(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】墓、カロートおよび水抜きユニット
(51)【国際特許分類】
E04H 13/00 20060101AFI20230828BHJP
【FI】
E04H13/00 B
(21)【出願番号】P 2019145094
(22)【出願日】2019-08-07
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】514195399
【氏名又は名称】西本 恵則
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】西本 恵則
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-018162(JP,U)
【文献】特開2002-106209(JP,A)
【文献】特開2004-197304(JP,A)
【文献】特開2006-214262(JP,A)
【文献】特開平09-242388(JP,A)
【文献】特開2005-139864(JP,A)
【文献】米国特許第06243997(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤の表面上に載置されるカロート
と、
水抜きユニットと
を備え、
前記カロートは、遺骨の収納空間である納骨室を囲む枠体と、前記枠体を貫通する水抜き穴とを有し、
前記水抜き穴の両端のうち、一端は前記納骨室に開口するとともに他端は外気に開口し、
前記納骨室は、前記水抜き穴を介して外気に連通
し、
前記水抜きユニットは、前記水抜き穴に対して外側から挿脱方向に挿脱可能な筐体を有し、
前記水抜きユニットは、前記挿脱方向に前記筐体を貫通するように延設されて、前記筐体の前記挿脱方向の両端で開口するユニット穴を有する墓。
【請求項2】
前記納骨室は、下方に開口して前記地盤の表面に露出しており、
前記水
抜き穴は、前記枠体の底面に設けられた、下方に開口する溝であり、前記地盤の表面に露出する請求項1に記載の墓。
【請求項3】
前記地盤の表面うち、前記納骨室が開口する範囲の少なくとも一部には土が設けられている請求項2に記載の墓。
【請求項4】
前記水抜きユニットは、前記ユニット穴に対して設けられた網を有し、前記網は、前記挿脱方向における前記ユニット穴の外側の端から内側の端へ向けて異物が進入するのを規制する請求項
1に記載の墓。
【請求項5】
前記網は、前記挿脱方向から見て前記ユニット穴の全体に重なるように、前記ユニット穴の内部に配置されている請求項
4に記載の墓。
【請求項6】
前記網は、前記ユニット穴の前記挿脱方向の両端のそれぞれに対して設けられている請求項
5に記載の墓。
【請求項7】
前記網は、前記ユニット穴の内部に嵌め込まれている請求項
4ないし6のいずれか一項に記載の墓。
【請求項8】
前記水抜きユニットは、前記筐体の前記挿脱方向の外側に取り付けられた鍔部をさらに有し、
前記鍔部には、前記ユニット穴に対して開口する貫通穴が設けられ、
前記鍔部は、前記筐体から前記挿脱方向に直交する方向に突出し、
前記筐体が前記水抜き穴に挿入された状態において、前記鍔部は、前記挿脱方向から見て前記水抜き穴と前記筐体との間の隙間に重なる請求項
1ないし7のいずれか一項に記載の墓。
【請求項9】
前記水抜きユニットは、前記筐体の外側に設けられた弾性部材をさらに有し、
前記筐体が前記水抜き穴に挿入された状態において、前記弾性部材は、前記筐体と水抜き穴との間に挟まれて弾性変形する請求項
1ないし8のいずれか一項に記載の墓。
【請求項10】
前記カロートは、前記水抜き穴よりも上方で前記枠体を貫通する通風穴をさらに有し、
前記通風穴の両端のうち、一端は前記納骨室に開口するとともに他端は外気に開口し、
前記納骨室は、前記通風穴を介して外気に連通する請求項1ないし
9のいずれか一項
に記載の墓。
【請求項11】
墓のカロート内の納骨室と外気とを連通させる水抜き穴に対して外側から挿脱方向に挿脱可能な筐体と、
前記挿脱方向に前記筐体を貫通するように延設されて、前記筐体の前記挿脱方向の両端で開口するユニット穴と
を備える水抜きユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、墓のカロート内に形成された納骨室を清浄に保つための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、墓は、遺骨を収納する納骨室が内部に形成されたカロートを備える。特許文献1で指摘されているように、このような墓では、納骨室へ浸入した水が納骨室に溜まることが問題となっていた。特許文献1の墓では、この問題に対応するために、納骨室から排水を行う構成が具備されている。具体的には、納骨室の下側に砂利層が配設され、納骨室に水抜き穴を介して連通する空洞部が砂利層内に形成されている。さらに、砂利層の下端部分から外部に水を抜く排水パイプが設けられている。かかる墓では、納骨室から空洞部に落下した水は、砂利層内を通過して排水パイプまで到達し、排水パイプにより外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の墓では、コンクリート壁の区画内に盛土を行うことで造成された地盤内にカロートが埋設されている。このように、カロートが地盤によって囲まれているため、地盤に含まれる水分の影響で、カロート内の納骨室の湿度が高くなり、納骨室に多量のカビが発生するおそれがあった。また、豪雨が発生したような場合には、地盤に吸収された雨が大量に納骨室に流れ込んで、納骨室からの排水が間に合わずに、納骨室が浸水してしまうおそれもあった。このような要因により、納骨室を清浄に保つことは必ずしも容易ではなかった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、墓の納骨室を清浄に保つことを可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る墓は、地盤の表面上に載置されるカロートを備え、カロートは、遺骨の収納空間である納骨室を囲む枠体と、枠体を貫通する水抜き穴とを有し、水抜き穴の両端のうち、一端は納骨室に開口するとともに他端は外気に開口し、納骨室は、水抜き穴を介して外気に連通する。
【0007】
本発明に係るカロートは、地盤の表面上に載置される枠体と、枠体に囲まれた、遺骨の収納空間である納骨室と、枠体を貫通する水抜き穴とを備え、水抜き穴の両端のうち、一端は納骨室に開口するとともに他端は外気に開口し、納骨室は、水抜き穴を介して外気に連通する。
【0008】
このように構成された本発明(墓、カロート)では、カロートの枠体は地盤の表面上に載置され、この枠体の内側に納骨室が設けられる。したがって、カロートの周囲には地盤が存在せず、カロートの外壁面は大気に晒されている。よって、周囲の地盤に含まれる水分の影響でカロート内の納骨室にカビが発生したり、周囲の地盤から流れ込んだ多量の雨によって納骨室が浸水したりといった状況が生じるのを抑制できる。さらに、納骨室は、水抜き穴を介して外気に連通する。そのため、水抜き穴によって納骨室と外気との風通しを良くして、納骨室が湿気るのを抑制できるとともに、水抜き穴により排水することで、納骨室に流れ込んだ雨によって納骨室が浸水するのを抑制できる。その結果、墓の納骨室を清浄に保つことが可能となっている。
【0009】
また、納骨室は、下方に開口して地盤の表面に露出しており、水向き穴は、枠体の底面に設けられた、下方に開口する溝であり、地盤の表面に露出するように、墓を構成してもよい。かかる構成では、上下方向において、納骨室の底面に相当する地盤の表面と、排水路として機能する水抜き穴の底面とが近接する。そのため、地盤の表面に付着する水分を、水抜き穴を介して納骨室から効率的に排出して、納骨室が湿気たり、納骨室に水が溜まったりするのをより確実に抑制することができる。
【0010】
また、地盤の表面うち、納骨室が開口する範囲の少なくとも一部には土が設けられているように、墓を構成してもよい。かかる構成では、納骨室の底面を規定する地盤の少なくとも一部で、土が露出する。そのため、土に含まれる水分により、納骨室が湿気やすくなる。これに対して、上記の構成では、納骨室の底面で露出する土の表面と、排水路として機能する水抜き穴の底面とが近接する。そのため、土からの水分を、水抜き穴を介して納骨室から効率的に排出して、納骨室が湿気るのをより確実に抑制することができる。
【0011】
ところで、上記のようにカロートの枠体に水抜き穴を設けた場合、水抜き穴に入り込んだ石、土あるいは虫などの混入物によって水抜き穴が詰まってしまう場合が想定される。このような場合、水抜き穴から外側へ混入物を取り出すことが難しい。
【0012】
そこで、水抜き穴に対して外側から挿脱方向に挿脱可能な筐体を有する水抜きユニットをさらに備え、水抜きユニットは、挿脱方向に筐体を貫通するように延設されて、筐体の挿脱方向の両端で開口するユニット穴を有するように、墓を構成してもよい。かかる構成では、水抜き穴に水抜きユニットが挿入されるため、混入物は水抜きユニットのユニット穴に入り込む。したがって、水抜きユニットを外側へ引き出すことで、混入物を水抜きユニットとともに水抜き穴から取り出すことができ、水抜き穴の詰まりを簡単に解消することができる。その結果、水抜き穴の機能を十分に発揮させて、墓の納骨室を清浄に保つことができる。
【0013】
また、水抜きユニットは、ユニット穴に対して設けられた網を有し、網は、挿脱方向におけるユニット穴の外側の端から内側の端へ向けて異物が進入するのを規制するように、墓を構成してもよい。かかる構成は、水抜き穴の外側から納骨室へ向けて虫などが入り込むのを網によって抑制できるため、納骨室を清浄に保つのに有利となる。
【0014】
また、網は、挿脱方向から見てユニット穴の全体に重なるように、ユニット穴の内部に配置されているように、墓を構成してもよい。かかる構成は、水抜き穴の外側から納骨室へ向けて虫などが入り込むのを網によってより確実に抑制できるため、納骨室を清浄に保つのにさらに有利となる。
【0015】
また、網は、ユニット穴の挿脱方向の両端のそれぞれに対して設けられているように、墓を構成してもよい。かかる構成では、ユニット穴の両端に対して設けられた網のうち、外側の網が外部からの衝撃などにより破損しても、納骨室へ向けて虫などが入り込むのを内側の網によって抑制できる。
【0016】
また、網は、ユニット穴の内部に嵌め込まれているように、墓を構成してもよい。これによって、水抜きユニットをコンパクトに構成することができる。
【0017】
また、水抜きユニットは、筐体の挿脱方向の外側に取り付けられた鍔部をさらに有し、鍔部には、ユニット穴に対して開口する貫通穴が設けられ、鍔部は、筐体から挿脱方向に直交する方向に突出し、筐体が水抜き穴に挿入された状態において、鍔部は、挿脱方向から見て水抜き穴と筐体との間の隙間に重なるように、墓を構成してもよい。かかる構成では、水抜き穴に挿入された筐体と水抜き穴との隙間に異物が進入するのを、鍔部によって抑制できる。
【0018】
また、水抜きユニットは、筐体の外側に設けられた弾性部材をさらに有し、筐体が水抜き穴に挿入された状態において、弾性部材は、筐体と水抜き穴との間に挟まれて弾性変形するように、墓を構成してもよい。かかる構成では、水抜き穴に挿入された筐体は、弾性部材の弾性力によって水抜き穴の内側に保持されるため、水抜き穴から筐体が抜け出してしまうのを抑制できる。
【0019】
また、カロートは、水抜き穴よりも上方で枠体を貫通する通風穴をさらに有し、通風穴の両端のうち、一端は納骨室に開口するとともに他端は外気に開口し、納骨室は、通風穴を介して外気に連通するように、墓を構成してもよい。かかる構成では、水抜き穴とこれより上方の通風穴とを介して納骨室と外気とが連通する。そのため、上方から下方あるいは下方から上方への空気の流れを確保して、納骨室が湿気るのを効果的に抑制することができる。
【0020】
本発明に係る水抜きユニットは、墓のカロート内の納骨室と外気とを連通させる水抜き穴に対して外側から挿脱方向に挿脱可能な筐体と、挿脱方向に筐体を貫通するように延設されて、筐体の挿脱方向の両端で開口するユニット穴とを備える。
【0021】
このように構成された本発明(水抜きユニット)では、水抜き穴に筐体が挿入されるため、混入物は筐体に設けられたユニット穴に入り込む。したがって、筐体を外側へ引き出すことで、混入物を筐体とともに水抜き穴から取り出すことができ、水抜き穴の詰まりを簡単に解消することができる。その結果、水抜き穴の機能を十分に発揮させて、墓の納骨室を清浄に保つことができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、墓の納骨室を清浄に保つことが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図12A】水抜き金具の構成を模式的に示す分解斜視図。
【
図12B】水抜き金具の構成を模式的に示す部分断面図。
【
図13】水抜き穴への水抜き金具の装着方法を模式的に示す部分断面図。
【
図14】水抜き金具の使用方法の一例を模式的に示す部分断面図。
【
図15】本発明に係るカロートの変形例を示す左後方斜視図。
【
図17】水抜き金具の板バネの変形例を模式的に示す分解斜視図。
【
図18A】水抜き金具の第1変形例を模式的に示す斜視図。
【
図18B】水抜き金具の第2変形例を模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は本発明に係る墓を示す斜視図であり、
図2は本発明に係る墓の断面を示す断面図である。両図および以下の図では、前後方向X、左右方向Yおよび上下方向ZからなるXYZ直交座標軸を適宜示す。ここで、前後方向Xおよび左右方向Yはそれぞれ水平方向であり、上下方向Zは鉛直方向である。また、「前」とは、墓1の参拝者が墓1に対して位置する方向とし、前後方向X、左右方向Yおよび上下方向Zのそれぞれは、この参拝者を基準とした方向である。
【0025】
この墓1は、上下方向Zに積み上げられた、それぞれ石製のカロート2、下石3、上石4および竿石5を備える。つまり、水平に整地された地盤Gの表面Gs(換言すれば、墓1の設置面)の上にカロート2が載置され、カロート2の上に下石3が載置され、下石3の上に上石4が載置され、上石4の上に竿石5が載置される。また、墓1は、それぞれ石製の供物台6と香炉7とを備え、供物台6は、カロート2の上に載置されて、下石3の前に位置し、香炉7は、下石3の上に載置されて、上石4の前に位置する。
【0026】
なお、
図2に示す例では、地盤G表面Gsうち、カロート2内の納骨室20に対向する範囲の一部(後述する、凹部22c以外の部分)は土Sである。また、地盤Gの表面Gsのうち、土S以外の部分は、コンクリートである。
【0027】
図3は本発明に係るカロートを示す左前方斜視図であり、
図4は本発明に係るカロートを示す左後方斜視図であり、
図5は本発明に係るカロートの正面図であり、
図6は本発明に係るカロートの背面図であり、
図7は本発明に係るカロートの平面図であり、
図8は本発明に係るカロートの底面図であり、
図9は本発明に係るカロートの右側面図であり、
図10は本発明に係るカロートの左側面図であり、
図11は本発明に係るカロートのA-A線断面図である。
【0028】
このカロート2は石製の墓用納骨箱であり、遺骨の収納空間である納骨室20を内部に有する。具体的には、カロート2は、平面視において、前後方向Xおよび左右方向Yから納骨室20を囲む石枠21を有し、納骨室20は石枠21の内側を上下方向Zに貫通するように設けられている。このように納骨室20は上方および下方の両方へ開口する。
【0029】
納骨室20を四方(前後左右)から囲む石枠21は、前側周縁部材22、左側周縁部材23、右側周縁部材24および後側周縁部材25を有する。前側周縁部材22が納骨室20の前側に位置するとともに、後側周縁部材25が納骨室20の後側に位置し、前側周縁部材22と後側周縁部材25とは前後方向Xから納骨室20を挟むように間隔を空けて配置されている。また、左側周縁部材23が納骨室20の左側に位置するとともに、右側周縁部材24が納骨室20の右側に位置し、左側周縁部材23と右側周縁部材24とは左右方向Yから納骨室20を挟むように間隔を空けて配置されている。これら前側周縁部材22、左側周縁部材23、右側周縁部材24および後側周縁部材25は、上下方向Zに互いに同じ寸法(高さ)を有する。
【0030】
前側周縁部材22は、左右方向Yに長尺に形成されており、前後方向Xに平行な対称軸(正面視における幾何重心に一致)に対して180度回転対称(すなわち、2回対称)な形状を有する。この前側周縁部材22は、前後方向X、左右方向Yおよび上下方向Zのいずれかに平行な辺で構成された直方体に対して、左右方向Yの両端の前側の隅にアール面22a、22b(面取り面)を設けるとともに、左右方向Yの中央において前側に凹んだ長方形の凹部22cを後端面に設けた形状を有する。この凹部22cは、納骨室20の一部を構成する。前側周縁部材22の壁面のうち、アール面22a、22b以外の壁面221~228はいずれも上下方向Zに平行な平面である。
【0031】
壁面221は、前側周縁部材22の前端に位置して左右方向Yに平行に延設されている。壁面222は、前側周縁部材22の左端に位置して前後方向Xに平行に延設されている。この壁面222は、壁面221より後側に位置しており、左端のアール面22aは、壁面221の左端から壁面222の前端にかけて延設されている。壁面223は、前側周縁部材22の右端に位置して前後方向Xに平行に延設されている。この壁面223は、壁面221より後側に位置しており、右端のアール面22bは、壁面221の右端から壁面223の前端にかけて延設されている。
【0032】
壁面224は、前側周縁部材22の後端に位置し、左端の壁面222の後端から左右方向Yに平行に右側へ向けて延設されている。壁面225は、前側周縁部材22の後端に位置し、右端の壁面223の後端から左右方向Yに平行に左側へ向けて延設されている。左右方向Yにおいて、壁面224の幅W224と壁面225の幅W225とは等しく、これらの和(=W224+W225)は、前側周縁部材22の幅W22(換言すれば、壁面224と壁面225との間の距離)より短い(W224+W225<W22)。
【0033】
凹部22cは、壁面224の右端と壁面225の左端との間に設けられ、壁面224、225から前側に突出する。この凹部22cは、壁面226、壁面227および壁面228により範囲が規定される長方形の空間である。壁面226は、凹部22cの左端に位置し、壁面224の右端から前後方向Xに平行に前側に延設されている。壁面227は、凹部22cの右端に位置し、壁面225の左端から前後方向Xに平行に前側に延設されている。これら壁面226、227は互いに同じ長さを有する。壁面228は、壁面226の前端と壁面227の前端との間で左右方向Yに平行に延設され、壁面221より後側に位置する。左右方向Yにおいて壁面228の幅W228は、壁面224の幅W224および壁面225の幅W225より短い(W228<W224=W225)。
【0034】
かかる前側周縁部材22の後側に、左側周縁部材23および右側周縁部材24が配置されている。左側周縁部材23および右側周縁部材24は、前後方向X、左右方向Yおよび上下方向Zのいずれかに平行な辺で構成された直方体であり、互いに合同である。これらのうち、左側周縁部材23は、前側周縁部材22の左端に対して設けられ、右側周縁部材24は、前側周縁部材22の右端に対して設けられている。つまり、左側周縁部材23の前端面は、前側周縁部材22の壁面224に後側から接触し、左側周縁部材23の左端面と前側周縁部材22の壁面222とは面一である。右側周縁部材24の前端面は、前側周縁部材22の壁面225に後側から接触し、右側周縁部材24の右端面と前側周縁部材22の壁面223とは面一である。
【0035】
後側周縁部材25は、前後方向X、左右方向Yおよび上下方向Zのいずれかに平行な辺で構成された直方体を切り欠いて、水抜き穴26を形成した構成を具備する。この後側周縁部材25は、左右方向Yにおいて左側周縁部材23と右側周縁部材24との間に配置され、左側周縁部材23および右側周縁部材24それぞれに接触する。後側周縁部材25の前端面251は、前後方向Xに垂直な平面であり、納骨室20の境界を規定する。後側周縁部材25の後端面252は、前後方向Xに垂直な平面であり、左側周縁部材23の後端面と右側周縁部材24の後端面と面一である。後側周縁部材25の底面253は、前端面251の下端と後端面252の下端との間で前後方向Xに延設されている。
【0036】
そして、水抜き穴26は、左右方向Yにおける後側周縁部材25の中央に設けられ、後側周縁部材25の前端面251から後端面252へと前後方向Xに平行に貫通する。つまり、水抜き穴26の前後方向Xの両端261、262のうち、前端261(一端)は後側周縁部材25の前端面251において納骨室20に開口するとともに、後端262(他端)は後側周縁部材25の後端面252において外気に開口する。したがって、納骨室20は、水抜き穴26を介して外気に連通する。
【0037】
この水抜き穴26は、後側周縁部材25の底面253に前後方向Xに平行に延設された逆U字形状の切り欠き溝である。つまり、水抜き穴26は、それぞれ上下方向Zに平行に立設されて左右方向Yに間隔を空けて並ぶ側壁264、265と、側壁264の上端と側壁265の上端との間を繋ぐ天井壁266とを有し、側壁264、265はそれぞれ平面であり、天井壁266は、側壁264、265それぞれの上端から上側に突出する曲面である。このように、水抜き穴26は、後側周縁部材25の底面253に設けられた、下方に開口する溝であり、後側周縁部材25が載置された地盤Gの表面Gsに露出する。
【0038】
このように構成されたカロート2の石枠21の上面に、上述の下石3および供物台6が載置される。具体的には、下石3は、左側周縁部材23、右側周縁部材24および後側周縁部材25の上面に載置され、前側周縁部材22の上面からは後側に外れて配置されている。こうして、下石3は、納骨室20のうち凹部22c以外の部分に上側から重複して、当該部分を塞ぐ。また、供物台6は、前側周縁部材22の上面に配置され、左側周縁部材23、右側周縁部材24および後側周縁部材25の上面からは前側に外れて配置されている。なお、供物台6は凹部22cを左右方向Yに跨ぐように配置され、凹部22cに上側から重複して凹部22cを塞ぐ。ただし、納骨室20の塞ぎ方はここの例に限られず、例えば、下石3によって納骨室20の全体を塞いでもよい。要するに、カロート2の上に載置される上側部材によって納骨室20を塞げばよい。
【0039】
また、下石3は搬入路31(
図2)を内部に有し、この搬入路31は、カロート2の石枠21の内側に広がる納骨室20(凹部22cを含む)に連通する。そして、供物台6の前扉61を開いて、さらに下石3の前扉32を開くことで、下石3の搬入路31を介してカロート2の納骨室20を開放することができる。納骨の際には、作業者は、このようにして納骨室20を開放してから、搬入路31を介して納骨室20に遺骨を収納する。
【0040】
以上に示した実施形態では、カロート2の石枠21は地盤Gの表面Gs上に載置され、この石枠21の内側に納骨室20が設けられる。したがって、カロート2の周囲(前後左右)には地盤Gが存在せず、カロート2の外壁面は大気に晒されている。よって、周囲の地盤Gに含まれる水分の影響でカロート2内の納骨室20にカビが発生したり、周囲の地盤Gから流れ込んだ多量の雨によって納骨室20が浸水したりといった状況が生じるのを抑制できる。さらに、納骨室20は、水抜き穴26を介して外気に連通する。そのため、水抜き穴26によって納骨室20と外気との風通しを良くすることで、納骨室20が湿気るのを抑制できるとともに、水抜き穴26により排水することで、納骨室20に流れ込んだ雨によって納骨室20が浸水するのを抑制できる。その結果、墓1の納骨室20を清浄に保つことが可能となっている。
【0041】
さらに言うと、この実施形態では、特許文献1のように、排水パイプを地盤G内に埋設する必要がないため、墓1の設置に要する作業負担や費用を低減できる。
【0042】
また、納骨室20は、下方に開口して地盤Gの表面Gsに露出しており、水抜き穴26は、石枠21の後側周縁部材25の底面253に設けられた、下方に開口する溝であり、地盤Gの表面Gsに露出する。かかる構成では、納骨室20の底面と水抜き穴26の底面とがいずれも地盤Gの表面Gsにより規定されており、上下方向Zにおいて、納骨室20の底面に相当する地盤Gの表面Gsと、排水路として機能する水抜き穴26の底面とが近接(さらに言えば一致)する。そのため、地盤Gの表面Gsに付着する水分を、水抜き穴26を介して納骨室20から効率的に排出して、納骨室20が湿気たり、納骨室20に水が溜まったりするのをより確実に抑制することができる。
【0043】
また、地盤Gの表面Gsうち、納骨室20が開口する範囲の少なくとも一部には土Sが設けられている。かかる構成では、納骨室20の底面を規定する地盤Gの少なくとも一部では、土Sが露出する。そのため、土Sに含まれる水分により、納骨室20が湿気やすくなる。これに対して、上記の構成では、納骨室20の底面で露出する土Sの表面と、排水路として機能する水抜き穴26の底面とが近接(さらに言えば一致)する。そのため、土Sから蒸発した水分を、水抜き穴26を介して納骨室20から効率的に排出して、納骨室20が湿気るのをより確実に抑制することができる。
【0044】
また、納骨室20を囲む石枠21の前側周縁部材22には、前側周縁部材22の後端に位置する壁面224、225から前側に突出する凹部22cが設けられ、この凹部22cが納骨室20の一部を構成する。したがって、墓1をコンパクトに構成しつつ、納骨室20の容積を広く確保することが可能となっている。
【0045】
ところで、上記のようにカロート2の石枠21に水抜き穴26を設けた場合、水抜き穴26に入り込んだ石、土、虫あるいは泥水などの混入物によって水抜き穴26が詰まってしまう場合が想定される。このような場合、例えば棒のような物を外側から水抜き穴26に差し込んで、混入物を納骨室20に押し出すことで、水抜き穴26の詰まりを解消することはできる。ただし、この方法では、納骨室20に混入物が入ってしまう。そのため、混入物を納骨室20から除去するために、前扉61および前扉32を外して納骨室20を開放してから納骨室20内を清掃するといった作業が必要となり、作業者の負担が過大となってしまう。そこで、次のような水抜き金具を水抜き穴26に予め装着しておいてもよい。
【0046】
図12Aは水抜き金具の構成を模式的に示す分解斜視図であり、
図12Bは水抜き金具の構成を模式的に示す部分断面図である。両図では、互いに直交する方向Dx、Dy、Dzが示されている。水抜き金具9は、長尺方向Dxに平行に延設された矩形状の筐体91を備える。この筐体91は、底板911と、底板911の幅方向Dyの両端から高さ方向Dzに立設された2枚の側壁板912、913と、2枚の側壁板912、913の上端の間に架設された天井板914とを有する。底板911および天井板914は、長尺方向Dxおよび幅方向Dyに平行に配置された平板であり、高さ方向Dzに間隔を空けて互いに対向する。側壁板912および側壁板913は、高さ方向Dzおよび長尺方向Dxに平行に配置された平板であり、幅方向Dyに間隔を空けて互いに対向する。
【0047】
かかる水抜き金具9は、長尺方向Dxに筐体91を貫通するように設けられた金具穴92を有する。この金具穴92は、長尺方向Dxに延設された矩形状を有し、筐体91の長尺方向Dxの両端で開口する。なお、ここの例では、長尺方向Dxから見て、金具穴92の形状(すなわち、開口の形状)は正方形であるが、他の形状(長方形あるいは円形など)でもよい。
【0048】
また、水抜き金具9は、金具穴92に対して長尺方向Dxから着脱自在なフィルター部材93を有する。フィルター部材93は、長尺方向Dxの両端に配置された金網931、932を有する。金網931および金網932は、幅方向Dyおよび高さ方向Dzに平行な平板形状を有し、長尺方向Dxに間隔を空けて互いに対向する。長尺方向Dxから見て、金網931、932および金具穴92は、合同な形状を有し、互いに重なり合う。これら金網931および金網932の素材としては、例えば鉄、アルミニウムなどの金属や、ステンレス鋼などの合金鋼を用いることができる。
【0049】
また、フィルター部材93は、金網931および金網932それぞれの上端の間に架設された天井板933を有する。この天井板933は、長尺方向Dxおよび幅方向Dyに平行な平板形状を有し、金網931と金網932とを接続する。さらに、フィルター部材93は、金網931の下端から金網932側に延設された底板934と、金網932の下端から金網931側に延設された底板935とを有する。底板934、935は、長尺方向Dxおよび幅方向Dyに平行な平板形状を有し、長尺方向Dxに間隔を空けて並ぶ。天井板933および底板934、935は、いずれも金網931、932と同一の素材で構成され、フィルター部材93の全体は金網素材で形成されている。かかるフィルター部材93は、平板状の一枚の金網素材に曲げ加工を施すことで作成できる。ただし、フィルター部材93の具体的構成はこの例に限られず、天井板933および底板934、935を例えば金属板で作成してもよい。
【0050】
図12Bに示すように、筐体91に設けられた金具穴92内にフィルター部材93が装着されることで、金網931、932は、金具穴92の内側に嵌め込まれる。かかる状態にでは、金網931、932のうち、外側(すなわち、納骨室20の反対側)の金網931は、金具穴92の外側の端に位置し、内側(すなわち、納骨室20側)の金網932は、金具穴92の内側の端に位置する。
【0051】
さらに、水抜き金具9は、筐体91の外側の端(換言すれば、長尺方向Dxから見て、筐体91の金具穴92を囲む周縁部)に取り付けられた鍔部94を備える。この鍔部94は、例えば鉄、アルミニウムなどの金属や、ステンレス鋼などの合金鋼で作成され、筐体91に例えば溶接、接着、半田あるいはネジ止めにより筐体91に取り付けられる。鍔部94は、幅方向Dyにおいて筐体91より広い幅を有し、高さ方向Dzにおいて筐体91より高い高さを有する。また、鍔部94の下端の位置と筐体91の下端の位置とは、高さ方向Dzに一致するとともに、長尺方向Dxから見て、鍔部94は筐体91から、幅方向Dyの両側(左右側)に突出するとともに、高さ方向Dzの上側に突出する。
【0052】
また、鍔部94に対しては、貫通穴941が長尺方向Dxに貫通する。長尺方向Dxから見て、貫通穴941は金具穴92に重なり、貫通穴941の中心(幾何重心)と金具穴92の中心とは一致する。かかる貫通穴941と金具穴92は互いに連通する。ここの例では、貫通穴941は円形であるが、貫通穴941の形状はこの例に限られず、金具穴92と合同な形状としてもよい。さらには、貫通穴941は閉じた形状である必要はなく、例えば下側に開いた形状でもよい。
【0053】
図13は水抜き穴への水抜き金具の装着方法を模式的に示す部分断面図である。
図13に示すように、水抜き金具9の装着作業は、水抜き金具9の長尺方向Dx、幅方向Dyおよび高さ方向Dzをそれぞれ前後方向X、左右方向Yおよび上下方向Zに一致させた状態で実行される。この装着作業は、作業者によって実行される。
【0054】
図12Aおよび
図12Bでは記載を省略したが、
図13に示すように、水抜き金具9は、筐体91の左右方向Yの両側に板バネ95を備える。各板バネ95は、筐体91から側方(幅方向Dy)に突出し、特に筐体91の挿入方向と逆方向(後方)に向かうに連れて側方に向かうように(すなわち、広がるように)筐体91の外壁面に対して傾く。つまり、2個の板バネ95のうち、側壁板912の外壁面に取り付けられた一方側の板バネ95は、当該逆方向(後方)に向かうに連れて一方側に向かうように、側壁板912の外壁面から一方側に突出し、側壁板913に取り付けられた他方側(一方側の反対側)の板バネ95は、当該逆方向(後方)に向かうに連れて他方側に向かうように、側壁板913の外壁面から他方側に突出する。ここで、挿入方向とは、水抜き穴26に対して水抜き金具9の筐体91を挿入する方向であり、ここの例では前後方向Xの前方へ向かう方向である。かかる板バネ95は、筐体91と別体で作成してから筐体91に取り付けられてもよいし、筐体91に入れた切れ目を側方に折り曲げることで設けられてもよい。なお、板バネ95の形状は、ここの例の平板形状に限られず、湾曲した形状でも構わない。あるいは、両板バネ95は、後方に向かって広がるように設けられているが、前方に向かって広がるように設けられてもよい。
【0055】
図13の「装着前」の欄に示すように、各板バネ95に外力が作用していない自然状態では、幅方向Dy(左右方向Yに相当)において、両板バネ95の頂部(後端)の間の距離W95は、水抜き穴26の幅W26(側壁264と側壁265との間の距離に相当)よりも広い。かかる自然状態から、
図13の「装着中」の欄に示すように、長尺方向Dxにおいて鍔部94と反対側の筐体91の端から、筐体91が水抜き穴26に挿入されると、各板バネ95が水抜き穴26の側壁264、265に接触する。さらに筐体91が納骨室20に向けて水抜き穴26に挿入されるのに伴って、各板バネ95が側壁264、265により内側に押し遣られて、両板バネ95の頂部(後端)の間の距離が抜き穴26の幅W26にまで狭まり、続いて、鍔部94の前面が後側周縁部材25の後端面252(外壁面)に接触する(
図13の「装着後」の欄)。
【0056】
このように水抜き金具9が水抜き穴26に装着された装着状態では、両板バネ95は、側壁板912、913と水抜き穴26の側壁264、265との間に挟まれて弾性変形する。これによって、両板バネ95は、
図13の白抜き矢印で示す弾性力によって、側壁264、側壁265を押圧する。その結果、水抜き金具9の筐体91は、板バネ95の弾性力によって水抜き穴26内に保持される。
【0057】
また、装着状態において、納骨室20は、水抜き金具9の金具穴92を介して石枠21の外側と連通する。ただし、上述のとおり、金具穴92には、金網931、932が嵌め込まれているため、金網931、932の目よりも大きなものは、金網931、932を通過できず、外側から納骨室20へ進入できない。これに対して、金網931、932を通過できる気体および液体は、納骨室20から水抜き金具9の金具穴92を介して外側へ流出できる。また、鍔部94は、水抜き穴26の外側に位置しつつ後側周縁部材25の後端面252に接触し、長尺方向Dxから見て水抜き穴26の内壁面と筐体91の外壁面との間の隙間に重なる。つまり、当該隙間は、鍔部94によって塞がれる。
【0058】
図14は水抜き金具の使用方法の一例を模式的に示す部分断面図である。上述したように、水抜き金具9の長尺方向Dxを前後方向Xに一致させた状態で、水抜き金具9をカロート2の水抜き穴26に外側から挿入することができる(
図14の「装着時」の欄)。こうして、水抜き金具9が水抜き穴26に挿入されると、カロート2の納骨室20は、水抜き金具9の金具穴92を介して外気と連通する。そのため、金具穴92によって納骨室20と外気との風通しを良くして、納骨室20が湿気るのを抑制できるとともに、金具穴92により排水することで、納骨室20に流れ込んだ雨によって納骨室20が浸水するのを抑制できる。その結果、墓1の納骨室20を清浄に保つことが可能となっている。
【0059】
ところで、
図14では、水抜き金具9の金具穴92に詰まった混入物Pが示されている。かかる混入物Pは、水抜き穴26内の金具穴92に流れ込んだ泥水が乾燥したものなどである。これに対しては、
図14の「引き出し時」の欄に示すように、水抜き金具9を水抜き穴26から外側(すなわち、納骨室20の反対側)に引き出すことで、混入物Pを除去できる。つまり、水抜き金具9の引き出しに伴って、水抜き金具9とともに混入物Pが水抜き穴26から外側に除去される。なお、水抜き金具9の引き出しは、例えば、鍔部94と石枠21の後端面252との間に引き出し用の道具を挟み込んで、当該道具を後方に引っ張るといった作業により実行できる。
【0060】
図12A~
図14に示した例によれば、水抜き穴26に対して外側から長尺方向Dx(挿脱方向)に挿脱可能な筐体91を有する水抜き金具9が墓1に具備されている。水抜き金具9は、長尺方向Dxに筐体91を貫通するように延設されて、筐体91の長尺方向Dxの両端で開口する金具穴92(ユニット穴)を有する。かかる構成では、水抜き穴26に水抜き金具9が挿入されるため、水抜き穴26への混入物Pを水抜き金具9の金具穴92に入り込ませて、金具穴92に捕獲することができる。したがって、水抜き金具9を外側へ引き出すことで、混入物Pを水抜き穴26から取り出すことができ、水抜き穴26の詰まりを簡単に解消することができる。その結果、水抜き穴26の機能を十分に発揮させて、墓1の納骨室20を清浄に保つことができる。
【0061】
さらに言うと、特許文献1では排水パイプを地盤G内に埋設するため、排水パイプに詰まった場合には、この詰まりを解消するために排水パイプを掘り起こすなどの大掛かりな作業を要するおそれがあった。これに対して、以上に示した例では、水抜き金具9を引き出すといった簡単な作業で、詰まりを解消することができる。
【0062】
また、水抜き金具9は、金具穴92に対して設けられた金網931、932を有し、金網931、932が、長尺方向Dxにおける金具穴92の外側の端(後端262)から内側の端(前端261)へ向けて混入物Pが進入するのを規制する。かかる構成は、水抜き穴26の外側から納骨室20へ向けて虫などが入り込むのを金網931、932によって抑制できるため、納骨室20を清浄に保つのに有利となる。
【0063】
また、金網931、932は、長尺方向Dxから見て金具穴92の全体に重なるように、金具穴92の内部に配置されている。かかる構成は、水抜き穴26の外側から納骨室20へ向けて虫などが入り込むのを金網931、932によってより確実に抑制できるため、納骨室20を清浄に保つのにさらに有利となる。
【0064】
また、金具穴92の長尺方向Dxの両端262、261のそれぞれに対して、金網931、932が設けられている。かかる構成では、水抜き穴26の両端262、261に対して設けられた金網931、932のうち、外側の金網931が外部からの衝撃などにより破損しても、納骨室20へ向けて虫などが入り込むのを内側の金網932によって抑制できる。
【0065】
また、金網931、932は、金具穴92の内部に嵌め込まれている。これによって、水抜き金具9をコンパクトに構成することができる。
【0066】
また、水抜き金具9は、筐体91の長尺方向Dxの外側の端に取り付けられた鍔部94を有する。この鍔部94には、金具穴92に対して開口する貫通穴941が設けられている。さらに、鍔部94は、筐体91から左右方向Yおよび上下方向Zに突出し、筐体91が水抜き穴26に挿入された状態において、鍔部94は、水抜き穴26の外側に位置しつつ石枠21の後端面252(外壁面)に接触し、長尺方向Dxから見て水抜き穴26と筐体91との間の隙間に重なる。かかる構成では、水抜き穴26に挿入された筐体91と水抜き穴26との隙間に混入物Pが進入するのを、鍔部94によって抑制できる。
【0067】
また、水抜き金具9は、筐体91の外側に設けられた板バネ95(弾性部材)を有し、筐体91が水抜き穴26に挿入された状態において、板バネ95は、筐体91と水抜き穴26との間に挟まれて弾性変形する。かかる構成では、水抜き穴26に挿入された筐体91は、板バネ95の弾性力によって水抜き穴26の内側に保持されるため、水抜き穴26から筐体91が抜け出してしまうのを抑制できる。
【0068】
図15は本発明に係るカロートの変形例を示す左後方斜視図であり、
図16は
図15に示すカロートの断面図である。両図の変形例に係るカロート2は、通風穴27を有する点でのみ、
図3~
図11に示すカロート2と異なり、その他の点では
図3~
図11に示すカロート2と同一である。
【0069】
通風穴27は、左右方向Yにおける後側周縁部材25の中央に設けられ、後側周縁部材25の前端面251から後端面252へと前後方向Xに平行に貫通する。つまり、通風穴27の前後方向Xの両端271、272のうち、前端271(一端)は後側周縁部材25の前端面251において納骨室20に開口するとともに、後端272(他端)は後側周縁部材25の後端面252において外気に開口する。したがって、納骨室20は、通風穴27を介して外気に連通する。
【0070】
この通風穴27は、水抜き穴26の上方において前後方向Xに平行に延設された円筒形状の穴である。その延設方向における通風穴27の断面積(すなわち、YZ断面積)は、その延設方向における水抜き穴26の断面積(すなわち、YZ断面積)よりも広い。
【0071】
このように、変形例に係るカロート2は、水抜き穴26よりも上方で石枠21を貫通する通風穴27をさらに有する。かかる構成では、水抜き穴26とこれより上方の通風穴27とを介して納骨室20と外気とが連通する。そのため、上方から下方あるいは下方から上方への空気の流れを確保して、納骨室20が湿気るのを効果的に抑制することができる。
【0072】
このように上述の実施形態では、墓1が本発明の「墓」の一例に相当し、カロート2が本発明の「カロート」の一例に相当し、納骨室20が本発明の「納骨室」の一例に相当し、石枠21が本発明の「枠体」の一例に相当し、水抜き穴26が本発明の「水抜き穴」の一例に相当し、通風穴27が本発明の「通風穴」の一例に相当し、水抜き金具9が本発明の「水抜きユニット」の一例に相当し、筐体91が本発明の「筐体」の一例に相当し、金具穴92が本発明の「ユニット穴」の一例に相当し、金網931、932のそれぞれが本発明の「網」の一例に相当し、鍔部94が本発明の「鍔部」の一例に相当し、貫通穴941が本発明の「貫通穴」の一例に相当し、2個の板バネ95のそれぞれが本発明の「弾性部材」の一例に相当し、長尺方向Dxが本発明の「挿脱方向」の一例に相当し、地盤Gが本発明の「地盤」の一例に相当し、表面Gsが本発明の「表面」の一例に相当し、土Sが本発明の「土」の一例に相当する。
【0073】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、水抜き穴26は、逆U字形状の切り欠き溝に限られない。具体的には、後側周縁部材25を貫通する円筒形の穴により水抜き穴26を構成してもよい。さらに、水抜き穴26を設ける位置を適宜変更しても良く、後側周縁部材25において上記の位置よりも上側に設けてもよいし、前側周縁部材22、左側周縁部材23あるいは右側周縁部材24に水抜き穴26を設けてもよい。あるいは、複数の水抜き穴26を石枠21に設けてもよい。
【0074】
また、寸法関係は上記の例に限られない。例えば、カロート2の石枠21を構成する前側周縁部材22の各壁面221~228の寸法関係を変更してもよい。具体的には、幅W228は、幅W224および幅W225より長くてもよい。また、幅W224と幅W225とが同一である必要もない。
【0075】
また、石枠21を、前側周縁部材22、左側周縁部材23、右側周縁部材24および後側周縁部材25といった別体で構成する必要はなく、石枠21を単一の石材で一体的に構成してもよい。
【0076】
また、カロート2を上下方向Zに貫通するように納骨室20を形成する必要は必ずしもない。したがって、石製の底板を有する箱体としてカロート2を構成し、箱の内部の空間を納骨室20として機能させてもよい。
【0077】
また、水抜き金具9の構成を適宜変更しても良い。例えば、筐体91、金具穴92フィルター部材93あるいは鍔部94の寸法や形状を適宜変更してもよく、具体的には、フィルター部材93の金網931、932の網目のサイズを混入物Pのサイズに応じて調整したり、筐体91の隅に面取りを施したり、鍔部94の隅を湾曲した形状に仕上げたりできる。
【0078】
また、フィルター部材93の天井板933および底板934、935を設けずに、金網931、932を別々に水抜き穴26に嵌め込んでもよい。あるいは、2枚の金網931、932を設ける必要はなく、1枚の金網931を水抜き金具9に設けてもよい。この場合、長尺方向Dxにおいて金具穴92の中央に1枚の金網931を設けてもよいし、金具穴92の外側に配置した1枚の金網931を金具穴92に対向させてもよい。金具穴92の外側に配置する場合には、例えば鍔部94の貫通穴941に金網931を嵌め込んでもよい。
【0079】
また、上記の例のように、長尺方向Dxから見て、金網931が金具穴92の全体に重なる必要は必ずしもない。つまり、長尺方向Dxから見て金網931が金具穴92に少なくとも一部で重なるように、金網931を金具穴92に対して設ければ、一定の効果を奏しうる。金網932についても同様である。
【0080】
また、上記の例では、長尺方向Dxから見て、鍔部94は、水抜き穴26と筐体91との間の隙間の全体に重なる。しかしながら、長尺方向Dxから見て、水抜き穴26と筐体91との間の隙間の少なくとも一部に重なるように、鍔部94を構成してもよい。かかる構成によっても、一定の効果を奏しうる。
【0081】
また、水抜き金具9が水抜き穴26に装着された状態で、長尺方向Dxにおいて鍔部94が水抜き穴26の外側に位置する必要は必ずしも無い。したがって、水抜き穴26に応じた形状に鍔部94を形成して、水抜き穴26に鍔部94を嵌め込んでもよい。
【0082】
また、水抜き金具9の各部の素材を適宜変更してもよい。したがって、筐体91を合成樹脂で構成したり、網(金網931など)をビニールで構成したりできる。その他、水抜き金具9の各部の寸法関係を適宜変更することもできる。
【0083】
また、上記に挙げた部材と異なる部材をさらに水抜き金具9に設けてもよい。例えば、スチールウールなどのウール状の部材を筐体91の金具穴92内に配置して、フィルター部材93の一部として機能させてもよい。
【0084】
また、板バネ95を設ける場合において、板バネ95の具体的な構成は上記の例に限られず、例えば
図17に示す例でもよい。ここで、
図17は水抜き金具の板バネの変形例を模式的に示す分解斜視図である。同図の例では、水抜き金具9は、筐体91と同一の素材で構成された平板96をさらに備え、平板96に板バネ95が形成されている。具体的には、平板96に入れた切り目を側方に折り曲げることで板バネ95が形成されている。そして、平板96を側壁板912に溶接あるいはネジ止めなどで取り付けることで、筐体91の側壁板912の外側に板バネ95が設けられている。なお、板バネ95の個数は1個に限られず、板バネ95が形成された平板96を側壁板913にも取り付けることで、2個の板バネ95を設けてもよい。
【0085】
また、金網931、932は水抜き金具9に必須ではなく、金網931、932を設けなくてもよい。同様に、鍔部94や板バネ95は水抜き金具9に必須ではなく、鍔部94あるいは板バネ95を設けなくてもよい。
【0086】
あるいは、次のように水抜き金具の構成を変形してもよい。
図18Aは水抜き金具の第1変形例を模式的に示す斜視図であり、
図18Bは本発明に係る水抜き金具の第2変形例を模式的に示す斜視図である。両図では、互いに直交する方向Dx、Dy、Dzが示されている。水抜き金具8(水抜きユニット)は、長尺方向Dxに延設された形状を有する筐体81を備える。筐体81の素材としては、鉄、アルミニウムなどの金属や、ステンレス鋼などの合金鋼を用いることができる。
【0087】
この筐体81は、幅方向Dyに間隔を空けて並ぶ2枚の側壁板82、83を有する。側壁板82、83のそれぞれは、高さ方向Dzに平行に立設されるとともに長尺方向Dxに平行に延設された平板形状を有する。これら側壁板82、83は、長尺方向Dx、幅方向Dyおよび高さ方向Dzにおいて、互いに同一の寸法(長さ、厚み、高さ)を有する。さらに、筐体81は、側壁板82の上端と側壁板83の上端とを繋ぐ天井板84を有する。この天井板84は、側壁板82、83それぞれの上端の間で幅方向Dyに平行に架設されるとともに長尺方向Dxに平行に延設された平板形状を有する。この天井板84は、長尺方向Dxにおいて側壁板83、84と同一の寸法(長さ)を有する。このような筐体81は、例えば1枚の平板に曲げ加工を行うことで形成することができる。
【0088】
かかる水抜き金具8は、側壁板82と側壁板83との間に水抜き溝85(ユニット穴)を有する。この水抜き溝85は、長尺方向Dxに平行に延設され、長尺方向Dxの両端851、852で開口するとともに、下方へも開口する。
【0089】
以上に説明した構成は、第1変形例および第2変形例の水抜き金具8が共通して具備する。さらに、第2変形例の水抜き金具8は、金網89を備える。この金網89の素材としては、鉄、アルミニウムなどの金属や、ステンレス鋼などの合金鋼を用いることができる。金網89は、長尺方向Dxにおける筐体81の両端のうちの一端、すなわち、水抜き穴26に挿入された筐体81の外側の一端に取り付けられている。金網89の筐体81への取り付けは、溶接、半田、接着剤あるいはネジなどにより行うことができる。長尺方向Dxから見て、金網89は、外側の端851における水抜き溝85の開口の全体に対して、外側から重なる。これらの水抜き金具8は、上記の水抜き金具9と同様に、水抜き穴26に挿入して用いることができる。
【0090】
なお、水抜き穴26からの水抜き金具8の引き出しは種々の方法により適宜実行すればよい。第1変形例の水抜き金具8を引き出す場合には、例えば棒状道具の先端を水抜き溝85の内壁面に押し当てつつ棒状道具を引っ張ることで、水抜き金具8を引き出すことができる。この際、棒状道具の先端に粘着物を設けて、粘着力により水抜き金具8を引き出してもよい。また、第2変形例の水抜き金具8を引き出す場合には、例えば棒状道具の先端に設けた鉤を水抜き金具8の金網89に引っ掛けつつ棒状道具を引っ張ることで、水抜き金具8を引き出すことができる。
【0091】
さらに、次のような変形を水抜き金具8に加えてもよい。例えば、側壁板82と側壁板83とが互いに平行である必要はない。したがって、側壁板82と側壁板83との間隔が下に向かうほど広がるように(すなわち、末広がりに)、側壁板82と側壁板83とを互いに傾けてもよい。また、側壁板82、側壁板83および天井板84の形状が平板状である必要はなく、例えば天井板84を上方に湾曲させても良い。
【0092】
あるいは、金網89の形状や寸法を適宜変更できる。例えば、長尺方向Dxから見て、金網89が筐体81の外縁から食み出すように、金網89を大きく形成してもよい。
【0093】
また、水抜き穴26に挿入する水抜き金具8、9の本数は1本に限られず、水抜き穴26の長さに応じて、複数本の水抜き金具8、9を水抜き穴26に挿入してもよい。あるいは、複数の筐体81、91をテレスコピック構造に組み合わせて、長さを調整できるように水抜き金具8を構成しても良い。
【0094】
また、通風穴27の形状や寸法を適宜変更しても良い。さらに、通風穴27を設ける位置を適宜変更しても良く、前側周縁部材22、左側周縁部材23あるいは右側周縁部材24に通風穴27を設けてもよい。あるいは、上記の例とは逆に、通風穴27の断面積は、水抜き穴26の断面積よりも狭くてもよい。
【0095】
さらに、通風穴27の延設方向から見て、通風穴27の開口の全体に重なるような金網を設けても良い。通風穴27用の当該金網の取付位置は、通風穴27の後端であってもよいし、通風穴27の中央であってもよい。かかる金網によって、通風穴27を介して納骨室20に虫などが混入するのを抑えることができる。
【0096】
また、地盤Gの構成は、
図2の例に限られない。例えば墓1のカロート2の載置範囲の全てを土Sで構成したり、コンクリートで構成したりすることができる。
【0097】
さらに、墓1の具体的な構成は、
図1および
図2に示した例に限られず、部材の削除あるいは追加を適宜実行できる。また、カロート2と下石3とを一体的に1つのカロートとして製造・販売するなどといった変形も可能である。この際、一体化したカロートを単一の石材で構成する必要はなく、複数の石材を組み合わせて構成してもよい。あるいは、墓1の素材も石に限られず、ガラスなどの他の素材を適宜用いることもできる。
【0098】
また、水抜き金具8、9の用途は、上記の位置に水抜き穴26を有する墓1に限られない。したがって、カロート2の納骨室20から湿気や水を抜く目的で墓1に形成された穴の全般に対して、水抜き金具8、9を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、墓のカロート内に形成された納骨室を清浄に保つための技術全般に利用可能である。
【符号の説明】
【0100】
1…墓
2…カロート
20…納骨室
21…石枠(枠体)
26…水抜き穴
27…通風穴
9…水抜き金具(水抜きユニット)
91…筐体
92…金具穴(ユニット穴)
931…金網(網)
932…金網(網)
94…鍔部
941…貫通穴
95…板バネ(弾性部材)
Dx…長尺方向(挿脱方向)
G…地盤
Gs…表面
S…土