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特許7337644料金決定装置、料金決定システム及び料金決定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】料金決定装置、料金決定システム及び料金決定方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/30 20120101AFI20230828BHJP
【FI】
G06Q50/30
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019188619
(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公開番号】P2021064180
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】512200217
【氏名又は名称】GO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】山本 英幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 彰祐
(72)【発明者】
【氏名】江川 絢也
【審査官】岡北 有平
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110264706(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109886508(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109242202(CN,A)
【文献】特開2019-036231(JP,A)
【文献】特開2002-230691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旅客輸送車両に設けられた表示装置に対して、空車時における走行推奨ルートを示すルート情報を提供する情報提供部と、
前記ルート情報の提供を受けた前記旅客輸送車両の営業走行履歴情報と、前記ルート情報の提供を受けた前記旅客輸送車両が走行したことによる損失又は利益に対応する金額を示す損益情報と、を取得する情報取得部と、
前記営業走行履歴情報と前記損益情報とに基づいて、請求料金を決定する料金決定部と、
を有する料金決定装置。
【請求項2】
前記料金決定部は、前記金額と所定の基準額との関係に基づいて決定した料金を前記営業走行履歴情報に基づいて補正することにより前記請求料金を決定する、
請求項1に記載の料金決定装置。
【請求項3】
前記料金決定部は、前記営業走行履歴情報が示す、前記旅客輸送車両が走行した全ルートのうち前記走行推奨ルートを走行した割合に基づいて前記請求料金を決定する、
請求項1又は2に記載の料金決定装置。
【請求項4】
前記料金決定部は、前記割合が所定値より小さい場合に、前記所定値と前記割合との差額に応じて前記請求料金を増加させる、
請求項3に記載の料金決定装置。
【請求項5】
前記料金決定部は、前記営業走行履歴情報が示す、前記旅客輸送車両が走行した全ルートのうち前記走行推奨ルートを走行した割合に基づいて前記基準額を決定する、
請求項2に記載の料金決定装置。
【請求項6】
前記料金決定部は、前記損益情報が示す金額の前記基準額に対する不足額に応じて、前記ルート情報を提供する事業者が前記旅客輸送車両の運転手又は前記旅客輸送車両を管理する事業者に支払う前記請求料金を決定する、
請求項2に記載の料金決定装置。
【請求項7】
前記料金決定部は、前記旅客輸送車両の運転手又は前記旅客輸送車両を管理する事業者が前記ルート情報を提供する事業者に支払う前記請求料金を決定する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の料金決定装置。
【請求項8】
前記旅客輸送車両がタクシーであり、
前記情報提供部は、タクシーの乗車需要が所定条件を満たす経路を前記走行推奨ルートとして示す前記ルート情報を前記タクシーに提供する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の料金決定装置。
【請求項9】
旅客輸送車両に設けられた表示装置と、前記表示装置と通信可能な料金決定装置と、を備え、
前記料金決定装置は、
前記表示装置に対して、空車時における走行推奨ルートを示すルート情報を提供する情報提供部と、
前記ルート情報の提供を受けた前記旅客輸送車両の営業走行履歴情報と、前記ルート情報の提供を受けた前記旅客輸送車両が走行したことによる損失又は利益に対応する金額を示す損益情報と、を取得する情報取得部と、
前記営業走行履歴情報と前記損益情報とに基づいて、請求料金を決定する料金決定部と、
を有し、
前記表示装置は、
前記ルート情報を表示する表示部
を有する料金決定システム。
【請求項10】
コンピュータが実行する、
旅客輸送車両に設けられた表示装置に対して、空車時における走行推奨ルートを示すルート情報を提供するステップと、
前記ルート情報の提供を受けた前記旅客輸送車両の営業走行履歴情報を取得するステップと、
前記ルート情報の提供を受けた前記旅客輸送車両が走行したことによる損失又は利益に対応する金額を示す損益情報を取得するステップと、
前記営業走行履歴情報と前記損益情報とに基づいて、請求料金を決定するステップと、
を有する料金決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルート情報を提供するシステムの利用に関する請求料金を決定するための料金決定装置、料金決定システム及び料金決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タクシーの運転手は、利用客を見付けるために、運転手自身の経験に基づいて運行ルートを決定していた。タクシーの効率的な運行を可能にするために、特許文献1には、過去にタクシーの需要があった点を通るルート情報を、タクシーの車載端末に通知するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-39775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タクシーに対してルート情報を提供する提供事業者が、タクシーの運転手又はタクシーを管理するタクシー事業者からタクシーの売上に応じた利用料金を受け取るシステムが考えられる。このようなシステムにおいて、提供されたルート情報を利用するか否かは運転手に任されているため、提供事業者がタクシー事業者に対してルート情報が利用されたか否かに関わらず同じ利用料金を請求すると、タクシー事業者にとって利用料金が適切でないと感じられるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、一例として、タクシーに対してルート情報を提供するシステムにおいて、タクシー事業者に対して適切な利用料金を請求できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の料金決定装置は、旅客輸送車両に設けられた表示装置に対して、空車時における走行推奨ルートを示すルート情報を提供する情報提供部と、前記ルート情報の提供を受けた前記旅客輸送車両の営業走行履歴情報と、前記ルート情報の提供を受けた前記旅客輸送車両が走行したことによる損失又は利益に対応する金額を示す損益情報と、を取得する情報取得部と、前記営業走行履歴情報と前記損益情報とに基づいて、請求料金を決定する料金決定部と、を有する。
【0007】
前記料金決定部は、前記金額と所定の基準額との関係に基づいて決定した料金を前記営業走行履歴情報に基づいて補正することにより前記請求料金を決定してもよい。
【0008】
前記料金決定部は、前記営業走行履歴情報が示す、前記旅客輸送車両が走行した全ルートのうち前記走行推奨ルートを走行した割合に基づいて前記請求料金を決定してもよい。
【0009】
前記料金決定部は、前記割合が所定値より小さい場合に、前記所定値と前記割合との差額に応じて前記請求料金を増加させてもよい。
【0010】
前記料金決定部は、前記営業走行履歴情報が示す、前記旅客輸送車両が走行した全ルートのうち前記走行推奨ルートを走行した割合に基づいて前記基準額を決定してもよい。
【0011】
前記料金決定部は、前記損益情報が示す金額の前記基準額に対する不足額に応じて、前記ルート情報を提供する事業者が前記旅客輸送車両の運転手又は前記旅客輸送車両を管理する事業者に支払う前記請求料金を決定してもよい。
【0012】
前記料金決定部は、前記旅客輸送車両の運転手又は前記旅客輸送車両を管理する事業者が前記ルート情報を提供する事業者に支払う前記請求料金を決定してもよい。
【0013】
前記旅客輸送車両がタクシーであり、前記情報提供部は、タクシーの乗車需要が所定条件を満たす経路を前記走行推奨ルートとして示す前記ルート情報を前記タクシーに提供してもよい。
【0014】
本発明の第2の態様の料金決定システムは、旅客輸送車両に設けられた表示装置と、前記表示装置と通信可能な料金決定装置と、を備え、前記料金決定装置は、前記表示装置に対して、空車時における走行推奨ルートを示すルート情報を提供する情報提供部と、前記ルート情報の提供を受けた前記旅客輸送車両の営業走行履歴情報と、前記ルート情報の提供を受けた前記旅客輸送車両が走行したことによる損失又は利益に対応する金額を示す損益情報と、を取得する情報取得部と、前記営業走行履歴情報と前記損益情報とに基づいて、請求料金を決定する料金決定部と、を有し、前記表示装置は、前記ルート情報を表示する表示部を有する。
【0015】
本発明の第3の態様の料金決定方法は、コンピュータが実行する、旅客輸送車両に設けられた表示装置に対して、空車時における走行推奨ルートを示すルート情報を提供するステップと、前記ルート情報の提供を受けた前記旅客輸送車両の営業走行履歴情報を取得するステップと、前記ルート情報の提供を受けた前記旅客輸送車両が走行したことによる損失又は利益に対応する金額を示す損益情報を取得するステップと、前記営業走行履歴情報と前記損益情報とに基づいて、請求料金を決定するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一例として、タクシーに対してルート情報を提供するシステムにおいて、タクシー事業者に対して適切な利用料金を請求できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る料金決定システムの概要を説明するための図である。
図2】実施形態に係る料金決定システムのブロック図である。
図3】経路特定部が走行推奨ルートを特定する方法を説明するための模式図である。
図4】走行推奨ルートを表示している車両端末の正面図である。
図5】料金決定部が遵守割合を算出する方法を説明するための模式図である。
図6】料金決定部が請求料金を決定する方法を説明するための模式図である。
図7】実施形態に係る料金決定システムが実行する料金決定方法のシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[料金決定システムの概要]
図1は、本実施形態に係る料金決定システムSの概要を説明するための図である。料金決定システムS(ルート情報提供システムともいう)は、タクシー等の旅客輸送車両にルート情報を提供するとともに、料金決定システムSの利用に関する請求料金を決定するシステムである。例えば請求料金は、料金決定システムSを提供する提供事業者が、ルート情報を提供したタクシーの運転手又はタクシーを管理するタクシー事業者から受け取る、料金決定システムSの利用料金である。また、請求料金は、所定条件が満たされた場合に、提供事業者が運転手又はタクシー事業者に支払う補償金額であってもよい。以下、料金決定システムSがタクシーに適用される例を説明するが、料金決定システムSは乗客を輸送するその他の旅客輸送車両に適用されてもよい。また、料金決定システムSは、宅配業者のような物流事業者が管理する、貨物を輸送する車両に適用されてもよい。
【0019】
料金決定システムSは、料金決定装置1と、車両端末2と、配車管理装置3とを備える。料金決定装置1は、インターネット等の通信ネットワークを介して複数の車両端末2と通信可能である。料金決定システムSは、その他のサーバ、端末等の機器を含んでもよい。
【0020】
料金決定装置1は、タクシーに提供するルート情報を特定し、請求料金を決定するサーバ等のコンピュータである。料金決定装置1は、車両端末2にルート情報を送信した後、車両端末2から取得した情報に基づいて請求料金を決定する。
【0021】
車両端末2は、タクシーに設けられている、スマートフォン、タブレット端末、カーナビゲーションシステム等の表示装置である。車両端末2は、運転手が視認可能な位置に設けられており、料金決定装置1から受信した情報を運転手に対して表示する。配車管理装置3は、タクシーを管理するサーバ等のコンピュータである。
【0022】
本実施形態に係る料金決定システムSが実行する処理の概要を以下に説明する。料金決定装置1は、タクシーの乗車需要が所定条件を満たすルートを、走行推奨ルートとして特定する。料金決定装置1は、特定した走行推奨ルートを示すルート情報を、車両端末2に提供する。料金決定装置1は、ルート情報を、車両端末2に直接送信してもよく、配車管理装置3を介して車両端末2に送信してもよい。
【0023】
車両端末2は、料金決定装置1が提供したルート情報が示す走行推奨ルートを表示部に表示させる。車両端末2は、ルート情報が提供された後に、車両端末2が設けられたタクシーが業務として走行した走行ルートの履歴を示す営業走行履歴情報を、料金決定装置1へ送信する。車両端末2は、ルート情報が提供された後に、車両端末2が設けられたタクシーが業務として走行したことによる損失又は利益に対応する金額(例えば売上金額)を示す損益情報を、料金決定装置1へ送信する。
【0024】
料金決定装置1は、車両端末2が送信した損益情報と営業走行履歴情報とに基づいて、請求料金を決定し、決定した請求料金を示す請求料金情報を配車管理装置3へ送信する。例えば料金決定装置1は、タクシーが走行推奨ルートを走行した割合が高いほど請求料金が高く、タクシーが走行推奨ルートを走行した割合が低いほど請求料金が低いように、請求料金を決定する。
【0025】
このように、料金決定システムSは、ルート情報の提供を受けたタクシーの営業走行履歴情報及び損益情報に基づいて、料金決定システムSの利用に関する請求料金を決定する。これにより、料金決定システムSは、タクシーが走行推奨ルートを遵守して走行した程度を請求料金に反映できるため、タクシー事業者に対して適切な請求料金を請求することができる。
【0026】
[料金決定システムの構成]
図2は、本実施形態に係る料金決定システムSのブロック図である。図2において、矢印は主なデータの流れを示しており、図2に示したもの以外のデータの流れがあってよい。図2において、各ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、図2に示すブロックは単一の装置内に実装されてよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてよい。ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてよい。
【0027】
料金決定装置1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13とを有する。制御部13は、経路特定部131と、情報提供部132と、情報取得部133と、料金決定部134とを有する。
【0028】
通信部11は、インターネット等の通信ネットワークを介して車両端末2と通信を行うための通信インターフェースである。記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ等を含む記憶媒体である。記憶部12は、制御部13が実行するプログラムを予め記憶している。記憶部12は、料金決定装置1の外部に設けられてもよく、その場合にネットワークを介して制御部13との間でデータの授受を行ってもよい。
【0029】
制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、経路特定部131、情報提供部132、情報取得部133及び料金決定部134として機能する。制御部13の機能の少なくとも一部は電気回路によって実行されてもよい。また、制御部13の機能の少なくとも一部は、制御部13がネットワーク経由で実行されるプログラムを実行することによって実現されてもよい。
【0030】
車両端末2は、通信部21と、記憶部22と、制御部23と、表示部24を有する。制御部23は、受信部231と、表示制御部232と、送信部233とを有する。表示部24は、情報を表示可能な液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等を含む。
【0031】
通信部21は、インターネット等の通信ネットワークを介して料金決定装置1と通信を行うための通信インターフェースである。記憶部22は、ROM、RAM、ハードディスクドライブ等を含む記憶媒体である。記憶部22は、制御部23が実行するプログラムを予め記憶している。記憶部22は、車両端末2の外部に設けられてもよく、その場合にネットワークを介して制御部23との間でデータの授受を行ってもよい。
【0032】
制御部23は、例えばCPU等のプロセッサであり、記憶部22に記憶されたプログラムを実行することにより、受信部231、表示制御部232及び送信部233として機能する。制御部23の機能の少なくとも一部は電気回路によって実行されてもよい。また、制御部23の機能の少なくとも一部は、制御部23がネットワーク経由で実行されるプログラムを実行することによって実現されてもよい。
【0033】
本実施形態に係る料金決定システムSは、図2に示す具体的な構成に限定されない。料金決定装置1及び車両端末2は、それぞれ2つ以上の物理的に分離した装置が有線又は無線で接続されることにより構成されてもよい。例えば料金決定装置1は、単一のコンピュータによって構成されてもよく、互いに連携する複数のコンピュータによって構成されてもよく、コンピュータ資源の集合であるクラウドによって構成されてもよい。また、車両端末2が、料金決定装置1の機能の一部又は全部を実施してもよい。また、料金決定装置1が、車両端末2の機能の一部又は全部を実施してもよい。
【0034】
[料金決定方法の説明]
以下、本実施形態に係る料金決定システムSが実行する料金決定方法を詳細に説明する。料金決定装置1において、経路特定部131は、タクシーの現在の位置を示す位置情報を取得する。例えば経路特定部131は、車両端末2から、位置情報を取得する。また、経路特定部131は、タクシーを管理する配車管理装置3から、位置情報を取得してもよい。
【0035】
経路特定部131は、取得した位置情報に基づいて、タクシーの乗車需要が所定条件を満たす経路を、タクシーの空車時における走行ルートとして推奨される走行推奨ルートとして特定する。走行推奨ルートは、タクシーが走行中に乗客を見付けることができると推測される経路である。
【0036】
図3は、経路特定部131が走行推奨ルートR1を特定する方法を説明するための模式図である。例えば経路特定部131は、取得した位置情報が示すタクシーの位置を始点とし、目的地が設定されていない複数の経路それぞれのスコアを算出する。スコアは、過去の乗車実績から算出される統計的な乗車需要を示す値であり、乗車需要が高いほど大きい値に設定される。例えばスコアは、タクシーの乗車需要の期待値であり、複数の経路それぞれに沿った地点で過去にタクシーに乗車した利用客の、単位時間あたりの人数又は利用料金によって表される。
【0037】
経路特定部131は、複数の経路の中で、算出したスコアが所定条件を満たす経路を、走行推奨ルートR1として特定する。例えば経路特定部131は、複数の経路の中でスコアが所定値以上である経路を抽出し、複数の経路が抽出された場合にはそれらの中でスコアが最も大きい経路を、走行推奨ルートR1として特定する。経路特定部131は、ここに示した具体的な方法に限られず、その他の方法で走行推奨ルートR1を特定してもよい。
【0038】
情報提供部132は、タクシーに設けられた車両端末2(表示装置)に対して、経路特定部131が特定した走行推奨ルートを示すルート情報を提供する。その際、情報提供部132は、提供した走行推奨ルートを示すルート情報と提供先の車両を示す情報とを関連付けて記憶部12に記憶する。情報提供部132は、ルート情報を、車両端末2に直接送信してもよく、配車管理装置3を介して車両端末2に送信してもよい。車両端末2において、受信部231は、料金決定装置1が送信したルート情報を受信する。表示制御部232は、受信部231が受信したルート情報が示す走行推奨ルートを、表示部24に表示させる。
【0039】
図4は、走行推奨ルートを表示している車両端末2の正面図である。表示部24は、タクシーの現在位置の周辺の地図画像上に、受信部231が受信したルート情報が示す走行推奨ルート241を重畳して表示している。これにより、タクシーの運転手は、料金決定装置1が特定した走行推奨ルートを容易に把握できる。
【0040】
タクシーの運転手は、車両端末2に表示された走行推奨ルートを参照し、タクシーを走行させる。車両端末2において、送信部233は、ルート情報の提供を受けたタクシーが業務として走行した走行ルートの履歴を示す営業走行履歴情報を取得する。例えば営業走行履歴情報は、空車時において、走行推奨ルートを走行している時間又は距離と、走行推奨ルート以外の走行ルートを走行している時間又は距離とを示す。また、営業走行履歴情報は、走行ルート自体を示す情報を示してもよい。送信部233は、取得した営業走行履歴情報を、料金決定装置1へ送信する。
【0041】
また、送信部233は、ルート情報の提供を受けたタクシーが走行したことによる損失又は利益に対応する金額を示す損益情報を取得する。損益情報は、例えばタクシーに乗車した乗客が支払った運賃を合計した売上金額を示す。また、損益情報は、売上金額から経費等を差し引いた損失額又は利益額を示してもよい。また、損益情報は、売上金額に加えて、車両の燃費や走行距離を示す情報を含んでもよい。送信部233は、取得した損益情報を、料金決定装置1へ送信する。
【0042】
送信部233は、営業走行履歴情報及び損益情報を逐次送信してもよく、所定期間内(例えば1日分)の営業走行履歴情報及び損益情報をまとめて送信してもよい。タクシーを管理する配車管理装置3が、営業走行履歴情報及び損益情報を同様の方法で取得し、料金決定装置1へ送信してもよい。
【0043】
料金決定装置1において、情報取得部133は、車両端末2又は配車管理装置3が送信した営業走行履歴情報及び損益情報を取得する。情報取得部133は、タクシー事業者が管理する複数のタクシーの損益情報を集計した値を、損益情報として取得してもよい。料金決定部134は、情報取得部133が取得した営業走行履歴情報及び損益情報に基づいて、料金決定システムSの利用に関する請求料金を決定する。
【0044】
まず、料金決定部134は、営業走行履歴情報を用いて、タクシーが空車時において走行した全ルートのうち走行推奨ルートを走行した遵守割合を算出する。図5は、料金決定部134が遵守割合を算出する方法を説明するための模式図である。図5は、走行推奨ルートR1及び全ルートR2を模式的に表している。
【0045】
情報取得部133が、走行推奨ルートR1を走行している時間又は距離と、走行推奨ルート以外の走行ルートを走行している時間又は距離とを示す営業走行履歴情報を取得した場合に、料金決定部134は、走行推奨ルートR1を走行している時間又は距離と走行推奨ルート以外の走行ルートを走行している時間又は距離との和を、全ルートR2の時間又は距離として算出する。そして料金決定部134は、算出した全ルートR2の時間又は距離に対する、走行推奨ルートR1を走行している時間又は距離の割合を、遵守割合として算出する。
【0046】
別の方法として、情報取得部133が走行ルート自体を示す営業走行履歴情報を取得した場合に、料金決定部134は、営業走行履歴情報と記憶部12に記憶される車両に提供したルート情報とを用いて、営業走行履歴情報が示す走行ルート(すなわち全ルートR2)に対して経路特定部131が特定した走行推奨ルートR1が一致又は近似する割合を、遵守割合として算出する。
【0047】
そして料金決定部134は、営業走行履歴情報を用いて算出した遵守割合と、情報取得部133が取得した損益情報とを用いて請求料金を決定し、決定した請求料金を示す請求料金情報を、タクシーを管理する配車管理装置3へ送信する。図6は、料金決定部134が請求料金を決定する方法を説明するための模式図である。図6は、料金決定部134が請求料金を決定するために用いる式(1)の例示的なグラフを表している。
【0048】
y=α(x-β)×δ (1)
式(1)において、xは損益情報が示す金額(例えば売上金額)であり、yは請求料金であり、αは歩合率であり、βは基準額であり、δは遵守割合に対応する係数である。
【0049】
歩合率αは、0%より大きく100%未満の所定の比率である。金額xが基準額βより小さい場合に、歩合率αを100%に設定してもよい。基準額βは、0円以上の所定の金額である。係数δは、遵守割合が高いほど高く、遵守割合が低いほど低く設定される値である。係数δは、遵守割合自体であってもよい。
【0050】
式(1)に示すように、料金決定部134は、損益情報が示す金額と所定の基準額との関係に基づいて決定した料金を、営業走行履歴情報を用いて算出した遵守割合に対応する係数で補正することにより、請求料金を決定する。これにより、料金決定部134は、タクシーが走行推奨ルートを遵守して走行した程度を請求料金に反映できる。
【0051】
式(1)において、金額xが基準額より大きい場合に、請求料金yは正の値となる。この場合に、請求料金yは、運転手又はタクシー事業者が提供事業者に支払うシステム利用料金となる。これにより、料金決定システムSは、提供事業者が、ルート情報の提供によりタクシーの売上が大きくなるほど、大きなシステム利用料金が得られるようにできる。
【0052】
式(1)において、金額xが基準額βより小さい場合に、請求料金yは負の値となる。この場合に、請求料金yは、提供事業者が運転手又はタクシー事業者に支払う補償金額となる。これにより、タクシーが走行推奨ルートを遵守すれば、タクシーの売上が低い場合であっても、タクシーに対して基準額βに応じた金額が補償されるため、料金決定システムSは、タクシーが走行推奨ルートを遵守することを促進できる。
【0053】
また、料金決定部134は、遵守割合が所定値より小さい場合に、当該所定値と当該遵守割合との差額に応じて請求料金を増加させてもよい。例えば料金決定部134は、遵守割合が所定値より小さい場合に、金額xが基準額より大きい場合の歩合率αを高くする。これにより、料金決定システムSは、走行推奨ルートを遵守しないタクシーに対するシステム利用料金を増加させ、タクシーが走行推奨ルートを遵守することを促進できる。また、例えば料金決定部134は、遵守割合が所定値より小さい場合に、金額xが基準額より小さい場合の歩合率αを小さくする。これにより、料金決定システムSは、走行推奨ルートを遵守しないタクシーに対する補償金額を低下させ、タクシーが走行推奨ルートを遵守することを促進できる。
【0054】
また、料金決定部134は、遵守割合に基づいて、基準額βを決定してもよい。例えば料金決定部134は、遵守割合が高いほど基準額βを高く、遵守割合が低いほど基準額βを低く設定する。これにより、料金決定システムSは、走行推奨ルートを遵守するタクシーに対するシステム利用料金を低下させ、タクシーが走行推奨ルートを遵守することを促進できる。
【0055】
[料金決定方法のシーケンス]
図7は、本実施形態に係る料金決定システムSが実行する料金決定方法のシーケンス図である。料金決定装置1において、経路特定部131は、タクシーの現在の位置を示す位置情報を取得する。経路特定部131は、取得した位置情報に基づいて、タクシーの乗車需要が所定条件を満たす経路を、タクシーの空車時における走行ルートとして推奨される走行推奨ルートとして特定する(S11)。情報提供部132は、タクシーに設けられた車両端末2に対して、経路特定部131が特定した走行推奨ルートを示すルート情報を提供する。情報提供部132は、ルート情報を、車両端末2に直接送信してもよく、配車管理装置3を介して車両端末2に送信してもよい。
【0056】
車両端末2において、受信部231は、料金決定装置1が送信したルート情報を受信する。表示制御部232は、受信部231が受信したルート情報が示す走行推奨ルートを、表示部24に表示させる。送信部233は、ルート情報の提供を受けたタクシーが業務として走行した走行ルートの履歴を示す営業走行履歴情報を取得する。送信部233は、取得した営業走行履歴情報を、料金決定装置1へ送信する(S12)。
【0057】
送信部233は、ルート情報の提供を受けたタクシーが走行したことによる損失又は利益に対応する金額を示す損益情報を取得する。送信部233は、取得した損益情報を、料金決定装置1へ送信する(S13)。ステップS12~S13において、タクシーを管理する配車管理装置3が、営業走行履歴情報及び損益情報を取得し、料金決定装置1へ送信してもよい。
【0058】
料金決定装置1において、情報取得部133は、車両端末2又は配車管理装置3が送信した営業走行履歴情報及び損益情報を取得する。料金決定部134は、営業走行履歴情報を用いて、タクシーが走行した全ルートのうち走行推奨ルートを走行した遵守割合を算出する(S14)。
【0059】
料金決定部134は、営業走行履歴情報を用いて算出した遵守割合と、情報取得部133が取得した損益情報とを用いて、請求料金を決定する(S15)。料金決定部134は、決定した請求料金を示す請求料金情報を、タクシーを管理する配車管理装置3へ送信する。
【0060】
[実施形態の効果]
本実施形態に係る料金決定システムSによれば、料金決定装置1は、タクシーに対して走行推奨ルートを示すルート情報を提供した後、ルート情報の提供を受けたタクシーの営業走行履歴情報及び損益情報を取得する。そして料金決定装置1は、営業走行履歴情報を用いて算出した遵守割合と、損益情報とを用いて、料金決定システムSの利用に関する請求料金を決定する。これにより、料金決定システムSは、タクシーが走行推奨ルートを遵守して走行した程度を請求料金に反映できるため、タクシー事業者に対して適切な請求料金を請求することができる。
【0061】
さらに料金決定装置1は、遵守割合に応じて、走行推奨ルートを遵守しないタクシーに対するシステム利用料金を増加させたり、補償金額を低下させたりすることによって、タクシーが走行推奨ルートを遵守することを促進できる。
【0062】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【0063】
料金決定装置1及び車両端末2のプロセッサは、図7に示す料金決定方法に含まれる各ステップ(工程)の主体となる。すなわち、料金決定装置1及び車両端末2のプロセッサは、図7に示す料金決定方法を実行するためのプログラムを記憶部から読み出し、該プログラムを実行して料金決定システムSの各部を制御することによって、図7に示す料金決定方法を実行する。図7に示す料金決定方法に含まれるステップは一部省略されてもよく、ステップ間の順番が変更されてもよく、複数のステップが並行して行われてもよい。
【符号の説明】
【0064】
S 料金決定システム
1 料金決定装置
13 制御部
131 経路特定部
132 情報提供部
133 情報取得部
134 料金決定部
2 車両端末
24 表示部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7