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  • 特許-ステッピングモータ 図1
  • 特許-ステッピングモータ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】ステッピングモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 37/14 20060101AFI20230828BHJP
【FI】
H02K37/14 535M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019147691
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021029076
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】末吉 伸行
(72)【発明者】
【氏名】木下 光男
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-110834(JP,A)
【文献】特開2014-003832(JP,A)
【文献】特開平11-206052(JP,A)
【文献】特開2014-212686(JP,A)
【文献】特開2005-137104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K5/00-5/26
21/00-21/48
37/00-37/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石からなるロータと、
前記ロータの外周側に軸方向へ延在する複数の極歯を有するステータと、
前記ロータの軸方向一端部を回転自在に支持する第1軸受と、
前記ロータの軸方向他端部を回転自在に支持する第2軸受とを備えたステッピングモータであって、
前記第2軸受の透磁率は前記第1軸受の透磁率よりも高く、
前記ロータは、前記ロータの周方向に沿って外周面に複数の磁極を有し、
前記ロータの外径Dと、前記第2軸受の前記ロータに臨む部分の外径Dと、前記ステータの内径DSIとが下記数1の関係に設定されているステッピングモータ。
【数1】
【請求項2】
前記ロータの外周面にのみ磁極を有する請求項1に記載のステッピングモータ。
【請求項3】
前記第2軸受は、小径部と大径部とを備え、前記小径部が蓋部材に固定され、前記大径部が前記ロータの端面に臨んでいる請求項1または2に記載のステッピングモータ。
【請求項4】
前記ロータと前記第2軸受との間に樹脂製ワッシャーを設けた請求項1~3のいずれかに記載のステッピングモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステッピングモータに関し、特に永久磁石からなるロータと、その外周側に軸方向に延在する複数の極歯を有するステータを備えたPM(Permanent Magnet )型ステッピングモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のようなPM型ステッピングモータでは、ロータを回転可能に支持する軸受を備え、ロータと軸受との間には軸方向に隙間を有している。たとえば、2相PM型ステッピングモータでは、2つのステータの励磁の組み合わせによって、ステッピングモータの駆動時にロータとステータとの磁気的中心がずれ、ロータが軸方向に変位して軸受との衝突により異音が生じるという事象がある。
【0003】
このような事象に対して、ロータを軸方向に吸引する磁気吸引力発生部材を設け、ロータを一方の軸受側に吸引して他方の軸受との衝突による打撃音を低減したステッピングモータが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載のステッピングモータは、永久磁石からなるロータマグネットと、その外周側に軸方向に延在する複数の極歯を有するステータを備えた2相PM型ステッピングモータであり、磁性材料からなる磁気吸引力発生部材として、軸受を固定するケース板金に磁性ワッシャーを固定した構成である。このステッピングモータでは、磁性ワッシャーの外径DM1と、ロータマグネットの外径DはDM1≦Dの関係を満たすように設定されている(請求項3)。そして、ロータマグネットを磁性ワッシャー側へ吸引させることにより、ステッピングモータを回転駆動させる際に生じる打撃音の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-3832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ステッピングモータを例えばスマートフォンなどの携帯電話等の電子機器に使用する場合、ステッピングモータの外径は6mm以下となり、そのようなステッピングモータのロータ外径は3mm以下と極めて小さくなる。このような、極小径モータの場合には、特許文献1のような磁性ワッシャーを配置するスペースを確保することが難しい。このため磁性ワッシャーに代えて、軸受自身を磁性体にて形成する事が考えられる。
【0007】
一方、特許文献1には、磁性ワッシャーと軸受に代えて、磁性材料からなる径方向に拡大した軸受を磁気吸引力発生部材として用いても良いことが記載されている(段落0041)。その場合、径方向に拡大した磁性材料からなる軸受の外径は磁性ワッシャーの外径DM1と同様であると考えられることから、DM1(軸受の外径)≦D(ロータマグネットの外径)の関係を満たすように設定される。
【0008】
しかしながら、特許文献1では、ロータマグネットは、励磁ステータに対向する側面だけではなく、磁性ワッシャーに対向する底面にも着磁されている。したがって、ロータマグネットの底面に着磁しない場合であっても上記のような効果を得ることができるのか不明である。
【0009】
本発明は、上述事情に鑑みてなされたもので、磁性ワッシャーと軸受に代えて、磁性材料からなる軸受を磁気吸引力発生部材として用いた場合、ロータ外径と磁性材料からなる軸受の外径の関係を最適にしたステッピングモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、永久磁石からなるロータと、前記ロータの外周側に軸方向へ延在する複数の極歯を有するステータと、前記ロータの軸方向一端部を回転自在に支持する第1軸受と、前記ロータの軸方向他端部を回転自在に支持する第2軸受とを備えたステッピングモータであって、前記第2軸受の透磁率は前記第1軸受の透磁率よりも高く、前記ロータは、前記ロータの周方向に沿って外周面に複数の磁極を有し、前記ロータの外径Dと、前記第2軸受の前記ロータに臨む部分の外径Dと、前記ステータの内径DSIとが下記数1の関係に設定されているステッピングモータである。
【0011】
【数1】
【0012】
本発明においては、第2軸受の透磁率を第1軸受の透磁率よりも高く設定しているから、ロータの磁力(磁束)が第1軸受よりも大きく第2軸受に作用し、第2軸受にロータに対する磁気吸引力が発生する。ここで、第2軸受のロータに臨む部分の外径Dは、ロータの外径Dよりも大径に形成されているため、ロータの端面から漏れる磁力(磁束)に加えて、ロータの外周面に形成された磁極(N極とS極)における磁力(磁束)の一部がロータの端面を跨いで第2軸受に影響を及ぼすため、磁気吸引力発生部材として作用する。このため、ロータは第2軸受に吸引され、これにより、ステッピングモータを回転駆動させる際に生じる打撃音を低減することができる。
【0013】
本発明では、ロータの外周面にのみ磁極を有する場合に上記数1に基づく作用効果を得ることができる。しかしながら、ロータの端面に磁極を有する場合には、より大きな磁力が第2軸受に作用するから、本発明はそのような態様を除外するものではない。
【0014】
本発明においては、第2軸受は小径部と大径部とを備え、小径部が蓋部材に固定され、大径部がロータの端面に臨んでいることが好ましい。これにより、第2軸受を小型化して材料コストを低減することができるとともに、小径部と大径部との段差部で蓋部材に取り付けることができる。
【0015】
本発明においては、ロータと第2軸受との間に樹脂製ワッシャーを設けることにより、ロータと第2軸受との金属接触を防止して異音の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、磁性ワッシャーと軸受に代えて、磁性材料からなる軸受を磁気吸引力発生部材として用いた場合、ロータ外径と磁性材料からなる軸受外径の関係を最適にしたステッピングモータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態のステッピングモータの一部破砕分解斜視図である。
図2】本発明の実施形態のステッピングモータの側面図である。
図3】本発明の実施形態のステッピングモータの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.ステッピングモータの全体構成
図1に実施形態のステッピングモータ100を示す。ステッピングモータ100は、クローポール型の2相PM(Permanent Magnet)型ステッピングモータである。ステッピングモータ100は、ステータ500を備えている。ステータ500は、A相ステータユニット200と、B相ステータユニット300を軸方向で結合した構造を有している。ここで、A相ステータユニット200とB相ステータユニット300は、同じ構造であり、一方を他方に対して軸方向において反転させ、その背面同士を接触させ、結合することで、ステータ500を構成している。
【0019】
A相ステータユニット200には、フロントプレート210が固定され、B相ステータユニット300には、エンドプレート310が固定されている。ステータ500は、略筒形状を有し、その内側にロータ400が回転自在な状態で収容されている。
【0020】
A相ステータユニット200は、外ヨーク220、ボビン230、および内ヨーク240を軸方向で結合した構造を有している。外ヨーク220は、磁路が形成されるヨークとして機能する部分であり、電磁軟鉄あるいは圧延鋼板などの磁性材料により構成されている。外ヨーク220は、略カップ状で中央部が開口した形状をなし、開口部の縁部から軸方向に延在し、周方向に沿って間隔をおいて複数配置された略三角形状の極歯223を備えている。
【0021】
ボビン230にはコイル231(図3にのみ示す)が巻回されている。ボビン230は、樹脂製であり射出成形法を用いて形成されている。ボビン230の軸方向における両端には、コイル231の巻き崩れを防止するフランジ部233,234が形成されている。一方のフランジ部234には、端子台235が形成されている。端子台235は、フランジ部234から軸方向と径方向へ突出する矩形状のブロックであり、フランジ部234と一体成形されている。端子台235には、複数(この実施形態では2本)の金属製の端子ピン236が圧入やインサート成形等の手段により埋設されている。
【0022】
以上の構成からなるボビン230は、外ヨーク220と内ヨーク240とに挟持されるように配置され、A相ステータユニット200が構成されている。また、B相ステータユニット300のボビン330も同様に、外ヨーク320と内ヨーク340とに挟持されるように配置され、B相ステータユニット300が構成されている。
【0023】
内ヨーク240は、磁路が形成されるヨークとして機能する部分であり、電磁軟鉄あるいは圧延鋼板などの磁性材料により構成されている。内ヨーク240は、板状の円環部241と、円環部241の内周側の縁から軸方向に延在し、周方向に沿って間隔をおいて複数配置された略三角形状の極歯243を備えている。内ヨーク240の極歯243は、外ヨーク220の極歯223と周方向で交互に噛み合うように組み合わせられている。
【0024】
A相ステータユニット200の内ヨーク240と同じ部材を軸方向で反転させたものが、B相ステータユニット300の内ヨーク340である。内ヨーク240と内ヨーク340とを、同じ面を向かい合わせで接触させることで、A相ステータユニット200とB相ステータユニット300の結合が行なわれている。
【0025】
外ヨーク220のボビン230に対向する側と反対側の面には、フロントプレート210が結合している。フロントプレート210には、軸受(第1軸受)250が取り付けられている。
【0026】
B相ステータユニット300は、A相ステータユニット200とほぼ同じ構造であり、A相ステータユニット200とほぼ同じ構造のものを、軸方向で反転させた状態で用いられている。B相ステータユニット300は、外ヨーク320、ボビン330、内ヨーク340を軸方向で組み合わせた構造を有している。ここで、外ヨーク320は、外ヨーク220と同じ構造の部品であり、略三角形状の極歯323を備えている。内ヨーク340は内ヨーク240と同じ構造の部品であり、略三角形状の極歯343を備えている。ボビン330は、ボビン230と同じ構造の部品である。外ヨーク320には、エンドプレート310が結合している。エンドプレート310には、軸受(第2軸受)260が取り付けられている。
【0027】
2.ロータおよびその支持構造の詳細
ロータ400の軸中心には、シャフト401が軸方向に貫通した状態で固定され、シャフト401のロータ400から図3中左側に突出した端部は、軸受250を介してフロントプレート210に回転自在に支持され、シャフト401のロータ400から右側に突出した端部は、軸受260を介してエンドプレート310に回転自在に支持されている。
【0028】
A相ステータユニット200の軸受250は、例えば銅系焼結含油軸受から構成され、図3に示すように、大径部251と小径部252を有する2段構造とされ、フロントプレート210の開口に小径部252を嵌着して固定されている。
【0029】
一方、B相ステータユニット300の軸受260は、磁性体(例えば、鉄-銅系焼結含油軸受または鉄系焼結含油軸受)で形成され、大径部261と小径部262を有する2段構造で、エンドプレート310の開口に小径部262を嵌着して固定されている。そして、軸受260の透磁率は軸受250の透磁率よりも高く設定されている。
【0030】
ロータ400の軸受250側を向く端面には、樹脂製ワッシャー402が取り付けられている。また、ロータ400の軸受260側を向く端面には、樹脂製ワッシャー403が取り付けられている。軸受260の大径部261の外径Dと、ロータ400の外径Dとの関係は、D≦Dに設定されている。
【0031】
ロータ400は、略円柱状の構造を有するフェライト磁石や希土類磁石などの永久磁石からなり、この永久磁石は、周方向に沿ってNSNSと交互に磁極が反転する状態で着磁された磁極を有している。
【0032】
ここで、軸受260が磁気吸引力発生部材として機能するためには、ロータ400の磁力(磁束)を軸受260に作用させる必要がある。したがって、ロータ400の端面と対向する軸受260の大径部261の外径Dは、ロータ400の外径Dに対してD<Dの関係になるように設定する。また、大径部261とステータ300との干渉を防止するために、大径部261の外径Dは、ステータ200の内径DSIに対してD<DSIの関係になるように設定する。
【0033】
軸受260の大径部261の外径Dは、D<Dの関係に設定されているため、ロータ400の端面から漏れる磁力(磁束)に加えて、ロータ400の外周面に形成された磁極(N極とS極)における磁力(磁束)の一部がロータ400の端面を跨いで軸受260に影響を及ぼすため、磁気吸引力発生部材として作用する。このため、ロータ400が軸受260側に吸引され、ロータ400の端面が樹脂製ワッシャー403に当接する。
【0034】
ボビン230,330に巻回されたコイル231,331に励磁電流を印加すると、ステータ500に励磁された磁束と、永久磁石であるロータ400の磁束との相互作用によってロータ400が回転する。ステータ500の励磁方式の組み合わせによって、A相ステータユニット200のみを励磁したとき(1相励磁)、ロータ400とステータ500との磁気的中心がずれてロータ400を軸受250側へ移動させようとする力が発生するが、磁性体で形成された軸受260が発生する磁気吸引力によってロータ400の軸方向の移動を抑制する。したがって、ステッピングモータ100を回転駆動させる際に生じる打撃音を低減することができる。
【0035】
なお、磁性体で形成された軸受260とロータ400との間に作用する磁気吸引力は、ロータ400の軸方向(軸受250の方向)に作用する磁気力よりも大きくなるように設定することによって、ロータ400の軸方向の移動を阻止することができる。このような設定は、例えば、軸受260とロータ400との間に配設した樹脂製ワッシャー403の厚さ寸法(軸方向の寸法)を調整したり軸受260の透磁率を調整したりすることで得ることができる。
【0036】
特に、上記実施形態では、軸受260は小径部262と大径部261とを備え、小径部262がエンドプレート310に固定され、大径部261がロータ400の端面に臨んでいるから、軸受260を小型化して材料コストを低減することができるとともに、小径部262と大径部261との段差部でエンドプレート310に取り付けることができる。
【0037】
上記実施形態においては、ロータ400と軸受260との間に樹脂製ワッシャー403を設けているので、ロータ400と軸受260との金属接触を防止して異音の発生を防止することができる。
【0038】
3.変更例
本発明は上記実施形態のようなクローポール型の2相ステッピングモータに限定されるものではなく、その他の多相PM型ステッピングモータに適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、ステッピングモータの技術分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
100…ステッピングモータ、200…A相ステータユニット、210…フロントプレート、220…外ヨーク、223…極歯、230…ボビン、231…コイル、233…フランジ部、234…フランジ部、235…端子台、236…端子ピン、240…内ヨーク、241…円環部、243…極歯、250…軸受(第1軸受)、251…大径部、252…小径部、260…軸受(第2軸受)、261…大径部、262…小径部、300…B相ステータユニット、310…エンドプレート、320…外ヨーク、323…極歯、330…ボビン、331…コイル、340…内ヨーク、343…極歯、400…ロータ、401…シャフト、402…樹脂製ワッシャー、403…樹脂製ワッシャー、500…ステータ。

図1
図2
図3