(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】モールド型静止誘導機器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/08 20060101AFI20230828BHJP
H01F 27/02 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
H01F27/08 150
H01F27/02 150
(21)【出願番号】P 2019188613
(22)【出願日】2019-10-15
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】中前 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】城条 雅之
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-171947(JP,A)
【文献】特開昭61-180406(JP,A)
【文献】特開昭58-042210(JP,A)
【文献】特開2019-033176(JP,A)
【文献】特開昭59-121808(JP,A)
【文献】実公昭49-035696(JP,Y1)
【文献】特開平10-149925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/00-27/22
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に変圧器本体を収納し、空気を封入する密閉容器と、
前記空気を冷却する熱交換器と、
前記密閉容器と前記熱交換器とを、上部で接続する上配管、及び下部で接続する下配管と、
前記上配管に設けられた
第1吸湿部と、を備え、
前記空気は、前記密閉容器、前記上配管、前記熱交換器、前記下配管の順に循環
し、
前記熱交換器の下部であって前記空気が循環する経路とは異なる位置に第2吸湿部が設けられている、モールド型静止誘導機器。
【請求項2】
前記
第1吸湿部は着脱可能に設けられている請求項1に記載の
モールド型静止誘導機器。
【請求項3】
前記下配管を通過する経路を第1経路とした場合に、更に、前記下配管の途中から分岐し、循環器を備え密閉容器に接続される第2経路を備える請求項1又は2に記載のモールド型静止誘導機器。
【請求項4】
前記第1経路及び前記第2経路には、前記下配管を通過する前記第1経路と、前記循環器を通過する前記第2経路とを選択的に切り替え可能な開閉弁が設けられている請求項3に記載のモールド型静止誘導機器。
【請求項5】
前記
第2吸湿部は着脱可能に設けられている請求項
1に記載の
モールド型静止誘導機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、モールド型静止誘導機器に関する。
【背景技術】
【0002】
モールド型静止誘導機器において、絶縁物に含まれていた水分の放出や外気温の低下に伴う相対湿度の上昇により密閉容器内の湿度が上昇した場合、ドライエア中の湿気の影響により、ドライエアの絶縁耐圧低下を招く恐れがある。このような背景、及び、絶縁強化の観点から、密閉容器内の湿度は下げておく必要がある。しかし、密閉容器内は閉鎖された空間であることから、湿度が高くなった場合、密閉容器内の湿度を下げるようなコントロールが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-149925号公報
【文献】実開平6-82827号公報
【文献】実公昭49-35696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、密閉容器内の湿度を低下させることが可能なモールド型静止誘導機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係るモールド型静止誘導機器は、内部に変圧器本体を収納し、空気を封入する密閉容器と、前記空気を冷却する熱交換器と、前記密閉容器と前記熱交換器とを、上部で接続する上配管、及び下部で接続する下配管と、前記上配管に設けられた吸湿部と、を備え、前記空気は、前記密閉容器、前記上配管、前記熱交換器、前記下配管の順に循環する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係るモールド型静止誘導機器の概略構成を示す縦断面図
【
図2】第2実施形態に係るモールド型静止誘導機器の概略構成を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態について図面に基づいて説明する。実施形態の説明において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。また、下記説明及び図において、上下方向は、モールド変圧器1を設置した際の上下方向を意味している。また、図面における吸湿部20及び吸湿部21のハッチングは、他の部材と区別するために設けたものであり、これらの断面構造を示すものではない。
【0008】
(第1実施形態)
第1実施形態に係るモールド変圧器1について
図1を参照して説明する。実施形態に係るモールド変圧器1はモールド形静止誘導機器の一実施例として例示したものである。
図1には、モールド変圧器1の概略構成が示されている。
図1において、変圧器本体2の右半分は変圧器本体2の内部構造を示している。
【0009】
モールド変圧器1は、モールド形静止誘導機器の主要部を構成する変圧器本体2と、変圧器本体2を収納した密閉容器3と、この密閉容器3の両側方すなわち
図1における左右に設けられた熱交換器4と、を備えている。変圧器本体2は、表面が絶縁材により覆われた巻線5と鉄心6との組合せにより構成されており、変圧器の主要部分を構成している。巻線5には
図1において上下方向に貫通する空隙5aが設けられている。空隙5aには図示しないスペーサが設けられており、空隙5aを確保している。空隙5aは、後述する空気7が通過する循環経路の一部となっている。
【0010】
密閉容器3は内部が気密に密閉された容器であり、その内部には、変圧器本体2を収納した状態で、大気圧を上回る圧力の空気7が封入されている。空気7はドライエアであり、湿度が低く設定されている。密閉容器3と熱交換器4とは、密閉容器3の上部に接続された上配管8、及び、密閉容器3の下部に接続された下配管9により空気7が通過可能に接続されている。熱交換器4はいわゆるラジエタ構造を備えており、変圧器本体2内の空気7を冷却する機能を備えている。空気7は変圧器本体2を冷却する冷媒として作用する。
【0011】
なお、図中に示す破線の矢印は、密閉容器3及び熱交換器4における空気7の循環経路、及び、循環方向を示している。これは第2実施形態の説明における
図2においても同様である。
【0012】
モールド変圧器1の運転時には、変圧器本体2が発熱し、これに伴い変圧器本体の周りの空気7の温度が上昇する。温度上昇した空気7は、
図1に示す矢印で示されるように、密閉容器3内を上昇した後、上配管8を通して熱交換器4に流入し、その後熱交換器4により冷却される。熱交換器4により冷却された空気7は、熱交換器4の下方に流れて、下配管9を通過して密閉容器3内に戻り、更に変圧器本体2により加熱されることにより温度が上昇し、再度、熱交換器4に流入する。以下、これが繰り返される。このように、密閉容器3と熱交換器4の間を循環する空気7の循環経路が形成される。空気7は、密閉容器3と熱交換器4の間を循環し、これによって、密閉容器3内の空気7、密閉容器3、及び変圧器本体2が冷却される。
【0013】
ここで、空気7の循環経路の途中に、第1吸湿部である吸湿部20が配置される。吸湿部20は、例えば中空ハニカム構造を形成する構造部に吸湿剤、除湿剤、又は乾燥剤を配置させるか、あるいは、配管の内壁に、内部中空の円筒状の部材の内壁部に吸湿剤、除湿剤、又は乾燥剤を固定し、内部を気体が通過可能な構造を備えるように構成される。吸湿部20の内部には吸湿剤、除湿剤、又は乾燥剤が設けられており、吸湿部20を通過する気体中の水分を取り除くことにより、気体の湿度を低下させることができる。吸湿剤、除湿剤、又は乾燥剤としては、例えば、化学的乾燥剤、又は、物理的乾燥剤を用いることができる。化学的吸着材としては、例えば、生石灰、塩化カルシウム、五酸化二リン、水酸化ナトリウム・水酸化カリウム、金属ナトリウム、硫酸ナトリウム無水塩、硫酸銅無水塩、過塩素酸マグネシウムなどを用いることができる。物理的乾燥剤としては、例えば、シリカゲル、酸化アルミニウム、モレキュラーシーブ、アロフェン、ゼオライト等を用いることができる。
【0014】
本実施形態では、吸湿部20は、空気7の通過部である上配管8、つまり熱交換器4の吸い込み側の配管に配置されている。空気7は変圧器本体2を通過する際に水分を吸収するため、変圧器本体2を通過した後において最も湿度が高くなる。この湿度が高くなった空気7は、その後、上配管8を通過して熱交換器4に流入するため、上配管8における空気7が最も湿度が高い。上配管8に吸湿部20を配置すれば、最も湿度が高い状態の空気7に対して吸湿部20に接触させることができるため、最も効果的に空気7の水分を低下させることが可能となる。また、空気7に水分を多く含んでいる場合、熱交換器4において結露することにより熱交換器4が錆びる原因となるため、この点からも、空気7が熱交換器4に流入する前の上配管8に配置することが好ましい。
【0015】
また、本実施形態に係るモールド変圧器1においては、熱交換器4の下部に第2吸湿部である吸湿部21が追加して設けられている。吸湿部21により、熱交換器4において発生した結露を吸湿部21に接触させることにより水分を除去することができ、これにより、熱交換器4の錆の発生を抑制することができる。ここで、熱交換器4の底部を吸湿部21に向かって低くなるように傾斜させ、熱交換器4の底部に落下した結露水が吸湿部21に流れ込みやすくしてもよい。
【0016】
また、第1実施形態に係るモールド変圧器1において、吸湿部20を、着脱可能なカートリッジ方式にすることができる。この場合、吸湿部20を、例えば、ねじ式で上配管8の途中に着脱可能なケースに吸湿剤を封入したものとし構成することができる。このようにすれば、吸湿部20の吸湿性能が劣化した場合に、モールド変圧器1の運転を停止することなく、例えば、モールド変圧器1の運転負荷が少ない自冷運転時に吸湿部20の交換が可能となるため、メンテナンス性に優れる。
【0017】
また、吸湿部21を熱交換器4下部に着脱可能に敷設してもよい。この場合、吸湿部21を、例えば、ねじ式で熱交換器4の下部に着脱可能なケースに吸湿剤を封入したものとし構成することができる。このようにすれば、吸湿部21の吸湿性能が劣化した場合に、モールド変圧器1の運転を停止することなく、例えば、モールド変圧器1の運転負荷が少ない自冷運転時に吸湿部21の交換が可能となるため、メンテナンス性に優れる。
【0018】
第1実施形態に係るモールド変圧器1は以下の効果を奏する。
上記構成において、上配管8に吸湿部20を配置したので、変圧器本体2を通過する際に水分を含み最も湿度が上昇した状態の空気7に吸湿部20を接触させることができる構成を実現した。これにより、効率的に空気7中の水分を除去することが可能となるため、密閉容器3内の空気7の湿度を低下させることができ、空気7の絶縁耐力低下を防止できる。
【0019】
また、吸湿部20を熱交換器4の手前の位置に配置された上配管8に配置したため、空気7が熱交換器4に流入する前に吸湿部20に接触させることができる。これにより、熱交換器4内に水分を含んだ空気7を流入させることがないため、熱交換器4内での結露を抑制することが可能となり、熱交換器4の中身の金物類の錆の発生を抑制することができる。
【0020】
また、熱交換器4の下部に吸湿部21を設けたため、熱交換器4において発生した結露を吸湿部21に接触させることにより空気7中の水分を除去することができる。これにより、空気7の湿度を更に低下させることができるとともに、熱交換器4の底に水分が溜まることが無いため、熱交換器4の錆の発生を抑制することができる。
【0021】
(第2実施形態)
図2を参照して、第2実施形態に係るモールド変圧器1について説明する。モールド変圧器1は、変圧器本体2と、変圧器本体2を収納した密閉容器3と、この密閉容器3の側方すなわち
図2における右側に設けられた熱交換器4と、を備えている。
【0022】
密閉容器3内には、変圧器本体2が収納された状態で、空気7が大気圧を上回る圧力で封入されている。空気7はドライエアであり、湿度が低く設定されている。密閉容器3と熱交換器4とは、密閉容器3の上部に接続された上配管8、及び、密閉容器3の下部に接続された下配管9により構成された第1経路である経路10により、空気7が通過可能に接続されている。熱交換器4はいわゆるラジエタ構造を備えており、変圧器本体2内の空気7を冷却する機能を備えている。空気7は、密閉容器3、上配管8、熱交換器4、下配管9の順に循環する
【0023】
下配管9には、下配管9の途中から分岐し、循環器11を備える第2経路である経路14が備えられている。つまり、下配管9の途中と密閉容器3との間は、下配管9の途中から分岐して接続される配管12、循環器11、及び配管13により構成される経路14により、空気7が通過可能に接続されている。循環器11は、図示しないモータ及び回転羽を備えた送風機であり、循環器11を駆動することにより、空気7を強制的に移動、流動させることにより、密閉容器3及び熱交換器4間における空気7の循環を急速に実施することができる。
【0024】
経路10において、配管12の接続位置よりも密閉容器3側には開閉弁16が設けられている。循環器11の配管12には開閉弁18が設けられている。開閉弁16、及び、開閉弁18は弁の開閉により下配管9及び配管12を開放及び閉鎖することができ、これにより、下配管9及び配管12における空気7の流れを制御可能である。開閉弁16と開閉弁18は連動して開閉可能であり、開閉弁16の開放に応じて開閉弁18は閉鎖され、開閉弁16の閉鎖に応じて開閉弁18は開放される。これにより、空気7の循環経路として、経路10と経路14とを選択的に切り替え可能に構成される。
【0025】
第2実施形態に係るモールド変圧器1においては、循環器11の駆動時には、空気7が経路14を通過するように開閉弁16及び開閉弁18が制御される。循環器11により強制的に空気7の循環が行われるため、空気7中の水分を急速に除去し、空気7の湿度を急速に低下させることが可能である。また、第2実施形態に係るモールド変圧器1において、吸湿部20を、上配管8から着脱可能なカートリッジ方式にすることができる。
【0026】
本実施形態では、吸湿部20は、空気7の通過部である上配管8に配置されている。第1実施形態と同様に、空気7は変圧器本体2を通過した後において最も湿度が高くなる。上配管8に吸湿部20を配置すれば、最も湿度が高い状態の空気7に対して吸湿部20に接触させることができるため、最も効果的に空気7中の水分を低下させることが可能となる。また、空気7中に水分を多く含んでいる場合、熱交換器4において結露することにより熱交換器4が錆びる原因となるため、この点からも、空気7が熱交換器4に流入する前の上配管8に配置することが好ましい。
【0027】
第2実施形態に係るモールド変圧器1は第1実施形態と同様の効果を奏する。また、第2実施形態におけるモールド変圧器1は、循環器11を含む経路14に空気7を通過させることができる。循環器11の駆動、及び経路14の選択により、密閉容器3及び熱交換器4おける空気7の循環を急速に実施することができるため、空気7の湿度を急速に低下させることができる。
【0028】
例えば、密閉容器3内の湿度が増加した場合や、密閉容器3を開放して変圧器本体2等をメンテナンスした場合等に、循環器11を駆動させれば急速に密閉容器3内部の空気7の湿度を低下させることができるため、熱交換器4の結露をより迅速に抑制することができる。
【0029】
上記のように第1実施形態及び第2実施形態について説明したが、以下のような変形を行うことができる。
第1及び第2実施形態において、モールド型静止誘導機器としてモールド変圧器1を例示して説明したがこれに限定されない。例えば、リアクトルに適用してもよい。
【0030】
以上のように、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
1…モールド変圧器(モールド型静止誘導機器)、2…変圧器本体、3…密閉容器、4…熱交換器、7…空気、8…上配管、9…下配管、10…経路(第1経路)、11…循環器、12、13…配管、14…経路(第2経路)、16、18…開閉弁、20…吸湿部(第1吸湿部)、21…吸湿部(第2吸湿部)