの運転位置において繊維機械に設けられた係止受止め部に係合可能な係止体を有していることが規定されている。
【0017】
係止ユニットのこのような構成は、特に簡単かつしたがって廉価かつ故障しにくい構造を有している。支持フレームの係止ユニットに設けられた係止体は、開放位置とロック位置との間で移動可能であり、ロック位置では係止体は、繊維機械に設けられた対応する係止受止め部に係合して位置している。この位置では、係止体および係止受止め部を介して形成された形状結合部が、繊維機械における支持フレームもしくはドラフト装置ユニットの確実な位置固定をもたらす。ドラフト装置ユニットを解放するためには、係止受止め部から係止体を簡単にずらすことで十分であり、これにより支持フレームを運転位置から解放位置へと移動させることができる。係止体の構成および係止受止め部の対応する構成は、基本的に自由に選択可能である。したがって、たとえば対応する係止孔に係合させることができる係止フックまたは係止フックに取り囲まれるピンを使用することもできる。係止体は、ロック位置で対応する係止ピン収容部に係合する、移動可能な係止ピンとして形成されていてもよい。
【0018】
本発明の別の構成によれば、係止体にロック位置の方向で予荷重が加えられていることがさらに規定されている。本発明の対応する構成は、ドラフト装置ユニットが、解放位置から運転位置への移動後に自動的にロック位置に向かって予荷重を加えられた係止体により運転位置にロックされることを保証する。したがって、エラー状態または操作エラーに基づく未ロックは確実に阻止される。支持フレームの取除きが必要な場合には、単に、ロック体を予荷重に抗して開放位置に移動することしか必要ではなく、これにより運転位置から解放位置への支持フレームの簡単な移動と、この支持フレームの、繊維機械からの続く取出しを行うことができる。
【0019】
支持フレームは、ドラフト装置ユニットに対応配置された荷重支持体を旋回可能に支承するための少なくとも1つの支承箇所を有している。荷重支持体は少なくとも1つのトップローラを回転可能に保持することができる。さらに本発明の好適な変化形によれば、支持フレームが、少なくとも1つの付加ユニットを収容するために、特に本発明の有利な変化形により支持フレームに配置されたボトムローラの駆動ユニット、通信ユニットおよび/または駆動ユニットの制御機器を配置するために、形成されていることが規定されている。
【0020】
支持フレームにドラフト装置の別の構成群を配置する可能性は、ドラフト装置ユニットを、全体的にモジュール式に支持フレームを介してフレキシブルな形式で繊維機械もしくは対応配置された作業ユニットに配置されるか、もしくは繊維機械もしくは対応配置された作業ユニットから取り除くことができる、1つの完全なドラフト装置に形成することを可能にする。さらに、少なくとも1つの付加ユニットを収容するための取付けレールを備えた支持フレームの別の好適な構成は、少なくとも1つの付加ユニットを簡単な形式で、たとえば取付けレールの標準化された構成を介して支持フレームに配置し、移動させ、再びこの支持フレームから取り除く可能性を提供する。これにより得られる高いフレキシビリティは、廉価なメンテナンスおよび必要な場合には個別の付加ユニットの簡単な交換を可能にする。この付加ユニットは、トップローラに対応配置されたボトムローラであってもよい。
【0021】
ドラフト装置ユニット、特に支持フレームに配置された1つまたは複数の電子ユニットを対応配置された制御ユニットに接続することは、簡単な形式でケーブル接続部を介して、または代替的にワイヤレスのデータ伝送のために構成されている通信ユニットにより形成され得る。データ伝送は、作業ユニットの制御装置により、繊維装置全体の中央制御装置により、または複数の繊維機械を制御する上位の制御装置により行うことができる。
【0022】
本発明の別の構成によれば、支持フレームに、荷重支持体をそれぞれ旋回可能に支承するための2つの支承箇所が設けられていることが規定されている。荷重支持体は、特に少なくとも1つのトップローラを荷重支持体間で支承するために形成されている。隣り合って配置されたトップローラが、荷重支持体により負荷を加えられたウェブを介して互いに結合されている先行技術から公知の荷重支持体に対して、荷重支持体の間でのトップローラの配置は、対応配置されたボトムローラへのトップローラの圧力の特に均一な伝達を可能にする。なぜならば、荷重力が両側でトップローラに作用し、2つのトップローラの間に延びるウェブの中心に作用するのではないからである。均一な圧力分布は、特に有利な形式でドラフティング中に繊維の互いに対する均一な移動を保証するので、特に均一な繊維束を形成することができる。
【0023】
本発明の別の好適な構成によれば、支持フレームが、操作エレメント、特にグリップエレメントを有していることが規定されている。たとえば適切な手動操作工具を収容するために形成されていてもよい手動操作エレメントの使用は、支持フレームを簡単な形式で繊維機械もしくは作業ユニットから取り除くか、もしくは繊維機械もしくは作業ユニットに配置することを可能にする。特に簡単な構成では、手動操作エレメントがグリップエレメントとして形成されている。このグリップエレメントは、オペレータに、支持フレームを特に確実な形式で把持し、運転位置と解放位置との間で移動させることを可能にする。1つまたは複数のグリップエレメントの配置は、発生する操作力を考慮しながら行うことができ、これにより簡略化された操作を可能にすることができる。
【0024】
少なくとも1つのトップローラを有する荷重支持体を有しているドラフト装置ユニットを備えた発明に係るドラフト装置にとって特徴的であるのは、ドラフト装置ユニットが上述の好適な実施形態の1つによる支持フレームを有していて、該支持フレームに荷重支持体が旋回可能に支承されていることにある。
【0025】
相応して構成されたドラフト装置は、ドラフト装置ユニットの、支持フレームに配置された構成群に依存して、このドラフト装置ユニットが簡単かつ快適な形で繊維機械に配置され、かつこの繊維機械から再び取り除かれ得ることにより優れている。このことは、メンテナンス作業および修理作業ならびに調節作業および適合作業を快適な形式で、繊維機械から離れた別個の作業箇所で実施することを可能にする。この作業箇所では、ドラフト装置ユニットの全体的な構成群への良好なアクセスが生じる。ドラフト装置ユニットは、とりわけ、特に時間節減的な形式で組み立て、かつ再び分解することができ、これによりクリーニング作業を迅速に実施し、したがって繊維機械の停止時間を減少させることができる。ドラフト装置の交換も簡単な形式で可能であるので、さもなければ交換のために必要となる、対応してトレーニングされた作業員を省くことができる。
【0026】
好適な実施形態によれば、支持フレームに、たとえば例示的に上述された実施形態による、その間に位置する少なくとも1つのトップローラを備えた2つの荷重支持体が配置されている。両方の荷重支持体は、1つのグリップエレメントを介して互いに結合可能であるか、または結合されている。グリップエレメントは、特にトップローラに対して平行に、一方の荷重支持体から他方の荷重支持体にまで延びている、もしくはこのような形式で荷重支持体に配置され、かつ取外し可能に取り付けられていてよい。このような1つの共通のグリップエレメントは、構成部分を減少させられた簡単な形式で、繊維機械もしくは作業ユニットからのドラフト装置ユニットまたはドラフト装置の取出しと、作業ユニットもしくは繊維機械におけるドラフト装置ユニットまたはドラフト装置の配置とを可能にする。グリップエレメントの着脱可能な配置および取付けは、さらなる構成部材減少を可能にする。したがって、グリップエレメントはオペレータにより一緒にガイドされ、措置を行う場合に、ドラフト装置に配置されかつ取り付けられ得る。このような取付けは、通常の形式で形状結合式または力結合式に行うことができる。さらに、共通のグリップエレメントは、1つまたは複数のトップローラおよび/またはボトムローラのクリーニングのような措置、または繊維機械もしくは作業ユニットからのドラフト装置ユニットもしくはドラフト装置の取出しを要求しない別の措置を実施するために、支持フレームの運転位置における荷重支持体が、通常の形式で一緒に、ボトムローラから離間した位置に旋回され得ることを可能にする。これにより、操作性をさらに簡略化することができる。
【0027】
さらに好適な実施形態によれば、ドラフト装置は、作業ユニットに配置可能かつ取出し可能なドラフト装置モジュールとして構成されている。このためには、上述の例示的な形式で、少なくとも1つのトップローラを備えた少なくとも1つの荷重支持体と、少なくとも1つのトップローラに対応配置されたボトムローラと、このボトムローラを回転駆動する駆動装置とが支持フレームに配置されている。この駆動装置は、ケーブル接続式に、またはワイヤレスに制御装置に接続可能である。さらに好適には、支持フレームにボトムローラを駆動するための制御装置が配置されていて、特に駆動装置に接続されていてよい。
【0028】
本発明の実施例を以下に図面に関連して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】繊維機械の、対応配置され、運転位置に配置されたドラフト装置を備える紡績ユニットの斜視図である。
【
図2】
図1に示された紡績ユニットおよびドラフト装置を、ドラフト装置が取り出された位置で示す斜視図である。
【
図3】
図1に示された紡績ユニットおよびドラフト装置を、ドラフト装置の運転位置で示す側面図である。
【0030】
図1および
図3には、紡績ユニット1に対応配置されたドラフト装置2がその運転位置で図示されている。この運転位置では、ドラフト装置2は紡績ユニット1に対して固定されている。紡績ユニット1およびドラフト装置2は、相並んで配置された多数の作業ユニットを有する繊維機械(図示せず)の1つの作業ユニットを形成する。
【0031】
図1および
図3に図示された運転位置では、ドラフト装置2に供給される繊維束(図示せず)が、それぞれトップローラ7と対応配置されたボトムローラとから成る全部で4つのローラ駆動装置の間でドラフティングされ、紡績ユニット1の紡績ノズル10に供給される。
【0032】
個別駆動装置8により駆動されるボトムローラならびに平行に延びる2つの荷重支持体6に配置されたトップローラ7は、支持フレーム3に配置されている。荷重支持体6は、旋回可能に支持フレーム3に結合されている。支持フレーム3は、それぞれ1つの切欠き5を有する2つの側方エレメント15を有している。
【0033】
図2において分解された位置で図示されているドラフト装置2を組み付けるために、ドラフト装置2はまず解放位置で繊維機械に配置され、この解放位置では、支持フレーム3に設けられた切欠き5が、繊維機械の、受止め区分を形成する支持管4に被せ嵌められている。繊維機械を運転開始するためには、ドラフト装置2は、この解放位置を起点として、支持管4を中心としたドラフト装置2の旋回運動により、ドラフト装置2の、
図1および
図3に図示されている運転位置に至るまで移動させられる。運転位置では、支持フレーム3の側方エレメント15の、切欠き5とは反対の側に位置する端部に配置されている、側方エレメント15に結合された係止フック12が、紡績ユニット1に設けられたロッド状に形成された係止フック受止め部13に係合し、この場合、係止フック開口14が、ロッド状の係止フック受止め部13を部分的に取り囲む。
【0034】
係止フック12および係止フック受止め部13を介して、ドラフト装置2は、ドラフティングされた繊維束がドラフト装置2から紡績ユニット1の紡績ノズル10内に確実に到達するように、紡績ユニット1に対して位置調整されている。制御機器11は、支持フレーム3の下面に配置されている。制御機器11は、取付け孔16を介して側方エレメント15に位置固定されたガイドレール(図示せず)において直線的に移動可能に支持フレーム3に支承されている。
【0035】
互いに離間して配置されている各荷重支持体6は、その都度一体的に、荷重支持体6の間でトップローラ7を支承するので、トップローラ7は、それぞれ個別駆動装置8を介して駆動されているボトムローラに均一な荷重力で押し当てられる。ドラフト装置2の快適な移動のために、荷重支持体6にはハンドグリップ9が配置されている。さらにこのハンドグリップ9は、荷重支持体6を事前のロック解除後にボトムローラに対して旋回させることを可能にする。
【符号の説明】
【0036】
1 ドラフト装置
2 紡績ユニット
3 支持フレーム
4 支持管
5 切欠き
6 荷重支持体
7 トップローラ
8 駆動ユニット
9 グリップエレメント
10 紡績ノズル
11 制御機器
12 係止体/係止フック
13 係止フック受止め部
14 係止フック開口
15 側方エレメント
16 取付け孔